説明

胸骨縫合用ワイヤ

【課題】 胸骨外周に沿って周回可能で、長手方向に沿って働く伸縮力でガタツキや緩み
などを生じさせずに、安定した締結力で締結固定できる胸骨縫合用ワイヤを提供する。
【解決手段】切開した胸骨5を手術後に閉鎖する際に用いる、胸骨縫合用ワイヤ1であって、単線のフィラメントを編組して紐状としたワイヤ本体2は、長手方向に沿わず斜め方向にフィラメントが走るように編組され、かつ、ワイヤ本体2の少なくとも一部分には、ワイヤ本体2を拡幅させた状態でフィラメントの表面にコーティング層を形成して拡幅状態を弾性維持するようになされた弾性拡幅部2aが形成され、縫合時にフィラメントが長手方向に沿う直線状に引っ張られることにより、ワイヤ本体2が伸びるとともに、弾性拡幅部2aも直線状に弾性変形し、この弾性変形した弾性拡幅部2aの反発力により、ワイヤ本体2に伸縮性が付与されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術後の胸骨閉鎖縫合時に使用する胸骨縫合用のワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、胸部の外科手術を行う場合は、胸部を胸骨の中央で切断して開き、手術後に切断した胸骨を閉鎖し、ワイヤで縫合することが行われている。
【0003】
この際に使用するワイヤとしては、単線のステンレス鋼製のものを使用することが行われている。
【0004】
また、テープ状の平織り形状としたものを使用することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
これらのワイヤは、胸骨外周に沿って周回させた後、端部間を締結することで胸骨に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−79632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の平織りワイヤは、胸骨外周に沿って周回させることができるように、可塑変形する単線のフィラメントをテープ状に平織りしたものであるため、胸骨外周に沿って締結固定することはできる。しかし、ワイヤ自体に伸縮性が無いので、締結後にガタツキや緩みを生じると閉鎖した鎖骨が開いてしまうことになる。単線のワイヤの場合も同じである。
【0008】
また、胸部は、くしゃみや咳など、瞬発的に力が加わることがあり、縫合部に負荷が加わり易いので、上記従来のワイヤの場合、ガタツキや緩みを生じ易い。一度ガタツキや緩みを生じると、その後、胸骨に対して締結力を取り戻すことはできないこととなる。また、ガタツキや緩みを生じなかったとしても、上記したような瞬発的な力が加わると、胸骨への負担が大きくなり、胸骨破裂を引き起こしてしまうことが懸念される。特に、単線ワイヤの場合、線接触によって胸骨を締結しているので、接触部分に応力が集中し、胸骨破裂の危険性は、面接触する平織りワイヤよりも増すこととなる。平織りワイヤの場合も、単に応力が分散されるだけで、ワイヤ自体に伸縮性は無いので、胸骨破裂の危険性はある。
【0009】
さらに、上記従来のワイヤの場合、執刀医の感覚や手術の状況によって締結具合にムラを生じ易くなる。例えば、最初に締結した箇所よりも後に締結した箇所の方が締結力が強くなると、その結果、最初に締結した箇所は緩み、ガタツキを生じてしまうといった不都合を生じる。
【0010】
さらに、上記従来のワイヤの場合、締結具合の調整が出来ないので、患者によっては手術後、痛みを感じることもあり、均一で良好な締結力を得ることが難しい。
【0011】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、胸骨外周に沿って周回させることができ、しかも長手方向に沿って伸縮力を働かせてガタツキや緩みなどを生じることなく、安定した締結力で締結固定することができる胸骨縫合用ワイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の胸骨縫合用ワイヤは、手術時に切断して開いた胸骨を、手術後に閉鎖する際に用いる、胸骨縫合用のワイヤであって、単線のフィラメントを編組して紐状としたワイヤ本体を具備し、このワイヤ本体は、当該ワイヤ本体の長手方向に沿わず斜め方向にフィラメントが走るように編組され、かつ、ワイヤ本体の少なくとも一部分には、ワイヤ本体を拡幅させた状態でフィラメントの表面にコーティング層を形成して拡幅状態を弾性維持するようになされた弾性拡幅部が形成され、縫合時に斜め方向に走ったフィラメントが長手方向に沿う直線状に引っ張られることにより、ワイヤ本体が伸びるとともに、弾性拡幅部も直線状に弾性変形し、この弾性変形した弾性拡幅部の反発力により、ワイヤ本体に伸縮性が付与されたものである。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明の胸骨縫合用ワイヤは、手術時に切断して開いた胸骨を、手術後に閉鎖する際に用いる、胸骨縫合用のワイヤであって、単線のフィラメントを編組して紐状としたワイヤ本体を具備し、このワイヤ本体は、当該ワイヤ本体の長手方向に沿わず斜め方向にフィラメントが走るように編組され、かつ、ワイヤ本体の少なくとも一部分には、ワイヤ本体を拡幅させる方向に弾性維持する弾性フィラメントを加えて編組して拡幅状態を弾性維持するようになされた弾性拡幅部が形成され、縫合時に斜め方向に走ったフィラメントが長手方向に沿う直線状に引っ張られることにより、ワイヤ本体が伸びるとともに、弾性拡幅部も直線状に弾性変形し、この弾性変形した弾性拡幅部の反発力により、ワイヤ本体に伸縮性が付与されたものである。
【0014】
さらに、上記課題を解決するための本発明の胸骨縫合用ワイヤは、手術時に切断して開いた胸骨を、手術後に閉鎖する際に用いる、胸骨縫合用のワイヤであって、単線のフィラメントを編組して筒紐状としたワイヤ本体を具備し、このワイヤ本体は、当該ワイヤ本体の長手方向に沿わず斜め方向にフィラメントが走るように編組され、かつ、ワイヤ本体の少なくとも一部分には、ワイヤ本体の筒状内部にワイヤ本体を拡幅させて弾性維持する弾性体を設けて拡幅状態を弾性維持するようになされた弾性拡幅部が形成され、縫合時に斜め方向に走ったフィラメントが長手方向に沿う直線状に引っ張られることにより、ワイヤ本体が伸びるとともに、弾性拡幅部も直線状に弾性変形し、この弾性変形した弾性拡幅部の反発力により、ワイヤ本体に伸縮性が付与されたものである。
【0015】
上記胸骨縫合用ワイヤにおいて、ワイヤ本体は、耐食性金属からなるフィラメントを編組してなり、その一端に貫通刃が固定されてなるものであってもよい。
【0016】
上記胸骨縫合用ワイヤにおいて、ワイヤ本体の他端に、ワイヤ本体を挿通して締結固定する固定冶具が設けられてなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によると、縫合時に斜め方向に走ったフィラメントが長手方向に沿う直線状に引っ張られることにより、ワイヤ本体が伸びるとともに、弾性拡幅部も直線状に弾性変形し、この弾性変形した弾性拡幅部の反発力により、ワイヤ本体に伸縮性が付与されるので、ガタツキや緩みを生じることなく、胸骨への締結固定状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)本発明に係る胸骨縫合用ワイヤの全体構成の概略を示す斜視図、(b)は同図(a)のI-I線断面図、(c)は同図(a)のII-II線断面図である。
【図2】本発明に係る胸骨縫合用ワイヤのワイヤ本体の通常時と延伸時とを示す平面図である。
【図3】(a)は本発明に係る胸骨縫合用ワイヤを胸骨に締結固定した状態を示す平面図、(b)は本発明に係る本発明に係る胸骨縫合用ワイヤを胸骨に周回させて締結固定する前の状態を示す断面図、(c)は本発明に係る本発明に係る胸骨縫合用ワイヤを胸骨に周回させて締結固定した後の状態を示す断面図である。
【図4】(a)は、本発明に係る胸骨縫合用ワイヤの固定冶具の一例を示す部分拡大斜視図、(b)は同固定冶具による締結固定状態を示す断面図である。
【図5】(a)は、本発明に係る胸骨縫合用ワイヤの固定冶具の一例を示す部分拡大斜視図、(b)は同固定冶具による締結固定状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は胸骨縫合用ワイヤ1の全体構成の概略を示し、図2は同胸骨縫合用ワイヤ1のワイヤ本体2を示し、図3は同胸骨縫合用ワイヤ1の使用状態を示している。
【0021】
この胸骨縫合用ワイヤ1は、弾性拡幅部2aを有するワイヤ本体2と、ワイヤ本体2の一端側に設けられる貫通刃3と、ワイヤ本体2の他端側に設けられるバックル4とを具備して構成されている。
【0022】
ワイヤ本体2は、単線のフィラメント21を編組して筒紐状に構成されている。この編組の方法としては、編組した各フィラメント21がワイヤ本体2の長手方向に沿わず斜め方向に走るように構成されていれば特に限定されるものではない。各フィラメント21がワイヤ本体2の長手方向に沿わず斜め方向に走るように構成されていれば、一般的な編組ワイヤに採用されている各種のものが使用される。このワイヤ本体2は、筒紐状になったワイヤ本体2を二つ折りにし、かつ、編組された状態で各フィラメント21をできるだけワイヤ本体2の長手方向に沿わせた状態、すなわちワイヤ本体2を長手方向に引き伸ばして縮幅した状態で、幅2mm〜10mm、さらに好ましくは4〜8mmとなるように構成されたものが使用される。
【0023】
ワイヤ本体2を構成する各単線のフィラメント21としては、直径φ9μm〜300μm、さらに好ましくは直径φ15μm〜150μmに構成されたものが使用される。
【0024】
このワイヤ本体2を構成する各単線のフィラメント21の素材としては、ステンレス合金、ニッケルチタン合金、チタン合金などの耐食性金属からなるものが挙げられる。
【0025】
このワイヤ本体2の長さとしては、締め付けシロを残した状態で胸骨5の外周を周回することができる長さであれば特にその長さについては限定されるものではなく、例えば10cm〜100cmの長さ、さらに好ましくは15cm〜65cmの長さに構成されたものが使用される。
【0026】
このワイヤ本体2は、上記したように、筒紐状になったワイヤ本体2を二つ折りにし、かつ、編組された状態で各フィラメント21をできるだけワイヤ本体2の長手方向に沿わせた状態、すなわちワイヤ本体2を長手方向に引き伸ばして縮幅した状態から、中間部の幅を拡幅し、各フィラメント21がワイヤ本体2の長手方向に対して30度以上、好ましくは60以上、さらに好ましくは45〜60度の角度で斜め方向に走るように拡幅する。そして、この状態で、ワイヤ本体2を構成する各フィラメント21の表面を樹脂でコーティングしてコーティング層20を形成し、当該コーティング層20を構成する樹脂によって拡幅状態を弾性維持する弾性拡幅部2aが形成されている。
【0027】
なお、コーティング層20は、ワイヤ本体2を樹脂を被覆するための液浴に浸漬処理することによってコーティングするものであってもよいし、フローコートするものであってもよい。コーィング層20は、ワイヤ本体2に後述する貫通刃3およびバックル4を溶接固定した後、形成される。ただし、貫通刃3やバックル4が必要無い場合は、ワイヤ本体2の構成後、形成される。
【0028】
この弾性拡幅部2aは、ワイヤ本体2を引っ張ることによって長手方向に対して斜め方向に走ったフィラメント21が、長手方向に沿う直線状に引っ張られる。それに伴ってワイヤ本体2が伸びるとともに、弾性拡幅部2aも縮幅方向に弾性変形しようとするが、拡幅状態でコーティング層20を形成しているので、縮幅方向に弾性変形させられると拡幅方向に反発力を生じることとなり、これによってワイヤ本体2は、引っ張って伸ばすことができる延伸力が得られるとともに、この伸ばした際に縮む方向に収縮力が付与されることとなる。
【0029】
なお、本実施の形態では、ワイヤ本体2を構成する各フィラメント21の表面を樹脂でコーティングしてコーティング層20を形成して収縮力を得ているが、特にこのようなものに限定されるものではなく、例えば、ワイヤ本体2の筒状内に弾性変形可能な弾性体(図示省略)を挿入し、この弾性体(図示省略)の反発力によって収縮力を得るものであってもよい。この弾性体は、上記したコーティング時にコーティング剤をワイヤ本体2の筒状内に充填硬化させて形成するものであってもよいし、既に形成された弾性体を挿入して形成するものであってもよい。また、ワイヤ本体2を編組するフィラメント21として、当該弾性フィラメント21の反発力で収縮力を得るものであってもよい。すなわち、フィラメント21は、伸線時にダイスを通過させるため、加工硬化が起き抗張力が高まり、弾性も高くなる。したがって、フィラメント21の素材の形成元素の含有率の差異による抗張力、念回値、トルク伝導特性の変異に従って、熱処理、ひねり熱処理、加張力熱処理を後加工することで、所望の弾性を有するフィラメント21を形成し、当該フィラメント21によって収縮力を得るものであってもよい。また、上記したコーティング層20、弾性体(図示省略)、弾性フィラメント21から選ばれる少なくとも一つ以上を組み合わせて収縮力を得るものであってもよい。
【0030】
この弾性拡幅部2aを構成する場所としては特にワイヤ本体2の中間部であれば、特に限定されるものではなく、ワイヤ本体2の両端部を除く他の全ての中間部が弾性拡幅部2aであってもよいし、中間部の極一部分が弾性拡幅部2aであってもよい。ただし、ワイヤ本体2の収縮力は、この弾性拡幅部2aによって得られるので、弾性拡幅部2aが短すぎると十分な弾性が得られないので、少なくともワイヤ本体2の延伸前の長さを100%として、110〜150%、さらに好ましくは115〜135%の長さに延伸できる程度の延伸力(図2に示す引張前後のワイヤ本体の長さの差T)と、これに反発して元の長さに戻ろうとする収縮力とが得られる程度の長さの弾性収縮部2aを形成することが好ましい。また、ワイヤ本体2の中間部といっても、貫通刃3が設けられるワイヤ本体2の一端側は、縫合後に切断されるので、弾性拡幅部2aとしては、ワイヤ本体2の他端側寄りに設けておくことが好ましい。
【0031】
このワイヤ本体2の一端には、ワイヤ本体2を長手方向に引き伸ばして最小幅に縮幅した状態で筒紐状となった端部に、先端が針状となった貫通刃3の基端部が挿入され、溶接固定される。
【0032】
この貫通刃3は、先端側が鋭利に形成された刃31が形成され、かつ若干湾曲する形状となされており、胸骨周囲に沿って人体に突き刺してワイヤ本体2を周回させるための場所を切開することができるようになさている。
【0033】
同様に、このワイヤ本体2の他端には、ワイヤ本体2を長手方向に引き伸ばして最小幅に縮幅し、かつ二つ折りの平板状にした状態で、当該ワイヤ本体2を締結するためのバックル4が溶接固定される。
【0034】
このバックル4は、平板状に形成されており、一端がワイヤ本体2に溶接固定され、他端には、ワイヤ本体2が挿通可能な二つの長孔41、42が設けられている。それぞれの長孔41、42にワイヤ本体2に噛合するノコギリ刃状の返し41a、42aが設けられている。このバックル4は、異物感を生じないようにワイヤ本体2と溶接固定した状態で、厚さ2mm以下となるように構成されたものを使用することが好ましい。
【0035】
次に、このようにして構成される胸骨縫合用ワイヤ1の使用方法について説明する。
【0036】
まず、胸部を胸骨5の中央で切断して開き、胸部の外科手術を行った後、切断した胸骨5を閉鎖した状態に仮閉じする。
【0037】
次に、胸骨縫合用ワイヤ1の貫通刃3を肋骨51間に突き刺し、胸骨5の周囲に沿うように切開し、胸骨縫合用ワイヤ1を胸骨5の周囲に周回させる。
【0038】
胸骨縫合用ワイヤ1のバックル4を胸骨5の中央に位置させ、周回させた貫通刃3側のワイヤ本体2の一端側をバックルの長孔41に挿通させる。この状態でワイヤ本体2の一端側を引っ張ると、ワイヤ本体2の弾性拡幅部2aは縮幅され、その分ワイヤ本体2が伸びるとともに、ワイヤ本体2によって胸骨5が閉鎖した状態で締結される。一旦引っ張ったワイヤ本体2は、元の拡幅状態に戻ろうとして伸びた分だけ収縮力を生じるため、手を離しても長孔41の返し41aにワイヤ本体2が引っかかることとなり、締結力は維持される。
【0039】
手に弾性を感じる程よい引張力で締結した後は、ワイヤ本体2の一端側を引張方向とは反対側に折り返して他の長孔42に挿通してワイヤ本体2が緩まないようにした後、余分なワイヤ本体2を切断して締結を完了する。
【0040】
この胸骨縫合用ワイヤ1によると、ワイヤ本体2の弾性拡幅部2aが引っ張られることによって伸びるとともに縮幅し、このように弾性変形した弾性拡幅部2aの反発力により、ワイヤ本体2に収縮力が付与される。したがって、締結後は、ワイヤ本体2の収縮力によって胸骨の締結状態を維持することができる。そのため、胸骨5に締結される複数本の胸骨縫合用ワイヤ1のそれぞれのワイヤ本体2の締結力にムラがあるような場合であっても、締結力の弱いワイヤ本体2がガタつくことはなく、締結状態を維持することができる。
【0041】
また、ワイヤ本体2の収縮力によって締結しているため、くしゃみや咳など、瞬発的に力が加わることがあっても、ワイヤ本体2によって胸骨破裂を起こすこともなく、柔軟に伸縮して対応することができる。
【0042】
さらに、胸骨縫合用ワイヤ1は、ワイヤ本体2の外表面にコーティング層20を形成しているため、ワイヤ本体2のエッジで毛細血管を傷つけたりすることもなく、執刀医のストレスを軽減できるとともに、患者の負担も軽減することができる。
【0043】
なお、本実施の形態において、胸骨縫合用ワイヤ1は、ワイヤ本体2の一端に貫通刃3を溶接固定しているが、特にこのように溶接刃3を溶接固定したものに限定されるものではなく、例えば、ワイヤ本体2の一端を、最小幅に縮幅した状態で筒紐状のまま、または、二つ折りの平板状にして溶接固定して固めたものであってもよい。この場合、胸骨縫合用ワイヤ1は、別に構成された貫通刃3などに誘導紐(図示省略)を取り付けておき、当該貫通刃3でワイヤ本体2を固定する場所を切開し、胸骨の周囲に誘導紐を周回させる。そして、この誘導紐にワイヤ本体2を取り付けて引っ張ることで、周回させていた胸骨の周囲にワイヤ本体2を設けることができる。したがって、この場合、ワイヤ本体2は誘導紐などと容易に連結することができるように一端側に、誘導紐と連結するための孔などが設けられていることが好ましい。
【0044】
また、本実施の形態において、ワイヤ本体2は、筒紐状に編組したものを使用しているが、単なる帯紐状に編組したものであってもよい。
【0045】
さらに、本実施の形態において、胸骨縫合用ワイヤ1は、二つの長孔41、42を有するバックル4を用いているが、特にこのようなバックル4によってワイヤ本体2を締結するものに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、ワイヤ本体2の挿入方向Aとは逆方向で、かつ、上から下へと斜め下方向にローラ61を付勢片62によって付勢するようになされた固定冶具6であってもよい。この固定冶具6の場合、ワイヤ本体2をA方向に引っ張る際は、ワイヤ本体2が付勢片62の付勢力に抗して引っ張られるため、ローラ61が回転してワイヤ本体2が送られるが、ワイヤ本体2を引っ張ることを止めると、付勢片62の付勢力が働いてローラ61がワイヤ本体2に押し付けられ、ワイヤ本体2が止まることとなる。このローラ61の外周面にはローレット加工が施され、ワイヤ本体2が滑らないようになされている。また、図5に示すように、単純にワイヤ本体2の挿入方向Aに対する戻り止め71を設けた固定冶具7であってもよい。これら固定冶具6,7も、上記したバックル4と同様に、全体の厚みが2mm以下となるように形成されたものを用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る胸骨縫合用ワイヤは、胸骨を切断して外科手術した後の胸骨縫合時に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
1 胸骨縫合用ワイヤ
2 ワイヤ本体
2a 弾性拡幅部
20 コーティング層
21 フィラメント
3 貫通刃
4 バックル(固定冶具)
5 胸骨
6,7 固定冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術時に切断して開いた胸骨を、手術後に閉鎖する際に用いる、胸骨縫合用のワイヤであって、
単線のフィラメントを編組して紐状としたワイヤ本体を具備し、
このワイヤ本体は、当該ワイヤ本体の長手方向に沿わず斜め方向にフィラメントが走るように編組され、かつ、ワイヤ本体の少なくとも一部分には、
ワイヤ本体を拡幅させた状態でフィラメントの表面にコーティング層を形成して拡幅状態を弾性維持するようになされた弾性拡幅部が形成され、
縫合時に斜め方向に走ったフィラメントが長手方向に沿う直線状に引っ張られることにより、ワイヤ本体が伸びるとともに、弾性拡幅部も直線状に弾性変形し、この弾性変形した弾性拡幅部の反発力により、ワイヤ本体に伸縮性が付与されたことを特徴とする胸骨縫合用ワイヤ。
【請求項2】
手術時に切断して開いた胸骨を、手術後に閉鎖する際に用いる、胸骨縫合用のワイヤであって、
単線のフィラメントを編組して紐状としたワイヤ本体を具備し、
このワイヤ本体は、当該ワイヤ本体の長手方向に沿わず斜め方向にフィラメントが走るように編組され、かつ、ワイヤ本体の少なくとも一部分には、
ワイヤ本体を拡幅させる方向に弾性維持する弾性フィラメントを加えて編組して拡幅状態を弾性維持するようになされた弾性拡幅部が形成され、
縫合時に斜め方向に走ったフィラメントが長手方向に沿う直線状に引っ張られることにより、ワイヤ本体が伸びるとともに、弾性拡幅部も直線状に弾性変形し、この弾性変形した弾性拡幅部の反発力により、ワイヤ本体に伸縮性が付与されたことを特徴とする胸骨縫合用ワイヤ。
【請求項3】
手術時に切断して開いた胸骨を、手術後に閉鎖する際に用いる、胸骨縫合用のワイヤであって、
単線のフィラメントを編組して筒紐状としたワイヤ本体を具備し、
このワイヤ本体は、当該ワイヤ本体の長手方向に沿わず斜め方向にフィラメントが走るように編組され、かつ、ワイヤ本体の少なくとも一部分には、
ワイヤ本体の筒状内部にワイヤ本体を拡幅させて弾性維持する弾性体を設けて拡幅状態を弾性維持するようになされた弾性拡幅部が形成され、
縫合時に斜め方向に走ったフィラメントが長手方向に沿う直線状に引っ張られることにより、ワイヤ本体が伸びるとともに、弾性拡幅部も直線状に弾性変形し、この弾性変形した弾性拡幅部の反発力により、ワイヤ本体に伸縮性が付与されたことを特徴とする胸骨縫合用ワイヤ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一に記載の胸骨縫合用ワイヤにおいて、
ワイヤ本体は、耐食性金属からなるフィラメントを編組してなり、その一端に貫通刃が固定されてなる胸骨縫合用ワイヤ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一に記載の胸骨縫合用ワイヤにおいて、
ワイヤ本体の他端に、ワイヤ本体を挿通して締結固定する固定冶具が設けられてなる胸骨縫合用ワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232027(P2012−232027A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103737(P2011−103737)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(501390965)大阪コートロープ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】