説明

脂環式ポリエステル組成物からの造形品

優れた強度、靭性、透明度、耐薬品性及び耐紫外線性を有する、延伸された造形品、例えば、フィルム、繊維、ボトル及びチューブが開示される。これらの製品は、脂環式ポリエステルから並びに脂環式ポリエステル及び脂環式ポリエステルエラストマーを含む組成物から製造できる。これらの製品は、少なくとも1方向に伸張することによって延伸でき、ソフトフィールを生じるモジュラスを有する。また、脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーを含むポリエステル組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、脂環式ポリエステルから並びに脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーを含む組成物から製造された延伸造形品(oriented shaped article)に関する。更に詳しくは、本発明は、脂環式ポリエステル又は脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーを含む組成物から製造された、ボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ及び成形品のような延伸造形品に関する。本発明は、更にポリエステルエラストマーを含む脂環式ポリエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、フィルム、シート、異形材、ボトルなどのような広範な用途に使用される造形品の製造に用いられることが多い。最もよく使用されるポリエステルは、テレフタル酸又はイソフタル酸モノマーを基材とするものであり、その例としては、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)及びそれらのコポリエステルが挙げられる。これらのポリエステルは安価で、広範囲に流通しており、しかも、芳香族部分を含むためにガラス転移温度(Tg)が高いので、造形品に耐熱性、剛性(即ちモジュラス)及び靭性を与える。最近では、ポリエステル業界におけるウェイトの大部分は、ポリエステル中により大きい芳香族性を組み込むことによってより高いガラス転移温度を有するポリエステル(例えば液晶ポリエステル、PEN)を開発することに置かれている。しかし、いくつかの用途では、製品が耐紫外線性若しくは耐薬品性、良好な光透過率及び/又は「ソフトフィール(soft feel)」を必要とする用途には、特に、これらの芳香族ポリエステルは受け入れられない。用語「ソフトフィール」は、材料の触感が柔らかいが、それでもなお構造一体性、弾性及びレジリエンスを保持する、ポリオレフィンにおいて見られるのと同様な触覚性を意味する。例えば、これらの芳香族ポリエステルから製造された造形品は、紫外線及び化学薬品への暴露から保護する保護キャップ層を必要とすることが多い。更に、芳香族ポリエステルは高モジュラスのため、高レベルの可塑剤を添加しなければ、ソフトフィール及び「ローノイズ(low noise)」用途への使用には許容され得ない。
【0003】
これに対して、脂肪族及び脂環式ポリエステルは、典型的には、良好な耐紫外線性及び耐薬品性並びに芳香族ポリエステルに比べて低いモジュラスを有する。しかし、これらのポリエステルは、不所望に低いガラス転移温度を有し、そのために多くの用途に適さない。例えば、多くの脂肪族及び脂環式型のポリエステルは、室温より低いガラス転移温度を有し、その結果、構造一体性がほとんど又は全くない、過度に柔軟なゴム状ポリマーを生じる。その一方、室温より高いガラス転移温度を有する脂肪族及び脂環式ポリエステルはガラス状であるが、Tgが依然として低すぎるため、芳香族ポリエステルに比べて充分な靭性及び耐熱性を有さない。従って、脂肪族及び脂環式ポリエステルから製造された造形品は、例えば、壁装材、繊維、包装材料、ラベル及び軟質フィルムのような多くの用途に適さないことが多い。種々の脂環式ポリエステル組成物及びそれらの用途のいくつかの例は、特許文献1〜14に記載されている。
【0004】
他の非芳香族ポリエステルは、これらの欠陥を解決せず、また、造形品に使用された場合には更なる欠点を示す。例えば、ポリエステルエラストマー、例えばPCCEコポリエステルエーテル(1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びポリテトラメチレングリコールのコポリマー;Eastman Chemical CompanyからECDEL(登録商標)ポリエステルとして入手可能)は、前述の靭性並びに耐紫外線及び耐薬品性のような多くの望ましい性質を有する。これらもまた、ソフトフィールを有するが、過度に柔軟でゴム状であり、しかも多くの構造用途に使用されるのに必要な耐熱性を欠いている。更に、これらのゴム状特性と遅い結晶化特性とを共に有するため、これらのポリエステルエラストマーから押出されたフィルム及び繊維は、押出時に引取ロール又は紡糸ガイドに粘着する傾向がある。フルオロポリマー並びに艶消ロール/道具類は、粘着の問題を緩和する傾向があるが、このような材料及び機材は高価であって、専用のプロセスラインを必要とする。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,306,785号
【特許文献2】米国特許第5,859,119号
【特許文献3】米国特許第5,907,026号
【特許文献4】米国特許第6,011,124号
【特許文献5】米国特許第5,486,562号
【特許文献6】米国特許第5,907,026号
【特許文献7】米国特許第4,665,153号
【特許文献8】米国特許第6,084,055号
【特許文献9】米国特許第6,455,664号
【特許文献10】米国特許第6,136,441号
【特許文献11】米国特許出願公開第2003/0030172 A1号
【特許文献12】欧州特許出願公開第0 902 052 A1号
【特許文献13】国際出願公開第WO 93/04124号
【特許文献14】国際出願公開第WO 02/31020 A2号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、良好な耐紫外線性及び耐薬品性を有すると同時に、強度、靭性、耐熱性及びソフトフィール特性を保持する、ボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ及び成形品のような造形品を製造できれば、望ましい。このような造形品は、壁装材、ボトル、軟質フィルム、包装材料、ラベル及び繊維に用途を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、意外にも、脂環式ポリエステルから及び脂環式ポリエステルとポリエステルエラストマーとを共に含む組成物から、優れた強度、靭性及び透明度と共に耐薬品性及び耐紫外線性を有する延伸造形品を製造できることを発見した。即ち、本発明は、
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基;並びにジオール残基の総モル%に基づき70〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールの残基を含む脂環式ポリエステルを、造形品の総重量に基づき5〜100重量%と
(ii)ポリエステルエラストマー0〜95重量%とを
含む、少なくとも1方向に伸張することによって延伸された造形品を提供する。本発明に係る延伸造形品の例は、フィルム、シート、繊維、ボトル、異形材、チューブ及び成形品である。
【0008】
これらの造形品は、脂環式ポリエステル、例えば二酸残基の98〜100モル%が1,3−又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の1種又はそれ以上の残基を含み且つジオール残基の70〜100モル%が、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのような脂環式ジオールの1種又はそれ以上の残基を含むポリエステルから全体的に製造することができる。或いは、これらの造形品は、脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーを含んでなる組成物から製造できる。例えば、これらの造形品は、5〜95重量%(wt%)の脂環式ポリエステル及び5〜95重量%のポリエステルエラストマーを含むことができる。一実施態様において、ポリエステルエラストマーはまた、二酸残基の総モルに基づき少なくとも95モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基;総ジオールに基づき98〜70モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基;及び総ジオール残基に基づき2〜30モル%の、平均分子量400〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基を含む脂環式ポリエステルである。脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは更に、更なる剛性を与え且つポリエステル組成物の溶融加工特性を改善する分岐剤を含むことができる。脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーはもともと混和性であり、このことは、それから製造される造形品の延伸及び靭性の改善に役立つ。
【0009】
本発明の造形品の一例は一軸延伸又は二軸延伸可能なフィルムである。造形品は収縮(シュリンク)フィルムであることもできるし、又は寸法安定性を与えるためにヒートセットすることもできる。造形品は、総合密度を減少させるために、ミクロボイド化することもできるし又は発泡させることもできる。造形品はまた、1つ又はそれ以上の層を含むことができ、一実施態様においては、少なくとも1つの層が1μm又はそれ以下の厚さを有する複数の薄層を含んでなることができる。このような多層造形品は、偏光及び光の選択的フィルタリングのような光変更効果を示す。別の例において、本発明の造形品はまた、異形横断面を有するステープル、モノフィラメント又はマルチフィラメントであることもできる。
【0010】
本発明はまた、
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の二酸の残基;並びにジオール残基の総モル%に基づき70〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を含む脂環式ポリエステルを、組成物の総重量に基づき20〜80重量%と
(ii)ポリエステルエラストマー20〜80重量%とを
含み、25℃において貯蔵弾性率が少なくとも0.3GPaであり且つtanδが少なくとも0.02であるポリエステル組成物を提供する。この組成物はまた、前記造形品の製造に使用でき、それらは次に延伸してもしなくてもよい。更に別の態様において、本発明は、前記組成物の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1種又はそれ以上の硬質セグメント及び1種又はそれ以上のポリエーテル又はポリエステル−ポリエーテル軟質セグメントを含むいくつかのコポリエステル、特に脂環式ポリエステル及び/又はこれらのポリエステルといくつかのポリエステルエラストマーとを含む組成物が、例えば強度、靭性、ソフトフィール、耐薬品性、耐熱性及び耐紫外線性のような性質の組合せを有する延伸造形品の製造に有用であることがわかった。従って、一般的な実施態様において、本発明は、(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基;並びにジオール残基の総モル%に基づき70〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールの残基を含む脂環式ポリエステルを、造形品の総重量に基づき5〜100重量%と、(ii)ポリエステルエラストマーを0〜95重量%含み、少なくとも1方向に伸張されることによって延伸された造形品を提供する。本発明の造形品の代表例としては、ボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ及び成形品が挙げられるが、これらに限定するものではない。このような造形品は、壁装材、軟質フィルム、包装材料、ラベル及び繊維に広範な用途を有する。
【0012】
特に断らない限り、本明細書及び「特許請求の範囲」中で用いる成分の量、分子量のような性質、反応条件などを表す数値は全て、全ての場合において用語「約」によって修飾されると解するものとする。従って、特に断らない限り、以下の明細書及び添付した「特許請求の範囲」中に記載した数値パラメーターは、本発明によって得ようとする目的の性質によって異なり得る近似値である。最低限でも、各数値パラメーターは少なくとも、報告した有効数字の数を考慮に入れて、通常の丸めを適用することによって解釈すべきである。更に、この開示及び「特許請求の範囲」中に記載した範囲は、端点だけでなく、全範囲を具体的に含むものとする。例えば、0〜10と記載された範囲は、0と10の間の全ての整数、例えば1、2、3、4など、0と10の間の全ての分数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113など並びに端点0及び10を開示するものとする。また、化学置換基に関連した範囲、例えば「C1〜C5炭化水素」は、C1及びC5炭化水素並びにC2、C3及びC4炭化水素を具体的に含み且つ開示する。
【0013】
本発明の広範な範囲を記載する数値範囲及びパラメーターは近似値であるが、具体例に記載した数値は、可能な限り正確に報告してある。しかし、全ての数値は本質的に、それらの各試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる若干の誤差を含む。
【0014】
本明細書中で使用する用語「ポリエステル」は、「コポリエステル」を含むものとし、また、1種又はそれ以上の二官能価カルボン酸と1種又はそれ以上の二官能価ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーを意味するものと解する。本明細書中で使用する用語「脂環式ポリエステル」は、モル過剰の脂環式ジカルボン酸及び/又はジオールの残基を含むポリエステルを意味する。本発明のジオール及びジカルボン酸に関して本明細書中で使用する用語「脂環式」は、本質的に飽和されている若しくはパラフィン系である、不飽和である、即ち、非芳香族炭素−炭素二重結合を含む、又はアセチレン系である、即ち、炭素−炭素三重結合を含むことができる成分炭素原子の環状配列を主鎖中に含む構造を意味する。典型的には、二官能価カルボン酸はジカルボン酸であり、二官能価ヒドロキシル化合物は二価アルコール、例えばグリコール及びジオールである。
【0015】
本発明において、二官能価カルボン酸は典型的には、脂環式ジカルボン酸、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、二官能価ヒドロキシル化合物は、脂環式ジオール、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールであることができる。本明細書中で使用する用語「残基」は、対応するモノマーを含む重縮合反応によってポリマー中に組み込まれる任意の有機構造を意味する。本明細書中で使用する用語「反復単位」は、カルボニルオキシ基によって結合されたジカルボン酸残基及びジオール残基を有する有機構造を意味する。このため、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー又はその関連した酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物から得ることができる。従って、本明細書中で使用する用語「ジカルボン酸」は、高分子量ポリエステルを生成するためのジオールとの重縮合反応において有用な、ジカルボン酸及びその関連した酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物を含むジカルボン酸の誘導体又はそれらの混合物を含むものとする。
【0016】
本発明において使用する脂環式ポリエステルは典型的には、ジカルボン酸及びジオールから製造され、前記ジカルボン酸と前記ジオールとは実質的に等しい割合で反応し、それらの対応する残基としてポリエステルポリマー中に組み込まれる。従って、本発明の脂環式ポリエステルは、反復単位の総モルが100モル%に等しくなるように実質的に等しい割合の酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)を含む。従って、本明細書の開示に示されるモル%は、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル又は反復単位の総モルに基づくことができる。例えば総酸残基に基づき30モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA)を含むポリエステルは、ポリエステルが合計100モル%の酸残基のうち30モル%の1,4−CHDAを含むことを意味する。このため、酸残基100モル当たり30モルの1,4−CHDA残基が存在する。別の例において、総ジオール残基に基づき30モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)を含むポリエステルは、ポリエステルが合計100モル%のジオール残基のうち30モル%の1,4−CHDM残基を含むことを意味する。このため、ジオール残基100モル当たり30モルの1,4−CHDM残基が存在する。
【0017】
本発明のポリエステル組成物は5〜100重量%の脂環式ポリエステルを含む。脂環式ポリエステルは、総二酸残基に基づき98〜100モルパーセント(本明細書中では「モル%」と略す)の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基を含む。例えば二酸は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であることができる。1,3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、それらの純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス異性体とトランス異性体との混合物として用いることができる。より高いガラス転移温度をもたらすには、高レベルのトランス異性体(60モル%超のトランス異性体を有する)を有する脂環式酸が一般に好ましい。
【0018】
本発明の脂環式ポリエステルは、また、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール(本明細書中では「CHDM」と略す)から選ばれた少なくとも1種の残基を70〜100モル%含んでなることができるジオール残基を含む。本明細書中で使用する用語「ジオール」は、用語「グリコール」と同義であり、任意の二価アルコールを意味する。二酸の場合と同様に、グリコールのシス及びトランス異性体並びに及びシス異性体とトランス異性体との混合物も本発明の範囲内に含めるものとする。例えばCHDMは純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス異性体とトランス異性体との混合物として使用できる。二酸に関して前に述べたように、高レベルのトランス異性体が一般に好ましい。脂環式ジオールの他に、脂環式ポリエステルはまた、それより少ない量の脂肪族ジオールを含むことができる。例えば、脂環式ポリエステルは、ジオール残基の総モルに基づき0〜30モル%の、炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖脂肪族ジオールから選ばれた少なくとも1種のジオールの残基を含むことができる。ジオールの典型的な例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。別の例において、ポリエステルのジオール残基は、総ジオール残基に基づき95〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含んでなることができる。更なる例において、二酸は1,4−シクロヘキサジカルボン酸であることができ、別の例において、ジオールは1,4−シクロヘキサンジメタノールであることができる。更に別の例において、脂環式ポリエステルは、ポリ(1,3−シクロヘキシレンジメチレン−1,3−シクロヘキサンジカルボキシレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)、又はポリ(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)であることができる。
【0019】
本発明に不可欠ではないが、脂環式ポリエステルは、溶融強度及び加工性を向上させるために、ジオール又は二酸残基の総モルに基づき2モル%以下の、3個又はそれ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基、イオン形成基又はそれらの組合せを有する1種又はそれ以上の分岐剤の残基を含むことができる。分岐剤の例としては、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸などのような多官能価酸又はグリコールが挙げられるが、これらに限定するものではない。イオン形成基の例としては、ソジオスルホイソフタル酸及びソジオスルホ安息香酸が挙げられる。一例において、分岐剤残基は、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン又はトリメシン酸のうち1種又はそれ以上の残基を0.1〜1モル%含む。分岐剤は、ポリエステル反応混合物に添加することもできるし、又は例えば米国特許第5,654,347号に記載されたようにコンセントレートの形態でポリエステルとブレンドすることもできる。
【0020】
本発明のポリエステルは、インヘレント粘度が0.5〜1.5dL/gである。インヘレント粘度(本明細書中では「I.V.」と略す)は、フェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒50mL当たり0.25gのポリマーを用いて25℃において測定されたインヘレント粘度測定値を意味する。ポリエステル組成物が示すことができるI.V.値の他の例は、0.6〜1.2dL/g、0.7〜1.1dL/gである。
【0021】
本発明の造形品はまた、0〜95重量%のポリエステルエラストマーを含む。本明細書中で使用する用語「ポリエステルエラストマー」は、容易に変形され且つ小さい適用応力下で可逆的伸び即ち、弾性を示す、1〜500メガパスカル(MPa)(室温において)の低モジュラスを有する任意のポリエステルを意味すると解する。本明細書中で使用する用語「可逆的(reversible)」とは、適用圧力の除去後にポリエステルがその元の形状に戻ることを意味する。一般に、これらは、(i)1種又はそれ以上のジオール、(ii)1種又はそれ以上のジカルボン酸、(iii)1種又はそれ以上の長鎖エーテルグリコール、及び場合によっては(iv)1種又はそれ以上のラクトン又はポリラクトンから従来のエステル化/重縮合法によって製造する。例えば、本発明のポリエステルエラストマーは、(i)炭素数2〜20の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖脂肪族ジカルボン酸、炭素数5〜20の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖脂環式ジカルボン酸及び炭素数6〜20の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸から選ばれた1種又はそれ以上の二酸の残基を含む二酸残基;並びに(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、平均分子量400〜12000のポリ(オキシアルキレン)−グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含むジオール残基を含むことができる。ポリエステルエラストマーの製造に使用できる代表的なジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;テレフタル酸;イソフタル酸;ソジオスルホイソフタル酸;アジピン酸;グルタル酸;コハク酸;アゼライン酸;ダイマー酸;2,6−ナフタレンジカルボン酸;及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましい脂肪酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、アゼライン酸、アジピン酸及びそれらの混合物が挙げられる。脂環式ジカルボン酸、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス異性体とトランス異性体との混合物として存在できる。好ましい芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ソジオスルホイソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0022】
ポリエステルエラストマーはまた、少なくとも1種のジオールの残基を含むことができる。ジオールの例としては、エチレングリコール;1,3−プロパンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール:2−メチルプロパンジオール;2,2−ジメチルプロパンジオール;1,6−ヘキサンジオール;デカンジオール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;ポリ(エチレンエーテル)グリコール;ポリ(プロピレンエーテル)グリコール;及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが挙げられる。例えばポリエステルエラストマーはポリ(オキシアルキレン)グリコール、例えば平均分子量が400〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基を含むことができる。必要ではないが、ポリエステルエラストマーは、3個又はそれ以上のカルボキシ置換基、ヒドロキシ置換基又はそれらの組合せを有する分岐剤の残基を含むことができる。分岐剤の例としては、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸などのような多官能価酸又はグリコールが挙げられるが、これらに限定するものではない。ポリエステルエラストマー内の分岐剤のレベルの例は、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、0.1〜2モル%、0.1〜1モル%及び0.5〜1モル%である。
【0023】
更なる実施態様において、本発明のポリエステルエラストマーは、二酸残基の総モルに基づき少なくとも90モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びテレフタル酸から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基;総ジオール残基に基づき2〜30モル%の、平均分子量が400〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールと総ジオール残基に基づき98〜70モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールの残基;並びに二酸残基の総モルに基づき0.1〜2モル%の、トリメリット酸、トリメリット酸無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれた少なくとも1種の分岐剤の残基を含むことができる。更に別の例において、ポリエステルエラストマーはまた、二酸残基の総モルに基づき少なくとも95モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基;及び総ジオール残基に基づき98〜70モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含むことができる。本発明のポリエステル組成物中に使用できる市販ポリエステルエラストマーの例としては、ECDEL(登録商標)ポリエステルエラストマー(Eastman Chemical Companyから入手可能)及びHYTREL(登録商標)ポリエステルエラストマー(DuPont Comanyから入手可能)が挙げられる。場合によっては、HYTREL(登録商標)及びECDEL(登録商標)ポリエステルエラストマーと脂環式ポリエステルとの混合物を使用するのが望ましいこともある。
【0024】
更に、ポリエステルエラストマーには、1種又はそれ以上のラクトン又はポリラクトンを組み入れることもできる。ここで適当なラクトンは、例えば、Union Carbide Corporation及びAldrich Chemicalsから広範に市販されている。ε−カプロラクトンが特に好ましいが、ラクトンがα、β、γ、δ又はε位においてメチル又はエチル基のような低級アルキル基で置換された置換ラクトンを用いることも可能である。更に、ホモポリマー及びそれらと1種又はそれ以上の成分とのコポリマーを含むポリラクトン並びにヒドロキシを末端基とするポリラクトンをこれらのポリ(エーテルエステル)中のブロック単位として使用することも可能である。
【0025】
本発明のポリエステル及びポリエステルエラストマーは、適当なジカルボン酸、エステル、無水物又は塩、適当なジオール又はジオール混合物、及び任意の分岐剤から、典型的な重縮合反応条件を用いて容易に製造できる。これらは、連続、半連続及び回分操作様式で行うことができ、種々の反応器型を使用できる。適当な反応器型の例としては、攪拌漕、連続攪拌漕、スラリー、管状、ワイプドフィルム、流下薄膜又は押出反応器が挙げられるが、これらに限定するものではない。ここで使用する用語「連続」とは、反応体の投入及び生成物の回収を同時に連続的に行う方法を意味する。「連続」とは、方法が、「回分」法とは異なり実質的に又は完全に連続的に実施されることを意味する。「連続」は、例えば始動、反応器のメンテナンス又は定期的シャットダウン期間による方法の連続性の正常な中断を禁止することは意味しない。ここで使用する用語「回分」法は、反応体全てを反応器に添加してから、所定の反応過程に従って処理し、その間に反応器への材料の添加又は除去は行わない方法を意味する。用語「半連続」は、反応体の一部を方法の最初に装填し且つ残りの反応体を、反応の進行につれて連続的に供給する方法を意味する。或いは、半連続法は、また、1種又はそれ以上の生成物を反応の進行につれて連続的に除去する以外は、反応体全てを方法の最初に添加する回分法と同様な方法を含むことができる。本発明の方法は、経済的理由から、また、過度に長い期間、高温の反応器中に滞留させるとポリエステルの外観が悪化する可能性があるのでポリマーの優れた着色を生じるために、連続法として実施するのが有利である。
【0026】
本発明の脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは、当業者に知られた方法によって製造する。ジオール、ジカルボン酸及び任意の分岐剤成分の反応は、従来のポリエステル重合条件を用いて実施できる。例えばエステル交換反応によって、即ち、エステル型のジカルボン酸成分から脂環式ポリエステル又はポリエステルエラストマーを製造する場合には、反応プロセスは2つの工程を含む。第1の工程において、ジオール成分とジカルボン酸成分、例えばテレフタル酸ジメチルとを高温、典型的には150℃〜250℃において0.0kPaゲージ〜414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ、「psig」)の範囲の圧力で0.5〜8時間反応させる。好ましくは、エステル交換反応の温度は180℃〜230℃で1〜4時間であり、好ましい圧力は103kPaゲージ(15psig)〜276kPaゲージ(40psig)の範囲である。その後、反応生成物をより高い温度において減圧下で加熱して、ジオールを除去しながらポリエステルを形成する。ジオールは、これらの条件下では容易に揮発し、系から除去される。この第2の工程又は重縮合工程は、より高真空下で、一般には230℃〜350℃、好ましくは250℃〜310℃、そして最も好ましくは260℃〜290℃の温度で0.1〜6時間又は好ましくは0.2〜2時間、インヘレント粘度によって測定される所望の重合度を有するポリマーが得られるまで続ける。重縮合工程は、53kPa(400トル)〜0.013kPa(0.1トル)の範囲で、減圧下で実施することができる。反応混合物の充分な熱伝達及び表面更新を保証するために、いずれの段階にも攪拌又は適当な条件を使用する。両段階の反応速度は、適当な触媒、例えば、アルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキル錫化合物、金属酸化物などによって増加させる。米国特許第5,290,631号に記載されたのと同様な3段製造法も、酸及びエステルの混合モノマー供給材料を使用する場合には特に使用できる。
【0027】
エステル交換反応によるジオール成分とジカルボン酸成分との反応を確実に完了させるために、場合によっては、1モルのジカルボン酸成分に対して1.05〜2.5モルのジオール成分を用いるのが望ましい。しかし、当業者ならば、ジオール成分対ジカルボン酸成分の比が一般に、反応プロセスが行われる反応器の設計によって決まることがわかるであろう。
【0028】
直接エステル化による、即ち酸型のジカルボン酸成分からの脂環式ポリエステル又はポリエステルエラストマーの製造においては、ポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸の混合物をジオール成分又はジオール成分の混合物及び任意の分岐剤成分と反応させることによって生成する。この反応は、平均重合度1.4〜10の低分子量ポリエステル生成物を生成するために7kPaゲージ(1psig)〜1379kPaゲージ(200psig)、好ましくは689kPaゲージ(100psig)未満の圧力において実施する。直接エステル化反応において使用する温度は典型的には、180℃〜280℃、より好ましくは220℃〜270℃の範囲である。この低分子量ポリマーは次に、重縮合反応によって重合させることができる。
【0029】
脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは、相溶性ブレンド又は混和性ブレンドとして存在でき、製品の総重量に基づき広範囲の重量%で存在できる。造形品の所望の性質を得るために、必要に応じて、1種より多い脂環式ポリエステル及び/又はポリエステルエラストマーを使用できる。例えば、造形品は、製品の総重量に基づき、5〜100重量%の1種又はそれ以上の脂環式ポリエステル及び0〜95重量%の1種又はそれ以上のポリエステルエラストマーを含むことができる。別の例において、造形品は、5〜95重量%の1種又はそれ以上の脂環式ポリエステル及び5〜95重量%の1種又はそれ以上の脂環式ポリエステルエラストマーを含む。更に別の例において、造形品は、30〜100重量%の脂環式ポリエステル及び0〜70%のポリエステルエラストマーを含むことができる。ポリエステル及びポリエステルエラストマーの重量%の他の例としては、90〜100重量%の脂環式ポリエステル及び0〜10重量%のポリエステルエラストマー並びに30〜50重量%の脂環式ポリエステル及び50〜70重量%のポリエステルエラストマーが挙げられるが、これらに限定するものではない。造形品組成物の更なる具体例は、10重量%の脂環式ポリエステル及び90重量%の脂環式ポリエステルエラストマー;20重量%の脂環式ポリエステル及び80重量%の脂環式ポリエステルエラストマー;60重量%の脂環式ポリエステル及び40重量%の脂環式ポリエステルエラストマー;並びに80重量%の脂環式ポリエステル及び20重量%の脂環式ポリエステルエラストマー;並びに90重量%の脂環式ポリエステル及び10重量%の脂環式ポリエステルエラストマーである。
【0030】
更なる例において、本発明の造形品は、脂環式ポリエステルとしての5〜95重量%のポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(本明細書中では「PCC」と略す)並びに二酸残基の総モルに基づき少なくとも95モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基及び総ジオール残基に基づき98〜70モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含むポリエステルエラストマー95〜5重量%を含む。この実施態様において、例えばポリエステルエラストマーは、平均分子量400〜2000のPTMGが2〜30モル%共重合されたポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(本明細書中では「PCCE」と略す)を含むことができる。ポリエステルエラストマーはまた、総二酸残基に基づき0.1〜2モル%のトリメリット酸又はトリメリット酸無水物の残基を分岐剤として含むことができる。PCCは65℃のガラス転移温度(Tg)を有するのに対し、ポリエステルエラストマーはTgが室温未満(約−20℃)の軟質エラストマーである。延伸フィルムにおいては、PCCは、典型的な二軸延伸PETフィルム(例えば、Mylar(登録商標))又は繊維の約1/2のモジュラスを有するので、より柔らかい触感が得られる。脂環式ポリエステルとポリエステルエラストマーとは同様な構造を有するので、混和性ブレンドのTgは脂環式ポリエステルとポリエステルエラストマーとの間でほぼ直線的に降下するであろう。製品のモジュラスはまた、製品の組成によって異なるであろう。
【0031】
脂環式ポリエステル及び脂環式ポリエステルエラストマーは、化学薬品及び紫外線の攻撃に対して抵抗性であり、実質的に線状の脂肪族ポリエステルに比較して追加の剛性及び加工性を与える。この抵抗性のために、造形品はまた、脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーの全組成範囲にわたって紫外線及び化学薬品の攻撃に対して抵抗性であろう。従って、ポリエステルエラストマーのレベルは、製品に求められる触知性及び靭性に関連した最終用途に応じて異なり得る。例えば、高レベル(約30重量%超)では、ポリエステルエラストマーは、製品が室温で柔軟性であり且つオレフィン又は可塑化PVCと同様な触感を持つ点まで製品を著しく軟化させる。例えば、PCCとPCCEとの組合せは、PCC単独よりも柔軟で且つ強靱なフィルムを生成するが、PCCE単独に比較して加工及び延伸が容易である。延伸は更に、ヒートセットによって更に熱安定化することができるフィルムを生成する。これらのポリエステル組成物は、歪み誘発結晶化及びヒートセットが可能であるので、製品は、可塑化PVC、ポリオレフィンなどのような他の従来のソフトフィール樹脂よりもはるかに広い温度範囲にわたって優れた性質を示すことができる。
【0032】
本発明の造形品は、ボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ又は成形品を含んでなることができ、また、当業者によく知られた任意の標準的添加剤、例えば、顔料、染料、スリップ剤、粘着防止剤、連鎖延長剤、安定剤、潤沢剤、難燃剤、静電ピニング剤、成核剤、発泡剤、ボイド化剤(voiding agent)、溶融強度増強剤、帯電防止剤、可塑剤、螢光増白剤、相溶化剤などを含むことができる。脂環式ポリエステルは、従って、造形品は本質的に紫外線に対して安定性であるが、押出プロセスの間に形成されるラジカル、又は脂環式ポリエステル又はポリエステルエラストマー中に検出される可能性がある不純物による紫外線吸収によって開始される光分解によって形成されるラジカルを掃去するために、少量のヒンダードアミン光安定剤(HALS)をシクロポリエステル又は組成物に添加することができる。この目的で使用できるHALSの例としては、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能なCHIMMASORB(登録商標)119、CHIMMASORB(登録商標)944、TINUVIN(登録商標)770など並びにCytec Industriesから入手可能なCYASORB(登録商標)UV−3529及びCYASORB(登録商標)UV−3346が挙げられる。HALSは通常、0.1〜1重量%のレベルで使用する。更に、フィルムを別の面に保護層として使用する場合には、いくつかの紫外線吸収剤を組成物に添加することもできる。有効なUV吸収剤の例は以下の通りである:TINUVIN(登録商標)81、CYASORB(登録商標)UV−9、CYASORB(登録商標)UV−24及びCYASORB(登録商標)UV−531のようなベンゾフェノン類;TINUVIN(登録商標)213,TINUVIN(登録商標)234、TINUVIN(登録商標)320、TINUVIN(登録商標)360、CYASORB(登録商標)UV−2337及びCYASORB(登録商標)UV−5411のようなベンゾトリアゾール類;並びにTINUVIN(登録商標)1577及びCYASORB(登録商標)1164のようなトリアジン類。ポリエステルエラストマーに関しては、ポリエステル残基の分解が存在するならばそれを遅延させるために、場合によっては、1種又はそれ以上の酸化安定剤を用いることができる。この目的に使用できる安定剤の例としては、IRGANOX(登録商標)1010及びIRGANOX(登録商標)1076のようなヒンダードフェノール安定剤が挙げられ、これらは典型的には0.1〜1重量%のレベルで使用される。
【0033】
脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは、造形品の製造前に、一軸若しくは二軸スクリュー押出機中で又はバンバリーミキサー(Banbury Mixer)中でドライブレンド又は溶融混合することができる。例えば、未延伸造形品は、チルロールキャスティング、カレンダー加工、メルトブロー、ダイ押出、射出成形、紡糸などのような従来の方法によって製造できる。例えば、ポリエステルエラストマーの高溶融強度は、低温におけるフィルムのカレンダー加工をより容易にするであろう。多くの繊維操作の場合に一般的な、反応器からの直接押出も可能である。例えば、フィルムを製造するための典型的方法においては、メルトを200〜280℃の溶融温度を用いてスロットダイに通し、次いで20℃〜100℃(70°F〜210°F)のチルロール上に流延する。最適流延温度は、組成物中のエラストマーの量によって異なるであろう。形成されたフィルムは、伸張後のフィルムの望ましい最終厚さに応じて5〜300milの公称(nominal)厚さを有することができる。別の典型的な厚さ範囲は、10〜100milである。
【0034】
本発明の造形品は、当業者に知られた種々の方法によって、製品の性質に応じて延伸できる。例えば、フィルム、シート、異形材及びチューブは、以下の方法の1つ又はそれ以上を用いて一軸又は二軸伸張できる:機械方向延伸(「MDO」)ドラフト、幅出し、ダブルバブル伸張(double bubble stretching)、圧縮増強延伸(compression enhanced stretching)、圧縮成形、固相押出など。ボトル及び他の成形品は、押出又は射出成形してから、伸張ブロー成形によって延伸させることができる。繊維は、当業者によく知られた同様な方法を用いて一軸伸張できる。伸張は通常、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)又はその近辺の温度で実施する。伸張の典型的な温度範囲は、Tg+5℃〜Tg+30℃(Tg+10°F〜Tg+60°F)であり;より速い伸張速度には、これより高い伸張温度も使用できる。例えば、高速紡糸のためには、紡糸速度は多くの場合、前述より高温で有意な延伸が得られるような充分に速い速度である。伸張比は典型的には各方向において2倍〜5倍であるが、実際の伸張比は、関連する温度及び伸張比に応じて変化するであろう。典型的には、インラインのドラフター及び幅出し機を用いて実施されるような逐次伸張に関しては、第2伸張を、わずかに高い温度で(例えば、第1伸張より5℃〜15℃高い温度)で実施する。本発明の一実施態様において、典型的な伸張比は、歪み硬化が最適である場合には3倍〜4倍の範囲である。
【0035】
製品中の延伸レベルは、光複屈折によって数値化することができる。複屈折は、材料の3つの主方向のうち任意の2つの間における屈折率の差である。これらの方向は、フィルムに関しては機械方向(MD)、横断方向(TD)及び厚さ方向(ND)である(繊維に関しては、軸方向、半径方向及び円周方向である)。従って、複屈折には3つの値:(MD−TD)、(TD−厚さ)及び(MD−厚さ)があるが、これらのうち2つだけが独立している。複屈折は事実上、これらの2つの方向の間における延伸の差の尺度である。ゼロの複屈折は、各方向の間の延伸に差がないことを示す。複屈折の3つの値全てがゼロに等しい場合には、製品は、例えば、流延フィルムの場合のように、未延伸である。
【0036】
本発明の未延伸脂環式ポリマーに関する公称屈折率は、約1.510である(波長632nmにおいて)。高延伸フィルムに関しては、最大複屈折は典型的には0.02〜0.03である。これらの脂環式ポリエステルに関する複屈折のこのような低い偏差は、面内屈折率が全方向で一定でなければならない(不所望な偏光又は歪みを防ぐために)光学用途において有利であることができる。例えば、等二軸延伸(equi−biaxially oriented)フィルムにおいては、MD及びTD方向における屈折率は同一でなければならないが、厚さ方向の屈折率ははるかに低い(相対的延伸のため)。しかし、方法の変動が、MD及びTD屈折率のわずかな偏差を生じるであろう。芳香族ポリマーに関しては、この偏差は、目に見える歪みを引き起こすほど大きい場合がある、これに対して、本発明のフィルムに関しては、MD及びTD屈折率の差は常に小さいままであるため、引き起こされる歪みはより少ないであろう。
【0037】
典型的には、本発明の延伸造形品は少なくとも1つの複屈折が0.005超である。別の例において、本発明の造形品は、少なくとも1つの複屈折が0.01超であることができる。ほとんどのフィルムに関しては(特に等二軸延伸フィルムに関しては)、この最大複屈折は通常、(MD−厚さ)又は(TD−厚さ)であろう。繊維に関しては、これは典型的には(軸方向−半径方向)複屈折であろう。
【0038】
造形品は、最終用途要件に応じてヒートセットすることができる。ヒートセットは通常、より高い温度における収縮を防ぐために、製品に熱安定性を与えるものである。ヒートセットは、造形品を拘束しながら125℃〜200℃の温度に加熱することによって実施され、例えば、フィルム及び繊維業界でよく知られている。通常、ヒートセットの間に若干の応力緩和(5〜10%)が起こって、造形品内の応力が低下する。ヒートセットオーブン中の滞留時間は、オーブンの寸法、ライン速度及び他の要因に応じてわずか数秒〜数分であることができる。典型的なヒートセット温度は、170℃〜210℃である。造形品は場合によっては次に、例えばフィルムの場合には「引張(tensilization)」によって、又は例えば繊維の場合のような2段階伸張で2回伸張して、性質を更に改善することができる。典型的には、190℃(375°F)においてヒートセットされたフィルムは、175℃(350°F)の公称温度まで寸法安定性である。
【0039】
本発明の造形品は、当業界でよく知られた他の方法を用いて加工することもできる。例えば、フィルムはエンボス加工することもできるし、或いは適当な圧縮ロール又はキャスティングロールを用いて別の方法で彫刻することもできる。グラフィックアート用のレンチキュラーフィルムは、本発明において、屋外の紫外線安定性又は耐薬品性が必要である場合に特に有用である。より低密度の製品は、発泡剤(化学発泡剤又はガス発泡剤)又はボイド化剤の添加によって製造できる。例えば、造形品は、ボイド化剤、即ち、伸張時にボイドを形成する粒子又は不相溶性ポリマーを少量ブレンドすることによって全体にミクロボイド化することができる。この方法を「ボイド化(voiding)」と称するが、「空洞化(cavitating)」又は「ミクロボイド化(microvoiding)」と称することもできる。ボイドは、5〜50重量%の有機又は無機小粒子又は「包含物」(当業界では「ボイド化」剤又は「空洞化」剤とも称する)をマトリックスポリマー中に組み込み、そして少なくとも1方向に伸張することによって前記ポリマーを延伸することによって得られる。伸張の間に、小さい空洞又は「ミクロボイド」が、ボイド化剤の周囲に形成される。ボイドがポリマーフィルム中に導入される場合には、得られるボイド化フィルムは、非ボイド化フィルムよりも低い密度を有するだけでなく、不透明になり、紙のような表面を生じる。この表面はまた、印刷適性の増大という利点を有する。即ち、表面は、非ボイド化フィルムよりもかなり大きい受容能力によって多くのインキを受容できる。いずれにしても、製品中における小さいボイド/孔の生成は、密度を低下させ、不透明度及び断熱特性を増加させ、ボイドによる光の散乱のために別の紫外線吸収剤を必要とせずに固有の紫外線遮断をもたらす。ミクロボイド化製品は、包装用途、例えば、ラベルに用いられる場合には特に、フィルムコスト全体を低下させ且つ分離し易さ/リサイクル性を増大させるという更なる利点を有する。
【0040】
造形品はまた、フィルム又はシートであることができ、本発明の造形品に関して本明細書中で一般的に記載した種々の態様を含む。本発明のフィルムは、保護上塗層、積層品などのような種々の用途に、又はグラフィックアート用のスタンドアロン構造として使用できる。紫外線及び薬品抵抗性の組合せは靭性及び柔軟性と相まって、これらのフィルムを保護タッチパッドカバーに理想的なものとする。これらのフィルムは、必要に応じて印刷又は装飾可能である。
【0041】
本発明のフィルムは典型的には、PET又はPBTのような芳香族ポリエステルよりも結晶性が低く、このため、家具用のオーバーラミネートのような「熱成形性BOPET」用途の理想的な候補である。このプロセスは、伸張及びヒートセットの間に生じる結晶型及び結晶量を制御することによって依然としてある程度の熱形成性を保持する、低〜中程度のコポリマー改質PETから典型的に製造される二軸延伸結晶性フィルムに関係する。PETフィルムに比較して、本発明のフィルムは典型的には、優れた化学薬品及び紫外線抵抗性、低い結晶性を有し、結晶性フィルムの熱成形性が望ましいほとんどの用途により適することができる。
【0042】
例えば、造形品は、押出、ブロー成形、カレンダー加工などのような標準的フィルム形成技術によって生成され且つヒートセットを行わずに一方向又は複数の方向に伸張することによって延伸された収縮フィルムであることができる。これらのフィルムは、例えば、食品用及び飲料用の収縮スリーブラベル、一括包装、タンパーエビデント包装などとして使用できる。フィルム及びラベルは、ホットメルト接着剤、溶剤接着、超音波溶接、RFシーリング、ヒートシール、又は従来のテープ及び接着剤を用いて継ぎ合わせるか又は接着することができる。別の例において、造形品は、収縮フィルムであることができるか又は寸法安定性を付与するためにヒートセットすることができる二軸延伸フィルムであることができる。更に、これらのフィルムはまた、前述のようにミクロボイド化することができる。
【0043】
本発明の造形品は、1つ又はそれ以上の層を含むことができ、共押出、共射出、積層及び超音波ステーキングのような公知方法によって形成できる。いくつかの例としては、多層フィルム若しくはシート、多層ボトル、包装用ラミネートフィルム及び二成分繊維が挙げられる。造形品は、例えば、複数の層を含み、少なくとも1層は1μm又はそれ以下の厚さを有する。この実施態様において、例えば、造形品はフィルムであることができ、また、屈折率が極めて低いので、虹色光及び他の光の制御技術において「ミクロ層」の1つに対する優れた候補となることができる。このようなフィルムにおいては、2つの異なる交互層からなる多数の層が、特殊なダイ押出を用いて一緒に共押出される。層はそれらの屈折率が実質的に異なるように選ばれて、フィルムの内部反射率が最大化され、且つフィルムの真珠光沢のある虹色の外観が強化される。本発明のポリエステル及びポリエステルエラストマーは極めて低い屈折率を有し、屈折率の高い別のポリエステル、例えばPEN又はPETと容易に併用することができる。
【0044】
別の実施態様において、造形品は、異形横断面を有するステープル、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維であることができる繊維である。本発明に関しては、用語「繊維」は、織布又は不織布のような二次元又は三次元製品の形にすることができる高いアスペクト比の造形ポリマー体を意味する。更に、繊維は、当業者によく知られた以下の種々の形態のいずれかを取るフィラメントを意味する:即ち、モノフィラメント、マルチフィラメント、トウ、ステープルファイバー又はカットファイバー、ステープルヤーン、コード、織布、タフテッド布及びメリヤス生地、不織布、例えばメルトブロー不織布及びスパンボンド不織布、並びに多層不織布、積層品、更にこのような繊維からの複合材料。ほとんどの繊維型はヒートセットされる。本発明の繊維は、モノフィラメント、マルチフィラメント又は二成分繊維であることができる。本発明の新規繊維は、ステープル、ヤーン、コード又は直接紡糸不織布として生成できる。
【0045】
モノフィラメント繊維は一般に、大きさが20〜8000デニール/フィラメント(本明細書中では「d/f」と略す)の範囲であり、抄紙機クロージング用途において特に有用である。好ましい繊維は、500〜5000の範囲のd/f値を有するものとする。このようなモノフィラメントは、一成分又は二成分繊維の形態であることができる。二成分繊維は、シース/コアを並列に有するか、又は当業者に知られた他の配置を有することができる。他の多成分配置も可能である。二成分繊維の製造方法はまた、よく知られており、米国特許第3,589,956号に記載されている。二成分繊維において、本発明のポリエステル及びポリエステルエラストマーは、10〜90重量%の量で存在し、一般にシース/コア繊維のシース部分に使用するものとする。他の成分は、PET、PBT、PTT、ポリラクチドなどのようなポリエステル並びにポリオレフィン、セルロースエステル及びポリアミドを含む(これらに限定するものではない)広範囲の他のポリマー材料から得ることができる。熱収縮において有意差を有する並列の結合は、スパイラルけん縮の作成に利用できる。クリンプ加工が望ましい場合には、ソウトゥース(saw tooth)又はスタッファーボックス(stuffer box)けん縮が一般に多くの用途に適当である。第2のポリエステルがシース/コア配置のコアにある場合には、このようなコアは場合によっては安定化させることができる。
【0046】
本発明のマルチフィラメント繊維に関しては、大きさはメルトブローウェブの2μmから、ステープルファイバーの0.5〜50d/f、モノフィラメント繊維の5000d/fまでの範囲であることができる。マルチフィラメント繊維はまた、けん縮又は非けん縮ヤーン又はトウとして使用できる。溶融紡糸及びメルトブローウェブ生地に使用する繊維は、マイクロデニールの大きさで生成できる。
【0047】
モジュラスの多様性と寸法安定性のため、繊維は種々の製品に同様に使用できる。これらの繊維は、屈折率は他の芳香族ポリエステルよりも低いので、優れた光学諸特性のために光伝送及び光ファイバーのような用途の好適な候補となる。
【0048】
更なる実施態様において、本発明は、
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基;及びジオール残基の総モル%に基づき90〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含む脂環式ポリエステルを、組成物の総重量に基づき30〜100重量%と
(ii)二酸残基の総モルに基づき少なくとも90モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基;総ジオール残基に基づき2〜30モル%の、平均分子量400〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基と98〜70モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールの残基;並びに総二酸残基に基づき0.1〜2モル%の、トリメリット酸、トリメリット酸無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれた少なくとも1種の分岐剤を含むポリエステルエラストマー0〜70重量%とを
含んでなり、少なくとも1方向に伸張することによって延伸された造形品を提供する。
【0049】
この造形品は、前述の、脂環式ポリエステル、ポリエステルエラストマー、分岐剤、添加剤及び造形品の形態の種々の実施態様を含むことができる。例えばポリエステル及びポリエステルエラストマーの重量%は、脂環式ポリエステル90〜100重量%及びポリエステルエラストマー0〜10重量%、又は別の例では、脂環式ポリエステル30〜50重量%及びポリエステルエラストマー50〜70重量%であることができる。この造形品は、更に1種又はそれ以上のヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、螢光増白剤又は酸化安定剤を含むことができる。前述のように、造形品はボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ又は成形品であることができ、ヒートセット可能である。代表的な実施態様はまた、前述と同様に、収縮フィルム、ヒートセットフィルム及びミクロボイド化フィルムを含む。これらのフィルムはいずれも、一軸又は二軸延伸可能である。
【0050】
本発明は更に、
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の二酸の残基;並びにジオール残基の総モル%に基づき70〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を含む脂環式ポリエステルを、造形品の総重量に基づき20〜80重量%と
(ii)ポリエステルエラストマーを20〜80重量%
を含み、25℃において貯蔵弾性率が少なくとも0.3GPaであり且つtanδが少なくとも0.02である、造形品の製造に有用なポリエステル組成物を提供する。ポリエステル及びポリエステルエラストマーは前述の通りである。ポリエステル組成物は少なくとも0.3ギガパスカル(GPa)の貯蔵弾性率及び少なくとも0.02のtanδを有する。別の例において、ポリエステル組成物は、少なくとも0.05のtanδ及び少なくとも0.5GPaの貯蔵弾性率を有する。本明細書中で使用する用語「貯蔵弾性率(storage modulus)」は、当業者には、ポリエステル組成物の剛性の尺度としてよく理解されている。これは、動的機械分析よって得られ、振動型負荷に対するモジュラスの「同相」成分である。ほとんどの用途に関して、それは標準静的引張弾性率と同様である。同様に、本明細書中で使用する用語「tanδ」は、当業者によって、材料の緩衝性の尺度であると理解されている。これは、正弦関数的に適用された負荷の下におけるポリマーの一振幅の間に貯蔵される弾性エネルギーに対する散逸エネルギーの比である。これは、組成物が、材料に与えられたエネルギー、例えば、音響エネルギーを吸収する程度を反映する。tanδの値が高い材料は典型的には、ノイズ及び音の緩衝用に及び防振に非常に有用である。更に、tanδの高い材料を用いて製造されたボトル及びフィルムのような製品は、騒音を出さず、絞り出された時にカサカサ音を立てない。高tanδ及び高貯蔵弾性率は相まって、低ノイズ特性の他に、剛性及び柔軟性の適切な触知性バランスを有する独特で望ましいソフトフィールを組成物に与える。この製品は、可塑化PVC又はオレフィンのような望ましい触感を有するが、脂環式ポリマーに固有の耐薬品性、耐熱性及び耐紫外線性も全て有する。
【0051】
この組成物は、本発明の造形品に関して前述した、脂環式ポリエステル、ポリエステルエラストマー、分岐剤、添加剤及び製品の形態の種々の実施態様を含むことができる。例えば二酸残基は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含むことができる。別の例において、ジオール残基は1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含むことができる。このポリエステル組成物は30〜50重量%の脂環式ポリエステル及び50〜70重量%のポリエステルエラストマーを含むことができる。
【0052】
本発明の別の実施態様において、ポリエステル組成物は、
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基;及びジオール残基の総モル%に基づき90〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基から実質的になる脂環式ポリエステル、組成物の総重量に基づき30〜80重量%と
(ii)二酸残基の総モルに基づき少なくとも90モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はテレフタル酸の残基;総ジオール残基に基づき2〜30モル%の、平均分子量400〜2000を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基及び98〜70モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノール又は1,4−ブタンジオールの残基;並びに総二酸又はジオール残基に基づき0.1〜2モル%の、トリメリット酸、トリメリット酸無水物又はピロメリット酸二無水物の残基から実質的になるポリエステルエラストマー20〜70重量%
から実質的になる。ここで使用する成句「実質的になる(consisting essentially of)」とは、脂環式ポリエステルが主に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステル組成物を包含することを意図するが、この成句が言及するポリエステル組成物の実質的な性質を実質的に変える全ての要素を排除することを意味する。本発明の組成物は主に脂環式ポリエステルを基材とするが、一般的性質にほとんど影響がないならば、製品は少量の他の非脂環式ポリマーをブレンドされて含むこともできる。これらの他のポリマーは、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、セルロース樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ナイロン、澱粉及びそれらのコポリマーのようなポリマーの1種又はそれ以上を含むことができる。これらのブレンド成分は、ミクロボイド化剤の場合のように意図的に添加することもできるし、或いは多層製品の粉砕再生材料/再循還材料の場合のように意図せずに添加されることもできる。例えば本発明のポリエステル組成物の一実施態様は、ソフトフィール、柔軟性、靭性、透明度、紫外線及び/又は化学薬品抵抗性という前述の物理的性質をほとんど変えない、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、螢光増白剤、酸化安定剤又は他の添加剤を1種又はそれ以上含むことができる。別の例において、ポリエステル組成物の柔軟性をかなり変えることが予想されるレベルでの、ポリマー組成物への別のポリマーの添加は、本発明から排除するものとする。更に別の例において、ポリエステル組成物は、ポリエステル組成物の耐紫外線性及び耐薬品性がかなり影響されるような相当量のポリカーボートを含む場合には排除するものとする。以下の解説は、使用できる変更の種類の例を示すが、当業者ならばそれ以外もわかるであろう。
【0053】
前述の本発明のポリエステル組成物から、例えばボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ及び成形品のような造形品を製造できる。造形品は、更に1種又はそれ以上のヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、螢光増白剤又は酸化安定剤を含むことができる。前述のように、造形品はヒートセット可能である。代表的な実施態様としては、この場合もやはり前述のように、収縮フィルム、ヒートセットフィルム及びミクロボイド化フィルムが挙げられる。これらのフィルムは、いずれも、一軸又は二軸延伸可能である。造形品はまた、1つ又はそれ以上の層を含むことができ、共押出、共射出、積層及び超音波ステーキングのような公知方法によって形成できる。いくつかの例としては、多層フィルム又はシート、多層ボトル、包装ラミネートフィルム及び二成分繊維が挙げられる。造形品は、例えば複数の層を含むことができ、少なくとも1層は1μm又はそれ以下の厚さを有する。前述のように、このような製品は、屈折率が極めて低いため、虹色及び他の光の制御技術において「ミクロ層」の1つの優れた候補であることができる。
【0054】
本発明は更に、
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の二酸の残基;並びにジオール残基の総モル%に基づき70〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を含んでなる脂環式ポリエステルを、組成物の総重量に基づき20〜80重量%と
(ii)ポリエステルエラストマー20〜80重量%とを
混合することを含む、25℃における貯蔵弾性率が少なくとも0.3GPaあり且つtanδが少なくとも0.02であるポリエステル組成物の製造方法を提供する。このポリエステル組成物は、前述の、脂環式ポリエステル、ポリエステルエラストマー、分岐剤及び添加剤の種々の実施態様を含むものと理解する。この方法は、脂環式ポリエステルとポリエステルエラストマーとを効率よく混合する、当業者に知られた任意の手段を用いて、例えば一軸スクリュー押出機を用いることによって実施できる。或いは、混合は、高剪断装置、例えば、二軸スクリュー押出機又はバンバリーミキサーを用いて実施できる。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は本発明を更に説明し、例証するものである。
【0056】
概要−試験方法は、可能な限り、標準的なASTM法に従った。しかし、T.M.Longフィルム伸張機上で伸張されたサンプルの一部は寸法が小さいため、ASTM法に若干の小さい変更が必要であった。
【0057】
引張特性は、ASTM Method D882によって測定した。引裂性は、ASTM D1938によって測定した。加熱撓み温度(THDT)は、1インチ(25.4mm)のゲージ長を有するフィルム試験片に0.345MPaの荷重を適用し、次いで室温から約2℃/分で加熱することによって測定した。フィルムが2%の歪みを超える温度を、「加熱撓み温度」として示す。
【0058】
総光透過率及び曇り価は、ASTM Method D1003によって測定した。屈折率は、Metricon(登録商標)プリズム結合器を波長633nmのレーザーと共に用いて測定するか、文献から入手した。値は、3つの主方向全て(即ち、機械方向、横断方向及び厚さ方向)で測定し、各組合せ(即ち、MD−TD、MD−厚さ、TD−厚さなど)に関して複屈折を算出した。
【0059】
融点及びガラス転移温度は、DSC(ASTM Method D3418を用いる)によって、又はより典型的には、動的機械分析(16rad/s freq)によって測定した。貯蔵弾性率及びtanδの値は、表IVに記載したサンプルのそれぞれに関して室温(25℃)において得た。
【0060】
他の試験法は、必要に応じて実施例内に記載する。
【0061】
実施例1〜9
流延フィルムの製造及び特性
(A)脂環式ポリエステル(ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)と(B)Eastman ECCEエラストマー{トリメリット酸無水物0.75モル%及び平均分子量1000のポリ(テトラメチレングリコール)8モル%が共重合されたポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)}とのペレット/ペレットブレンドを、1”Killion押出機上で260℃(500°F)で押出し、厚さ16milのフィルムに流延した。ブレンドレベルは、純粋なAから純粋なBまでの範囲であり、中間の種々の組合せも含まれた(表I参照)。クロムチルロール上への流延は、粘着が過剰な純粋なBを除いて全てのフィルムに関して容易に実施できることがわかった。成分Aをわずか5%添加すると(B 95%)、粘着の問題はなくなり、フィルムの取り扱いが容易になり、曇り価が低く、表面の欠陥はほとんどなかった。
【0062】
次いで、流延フィルムのサンプルを試験し、データを表Iにまとめた。全てのフィルムは、延伸が最小であった。例えば、実施例1は、MD方向、厚さ方向及びTD方向において屈折率がそれぞれ1.5065、1.5062及び1.5059であった。最大複屈折は、MD−TD方向において見られ、0.0006である(1.5065−1.5059として算出)。エラストマーブレンドである実施例5に関しては、屈折率はMD方向、厚さ方向及びTD方向においてそれぞれ1.5123、1.5098及び1.5108であった。最大複屈折は、MD−厚さ方向において0.0025であった。このエラストマーブレンドの複屈折は、ガラス状の実施例1よりもわずかに高かった。これはおそらく、よりゴム状のテキスチャーが、ダイとキャスティングロールとの間で若干の伸張を引き起こしたためであろう。それでもなお、実施例5(及び流延フィルムの全て)については複屈折は実質的に無視できる。
【0063】
Tg値は、動的機械的測定によって得た。Tg値は、転移の開始温度を示す。エラストマー(実施例6〜9)に関しては、軟質セグメントの形態学的性質のため、ガラス転移は非常に幅広かった。他の点では、Tgは、予想通りに、Bの重量%の増加につれて規則正しく減少することがわかった。Bの量が約70%を超える場合には、Tgは室温未満まで低下し、フィルムは、可塑化ビニルのようにより曲げやすい触感である。
【0064】
モジュラスは同様に、Bの増加につれて低下し、実施例9(純粋なB)は、純粋なA(実施例1)のモジュラスの約1/4であった。引裂抵抗は、フィルムの方向(MD−機械方向;TD−横断方向)によって若干異なるが、Bが高レベルであるほど、高いことが更にわかった。これは、エラストマーがフィルムに靭性を与えるためと予想される。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例10〜19
フィルムの伸張及びヒートセット
実施例1〜5(即ち、エラストマー約40%以下)をT.M.Long Film(登録商標)伸張機上で3.5×3.5及び4×4に二軸伸張して、実施例10〜14のフィルムを生成した。伸張温度は、表Iに列挙したブレンドTgよりも約10℃(18°F)高くなるように取った。実施例5より後の実施例は、Tgが室温未満であったので、室温制御の問題のため、この個々の実施例には含めなかった(しかし、後の実験ではそれらを含めるものとする)。延伸フィルムのいくつかは更に、熱安定性を与えるために拘束フレームを用いて190℃(375°F)において1分間ヒートセットすることによって更に改質した。非ヒートセットフィルムに関する性質を、表IIに記載する。ヒートセットフィルムは表IIIに示す。
【0067】
実施例10の屈折率は、MD、TD及び厚さ方向においてそれぞれ1.5274、1.5232及び1.5026であった。これは等二軸延伸されるので、MDとTDの屈折率はほぼ同じである。最大複屈折は0.025(MD−厚さ)である。実際の複屈折は、フィルムがTgに対して適正な温度で伸張されたならば、エラストマー含量によってそれほど変化しなかった。エラストマーで改質された実施例15に関しては、屈折率は、MD、TD及び厚さ方向においてそれぞれ1.5259、1.5262及び1.5010であった。最大複屈折はこの場合もまた0.025であった。これは、実施例10の場合と同様である。延伸されたブレンドの全てに関して、エラストマー含量にかかわらず、同様な値が観察された。
【0068】
4×4への伸張は、実施例1の流延フィルム以外の全てに関して可能であることが観察された。実施例2〜5のフィルムは、4×4に伸張できたが、より裂けやすく、従ってこの実施例には更に含めない。しかし、より高レベルへの伸張は、伸張温度を上昇させることによって容易に実現できたことに留意されたい。比較のため、名目上の二軸延伸及びヒートセットされたPETフィルムは、各方向のモジュラスが約400,000〜500,000psi、又は、実施例10(又は実施例15)の約2倍である。
【0069】
Bのレベルの増加により、これは更にPETの約1/3のモジュラス値まで低下する。従って、本発明のフィルムははるかに柔軟な触感を有する。PETの引裂抵抗は、引用された値よりも低い傾向があるが、それは、IV、追加延伸レベルなどの変動によってかなり異なる。公称値は約20〜30lb/inである。これは、純粋なAを含むヒートセットサンプルと同等であり、Bを5〜20%含むフィルムよりも良好である。しかし、B=40%では、引裂抵抗は、PETのほぼ2倍であり、Bの増加につれて更に増加するであろう。
【0070】
PETの曇り価は典型的には、粘着防止度、粉砕再生材料などに応じて1〜5%であるが、これは、ここに記載したフィルムよりも更に高い。ヒートセットPETフィルムの使用温度上限は典型的には150℃(300°F)と示されているが、許容収縮率によっては、210℃(410°F)もの値を得ることもできる。本発明のフィルムは、表III中の加熱撓み温度(THDT)データに基づき、名目上の175℃(350°F)まで熱安定性であった。従って、本発明のフィルム/繊維は、多くの従来の芳香族ポリエステルとほぼ同じ温度範囲で使用できる。
【0071】
PETフィルムは典型的には、UV攻撃を被りやすく、ほとんどの場合、屋外適用に耐えるためには一種の紫外線保護キャップ層を必要とする。そうでなければ、それらは急速に変色し且つ脆くなる傾向がある。しかし、本発明のフィルムは、同一条件に暴露した場合、変色又は特性低下の兆しを示さず、はるかに長期間その条件に耐えられる。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
実施例20
フィルムの動的機械的比較
当初は、約50〜80%のBを含むフィルムは、取り扱いが難しすぎ且つ/又は実際には有益でないであろうと予想された。このため、最初の試験では、これらのブレンドは作らなかった(従って、表I〜III中には存在しない)。しかし、中間のブレンド(実施例4、5及び6)において独特のソフトフィールが観察されたので、成分Bを65重量%含む別のフィルム(実施例20)を生成することに決めた。このフィルム(及びこの組成範囲の同様なフィルム)は、可塑化PVCと同様な触感及びテキスチャーを有していたが、環境にマイナスの側面はなかった。
【0075】
独特の特性をよりよく理解するために、非延伸ブレンドについて動的機械分析を行った、表IVは、実施例1〜9及び実施例20に関する室温における貯蔵弾性率E’及びtanδを示す。ブレンドが純粋なAから純粋なBに移行するにつれて、モジュラスは約0.9GPaから約0.25GPaまで低下することが観察される。これは、ガラス状のポリマー(A)からエラストマー(B)への移行に典型的である。これに対して、tanδは、純粋なAの場合の約0.01から、純粋なBの場合の0.15まで増加する。tanδは、ポリマーの粘性減衰の尺度であり、事実上、「振動」の周期当たりの熱として散逸されるエネルギーの量である。純粋なAのようなガラス状ポリマーは、減衰が非常に低く、従ってtanδの値が低い。
【0076】
フィルムが軟質PVCと同様な望ましい「可塑化」触感を有するためには、減衰は可能な限り高くなければならないが、フィルムはまた、ある程度の剛性を有さなければならないか、又は減衰固体よりも粘稠な液体によく似た触感を有するものとする。約20%のBを含むサンプルから約80%のBを含むサンプルまでは、所望の柔軟で、曲げやすい触感に関しては一致していた。これは、約0.3GPa超のモジュラスの値及び約0.02超のtanδの値に対応している。
【0077】
【表4】

【0078】
実施例21及び22
連続二軸延伸
MDOドラフター及び幅出し機からなる連続フィルムライン上で、純粋な脂環式ポリエステルA(実施例21)及びAとBとの40/60ブレンド(実施例22)を用いて、二軸延伸フィルムを生成した。後者は、前記実施例の結果に基づき、「ソフトフィール」ブレンドであった。いずれのフィルムも、シリカ粘着防止剤0.2重量%、HALS安定剤(CYASORB(登録商標)3529)0.3重量%、WESTON(登録商標)619オルガノホスファイト0.25重量%、及び紫外線吸収剤(CYASORB(登録商標)1164)0.5重量%を含んでいた。実施例22は更に、酸化防止剤を0.1重量%含んでいた。これらの添加剤は、濃縮された形態であり、重量計量供給装置を用いて添加した。
【0079】
2インチのDavis Standard押出機上で260〜275℃(500〜530°F)において流延フィルム(厚さ18mil)を生成した。次いで、最初にドラフターを用いて機械方向又は軸方向に伸張し、次いで幅出し機を用いて横断方向に伸張することによって、フィルムを連続的に延伸した。ドラフターに入るライン速度は、17.9fpm(フィート/分)であり、第1引取ロールから出るライン速度は53.7fpmであり、延伸比は3となった。ドラフターの再加熱及び引取ロール温度は実施例21ではいずれも75℃であったが、実施例22では室温に近く設定した。アニール及び冷却ロールは37℃に設定した。ドラフト後、幅出し機を通してフィルムを送り、実施例21については幅出し機中でフィルムを、80℃の予熱及びアニール温度を用いて横断方向に3.5倍伸張した。寸法安定性を向上させるために、クリップ収縮率を5%としながら、ヒートセットゾーンを190℃に設定した。実施例22については、予熱及び伸張温度は低温(ほぼ室温)に設定してから、190℃における同様なヒートセットを行った。いずれのフィルムも強靱で、180℃の温度まで寸法安定性であった。
【0080】
実施例23〜32
耐候性データ
(A)脂環式ポリエステル、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)と(B)Eastmam PCCEエラストマーとのペレット/ペレットブレンドを、2”Davis Standard押出機で260〜275℃(500〜530°F)で押出し、厚さ20milのフィルムに流延した。これらのブレンドはまた、表IV中に要約した種々の添加剤、例えば微晶質シリカ粘着防止剤(AB)、酸化防止剤(AO)Irganox 1010、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)CYASORB(登録商標)3529、オルガノホスファイト(P)WESTON(登録商標)619、及び紫外線吸収剤(UVA)CYASORB(登録商標)1164を含んでいた。続いて、フィルムを、T.M.Long Film(登録商標)伸張機上で3×3に二軸伸張した。伸張温度は、実施例23〜25については約75℃に、実施例26〜32については50℃に取った。延伸されたフィルムの一部を、更に、熱安定性を与えるために、拘束フレームを用いて190℃(375°F)において1分間ヒートセットすることによって更に改質した。
【0081】
Atlas Ci65暴露装置を使用して、ASTM G155試験法に従ってサイクル1法を用いて、フィルムを紫外線に暴露した。詳細には、屋外暴露法は、キセノンランプ、硼珪酸ガラス内部及び外部フィルター、340nmにおいて0.35W/m2/nmの輻射照度、63℃のブラックパネル温度、55%の相対湿度、及び完全に明るい周期を用い、120分毎に18分の散水を行った。総暴露時間は2000kJであった。重要な応答は、色の変化(ΔYI)、総光透過率の減少(ΔLT)及び脆化(破損)までの時間であった。亀裂が観察されるか又はサンプルが壊れた場合には、サンプルは破損した。
【0082】
PETフィルムは典型的には、UV攻撃を被りやすく、ほとんどの場合、屋外適用に耐えられるように高価なUVAを用いたある種のUV保護キャップ層を必要とする。そうでないと、それらは急速に変色し且つ脆くなる傾向がある。しかし、本発明のフィルムは、同様な条件に暴露された場合に、ほとんど変色を示さず、また、特性の低下を防ぐために少ない添加量の安価なHALSしか必要とせず、はるかに長期間耐えることができる。
【0083】
【表5】

【0084】
実施例33及び比較例1〜3
耐薬品性試験
耐薬品性試験を、脂環式ポリエステルAについて実施し、PETG(31モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含むEastman 6763;比較例1)、ポリカーボネート(MAKROLON 2608,Byer Corporation;比較例2)及びアクリル樹脂(PLEXIGLAS DR−101;比較例3)と比較した。詳細には、一連の種々の溶剤に関して環境応力亀裂が起こる臨界歪みを、各サンプルについて測定した。試験は、軟質の薄いフィルムについては臨界歪みを測定するのは困難であるため、延伸フィルムではなくて射出成形バー(厚さ1/8インチ,未延伸)について行った。延伸フィルムサンプルは、結晶性が安定化されるため、更に優れた耐薬品性を示すと予想される。
【0085】
実際の試験は、バーの種々の点で種々の歪みレベルを適用するために、絶えず曲率を変化させながら、Bergen楕円歪みジグ上でバーを曲げることを含む。溶剤は、曲げられたバーの表面にフィルターパッドの形態で適用し、10分間放置し、応力亀裂が発生し始める場合に臨界歪みを測定する。これらの値を、一連の溶剤に関して表VIに報告する。観察されるように、トルエン、アセトン、消毒用アルコール及びMEKのような多くの溶剤は、試験の歪み範囲内では脂環式ポリマーに応力亀裂を発生させなかった。これを、極めて小さい歪みで応力亀裂が発生する(例えば、トルエン及びアセトン)他のポリマーと比較した。イソオクタン及びクロロホルムを除いて、脂環式ポリエステルは比較例と同様か又はそれより良好な耐薬品性を有していた。更に、PETG、PC及びアクリル樹脂だけが、歪み結晶化されないポリマーであり、従って、延伸によってそれらの耐薬品性は改善されないであろう(これに対して、脂環式ポリマーは耐薬品性が改善される)。
【0086】
【表6】

【0087】
実施例34
繊維の紡糸
紡糸されたままの(未延伸)繊維を、実施例1に記載したポリエステルAを用いて10デニール/フィラメントで押出した。樹脂は、紡糸の前に60℃で8時間乾燥させた。直径0.3mmの孔を10個有する紡糸口金を用いて、繊維を生成した。押出条件は以下の通りとした:ゾーン1:165℃,ゾーン2:220℃,ゾーン3:240℃,ゾーン4:240℃,ゾーン5:250℃,ゾーン6:260℃,ゾーン7:270℃及びゾーン8:270℃。
【0088】
押出された繊維を、1000m/mで移動する2ゴデットロール上を通過させ、次いで1000m/mの速度でワインダー上に集めた。押出の間に繊維に繊維紡糸油剤(LK 5572E20)を加えた。
【0089】
次に、この繊維をトウライン上で延伸した。以下の条件を用いて、繊維を延伸及びヒートセットした:供給ヤーンのデニール:〜10,フィラメント/pkg:約10,クリール中のパッケージ数:5,水浴温度:70℃,蒸気管温度‐160℃。第1ロール速度は20m/分に設定し、第2ロール速度は45m/分に設定し、第3ロール速度は68m/分に設定した。HTロール速度及び温度はそれぞれ、68m/分及び150℃であった。得られた延伸比は3.4であった。ドラフト繊維は、約3のデニール/フィラメントを有し、全体として、優れた強度及び外観を有していた。
【0090】
実施例35
ボトルのブロー成形
実施例1に記載した脂環式ポリエステルAを用いてプレフォームを射出成形した。成形は、Boy22、実験室用射出成形機上で、標準20ozボトル金型を用いて行った。加工前に、樹脂を55℃において一晩、予備乾燥させた。
【0091】
樹脂の公称加工温度は260℃であり、金型温度は4℃(38°F)に設定した。金型中の冷却時間は10秒であり、全サイクル時間は30秒となった。射出保持圧力は1400psigであり、公称射出圧力は60psigであった。
【0092】
成形されたプレフォームから実験室用再加熱ブロー成形機を用いて、ボトルをブロー成形した。加熱ステーションは、加減抵抗器設定値131、132、135、90及び90に設定された(それぞれ、プレフォームの上端から最終領域まで)5個の石英ヒーターを用いた。再加熱時間は77秒であり、ブロー時間は5秒、ソーク時間は16秒、ブロー遅延時間は1.5秒であった。伸張ロッド圧力は50psigであり、ブロー圧力は140psigであった。得られたボトルは、通常のPETボトルに比べて優れた透明度/外観及び靭性を有していた。更に、これらは、樹脂がより低密度であるため、重量がより軽かった。
【0093】
実施例36
収縮フィルムの製造
脂環式ポリエステルAを用いて幅出し機で3.5倍に伸張することによって、一軸収縮フィルムを製造した。予熱及び伸張温度は80℃に設定し、アニールゾーン温度は60℃に設定した(これは、フィルムをヒートセットするためにアニール温度を190℃に設定した実施例21とは異なる)。ライン速度は35fpmであった。伸張後、10cm×10cmのサンプルを、95℃に設定した湯浴中に10秒間浸漬した。伸張方向の収縮は3cm又は元の長さに対して30%であった。屈折率は、TD、MD及び厚さ方向においてそれぞれ1.5259、1.5274及び1.5016であった。最大複屈折(TD−厚さ)は0.024であった。
【0094】
所望ならば、フィルムを更に伸張することによって(例えば3.5倍ではなく4倍)、より低温(例えば、75℃)で伸張することによって、又は歪み誘起結晶性を低下させるために(そしてそれによって収縮率を増大するために)ポリマー中にコモノマー(例えば、10モル%のネオペンチルグリコール)を添加することによって、更に高い収縮率を得ることができる。
【0095】
実施例37
ミクロボイド化フィルムの製造
この机上の実施例においては、脂環式ポリエステルAを、15重量%のポリプロピレン(ミクロボイド化剤として使用)とペレット/ペレットブレンドする。ポリエステル内に分散された、約1〜50μmの粒度分布を有するプロピレンを用いて、実施例20と同様にしてフィルムを押出する。次に、フィルムを幅出し機を通して送り、フィルム中にミクロボイドを生じさせるために80℃において3.5倍に伸張する。得られたミクロボイドは、フィルムを不透明にし且つ密度を低下させることが予測される。次に、より高い使用温度において寸法安定性となるように、フィルムを190℃においてヒートセットする。
【0096】
実施例38
虹色光制御フィルムの製造
この机上の実験例においては、脂環式ポリエステルAをPETと共押出して、多くの交互層を有するフィルム(即ち、脂環式ポリエステル/PET/脂環式ポリエステル/PETなど)を形成する。脂環式ポリエステルの押出条件は実施例1に記載したものである。PETは、名目上の280℃の溶融温度を用いて押出し、ダイ温度は、脂環式ポリエステルとより良く適合するように約250℃に低下させる。多数の交互層を生成するように設計されたフィードブロック/マニホールド中にポリマーをまとめる。この実施例に関しては、外層にキャップとして脂環式ポリエステルを有し(耐薬品性のため)且つ外層以外では脂環式ポリエステル層がPET層と交互になっている、厚さの等しい51の層を生成する。最初の流延フィルムは251ミクロンである。このフィルムを次に、90℃の名目上伸張温度で機械方向及び横断方向の両方に3倍で二軸延伸する。これによって、最終厚さ28ミクロンの延伸フィルムが得られる。従って、各層は厚さが約0.54ミクロンと予測される。脂環式ポリマーの屈折率は、それほど変化しないと予想され、MD及びTDの両方向において名目上1.51であると予測される。これに対して、PETの屈折率は各方向においてほぼ1.66であることが予測される。
【0097】
層間における屈折率のずれが大きいため、各界面においてかなりの反射が存在するであろう。更に、最終の個々の層厚さは可視光の波長と同じであるので、かなりの光干渉作用が起こり、その結果、反射光と透過光との間に反射の違いが生じるであろう。このため、虹色効果が生じる。より長波長では、特に約2μmの赤外線の波長では、個々の層は波長の約1/4の厚さであり、従って、この赤外線エネルギーの極めて効果的な反射体となる。
【0098】
別のアプローチとして、前記フィルムを一軸延伸することによって、各層において各方向で異なる屈折率を生じることができる。例えば、4×1の伸張の場合には、PET層は、伸張方向においては約1.66の屈折率を有すると予測されるのに対して、非延伸方向では1.56の屈折率を有すると予測される。脂環式ポリエステルの屈折率は、それほど変化せず、いずれの方向においても約1.51であると考えられる。流延フィルムを最初に100ミクロンに調整する場合には、4×1の伸張後の最終厚さは、25ミクロン又は0.5ミクロン/層(この場合もまた、可視光の波長範囲である)と予測される。前記例とは異なり、屈折率のずれは、非伸張方向よりも伸張方向において大きいと予測され、従ってこの方向においては反射光の割合がより高いであろう(層厚さよりも約4倍大きい波長の場合には特に)。従って、伸張方向に平行に偏光された光波は、垂直に偏光された光波よりも多くの反射を受けると予想される。最終的な効果は、フィルムが一種の偏光子として働き、ある光波の向きのみを優先的に通過させることである。前記例の他の変化は、層数を単に増加させる(反射率を増加させる)ことによって、又は層の厚さを変化させる(異なる波長を反射させる)ことによって容易に想定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基;ジオール残基の総モル%に基づき70〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールの残基;並びに総ジオール残基に基づき0〜30モル%の、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールの残基を含んでなる脂環式ポリエステルを、造形品の総重量に基づき、5〜100重量%と
(ii)ポリエステルエラストマー0〜95重量%とを
含んでなる、少なくとも1方向に伸張することによって延伸された造形品。
【請求項2】
前記の少なくとも1種の二酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり且つ前記のジオール残基が総ジオール残基に基づき95〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含む請求項1に記載の造形品。
【請求項3】
前記脂環式ポリエステルがポリ(1,3−シクロヘキシレンジメチレン−1,3−シクロヘキサンジカルボキシレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)又はポリ(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)である請求項1に記載の造形品。
【請求項4】
前記ポリエステルエラストマーが、
(i)炭素数2〜20の置換又は非置換の、直鎖又は分岐鎖脂肪族ジカルボン酸、炭素数5〜20の置換又は非置換の、直鎖又は分岐鎖脂環式ジカルボン酸及び炭素数6〜20の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の二酸の残基を含んでなる二酸残基;並びに
(ii)炭素数2〜20の脂肪族ジオール、平均分子量400〜12000のポリ(オキシアルキレン)グリコール及びコポリ(オキシアルキレン)グリコール、炭素数5〜20の脂環式ジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の、直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含んでなるジオール残基
を含む請求項1に記載の造形品。
【請求項5】
前記ポリエステルエラストマーの二酸残基が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;テレフタル酸;イソフタル酸;ソジオスルホイソフタル酸;アジピン酸;グルタル酸;コハク酸;アゼライン酸;ダイマー酸;及び2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基を含み;且つ前記ポリエステルエラストマーのジオール残基がエチレングリコール;1,3−プロパンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール:2−メチルプロパンジオール;2,2−ジメチルプロパンジオール;1,6−ヘキサンジオール;デカンジオール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;ポリ(エチレンエーテル)グリコール;ポリ(プロピレンエーテル)グリコール;及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールの残基を含む請求項4に記載の造形品。
【請求項6】
前記ポリエステルエラストマーが二酸残基の総モルに基づき少なくとも90モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基;総ジオール残基に基づき2〜30モル%の平均分子量400〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールと総ジオール残基に基づき98〜70モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールの残基;並びに総二酸残基に基づき0.1〜2モル%の、トリメリット酸、トリメリット酸無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれた少なくとも1種の分岐剤の残基を含む請求項5に記載の造形品。
【請求項7】
前記ポリエステルエラストマーが二酸残基の総モルに基づき少なくとも95モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基;及び総ジオール残基に基づき98〜70モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含む請求項6に記載の造形品。
【請求項8】
前記造形品が5〜95重量%のポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)及び5〜95重量%の前記ポリエステルエラストマーを含む請求項3又は7に記載の造形品。
【請求項9】
前記造形品が、その総重量に基づき、30〜100重量%の前記脂環式ポリエステル及び0〜70重量%の前記ポリエステルエラストマーを含む請求項6又は7に記載の造形品。
【請求項10】
前記造形品が、その総重量に基づき、90〜100重量%の前記脂環式ポリエステル及び0〜10重量%の前記ポリエステルエラストマーを含む請求項9に記載の造形品。
【請求項11】
前記造形品が、その総重量に基づき、30〜50重量%の前記脂環式ポリエステル及び50〜70重量%の前記ポリエステルエラストマーを含む請求項9に記載の造形品。
【請求項12】
ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、螢光増白剤及び酸化安定剤からなる群から選ばれた少なくとも1種の添加剤を更に含む請求項5に記載の造形品。
【請求項13】
少なくとも0.01の複屈折を有する請求項7に記載の造形品。
【請求項14】
前記製品がボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ又は成形品である請求項13に記載の造形品。
【請求項15】
前記製品がヒートセット化されていているか、ミクロボイド化されているか、又は収縮フィルムである請求項14に記載の造形品。
【請求項16】
前記製品が1つ又はそれ以上の層を含む請求項14に記載の造形品。
【請求項17】
前記製品が複数の層を含み、少なくとも1つの層が1μm又はそれ以下の厚さを有する請求項16に記載の造形品。
【請求項18】
前記製品が異形横断面を有するステープル、モノフィラメント又はマルチフィラメントである請求項14に記載の造形品。
【請求項19】
(i)二酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり且つ脂環式ポリエステルがジオール残基の総モルに基づき90〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含んでなる、造形品の総重量%に基づき、30〜100重量%の前記脂環式ポリエステル;並びに
(ii)二酸残基の総モルに基づき、少なくとも90モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の二酸の残基;総ジオール残基に基づき2〜30モル%の平均分子量400〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基と98〜70モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のジオール残基;並びに総二酸残基に基づき0.1〜2モル%の、トリメリット酸、トリメリット酸無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれた少なくとも1種の分岐剤の残基を含んでなる前記ポリエステルエラストマー0〜70重量%
を含む請求項1に記載の造形品。
【請求項20】
前記製品が、その総重量に基づき、90〜100重量%の前記脂環式ポリエステル及び0〜10重量%の前記ポリエステルエラストマーを含む請求項19に記載の造形品。
【請求項21】
前記製品が、その総重量に基づき、30〜50重量%の前記脂環式ポリエステル及び50〜70重量%の前記ポリエステルエラストマーを含む請求項19に記載の造形品。
【請求項22】
ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、螢光増白剤及び酸化安定剤のうち1種又はそれ以上を更に含む請求項19に記載の造形品。
【請求項23】
前記製品がボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ又は成形品である請求項19に記載の造形品。
【請求項24】
前記製品がヒートセットされているか、収縮フィルムであるか又は二軸延伸フィルムである請求項23に記載の造形品。
【請求項25】
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の二酸の残基;並びにジオール残基の総モル%に基づき70〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を含んでなる脂環式ポリエステルを、組成物の総重量に基づき、20〜80重量%と
(ii)ポリエステルエラストマー20〜80重量%とを
含んでなり、25℃において貯蔵弾性率が少なくとも0.3GPaであり且つtanδが少なくとも0.02であるポリエステル組成物。
【請求項26】
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基;及びジオール残基の総モル%に基づき90〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基から実質的になる脂環式ポリエステル、組成物の総重量に基づき、30〜80重量%と
(ii)二酸残基の総モルに基づき少なくとも90モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はテレフタル酸の残基;総ジオール残基に基づき2〜30モル%の、平均分子量400〜2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基及び98〜70モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノール又は1,4−ブタンジオールの残基;並びに総二酸又はジオール残基に基づき0.1〜2モル%の、トリメリット酸、トリメリット酸無水物又はピロメリット酸二無水物の残基から実質的になるポリエステルエラストマー20〜70重量%
から実質的になる請求項25に記載のポリエステル組成物。
【請求項27】
前記造形品の重量%に基づき30〜50重量%の前記脂環式ポリエステル及び50〜70重量%の前記ポリエステルエラストマーを含む請求項25に記載のポリエステル組成物。
【請求項28】
前記二酸残基が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含み且つ前記ジオール残基が1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含む請求項25に記載のポリエステル組成物。
【請求項29】
ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、螢光増白剤又は及び酸化安定剤のうち1種又はそれ以上を実質的に更に含む請求項26に記載のポリエステル組成物。
【請求項30】
前記製品がボトル、フィルム、シート、異形材、繊維、チューブ又は成形品である請求項26に記載の造形品。
【請求項31】
前記製品がヒートセットされているか、収縮フィルムであるか又は二軸延伸フィルムである請求項30に記載の造形品。
【請求項32】
前記製品が1つ又はそれ以上の層を含む請求項30に記載の造形品。
【請求項33】
前記製品が複数の層を含み、少なくとも1つの層が1μm又はそれ以下の厚さを有する請求項32に記載の造形品。
【請求項34】
(i)二酸残基の総モル%に基づき98〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の二酸の残基;並びにジオール残基の総モル%に基づき70〜100モル%の、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を含んでなる脂環式ポリエステルを、造形品の総重量に基づき、20〜80重量%と
(ii)ポリエステルエラストマー20〜80重量%とを
含んでなり、25℃において貯蔵弾性率が少なくとも0.3GPaであり且つtanδが少なくとも0.02であるポリエステル組成物の製造方法。

【公表番号】特表2007−517926(P2007−517926A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542631(P2006−542631)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/039544
【国際公開番号】WO2005/061580
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】