説明

脂環式構造及びトリアジン構造を含む重合体、並びに当該重合体を含んでなる透明材料

【課題】耐熱性が高いトリアジン構造を含有するポリマーを提供する。
【解決手段】1種類の下記式(1)で表される繰り返し単位からなる、又は2種以上の下記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式構造及びトリアジン構造を含む重合体、並びに当該重合体を含んでなる透明材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、技術の多様化に伴い、金属材料とプラスチックの複合材料が重要となっているが、金属密着性のある耐熱性透明プラスチックは非常に限られる。
特許文献1〜7が開示するトリアジン構造を含有するポリマーは、高耐熱性の透明エンジニアリングプラスチックとしてだけでなく、トリアジン構造に起因する金属密着性を活かし、金属微粒子のコンポジット材料として、あるいは、ワニスとして、電子部品用の熱硬化材料又は光硬化材料、金属表面や感熱紙等のトップコート、フォトレジストの密着性向上のための下地膜等としての利用が考えられる。
しかしながら、特許文献1〜7が開示するポリマーでは、上記用途において耐熱性が十分とはいえず、耐熱性のさらなる向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−070248号公報
【特許文献2】特開2000−248048号公報
【特許文献3】特表平1−501481号公報
【特許文献4】特開平7−113009号公報
【特許文献5】特開昭60−91349号公報
【特許文献6】特表2004−505155号公報
【特許文献7】特表平9−507312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐熱性が高いトリアジン構造を含有するポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の重合体等が提供される。
1.1種類の下記式(1)で表される繰り返し単位からなる、又は2種以上の下記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体。
【化1】

(式中、R及びrは、それぞれ置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基、置換又は非置換の炭素数6〜30の2価の芳香族基、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、又はエーテル結合である。
重合体が1種類の繰り返し単位からなる場合には、R及びrの少なくとも1つが置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である。
重合体が2種以上の繰り返し単位からなる場合には、いずれかの繰り返し単位のR及びrの少なくとも1つが置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である。
、R、r及びrは、それぞれ置換又は非置換の炭素数6〜30の2価の芳香族基、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、炭素数1〜20の置換又は非置換の2価の分岐状脂肪族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基、又は単結合である。)
2.1種類の前記式(1)で表される繰り返し単位からなる1に記載の重合体。
3.R及びrの少なくとも1つが、アダマンタン構造を含む置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である1又は2に記載の重合体。
4.R及びrの少なくとも1つが、下記式(3)〜(8)で表わされる2価の基のいずれかである1〜3のいずれかに記載の重合体。
【化2】

(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
m’’は、0以上28以下の整数であり、m’’が2個以上の場合、複数のm’’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
5.R及びRが、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である1〜4のいずれかに記載の重合体。
6.r及びrが、単結合である1〜5のいずれかに記載の重合体。
7.下記式(101)、(102)又は(103)で表わされる1〜6のいずれかに記載の重合体。
【化3】

(式中、R、R、R、r、r、r及びR’は、上記と同様である。
nは10以上10000以下の整数である。
mは0以上22以下の整数であり、m’は0以上15以下の整数である。m、m’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい)
8.下記式(200)で表される化合物。
【化4】

(式中、R’及びm’は上記と同様である。
X’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)
9.下記式(201)で表される化合物と、下記式(202)で表される化合物とを重合する重合体の製造方法。
【化5】

(R、R、R、r、r、r及びX’は、上記と同様である。)
10.前記式(201)で表される化合物の水溶液と、前記式(202)で表される化合物の水とは相溶しない溶媒からなる溶液を、塩基及び相間移動触媒存在下において、界面重縮合反応により重合する9に記載の重合体の製造方法。
11.9又は10に記載の製造方法により得られる重合体。
12.1〜7及び11のいずれかに記載の重合体を含む透明材料。
13.1〜7及び11のいずれかに記載の重合体を有機溶媒に溶解させた塗料。
14.13に記載の塗料を用いて形成される薄膜。
15.12に記載の透明材料又は14に記載の薄膜を含む部材。
16.15に記載の部材を備える装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性が高いトリアジン構造を含有するポリマーが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例2で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【図2】実施例3で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【図3】実施例4で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【図4】実施例5で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【図5】実施例6で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【図6】実施例7で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【図7】比較例1で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【図8】比較例2で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【図9】比較例3で製造した重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた屈折率と消衰係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の重合体は、1種類の下記式(1)で表される繰り返し単位からなる、又は2種以上の下記式(1)で表される繰り返し単位からなる。
【化6】

(式中、R及びrは、それぞれ置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基、置換又は非置換の炭素数6〜30の2価の芳香族基、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、又はエーテル結合(−O−)である。
重合体が1種類の繰り返し単位からなる場合には、R及びrの少なくとも1つが置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である。
重合体が2種以上の繰り返し単位からなる場合には、いずれかの繰り返し単位のR及びrの少なくとも1つが置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である。
、R、r及びrは、それぞれ置換又は非置換の炭素数6〜30の2価の芳香族基、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基、又は単結合である。)
【0009】
本発明の重合体は、R及びrの少なくとも1つが置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である式(1)で表わされる繰り返し単位を含めばよく、好ましくはR及びrの少なくとも1つが置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である式(1)で表わされる繰り返し単位からなる。
R及びrの少なくとも1つが脂環構造を有することにより、重合体の耐熱性を大きく向上させることができる。また、Rが脂環構造を有することにより、複屈折率も大きく向上させることができる。
尚、重合体の端部は、水素原子又はハロゲン原子である。
【0010】
式(1)で表わされる繰り返し単位において、好ましくはR及びrの少なくとも1つが、アダマンタン構造を含む置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基であり、より好ましくはRが、アダマンタン構造を含む置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である。
【0011】
本発明の重合体において、「アダマンタン構造を含む」とは、例えばR及びrの少なくとも1つが下記式(2)で表わされる構造を含むことをいう。
【化7】

(式中、Xは、式(2)に含まれる各炭素原子と直接に結合する1つの原子のみを表す。
Xは、式(2)に含まれない他の原子と結合していてもよい。
Xは、それぞれ水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ケイ素原子、リン原子又は硫黄原子である。
Xは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
例えばRが(−フェニレン基−アダマンチレン基−フェニレン基−)であった場合には、Rは、式(2)の複数のXのうち2つが炭素原子、残りのXが全て水素原子のアダマンタン構造を含む。従って、Rは上記式(2)で表されるアダマンタン構造を少なくとも1つ含むことになる。同様に、Rが(−フェニレン基−ジアマンチレン基−フェニレン基−)であった場合には、式(2)の複数のXのうち4つが炭素原子、残りのXが全て水素原子のアダマンタン構造を含む。従って、Rは上記式(2)で表されるアダマンタン構造を少なくとも1つ含むことになる。
【0013】
Xが、式(2)に含まれない他の原子と結合するということを以下で説明する。
例えばRが1つのトリクロロメチル基を置換基として有するアダマンチレン基であった場合には、式(2)の複数のXのうち1つが炭素原子、2つが酸素原子、残りのXが全て水素原子である。この場合、炭素原子であるXは、式(2)に含まれる炭素原子と直接結合している他、式(2)に含まれない他の原子である塩素原子と直接結合している。このように、Xは式(2)に含まれない他の原子と結合していてもよい。
【化8】

【0014】
式(1)で表わされる繰り返し単位において、好ましくはR及びrの少なくとも1つが、下記式(3)〜(8)で表わされる2価の基のいずれかであり、より好ましくはRが、下記式(3)〜(8)で表わされる2価の基のいずれかである。
【化9】

(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
m’’は、0以上28以下の整数であり、m’’が2個以上の場合、複数のm’’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【0015】
式(3)〜(8)で表わされる2価の基は、好ましくは式(3)及び(4)で表わされる2価の基である。
式(3)〜(8)で表わされる2価の基の具体例を以下に示す。
【化10】

【化11】

【化12】

(式中、R’及びm’’は上記と同様である。)
【0016】
R’の特に好ましい具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基、アダマンチル基、ビアダマンチル基、ジメチルビアダマンチル基、ジブチルビアダマンチル基、ジアマンチル基、トリアマンチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロアダマンチル基、及びこれら置換基2以上を組み合わせてなる置換基が挙げられる。
R’が上述した置換基の場合、置換基自身の分子運動又は熱分解によって重合体の耐熱性、強度、有機溶媒溶解性、成形性等が低下するおそれがない。
【0017】
式(1)で表わされる繰り返し単位において、R及びRは、好ましくはそれぞれ置換又は非置換のフェニレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
式(1)で表わされる繰り返し単位において、r及びrは、好ましくは単結合である。
【0018】
本発明の重合体を構成する式(1)で表わされる繰り返し単位の数は、10以上10000以下が好ましい。
上記繰り返し単位の数が10未満の場合、ポリマーとしての物性が発現できないおそれがある。一方、10000超の場合は、重合体の有機溶剤に対する溶解性が低くなり、例えばワニスとしての利用が困難になったり、ポリマー構造の特定が不可能となるおそれがある。
但し、低分子量オリゴマーのワニスとして塗布後に低温硬化して使用する場合においてはnが10未満の場合でも好適に使用できる場合がある。また、本発明のポリマーを用いた硬化性ワニスとして、塗布後に超高分子量ポリマーとして皮膜等として使用する場合においては、硬化後のポリマーの繰り返し単位の数として10000を越える整数となっても好適に使用することができる場合がある。
【0019】
本発明の重合体は、好ましくは下記式(101)、(102)又は(103)で表わされる。
【化13】

(式中、R、R、R、r、r、r及びR’は、上記と同様である。
nは10以上10000以下の整数である。
mは0以上22以下の整数であり、m’は0以上15以下の整数である。m、m’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい)
【0020】
尚、式(101)及び(102)においては、R’は、上記アダマンタン部位構造及びアリーレン部位のいずれにも置換してよい。
【0021】
以下、各置換基について説明する。
R、R、R、r、r及びrの炭素数5〜50の2価の脂環式基は単環でも複環のいずれでもよく、例えばアダマンタン構造、パーフルオロアダマンタン構造、ビアダマンタン構造、ジアマンタン構造、トリアマンタン構造、ノルボルネン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、又はこれらシクロアルカン構造を構成する1つの炭素の代わりにヘテロ原子を有する環構造を含む炭素数5〜50の2価の脂環式基が挙げられる。
上記のうち、好ましくはアダマンタン構造、パーフルオロアダマンタン構造、ビアダマンタン構造、ジアマンタン構造又はトリアマンタン構造を含む炭素数5〜50の2価の脂環式基であり、より好ましくはアダマンチレン基、パーフルオロアダマンチレン基、ビアダマンチレン基、ジアマンチレン基又はトリアマンチレン基のいずれかである。
【0022】
R、R、R、r、r及びrの炭素数6〜30の2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、テトラフルオロフェニレン基が挙げられ、好ましくはフェニレン基である。
【0023】
R、R、R、r、r及びrの炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ジフルオロメチレン基が挙げられる。
【0024】
R、R、R、r、r及びrの炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基としては、メチルメチレン基、トリフルオロメチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基が挙げられる。
【0025】
上述の2価の脂環式基、芳香族基、直鎖状脂肪族基及び分岐状脂肪族基は、いずれもその一部にエーテル結合(−O−)、エステル結合(−CO−)、炭酸エステル結合(−OCO−)、チオエーテル結合(−S−)、チオエステル結合(−SO−)を有してもよく、また、これらにさらにヘテロ原子が結合した結合を含んでもよい。
【0026】
R’の炭素数6〜30の芳香族置換基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
R’の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基及び炭素数5〜50の脂環式置換基としては、R及びrで説明した2価の置換基に対応する1価の置換基が挙げられる。
【0027】
「置換又は非置換」の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン元素、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基が置換していてもよい。
尚、上記の炭素数6〜30の置換の芳香族置換基、炭素数1〜20の置換の直鎖状脂肪族置換基、炭素数3〜20の置換の分岐状脂肪族置換基及び炭素数5〜50の置換の脂環式置換基の「置換」とは、ハロゲン元素、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基のいずれかの置換基で置換されていることを意味する。
【0028】
本発明の重合体の具体例を以下に示す。
【化14】

【0029】
本発明の脂環構造及びトリアジン構造を含有する重合体は、下記式(201)で表される化合物と、下記式(202)で表される化合物とを重合することにより製造できる。
【化15】

(R、R、R、r、r及びrは、上記と同様である。
X’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)
【0030】
重合をする際の式(201)で表わされる化合物と式(202)で表わされる化合物の混合比は、いかなる比率でもよいが、好ましくは式(201)で表わされる化合物:式(202)で表わされる化合物=45:55〜55:45(モル比)であり、より好ましくは等モルである。
【0031】
重合に用いる式(202)で表わされる化合物は、好ましくは下記式(200)で表わされる化合物である。
【化16】

(式中、R’、m’及びX’は上記と同様である。)
【0032】
例えば、式(201)及び(202)で表される化合物を共存させ、段階的に混合する、あるいは傾斜的に共存比を変化させ、熱、紫外線、赤外線、電子線、プラズマ等を用いた重縮合反応をすることにより、選択率及び収率よく本発明の重合体を製造することができる。
【0033】
好ましい重合条件は、用いる化合物及び得られる重合体の構造、所望する物性により異なるが、塩基等の縮合剤を用いて重縮合反応を実施する場合は、使用する縮合剤種やモノマー種により好ましい重合温度範囲が異なるので一概に規定できないが、−100℃〜300℃の範囲の温度で加熱することにより重縮合反応を実施することができる。
【0034】
本発明の重合体の製造は、界面重縮合反応により重合すると好ましい。
界面重縮合反応とせず、式(201)で表される化合物の水溶液と式(202)で表される化合物を混合して重合、若しくは、有機溶媒中で式(201)で表される化合物と式(202)で表される化合物を混合して重合した場合、式(202)で表される化合物と塩基が不溶性の塩を形成して重合が進行しないおそれがある。但し、塩基等の縮合剤を用いる重縮合反応以外の方法による場合はこの限りではない。
【0035】
界面重縮合は、互いに相溶しない溶媒を2種以上を用いて実施する。
互いに相溶しない溶媒の組み合わせは、重合に支障がない限り特に限定されず、例えば高極性溶媒と低極性溶媒の組み合わせが挙げられる。
高極性溶媒としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−プロパノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等)が挙げられる。また、低極性溶媒としては、脂肪族系溶媒(n−ヘキサン、n−ペンタン、シクロヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、テトラクロロエタン等)、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、パーフルオロベンゼン等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールメチルエーテル等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等)が挙げられる。
【0036】
本発明の重合体の製造では、好ましくは式(201)で表される化合物の水溶液と、式(202)で表される化合物の水とは相溶しない溶媒からなる溶液を、塩基及び相間移動触媒存在下において、界面重縮合反応により重合すると好ましい。
水とは相溶しない溶媒とは、例えば上記の低極性溶媒である。
【0037】
界面重縮合反応に用いる塩基は、本発明の2種のモノマー(式(201)で表わされる化合物及び式(202)で表わされる化合物)を縮合させる機能を有する塩基であれば、溶媒に溶解しても溶解しなくてもよい。
無機塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、金属ナトリウム、金属カリウム等が挙げられる。また、有機塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等が挙げられる。
塩基の添加量は、モノマー2種の内少ない方の仕込モル数の1等量以上〜10等量以下が好ましい。1等量未満では未反応のモノマーが残留するおそれがあり、10等量超では反応に関与しない塩基が多くなり、経済的でなく、さらにその除去工程が煩雑になってしまうおそれがある。
【0038】
相間移動触媒は、重合時の諸条件下において相間移動触媒としての機能を発現すればいかなるものでもよいが、オニウム化合物を用いるのが一般的である。
オニウム化合物としてはヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド、テトラフェニルアンモニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
相関移動触媒の添加量は、モノマー2種の内少ない方の仕込モル数の0.01等量以上〜10等量以下が好ましい。0.01等量未満では相間移動触媒としての機能を発現しないおそれがあり、10等量超では、その除去工程が煩雑になってしまうおそれがある。
【0039】
式(201)で表されるモノマーは従来公知の方法(例えば、J.Polym.Sci.Part A,3,2673(1965)等)で製造することができる。また式(202)で表されるモノマーは、従来公知の方法に倣い、例えば塩化シアヌルとアルコール化合物を、塩基存在下で縮合させ製造することができる。具体的な例として、1−アダマンタノール及びTHFの溶液を作成し、窒素雰囲気下でn−ブチルリチウムを加え、次いで塩化シアヌルのTHF溶液を添加し、加熱還流して反応させ製造することができる。
製造条件は、モノマーの所望の構造により異なるが、反応剤、触媒、原料の濃度や添加比率、溶媒の添加量、反応温度、反応時間、反応後処理方法等により制御することが可能である。
【0040】
尚、製造したモノマーは、好ましくは精製して用いる。精製したモノマーを用いることにより、得られる重合体の透明性、耐熱性及び強度に加えて安定性を向上させることができる。
モノマーの精製方法としては、イオン交換樹脂処理、再沈殿、再結晶、精密ろ過、乾燥等が挙げられ、これら精製方法によりモノマーに含まれるFe3+、Cl、Na、K、Ca2+等のイオン性不純物、反応溶媒、後処理溶媒、水分等を取り除くことができる。
【0041】
また、触媒又は反応剤を添加して本発明の重合体を製造する場合には、得られる重合体を上述の精製方法を用いて精製することにより、透明性、耐熱性及び強度に加えて安定性を向上させることができる。
【0042】
本発明では、トリアジン構造を含有するポリマーが、脂環式構造、特に、炭素からなる化合物のうち、地球上で最も高強度かつ高安定性であるダイヤモンドと共通の構造を有するアダマンタン構造等を含有することにより、ポリマー中のエーテル結合の自由回転を拘束することが可能となり、ポリマーの耐熱性を飛躍的に向上できる。
また、本発明においては、トリアジン構造を含有するポリマーの主鎖が脂環式構造を有することによって複屈折率が高くなる。公知のトリアジン構造を含むポリマーは、トリアジン構造に起因して、複屈折率が高かった。特に光情報処理装置としての情報処理速度の向上の要求から、複屈折率のさらなる向上が求められているので、複屈折率が高いことは有用である。
【0043】
本発明の重合体は、ポリマーが脂環式構造を含むことによる高い耐熱性、主鎖が脂環式構造を有することによる高い複屈折率、及びトリアジン構造を含むポリマーの特徴である高い金属密着性を生かし種々の光学材料に好適に適用できる。具体的には、光学レンズ、光ファイバー、光導波路、フォトニック結晶等の種々の光情報処理装置や、フラットパネルディスプレー等の表示装置に適用でき、これらの性能及び耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0044】
本発明のトリアジン構造を含有するポリマーを含む透明材料は、特に紫外線光領域の高透明性、低吸水性、高強度、高耐熱性を有し、且つ、ポリマーに用いるモノマーの構造、モノマー種の組み合わせ、使用モル比を適切に選択し、重合することにより、前記特性に加えて、有機溶媒溶解性や成形性の付与、屈折率や誘電率を所望の値に調整することが可能となる。
尚、本発明の透明材料には、本発明のポリマーのほかに樹脂成形分野で使用される各種添加剤を含んでもよい。
【0045】
本発明の透明材料は公知の成形方法によって各種成形品(シリコンウェハ等の基板に形成した薄膜、フィルム、薄板、ファイバー等)を製造することができる。
成形方法としては、射出成型法、射出圧縮成型法、押出成型法、ブロー成型法、加圧成型法、トランスファー成型法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、CVD法等が挙げられ、これら成形方法を所望の製品の形態、性能に応じて適宜選択できる。
また、モノマーを、又は、上述の方法で予備重合した、熱可塑性を有した状態に重合度を調整した低分子量ポリマー(オリゴマー)として得てから、所望の形状に成型してから熱又は紫外光により硬化して所望の形状のブロック、プレート、フィルムを作製することが出来る。
【0046】
本発明の重合体は、従来公知の有機溶剤に溶解し熱又は紫外光により硬化性のワニスとして利用することができ、従来公知のワニスと同様に、基板上にスピンコート、ディップコートにより薄膜を形成させたり、金属表面等にコートして皮膜を作製したり、半導体チップのリードフレームの微小な空隙等にポッティングすることによりを充填硬化することも可能である。
また、得られた成形体を熱、紫外線、赤外線、電子線、プラズマ等により硬化(環化付加反応)させてもよい。
【0047】
スピンコーティング法等により透明材料を薄膜状に成形する場合、本発明の透明材料を有機溶媒に溶解させた塗料を使用することができる。
有機溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、DMF、NMP、ジメチルアセトアミド、DMSO、アニソール、アセトフェノン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、THF、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
【0048】
塗料中における本発明の透明材料の濃度は、塗料の粘度や成形方法等を考慮して適宜調製すればよい。
薄膜の厚さは特に限定されないが、一般に10nm〜10μm程度のものが好適に使用される。
尚、本発明の透明材料からなるフィルムの厚さは1μm〜1mm程度であり、薄板の厚さは1mm〜1cm程度である。
【0049】
本発明の透明材料は、公知の透明材料が利用されている部材として使用することができる。具体的には、FPD保護膜等の透明フィルム、光拡散板、光反射板等の透明薄板、光ファイバー、光導波路等の線状透明部材、フォトニック結晶等の光情報処理用部材が挙げられる。
上記部材は、装置の構成部材として用いることができ、例えば、光情報処理装置、FPD等の表示装置の構成部材として使用できる。
【0050】
本発明の透明材料は、公知の透明材料が利用されている部材に使用できる透明性を有する。透明性を有するとは、光の一部又は全部を吸収せずに透過することを意味する。
本発明の透明材料では、透明性の指標である最大非透過光波長(λcutoff)が150nm以上325nm以下の範囲であることが好ましい。最大非透過光波長が325nmを超えると黄色を帯びるおそれがある。
本発明の透明材料では、また透明性の指標である透過率80%の波長(λ80)が、380nm未満であることが好ましい。透過率80%波長が可視光領域になった場合には、着色が認められる可能性があるからである。好適には、360nm未満である。透明性の観点からは、透過率80%波長は短い程よい。最も短い波長としては、例えば、最大非透過光波長の下限値が挙げられる。
最大非透過光波長及び透過率80%波長は、例えば上記式(3)〜(8)の置換数m’’を調整することにより調整できる。
尚、最大非透過光波長及び透過率80%波長はフィルム状試料の透過スペクトルを紫外可視分光装置にて測定して決定できる。
また、本発明の透明材料においては、特に紫外領域における透明性の指標として、分光エリプソメトリーによる消衰係数(k)の測定結果を採用できる。併せて、光学材料として用いる際の重要な物性である、各波長における屈折率(n)も分光エリプソメトリーにより求めるがことができる。
【0051】
耐熱性の指標であるガラス転移温度(T)は180℃以上400℃以下の範囲であることが好ましい。また、10%重量減少温度(Td10)が300℃以上600℃以下の範囲であることが好ましい。
尚、ガラス転移温度は示差走査熱量計にて測定でき、10%重量減少温度は、窒素雰囲気下、示差熱熱重量同時測定装置にて測定できる。
【実施例】
【0052】
実施例1
容量500ミリリットルのフラスコ中で、1−アダマンタノール(15.2g、100ミリモル)及びTHF(400ミリリットル)の溶液を調製し、窒素雰囲気下でn−ブチルリチウム(2.6M n−ヘキサン懸濁液、38ミリリットル、100ミリモル)を室温下で加え、15分間攪拌した。次いで、塩化シアヌル(18.4g、100ミリモル)のTHF(100ミリリットル)溶液を−10℃で一度に加え、その後5時間加熱還流した。反応後、放冷し室温とした後、副生した白色の塩化リチウム固体をろ別し、減圧下濃縮し白色の粗生成物固体を得た。
得られた粗生成物固体を、酢酸エチルにより2回再結晶を行った後、昇華精製(150℃、0.1Torr)により精製し、下記式(8)で表される合成中間体を白色針状結晶として得た(18g、収率60%)。式(8)で表される化合物の融点は190〜191℃であった。
【化17】

【0053】
合成した式(8)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.71(m,6H,adamantane),2.26(m,3H,adamantane),2.29(d,6H,adamantane)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=25.9、31.1、40.8、87.7、169.8、171.7
FT-IR(KBr,cm-1):2915(C-H,adamantane)、2848(C-H,adamantane)、1548(C=N)、1486(C-O-C)、1053(C-O-C)、847(C-Cl)
【0054】
合成例1
容量500ミリリットルのフラスコに、塩化シアヌル(36.9g、200ミリモル)とメタノール(200ミリリットル)を加え、氷浴にて−5〜0℃に冷却し、炭酸水素ナトリウム(16.8g、200ミリモル)を加えて1時間攪拌し、次いで室温にて1時間攪拌した。反応後、蒸留水(200ミリリットル)に投入し攪拌した後、析出した白色粉末をろ別した。白色粉末をジクロロメタン(200ミリリットル)に溶解させ、無水硫酸マグネシウムを加え脱水した後、硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液を減圧濃縮し白色の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をn−ヘキサンにより2回再結晶を行った後、昇華精製(150℃、0.1Torr)により精製し、下記式(9)で表される合成中間体を無色透明板状結晶として得た(20g、収率56%)。式(9)で表される化合物の融点は88〜90℃であった。
【化18】

【0055】
合成した式(9)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=4.15(s,3H,CH3)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=57.0、171.5、172.5
FT-IR(KBr,cm-1):2954(C-H)、1548(C=N)、1486(C-O-C)、1053(C-O-C)、847(C-Cl)
【0056】
実施例2〜7及び比較例1〜3
容量100ミリリットルのフラスコ中において、表1記載の塩基の1Mアルカリ水溶液(5.1ミリリットル、5.1ミリモル)に、表1記載のモノマーA(2.50ミリモル)を溶解させ、次いで、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(0.277g、0.76ミリモル)を加えた。別途調製した表1記載のモノマーBとして、実施例1で得た(8)(2.5ミリモル)のクロロホルム溶液(5ミリリットル)、又は、合成例1で得た(9)(2.5ミリモル)のニトロベンゼン溶液(5ミリリットル)を、モノマーA溶液の入ったフラスコ中に投入し、室温で18時間攪拌した。反応混合物をメタノール(300ミリリットル)に投入し、白色固体ポリマーを析出させ、ろ別した。ポリマーをクロロホルムに溶解させメタノールに再沈殿させ、ろ別した後、80℃で24時間真空乾燥することにより、表1に記載の構造を有するポリマーをそれぞれ白色固体として、表1に記載の収量及び収率で得た。
得られたそれぞれのポリマーの構造は、NMR及びIRから、モノマーAとモノマーBが縮合してエーテル構造となり、モノマーAとモノマーBが交互に結合している構造のポリマーであることを確認した。
【0057】
【表1】

【0058】
各モノマー及びポリマーの構造式を以下に示す。
【化19】

【化20】

【化21】

【0059】
[ポリマーの評価]
実施例2〜7で製造したポリマー、並びに比較例1〜3で製造したポリマーについて、以下の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(1)対数粘度(ηinh
ポリマー0.1gをクロロホルム20ミリリットルに溶解させ、内10ミリリットルをキャノンフェンスケネンド管に入れ、30℃の恒温槽中にて落下時間t(3回測定平均値)を求め、下記式により対数粘度(ηinh)を求めた。
ηinh={ln(t/t)}/C
(ηinh:対数粘度(dL/g)、t:ポリマー溶液の落下時間、t:溶媒のみの場合の落下時間、C:ポリマー溶液の濃度(g/dL))
【0060】
(2)数平均分子量及び重量平均分子量
ポリマーを希薄なクロロホルム溶液又はTHF溶液とした後、クロロホルム又はTHFを移動相として用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて数平均分子量及び重量平均分子量(ポリスチレン標準換算)を測定した。
【0061】
(3)10%重量減少温度(Td10
窒素雰囲気下での示差熱熱重量同時測定装置により10%重量減少温度(Td10)を測定した。
【0062】
(4)ガラス転移温度(T
示差走査熱量計によりガラス転移温度(T)を測定した。
【0063】
(5)屈折率(n)及び消衰係数(k)
実施例2〜7並びに比較例1〜3で製造したポリマーの1,1,2,2−テトラクロロエタン溶液を用いてスピンコート法によりシリコン基板上に膜厚100〜120nm薄膜を成膜した。
作製した薄膜を、分光エリプソメトリー装置(J.A. Woolllam Co., Inc.製、M−2000D)を用いて、室温(23℃)下、標準エリプソメトリック収集条件にて波長192nm〜1000nmのΨ、Δを取得した。得られたΨ、Δから、エリプソメトリー解析ソフト(J.A. Woolllam Co., Inc.製、WVASE32)を用いて、最適化した屈折率n、消衰係数kを測定波長領域(192nm〜1000nm)に渡って求めた。最適化方法としては、 Cauchy ModelのPoint by Point Fittingにて、膜厚、n、kの暫定値を求め、得られたn、kがKramaers−Kronigの関係を満たすことを確認した後、General Oscillation ModelにてGaussian振動子を用いて Cauchy Modelにより求めたn、kの暫定値を初期値としてフィッティングし、General Oscillation Modelパラメータを求め、次いで、実測データΨ、Δにフィッティングすることにより、General Oscillation Modelに基づくn、kを求めた。
実施例2〜7並びに比較例1〜3のそれぞれの結果を図1〜図9に示す。
【0064】
(6)D線屈折率
分光エリプソメトリー装置にて求めた測定波長領域におけるnより、波長589nmにおける屈折率nを定め、D線屈折率とした。
【0065】
(7)アッベ数
分光エリプソメトリー装置にて求めた測定波長領域におけるnより、波長486nmにおける屈折率n、波長589nmにおける屈折率n、波長656nmにおける屈折率n定め、下記式より可視光領域屈折率の波長依存性を示すアッベ数νを求めた。
ν=(n−1)/(n−n
【0066】
【表2】

【0067】
表2の結果から、脂環式構造を含むことにより耐熱性が向上していることがわかる。
また、実施例5〜7と実施例2〜4との対比から、脂環式構造を主鎖に導入すると屈折率が向上することがわかる。実施例7及び実施例5と、比較例1及び比較例3との対比から、このことは側鎖の種類を問わないことがわかる。
尚、比較例2はフッ素原子の効果により屈折率が低くなっているが、実施例5〜7と比べて耐熱性が低い。以上から、本願のポリマーを含む透明材料は高耐熱性を有し、かつ主鎖が脂環式構造を含む場合には、屈折率が高くなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の重合体は、透明光学材料として好適に用いることができ、耐熱性、可視光領域透明性、UV光領域透明性、機械的強度、成形性に優れる。
本発明の透明光学材料は、光学レンズ、光ファイバー、光導波路、フォトニック結晶等の光情報処理装置;反射防止フィルム、保護フィルム、バックライト用光拡散フィルム等のフラットパネルディスプレー(FPD)等の表示装置等に用いられることができる。
本発明の透明光学材料は上記に加えて、金属表面処理分野におけるコート剤、半導体分野におけるフォトレジストの下層膜や反射防止膜、半導体実装分野におけるフィルム基板及びアンダーフィル剤にも使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類の下記式(1)で表される繰り返し単位からなる、又は2種以上の下記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体。
【化22】

(式中、R及びrは、それぞれ置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基、置換又は非置換の炭素数6〜30の2価の芳香族基、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、又はエーテル結合である。
重合体が1種類の繰り返し単位からなる場合には、R及びrの少なくとも1つが置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である。
重合体が2種以上の繰り返し単位からなる場合には、いずれかの繰り返し単位のR及びrの少なくとも1つが置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である。
、R、r及びrは、それぞれ置換又は非置換の炭素数6〜30の2価の芳香族基、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、炭素数1〜20の置換又は非置換の2価の分岐状脂肪族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基、又は単結合である。)
【請求項2】
1種類の前記式(1)で表される繰り返し単位からなる請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
R及びrの少なくとも1つが、アダマンタン構造を含む置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基である請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
R及びrの少なくとも1つが、下記式(3)〜(8)で表わされる2価の基のいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の重合体。
【化23】

(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
m’’は、0以上28以下の整数であり、m’’が2個以上の場合、複数のm’’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【請求項5】
及びRが、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である請求項1〜4のいずれかに記載の重合体。
【請求項6】
及びrが、単結合である請求項1〜5のいずれかに記載の重合体。
【請求項7】
下記式(101)、(102)又は(103)で表わされる請求項1〜6のいずれかに記載の重合体。
【化24】

(式中、R、R、R、r、r、r及びR’は、上記と同様である。
nは10以上10000以下の整数である。
mは0以上22以下の整数であり、m’は0以上15以下の整数である。m、m’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい)
【請求項8】
下記式(200)で表される化合物。
【化25】

(式中、R’及びm’は上記と同様である。
X’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)
【請求項9】
下記式(201)で表される化合物と、下記式(202)で表される化合物とを重合する重合体の製造方法。
【化26】

(R、R、R、r、r、r及びX’は、上記と同様である。)
【請求項10】
前記式(201)で表される化合物の水溶液と、前記式(202)で表される化合物の水とは相溶しない溶媒からなる溶液を、塩基及び相間移動触媒存在下において、界面重縮合反応により重合する請求項9に記載の重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の製造方法により得られる重合体。
【請求項12】
請求項1〜7及び11のいずれかに記載の重合体を含む透明材料。
【請求項13】
請求項1〜7及び11のいずれかに記載の重合体を有機溶媒に溶解させた塗料。
【請求項14】
請求項13に記載の塗料を用いて形成される薄膜。
【請求項15】
請求項12に記載の透明材料又は請求項14に記載の薄膜を含む部材。
【請求項16】
請求項15に記載の部材を備える装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−35995(P2013−35995A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175140(P2011−175140)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】