説明

胸腹部プロテクター及びそれに用いられる姿勢保持部材

【課題】装着に要する時間や手間が増大するのを効果的に抑止する。
【解決手段】胸腹部を保護するプロテクター本体1に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルト2と、胴廻し用の廻しベルト3と、掛けベルト2と廻しベルト3の中間部どうしを連結する連結ベルト4が設けられているとともに、廻しベルト3の少なくとも一端部が、プロテクター本体1に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターPにおいて、廻しベルト3における連結ベルト4の接続領域P1又はそれに相当する接続相当領域よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を抑止する姿勢保持手段5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸腹部への衝撃力の伝達を抑止する目的で上半身に装着される胸腹部プロテクター及びそれに用いられる姿勢保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の胸腹部プロテクターとしては、(1)胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと、胴廻し用の廻しベルトと、掛けベルトと廻しベルトの中間部どうしを連結する連結ベルトが設けられているとともに、廻しベルトの少なくとも一端部が、プロテクター本体に対して脱着自在に構成されたもの(例えば、下記特許文献1の図6(イ)を参照)、(2)胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと胴廻し用の廻しベルトが互いに独立する状態で設けられているとともに、廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されているもの(例えば、特許文献1の図6(ロ)を参照)、という装着形態の異なる2つのタイプが知られている。
【0003】
どちらのタイプの胸腹部プロテクターにしても、掛けベルト及び廻しベルトは、伸縮性素材や非伸縮性素材からなる帯状体にベルト長さ調節用の送りカンなどを配設して構成されており、掛けベルトを装着者の首又は肩に掛けたのち、装着者の背面側で廻しベルトの取り付け端部を掴まえてプロテクター本体に取り付ける装着方法を採る。
【0004】
【特許文献1】特開2000−176072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の如き従来の胸腹部プロテクターでは、掛けベルトを装着者の首又は肩に掛けた仮装着状態にする際に、廻しベルトが連結ベルトや掛けベルトに絡まったり、プロテクター本体に引っ掛かったりし易く、そのため、仮装着状態において廻しベルトの取り付け端部が本来あるべき位置範囲から外れて、装着者が仮装着状態から背面側で廻しベルトの取り付け端部を掴まえるのが難しなってしまう。
【0006】
そして、このことは、装着者の背面側がそもそも視認しづらいことも相俟って、装着に要する時間や手間を不測に増大させる重大な要因となっていた。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、装着に要する時間や手間が増大するのを効果的に抑止することのできる胸腹部プロテクター及びそれに用いられる姿勢保持部材を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は胸腹部プロテクターに係り、その特徴は、
胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと、胴廻し用の廻しベルトと、前記掛けベルトと前記廻しベルトの中間部どうしを連結する連結ベルトが設けられているとともに、前記廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターであって、
前記廻しベルトにおける前記連結ベルトの接続領域又はそれに相当する接続相当領域よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を抑止する姿勢保持手段が設けられている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、前記姿勢保持手段によって前記廻しベルトにおける前記連結ベルトの接続領域又はそれに相当する接続相当領域よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を抑止するから、掛けベルトを装着者の首又は肩に掛けた仮装着状態にする際に、廻しベルトが連結ベルトや掛けベルトに絡まったりプロテクター本体に引っ掛かったりするのを効果的に抑止することができる。
【0010】
したがって、仮装着状態において廻しベルトの取り付け端部が本来あるべき位置範囲に配置される確率を効果的に向上させることができて、装着に要する時間や手間が不測に増大するのを効果的に抑止することができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記姿勢保持手段の姿勢保持領域には、前記廻しベルトの前記接続領域及びそれの両側脇領域、又は、前記廻しベルトの前記接続相当領域及びそれの両側脇領域が含まれている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、姿勢保持手段によって、廻しベルトの接続領域及びそれの両側脇領域、又は、廻しベルトの接続相当領域及びそれの両側脇領域について湾曲及び屈曲を抑止するから、廻しベルトが連結ベルトに絡まるのを一層効果的に抑止することができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記姿勢保持手段の姿勢保持領域には、前記接続領域又は前記接続相当領域に連続する前記連結ベルトの一部も含まれている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、姿勢保持手段によって、前記接続領域又は前記接続相当領域に連続する前記連結ベルトの一部についても湾曲及び屈曲を抑止するから、廻しベルトが連結ベルトに絡まるのをさらに一層効果的に抑止することができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記姿勢保持手段が、前記姿勢保持領域について湾曲及び屈曲を接当により抑止する姿勢保持部材から構成されているとともに、前記姿勢保持部材を前記廻しベルト又は前記連結ベルト若しくはそれらの両方に脱着自在に取り付ける取り付け手段が設けられている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、前記取り付け手段によって、姿勢保持部材を取り付けた使用形態と姿勢保持部材を取り外した使用形態とに選択的に変更することができるから、身体形状や装着感の好みが異なる複数の使用者による共通利用が図り易いものとすることができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記取り付け手段が、前記姿勢保持部材のみに設けられている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、姿勢保持部材の装備されていない既存の胸腹部プロテクターに対しても前記姿勢保持部材を取り付けることができるから、既存の胸腹部プロテクターについても、掛けベルトを装着者の首又は肩に掛けた仮装着状態にする際に、廻しベルトが連結ベルトや掛けベルトに絡まったりプロテクター本体に引っ掛かったりするのを効果的に抑止することができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、第4又は第5特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記取り付け手段が、前記姿勢保持部材の移動を一定範囲内で許容する状態で姿勢保持部材を取り付ける構成である点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、装着時において使用者ごとの身体の形状や姿勢に応じた納まりのよい位置に姿勢保持部材を配置することができて、装着時の着用感を良好に確保することができる。
【0021】
本発明の第7特徴構成は、第6特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記取り付け手段を構成するのに、前記姿勢保持部材には、前記廻しベルト又は前記連結ベルトを姿勢保持部材の移動代に相当する余幅を持ってベルト幅方向で包囲する取り付けバンドが設けられている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、簡素な構造でありながらも、姿勢保持部材の移動をベルト幅方向、さらには、ベルト長さ方向にも効果的に許容することができて、装着時の着用感を一層良好に確保することができる。
【0023】
本発明の第8特徴構成は、第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記姿勢保持手段が、前記姿勢保持領域について湾曲及び屈曲を接当により抑止する姿勢保持部材から構成され、前記姿勢保持部材を前記廻しベルト及び前記連結ベルトに脱着自在に取り付ける取り付け手段が設けられているとともに、
前記取り付け手段を構成するのに、前記姿勢保持部材には、前記廻しベルト又は前記連結ベルトを姿勢保持部材の移動代に相当する余幅を持ってベルト幅方向で包囲する取り付けバンドが、前記廻しベルトにおける前記接続領域の両側脇領域に夫々対応する部位、及び、前記連結ベルトの中間領域に対応する部位、並びに、連結ベルトの中間領域よりも掛けベルト側の掛けベルト側領域に対応する部位に配設されている点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、前記姿勢保持部材によって、前記廻しベルトの前記接続領域及びそれの両側脇領域、並びに、前記接続領域に連続する前記連結ベルトの一部も含む領域について湾曲及び屈曲を抑止することに対し、前記取り付けバンドによって、廻しベルトにおける前記接続領域の両側脇領域、及び、連結ベルトの中間領域、並びに、連結ベルトの中間領域よりも掛けベルト側の掛けベルト側領域に夫々取り付ける形態で、姿勢保持部材を安定的に取り付けることができて、姿勢保持部材による上述した装着時間や装着手間の増大抑止効果を効果的に得ることができる。
【0025】
本発明の第9特徴構成は、第8特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記連結バンドの掛けベルト側領域に対応する部位に配設された前記取り付けバンドの包囲幅が、連結ベルトの中間領域に対応する部位に配設された取り付けバンドの包囲幅よりも広く構成されている点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、廻しベルトに対する掛けベルトの移動を一層効果的に許容することができて、姿勢保持部材による上述した装着時間や装着手間の増大抑止効果を効果的に得ることができながらも、装着時の着用感をさらに良好に確保することができる。
【0027】
本発明の第10特徴構成は胸腹部プロテクターに係り、その特徴は、
胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと胴廻し用の廻しベルトが互いに独立する状態で設けられているとともに、前記廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターであって、
前記廻しベルトの湾曲及び屈曲を抑止する姿勢保持手段が設けられている点にある。
【0028】
上記特徴構成によれば、前記姿勢保持手段によって前記廻しベルトの湾曲及び屈曲を抑止するから、掛けベルトを装着者の首又は肩に掛けた仮装着状態において、廻しベルトが掛けベルトに絡まったりプロテクター本体に引っ掛かったりするのを効果的に抑止することができる。
【0029】
したがって、仮装着状態において廻しベルトの取り付け端部が本来あるべき位置範囲に配置される確率を効果的に向上させることができて、装着に要する時間や手間が不測に増大するのを効果的に抑止することができる。
【0030】
本発明の第11特徴構成は姿勢保持部材に係り、その特徴は、
胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと、胴廻し用の廻しベルトと、前記掛けベルトと前記廻しベルトの中間部どうしを連結する連結ベルトが設けられているとともに、前記廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターに用いられる姿勢保持部材であって、
前記廻しベルトにおける前記連結ベルトの接続領域よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を接当により抑止する部材本体に、前記胸腹部プロテクターに対して脱着自在に取り付け可能な取り付け部が設けられている点にある。
【0031】
上記特徴構成によれば、前記姿勢保持部材によって前記廻しベルトにおける前記連結ベルトの接続領域又はそれに相当する接続相当領域よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を抑止することができるから、装着に要する時間や手間が不測に増大するのを効果的に抑止することができる胸腹部プロテクターを構成することができる。
【0032】
しかも、姿勢保持部材の装備されていない既存の胸腹部プロテクターについても姿勢保持部材を取り付けることができ、実用性の面でも優れたものとすることができる。
【0033】
本発明の第12特徴構成は姿勢保持部材に係り、その特徴は、
胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと胴廻し用の廻しベルトが互いに独立する状態で設けられているとともに、前記廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターに用いられる姿勢保持部材であって、
前記廻しベルトの湾曲及び屈曲を接当により抑止する部材本体に、前記胸腹部プロテクターに対して脱着自在に取り付け可能な取り付け部が設けられている点にある。
【0034】
上記特徴構成によれば、前記姿勢保持部材によって前記廻しベルトの湾曲及び屈曲を抑止することができるから、装着に要する時間や手間が不測に増大するのを効果的に抑止することができる胸腹部プロテクターを構成することができる。
【0035】
しかも、姿勢保持部材の装備されていない既存の胸腹部プロテクターについても姿勢保持部材を取り付けることができ、実用性の面でも優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
[第1実施形態]
図1は、野球やソフトボールのキャッチャーが使用する胸腹部プロテクターPを示し、キャッチャーの胸腹部を保護するプロテクター本体1には、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルト2と、胴廻し用の廻しベルト3と、掛けベルト2と廻しベルト3の中間部どうしを連結する連結ベルト4が設けられているとともに、廻しベルト3の所定領域について湾曲及び屈曲を抑止する姿勢保持部材5(前記姿勢保持手段の一例)が設けられている。
【0037】
前記プロテクター本体1は、キャッチャーの上半身のうち、両肩部から胸腹部を被覆する形態で構成されており、一方の肩部1a(本例では、右投げのキャッチャーが球を投げるのに使用しない左側の肩部)には、上碗部を被覆する上腕部保護体8が縫着されている。
【0038】
図示しないが、前記プロテクター本体1及び上腕部保護体8は、発泡樹脂製の芯材をナイロン生地や布生地等からなる表面材と裏面材とで挟み込む状態で被覆して構成されている。
【0039】
前記掛けベルト2は、伸縮性素材からなる一対の弾性帯2a、2bを皮革製の上部接続部材4dで接続して構成されている。掛けベルト2のベルト両端部の夫々は、プロテクター本体1の両肩部1aに対し直接或いは止具などを介して止着されている。
【0040】
前記廻しベルト3は、前記掛けベルト2よりもやや幅広の弾性帯3aに送りカン3b(長さ調節具の一例)を配設して構成されている。この廻しベルト3は、ベルト両端部の夫々がプロテクター本体1の胴部1b下方における両側縁部に対しサイドリリース型のワンタッチバックル3A(連結具の一例)を介して脱着自在に連結されている。
【0041】
前記ワンタッチバックル3Aは、互いに係脱自在な雄型係止体3cと雌型係止体3dとから構成されている。前記雄型係止体3cは、前記廻しベルト3のベルト両端部の夫々に取り付けられている。一方、前記雌型係止体3dは、プロテクター本体1の胴部1b下方における両側縁部の夫々に止着されている。
【0042】
前記連結ベルト4は、前記廻しベルト3を挿通保持する皮革製の下部接続部材4aと、下部接続部材取り付け用及びベルト長さ調節用の送りカン4bとを非伸縮性素材からなる織物製の非弾性帯4cに配設して構成されている。
【0043】
この連結ベルト4のベルト上端部は、前記上部接続部材4dに縫着される形態で前記掛けベルト2の中間部に接続されている。一方、連結ベルト4のベルト下端部は、前記下部接続部材4aを介して廻しベルト3の中間部に接続されている。
【0044】
前記姿勢保持部材5は、図1〜図3に示すように、前記廻しベルト3における連結ベルト4の接続領域P1(本例では、下部接続部材4aの取り付け領域)よりもベルト長手方向に広い領域(姿勢保持領域)について湾曲及び屈曲を接当により抑止する部材本体6に、胸腹部プロテクターPに対して部材本体6を脱着自在に取り付け可能な取り付け部7(取り付け手段の一例)を設けて構成されている。
【0045】
前記部材本体6は、前記廻しベルト3及び前記連結ベルト4よりも変形し難い基材6Aから前記接続領域P1及びそれの両側脇領域と接続領域P1に連続する連結ベルト4に対して当て付け可能な形態に、本例では、正面視略逆Tの字状に構成されている。
【0046】
前記基材6Aは、シート状の中間クッション材6aと、布製の裏面材6b(つまり、キャッチャーの身体に対する接触する側の面材)と、皮革製の表面材6cとを積層して構成されている。基材6Aの周縁部には、基材6Aの端面を被覆する布製の縁材6Bが縫着されている。
【0047】
なお、前記部材本体6の中央部には、表面材6cと裏面材6bとを縫着して構成された多数の屈曲誘導部6dが略扇の骨状に配置形成されている。
【0048】
前記取り付け部7は、前記部材本体6の移動を一定範囲内で許容する状態で部材本体6を胸腹部プロテクターPに取り付けるように構成されており、詳しくは、廻しベルト3又は連結ベルト4を部材本体6の移動代に相当する余幅を持ってベルト幅方向で包囲する複数(本例では4個)の取り付けバンド7A〜7Dを、部材本体6の表面(つまり、表面材6cの表面)に配設して構成されている。
【0049】
取り付けバンド7A、7Bは、姿勢保持部材5の胸腹部プロテクターPへの取り付け状態において部材本体6における廻しベルト3の両側脇領域に夫々対応する部位に配設され、取り付けバンド7Cは、前記取り付け状態において部材本体6における連結ベルト4の中間領域に対応する部位に配設され、取り付けバンド7Dは、前記取り付け状態において部材本体6における連結ベルト4の中間領域よりも掛けベルト2側(本例では上方側)の掛けベルト側領域に対応する部位に配設されている。
【0050】
そのため、姿勢保持部材5のプロテクター本体1に対する姿勢安定性を効果的に確保しながらも、胸腹部プロテクターPの装着時に使用者の身体形状や姿勢に応じた納まりのよい位置に姿勢保持部材5が移動するのを効果的に許容する。
【0051】
各取り付けバンド7A〜7Dは、非伸縮性素材からなる織物製の非弾性帯7aと、この非弾性帯7aの両端部を係止する係止手段7bとから構成され、非弾性帯7aの中間部を部材本体6の表面に対してリベット7c(止具の一例)で止着することにより部材本体5の各部位に配設されている。
【0052】
前記係止手段7bは、互いに係脱自在な雄ホック7dと雌ホック7eを非弾性帯7aの両端部の各所定位置に分散配設して構成されており、廻しベルト3又は連結ベルト4を前記余幅を持ってベルト幅方向で包囲するように非弾性帯7aの両端部を重ねた状態で、それら両端部を係止可能に構成されている。
【0053】
なお、部材本体6の移動代に相当する余幅とは、取り付けバンド7A〜7Dの各包囲幅Ha〜Hdと、取り付けバンド7A〜7Dの各包囲対象ベルトのベルト幅H3(廻しベルト3のベルト幅)、H4(連結ベルト4のベルト幅)との差を云う。
【0054】
また、前記取り付けバンド7Dの包囲幅Hdは、取り付けバンド7Cの包囲幅Hcよりも広く構成されており、廻しベルト3に対する掛けベルト2の移動(変位)を効果的に許容する。
【0055】
つまり、この胸腹部プロテクターPは、図4に示すように、掛けベルト2をキャッチャーの首又は肩に掛けた仮装着状態にする際に、姿勢保持部材5によって廻しベルト3における前記接続領域P1よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を抑止する形態で、廻しベルト3が連結ベルト4や掛けベルト2に絡まったりプロテクター本体1に引っ掛かったりするのを効果的に抑止し、これにより、仮装着状態において廻しベルト3の取り付け端部が本来あるべき位置範囲に配置される確率を効果的に向上させて、装着に要する時間や手間が不測に増大するのを効果的に抑止する。
【0056】
[第2実施形態]
前述の第1実施形態では、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルト2と、胴廻し用の廻しベルト3と、掛けベルト2と廻しベルト3の中間部どうしを連結する連結ベルト4が、プロテクター本体1に設けられている胸腹部プロテクターPに、廻しベルト3における連結ベルト4の接続領域P1よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を抑止する姿勢保持部材5(前記姿勢保持手段の一例)が設けられている場合を例に示したが、これに限られるものではない。
【0057】
この第2実施形態では、図5に示すように、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルト2と胴廻し用の廻しベルト3が互いに独立する状態で前記プロテクター本体1に設けられている胸腹部プロテクターPに、廻しベルト3の湾曲及び屈曲を抑止する姿勢保持部材5(姿勢保持手段の一例)が設けられている。
【0058】
前記掛けベルト2は、伸縮性素材からなる1本の弾性帯から構成されており、掛けベルト2のベルト両端部の夫々が、プロテクター本体1の両肩部1aに対し直接或いは止具などを介して止着されている。
【0059】
前記姿勢保持部材5は、前記廻しベルト3の湾曲及び屈曲を接当により抑止する部材本体6に、胸腹部プロテクターPに対して部材本体6を脱着自在に取り付け可能な取り付け部7(取り付け手段の一例)を設けて構成されている。
【0060】
前記部材本体6は、前記廻しベルト3及び前記連結ベルト4よりも変形し難い基材6Aから正面視において横長の面取長方形状に構成されている。
【0061】
前記取り付け部7は、前記部材本体6の移動を一定範囲内で許容する状態で部材本体6を胸腹部プロテクターPに取り付けるように構成されており、詳しくは、廻しベルト3を部材本体6の移動代に相当する余幅を持ってベルト幅方向で包囲する複数(本例では2個)の取り付けバンド7A、7Bを、部材本体6の表面(つまり、表面材6cの表面)における両側部位に配設して構成されている。
【0062】
つまり、この胸腹部プロテクターPは、掛けベルト2をキャッチャーの首又は肩に掛けた仮装着状態にする際に、姿勢保持手段5によって廻しベルト3の湾曲及び屈曲を抑止する形態で、廻しベルト3が掛けベルト2に絡まったりプロテクター本体1に引っ掛かったりするのを効果的に抑止する。
【0063】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0064】
[第3実施形態]
前述の第1実施形態では、姿勢保持部材5が、胴廻し用の廻しベルト3と連結ベルト4とに重なる状態で胸腹部プロテクターPに設けられている場合を例に示したが、姿勢保持部材5が、廻しベルト3の少なくとも一部に代えて、又は、廻しベルト3の少なくとも一部と連結ベルト4の少なくとも一部の両方に代えて設けられてもよい。
【0065】
この第3実施形態では、図6に示すように、前記姿勢保持部材5が、廻しベルト3の一部と連結ベルト4の全部に代えて胸腹部プロテクターPに設けられている。
【0066】
詳しくは、前記姿勢保持部材5が、前記廻しベルト3における連結ベルト4の接続相当領域P2(つまり、連結ベルト4があると想定した場合における下部接続部材4aの取り付け領域、図6中の点線表示を参照)よりもベルト長手方向に広い領域(姿勢保持領域)について湾曲及び屈曲を抑止する部材本体6から構成されている。この部材本体6は、胸腹部プロテクターPに対し縫着や接着などにより取り付け可能に構成されている。
【0067】
そして、前記廻しベルト3が、前記掛けベルト2よりもやや幅広の一対の弾性帯3e、3fを姿勢保持部材5(詳しくは、部材本体6)で連結(詳しくは、姿勢保持部材5に対する縫着により連結)して構成されているとともに、姿勢保持部材5の上端部が、皮革製の上部接続部材4dに縫着される形態で掛けベルト2の中間部に接続されている。
【0068】
つまり、この胸腹部プロテクターPは、掛けベルト2をキャッチャーの首又は肩に掛けた仮装着状態にする際に、姿勢保持部材5によって廻しベルト3における前記接続相当領域P2よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を抑止する形態で、廻しベルト3が連結ベルト4や掛けベルト2に絡まったりプロテクター本体1に引っ掛かったりするのを効果的に抑止する。
【0069】
なお、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0070】
[その他の実施形態]
(1)姿勢保持部材5を胸腹部プロテクターPに取り付ける取り付け手段7の取り付け形態は、前述第1、第3実施形態で示した如き取り付けバンド7A〜7Dによるものに限らず、面ファスナーなどの係止部材や連結紐などの連結部材などによるものなど、種々の取り付け形態を採用することができる。
【0071】
(2)前述の各実施形態では、姿勢保持部材5が略逆Tの字状や横長の面取り長方形状である場合を例に示したが、円形や角形や楕円形などの種々の形状であってもよい。
【0072】
(3)姿勢保持部材5の素材などの具体的構成は、前述の各実施形態で示した如き構成に限らず、種々の構成変更が可能である。
【0073】
(4)また、プロテクター本体1や各ベルト2〜4の具体的構成も、前述の各実施形態で示した如き構成に限らず、種々の構成変更が可能である。
【0074】
(5)前述の各実施形態では、前記廻しベルト3の両端部が、前記プロテクター本体1に対して脱着自在に構成されている場合を例に示したが、廻しベルト3の一端部のみが、前記プロテクター本体1に対して脱着自在に構成されていてもよい。
【0075】
(6)前述の第1実施形態では、姿勢保持手段5が、前記廻しベルト3における前記連結ベルト4の接続領域P1及びそれの両側脇領域並びに接続領域P1に連続する連結ベルト4を姿勢保持領域に含むように構成されている場合を例に示したが、少なくとも前記廻しベルト3における前記連結ベルト4の接続領域P1を姿勢保持領域に含む構成であればよい。
【0076】
(7)前述の第3実施形態では、姿勢保持手段5が、前記廻しベルト3における前記連結ベルト4の接続相当領域P2及びそれの両側脇領域並びに接続相当領域P2に連続する連結ベルト4(正確には、連結ベルト4に相当する領域)を姿勢保持領域に含むように構成されている場合を例に示したが、少なくとも前記廻しベルト3における前記連結ベルト4の接続相当領域P2を姿勢保持領域に含む構成であればよい。
【0077】
(8)前述の第1実施形態では、姿勢保持手段5が、前記廻しベルト3における前記接続領域P1に連続する連結ベルト4の全部を姿勢保持領域に含むように構成されている場合を例に示したが、接続領域P1に連続する連結ベルト4の一部を姿勢保持領域に含むように構成されていてもよい。
【0078】
(9)前述の第3実施形態では、姿勢保持手段5が、前記廻しベルト3における前記接続相当領域P2に連続する連結ベルト4(正確には、連結ベルト4に相当する領域)の全部を姿勢保持領域に含むように構成されている場合を例に示したが、接続相当領域P2に連続する連結ベルト4の一部を姿勢保持領域に含むように構成されていてもよい。
【0079】
(10)前述の各実施形態では、野球又はソフトボールにおけるキャッチャー用の胸腹部プロテクターPを例に示したが、野球又はソフトボールの審判用の胸腹部プロテクターや日常的に装着する護身用の胸腹部プロテクターなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の胸腹部プロテクターの第1実施形態を示す背面図
【図2】姿勢保持部材の斜視図
【図3】図2のIII−III線断面図
【図4】胸腹部プロテクターの使用状態を示す説明図
【図5】本発明の胸腹部プロテクターの第2実施形態を示す背面図
【図6】本発明の胸腹部プロテクターの第3実施形態を示す背面図
【符号の説明】
【0081】
P 胸腹部プロテクター
1 プロテクター本体
2 掛けベルト
3 廻しベルト
4 連結ベルト
P1 接続領域
P2 接続相当領域
5 姿勢保持部材(姿勢保持手段)
6 部材本体
7 取り付け部(取り付け手段)
7A〜7D 取り付けバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと、胴廻し用の廻しベルトと、前記掛けベルトと前記廻しベルトの中間部どうしを連結する連結ベルトが設けられているとともに、前記廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターであって、
前記廻しベルトにおける前記連結ベルトの接続領域又はそれに相当する接続相当領域よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を抑止する姿勢保持手段が設けられている胸腹部プロテクター。
【請求項2】
前記姿勢保持手段の姿勢保持領域には、前記廻しベルトの前記接続領域及びそれの両側脇領域、又は、前記廻しベルトの前記接続相当領域及びそれの両側脇領域が含まれている請求項1記載の胸腹部プロテクター。
【請求項3】
前記姿勢保持手段の姿勢保持領域には、前記接続領域又は前記接続相当領域に連続する前記連結ベルトの一部も含まれている請求項2記載の胸腹部プロテクター。
【請求項4】
前記姿勢保持手段が、前記姿勢保持領域について湾曲及び屈曲を接当により抑止する姿勢保持部材から構成されているとともに、前記姿勢保持部材を前記廻しベルト又は前記連結ベルト若しくはそれらの両方に脱着自在に取り付ける取り付け手段が設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の胸腹部プロテクター。
【請求項5】
前記取り付け手段が、前記姿勢保持部材のみに設けられている請求項4記載の胸腹部プロテクター。
【請求項6】
前記取り付け手段が、前記姿勢保持部材の移動を一定範囲内で許容する状態で姿勢保持部材を取り付ける構成である請求項4又は5記載の胸腹部プロテクター。
【請求項7】
前記取り付け手段を構成するのに、前記姿勢保持部材には、前記廻しベルト又は前記連結ベルトを姿勢保持部材の移動代に相当する余幅を持ってベルト幅方向で包囲する取り付けバンドが設けられている請求項6記載の胸腹部プロテクター。
【請求項8】
前記姿勢保持手段が、前記姿勢保持領域について湾曲及び屈曲を接当により抑止する姿勢保持部材から構成され、前記姿勢保持部材を前記廻しベルト及び前記連結ベルトに脱着自在に取り付ける取り付け手段が設けられているとともに、
前記取り付け手段を構成するのに、前記姿勢保持部材には、前記廻しベルト又は前記連結ベルトを姿勢保持部材の移動代に相当する余幅を持ってベルト幅方向で包囲する取り付けバンドが、前記廻しベルトにおける前記接続領域の両側脇領域に夫々対応する部位、及び、前記連結ベルトの中間領域に対応する部位、並びに、連結ベルトの中間領域よりも掛けベルト側の掛けベルト側領域に対応する部位に配設されている請求項3記載の胸腹部プロテクター。
【請求項9】
前記連結バンドの掛けベルト側領域に対応する部位に配設された前記取り付けバンドの包囲幅が、連結ベルトの中間領域に対応する部位に配設された取り付けバンドの包囲幅よりも広く構成されている請求項8記載の胸腹部プロテクター。
【請求項10】
胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと胴廻し用の廻しベルトが互いに独立する状態で設けられているとともに、前記廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターであって、
前記廻しベルトの湾曲及び屈曲を抑止する姿勢保持手段が設けられている胸腹部プロテクター。
【請求項11】
胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと、胴廻し用の廻しベルトと、前記掛けベルトと前記廻しベルトの中間部どうしを連結する連結ベルトが設けられているとともに、前記廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターに用いられる姿勢保持部材であって、
前記廻しベルトにおける前記連結ベルトの接続領域よりもベルト長手方向に広い領域について湾曲及び屈曲を接当により抑止する部材本体に、前記胸腹部プロテクターに対して脱着自在に取り付け可能な取り付け部が設けられている姿勢保持部材。
【請求項12】
胸腹部を保護するプロテクター本体に、首掛け用又は肩掛け用の掛けベルトと胴廻し用の廻しベルトが互いに独立する状態で設けられているとともに、前記廻しベルトの少なくとも一端部が、前記プロテクター本体に対して脱着自在に構成されている胸腹部プロテクターに用いられる姿勢保持部材であって、
前記廻しベルトの湾曲及び屈曲を接当により抑止する部材本体に、前記胸腹部プロテクターに対して脱着自在に取り付け可能な取り付け部が設けられている姿勢保持部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−266807(P2008−266807A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108298(P2007−108298)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000108258)ゼット株式会社 (36)
【Fターム(参考)】