説明

脂取り紙ケース

【課題】複数枚の脂取り紙を補給することによって長期間にわたって繰り返し使用することができ、資源を浪費することなく装飾性等の付加価値を付与することができるようにする。
【解決手段】内部に収納された脂取り紙を1枚ずつ取り出すスリット11を前面に備えた樹脂製の中空の内箱1と、上面から内箱1が抜脱自在に挿入される樹脂製の中空の外箱3と、で構成され、内箱1と外箱2とにおける互いの対向面のそれぞれに外箱3に挿入された内箱1をスリット11が前記外箱3の外部に露出する位置と外箱3の内部に退避する位置との間に移動自在にして保持する係合部材を設け、内箱1の一部を蓋体2によって開閉自在にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数枚の脂取り紙を収納する樹脂製又は金属製の脂取り紙ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の脂取り紙を収納する脂取り紙ケース等の携帯用紙箱として、脂取り紙等の用紙を収納する収納部と蓋部とから成り、収納部には内部の用紙を取り出すためのスリット状の開口部を設けた紙箱がある。蓋部の先端の中央には凸部が設けられており、収納部の対向する部分には凸部と同じ幅の切込み部が設けられている。収納部に収められた用紙は1枚ずつ噛み合わせた状態で折り重ねられており、1枚引き抜くと次の用紙の先端が開口部から出るようになっている。このため、使用しない時には凸部を切込み部に挿入して蓋をすることにより、次の紙が汚れたり破れたりすることを防止している。
【0003】
ところが、このような紙箱では蓋をする際、蓋の凸部を切込み部に挿入するのが困難であったり、開ける際に凸部が切込み部からうまく抜けず、蓋が破れたりすることがあった。また、長期間使用している間に凸部が破れたり、切込み部が広がって凸部を挿入したにも関わらず蓋が開いてしまう等の問題があった。
【0004】
このため、出願人は、図5に示すように、収納された紙を取り出すスリットを備えた内箱131と、該内箱131を引き出し式に挿入する外箱132と、で構成され、内箱131および外箱132に内箱131を抜脱しない位置で係止する係合部133及び開口部1134を設けた携帯用紙箱を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この構成においては、内箱131が外箱132から引き出され、内箱131の前面に開設されたスリットから、内箱131内の用紙が取り出される。この際、内箱131は、内箱131および外箱132の背面に設けられた係合部133と開口部134との係合により係止されて、外箱132から抜脱することはなく、使用後には内箱131が外箱132内に再度挿入されることによりスリットが閉じられる。
【特許文献1】実開平05−075179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された構成を含む従来の携帯用紙箱では、紙製の箱に複数枚の用紙を収納しているため、用紙の取り出しに際して箱を開閉操作することによって箱が変形したり破れたりし易い問題があった。このため、収納すべき用紙を補充できるようにして1つの箱を長期間にわたって繰り返し使用することが困難で、コストの面から十分な装飾性等の付加価値を与えることができず、却って紙資源を浪費することとなる。このような問題は、化粧用具としての脂取り紙を収納し、バッグ等に入れて携帯される脂取り紙ケースでは、より大きな問題である。
【0007】
この発明の目的は、樹脂製又は金属製の外箱及び内箱からなり、外箱に対して内箱を挿脱自在に構成することで、複数枚の脂取り紙を補給することによって長期間にわたって繰り返し使用することができ、資源を浪費することなく装飾性等の付加価値を付与することができる脂取り紙ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の携帯用紙箱は、内部に収納された脂取り紙を1枚ずつ取り出すスリットを前面に備えた樹脂製又は金属製の中空の内箱と、開口した上面から前記内箱が抜脱自在に挿入される樹脂製又は金属製の中空の外箱と、で構成され、前記内箱と前記外箱とにおける互いの対向面のそれぞれに前記外箱に挿入された前記内箱を前記スリットが前記外箱の外部に露出する位置と前記外箱の内部に退避する位置との間に移動自在にして保持する係合部材を設け、前記内箱の一部を開閉自在にしたことを特徴とする。
【0009】
この構成においては、複数枚の脂取り紙が樹脂製又は金属製の内箱に収納され、この内箱はスリットが外箱の外部に露出する位置と外箱の内部に退避する位置との間に移動自在にして外箱の上面に挿入される。したがって、内箱をスリットが外箱の外部に露出する位置まで外箱の上面から引き出すと、内箱に収納された脂取り紙をスリットから1枚ずつ取り出すことができるようになる。内箱の一部は開閉自在にされており、内箱を外箱から完全に抜き取った状態で一部を開放することにより、新たな脂取り紙を内箱内に補充することができるようになる。内箱及び外箱は樹脂又は金属を素材として形成されており、内箱に新たな脂取り紙を補充して長期間にわたって繰り返し使用しても変形や損傷を生じ難い。
【0010】
また、前記係合部材は、前記外箱の内側面又は前記内箱の外側面の一方に形成された前記上下方向における所定長さの凹部と、前記外箱の内側面又は前記内箱の外側面の他方に形成された前記凹部内に移動自在に嵌入する凸部と、から構成することができる。
【0011】
この構成においては、内箱を外箱の内部に挿入した状態で、内箱の外側面又は外箱の内側面に形成された凸部が、外箱の内側面又は内箱の外側面に形成された上下方向に所定の長さを有する凹部に嵌入する。したがって、内箱は、上下方向に所定長さの範囲で移動自在にして、外箱の内部に挿入される。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成により、この発明によれば、樹脂又は金属を素材として形成された内箱の内部に複数枚の脂取り紙を繰り返し収納させ、この内箱を樹脂又は金属を素材として形成された外箱内に挿入することができる。これによって、脂取り紙が1枚ずつ取り出されるようにしたケースを変形や損傷を生じることなく長期間にわたって使用することができ、資源を浪費することなく装飾性等の付加価値を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1はこの発明の実施形態に係る脂取り紙ケース10の内箱1の構成を示す図であり、同図(A)は内箱1の正面方向の外観図、同図(B)は内箱1の初面歩行の組立図である。内箱1は、例えばABS等を素材とした樹脂成形により、偏平の略直方体の筐体形状に形成されている。一例として、内箱1の前面及び背面は厚さ約1.2mm、側面は厚さ約1.4mm、上面は厚さ約2.3mm、底面は厚さ約1.6mmにされている。
【0014】
内箱1の前面には、略全幅にわたってスリット11が形成されている。内箱1の両側面の上部には、把持部12,13が上面から連続して延出している。内箱1の両側面のそれぞれにおける少なくとも1箇所(図1に示す例では各2箇所)に、凸部14,15が突出して形成されている。また、内箱1の前面の上部には、上面から連続する段部19が下方に凸となるように湾曲して形成されている。
【0015】
内箱1の背面は、全面が着脱自在にされた蓋体2によって構成されている。内箱1から蓋体2を取り外すと、内箱1の内部が外部に開放される。蓋体2の内側面には多数のリブが形成されており、蓋体2に十分な強度が与えられている。蓋体2の両側面及び底面からは、係止片21,22,23が延出している。この係止片21,22,23は、内箱1の両側面及び底面の背面側に形成された段部16,17,18に嵌合する。係止片21,22,23と段部16,17,18との嵌合により、内箱1に対する蓋体2の装着状態が維持される。
【0016】
内箱1の背面から蓋体2を取り外して内箱1の内部を開放することにより、内箱1の内部に背面側から複数枚の脂取り紙を収納させることができる。内箱1内に収納される複数枚の脂取り紙は、1枚ずつ噛み合わせた状態で折り重ねられている。複数枚の脂取り紙を内箱1内に収納する際には、最も前面側の1枚の脂取り紙の端部をスリット11から裏箱1の前面側に露出させておく。この後、内箱1の背面に蓋体2を装着することで、複数枚の脂取り紙が内箱1の内部に保持される。
【0017】
なお、蓋体2は、内箱1の背面に一端側をヒンジとして開閉自在に軸支することもできる。
【0018】
図2は、上記脂取りケース10の外箱3の組立図である。外箱3は、例えばABS等を素材とした樹脂成形により、上面において開放した偏平の略直方体の筐体形状に形成されている。一例として、外箱3の前面は厚さ約1.5mm、背面は厚さ約1.9mm、側面及び底面は厚さ約1.3mmにされている。
【0019】
外箱3は、前面側部材3Aと背面側部材3Bとによって2分割に構成されている。前面側部材3Aは、上面側及び背面側が開放しており、上下方向について両側面の長さは前面よりも短くされている。また、前面側部材3Aの上端は、幅方向の中央部において下方に凸となるように湾曲している。この湾曲の曲率は、内箱1の前面に形成された段部19の下端部の曲率に等しい。背面側部材3Bは、上面側及び前面側が開放しており、上下方向について両側面の長さは背面よりも短くされている。
【0020】
前面側部材3A及び背面側部材3Bのそれぞれにおける両側面の上端には、突出片31,32,33,34が内側に向かって突出している。これによって、前面側部材3A及び背面側部材3Bのそれぞれにおける両側面の内側に、凹部35,36,37,38(凹部35,36は図2に現れていない。)が形成されている。凹部35,36,37,38は、内箱1に形成された凸部14,15とともにこの発明の係合部材を構成しており、上下方向について前面側部材3A及び背面側部材3Bの両側面に略等しい長さにされている。
【0021】
前面側部材3Aの両側面及び底面の背面側と、背面側部材3Bの両側面及び底面の前面側とを接着することにより、上面においてのみ開放した外箱3が構成される。
【0022】
なお、係合部材は、凸部14,15と凹部35,36,37,38との組み合わせに限るものではない。また、係合部材を形成する位置は、内箱1の両側面及び外箱3の両側面の内側に限るものではなく、内箱1と外箱3とにおいて互いに対向する面であれば、両側面以外の面に形成することもできる。
【0023】
図3は、上記脂取り紙ケース10の使用時の状態示す図である。脂取り紙ケース10の使用時には、図3(A)に示すように、図1に示した内箱1に複数枚の脂取り紙を収納した状態で、内箱1の底面側を図2に示した外箱3の上面から外箱3の内部に挿入する。このとき、内箱1の両側面に形成された凸部14,15(凸部15は図3に現れていない。)が、外箱3の両側面の上端に形成された突出片31,32,33,34(突出片32,34は図3に現れていない。)に当接し、主に内箱1の両側面が弾性変形する。
【0024】
図3(B)に示すように、内箱1を外箱3の内部に完全に挿入した状態で、内箱1の両側面に延出した把持部12,13の下端部が外箱3の両側面の上端部に当接するとともに、内箱1の前面に形成された段部19の下端部が外箱3の前面側部材3Aの上端部に当接する。このとき、把持部12P13の下端部において内側に凸となるように湾曲した部分が、外箱3の両側面の上端部における突出片31,32,33,34の上部に形成された凹部に嵌まり込む。これによって、外箱3の内部に内箱1を完全に挿入した状態で、内箱1のスリット11が外箱3の内部に退避した位置に保持される。
【0025】
各把持部12,13の延出量は、外箱3の側面の厚さと各突出片突出片31,32,33,34の突出量との和に略等しい。また、段部19の突出量は、外箱3の前面の厚さに略等しい。さらに、内箱1の上面は、外箱3の背面の厚さに略等しい量だけ背面側に突出している。これによって、内箱1を外箱3の内部に完全に挿入すると、脂取り紙ケース10は、各面において面一な偏平の直方体形状を呈する。
【0026】
脂取り紙ケース10に収納された脂取り紙を使用する際には、図3(C)に示すように、一方の手で外箱3の上面以外の部分を保持するとともに、他方の手指で内箱1の把持部12,13を外側から把持して内箱1を外箱3の上方に引き出す。内箱1が外箱3の上方に所定量だけ引き出されると、内箱1の両側面に形成された上側の凸部14,15(凸部15は、図3(C)には現れていない。)が、外箱3の両側面に形成された突出片31,32,33,34に当接する。この位置まで内箱1を外箱3の上方へ引き出すと、内箱1の前面に形成されたスリット11が外箱3の前面側部材3Aの上方に露出し、内箱1のスリット11が外箱3の外部に露出した位置に保持され、スリット11から内箱1の内部に収納されている脂取り紙を1枚ずつ抜き取ることができる。
【0027】
内箱1の前面におけるスリット11の上下方向の位置は、図3(B)に示す外箱3の内部に内箱1を完全に挿入した状態で、外箱3の前面の上端と内箱1の前面に形成されたスリット11の上端との上下方向の距離が、次に抜き出されるべき脂取り紙の一部においてスリット11から上方に露出する部分の長さよりも長くなるように設定されている。したがって、外箱3の内部に内箱1を完全に挿入した状態で、次に抜き取れるべき脂取り紙の一部が脂取り紙ケース10から外部に露出することがない。
【0028】
なお、内箱1に対する補充用の脂取り紙は、複数枚の脂取り紙を互いに一部を折り重ねて積層した状態が崩れないように包装して販売する方法、複数枚の脂取り紙を内箱1に収納して内箱1とともに販売する方法、複数枚の脂取り紙を内箱1内に装填可能な紙箱に収納した状態で販売する方法等、種々の方法が考えられる。複数枚の脂取り紙を内箱1に収納可能な紙箱にセットした状態で販売する場合には、図4に示すように、両側面51,52と底面の一部53,54とを残して少なくとも前面を取り除いた内箱5を用い、複数枚の脂取り紙を収納したスリット61を有する紙箱6を内箱5の内側に着脱自在に装着するようにしてもよい。
【0029】
以上のように、複数枚の脂取り紙を、十分な強度を有する樹脂を素材としたケース内に補充可能にして収納することにより、単一のケースを長期間にわたって繰り返し使用することができる。また、樹脂製の内箱1及び外箱3の表面には、文字や模様を印刷するだけでなく刻印、浮き彫り又は透かし彫り等の種々の方法を用いて強固に表記することができる。このため、資源を浪費することなく、脂取り紙ケース10に装飾性等の付加価値を付与することが可能になる。
【0030】
なお、内箱1及び外箱3の素材としては、ABS樹脂に限るもではなく、十分な強度を有することを条件に、他の樹脂又は金属を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施形態に係る脂取り紙ケースの内箱の構成を示す図である。
【図2】同脂取り紙ケースの外箱の構成を示す図である。
【図3】同脂取り紙ケースの使用時の状態を示す図である。
【図4】この発明の別の実施形態に係る脂取り紙ケースを示す図である。
【図5】従来の携帯用紙箱の外観図である。
【符号の説明】
【0032】
1 内箱
2 蓋体
3 外箱
10 脂取り紙ケース
11 スリット
12,13 把持部
14,15 凸部
31,32,33,34 突出片
35,36,37,38 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収納された脂取り紙を1枚ずつ取り出すスリットを前面に備えた樹脂製又は金属製の中空の内箱と、開口した上面から前記内箱が抜脱自在に挿入される樹脂製又は金属製の中空の外箱と、で構成され、前記内箱と前記外箱とにおける互いの対向面のそれぞれに前記外箱に挿入された前記内箱を前記スリットが前記外箱の外部に露出する位置と前記外箱の内部に退避する位置との間に移動自在にして保持する係合部材を設け、前記内箱の一部を開閉自在にしたことを特徴とする脂取り紙ケース。
【請求項2】
前記係合部材は、前記外箱の内側面又は前記内箱の外側面の一方に形成された前記上下方向における所定長さの凹部と、前記外箱の内側面又は前記内箱の外側面の他方に形成された前記凹部内に移動自在に嵌入する凸部と、からなることを特徴とする請求項1に記載の脂取り紙ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−312468(P2006−312468A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135179(P2005−135179)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(592061810)株式会社ニチエイ (12)
【Fターム(参考)】