説明

胸部保護パッド、及び、その製造方法

【課題】衝撃に対する保護性能が高くて特に心臓震盪の予防に適した胸部保護パッドの提供する。
【解決手段】体表胸部における心臓対応部位を覆う状態で装着する胸部保護パッドであって、装着状態において反身体側に位置させる外層4と、その外層4の身体側に積層する緩衝層5と、その緩衝層5の身体側に積層する内層6との夫々を、衝撃吸収性のある軟質の発泡樹脂材a,b,cで形成し、外層4及び内層6の形成樹脂材a,cは緩衝層5の形成樹脂材bよりも相対的に軟質性に劣る樹脂材にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体表胸部における心臓対応部位を覆う状態で装着する胸部保護パッドに関し、特に心臓震盪の予防として野球やソフトボールあるいはサッカーなどのスポーツで用いるのに適した胸部保護パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体に装着する衝撃吸収用の保護パッドやプロテクターとして、身体側の内層を軟質で低反発性の発泡樹脂材で形成するとともに、反身体側の外層を内層の形成樹脂材よりも相対的に軟質性に劣る発泡樹脂材で形成するもの、例えば、内層を軟質低反発ポリウレタンフォームで形成し外層を発泡ポリウレタンエラストマーで形成するものや、内層を高発泡低反発ウレタンフォームで形成し外層を独立気泡樹脂フォームで形成するものなどが提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−123311号公報
【特許文献2】特開2007−126769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の保護パッドやプロテクターは、反身体側から外層に加えられた衝撃力が外層形成樹脂材の相対的に低い軟質性(内層形成樹脂材よりも相対的に劣る軟質性)により面積的に広く分散された状態で内層に及ぶようにし、これにより、局部的な衝撃力を直接的に高軟質の発泡樹脂材層で受け止める構造に比べ、内層を形成する高軟質の発泡樹脂材に伝わる単位面積当りの衝撃力を小さくするとともに、その高軟質の発泡樹脂材が有する高い衝撃吸収性を面積的に広く有効に発揮させる(逆言すれば、高い衝撃吸収性を十分に発揮できないままで終わる部分を面積的に少なくする)ようにし、これにより、薄型化や軽量化を図りながら高い衝撃吸収効果を得られるようにして保護性能の向上を図ったものである。
【0005】
しかし、骨折や裂傷などに比べ心臓震盪は体表胸部の心臓対応部位に及ぶ衝撃力が比較的小さくても発症することがあり、この点、心臓震盪の予防にも適した胸部保護パッドとするには、上記した従来の保護パッドやプロテクターで得られる保護性能では未だ不十分な面があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、スポーツなどでの身体動作の支障とならないように薄型化及び軽量化を図りながらも、上記した従来の保護パッドやプロテクターに比べ衝撃に対して一層高い保護性能が得られる胸部保護パッド、及び、その製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕本発明の第1特徴構成は、体表胸部における心臓対応部位を覆う状態で装着する胸部保護パッドに係り、その特徴は、
装着状態において反身体側に位置させる外層と、その外層の身体側に積層する緩衝層と、その緩衝層の身体側に積層する内層との夫々を、衝撃吸収性のある軟質の発泡樹脂材で形成し、前記外層及び前記内層の形成樹脂材は前記緩衝層の形成樹脂材よりも相対的に軟質性に劣る樹脂材にしてある点にある。
【0008】
つまり、この第1特徴構成では、反身体側から外層に加えられた衝撃力が外層形成樹脂材の相対的に低い軟質性(即ち、緩衝層形成樹脂材よりも相対的に劣る軟質性)により面積的に広く分散された状態で緩衝層に及ぶようにし、これにより、先述した従来の保護パッドやプロテクターと同様に、局部的な衝撃力を直接的に高軟質の発泡樹脂材層で受け止める構造に比べ、緩衝層を形成する高軟質の発泡樹脂材に伝わる単位面積当りの衝撃力を小さくするとともに、その高軟質の発泡樹脂材が有する高い衝撃吸収性を面積的に広く有効に発揮させるようにする。換言すれば、高軟質の緩衝層形成樹脂材が局部的な衝撃力によりいわゆる底付き状態やそれに近い状態まで局部的に大きく凹み弾性変形し、そのことで、衝撃力が十分に減衰されないままで身体側に及ぶことを防止する。
【0009】
また、これに加え、内層の形成樹脂材を外層の形成樹脂材と同様、緩衝層の形成樹脂材よりも相対的に軟質性に劣る樹脂材にすることで、衝撃力に対する受け止め反力についても内層形成樹脂材の相対的に低い軟質性(緩衝層形成樹脂材よりも相対的に劣る軟質性)により面積的に広く分散させた状態で内層から緩衝層の側へ及ぼすことができて、この内層形成樹脂材による反力分散と先の外層形成樹脂材による衝撃力分散とにより緩衝層を表裏から確実に広く挟圧する形態にすることができ、これにより、先述した従来の保護パッドやプロテクター(即ち、高軟質の発泡樹脂材層の反身体側にのみ相対的に軟質性に劣る外層を設けるもの)に比べ、緩衝層を形成する高軟質の発泡樹脂材が有する高い衝撃吸収性を面積的に広く有効に発揮させることを一層確実にすることができる。
【0010】
そしてまた、仮に外層に加わる衝撃力が外層では十分に分散し切れないものであって、その為、緩衝層を形成する高軟質の発泡樹脂材がある程度局部的に凹み弾性変形して衝撃力が未だ十分に分散及び吸収されないままで内層に至ったとしても、その分散吸収が未だ不十分な衝撃力を内層形成樹脂材の相対的に低い軟質性(緩衝層形成樹脂材よりも相対的に劣る軟質性)により再び面積的に広く分散させることができて、身体側に及ぶ単位面積当りの衝撃力をさらに小さくすることもできる。
【0011】
すなわち、緩衝層形成樹脂材が有する高い衝撃吸収性を面積的に広く一層確実に有効発揮させ得ることと、軟質の発泡樹脂材で形成した外層及び内層の夫々が発揮する衝撃吸収性とで、全体として極めて高い衝撃吸収効果を得ることができ、このことと外層形成樹脂材及び内層形成樹脂材の夫々による上記の如き衝撃分散効果とが相俟って、先述した従来の保護パッドやプロテクターに比べ、スポーツなどでの身体動作の支障とならないように薄型化及び軽量化を図りながらも、衝撃に対して一層高い保護性能を得ることができ、これにより、心臓震盪の予防にも一層適した胸部保護パッドにすることができる。
【0012】
なお、外層、緩衝層、内層の夫々を衝撃吸収性のある軟質の発泡樹脂材で形成する構成において上記の如く緩衝層を表裏から確実に広く挟圧する形態が得られるものであれば、第1特徴構成の実施において、外層の反身体側や外層と緩衝層との間、あるいは、緩衝層と内層との間や内層の身体側などに他の膜や他の層を設けるようにしてもよい。
【0013】
〔2〕本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記外層及び前記内層の形成樹脂材は、前記緩衝層の形成樹脂材よりも感温性の低い樹脂材にしてある点にある。
【0014】
つまり、軟質の発泡樹脂材、特に高軟質の発泡樹脂材は温度によって硬さ(軟質性)が変化する感温性のあるものが多いが、上記第2特徴構成によれば、緩衝層を挟む外層及び内層の形成樹脂材を緩衝層の形成樹脂材よりも感温性の低い樹脂材にすることで、それら外層形成樹脂材及び内層形成樹脂材により緩衝層形成樹脂材を外部からの熱や体熱から熱的に保護することができて、高い衝撃吸収効果を得る上で最も重要な緩衝層形成樹脂材の温度変化による軟質性の変化を効果的に防止でき、これにより、心臓震盪の予防にも適した高い保護性能を一層確実かつ安定的に発揮させることができて、その点で信頼性の一層高い胸部保護パッドにすることができる。
【0015】
〔3〕本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記内層の形成樹脂材は、前記外層の形成樹脂材よりも軟質の樹脂材にしてある点にある。
【0016】
つまり、内層形成樹脂材の相対的に低い軟質性(緩衝層形成樹脂材よりも相対的に劣る軟質性)により衝撃力を再び面積的に広く分散させて身体側に及ぶ単位面積当りの衝撃力をさらに小さくするにしても、内層が体表胸部に対して部分的にしか接していない状態では、その部分的な接触箇所に分散衝撃力が再集中する状態になってしまい、この為、衝撃に対する保護性能を前述の如く衝撃吸収性と衝撃分散性との両面で向上させることのうち、内層形成樹脂材により衝撃力を再分散させることで保護性能を高める部分の機能が低く制限されてしまう。したがって、内層の形成樹脂材には体表胸部との接触性の面で外層の形成樹脂材に比べ柔軟性がより以上に要求される。
【0017】
このことに対し、上記第3特徴構成によれば、内層の形成樹脂材を外層の形成樹脂材よりも軟質の樹脂材にするから、その内層形成樹脂材の軟質性を緩衝層形成樹脂材の軟質性と外層形成樹脂材の軟質性との間の範囲において適当に選定することで、内層形成樹脂材により衝撃力を再分散させる機能とその分散衝撃力の再集中を抑止する機能との適切な両立点を得ることができる。
【0018】
そしてまた、内層の形成樹脂材を外層の形成樹脂材よりも軟質の樹脂材にすることで、緩衝層から身体側に及ぶ残余の衝撃力を吸収する機能も高めることができ、これらのことから、衝撃に対する保護性能を一層確実かつ効果的に高めることができる。
【0019】
なお、第3特徴構成の実施において、内層は必ずしもその身体側の面をパッド背面として体表胸部に対し直接に接触させるものでなくてもよく、上記の再集中抑止機能を活かせるものであれば、他の膜や他の層を内層の身体側に設ける構成にしてもよい。
【0020】
〔4〕本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記外層の形成樹脂材はJIS−C硬度を30〜55にし、前記内層の形成樹脂材はJIS−C硬度を10〜30にし、前記緩衝層の形成樹脂材は前記内層の形成樹脂材よりもさらに低いJIS−C硬度にしてある点にある。
【0021】
つまり、衝撃に対する保護性能を前述の如く衝撃吸収性と衝撃分散性との両面で向上させるのに、各層の硬度について見た場合、上記の如く外層形成樹脂材のJIS−C硬度を30〜55にし、内層形成樹脂材のJIS−C硬度を10〜30にし、緩衝層形成樹脂材は内層形成樹脂材よりもさらに低いJIS−C硬度にすれば、衝撃に対する保護性能を概ね効果的に高め得ることが確認できた。
したがって、第4特徴構成によれば、衝撃に対する保護性能が高くて心臓震盪の予防にも適した胸部保護パッドを一層確実に得ることができる。
【0022】
なお、外層形成樹脂材のJIS−C硬度を30とする場合には、内層形成樹脂材のJIS−C硬度を30未満とし、内層形成樹脂材のJIS−C硬度を30とする場合には、外層形成樹脂材のJIS−C硬度を30よりも大きくする。
【0023】
また、緩衝層形成樹脂材のJIS−C硬度の下限値は測定不能な程度のものであってもよい。
【0024】
〔5〕本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成夫々の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記外層、前記緩衝層、前記内層の夫々を2mm〜20mmの厚さにしてある点にある。
【0025】
つまり、上記の如く外層、緩衝層、内層夫々の厚さを2mm〜20mmにすれば、衝撃に対する保護性能を前述の如く衝撃吸収性と衝撃分散性との両面で向上させることにおいて要求される各層の機能を概ね十分に各層に発揮させることが確認できた。
したがって、第5特徴構成によれば、衝撃に対する保護性能が高くて心臓震盪の予防にも適した胸部保護パッドを一層確実に得ることができる。
【0026】
〔6〕本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成夫々の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記外層及び前記内層の形成樹脂材は、前記緩衝層の形成樹脂材よりも防水性の高い樹脂材にしてある点にある。
【0027】
つまり、軟質の発泡樹脂材、特に高軟質の発泡樹脂材は水分を含むと性状が変化したり劣化が促進されるなどの性質を有するものが多いが、上記第6特徴構成によれば、緩衝層を挟む外層及び内層の形成樹脂材を緩衝層の形成樹脂材よりも防水性の高い樹脂材にすることで、それら外層形成樹脂材及び内層形成樹脂材の防水性により緩衝層形成樹脂材を雨や発汗などによる水分から保護することができて、高い衝撃吸収効果を得る上で最も重要な緩衝層形成樹脂材の水分吸収による性状変化や劣化促進を効果的に防止でき、これにより、心臓震盪の予防にも適した高い保護性能を一層確実かつ長期にわたって安定的に発揮させることができて、その点で信頼性の一層高い胸部保護パッドにすることができる。
【0028】
〔7〕本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成夫々の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
パッド表面は滑性の高い面にし、パッド背面は滑性の低い面にしてある点にある。
【0029】
つまり、この第7特徴構成によれば、パッドの反身体側の面であるパッド表面を滑性の高い面(即ち、パッド背面に比べて滑性の高い面)にすることで、ボールなどの衝突物がパッド表面への衝突時にパッド表面に沿う方向に多少でも滑り動作して、その滑り動作によりパッド表面への衝突力が減じられ易くすることができる。
【0030】
また、パッドの身体側の面であるパッド背面を滑性の低い面(即ち、パッド表面よりも滑性の低い面)にすることで、体表胸部上でのパッドの滑り動作を抑止して、心臓対応部位を覆う適切位置にパッドが保持され易くすることができ、これらの点で、衝撃に対する保護性能に一層優れ心臓震盪の予防にも一層優れた胸部保護パッドにすることができる。
【0031】
なお、第7特徴構成の実施においては、外層の反身体側の面をパッド表面とし、また、内層の身体側の面をパッド背面とする構成に限らず、外層の反身体側に設けた他の膜や他の層の反身体側の面をパッド表面とする構成や、内層の身体側に設けた他の膜や他の層の身体側の面をパッド背面とする構成を採用してもよい。
【0032】
また、パッド背面は体表胸部に対して直接に接触させる面に限られるものではなく、例えば、ウエアのポケットにパッドを収容した状態でそのウエアを着衣することで、パッドを装着する場合などのように、パッド背面を布等の介在物を介して体表胸部に接触させる場合にも上記第7特徴構成や有効である。
【0033】
〔8〕本発明の第8特徴構成は、第1〜第7特徴構成夫々の実施に好適な実施形態を特定するもので、その特徴は、
前記外層の形成樹脂材における反身体側の表層部分は、その部分に含まれる気泡を復元不能に潰した状態の表皮状構造にしてある点にある。
【0034】
つまり、この表皮状構造は内部の気泡を復元不能に潰した状態のものであるから、外層における他部分の形成樹脂材(すなわち、同じ樹脂材ではあるが気泡が潰れていない樹脂材)に比べて強度が高い。
したがって、上記第8特徴構成によれば、この表皮状構造を保護膜層としてパッドの損傷を防止し、そのことでパッドの耐久性を高めることができる。
【0035】
なお、この第8特徴構成によれば、外層の軟質性を所要のものに調整することや、外層の防水性を高めること、あるいはまた、外層の反身体側の面の滑性を高めることなどを、上記表皮状構造の形成により併せ行うこともできる。
【0036】
〔9〕本発明の第9特徴構成は、第1〜第8特徴構成夫々の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
装着状態において上下方向に延びる仮想直線でパッド表面視においてパッド中心から左方に外れて位置する仮想直線を身体左右中心対応のパッド上仮想直線とし、このパッド上仮想直線の位置をパッド使用者に認知させる指標を設けてある点にある。
【0037】
つまり、この第9特徴構成によれば、指標により位置を認知し得る上記パッド上仮想直線を身体の左右中心(略言すれば鳩尾)に対応位置させるようにパッドを装着することで、身体左右中心よりも向かって若干右側に位置する体表胸部の心臓対応部位を適切に覆う状態にパッドを装着することを一層容易かつ正確に行うことができ、この点で一層優れた胸部保護パッドにすることができる。
【0038】
〔10〕本発明の第10特徴構成は、第9特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
パッド表面からパッド背面にわたって貫通する複数の通気孔を前記パッド上仮想直線の近傍に集中的に形成し、それら集中配置の通気孔を前記指標にしてある点にある。
【0039】
つまり、この第10特徴構成によれば、パッド上仮想直線の位置を使用者に認知させる指標として通気孔を利用するから、文字や図形等の専用の指標を用いてパッド上仮想直線の位置を使用者に認知させるのに比べ、指標としての通気孔の集中配置群を目立つ状態に形成して使用者が前記パッド上仮想直線の位置を認知し易くしながらも、パッドの外観を体裁良く保つことができる。
【0040】
〔11〕本発明の第11特徴構成は、第9又は第10特徴構成夫々の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
目視可能にした前記指標をパッド周縁部のうち装着状態においてパッド上縁部となる部分に設けてある点にある。
【0041】
つまり、パッドを体表胸部に装着した状態では使用者はパッド周縁部のうちパッドの上縁部ぐらいしか自身で目視することができないが、上記第11特徴構成によれば、目視可能にした前記指標をパッド周縁部のうち装着状態においてパッド上縁部となる部分に設けてあるから、使用者はパッドを装着した状態においても、その指標の目視により前記パッド上仮想直線の位置を認知することができて、パッドの装着状態が適切か否かを確認することができ、この点で一層優れた胸部保護パッドにすることができる。
【0042】
〔12〕本発明の第12特徴構成は、第1〜第11特徴構成夫々の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
パッド表面は、装着状態において上下方向に延びる尾根部が形成された凸状湾曲面にしてある点にある。
【0043】
つまり、この第12特徴構成によれば、パッド表面を上記の如き凸状湾曲面にすることにより、ボールなどの衝突物がパッド表面への衝突時に凸状湾曲面による案内で上記尾根部から下る方向へ多少でもズレ動作や滑り動作して、そのズレ動作や滑り動作によりパッド表面への衝突力が減じられ易くすることができ、この点で、衝撃に対する保護性能に一層優れ、心臓震盪の予防にも一層優れた胸部保護パッドにすることができる。
【0044】
〔13〕本発明の第13特徴構成は、第1〜第12特徴構成夫々の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
パッド背面は、装着状態において上下方向に延びる谷部が形成された凹状湾曲面にしてある点にある。
【0045】
つまり、この第13特徴構成によれば、上記の如き凹状湾曲面にしたパッド背面を体表胸部の凸状湾曲形状(即ち、肋骨による凸状湾曲形状)に被せる状態でパッドを装着することにより、体表胸部上でのパッドのズレ動作を効果的に抑止することができ、この点で一層優れた胸部保護パッドにすることができる。
【0046】
〔14〕本発明の第14特徴構成は、第1〜第13特徴構成の胸部保護パッドの製造方法に係り、その特徴は、
前記外層の形成樹脂材を保形性のある湾曲板状に形成し、この湾曲板状の外層形成樹脂材に前記緩衝層の平板状形成樹脂材を接着するとともに、その緩衝層の平板状形成樹脂材に前記内層の平板状形成樹脂材を接着することで、それら緩衝層及び内層の平板状形成樹脂材を前記湾曲板状の外層形成樹脂材に沿わせる状態に弾性的に湾曲させて、パッド全体を保形性のある湾曲形状に形成する点にある。
【0047】
つまり、外層と緩衝層と内層との三層を積層した状態でパッドの全体を保形性のある湾曲形状に加工することは、三層の積層でパッドの厚みが大きくなっていることから中々難しい加工になるが、上記第14特徴構成によれば、保形性のある湾曲板状に形成した外層形成樹脂との接着により平板状の緩衝層形成樹脂材及び内層形成樹脂材を弾性的に湾曲させてパッド全体を保形性のある湾曲形状にするから、保形性のある湾曲形状に形成しておくのは外層形成樹脂材だけですみ、これにより、湾曲形状パッドの製造を容易にすることができる。
【0048】
なお、第14特徴構成の実施において、外層形成樹脂材の湾曲形状(略言すれば、製造後のパッド全体としての湾曲形状)は、円筒面状の湾曲形状や球面状の湾曲形状など、どのような湾曲形状であってもよい。
【0049】
〔15〕本発明の第15特徴構成は、第14特徴構成の胸部保護パッド製造方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記外層の形成樹脂材を加熱状態で反身体側からプレスし、その後、冷却硬化させることにより、前記外層の形成樹脂材を保形性のある前記湾曲板状に形成すると同時に、前記外層の形成樹脂材における反身体側の表層部分をその部分に含まれる気泡が復元不能につぶされた状態の表皮状構造にする点にある。
【0050】
つまり、この第15特徴構成によれば、前記第14特徴構成の製造方法をもって形成する胸部保護パッドを、前記した第8特徴構成の表皮状構造を有するパッドとするのに、外層形成樹脂材を保形性のある湾曲板状に形成するのと同時に、その表皮状構造も併せて形成することができ、これにより、外層形成樹脂材を湾曲板状に形成することと表皮状構造を形成することとを別工程で行うのに比べ、胸部保護パッドの製造を容易にして製造コストを低減することができる。
【0051】
〔16〕本発明の第16特徴構成は、第1〜第13特徴構成の胸部保護パッドの製造方法に係り、その特徴は、
前記内層の形成樹脂材を保形性のある湾曲板状に形成し、この湾曲板状の内層形成樹脂材に前記緩衝層の平板状形成樹脂材を接着するとともに、その緩衝層の平板状形成樹脂材に前記外層の平板状形成樹脂材を接着することで、それら緩衝層及び外層の平板状形成樹脂材を前記湾曲板状の内層形成樹脂材に沿わせる状態に弾性的に湾曲させて、パッド全体を保形性のある湾曲形状に形成する点にある。
【0052】
つまり、外層と緩衝層と内層との三層を積層した状態でパッドの全体を保形性のある湾曲形状に加工することは、三層の積層でパッドの厚みが大きくなっていることから中々難しい加工になるが、上記第16特徴構成によれば、保形性のある湾曲板状に形成した内層形成樹脂との接着により平板状の緩衝層形成樹脂材及び外層形成樹脂材を弾性的に湾曲させてパッド全体を保形性のある湾曲形状にするから、保形性のある湾曲形状に形成しておくのは内層形成樹脂材だけですみ、これにより、湾曲形状パッドの製造を容易にすることができる。
【0053】
なお、第16特徴構成の実施において、内層形成樹脂材の湾曲形状(略言すれば、製造後のパッド全体としての湾曲形状)は、円筒面状の湾曲形状や球面状の湾曲形状など、どのような湾曲形状であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
図1〜図3は体表胸部における心臓対応部位を覆う状態で装着する円盤状の胸部保護パッド1を示し、この保護パッド1は、図6に示す如く、練習着等の上から着衣するシャツ状の装着用ウエア2を用いて体表胸部に装着する。
【0055】
詳しくは、装着用ウエア2の胸部内側にはネット状の生地で形成したポケット3を設けてあり、このポケット3に保護パッド1を収容した状態で装着用ウエア2を着衣することで、体表胸部の心臓対応部位を覆う状態に保護パッド1を装着する。
【0056】
この保護パッド1は、図4,図5に示す如く装着状態において反身体側に位置させる外層4と、この外層4の身体側に積層した緩衝層5と、この緩衝層5の身体側に積層した内層6とからなる三層の積層構造にしてあり、各層4,5,6は衝撃吸収性を有する軟質の発泡樹脂材a,b,cで形成してある。
【0057】
具体的には、外層4及び内層6の形成樹脂材a,cとしては軟質の低反発発泡ポリエチレンを用い、緩衝層5の形成樹脂材bとしては外層4及び内層6の形成樹脂材a,cよりも軟質性のより高い低反発発泡ウレタンを用いてある。
【0058】
また、外層4及び内層6の形成樹脂材a,cは、緩衝層5の形成樹脂材bに比べ感温性の低い樹脂材にしてあり、これにより、外層形成樹脂材a及び内層形成樹脂材cにより緩衝層形成樹脂材bを外部からの熱や体熱から熱的に保護するようにして、高い衝撃吸収効果を得る上で最も重要な緩衝層形成樹脂材bの温度変化による軟質性の変化を防止する。
【0059】
一方、外層4及び内層6の形成樹脂材a,cには、いずれも緩衝層5の形成樹脂材bよりも軟質性に劣る元々は同じ樹脂材を用いるが、外層4の形成樹脂材aにおける反身体側の表層部分は、その部分に含まれる気泡を復元不能に潰した状態の表皮状構造4sにしてあり、この表皮状構造4sの形成により、結果として、外層4の形成樹脂材aは平均的に内層6の形成樹脂材cに比べ高いJIC−C硬度を備えるようにしてある。
【0060】
具体的には、本例の保護パッド1において外層4の形成樹脂材aはJIS−C硬度を30〜55にし、内層6の形成樹脂材cはJIS−C硬度を10〜30にし、緩衝層5の形成樹脂材bは内層6の形成樹脂材cよりもさらに低いJIS−C硬度にしてある。
【0061】
すなわち、上記の如く外層4、緩衝層5、内層6の夫々を衝撃吸収性のある軟質の発泡樹脂材で形成することにおいて、外層4の形成樹脂材aを緩衝層5の形成樹脂材bよりも相対的に軟質性に劣る樹脂材にすることにより、反身体側から外層4に加えられた衝撃力が外層形成樹脂材aの相対的に低い軟質性により面積的に広く分散された状態で緩衝層5に及ぶようにし、これにより局部的な衝撃力を直接的に高軟質の発泡樹脂材層で受ける止める構造に比べ、緩衝層5を形成する高軟質の発泡樹脂材bに伝わる単位面積当りの衝撃力を小さくするとともに、その高軟質の緩衝層形成樹脂材bが有する高い衝撃吸収性を面積的に広く有効に発揮させる。
【0062】
また、内層6の形成樹脂材cを外層4の形成樹脂材aと同様、緩衝層5の形成樹脂材bよりも相対的に軟質性に劣る樹脂材にすることで、衝撃力に対する受け止め反力についても内層形成樹脂材cの相対的に低い軟質性により面積的に広く分散させた状態で内層6から緩衝層5の側へ及ぼすようにして、この内層形成樹脂材cによる反力分散と先の外層形成樹脂材aによる衝撃力分散とにより緩衝層5を表裏から確実に広く挟圧する形態にし、これにより、緩衝層5を形成する高軟質の発泡樹脂材bが有する高い衝撃吸収性を面積的に広く有効に発揮させることを一層確実にする。
【0063】
そしてまた、仮に外層4に加わる衝撃力が外層4では十分に分散し切れないものであって、その為、緩衝層5を形成する高軟質の発泡樹脂材bがある程度局部的に凹み弾性変形して衝撃力が未だ十分に分散及び吸収されないままで内層6に至ったとしても、その分散吸収が未だ不十分な衝撃力を内層形成樹脂材cの相対的に低い軟質性により再び面積的に広く分散させるようにし、これにより、身体側に及ぶ単位面積当りの衝撃力をさらに小さくする。
【0064】
しかも、内層6の形成樹脂材cを外層4の形成樹脂材aよりも軟質の樹脂材にすることにより、その内層形成樹脂材cの軟質性を緩衝層形成樹脂材bの軟質性と外層形成樹脂材aの軟質性との間の範囲において適当に選定することで、内層形成樹脂材cにより衝撃力を再分散させる機能と体表胸部との接触性を良好にして分散衝撃力の再集中を抑止する機能との適切な両立点を得るとともに、緩衝層5から身体側に及ぶ残余の衝撃力に対する吸収性をより高くし、これらのことにより、衝撃に対する保護性能の一層確実かつ効果的な向上を図ってある。
【0065】
外層4及び内層6の形成樹脂材a,cは緩衝層5の形成樹脂材bよりも防水性の高い樹脂材にし、また、外層形成樹脂材aについては前記の表皮状構造4sを形成することによりさらに防水性の高いものにし、これにより、外層形成樹脂材a及び内層形成樹脂材cの防水性により緩衝層形成樹脂材bを雨や発汗などによる水分から保護して、緩衝層形成樹脂材bの水分吸収による性状変化や劣化促進を防止する。
【0066】
パッド表面1a(パッド1の反身体側の面)とする外層4の反身体側の面は前記した表皮状構造4sの形成により、パッド背面1b(パッド1の身体側の面)とする内層6の身体側の面よりも滑性の高い面にしてあり、また、この保護パッド1は、装着状態において上下方向に延びる尾根部Lがパッド表面視でパッド中心Oを通る状態にパッド表面1aに形成され、かつ、この尾根部Lに対応する谷部L′がパッド表面視でパッド中心Oを通る状態にパッド背面1bに形成される湾曲形状にしてある。
【0067】
つまり、ボールなどの衝突物がパッド表面1aへの衝突時に上記滑性によりパッド表面1aに沿う方向に多少でも滑り動作するようにして、また、凸状湾曲面であるパッド表面1aによる案内により尾根部Lから下る方向に多少でもズレ動作又は滑り動作するようにして、それら滑り動作やズレ動作によりパッド表面1aへの衝突力が減じらるようにしてある。
【0068】
そしてまた、パッド背面1bを上記の如き谷部L′が形成される凹状湾曲面にするとともに、そのパッド背面1bをパッド表面1aよりも滑性の低い面とすることにより、体表胸部上での保護パッド1の滑り動作を抑止して、体表胸部の心臓対応部位を覆う適切位置に保護パッド1が保持され易くしてある。
【0069】
この保護パッド1については、装着状態において上下方向に延びる仮想直線でパッド表面視において幾何学的な中心であるパッド中心Oから左方に外れて位置する仮想直線Pを身体左右中心対応のパッド上仮想直線とし、そして、このパッド上仮想直線Pの位置をパッド使用者に認知させる指標をパッド1に設けてある。
【0070】
具体的には、パッド表面1aからパッド背面1bにわたって貫通する複数の通気孔7をパッド仮想直線Pの近傍に集中配置して形成するとともに、パッド周縁部のうち装着状態においてパッド上縁部となる部分には、その部分におけるパッド上仮想直線Pの通過点を示す三角形の指標8aを、また、装着状態においてパッド下縁部となる部分には、その部分におけるパッド上仮想直線Pの通過点を示す長方形の指標8bを夫々、表皮状構造4sに窪みを付ける形態で形成してある。
【0071】
さらに、パッド周縁部のうち装着状態においてパッド左右縁部となる部分には、パッド上仮想直線Pに対する直交仮想直線の通過点を示す長方形の指標8bを同じく表皮状構造4sに窪みを付ける形態で形成してある。
【0072】
すなわち、パッド1の装着にあたり、これら通気孔7の集中配置群、及び、周縁4箇所の指標8a,8bにより使用者がパッド1の上下方向、及び、パッド上仮想直線Pの位置を容易に認知できるようにしてあり、そして、このように位置を認知し得るパッド上仮想直線Pを身体の左右中心(略言すれば鳩尾)に対応位置させるようにパッド1を装着することで、身体左右中心よりも向かって若干右側に位置する体表胸部の心臓対応部位を適切に覆う状態にパッド1を装着することを一層容易かつ正確に行えるようにしてある。
【0073】
この保護パッド1の製法については(図7参照)、先ず、平板状の外層形成樹脂材aを加熱した状態で反身体側からプレスし、その後、冷却硬化させることにより、その外層形成樹脂材aを保形性のある湾曲板状に形成すると同時に前記の表皮状構造4sを形成し、これにより、表皮状構造4s及び前記尾根部Lを反身体側の面に備える湾曲板状の外層4を形成する。
【0074】
また、この加熱状態でのプレス、及び、それに続く冷却硬化により、外層4の反身体側の面を周縁部が面取りされて表皮状構造4sの周縁部が外層4の背面に至る状態の丸みを帯びた面にするとともに、表皮状構造4sにパッド表面1aの意匠となる凹凸模様9及び前記指標8a,8bを同時に形成する。
【0075】
次に、この湾曲板状の外層4の背面に平板状の緩衝層形成樹脂材bを接着剤により接着するとともに、その緩衝層形成樹脂材bの背面に平板状の内層形成樹脂材cを接着剤により接着し、これら緩衝層形成樹脂材b及び内層形成樹脂材cの接着の後、その接着三層積層体を打ち抜き加工により円盤状にするとともにパッド表面1aからパッド背面1bに至る通気孔7を形成して、保護パッド1を形成する。
【0076】
そして、この製法では、上記の如く保形性のある湾曲板状にした外層形成樹脂材aに対して平板状の緩衝層形成樹脂材b及び内層形成樹脂材cを接着することにより、それら平板状の緩衝層形成樹脂材b及び内層形成樹脂材cを湾曲板状の外層形成樹脂材aに沿わせる状態に弾性的に湾曲させ、これにより、パッド全体を保形性のある湾曲形状にして、前記尾根部Lをパッド表面1aに有しかつ前記谷部L′をパッド背面1bに有する保護パッド1を形成する。
【0077】
つまり、この製法により湾曲板状パッド1の製作を容易にするとともに、製造後のパッド1において、外層形成樹脂材aには接着前の単独の湾曲板形状に戻ろうとする残留応力が残り、また、緩衝層形成樹脂材b及び内層形成樹脂材cには接着前の平板状に戻ろうする残留応力が残るようにし、これにより、パッド周縁部の側からの各層4,5,6どうしの分離(剥離)を効果的に防止してパッドの耐久性を高める。
【0078】
なお、さらに具体的には、図4に示す如く、この胸部保護パッド1は装着状態において上下方向となる方向についても若干反身体側へ凸状に湾曲させた形状にしてある。
【0079】
この保護パッド1における各層4,5,6の厚みは夫々、2mm〜20mmとするのが望ましく、さらには10mm〜15mmとするのが一層望ましいが、上記製法による場合、外層形成樹脂材aを加熱状態でプレスして、その後に冷却硬化させる工程を経ることで外層形成樹脂材aの厚み(即ち、外層4の厚み)が減少することから、加熱状態でのプレスを行う前の外層形成樹脂材aの厚みは、その減少分を見込んだ厚みとし、完成状態において外層4の厚みが2mm〜20mmになるようにする。
【0080】
本例の胸部保護パッド1の好適な諸元例としては次の例を挙げることができる。
外層4(低反発発泡ポリエチレン)
厚み 15mm(加熱プレス工程の前は22mm)
JIS−C硬度 48(加熱プレス工程後)
緩衝層5(低反発発泡ウレタン)
厚み 12mm
JIS−C硬度 軟質過ぎて測定不能なほど軟質
内層6(低反発発泡ポリエチレン)
厚み 12mm
JIS−C硬度 26
【0081】
なお、この諸元では、内層6と緩衝層5の厚みを同じにする例を示したが、パッド全体の一層の薄型化を図る場合には、内層6の厚みを緩衝層5よりも小さい例えば10mm以下や5mm以下にするのが望ましい。
【0082】
〔別実施形態〕
次に本発明の別の実施形態を列記する。
前述の実施形態では、胸部保護パッド1を外層4、緩衝層5、内層6の三層のみからなる積層構造にしたが、それら三層の衝撃吸収面と衝撃分散面とでの前述の如き相互機能を維持できる範囲で、外層4の反身体側や外層4と緩衝層5との間、あるいは、緩衝層5と内層6との間や内層6の身体側に種々の目的の膜や層を付加してもよく、例えば、樹脂膜、金属メッシュ、繊維層などのような伸縮性の無い膜や薄層、あるいは、金属薄板や樹脂薄板などの硬質の薄板層などを付加的に設けて、衝撃力の分散効果を一層高めるなどしてもよい。
【0083】
本発明による胸部保護パッド1は、装着用ウエア2のポケット3に収容した状態で装着用ウエア2の着衣により体表胸部に装着する前述の如き装着形式に限らず、ベルト掛けにより体表胸部に装着する形式にしてもよく、また、装着用ウエア2を用いた装着とベルト掛けによる装着を随時選択できる構成にしてもよい。
【0084】
外層4、緩衝層5、内層6を形成する軟質の発泡樹脂材a,b,cは低反発発泡ポリエチレンや低反発発泡ウレタンに限らず、衝撃吸収面と衝撃分散面とにおける前述の如き三層相互機能を発揮できるものであれば種々の軟質発泡樹脂材を採用でき、また、外層4、緩衝層5、内層6の各層そのものを、発泡樹脂材質のことなる複数層の積層構造で形成してもよい。
【0085】
本発明による胸部保護パッド1は前述した製法に限らず、その他の製法により製作してもよく、例えば、内層6の形成樹脂材cを保形性のある湾曲板状に形成し、この湾曲板状の内層形成樹脂材cに緩衝層5の平板状形成樹脂材bを接着するとともに、その緩衝層5の平板状形成樹脂材bに外層4の平板状形成樹脂材aを接着することで、それら緩衝層5及び外層4の平板状形成樹脂材b,aを湾曲板状の内層形成樹脂材cに沿わせる状態に弾性的に湾曲させて、パッド全体を保形性のある湾曲形状に形成するなどしてよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明による胸部保護パッドは、野球、ソフトボール、サッカーなどのスポーツや種々の作業等で胸部の保護を要する場合に使用でき、特に心臓震盪の予防に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】胸部保護パッドの斜視図
【図2】胸部保護パッドの表面視図
【図3】胸部保護パッドの側面図
【図4】図2におけるA−A線断面図
【図5】図2におけるB−B線断面図
【図6】胸部保護パッドの装着使用状態を示す図
【図7】胸部保護パッドの製造工程を示すフローチャート
【符号の説明】
【0088】
1 胸部保護パッド
4 外層
5 緩衝層
6 内層
a 外層形成樹脂材
b 緩衝層形成樹脂材
c 内層形成樹脂材
1a パッド表面
1b パッド背面
4s 表皮状構造
O パッド中心
P パッド上仮想直線
8a,8b 指標
L 尾根部
L′ 谷部
7 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体表胸部における心臓対応部位を覆う状態で装着する胸部保護パッドであって、
装着状態において反身体側に位置させる外層と、その外層の身体側に積層する緩衝層と、その緩衝層の身体側に積層する内層との夫々を、衝撃吸収性のある軟質の発泡樹脂材で形成し、前記外層及び前記内層の形成樹脂材は前記緩衝層の形成樹脂材よりも相対的に軟質性に劣る樹脂材にしてある胸部保護パッド。
【請求項2】
前記外層及び前記内層の形成樹脂材は、前記緩衝層の形成樹脂材よりも感温性の低い樹脂材にしてある請求項1記載の胸部保護パッド。
【請求項3】
前記内層の形成樹脂材は、前記外層の形成樹脂材よりも軟質の樹脂材にしてある請求項1又は2記載の胸部保護パッド。
【請求項4】
前記外層の形成樹脂材はJIS−C硬度を30〜55にし、前記内層の形成樹脂材はJIS−C硬度を10〜30にし、前記緩衝層の形成樹脂材は前記内層の形成樹脂材よりもさらに低いJIS−C硬度にしてある請求項3記載の胸部保護パッド。
【請求項5】
前記外層、前記緩衝層、前記内層の夫々を2mm〜20mmの厚さにしてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の胸部保護パッド。
【請求項6】
前記外層及び前記内層の形成樹脂材は、前記緩衝層の形成樹脂材よりも防水性の高い樹脂材にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の胸部保護パッド。
【請求項7】
パッド表面は滑性の高い面にし、パッド背面は滑性の低い面にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の胸部保護パッド。
【請求項8】
前記外層の形成樹脂材における反身体側の表層部分は、その部分に含まれる気泡を復元不能に潰した状態の表皮状構造にしてある請求項1〜7のいずれか1項に記載の胸部保護パッド。
【請求項9】
装着状態において上下方向に延びる仮想直線でパッド表面視においてパッド中心から左方に外れて位置する仮想直線を身体左右中心対応のパッド上仮想直線とし、このパッド上仮想直線の位置をパッド使用者に認知させる指標を設けてある請求項1〜8のいずれか1項に記載の胸部保護パッド。
【請求項10】
パッド表面からパッド背面にわたって貫通する複数の通気孔を前記パッド上仮想直線の近傍に集中的に形成し、それら集中配置の通気孔を前記指標にしてある請求項9記載の胸部保護パッド。
【請求項11】
目視可能にした前記指標をパッド周縁部のうち装着状態においてパッド上縁部となる部分に設けてある請求項9又は10記載の胸部保護パッド。
【請求項12】
パッド表面は、装着状態において上下方向に延びる尾根部が形成された凸状湾曲面にしてある請求項1〜11のいずれか1項に記載の胸部保護パッド。
【請求項13】
パッド背面は、装着状態において上下方向に延びる谷部が形成された凹状湾曲面にしてある請求項1〜12のいずれか1項に記載の胸部保護パッド。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載した胸部保護パッドの製造方法であって、前記外層の形成樹脂材を保形性のある湾曲板状に形成し、この湾曲板状の外層形成樹脂材に前記緩衝層の平板状形成樹脂材を接着するとともに、その緩衝層の平板状形成樹脂材に前記内層の平板状形成樹脂材を接着することで、それら緩衝層及び内層の平板状形成樹脂材を前記湾曲板状の外層形成樹脂材に沿わせる状態に弾性的に湾曲させて、パッド全体を保形性のある湾曲形状に形成する胸部保護パッドの製造方法。
【請求項15】
前記外層の形成樹脂材を加熱状態で反身体側からプレスし、その後、冷却硬化させることにより、前記外層の形成樹脂材を保形性のある前記湾曲板状に形成すると同時に、前記外層の形成樹脂材における反身体側の表層部分をその部分に含まれる気泡が復元不能につぶされた状態の表皮状構造にする請求項14記載の胸部保護パッドの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載した胸部保護パッドの製造方法であって、前記内層の形成樹脂材を保形性のある湾曲板状に形成し、この湾曲板状の内層形成樹脂材に前記緩衝層の平板状形成樹脂材を接着するとともに、その緩衝層の平板状形成樹脂材に前記外層の平板状形成樹脂材を接着することで、それら緩衝層及び外層の平板状形成樹脂材を前記湾曲板状の内層形成樹脂材に沿わせる状態に弾性的に湾曲させて、パッド全体を保形性のある湾曲形状に形成する胸部保護パッドの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−24289(P2009−24289A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189963(P2007−189963)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000108258)ゼット株式会社 (36)
【Fターム(参考)】