説明

脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体

【課題】脂溶性ビタミンや脂溶性色素の劣化による変質を抑制し得る、安定性の高い脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体を提供すること。
【解決手段】脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素を溶解または懸濁させた油脂類を、BET法による細孔容積1〜5mL/gのケイ酸化合物粉体に含浸させてなる脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテンに代表される脂溶性ビタミンや脂溶性色素は、水やアルコールにほとんど溶解しないという性質を有している。このため、それらを使用するにあたっては、油懸濁液として、または顆粒化やマイクロカプセル化して用いることが一般的である。
特に、顆粒やマイクロカプセルは、油懸濁液に比べて安定に製品中に配合できるという利点があることから、脂溶性ビタミン等の顆粒化法またはマイクロカプセル化法について、従来、種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、天然カロテノイドをゼラチンによりマイクロカプセル化した粒状組成物が開示されている。
また、特許文献2には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などの高度不飽和脂肪酸に代表される液状油溶性物質を、シリカゲルに含有させてなる油溶性物質含有固状物が開示されている。
これらの組成物や固状物は、粉体化して錠剤等に応用されている。
【0004】
しかしながら、脂溶性ビタミンや脂溶性色素は、酸化等による劣化を受け易いという性質を有しており、この性質は、顆粒化やマイクロカプセル化した場合にも問題となる。
例えば、カロテノイドを顆粒化またはマイクロカプセル化した場合、カロテノイド本来の色が経時的に変調し、色素として利用する上で問題となることがある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−306073号公報
【特許文献2】特開平7−133491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、脂溶性ビタミンや脂溶性色素の劣化による変質を抑制し得る、安定性の高い脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、脂溶性ビタミンや脂溶性色素を油脂類に溶解または懸濁させた懸濁油を、所定の細孔容積を有するケイ酸化合物粉体に含浸させることで、これに含まれる脂溶性ビタミンや色素が劣化しにくくなり、安定性に優れた脂溶性ビタミン・色素含有粉体が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素を溶解または懸濁させた油脂類を、BET法による細孔容積1〜5mL/gのケイ酸化合物粉体に含浸させてなることを特徴とする脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体、
2. 1の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体を含む錠剤
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脂溶性ビタミンや色素の劣化による変質を抑制し得る、安定性の高い脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体は、脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素を溶解または懸濁させた油脂類を、BET法による細孔容積1〜5mL/gのケイ酸化合物粉体に含浸させてなるものである。
【0011】
本発明における脂溶性ビタミンおよび脂溶性色素は、低極性または親油性のビタミン類、色素類を意味する。
これら脂溶性ビタミンおよび色素としては、純度の高い化合物を使用することが好ましいが、これに限定されるものではなく、目的に合わせ、例えば、医薬品や食品として不適当な不純物を含有しない限り半精製や粗製のもの、または医薬品や食品として適当な油分に溶解、懸濁したものを用いることもできる。
【0012】
脂溶性ビタミンの具体例としては、レチノール、レチノイン酸、レチノイン酸エステル等のビタミンA類;エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、7−デヒドロコレステロール等のビタミンD類;トコフェロール、トコトリエノール等のビタミンE類;フィロキノン、メナキノン等のビタミンK類;CoQ9、CoQ10等の補酵素Q類などが挙げられる。
【0013】
脂溶性色素の具体例としては、カロテン、キサントフィル等のカロテノイド類;クルクミン、ジメトキシクルクミン等のクルクミノイド類;ケルセチン、ルチン等の脂溶性フラボノイド類などが挙げられる。
以上で例示した各種ビタミンや色素は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
上述した脂溶性ビタミンおよび脂溶性色素の中でも、カロテノイド類は酸化劣化による色調の変化が著しく、色素としての有用性が損なわれ易い点から、本発明の粉体へ応用したときに特に顕著な効果が得られるため、好適に用いることができる。
カロテノイド類は、天然カロテノイド、合成カロテノイドのどちらを用いてもよく、天然品と合成品とを混合して用いてもよい。
天然カロテノイドの具体例としては、パーム油カロテノイド、ドナリエラ藻カロテノイド、人参カロテノイド、アルファルファカロテノイド、とうもろこしカロテノイド、トマトカロテノイドなどが挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
合成カロテノイドとしては、合成β−カロテンなどが挙げられる。
【0015】
特に好ましいカロテンとしては、パーム油カロテンが挙げられる。
パーム油は、カロテンを含む植物油脂で、そのパーム油を産生するアブラヤシ(パーム)はヤシ(Palmae)科アブラヤシ(Elaeis)属に属し、赤道を中心に北緯17度から南緯20度の地域にあるアフリカ、東南アジアおよび中南米で生育する。
パーム油カロテンは、このパーム油中のカロテンを濃縮、精製して得られたカロテンで、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、リコペン等の複数のカロテンを含有する混合カロテンであり、本発明の粉体に使用した場合、酸化劣化に対する安定性の高い天然由来の複合カロテン粉末が得られ、食品等の用途で有用である。
【0016】
本発明では、脂溶性ビタミンや脂溶性色素は、油脂類に溶解または懸濁させて液状としたものを用いる。
ここで油脂類としては、医薬品、食品として不適当なものでなければ任意であるが、食品用とする場合を考慮すると、可食性の油脂が好ましい。
その具体例としては、ココナッツ油、オリーブ油、ごま油、落花生油、大豆油、べにばな油、菜種油、コーン油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、大豆りん脂質等の植物油類;中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成油;牛脂、豚脂、いか油、鯨油等の動物油、その誘導体である脂肪酸、脂肪酸エステル類が挙げられる。これらの油脂類は、1種単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
脂溶性ビタミンや脂溶性色素の懸濁油中における溶解または懸濁量は特に限定されるものではなく、例えば、1〜50質量%程度とすることができる。
なお、脂溶性ビタミンや脂溶性色素は、油脂類に溶解または懸濁させた懸濁油は、市販品を用いることもできる。
市販品としては、パーム油カロテン懸濁油(ハイアルファMG、ライオン(株)製)、ビタミンE含有油脂(理研Eオイル400、理研ビタミン(株)製)等が挙げられる。
【0017】
本発明では、脂溶性ビタミンや脂溶性色素を溶解または懸濁させた油脂類を含浸させるケイ酸化合物として、BET法により測定した細孔容積が1〜5mL/g、好ましくは1〜3mL/g、より好ましくは1〜2mL/gの多孔性ケイ酸化合物を用いる。
ここで、細孔容積が1mL/g未満の場合、含浸した脂溶性ビタミンや脂溶性色素類の経時安定性が低下する。一方、細孔容積が5mL/gを超える場合、粒子中の細孔部分が占める割合が大きく、粒子の強度が低下する等の不具合が生じるため、その調製は技術的な難易度が高く、生産性やコストの面で問題が生じる。
【0018】
上記ケイ酸化合物は、主成分としてケイ素酸化物を含む化合物であり、シリカや、シリカとその他の金属との複合酸化物等を用いることができる。
シリカとしては、天然物でも合成物でもよく、その形態としても、アモルファスシリカ、結晶性シリカ、シリカゲルのいずれでもよいが、粉末の安定性や、含浸したビタミンや色素の漏出抑止性などを考慮すると、シリカゲルが好ましい。
シリカゲルは、「サイシリア」、「サイロページ」(富士シリシア(株)製)、「サンスフェア」(旭硝子(株)製)等、市販品として容易に入手可能である。
【0019】
また、シリカとその他の金属との複合酸化物を構成する金属の具体例としては、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが挙げられる。複合酸化物の具体例としては、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、パイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、サポナイト、マイカ、ゼオライト、バーミキュライト、セピオライト等が挙げられ、これらは天然のケイ酸塩鉱物を用いても、合成品を用いてもよい。
【0020】
ケイ酸化合物の平均粒子径は特に限定されるものではないが、良好な物性を有する粉体とすることを考慮すると、0.1〜100μmが好ましく、0.5〜15μmがより好ましく、1〜10μmがより一層好ましい。
ここで、平均粒子径が100μmを超えると、粉体物性の悪化、すなわち、安息角の低下や崩壊性の上昇が起こり、脂溶性ビタミンや脂溶性色素との混合性が低下したり、粉体の打錠性能の低下等の成形性に不具合が生じたりする虞がある。一方、平均粒子径が0.1μm未満であると、粉塵が発生し易くなって粉体製造時の取り扱いに不具合が生じる場合がある。
なお、本発明における平均粒子径は、レーザ回折散乱法による測定値である。
【0021】
本発明の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体中における、ケイ酸化合物の含有量は特に限定されるものではないが、粉体中に10〜95質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%がより一層好ましい。ケイ酸含有量が10質量%未満であると、脂溶性ビタミンや色素を十分に保持できなくなる虞があり、95質量%を超えると、必然的に脂溶性ビタミンや色素の含有量が低下し、それらの効果が十分に発揮されなくなる虞がある。
【0022】
本発明の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体は、一般的な粉体製造法により得ることができ、その製法に特に制限はない。
脂溶性ビタミンや脂溶性色素を油脂類に懸濁または溶解させる手法としては、例えば、油脂類と脂溶性ビタミンや脂溶性色素とを適宜混合し、必要に応じて加熱したり撹拌したりして、懸濁または溶解させる手法を用いることができる。
また、得られた懸濁油をケイ酸化合物に含浸させる手法としては、例えば、懸濁油とケイ酸化合物を適宜混合して懸濁油中にケイ酸化合物を浸漬したり、ケイ酸化合物を撹拌しながら、そこに懸濁油を滴下して混合したりする手法を用いることができる。なお、含浸の際も必要に応じて加熱することができる。さらに、適宜、減圧、加圧してもよい。
懸濁油の調製時および含浸時における加熱温度は、脂溶性ビタミンや脂溶性色素の活性や色調を損なわない範囲であれば任意であるが、30〜180℃が好ましく、40〜120℃がより好ましい。180℃を超えると、脂溶性ビタミンや色素が劣化する場合があり、30℃未満であると、粘度上昇や結晶化が起こり、粉体製造上不都合が生じる虞がある。
【0023】
粉体製造に用いられる装置としては、特に限定されるものではなく、一般的な撹拌装置、混合装置および造粒装置を採用できる。その具体例としては、ハイスピードミキサーやハイフレックスグラル等の高速撹拌混合機;流動層型造粒機、転動層型像粒機、バーチカルグラニュレーター等の造粒機等が挙げられる。
【0024】
本発明の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体は、任意成分としてデンプン分解物を含んでいてもよい。
デンプン分解物としては、公知のものから適宜選択して用いることができるが、安全性の面から食糧作物由来のデンプン分解物が好適である。その具体例としては、米や馬鈴薯、タピオカ等を、加水分解または酵素分解したものが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
なお、各種デンプン分解物は、松谷化学株式会社等で製造されており、市販品として容易に入手できる。
【0025】
また、本発明の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体は、任意成分として酸化防止剤を含んでいてもよい。
酸化防止剤としては、食品や食品添加物として一般的に用いられる酸化防止剤が好適である。その具体例としては、ビタミンE等のトコフェロール類;ビタミンC等のアスコルビン酸類;BHA、BHT等の合成抗酸化剤;カテキンやケルセチン等のフラボノイド類;ローズマリー抽出物やイチョウ葉抽出物等の天然物抽出物などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
これらの中でも、操作性や脂溶性ビタミンや色素の安定性の面などから、トコフェロール類、アスコルビン酸類が好ましい。
なお、各種酸化防止剤は、理研ビタミン株式会社、日清オイリオ株式会社、DSMニュートリションジャパン社等で製造されており、市販品として容易に入手できる。
酸化防止剤を添加する場合、その添加量は、特に限定されるものではないが、酸化防止効果を付与しつつ、ビタミンや色素量を確保して目的とする効果を十分に発揮させることを考慮すると、粉体中に0.01〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がより一層好ましい。
【0026】
さらに、本発明の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体は、可食性コーティング剤によってコーティングされていてもよい。
可食性コーティング剤としては、食品や食品添加物として一般的に用いられているものから適宜選択して用いることができる。その具体例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の合成高分子;プルラン、カラギーナン、デンプン等の多糖類、ショ糖、マルトース、デキストリン等のオリゴ糖またはデンプン分解物類;大豆カゼイン、ミルクカゼイン等の蛋白類;ミツロウ、カルバナロウ、ライスワックス等のワックス類;セラック、ロジン等の樹脂類;ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、菜種油、綿実油等の油脂類;酵母分解抽出物などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、操作性および脂溶性ビタミンや色素の安定性の面から、油脂類、樹脂類、多糖類が好ましい。
なお、各種コーティング剤は、日清オイリオ株式会社、株式会社岐阜セラック、株式会社キミカ等で製造されており、市販品として容易に入手できる。
【0027】
可食性コーティング剤でコーティングする場合、そのコーティング量は特に限定されるものではないが、粉体に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜35質量%がより好ましく、10〜25質量%がより一層好ましい。
コーティング量が1質量%未満であると、脂溶性ビタミンや色素の安定性向上効果が不十分になる虞があり、一方、50質量%を超えるコーティングは技術的に困難であり、生産性も低いため、コスト面で不利となる虞がある。
【0028】
以上説明した本発明の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体は、医薬品、化粧品、食品、洗浄剤、日用品、繊維、塗料、樹脂等の広範囲な分野の製剤に配合可能であるが、中でも食品分野への応用が好ましく、特に、錠菓等の錠剤状の食品として好適に用いることができる。
錠剤とする場合、例えば、本発明の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体、乳糖やデキストリン等の公知の可食性賦形剤、およびステアリン酸マグネシウム等の公知の滑沢剤を十分に混合し、打錠機にて適当な形状に加圧、打錠すればよい。
【0029】
本発明の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体の製剤中への配合割合は、目的とする製剤の設計に影響を及ぼさない限り任意であるが、所望のビタミン活性や色価を発揮させつつ、製造を簡便にして生産性を高めることを考慮すると、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がより一層好ましい。
【0030】
なお、製剤とする場合、本発明の効果を損なわない限り、既知の食品成分、食品添加物や薬効成分、または製剤に一般的に用いられる各種配合剤を必要に応じて適宜配合することができる。
具体的には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、油分、アルコール類、抗炎症剤、鎮咳去痰薬、鎮痛剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、水溶性色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、糖類、水溶性ビタミン類、タンパク質類、デンプン類、アミノ酸類、無機塩類、生薬類、水などを適宜配合して製剤化することができる。
また、錠剤の場合は、必要に応じて既に述べた可食性コーティング剤によるコーティングを施してもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
パーム油カロテン懸濁油(ハイアルファMG、ライオン(株)製、カロテン含量:30.3質量%、抽出トコフェロール:0.2質量%、残分:食用油)33.0g、およびケイ酸化合物であるシリカ1 67gを、粉砕機(ラボミルサーLM−2、大阪ケミカル(株)製)を用いて1分間室温で撹拌、混合してパーム油カロテン粉末を得た。
得られたパーム油カロテン粉末50mg、乳糖(フロイント産業(株)製、乳糖グラニュー)445mg、およびステアリン酸マグネシウム(純正化学(株)製)5mgを良く混合後、直径10mmの打錠機に入れ、300kg/cm2(約30MPa)の打錠圧にて3〜5秒間加圧し、パーム油カロテン粉末含有錠剤を得た。
【0033】
[実施例2〜5,比較例1〜5]
表2に示される各成分を各配合量で用いた以外は、実施例1と同様にしてパーム油カロテン粉末およびパーム油カロテン粉末含有錠剤を得た。
なお、シリカ1〜6の詳細は表1に示されるとおりである。
【0034】
【表1】

【0035】
表1において、シリカ1〜6は、全て富士シリシア化学(株)製のものである。
平均粒子径は、レーザ回折散乱法(測定装置:レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置、Partica LA−950V2、(株)堀場製作所製)による測定値である。
細孔容積、比表面積および平均細孔径は、BET法による測定値である。
吸油能は、JIS K5101に準拠して測定した値である。
【0036】
【表2】

【0037】
上記各実施例および比較例で調製した粉体および錠剤について、カロテンの残存率を下記手法により測定した。また、打錠時の漏出抑止性を下記手法および基準により確認・評価した。これらの結果を併せて表3に示す。
[1]カロテン残存率
パーム油カロテン粉末約50mgを精秤して100mLビーカーにとり、70〜80mLの精製水を加え、10分間超音波処理を行った。さらに、これを200mL褐色メスフラスコにとり、精製水でメスアップした。この液10mLを共栓付き遠沈管にとり、エタノール10mLを加え、さらにシクロヘキサン10mLを正確に加え、5分間振とうした。
この遠沈管を4000rpmで10分間遠心分離した後、シクロヘキサン層5mLを50mL褐色メスフラスコにとり、シクロヘキサンでメスアップし、検液とした。
この検液につき、シクロヘキサンを対照として448nm付近の最大吸収を測定し、次式によりカロテン濃度を求めた。
カロテン濃度(%)=((A×10000)/(2500×Wt))×200
A:吸光度、2500:吸光係数、Wt:試料採取量(mg)
次に、遮光したサンプル瓶に製造した粉体サンプルをとり(サンプル瓶のヘッドスペースは空気のまま)、40℃にて暗所で1ヶ月保存した後、上記と同様の方法でカロテン含量を測定し、保存前のカロテン量を100としたときのカロテン量をカロテン残存率(%)として算出した。
また、打錠サンプルに関しても同様の方法にて測定を行った。
【0038】
[2]打錠時の漏出抑止性
打錠後の錠剤におけるカロテンの漏出を目視によって観察し、下記の3段階で評価した。
○:カロテンの漏出なし
△:カロテンがやや漏出
×:カロテンが漏出
【0039】
【表3】

【0040】
表3に示されるように、細孔容積が1〜5mL/gのシリカゲルを用いて得られた実施例1〜5のパーム油カロテン粉末およびこれから得られた錠剤は、比較例のそれらに比べてカロテン残存率が著しく高く、また、打錠時の漏出抑制性も良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素を溶解または懸濁させてなる油脂類を、BET法による細孔容積1〜5mL/gのケイ酸化合物粉体に含浸させてなることを特徴とする脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体。
【請求項2】
請求項1記載の脂溶性ビタミンおよび/または脂溶性色素含有粉体を含む錠剤。

【公開番号】特開2010−43033(P2010−43033A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208984(P2008−208984)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】