説明

脂環式カルボン酸またはその誘導体の製法

【課題】脂環式カルボン酸またはその誘導体の製法。
【解決手段】芳香族カルボン酸またはその誘導体を、少なくとも3つの直列接続する水素化装置中で選択的に水素化することにより相応する脂環式カルボン酸またはその誘導体を製造する方法に関し、その際、少なくとも最初の2つをループ式で運転する、脂環式カルボン酸またはその誘導体の連続的製法。
【効果】空時収率および/または選択性に優れ、そのままで、または僅かな精製費用で使用することのできる芳香族カルボン酸またはその誘導体の水素化法が達せられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも最初の2つの反応器をループ式で運転する、少なくとも3つの直列接続する反応器中で、相応する芳香族カルボン酸(−誘導体)の選択的水素化により脂環式カルボン酸またはその誘導体、特にカルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂環式ポリカルボン酸エステル、例えばシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のエステルは、潤滑油成分および助剤として金属加工の際に使用される。更に、このエステルは、ポリオレフィンおよびPVCのための可塑剤として使用される。
【0003】
PVCの可塑化のためには、しばしばフタル酸のエステル、例えばフタル酸のジブチルエステル、ジオクチルエステル、ジノニルエステルまたはジデシルエステルが使用される。このフタレートの使用に関しては、近年ますます問題があるとの議論がされているので、プラスチックへの使用は制限されている。更に、刊行物に若干のものがプラスチックのための可塑剤として記載されている脂環式ポリカルボン酸エステルは、好適な代替物質として使用されている。
【0004】
多くの場合、脂環式ポリカルボン酸エステルの経済的製法は、相応する芳香族ポリカルボン酸エステルの、例えばフタレートの核水素化によって製造される。このためには、すでにいくつかの方法が公知である:
US5286898およびUS5319129には、ジメチルテレフタレートをNi、Ptおよび/またはRuがドープされている、Pd−担持触媒上で、140℃以上の温度および50〜170バールの圧力で水素化して相応するヘキサヒドロジメチルテレフタレートに変換することができる方法が記載されている。
【0005】
US3027398はRu−担持触媒上での、110〜140℃および35〜105バールでのジメチルテレフタレートの水素化を開示している。
【0006】
DE2823165では、芳香族カルボン酸エステルをNi、Ru、Rhおよび/またはPd−担持触媒上で70〜250℃および30〜200バールで水素化して相応する脂環式カルボン酸エステルに変換している。その際、平均孔径70nmおよびBET−表面積約30m/gを有するマクロ多孔性担体を使用する。
【0007】
芳香族ポリカルボン酸エステルの水素化による脂環式ポリカルボン酸エステルを製造するためのルテニウム−担持触媒は、特許明細書WO99/32427、WO00/78704、DE10225565.2およびDE10232868.4中に請求されている。
【0008】
WO2004/046078中にはベンゼンポリカルボン酸またはその誘導体の触媒上での水素化が記載されており、この触媒は担体上に担持された活性触媒金属を有し、この際、この担体は規則的なメソ孔を有する1種以上の材料である。
【0009】
芳香族ポリカルボン酸エステルの水素化は、US3027398中ではバッチ法で行われ、US5286898、US5319129、DE2823165、WO99/32427およびWO00/78704中では水素化搬出物を返流することなくまたは返流して(ループ式)、反応器中で連続的に行われる。
【0010】
DE10232868.4およびDE10225565.2中では、芳香族ポリカルボン酸の相応する脂環式ポリカルボン酸への水素化を2つの直列接続する反応器中で実施し、その際、第1の反応器においてはループ式で(部分的な反応器搬出物の返流)、および第2の反応器中では直通路式で実施する。第1のループ型反応器は、複数の小さな直列にまたは平行に接続したループ型反応器により代えることもでき、この際この反応器は一緒の循環路を有する。
【特許文献1】US5286898
【特許文献2】US5319129
【特許文献3】US3027398
【特許文献4】DE2823165
【特許文献5】WO99/32427
【特許文献6】WO00/78704
【特許文献7】DE10225565.2
【特許文献8】DE10232868.4
【特許文献9】WO2004/046078
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
空時収率および/または選択性に関しては、技術的に公知の方法は完全に十分ではないので、これらの欠点の1つ以上を有さず、かつそのままで、または僅かな精製費用で使用することのできる水素化生成物を供給することのできる水素化法を開発する課題が生じた。
【0012】
芳香族カルボン酸エステルを相応する脂環式カルボン酸エステルに水素化する際に、水素化を少なくとも3つの直列接続する水素化ユニット中で実施し、その際、少なくとも最初の2つの水素化ユニットをループ式で運転する、すなわち、それぞれの水素化搬出物の1部を返流下に運転し、直列接続する水素化ユニットの滞留時間に差異を付けて、第1の反応器中で第2の反応器中でより滞留時間を短くする場合に、空時収率を上昇させ、かつ/または製品の品質を改善することができること、すなわち僅かな量の副生成物を含有することが見いだされた。
【0013】
このテキスト中では、水素化ユニットとは1つの水素化反応器、または複数の直列接続する反応器、または複数の相互に並列接続する反応器、または並列および直列接続した反応器からなる反応器群であると理解され、すなわち本発明による方法においては反応器の機能を果たすことのできる反応器または反応器装置であると理解される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明の対象は、脂環式カルボン酸またはその誘導体を相応する芳香族カルボン酸またはその誘導体を固定床中に設けられた固体触媒上で、水素含有ガスで接触水素化することにより連続的に製造する方法において、水素化を少なくとも3つの直列接続する水素化ユニット中で実施し、少なくとも最初の2つの水素化ユニットをループ式で運転し、かつループ式で運転する少なくとも2つの直列接続する水素化ユニットを異なる滞留時間で運転し、この際、ループ式で運転する水素化ユニットの一方の滞留時間が、直接後接するループ式で運転する水素化ユニットにおけるより短いことを特徴とする、脂環式カルボン酸またはその誘導体の連続的製法である。
【0015】
本発明の範囲において滞留時間とは平均滞留時間(逆LHSV)である。これは、所定の反応体積もしくは触媒のバルク体積(不均質反応系においては同じとして扱われる)を出発物質(水素化すべき出発物質)総体積流量(リサイクル流は除く)で割った商であると定義される。
【0016】
本発明による方法は、少なくとも2つのループ型反応器の簡単な直列接続により、従来技術に記載されている方法に比較して空時収率を高くすることができるという利点を有する。少なくとも2つのループ型反応器の使用により、更に安定で、柔軟性のある方法が可能である。こうして、この反応器の取り扱いにおいて万一の場合に、ループ型反応器の1つが故障した場合にも、水素化を続けることができる。少なくとも2つのループ型反応器の使用により、より高い故障安全性も達せられる。更に反応器系の簡単なメンテナンスおよび触媒の長い耐用期間が達せられる。
【0017】
本発明による方法を以下に例示的に記載するが、本発明はこの例示的な実施態様に制限されるべきではない。以下に、範囲、一般的な式または化合物群を記載するが、これらは例示的に記載した範囲または化合物の群だけを包含するのではなく、個々の値(範囲)または化合物を省略することにより得ることのできる、全ての部分範囲および化合物の部分群を包含する。
【0018】
脂環式カルボン酸またはその誘導体を、相応する芳香族カルボン酸またはその誘導体を固定床中に設けられた固体触媒上で、水素含有ガスで接触水素化することにより連続的に製造する本発明方法は、水素化を少なくとも3つの直列接続する水素化ユニット中で実施し、少なくとも最初の2つの水素化ユニットをループ式で運転し、かつループ式で運転する少なくとも2つの直列に接続する水素化ユニットを異なる滞留時間で運転し、この際、ループ式で運転する水素化ユニットの一方の滞留時間が、直接後接するループ式で運転する水素化ユニットにおける滞留時間より短いことを特徴とする。全ての水素化ユニットをループ式で運転する場合に有利である。最後の水素化ユニットを直通路式で運転する場合も有利である。
【0019】
直列接続するループ型反応器中の滞留時間の比が0.01〜<1、有利に0.1〜0.9および特に0.2〜0.5であるのが有利である。滞留時間を、直列接続するループ型反応器の第1の反応器中で変換率が、水素化すべき化合物の、それぞれの反応器の入口での出発濃度に対して40〜90%、有利に60〜90%および第2のループ型反応器中での変換率がそれぞれの反応器の入口での出発濃度に対して2〜60%、有利に2〜40%に達するように調節するのが有利である。
【0020】
異なる滞留時間を有する2つの直列接続するループ型反応器の使用、および特に有利な変換率の範囲での運転法により、ジイソノニルフタレートまたはジデシルフタレート(ジイソデシルフタレート)の水素化に際して、触媒体積の最適な利用が達せられる。
【0021】
もちろん、2つ以上の直列接続するループ型反応器が本発明方法中に存在していてよい。2つ以上の直列接続するループ型反応器が存在する発明方法においては、これらの反応器の1つ以上を、前方の反応器が後接続する反応器の滞留時間より短い滞留時間で運転して直列接続するループ型反応器が異なる滞留時間で運転することなく実施することもできるが、但しこの場合には、前方の反応器の滞留時間が後接続する反応器より短い滞留時間で運転する少なくとも2つの直列接続するループ型反応器が存在する。
【0022】
本発明による方法においては、芳香族カルボン酸またはその誘導体または芳香族カルボン酸またはその誘導体の混合物を液相または液/気−混合相で、少なくとも3つの直列接続する水素化ユニット中で、固定床に設けられた触媒上で水素を用いて連続的に相応する脂環式カルボン酸またはその誘導体に水素化することができる。本発明による方法の3つの水素化ユニットを有する変法を構成図として図1中に示した。ここに図示した変法は3つより多数の水素化ユニットを有する方法のためにも該当する。
【0023】
図1に示した本発明による実施態様においては、最初の2つの水素化ユニットをループ式で運転し、第3の水素化ユニットを直通路式で運転する。その他の実施態様も可能であり、その場合には全て3つの水素化ユニットをループ式で運転するか、または3つより多数の水素化ユニットが存在する。3つより多数の水素化ユニット中で水素化を実施する場合、本発明により、最初の2つの水素化ユニットをループ式で運転し、それ以降の水素化ユニットを選択的にループ式でまたは直通路式で運転することができる。
【0024】
図1に示した本発明方法の変法においては、それぞれ個々の反応器を水素ガスで充填する。水素消費および排ガス流による搬出量の損失を最小限にするために、水素化ユニットの排ガスを他の水素化ユニットのための水素化ガスとして使用することは有利である。例えば、図1に図示した方法においては、水素化ガス(1b)の代わりに第1の水素化ユニット(3)からの排ガス(6)を第2の水素化ユニット(11)中に、および水素化ガス(1c)の代わりに第2の水素化ユニット(11)の排ガス(14)を第3の水素化ユニット(18)中に供給することができる。この場合には、液体出発物質/生成物−相および水素化ガスを反応器中に同じ順序で流す。同様に、水素化ガスおよび出発物質/生成物−相を対向する方向で反応器中を流すことも有利に可能である。この場合には、新鮮な水素化ガスを最後の反応器中に供給し、排ガスを最初の反応器から取り出す。更に、2つ以上の反応器が一緒の水素化ガス系を有していて、他の反応器がこれとは別に水素化ガスで充填されることも可能である。反応器の排ガスを他の反応器の水素化ガスとして使用する際に、所望の場合には、圧力低下を中間圧縮により相殺することができる。
【0025】
排ガス量またはガス流を、全ての反応器中で良好な流体力学が、すなわち僅かな壁流
および物質交換のための高い界面が存在するように調節する。
【0026】
水素化ガスとしては、例えば一酸化炭素または硫化水素のような触媒毒を有害量有さない、任意の水素含有ガス混合物を使用することができる。不活性ガスの使用は任意であり、水素を純度95%より多く、特に98%より多く使用するのが有利である。不活性ガスの成分は、例えば窒素またはメタンであってよい。水素化ユニット中に、水素が水素化ユニット中で可能なまたは所望の変換率を達成するために必要とされる化学量論量に対して過剰で、特に200%の過剰で、有利には5〜100%の過剰、殊に有利には10〜50%の過剰で存在するのが有利である。十分に過剰の水素の調節なしには、芳香族化合物の水素化は十分ではなく、収率の損失に導く。
【0027】
本発明方法により芳香族カルボン酸またはその誘導体、例えば芳香族モノ−、ジ−またはポリカルボン酸またはその誘導体、例えばそのエステルまたは無水物、特にそのアルキルエステルを相応する脂環式カルボン酸化合物に変換することができる。その際、芳香族ジ−またはポリカルボン酸誘導体としては、完全エステルも部分エステルも本発明方法により水素化することができる。完全エステルとは全ての酸基がエステル化されている化合物と理解される。部分エステルとは少なくとも1つの遊離酸基(または場合により無水物基)および少なくとも1つのエステル基を有する化合物である。本発明方法においてポリカルボン酸エステルを使用する場合、これらは有利にエステル官能基を2、3または4個有している。
【0028】
本発明方法においては、芳香族ジ−またはポリカルボン酸またはその誘導体としては、有利にベンゼン−、ジフェニル−、ナフタレン−、ジフェニルオキシド−またはアントラセンポリカルボン酸、その無水物および/または相応するエステルを使用することができる。本発明方法により得られる脂環式ジ−またはポリカルボン酸またはその誘導体は1つ以上の、場合によりC−C−結合により結合したまたは縮合したC−環からなる。
【0029】
有利な実施形においては、本発明は1,2−、1,3−または1,4−ベンゼンジカルボン酸またはその誘導体、特にそのエステル、および/または1,2,3−、1,3,5−または1,2,4−ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体、特にそのエステルの水素化のための方法に関し、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の異性体またはその誘導体、特にそのエステル、または1,2,3−、1,2,4−または1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸またはその誘導体、特にそのエステルが得られる。
【0030】
本発明方法においては、例えば次の芳香族カルボン酸またはその誘導体、特にそのエステルを使用することができる:1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸(ベンゼン−1,2−ジカルボン酸)、イソフタル酸(ベンゼン−1,3−ジカルボン酸)、テレフタル酸(ベンゼン−1,4−ジカルボン酸)、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸(トリメリト酸)、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸(トリメシン酸)、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸。更に、前記酸から、これの芳香環に結合する水素原子1個以上をアルキル基、シクロアルキル基またはアルコキシアルキル基により置換することにより生じた酸、またはその誘導体、特にエステルを使用することができる。
【0031】
本発明方法において、芳香族モノカルボン酸またはその誘導体として、例えば安息香酸、1−ナフトエ酸または2−ナフトエ酸またはその誘導体、特にそのエステルを使用することができる。更に、前記モノカルボン酸から芳香核に結合する水素原子1個以上をアルキル基、シクロアルキル基またはアルコキシアルキル基により置換することにより生じたモノカルボン酸またはその誘導体、特にエステルを使用することができる。
【0032】
本発明方法において前記芳香族カルボン酸の芳香族カルボン酸エステルを使用するのが特に有利である。有利に使用される芳香族カルボン酸エステルのアルコール成分は有利に、炭素原子1〜25個、有利に炭素原子3〜15個、特に有利に8〜13個、かつ殊に有利に9〜10個を有する分枝または線状(非分枝)のアルキル基、シクロアルキル基またはアルコキシアルキル基からなる。アルコール成分は1個以上のヒドロキシ基を有していてよい。分子中に1個より多数のカルボキシ基が存在する場合、使用した芳香族ポリカルボン酸エステルの分子中のアルコール成分は同一または異なっていてよい、すなわちこのエステルは同一または異なる異性体または鎖長を有していてよい。もちろん芳香族系の置換パターンに関する異性体も混合物の形で使用することができる、すなわちフタル酸エステルとテレフタル酸エステルとからなる混合物。
【0033】
本発明方法において、芳香族ジ−またはポリカルボン酸のエステルとしては、例えば次の化合物を使用することができる:テレフタル酸モノメチルエステル、テレフタル酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジエチルエステル、テレフタル酸ジ−n−プロピルエステル、テレフタル酸ジブチルエステル、テレフタル酸ジイソブチルエステル、テレフタル酸ジ−t−ブチルエステル、テレフタル酸モノグリコールエステル、テレフタル酸ジグリコールエステル、テレフタル酸−ジイソヘプチルエステル、テレフタル酸−n−オクチルエステル、テレフタル酸ジイソオクチルエステル、テレフタル酸ジ−2−エチルヘキシルエステル、テレフタル酸ジ−n−ノニルエステル、テレフタル酸ジイソノニルエステル、テレフタル酸ジ−n−デシルエステル、テレフタル酸ジイソデシルエステル、テレフタル酸ジプロピルヘプチルエステル、テレフタル酸ジ−n−ウンデシルエステル、テレフタル酸ジイソドデシルエステル、テレフタル酸−ジトリデシルエステル、テレフタル酸ジ−n−オクタデシルエステル、テレフタル酸ジイソオクタデシルエステル、テレフタル酸ジ−n−エイコシルエステル、テレフタル酸モノシクロヘキシルエステル;フタル酸モノメチルエステル、フタル酸ジメチルエステル、フタル酸ジ−n−プロピルエステル、フタル酸ジ−n−ブチルエステル、フタル酸ジイソブチルエステル、フタル酸ジ−t−ブチルエステル、フタル酸モノグリコールエステル、フタル酸ジグリコールエステル、フタル酸ジイソヘプチルエステル、フタル酸ジ−n−オクチルエステル、フタル酸ジイソオクチルエステル、フタル酸ジエチルヘキシルエステル、フタル酸ジ−n−ノニルエステル、フタル酸ジイソノニルエステル、フタル酸ジ−n−デシルエステル、フタル酸ジ−2−プロピルヘプチルエステル、フタル酸ジイソデシルエステル、フタル酸ジ−n−ウンデシルエステル、フタル酸ジイソウンデシルエステル、フタル酸−ジトリデシルエステル、フタル酸ジ−n−オクタデシルエステル、フタル酸ジイソオクタデシルエステル、フタル酸ジ−n−エイコシルエステル、フタル酸モノシクロヘキシルエステル;フタル酸ジシクロヘキシルエステル、イソフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジエチルエステル、イソフタル酸ジ−n−プロピルエステル、イソフタル酸ジ−n−ブチルエステル、イソフタル酸ジイソブチルエステル、イソフタル酸ジ−t−ブチルエステル、イソフタル酸モノグリコールエステル、イソフタル酸ジグリコールエステル、イソフタル酸ジイソヘプチルエステル、イソフタル酸ジ−n−オクチルエステル、イソフタル酸ジイソオクチルエステル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシルエステル、イソフタル酸ジ−n−ノニルエステル、イソフタル酸ジイソノニルエステル、イソフタル酸ジ−n−デシルエステル、イソフタル酸ジイソデシルエステル、イソフタル酸ジプロピルヘプチルエステル、イソフタル酸ジ−n−ウンデシルエステル、イソフタル酸ジイソドデシルエステル、イソフタル酸ジ−n−ドデシルエステル、イソフタル酸ジトリデシルエステル、イソフタル酸ジ−n−オクタデシルエステル、イソフタル酸ジイソオクタデシルエステル、イソフタル酸ジ−n−エイコシルエステル、イソフタル酸モノシクロヘキシルエステル。
【0034】
本発明方法においては、モノカルボン酸のエステルとして、例えば、ジオールのベンゾエート、例えばグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエートまたはジプロピレングリコールジベンゾエートを使用することができるが安息香酸アルキルアルキルエステル、例えばデシルベンゾエート、イソデシルベンゾエート、ノニルベンゾエートまたはイソノニルベンゾエート、オクチルベンゾエートまたはイソオクチルベンゾエート、2−エチルヘキシルベンゾエートまたはトリデシルベンゾエートまたはイソトリデシルベンゾエートを使用することもできる。
【0035】
本発明による方法において、2種以上のカルボン酸またはカルボン酸誘導体からなる混合物、特にカルボン酸エステルの混合物を使用することができる。そのような混合物は、例えば次の方法で得ることができる:
a)ジ−またはポリカルボン酸を完全エステルおよび部分エステルが同時に存在するようにアルコールで部分エステル化する。
b)すくなことも2種のカルボン酸の混合物をアルコールでエステル化し、その際少なくとも2種の完全エステルの混合物が生じる。
c)ジ−またはポリカルボン酸をアルコール混合物と反応させ、その際相応する完全エステルの混合物を製造することができる。
d)ジ−またはポリカルボン酸をアルコール混合物で平行してエステル化する。
e)少なくとも2種のカルボン酸の混合物をアルコール混合物で部分的にエステル化する。
f)少なくとも2種のジ−またはポリカルボン酸からなる混合物をアルコール混合物で部分エステル化する。
【0036】
この反応において、ポリカルボン酸の代わりに相応する無水物を使用することもできる。
【0037】
大規模工業的には、芳香族エステルは、特に完全エステルはしばしば方法c)でアルコール混合物から製造される。相応するアルコール混合物は、例えば:
線状ブテンからヒドロホルミル化および引き続く水素化により製造されたC−アルコール混合物;
イソブテンまたは線状ブテンとイソブテンとを含有するブテン混合物からヒドロホルミル化および引き続く水素化により製造されたC−アルコール混合物;
ペンテンまたは2種以上のペンテンの混合物からヒドロホルミル化および引き続く水素化により製造されたC−アルコール混合物;
トリエチレンまたはジプロペンまたはヘキセン異性体またはヘキセン異性体のその他の混合物からヒドロホルミル化および引き続く水素化により製造されたC−アルコール混合物;
n−ブチルアルデヒドのアルドール縮合および引き続く水素化により製造された2−エチルヘキサノール(2種の異性体)のような、C−アルコール混合物;
−オレフィンから二量体化、ヒドロホルミル化および水素化により製造されたC−アルコール混合物。この際、C−アルコールを製造するためには、イソブテンから、または線状ブテンの混合物から、または線状ブテンとイソブテンとの混合物から出発することができる。C−オレフィンを種々異なる触媒、例えば、プロトン酸、ゼオライト、有機金属のニッケル化合物またはニッケル含有接触触媒を用いて二量体化することができる。C−オレフィン混合物のヒドロホルミル化はロジウム−またはコバルト触媒を用いて実施することができる。従って、多数の工業用C−アルコール混合物が存在する。
トリプロピレンからヒドロホルミル化および引き続く水素化により製造されたC10−アルコール混合物;バレルアルデヒドのアルドール縮合および引き続く水素化により製造された2−プロピルヘプタノール(2種の異性体);
少なくとも2種のC−アルデヒドの混合物から、アルドール縮合および引き続く水素化により製造されたC10−アルコール混合物;
ジヘキセン、ヘキサエチレン、テトラプロピレンまたはトリブテンからヒドロホルミル化および引き続く水素化により製造されたC13−アルコール混合物
である。
【0038】
その他のアルコール混合物はオレフィンまたはオレフィン混合物のヒドロホルミル化および引き続く水素化により獲得することができ、このオレフィンまたはオレフィン混合物は例えばフィッシャー・トロップシュ合成により、炭化水素の脱水素により、メタセシス反応、ポリガス法またはその他の工業的方法により生じる。更に、異なるC−数のオレフィンを有するオレフィン混合物もアルコール混合物の製造のために使用することができる。
【0039】
本発明方法において、芳香族カルボン酸および前記のアルコール混合物から製造された全てのエステル混合物を使用することができる。本発明においては、フタル酸、フタル酸無水物または安息香酸と炭素原子6〜13個を有する異性体アルコールの混合物とから製造されたエステルを使用するのが有利である。
【0040】
本発明方法において使用することのできる工業用フタレートの例は、次の商標名を有する製品である:
【0041】
【表1】

【0042】
芳香族ジ−またはポリカルボン酸もしくはそのエステルの核水素化において、全ての使用した異性体から少なくとも2種の立体異性の水素化生成物が生じることがある、ということを示す。この際生じた立体異性体の相互の量比は使用した触媒および水素化条件に依存する。立体異性体相互の任意の比を有する、全ての水素化生成物は分離することなくまたは分離した後に使用することができる。一般には、水素化生成物を分離することなく使用する。
【0043】
本発明による方法においては、有利には元素の周期系の第8副族の金属少なくとも1種を含有する固体の水素化触媒を使用する。元素の周期系の第8副族の活性金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、コバルト、ニッケルまたはルテニウムまたはこれらの2種以上の混合物を使用するのが有利であり、その際、特にルテニウムを活性金属として使用するのが有利である。
【0044】
すでに前記の金属の他に、元素の周期系の第1および/または第7副族の金属少なくとも1種を付加的に触媒中に含有してよい。ルテニウムおよび/または銅を使用するのが有利である。
【0045】
活性金属の含量は、すなわち元素の周期系の第1および/または第7および/または第8副族の金属の含量は、有利に0.1〜30質量%である。この貴金属の含量は、すなわち元素の周期系の第8副族で、かつ第5または第6周期の金属、例えばパラジウム、ルテニウムの含量は、金属として計算して有利に0.1〜10質量%の範囲、特に0.8〜5質量%の範囲、殊に有利には1〜3質量%である。
【0046】
使用した触媒が担持触媒であるのが有利である。担体としては、例えば次の物質を使用することができる:活性炭、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムおよび/または酸化亜鉛またはこれらの混合物。二酸化チタン−担体を有する触媒を使用するのが特に有利である。付加的に、この担体材料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および/または硫黄を含有していてよい。
【0047】
本発明による方法においては、特許明細書DE10225565.2およびDE10232868.4に請求されている、ルテニウム触媒を使用するのが有利である。
【0048】
本発明による方法において水素化ユニットは有利にそれぞれ1つの水素化反応器からなる。これは管型反応器、管束型反応器または有利に直立炉であってよい。
【0049】
個々の反応器を、断熱的に、ポリトロープで、または実質的に等温で、すなわち典型的には10℃より小さい温度上昇で運転することができる。その際、ループ式で運転する反応器を有利に、準等温で運転する、有利には10℃より小さい、特に有利には5℃より小さい温度上昇で運転する。
【0050】
本発明による方法は有利に液/気−混合相または液相で、三相反応器中で、並流で実施され、その際水素化ガスは公知法で液体出発物質/生成物流中に分配される。均質な液体分布、改善された反応熱放出および/または高い空時収率を望むのであれば、ループ式で運転する反応器を、空の反応器の断面積mおよび時間当たり、10〜400、有利に20〜200および特に有利に40〜150mの高い液体負荷で運転するのが有利である。
【0051】
液体負荷は、ループ式で運転する複数の反応器において同じであるかまたは異なっていてよい。液体負荷が最初の反応器において最大であり、その後のループ式で運転する反応器において低下するのが有利である。2つの直列接続するループ型反応器を有する本発明による装置中では、液体負荷は最初の反応器中では有利に20〜200の範囲、特に40〜150m/(m×h)であり、第2の反応器中では有利に20〜180の範囲、特に40〜140m/(m×h)の範囲である。
【0052】
直通路式で運転する反応器中の負荷は、有利に2〜100m/(m×h)、特に10〜80m/(m×h)である。
【0053】
水素化は、溶剤の不存在下にまたは有利に存在下に実施することができる。溶剤としては、出発物質および生成物と均質な溶液を形成し、水素化条件下に不活性であり、かつ生成物から容易に分離除去することのできる、全ての液体を使用することができる。この溶剤は多くの物質の混合物であってもよく、場合により水を含有していてもよい。
【0054】
例えば、次の物質を溶剤として使用することができる:直鎖または環式エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン、並びにアルキル基が炭素原子1〜13個を有する脂肪族アルコール。溶剤として使用することのできるアルコールは有利にイソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、工業用ノナノール混合物、デカノール、工業用デカノール混合物、トリデカノールである。アルコールの使用は、水素化するカルボン酸誘導体がエステルである場合にのみ有利である。溶剤としてアルコールを使用する際には、生成物の鹸化の際に生じるようなアルコールまたはアルコール混合物を使用するのが適当である。このことによりエステル交換による副生成物の形成は排除される。その他の有利な溶剤は水素化生成物自体である。
【0055】
溶剤の使用により、反応器供給流中の芳香族物質の濃度は制限され、これにより反応器中の改善された温度制御を達成することができる。このことは、副反応を最少に押さえ、その結果、生成物の収率の上昇に導く。反応供給物中の芳香族物質の含量が1〜70%であるのが有利である。所望の濃度範囲は、ループ式で運転する反応器においては、循環比(出発物質に対する返流される水素化搬出物の量比)により調節される。反応器供給流(新鮮な出発物質または前に設置された反応器の水素化搬出物からと循環流からとの混合物)中の芳香族物質の濃度は第1の反応器から最後の反応器まで低下するのが有利である。例えば、図1による装置中においては、第1の反応器(3)への供給流中の芳香族物質の濃度は70〜5質量%であり、第2の反応器(11)への供給流中の芳香族物質の濃度は40〜2質量%であり、かつ第3の反応器(18)への供給流中の芳香族物質の濃度は20〜1質量%である。
【0056】
本発明による方法を圧力範囲0.3〜30MPa、特に1.5〜20MPa、殊に5〜20MPaで実施するのが有利である。個々の反応器中の圧力は同一または異なっていてよい。圧力が同一またはほぼ同一であるのが有利である。
【0057】
水素化温度が50〜250℃、特に80〜200℃であるのが有利である。水素化温度は個々の反応器中で同一または異なっていてよい。
【0058】
芳香族カルボン酸またはその誘導体、特に芳香族ジ−またはポリカルボン酸エステルまたは芳香族ジ−またはポリカルボン酸エステルの、本発明による水素化の際に、本発明方法により生じる水素化生成物は、96質量%を越える、特に98%を越える、殊に99質量%を越える脂環式カルボン酸またはその誘導体、特にエステルの含量を有する。この混合物は直接または精製の後に使用することができる。副生成物の分離除去は、例えば蒸留によりまたは窒素または水蒸気のような不活性ガスでのストリッピングにより実施することができる。僅かな量の低沸点物質を温度範囲120〜240℃、特に150〜200℃で、かつ圧力5kPa〜10kPaで分離するのが有利である。引き続き圧力を5kPa未満に低下させることにより乾燥させることができる。
【0059】
生成物としては、本発明方法により、脂環式カルボン酸またはその誘導体、特に脂環式カルボン酸エステルおよび殊に有利に脂環式ジ−またはポリカルボン酸エステルを有する混合物が得られる。
【0060】
本発明のその他の対象は、本発明により製造した脂環式カルボン酸エステルのプラスチック中への可塑剤としての使用である。有利なプラスチックは、PVC、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリレート、アクリレート、エステル基の酸素原子に結合した炭素原子1〜10個を有する分枝または非分枝アルコールのアルキルエステルを有するアクリレート、スチレン、アクリロニトリルをベースとするホモおよびコポリマー、環式オレフィンのホモまたはコポリマーである。
【0061】
前記グループの代表的な物としては、例えば次のプラスチックを挙げることができる:
エステル基の酸素原子に結合する炭素原子4〜8個を有する同一または異なるアルキル基、特にn−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基および2−エチルヘキシル基およびイソノニル基を有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、メチルアクリレート−ブチルアクリレート−コポリマー、メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート−コポリマー、エチレン−酢酸ビニル−コポリマー、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー、エチレン−プロピレン−コポリマー、エチレン−プロピレン−ジエン−コポリマー、スチレン−アクリロニトリル−コポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−ゴム、スチレン−ブタジエン−エラストマー、メチルメタクリレート−スチレン−ブタジエン−コポリマーおよび/またはニトロセルロース。
【0062】
更に、本発明により製造した脂環式カルボン酸エステルをプラスチック混合物、例えばポリオレフィンとポリアミドとの混合物の変性のために使用することができる。プラスチックと本発明により製造した脂環式ポリカルボン酸エステルとの混合物も同様に本発明の対象である。好適なプラスチックは、すでに前記の化合物である。そのような混合物は、脂環式ポリカルボン酸エステルを有利に少なくとも5質量%、特に有利に10〜80質量%、殊に有利に20〜70質量%含有する。
【0063】
本発明により製造した脂環式ポリカルボン酸エステルを1種以上含有するプラスチック、特にPVCからの混合物は、例えば次の製品中に含有されていてよいか、またはこれを製造するために使用することができる:
ホース、ケーブル、ワイヤ被覆材、絶縁テープ、自動車両および家具構造体において、プラスチゾル、フロアーの被覆材料において、医療製品、食品包装材料、シール、フィルム、複合フィルム、プレート、人工皮革、おもちゃ、壁紙、包装容器、粘着テープフィルム、衣料、被覆剤、繊維の被覆剤、靴、アンダーコーティング、シームシーリング、モデリングコンパウンドまたはボール。
【0064】
前記適用の他に、本発明により製造した脂環式カルボン酸エステルは潤滑油成分として、冷却液の成分として、および金属加工用液として使用することができる。同様に、顔料、塗料、インクおよび接着剤として使用することができる。
【0065】
本発明による方法は種々の実施態様において実施することができる。本発明の有利な実施態様を、図1中に構成図として例示した。この構成図は、3つの反応器または反応ユニットを示し、その内の2つはループ式で運転する、本発明による方法は3つより多数の反応器(もしくは反応ユニット)で実施することもでき、または3つ全ての反応器をループ式で運転してもよい。
【0066】
図1による、本発明方法の変法においては、水素(1a)、出発物質(2)および反応器(3)からの液体水素化搬出物(7)の1部(8)を水素化ユニット(3)中に供給する。水素化ユニット(3)からの水素化搬出物(4)を蒸留缶(5)中で排ガス(6)と液相(7)に分離する。液流(7)の1部(9)を第2の水素化ユニット(11)からの液相(15)の1部(16)および水素(1b)と一緒に、水素化ユニット(11)に導く。水素化ユニット(11)からの水素化搬出物(12)を蒸留缶(13)中で排ガス(14)および液相(15)に分離する。液流(15)の1部(17)を水素(1c)と一緒に水素化ユニット(18)中に供給する。水素化ユニット(18)からの水素化搬出物(19)を蒸留缶(20)中で、排ガス(21)と粗生成物(22)に分離する。粗生成物(22)をそのままで、または精製した後に、ここには図示されていない装置中で使用する。
【0067】
本発明を次に実施例につき例示するが、この発明は例に記載されている実施態様に制限されるべきではない。
【実施例】
【0068】

水素化反応器は管型反応器であり、これを選択的に直通路式でまたはループ式で連続的に運転した。全ての実験において、液相および水素化ガスを並流で上方から下方に流した。
【0069】
管型反応器をルテニウム−触媒(1%Ru/TiO)1350mlで充填した。この触媒は、TiO担体Aerolyst 7711および水性硝酸ルテニウム溶液から、DE10232868.4中に記載されているように製造した。この触媒は、円の直径1.5mmおよび長さ4〜6mmを有するシリンダー状ロッド押出物からなる。
【0070】
両方の実験においてジイソノニルフタレート、省略形DINP(Oxeno Olefinchemie GmbH社からの商標名Vestinol 9)を使用した。水素化ガスとしては99.9%を越える純度の水素を使用した。
【0071】
両方の実施例において、水素化工程の液体水素化搬出物は直後の水素化工程中への供給生成物である。個々の水素化工程は、同じ触媒および同じ触媒量を有する同じ反応器中で順次実施された。第1の工程の水素化搬出物は準定常状態で平衡に達した後に集められて第2の工程のために使用された。実施例1においては付加的に、第2の工程の水素化搬出物を第3の工程の供給材料として集めた。良好な比較のために、全ての水素化工程の圧力、反応温度および排ガス量を同じにした。
【0072】
実施例1(本発明による)
水素化を3工程で実施した。最初の2つの工程においては、反応器をループ式でおよび第3の工程において直通路式で運転した。運転パラメータおよび実施例1の質量流量を第1表にまとめた。
【0073】
【表2】

【0074】
目的物質(第3工程の水素化搬出物)は99.5質量%を越える純度を有した。DINP−変換率は実質的に定量的であった。
【0075】
新鮮なDINP9.54l/hから出発して、第1工程の水素化搬出物が次の工程の供給物質であることを考慮し、かつDINPもしくはDINCHの異なる密度を考慮して、連続的な水素化のために、反応器への次の供給流(返流なし)が生じる:
第1の反応器:9.54 l/h
第2の反応器:9.592 l/h
第3の反応器:9.643 l/h
第1表に示したLHSVを保持して、前記体積流のためには次の触媒量が生じる:
第1の反応器:1.35 l
第2の反応器:4.07 l
第3の反応器:12.36 l。
【0076】
従って、両方のループ型反応器中の(全)触媒量は5.432 lである。第1の反応器への新鮮なDINP9.54 l/hの供給の際に、両方のループ型反応器を介して全LHSV 1.75h−1が生じた。
【0077】
例2(比較例)
水素化を2つの工程で実施した。第1の工程では反応器をループ式で運転し、第2の工程では直通路式で運転した。
【0078】
運転パラメータおよび実施例2の質量流量を第2表にまとめた。
【0079】
【表3】

【0080】
残留含量19.9%への、純粋なDINPの水素化において、直列接続する2個のループ型反応器での水素化(例1)においてはLHSV1.75h−1で水素化が達せられた。1個だけのループ型反応器を使用して(例2)、同じ残留含量までの水素化の際にはLHSV 1.18h−1であった。こうして、本発明による方法は従来の方法に対して高い空時収率を有することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の有利な実施態様を示す構成図である。
【符号の説明】
【0082】
1、1a、1b、1c 水素化ガス、 2 出発物質、 3、11、18 反応器、 4、12、19 水素化搬出物、 5、13、20 蒸留缶、 6、14、21 排ガス、 7、15 液相、 8、9、16、17 液相の一部 、 22 粗生成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式カルボン酸またはその誘導体を、相応する芳香族カルボン酸またはその誘導体を固定床中に設けられた固体触媒上で、水素含有ガスで接触水素化することにより連続的に製造する方法において、水素化を少なくとも3つの直列接続する水素化ユニット中で実施し、少なくとも最初の2つの直列接続する水素化ユニットをループ式で運転し、ループ式で運転する少なくとも2つの水素化ユニットを異なる滞留時間で運転し、この際、ループ式で運転する水素化ユニットの一方における滞留時間が、直接後接するループ式で運転する水素化ユニットにおけるより短いことを特徴とする、脂環式カルボン酸またはその誘導体の連続的製法。
【請求項2】
全ての水素化ユニットをループ式で運転する、請求項1記載の製法。
【請求項3】
最後の水素化ユニットを直通路式で運転する、請求項1記載の製法。
【請求項4】
水素化を3つより多数の水素化ユニットを有する装置中で実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の製法。
【請求項5】
水素化を、3つの水素化ユニットを有する装置中で実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の製法。
【請求項6】
元素の周期系の第8副族の金属少なくとも1種を含有する触媒を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の製法。
【請求項7】
ルテニウムを含有する触媒を使用する、請求項6記載の製法。
【請求項8】
二酸化チタン−担体を有する触媒を使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の製法。
【請求項9】
芳香族カルボン酸またはその誘導体として、モノ−、ジ−またはポリカルボン酸またはその誘導体を使用する請求項1から8までのいずれか1項記載の製法。
【請求項10】
芳香族ジ−またはポリカルボン酸またはその誘導体として、ベンゼン−、ジフェニル−、ナフタレン−、ジフェニルオキシド−またはアントラセン−ジ−またはポリカルボン酸、その無水物および/またはその相応するエステルを使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の製法。
【請求項11】
芳香族モノカルボン酸として、安息香酸、1−ナフトエ酸または2−ナフトエ酸、その無水物またはそのエステルを使用する、請求項9記載の製法。
【請求項12】
芳香族カルボン酸誘導体としてカルボン酸エステルを使用する、請求項1から11までのいずれか1項記載の製法。
【請求項13】
ジ−またはポリカルボン酸誘導体の使用において、部分エステルおよび/または完全エステルを使用する、請求項12記載の製法。
【請求項14】
使用する芳香族カルボン酸エステルのアルコール成分が、炭素原子1〜25個を有する分枝または非分枝のアルコキシアルキル基、シクロアルキル基および/またはアルキル基を有する請求項12または13記載の製法。
【請求項15】
使用する芳香族ジ−および/またはポリカルボン酸エステルのアルコール成分がそれぞれ同一または異なっている、請求項12から14までのいずれか1項記載の製法。
【請求項16】
芳香族ジカルボン酸誘導体としてジイソノニルフタレートまたはジデシルフタレートを使用する請求項9から14までのいずれか1項記載の製法。
【請求項17】
芳香族モノカルボン酸誘導体として、ジイソノニルベンゾエートまたはジデシルベンゾエートを使用する、請求項11記載の製法。
【請求項18】
連続するループ型反応器中の滞留時間の比が0.01〜1未満である、請求項1から17までのいずれか1項記載の製法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−188521(P2006−188521A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379458(P2005−379458)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(398054432)オクセノ オレフィンヒェミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】OXENO Olefinchemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】