説明

能動型オゾンスクラバ

【課題】大気内のオゾンを除去するオゾン除去デバイスに関する。
【解決手段】能動型オゾンスクラバ200は、2つの導電層206および208間に位置を定められた誘電体層202を支持するセラミック基板201を含む。導電層206は、その中にスロット210および212を含み、一方で導体208は、2つの導電細片の形をして、これらが上側電極のスロット210および212の下にある状態になっている。コロナ放電は、スロット210および212の内部で作り出される。作動されると、上側層のチャンネル内部で発生するコロナ放電は、熱を作り出すとともにオゾンとの表面化学反応を促進し、それによって従来の帯電/放電システムが発生するオゾン量を、機器が環境へ排出する前に低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、大気内のオゾンを除去するオゾン除去デバイス、オゾンを除去する方法、およびオゾン除去デバイスを含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、プリンタの静電写真印刷プロセスにおいて、光導電性部材または感光体部材は、部材の表面に感光性を与えるために、帯電デバイスによって実質的に一様な電位に帯電される。感光体部材の帯電部分は露光されて、部材上の照射領域内の電荷を選択的に消散させる。これにより、感光体部材上に静電潜像が記録される。静電潜像が感光体部材上に記録された後、現像剤部材を部材と接触させることによって、潜像が現像される。一般に、現像剤部材は、キャリア粒体に摩擦電気的に付着するトナー粒子を含む。トナー粒子は、キャリア粒体から、ドナーロールかそれとも感光体部材上の潜像かへ引き付けられる。次いでドナーロールへ引き付けられたトナーは、通例は感光体である電荷保持表面の静電潜像上に堆積される。次いでトナー粉像は、感光体部材からコピー基板へ転写される。
【0003】
トナー部材を支持部材上へ加熱によって恒久的に固定するまたは定着するために、トナー部材の構成物質が合体してべとつくようになる点まで、トナー部材の温度を高める必要がある。この動作が原因で、トナーは、支持部材の繊維もしくは小孔に、またはそうでない場合は支持部材の表面に、ある程度まで流れる。その後、トナー部材が冷却するにつれて凝固することにより、トナー部材は、支持部材に堅固に接合されるようになる。
【0004】
上述したタイプの静電写真プリンタは、相当数の液体イオン化放電デバイスを用いることができる。ピン/針金式スコロトロン、コロトロンまたはダイコロトロンを利用する従来の帯電/放電システムは、ドキュメント発生システムの内部にある他のデバイスに有害なオゾンを作り出す。例えば、フィルムベルトの最初の電荷を配置するために最初の帯電ステーションにおいて1つが存在してもよいし、さらに、ベルトを事前クリーニングするステーション、ベルトからコピーシートへ画像を転写するステーション、およびベルトからコピーシートを分離するステーションなどにおいて他のものが存在してもよい。周知のように、従来の各帯電/放電デバイスは、空気内の酸素と相互作用してオゾンを形成するイオンを生成する。さらに周知のように、オゾンは、人間に重大な健康被害を与える。さらにその上、オゾンは、機械類を劣化させる可能性があり、静電写真機器に用いられるフィルムベルトなどの感光体要素に有害なことがある。感光体の帯電および放電中に、コロナ帯電デバイスは、典型的には2.0PPMまで測定されるオゾンを発生させる。安全なオゾンレベルは、典型的には0.1PPM以下のレベルで測定される。
【0005】
この問題に対処する試みが、先行技術において相当数のやり方でなされてきた。典型的なオゾン除去デバイスは、オゾン吸着剤として活性炭または金属酸化物を含む。一般に、これらのデバイスは受動型であり、オゾン生成コンポーネントの近傍に配置されて、漂流しつつ偶然にデバイスと接触する任意のオゾンを除去する。別の手法では、オゾン吸収デバイスが換気出口に近接して配置されるが、しかしながらこの手法の場合、オゾンは、換気流内に引き込まれると移動するだけであるので、停滞空気の場所に蓄積する可能性がある。これらの各手法の場合、オゾン除去デバイスは比較的大きく、デバイスおよび機器のサイズならびにコストに、著しく付け加わることになる。例えば、米国特許第5,087,943号明細書を参照されたい。日本国特許出願公開1990−42462号公報[特開平2−42462号公報(公開日1990年2月13日)]は、オゾンを排出する排気ダクト内に熱源を設けた、オゾンの加熱分解技術を開示する。しかしながら、熱源を用いると、少なくとも100℃まで温度を高くする必要がある。すなわち、熱源の温度は、機器から用紙が印刷されている間、オゾンを大略50%分解するために120℃と150℃との間に高くする必要がある。この電力消費により、大量の電力が必要となるので、費用負担が引き起こされる。
【0006】
オゾン除去デバイスは、米国特許第7,826,763B2号明細書において示され、同明細書は、マイナスイオンを大気へ放出するイオン放出ユニットを備えた機器の内部で、ガス処理用にハニカム式ろ過器の利用を組み合わせている。イオン放出ユニットが発生するマイナスイオンによって残留オゾンガス処理成分が分解された状態にあるろ過器が、大部分のオゾンガス成分を分解して吸収する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上述したように開示されたオゾン除去デバイスを用いてさえも、従来の放電デバイスから放出されている周囲オゾンレベルを低減する、費用効率の高い方法および装置の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この必要性に答えて、オゾン減少デバイスとして固体帯電器(固体チャージャ)の使用を含む方法および装置が、以下に提供される。固体帯電器は、最小限のオゾンを出す。そして従来の帯電/放電デバイスに近接して置かれると、固体帯電器は、従来の帯電/放電デバイスから放出される周囲オゾンレベルを効果的に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本開示のオゾン減少デバイスを含む典型的なモジュール式電子写真プリンタの部分的な正面図である。
【図2】図2は、図1の印刷装置に用いられる、本開示によるオゾン減少固体デバイスの斜視図である。
【図3】図3は、図2に示される電極のイオン生成を制御する能動型オゾンスクラバの概略図である。
【図4】図4は、オゾン減少固体デバイスの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、印刷装置環境からオゾンを除去する方法を含む電子写真印刷装置の好適な実施の形態を参照することにより、本開示を説明する。
【0011】
本開示の特徴を全体に理解するために、図面を参照する。図面では、同一の要素を特定するために、類似の参照番号が全体を通して用いられている。
【0012】
次に図1を参照すると、本開示によって、オゾン放出を制御するために、従来の帯電/放電デバイスの近傍で大気を内部から加熱する改善された方法を含む、電子写真印刷システムが示される。用語「印刷システム」は、本明細書では、任意の関連周辺機器またはモジュール式デバイスを含むプリンタ装置を含み、用語「プリンタ」は、本明細書では、任意の目的用に印刷出力機能を実行する、デジタルコピー機、書籍制作機、ファックス、複合機などの任意の装置を含む。
【0013】
図1に、矢印11の方向に、帯電デバイス15、露光デバイス16、現像剤20、転写デバイス22、分離デバイス24、事前クリーニング放電デバイス18、クリーニングデバイス14、オゾン減少固体デバイス200、およびコントローラ30などの処理ステーションを通して進む感光体12を含むマーキングデバイス10が示される。コントローラ30は、帯電デバイス15によって感光体12に加えられる電荷を制御し、次いで露光デバイス16からの画像通りの光パターンが、感光体12を露光して光放電する。続いて、帯電されたトナー粒子が、感光体12の放電領域に付着するように提供され、次いでコントローラが、感光体12に加えられた電荷とは逆符号の電荷を、転写デバイス22に位置する受け入れ基板へ加える動作を制御して、画像通りのパターンを保持しながら、現像されたトナーを移動させ、分離デバイス24を経由して基板へ電荷がいくらか追加されて、感光体12から基板をはぎ取ることを容易にする。次いで残留トナーは、事前クリーニング放電デバイス18およびクリーニング部14によって感光体12からクリーニングされる。
【0014】
本開示によって、能動型オゾンスクラバまたは固体帯電デバイス200は、固体帯電デバイス200が発生する熱および表面化学作用を用いるために従来の帯電デバイスに近接して置かれて、図2〜図4に示されるように、従来の帯電デバイスから放出されるはずの周囲オゾンレベルを効果的に低減する。能動型オゾンスクラバ200は、セラミックベースを覆う導体および誘電体から成る低背厚膜機構である(図1)。デバイスの中の下側セットの導体へ適切な交流電圧を加えることによって、上側導体のチャンネル内にコロナ放電が生成される。図2の能動型オゾンスクラバ200は、従来の帯電デバイスの周りの大気を加熱するために、これらのデバイスの近傍にかつごく近接するがいずれにも接しないで位置決めされ、それによって放出ガスを再結合させてオゾンから酸素を作り出す。能動型オゾンスクラバ200は、2つの導電層206および208間に位置を定められた誘電体層202を支持するセラミック基板201を含む。導電層206は、その中にスロット210および212を含み、一方で導体208は、2つの導電細片の形をして、これらが上側電極のスロット210および212の下にある状態になっている。コロナ放電は、スロット210および212の内部で作り出される。作動されると、上側層のチャンネル内部で発生するコロナ放電は、熱を作り出すとともにオゾンとの表面化学反応を促進し、それによって従来の帯電/放電システムが発生するオゾン量を、機器が環境へ排出する前に低減する。
【0015】
図3の電気的概略図は、2ライン動作モードにおける能動型オゾンスクラバ200を描写する。各ラインは1つの電極(下側導体)を有し、すべての電極は共通の上側導体(図2)を有する。従来の帯電/放電デバイスが発生するオゾン量に依存して、電圧を加えるべき下側導体の数が決定される。下側導体の中の電圧が加わるチャンネルを増加させると(すなわちより広い表面積またはより良好な表面化学作用を表すチャンネルであって、それによってより良好なオゾン生成を促進するチャンネル)、オゾンスクラバの効率が増加する。能動型オゾンスクラバは、オゾン発生空洞内に配置されなければならないが、しかし必ずしもオゾン発生デバイスのすぐそばとは限らない。能動型オゾンスクラバの制御は、作動される下側導体の数および下側導体へ加えられる交流電圧の量を通して行われる。
【0016】
スクラバデバイスの部材を選ぶことによって、厚膜回路が、ピーク・トゥ・ピークで3000ボルトの高さの交流および直流電圧を取り扱うことが可能となる。セラミックの剛性により、オゾン生成デバイス15、18、22および24の近傍で、デバイスをその端部で支持しながらつるすことが可能となる。
【0017】
スイッチS−Aは、第1上側電極へ供給される交流高電圧を制御し、一方スイッチS−Bは、第2上側電極へ交流高電圧を供給する。コロナ放電を打ち出すために、スクラバデバイスの動作には、ピーク・トゥ・ピークで1800ボルトを上回る交流電圧が必要である。
【0018】
コロナ放電および表面化学作用は、上側電極が交流高電圧を受けると発生する。電極を囲む電場は、スロット210および212(図2)における上側導体の指状突起部間の誘電体表面上で、空気分子をイオン化させる。
【0019】
図4に示される図面などの能動型オゾンスクラバの動作レイアウトでは、オゾン発生空洞の内部にある、帯電ステーション、事前クリーニングステーションおよび画像転写ステーションにおいて、感光体の回りに位置を定められた、3つの従来の帯電/放電デバイスが示される。オゾン発生空洞の内部に位置を定められ、交流電圧制御装置へ電気的に接続された2つの能動型オゾンスクラバ200が示され、オゾンスクラバ200は、熱と、従来の帯電/放電デバイスによって生成されたオゾンに反応する表面化学作用とを発生させて酸素を生成し、それによってオゾン発生空洞からオゾンを、機器環境から抜け出る前に除去する。
【0020】
オゾン発生空洞からオゾンを、機器環境の外側の大気に達する前に除去する上述した方法および装置の利点は、機器における放出に関して制限されるデバイスを提供する点を含むが、しかし同時に、オゾン回収およびろ過器に関する要件を低減し、プリンタ内の負圧空気などを低減する点を含む。
【0021】
要約すると、低背厚膜デバイスを含む能動型オゾンスクラバが開示される。低背厚膜デバイスは、互いに層状にされてセラミック基板上に構築されたフィルムで構成される。各層は、電圧が加わるとコロナ放電を発生させるように能動素子が戦略的に配置された状態で、次の層に対して遮断される。作動されると、上側層のチャンネル内部で発生するコロナ放電は、熱を作り出すとともにオゾンとの表面化学作用をもたらし、それによって従来の帯電/放電システムが発生するオゾン量を、機器が環境へ排出する前に低減する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真デバイス内のイオン化発生空洞からオゾンを除去する方法であって、
前記イオン化発生空洞の内部に位置を定められた、少なくとも1つのイオン化発生放電デバイスを設けるステップと、
大気を加熱するオゾンスクラバであって前記少なくとも1つのイオン化発生放電デバイスにごく近接して表面化学作用をもたらす能動型オゾンスクラバを設け、それによってオゾン再結合反応を促進して、前記大気内部のオゾンを低減するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記イオン化発生空洞の内部にある電荷受容部材の周りに位置を定められた多数のイオン化発生放電デバイスを設けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
感光体を前記電荷受容部材として設けるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン化発生空洞内部の戦略的位置に、多数の能動型オゾンスクラバを位置させるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
セラミックベースの上の誘電体の両側にある、上側セットおよび下側セットの導体から成る低背構成内に、前記能動型オゾンスクラバを設けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
筺体の内部にある開口部を通して、周囲とやり取りする前記筺体を含む印刷装置であって、
前記筺体の内部に位置を定められた電荷保持部材と、
画像通りの構成で前記電荷保持部材を帯電する、少なくとも1つのイオン化発生デバイスと、
画像を処理して前記電荷保持部材上へ記録する画像デバイスと、
前記画像を現像する画像現像装置と、
コピーシート上へ前記画像を転写する転写デバイスと、
前記コピーシート上へ前記画像を定着する定着器と、
熱を作り出すとともに表面化学作用をもたらして、前記少なくとも1つのイオン化発生デバイスの周りからオゾンを、周囲に達する前に除去する厚膜固体能動型オゾンスクラバとを含む、印刷装置。
【請求項7】
前記厚膜固体能動型オゾンスクラバが、誘電体基板とサンドイッチを形成する、セラミックベース上に位置を定められた上側および下側導体を含む、請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記下側導体へ交流電圧を加えて、前記上側導体のチャンネル内部でコロナ放電を生成し、発熱するとともに表面化学作用を前記少なくとも1つのイオン化発生デバイスの周りの所定の近傍にもたらして、オゾン再結合相互作用を刺激し、それによって前記少なくとも1つのイオン化発生デバイスの周りの前記所定の近傍からオゾンを除去する、電気回路を含む、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
印刷装置の帯電/放電空洞の内部で生成されるオゾンを低減するオゾン減少方法であって、
光導電性基板を設けるステップと、
前記光導電性基板の周りに複数の帯電および放電デバイスを設けるステップと、
画像を処理して前記光導電性基板上へ記録する画像装置を設けるステップと、
前記光導電性基板上で前記画像を現像するステップと、
コピーシート上へ前記現像画像を転写するステップと、
前記コピーシート上へ前記画像を定着するステップと、
固体構成の能動型オゾンスクラバを設けて、前記イオン化発生空洞から前記複数の帯電および放電デバイスによって放出されるオゾンを除去するステップと、を含む、オゾン減少方法。
【請求項10】
上側および下側導体ならびに誘電体をセラミック基板の上に有する前記能動型オゾンスクラバを設けるステップを含む、請求項9に記載のオゾン減少方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−57937(P2013−57937A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184366(P2012−184366)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】