脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体
【課題】光学材料として用いた場合に透明性を有し、屈折率を調整でき、且つ耐熱性及び複屈折率が良好である共重合体を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表わされる繰り返し単位と、下記式(2)で表わされる繰り返し単位とからなる共重合体であって、前記式(1)で表わされる繰り返し単位と前記式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が5以上10000以下である共重合体。
【解決手段】下記式(1)で表わされる繰り返し単位と、下記式(2)で表わされる繰り返し単位とからなる共重合体であって、前記式(1)で表わされる繰り返し単位と前記式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が5以上10000以下である共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明で機械的特性に優れているエンジニアリングプラスチックは、光学材料として広く用いられており、例えばポリメチルメタクリレートやポリカーボネート等はCD、DVD、レンズ等の光学材料として、また、自動車の透明部品等に使用されている。
しかし、ポリメチルメタクリレートは透明性に優れるが、吸湿性が高く、形態安定性が悪いという問題があった。また、ポリカーボネートは耐熱性が高く透明性に優れるが、流動性が悪く成型品の複屈折率が大きくなるという問題があった。従って、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートのいずれも光学材料として十分に満足なものとはいえなかった。
【0003】
近年、光学材料は光学レンズ、光ファイバー、光導波路、フォトニック結晶等の種々の光情報処理装置や、フラットパネルディスプレー(FPD)等の表示装置等に広く用いられており、用途の拡大に伴って、要求された屈折率に調整可能な光学材料が求められている。
特に光情報処理装置では、情報処理速度の向上のため、複屈折率のさらなる向上が求められている。また、光学材料は、薄膜状、フィルム状又はファイバー状形態で、発熱を伴う部分に使用されることが多いため、耐熱性も求められている。
【0004】
非特許文献1は、優れた透明性、吸水性、強度及び耐熱性を有する芳香族構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する重合体を開示する。しかし、薄膜状、フィルム状、ファイバー状形態として、発熱を伴う部分に使用する場合に、当該ポリマーからなる光学材料は耐熱性が十分とはいえなかった。
また、特許文献1は、アダマンタン構造を導入した、芳香族構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する重合体を開示する。このポリマーからなる光学材料は、耐熱性は良好であったが、屈折率を任意に調整することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−249487号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromolecules,37,5724(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の目的は、光学材料として用いた場合に透明性を有し、屈折率を調整でき、且つ耐熱性及び複屈折率が良好である共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の共重合体等が提供される。
1.下記式(1)で表わされる繰り返し単位と、下記式(2)で表わされる繰り返し単位とからなる共重合体であって、
前記式(1)で表わされる繰り返し単位と前記式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が5以上10000以下である共重合体。
【化1】
【化2】
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
Arは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含まない2価の基である。)
2.Rが、下記式(3)で表わされる2価の基である1に記載の共重合体。
【化3】
(式中、R2は、置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
R1及びR3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
3.R2が、下記式(4)〜(9)で表わされる2価の基のいずれかである2に記載の共重合体。
【化4】
(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
m’’は0以上28以下の整数であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
4.R1及びR3が、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である2又は3に記載の共重合体。
5.Rが、下記式(24)又は(25)で表わされる2価の基である1〜4のいずれかに記載の共重合体。
【化5】
(式中、R’及びm’’は、前記式(4)〜(9)と同様である。)
6.Arが、下記式(26)で表わされる2価の基である1〜5のいずれかに記載の共重合体。
【化6】
(式中、Ar2は、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基又は置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基である。
Ar1及びAr3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
7.Ar2が、置換若しくは非置換の2価の直鎖状飽和脂肪族基、又は置換若しくは非置換の2価の分岐状飽和脂肪族基である6に記載の共重合体。
8.Ar1及びAr3が、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である6又は7に記載の共重合体。
9.Arが下記式(27)で表わされる2価の基である1〜8のいずれかに記載の共重合体。
【化7】
(R’’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
2つのR’’は、互いに同じでも異なってもよく、互いに結合して環状構造を構成してもよい。)
10.下記式(28)で表わされるモノマー及び下記式(29)で表わされるモノマーを1:10000〜10000:1のモル比で共重合させる共重合体の製造方法。
【化8】
(式中、R及びArは、式(1)と同様である。)
11.10に記載の製造方法により得られる共重合体。
12.1〜9及び11のいずれかに記載の共重合体を含む透明材料。
13.1〜9及び11のいずれかに記載の共重合体を有機溶媒に溶解させた塗料。
14.13に記載の塗料を用いて形成される薄膜。
15.12に記載の透明材料又は14に記載の薄膜を含む部材。
16.15に記載の部材を備える装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学材料として用いた場合に透明性を有し、屈折率を調整でき、且つ耐熱性及び複屈折率が良好である共重合体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図2】実施例2で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図3】実施例3で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図4】実施例4で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図5】実施例5で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図6】実施例6で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図7】実施例7で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図8】実施例8で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図9】実施例9で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図10】実施例10で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図11】実施例11で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図12】実施例12で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図13】実施例13で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図14】比較例1で製造したポリマーからなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図15】比較例2で製造したポリマーからなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図16】参考例1で製造したポリマーからなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図17】参考例2で製造したポリマーからなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の共重合体は、下記式(1)で表わされる繰り返し単位と、下記式(2)で表わされる繰り返し単位とからなる共重合体であって、式(1)で表わされる繰り返し単位と式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が5以上10000以下である。
【化9】
【化10】
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
Arは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含まない2価の基である。)
【0012】
本発明の共重合体は、脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体であって、高強度且つ高安定性であるアダマンタン構造を含むユニットを有するので、ポリマー中のエーテル結合の自由回転を拘束することが可能であり、共重合体の耐熱性及び強度を飛躍的に向上できる。一方で、アダマンタン構造を含まないユニットも特定範囲含むことで、有機溶媒に対する溶解性を高めることができ、共重合体の加工・成形性を向上させることができる。
また、本発明の共重合体は、アダマンタン構造を含むユニットとアダマンタン構造を含まないユニットの共重合比を任意に選択することで屈折率を調整することができる他、R部位及びAr部位に、任意の構造のモノマーを導入させることができるため、それぞれ選択したモノマー構造に起因する所望の効果も得られる。
尚、本発明の共重合体の両端は特に限定されないが、例えば共重合体の端となった繰り返し単位に含まれる、他の繰り返し単位と結合していない2つの結合手同士が結合し、炭素−炭素間で二重結合を形成していてもよい。また、溶媒として用いる水(HとOHがそれぞれ二重結合の炭素に結合)、相間移動触媒の分解物(例えば、オニウム塩のハロゲン、−NR2など)、その他の不純物が付加反応した構造になっていてもよい。その他、端同士が付加反応して環状ポリマーになっていてもよい。さらに、単官能性のモノマーや当該二重結合に付加反応する末端封止剤によって端を封じられていてもよい。
【0013】
本発明の共重合体において、「アダマンタン構造を含む」とは、例えばRが下記式(I)で表わされる構造を含むことをいう。
【化11】
(式中、Xは、式(I)に含まれる各炭素原子と直接に結合する1つの原子のみを表す。
Xは、式(I)に含まれない他の原子と結合していてもよい。
Xは、それぞれ水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ケイ素原子、リン原子又は硫黄原子である。
Xは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0014】
例えばRが(−フェニレン基−アダマンチレン基−フェニレン基−)であった場合には、Rは、式(I)の複数のXのうち2つが炭素原子、残りのXが全て水素原子のアダマンタン構造を含む。従って、Rは上記式(I)で表されるアダマンタン構造を少なくとも1つ含むことになる。同様に、Rが(−フェニレン基−ジアマンチレン基−フェニレン基−)であった場合には、式(I)の複数のXのうち4つが炭素原子、残りのXが全て水素原子のアダマンタン構造を含む。従って、Rは上記式(I)で表されるアダマンタン構造を少なくとも1つ含むことになる。
【0015】
Xが、式(I)に含まれない他の原子と結合するということを以下で説明する。
例えばRが1つのトリクロロメチル基を置換基として有するアダマンチレン基であった場合には、式(I)の複数のXのうち1つが炭素原子、2つが酸素原子、残りのXが全て水素原子である。この場合、炭素原子であるXは、式(I)に含まれる炭素原子と直接結合している他、式(I)に含まれない他の原子である塩素原子と直接結合している。このように、Xは式(I)に含まれない他の原子と結合していてもよい。
【化12】
【0016】
式(1)のRは、好ましくは下記式(3)で表わされる2価の基である。
【化13】
(式中、R2は、置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
R1及びR3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
【0017】
式(3)のR2は、好ましくは式(4)〜(9)で表わされる2価の基のいずれかである。
【化14】
(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
また、m’’は0以上28以下の整数であり、m’’が2個の場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【0018】
R’の特に好ましい具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基、アダマンチル基、ビアダマンチル基、ジメチルビアダマンチル基、ジブチルビアダマンチル基、ジアマンチル基、トリアマンチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロアダマンチル基、及びこれら置換基を2以上を組み合わせてなる置換基が挙げられる。
R’が上述した置換基以外の場合、置換基自身の分子運動又は熱分解によって、共重合体の耐熱性、強度、有機溶媒溶解性、成形性等が低下するおそれがある。
【0019】
R2の具体例を以下に示す。
尚、下記具体例のR’及びm’’は上記と同様である。
【化15】
【化16】
【化17】
【0020】
R1及びR3は、好ましくはそれぞれ置換又は非置換のフェニレン基である。
【0021】
Rは、好ましくは下記式(24)又は(25)で表わされる2価の基である。
【化18】
(式中、R’及びm’’は、上記と同様であり、R’は、アダマンタン部位構造に置換していてもアリーレン部位に置換していてもよい。)
【0022】
式(1)のArは、好ましくは下記式(26)で表わされる2価の基である。
【化19】
(式中、Ar2は、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基又は置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基である。
Ar1及びAr3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
【0023】
式(26)において、Ar2は、好ましくは置換若しくは非置換の直鎖状飽和脂肪族基、又は置換若しくは非置換の分岐状飽和脂肪族基である。また、Ar1及びAr3は、好ましくはそれぞれ置換又は非置換のフェニレン基である。
【0024】
式(1)のArは、好ましくは下記式(27)で表わされる2価の基である。
【化20】
(R’’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
2つのR’’は、互いに同じでも異なってもよく、互いに結合して環状構造を構成してもよい。)
【0025】
式(27)において、R’’の特に好ましい具体例は、R’と同様の置換基に加えて、一組のR’’で形成されるシクロへキシル構造及びシクロドデシル構造が挙げられる。
R’’が上述した置換基以外の場合、置換基自身の分子運動又は熱分解によって、共重合体の耐熱性、強度、有機溶媒溶解性、成形性等が低下するおそれがある。
【0026】
本発明の共重合体に含まれる式(1)で表わされる繰り返し単位と式(2)で表わされる繰り返し単位の総数は5以上10000以下である。
繰り返し単位の総数が5未満の場合、共重合体としての特性が得られないおそれがある。一方、繰り返し単位の総数が10000超の場合、共重合体の溶解度が低下し、重合反応時の重合度の上昇が抑制され、薄膜形成用の共重合体溶液が調製できないおそれがある。
【0027】
本発明の共重合体は、式(1)で表わされる繰り返し単位と式(2)で表わされる繰り返し単位を含めばよく、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれでもよい。
尚、後述する本発明の共重合体の製造方法では、ランダム共重合体が製造できるのが一般的であるが、製造方法、構造の選択により交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれの共重合体も製造することができる。
【0028】
本発明の共重合体において、式(1)で表わされる繰り返し単位と式(2)で表わされる繰り返し単位の比は、好ましくは1:1000〜1000:1(式(1)で表わされる繰り返し単位:式(2)で表わされる繰り返し単位)である。
【0029】
以下、各置換基について説明する。
R、R1、R3、Ar、Ar1、Ar2、Ar3の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ジフルオロメチレン基が挙げられる。
【0030】
R、R1、R3、Ar、Ar1、Ar2及びAr3の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基としては、メチルメチレン基、トリフルオロメチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基が挙げられる。
【0031】
R、R1、R3、Ar、Ar1及びAr3の炭素数6〜10の2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、テトラフルオロフェニレン基が挙げられる。
【0032】
R、R1、R2、R3の炭素数5〜50の2価の脂環式基としては、アダマンタン構造、パーフルオロアダマンタン構造、ビアダマンタン構造、ジアマンタン構造、トリアマンタン構造、ノルボルネン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造又はこれらシクロアルカン構造を構成する1つの炭素の代わりにヘテロ原子を有する環構造を含む炭素数5〜50の2価の脂環式基が挙げられる。
上記のうち、好ましくはアダマンタン構造、パーフルオロアダマンタン構造、ビアダマンタン構造、ジアマンタン構造又はトリアマンタン構造を含む炭素数5〜50の2価の脂環式基であり、より好ましくはアダマンタンチレン基、パーフルオロアダマンタンチレン基、ビアダマンタンチレン基、ジアマンタンチレン基又はトリアマンタンチレン基のいずれかである。
【0033】
また、Ar、Ar1、Ar3の炭素数5〜50の2価の脂環式基としては、ノルボルネン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、又はこれらシクロアルカン構造を構成する1つの炭素の代わりにヘテロ原子を有する環構造を含む炭素数5〜50の2価の脂環式基が挙げられる。ここで脂環式基は、単環であっても複環であってもよい。
尚、Arはアダマンタン構造を含まないので、Ar、Ar1及びAr3の脂環式基はアダマンタン構造を含まない。
【0034】
上述の2価の脂環式基、芳香族基、直鎖状脂肪族基及び分岐状脂肪族基は、いずれもその一部にエーテル結合(−O−)、エステル結合(−CO2−)、炭酸エステル結合(−OCO2−)、チオエーテル結合(−S−)、チオエステル結合(−SO2−)を有してもよく、また、これらにさらにヘテロ原子が結合した結合を含んでもよい。
【0035】
Rの2価の脂環式基、芳香族基、直鎖状脂肪族基、分岐状脂肪族基が置換基を有する場合、当該置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン元素、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基が挙げられる置換していてもよい。
尚、上記の炭素数6〜30の置換の芳香族置換基、炭素数1〜20の置換の直鎖状脂肪族置換基、炭素数3〜20の置換の分岐状脂肪族置換基及び炭素数5〜50の置換の脂環式置換基の「置換」とは、ハロゲン元素、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基のいずれかの置換基で置換されていることを意味する。
【0036】
Arの2価の脂環式基、芳香族基、直鎖状脂肪族基、分岐状脂肪族基が置換基を有する場合の当該置換基は、Rと同様である。但し、Arの置換基はアダマンタン構造は含まない。
【0037】
R’及びR’’の炭素数6〜30の芳香族置換基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
R’及びR’’の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基及び炭素数5〜50の脂環式置換基としては、R及びArで説明した2価の置換基に対応する1価の置換基が挙げられる。
【0038】
本発明の共重合体の具体例を以下に示す。
【化21】
(式中、m及びm’は、それぞれ繰り返し単位数を表わし、m+m’は5以上10000以下である。
また、これら共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。)
【0039】
本発明の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体は、例えば下記式(28)で表わされるモノマー及び下記式(29)で表わされるモノマーを共重合させることにより製造できる。
【化22】
(式中、R及びArは、式(1)と同様である。)
【0040】
例えば、式(28)及び(29)で表されるモノマーを共存させ、段階的に混合する、あるいは傾斜的に共存比を変化させ、熱、紫外線、赤外線、電子線、プラズマ等を用いた付加環化反応をすることにより選択率及び収率よく製造することができる。
【0041】
好ましい重合条件は、用いるモノマー及び得られる共重合体の所望する構造、物性により異なるが、熱による付加環化反応による場合は、50℃〜300℃の範囲の温度で加熱することによりモノマーを付加環化反応させることができる。
【化23】
(式中、m及びm’は、それぞれ繰り返し単位数を表わし、m+m’は5以上10000以下である。
また、式(100)で表わされる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。)
【0042】
式(28)で表わされるモノマー及び式(29)で表わされるモノマーの重合比は、1:10000〜10000:1(モル比)であり、好ましくは1:1000〜1000:1である。
重合比が上記範囲外の場合、得られる共重合体の物性が、過剰量存在するモノマーのみからなる重合体と実質的に同一の物性を示すことになるおそれがある。
【0043】
式(28)及び(29)で表されるモノマーは従来公知の方法(例えばMacromolecules,37,5724(2004))により製造することができる。
具体的な製造条件は、モノマーの所望の構造により異なるが、反応剤、触媒、原料の濃度や添加比率、溶媒の添加量、反応温度、反応時間、反応後処理方法等により制御することが可能である。
【0044】
尚、製造したモノマーは、好ましくは精製して用いる。精製したモノマーを用いることにより、本発明の共重合体の複屈折率、耐熱性及び強度に加えて安定性を向上させることができる。
モノマーの精製方法としては、イオン交換樹脂処理、再沈殿、再結晶、精密ろ過、乾燥等が挙げられ、これら精製方法によりモノマーに含まれるFe3+、Cl−、Na+、K+、Ca2+等のイオン性不純物、反応溶媒、後処理溶媒、水分等を取り除くことができる。
【0045】
また、触媒又は反応剤を添加して本発明の共重合体を製造する場合、得られた共重合体を上述の精製方法を用いて精製することにより、本発明の共重合体の複屈折率、耐熱性及び強度に加えて安定性を向上させることができる。
【0046】
本発明の共重合体は、アダマンタン構造を含む繰り返し単位と、アダマンタン構造を含まない繰り返し単位からなる共重合体である。
本発明の共重合体からなる透明材料の屈折率は、アダマンタン構造を含む繰り返し単位の割合が一定になるまでは、アダマンタン構造を含む繰り返し単位の割合に比例して増加又は減少する。従って、屈折率の任意の調整が可能である。
加えて、本発明の共重合体からなる透明材料は、アダマンタン構造を全く含まない、あるいは全ての繰り返し単位にアダマンタン構造を含む芳香族構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する単独重合体に比べて、複屈折率が同程度か、又は高くなる。
【0047】
本発明の共重合体は、炭素からなる化合物のうち、地球上で最も高強度かつ高安定性であるダイヤモンドと共通の構造を有するアダマンタン構造を含むので、共重合体中のエーテル結合の自由回転を拘束することが可能となり、アダマンタン構造を全く含まない芳香族構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する単独重合体に比べて、耐熱性及び強度が高い。具体的には、本発明の共重合体からなる透明材料のガラス転移温度は、それぞれの繰り返し単位のみからなる単独重合体のガラス転移温度に、それぞれの繰り返し単位の割合を乗じた値の総和に近い値となる。
【0048】
本発明の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体を含む透明材料は、光学レンズ、光ファイバー、光導波路、フォトニック結晶等の種々の光情報処理装置や、フラットパネルディスプレー等の表示装置の性能及び耐久性を向上させることができる。また、本発明の共重合体を含む透明材料は、高い耐熱性を有する。また、共重合体に用いるモノマーの構造、モノマー種の組み合わせ、使用モル比を適切に選択することにより、前記特性に加えて、有機溶媒溶解性や成形性の付与、屈折率を所望の値に調整することが可能となる。
尚、本発明の透明材料には、本発明の共重合体のほかに樹脂成形分野で使用される各種添加剤を含んでもよい。
【0049】
本発明の透明材料は公知の成形方法によって各種成形品(シリコンウェハ等の基板に形成した薄膜、フィルム、薄板、ファイバー等)を製造することができる。
成形方法としては、射出成型法、射出圧縮成型法、押出成型法、ブロー成型法、加圧成型法、トランスファー成型法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、CVD法等が挙げられ、これら成形方法を所望の製品の形態、性能に応じて適宜選択できる。
また、モノマー又は上述の方法で予備重合したnが2〜25の低分子量ポリマー(オリゴマー)を用いて成型し、得られた成形体を熱、紫外線、赤外線、電子線、プラズマ等により硬化(環化付加反応)させてもよい。
【0050】
スピンコーティング法等により本発明の透明材料を薄膜状に成形する場合、本発明の透明材料を有機溶媒に溶解させた塗料を使用することができる。
有機溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、DMF、NMP、ジメチルアセトアミド、DMSO、アニソール、アセトフェノン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、THF、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
【0051】
塗料中における本発明の透明材料の濃度は、塗料の粘度や成形方法等を考慮して適宜調製すればよい。
薄膜の厚さは特に限定されないが、一般に10nm〜10μm程度のものが好適に使用される。
【0052】
尚、本発明の透明材料からなるフィルムの厚さは1μm〜1mm程度であり、薄板の厚さは1mm〜1cm程度である。
【0053】
本発明の透明材料又は薄膜は、公知の透明材料が利用されている部材として使用することができる。具体的には、FPD保護膜等の透明フィルム、光拡散板、光反射板等の透明薄板、光ファイバー、光導波路等の線状透明部材、フォトニック結晶等の光情報処理用部材が挙げられる。上記部材は、装置の構成部材として用いることができ、例えば、光情報処理装置、FPD等の表示装置の構成部材として使用できる。
【0054】
本発明の透明材料は、公知の透明材料が利用されている部材に使用できる透明性を有する。透明性を有するとは、光の一部又は全部を吸収せずに透過することを意味する。
本発明の透明材料では、透明性の指標である最大非透過光波長(λcutoff)が150nm以上325nm以下の範囲であることが好ましい。最大非透過光波長が325nmを超えると黄色を帯びるおそれがある。
本発明の透明材料では、また透明性の指標である透過率80%の波長(λ80)が、380nm未満であることが好ましい。透過率80%波長が可視光領域になった場合には、着色が認められる可能性があるからである。好適には、360nm未満である。透明性の観点からは、透過率80%波長は短い程よい。最も短い波長としては、例えば、最大非透過光波長の下限値が挙げられる。
最大非透過光波長及び透過率80%波長は、例えば上記式(4)〜(9)の置換数m’’を調整することにより調整できる。
尚、最大非透過光波長及び透過率80%波長はフィルム状試料の透過スペクトルを紫外可視分光装置にて測定して決定できる。
また、本発明の透明材料においては、特に紫外領域における透明性の指標として、分光エリプソメトリーによる消衰係数(k)の測定結果を採用できる。併せて、光学材料として用いる際の重要な物性である、各波長における屈折率(n)も分光エリプソメトリーにより求めるがことができる。
【0055】
耐熱性の指標であるガラス転移温度(Tg)は115℃以上400℃以下の範囲であることが好ましく、150℃以上400℃以下の範囲がさらに好ましい。また、10%重量減少温度(Td10)が400℃以上600℃以下の範囲であることが好ましい。
尚、ガラス転移温度は示差走査熱量計にて測定でき、10%重量減少温度は、窒素雰囲気下、示差熱熱重量同時測定装置にて測定できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下の合成例及び実施例で用いている出発原料、試薬等は全て市販品又は公知の方法で調製した化合物である。
【0057】
合成例1
容量500ミリリットルのフラスコ中で、水素化ナトリウム(3.08g、127ミリモル)及びジメチルスルホキシド(200ミリリットル)の混合物に、窒素雰囲気下で1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(20.37g、63.6ミリモル)のジメチルスルホキシド(200ミリリットル)溶液を滴下してから、80℃に加熱し12時間攪拌した。次いで、氷浴を用いて反応液を冷却し30℃以上にならないように、1,2−ジブロモテトラフルオロエタン(49.6g、191ミリモル)を滴下した後、室温で12時間、さらに50℃で12時間攪拌した。この反応液を冷却後、2リットルの蒸留水に投入し、しばらく撹拌した後、析出物をろ別回収した。得られた析出物を100℃で12時間減圧乾燥した後、ヘキサンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、下記式(A−1)で表される合成中間体を白色結晶として得た(19.92g、収率47%)。式(A−1)で表される化合物の融点は107℃であった。
【化24】
【0058】
次いで、容量500ミリリットルのフラスコ中で、得られた式(A−1)で表される白色結晶(19.92g、29.4ミリモル)のアセトニトリル(100ミリリットル)溶液を調製した後、亜鉛粉末(3.84g、58.8ミリモル)を添加し、窒素雰囲気下で80℃に加熱して30時間攪拌した。その後、反応液を冷却後、500ミリリットルの蒸留水に投入し、しばらく撹拌した後、ヘキサンにより抽出した。ヘキサン抽出液に無水硫酸ナトリウムを添加し脱水し、減圧下濃縮し、得られた析出物を60℃で12時間減圧乾燥した。得られた粗生成物をヘキサンによるシリカゲルカラムクロマトグラフィー、及びメタノールによる再結晶で精製し、下記式(A−2)で表されるモノマーを白色結晶として得た(12.29g、収率87%)。式(A−2)で表されるモノマーの融点は51℃であった。
【化25】
【0059】
合成した式(A−2)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.78(t,2H,adamantane),1.93(d,8H,adamantane),1.97(s,2H,adamantane),2.32(m,2H,adamantane),7.05(d,4H,o-Ar-H),7.37(d,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=29.4,35.6,37.0,42.3,49.2,115.6,126.4,147.2,153.1
19F-NMR(376MHz,CDCl3,ppm):δ=-120.9(dd,1F),-127.8(dd,1F),-134.4(dd,1F)
FT-IR(KBr,cm-1):2911(CH2),1833(CF=CF2),1272(C-F),1135(C-F)
【0060】
合成例2
合成例1において、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンを用いた以外は合成例1と同様にして合成中間体として下記式(A−3)で表される白色結晶(15.7g、収率36%)を得た。次いで、式(A−1)で表される合成中間体の代わりに式(A−3)で表される合成中間体を用いた他は合成例1と同様にして、下記式(A−4)で表されるモノマーを白色結晶として得た(8.9g、収率80%)。式(A−4)で表されるモノマーの融点は128℃であった。
【化26】
【0061】
合成した式(A−4)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.71-1.73(m,4H,adamantane),1.76(m,2H,adamantane),1.82(m,2H,adamantane),1.97-2.00(m,4H,adamantane),3.19(m,2H,adamantane),6.96(d,4H,o-Ar-H),7.37(d,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=27.4,32.2,33.2,37.8,49.9,116.0,127.3,144.9,152.3
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-120.9(dd,1F),-127.6(dd,1F),-134.3(dd,1F)
FT-IR(KBr,cm-1):2909(CH2),1833(CF=CF2),1272(C-F),1139(C-F)
【0062】
合成例3
合成例1において、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの代わりにビスフェノールAを用い、シリカゲルクロマトグラフィーの代わりにジエチルエーテルで抽出した以外は合成例1と同様にして、合成中間体として下記式(A−5)で表される無色透明油状物(11.2g、収率30%)を得た。次いで、式(A−1)で表される合成中間体の代わりに式(A−5)で表される合成中間体を用い、ヘキサンによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した以外は合成例1と同様にして、下記式(A−6)で表されるモノマーを無色透明油状物(6.2g、収率84%)として得た。
【化27】
【0063】
合成した式(A−6)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.65(s,6H,CH3),6.99(d,4H,o-Ar-H),7.20(d,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=30.9,42.3,115.5,128.3,147.0,153.1
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-120.9(dd,1F),-127.7(dd,1F),-134.5(dd,1F)
FT-IR(KBr,cm-1):2974(CH3),1833(CF=CF2),1277(C-F),1140(C-F)
【0064】
合成例4
合成例1において、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いた以外は合成例1と同様にして、合成中間体として下記式(A−7)で表される無色透明油状物(20.7g、収率20%)を得た。次いで、式(A−1)で表される合成中間体の代わりに式(A−7)で表される合成中間体を用い、ヘキサンによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した以外は合成例1と同様にして、下記式(A−8)で表されるモノマーを無色透明油状物(8.76g、収率59%)として得た。
【化28】
【0065】
合成した式(A−8)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=7.11(d,4H,o-Ar-H),7.40(d,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=113.4,115.8,121.1,131.8,149.4
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-65.0(s,3F),-119.8(dd,1F),-126.4(dd,1F),-135.4(dd,1F)
FT-IR(KBr,cm-1):1833(CF=CF2),1277(C-F),1140(C-F)
【0066】
比較例1
容量100ミリリットルのフラスコ中で、合成例3で合成したモノマー(A−6)(1.00g)を窒素雰囲気下180℃で24時間加熱した後、240℃で8時間加熱し、得られた固体をTHFに溶解させてからメタノール中に投入し再沈殿させた。得られた白色沈殿をろ別し、80℃で12時間真空乾燥することにより、下記式(B−1)で表される脂環式構造を含有しないペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有するポリマーを白色固体として得た(0.90g、収率90%)。
【化29】
【0067】
得られた式(B−1)で表されるポリマーの構造は、NMR及びIRにより確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.63(s,6H,CH3),6.98(d,2H,o-Ar-H),7.07(d,2H,o-Ar-H),7.14(m,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=30.7,42.2,117.6,128.0,147.1,150.5
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-127.7,-128.7,-129.2,-129.3,-129.8,-130.6,-131.1,-131.7,-132.2,-132.9
FT-IR(KBr,cm-1):2972(CH3),1309(C-F),1204(C-F),963(C-F)
【0068】
比較例2
比較例1において、合成例3で合成したモノマー(A−6)の代わりに合成例4で合成したモノマー(A−8)を用い、窒素雰囲気下180℃で12時間加熱した後、220℃で8時間加熱した以外は比較例1と同様にして、下記式(B−2)で表される脂環式構造を含有しないペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有するポリマーを白色固体として得た(0.81g、収率81%)。
【化30】
【0069】
得られた式(B−2)で表されるポリマーの構造は、NMR及びIRにより確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=7.07(d,2H,o-Ar-H),7.18(d,2H,o-Ar-H),7.36(m,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=117.6,124.1,129.8,130.0,131.8,152.8
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-65.0,-127.4,-127.92,-128.1,-128.3,-129.3,-129.9,-130.4,-132.4,-132.9
FT-IR(KBr,cm-1):2972(CH3),1309(C-F),1204(C-F),963(C-F)
【0070】
参考例1
容量100ミリリットルのフラスコ中で、合成例1で合成したモノマー(A−2)(0.50g)を窒素雰囲気下180℃で9時間加熱した後、220℃で3時間さらに加熱し、固体状のポリマーを得た。得られたポリマーをテトラヒドロフランに溶解させ、メタノール中に再沈殿させて、下記式(B−3)の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有するポリマーを白色固体として得た(0.46g、収率92%)。
【化31】
【0071】
得られた式(B−3)で表されるポリマーの構造は、NMR及びIRにより確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.75(t,2H,adamantane),1.89(d,8H,adamantane),1.93(s,2H,adamantane),2.28(m,2H,adamantane),7.04(d,2H,o-Ar-H),7.11(d,2H,o-Ar-H),7.31(m,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(100MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=29.4,35.6,36.9,42.2,49.1,117.8,126.1,147.3,150.4
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-127.7,-128.8,-129.2,-129.4,-129.8,-130.6,-131.2,-131.8,-132.1,-132.6
FT-IR(film,cm-1):2905(CH2),1317(C-F),1204(C-F),963(C-F)
【0072】
参考例2
容量100ミリリットルのフラスコ中で、合成例2で合成したモノマー(A−4)(0.50g)を窒素雰囲気下180℃で2時間加熱した後、220℃で3時間さらに加熱し、固体状のポリマーを得た。得られたポリマーをテトラヒドロフランに溶解させ、メタノール中に再沈殿させて、下記式(B−4)の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有するポリマーを白色固体として得た(0.47g、収率94%)。
【化32】
【0073】
得られた式(B−4)で表されるポリマーの構造は、NMR及びIRにより確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.69-1.71(m,6H,adamantane),1.78(m,2H,adamantane),1.94(m,4H,adamantane),3.13(m,2H,adamantane),6.78(d,2H,o-Ar-H),6.99(d,2H,o-Ar-H),7.27(m,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(100MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=27.4,32.1,33.1,37.8,49.9,118.0,127.0,145.2,149.5
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-127.7,-128.8,-129.1,-129.5,-130.0,-130.7,-131.2,-131.8,-132.7,-133.3
FT-IR(film,cm-1):2917(CH2),1319(C-F),1204(C-F),962(C-F)
【0074】
実施例1
脂環式構造を含有するモノマー(モノマーa)であるモノマー(A−2)を0.240g、及び脂環式構造を含有しないモノマー(モノマーb)であるモノマー(A−6)を0.582g、容量100ミリリットルのフラスコにそれぞれ入れて混合し、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱した後、220℃で1時間加熱した。
得られた固体をテトラヒドロフランに溶解させ、メタノール中に再沈殿させた。得られた白色沈殿をろ別し、80℃で24時間真空乾燥することにより、脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する共重合体(B−5)を白色固体として得た(0.68g、83%)。
得られた共重合体の構造は、モノマーのパーフルオロビニルエーテル部位が環化付加して得られたペルフルオロシクロブチルエーテル構造により結合した共重合体であり、共重合比は用いたモノマーのモル比と同等となっていることをNMR及びIRにより確認した。
【0075】
実施例2〜13
表1に示すモノマーa及びモノマーbを用い、表1に示す添加量及び加熱条件とした他は実施例1と同様にして、以下に示す白色固体の共重合体(B−5)〜(B−17)を得た。共重合体の構造、収量及び収率を表1に示す。
尚、(B−5)〜(B−17)におけるm及びm’は、(B−5)〜(B−17)の共重合体におけるそれぞれの繰り返し単位の総数の比を表すものとする。
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【0076】
【表1】
【0077】
[ポリマーの評価]
実施例1〜13で製造した共重合体、並びに、比較例1、比較例2、参考例1及び参考例2で製造したポリマーについて、以下の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(1)対数粘度(ηinh)
ポリマー0.1gをクロロホルム20ミリリットルに溶解させ、内10ミリリットルをキャノンフェンスケ粘度管に入れ、30℃の恒温槽中にて落下時間t(3回測定平均値)を求め、下記式により対数粘度(ηinh)を求めた。
ηinh={ln(t/t0)}/C
(ηinh:対数粘度(dL/g)、t:ポリマー溶液の落下時間、t0:溶媒のみの場合の落下時間、Cポリマー溶液の濃度(g/dL))
【0078】
(2)数平均分子量及び重量平均分子量
ポリマーを希薄なテトラヒドロフラン溶液とした後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて数平均分子量及び重量平均分子量(ポリスチレン標準換算)を測定した。
【0079】
(3)10%重量減少温度(Td10)
窒素雰囲気下での示差熱熱重量同時測定装置により10%重量減少温度(Td10)を測定した。
【0080】
(4)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計によりガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0081】
(5)屈折率(n)及び消衰係数(k)
(5−1)n及びk測定のための薄膜サンプル作成
実施例1〜実施例13、比較例1〜2及び参考例1〜2の重合体、それぞれを単独に用いて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を作成したところ、いずれも目視上均一溶液となった。それら均一溶液を用いて膜厚100〜120nm薄膜をスピンコート法にてシリコン基板上に作製した。いずれも、目視上透明な均一な薄膜が得られた。
(5−2)分光エリプソメトリーによるn及びkの測定
作製した薄膜サンプルを、分光エリプソメトリー装置(J.A. Woollam Co., Inc.製、M−2000D)を用いて、室温(23℃)下、標準エリプソメトリック収集条件にて波長192nm〜1000nmのΨ、Δを取得した。得られたΨ、Δから、エリプソメトリー解析ソフト(J.A. Woollam Co., Inc.製、WVASE32)を用いて、最適化した屈折率n、消衰係数kを測定波長領域(192nm〜1000nm)に渡って求めた。最適化方法としては、 Cauchy ModelのPoint by Point Fittingにて、膜厚、n、kの暫定値を求め、得られたn、kがKramaers−Kronigの関係を満たすことを確認した後、General Oscillation ModelにてGaussian振動子を用いて Cauchy Modelにより求めたn、kの暫定値を初期値としてフィッティングし、General Oscillation Modelパラメータを求め、次いで、実測データΨ、Δにフィッティングすることにより、General Oscillation Modelに基づくn、kを、波長192nm〜1000nmに渡って決定した。実施例1〜実施例13、比較例1〜2及び参考例1〜2のそれぞれの結果を図1〜図17に示す。
【0082】
(6)D線屈折率
分光エリプソメトリー装置にて求めた測定波長領域におけるnより、波長589nmにおける屈折率nDを定め、D線屈折率とした。
【0083】
(7)アッベ数
分光エリプソメトリー装置にて求めた測定波長領域におけるnより、波長486nmにおける屈折率nF、波長589nmにおける屈折率nD、波長656nmにおける屈折率nC定め、下記式より可視光領域屈折率の波長依存性を示すアッベ数νDを求めた。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
【0084】
【表2】
【0085】
表2の結果より、本発明の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する共重合体は、共重合比により所望の屈折率を導くことが可能であることが分かる。
また、比較例及び参考例と比べて、本発明の共重合体は、可視光領域屈折率の波長依存性が同等であるか又は低くなっており、さらに脂環式構造を共重合により含有することに起因して高耐熱性を具備するようになることが明らかであり、透明材料として極めて有用であることがわかる。
【0086】
対数粘度は、その値が低いことにより、成形性が向上する。具体的には、塗布成形の際に均一に広げるのが容易であるという効果がある。また、細かな空隙にポリマーを充填するような成形(例えば、半導体実装のアンダーフィル剤)の際に内部まで良く浸透するという効果がある。
【0087】
比較例3〜6
比較例3〜6として、比較例1の重合体と参考例1の重合体、比較例2の重合体と参考例2の重合体、比較例1の重合体と参考例2の重合体、比較例2の重合体と参考例1の重合体の組み合わせで、それぞれ重量比1:1で混合したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を調製したところ、比較例2の重合体と参考例2の重合体の混合物(比較例4)、及び比較例1の重合体と参考例2の重合体の混合物(比較例5)の場合は目視上均一な混合溶液となったが、比較例1の重合体と参考例1の重合体の混合物(比較例3)、及び比較例2の重合体と参考例1の重合体の混合物(比較例6)の場合は若干白濁した混合液となった。
【0088】
これら混合液を用いて同様にシリコン基板上に薄膜を成膜したところ、比較例1の重合体と参考例1の重合体の混合溶液からなる薄膜(参考例3)、比較例2の重合体と参考例1の重合体の混合溶液からなる薄膜(比較例6)、比較例2の重合体と参考例2の重合体の混合溶液からなる薄膜(比較例4)の場合は、目視上、全面に濁りが観察された。
また、比較例1の重合体と参考例2の重合体の混合溶液からなる薄膜(比較例5)、比較例2の重合体と参考例2の重合体の混合溶液からなる薄膜(比較例4)の場合は、製膜過程で析出した重合体粒子を起点とすると思われる彗星状欠陥が多数観測された。
これら混合液では、得られる薄膜が不透明若しくは不均一な薄膜であることから、透明材料、光学材料として不適であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の共重合体は、光ファイバー、光学レンズ等の光学デバイス、フラットパネルディスプレイ等の表示機器の透明材料として好適に使用できる。
本発明の透明材料は、光ファイバー、光導波路等の光情報伝達装置、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ、CD、DVD、ブルーレイディスク、光コンピューター等の光情報処理装置、又は液晶ディスプレー、液晶プロジェクター、プラズマディスプレー、ELディスプレー、LEDディスプレー等の表示装置の構成部材の材料として好適である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明で機械的特性に優れているエンジニアリングプラスチックは、光学材料として広く用いられており、例えばポリメチルメタクリレートやポリカーボネート等はCD、DVD、レンズ等の光学材料として、また、自動車の透明部品等に使用されている。
しかし、ポリメチルメタクリレートは透明性に優れるが、吸湿性が高く、形態安定性が悪いという問題があった。また、ポリカーボネートは耐熱性が高く透明性に優れるが、流動性が悪く成型品の複屈折率が大きくなるという問題があった。従って、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートのいずれも光学材料として十分に満足なものとはいえなかった。
【0003】
近年、光学材料は光学レンズ、光ファイバー、光導波路、フォトニック結晶等の種々の光情報処理装置や、フラットパネルディスプレー(FPD)等の表示装置等に広く用いられており、用途の拡大に伴って、要求された屈折率に調整可能な光学材料が求められている。
特に光情報処理装置では、情報処理速度の向上のため、複屈折率のさらなる向上が求められている。また、光学材料は、薄膜状、フィルム状又はファイバー状形態で、発熱を伴う部分に使用されることが多いため、耐熱性も求められている。
【0004】
非特許文献1は、優れた透明性、吸水性、強度及び耐熱性を有する芳香族構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する重合体を開示する。しかし、薄膜状、フィルム状、ファイバー状形態として、発熱を伴う部分に使用する場合に、当該ポリマーからなる光学材料は耐熱性が十分とはいえなかった。
また、特許文献1は、アダマンタン構造を導入した、芳香族構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する重合体を開示する。このポリマーからなる光学材料は、耐熱性は良好であったが、屈折率を任意に調整することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−249487号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromolecules,37,5724(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の目的は、光学材料として用いた場合に透明性を有し、屈折率を調整でき、且つ耐熱性及び複屈折率が良好である共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の共重合体等が提供される。
1.下記式(1)で表わされる繰り返し単位と、下記式(2)で表わされる繰り返し単位とからなる共重合体であって、
前記式(1)で表わされる繰り返し単位と前記式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が5以上10000以下である共重合体。
【化1】
【化2】
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
Arは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含まない2価の基である。)
2.Rが、下記式(3)で表わされる2価の基である1に記載の共重合体。
【化3】
(式中、R2は、置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
R1及びR3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
3.R2が、下記式(4)〜(9)で表わされる2価の基のいずれかである2に記載の共重合体。
【化4】
(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
m’’は0以上28以下の整数であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
4.R1及びR3が、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である2又は3に記載の共重合体。
5.Rが、下記式(24)又は(25)で表わされる2価の基である1〜4のいずれかに記載の共重合体。
【化5】
(式中、R’及びm’’は、前記式(4)〜(9)と同様である。)
6.Arが、下記式(26)で表わされる2価の基である1〜5のいずれかに記載の共重合体。
【化6】
(式中、Ar2は、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基又は置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基である。
Ar1及びAr3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
7.Ar2が、置換若しくは非置換の2価の直鎖状飽和脂肪族基、又は置換若しくは非置換の2価の分岐状飽和脂肪族基である6に記載の共重合体。
8.Ar1及びAr3が、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である6又は7に記載の共重合体。
9.Arが下記式(27)で表わされる2価の基である1〜8のいずれかに記載の共重合体。
【化7】
(R’’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
2つのR’’は、互いに同じでも異なってもよく、互いに結合して環状構造を構成してもよい。)
10.下記式(28)で表わされるモノマー及び下記式(29)で表わされるモノマーを1:10000〜10000:1のモル比で共重合させる共重合体の製造方法。
【化8】
(式中、R及びArは、式(1)と同様である。)
11.10に記載の製造方法により得られる共重合体。
12.1〜9及び11のいずれかに記載の共重合体を含む透明材料。
13.1〜9及び11のいずれかに記載の共重合体を有機溶媒に溶解させた塗料。
14.13に記載の塗料を用いて形成される薄膜。
15.12に記載の透明材料又は14に記載の薄膜を含む部材。
16.15に記載の部材を備える装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学材料として用いた場合に透明性を有し、屈折率を調整でき、且つ耐熱性及び複屈折率が良好である共重合体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図2】実施例2で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図3】実施例3で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図4】実施例4で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図5】実施例5で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図6】実施例6で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図7】実施例7で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図8】実施例8で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図9】実施例9で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図10】実施例10で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図11】実施例11で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図12】実施例12で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図13】実施例13で製造した共重合体からなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図14】比較例1で製造したポリマーからなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図15】比較例2で製造したポリマーからなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図16】参考例1で製造したポリマーからなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【図17】参考例2で製造したポリマーからなるシリコン基板上に形成した薄膜の分光エリプソメトリーにより求めた波長192〜1000nmにおける屈折率と消衰係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の共重合体は、下記式(1)で表わされる繰り返し単位と、下記式(2)で表わされる繰り返し単位とからなる共重合体であって、式(1)で表わされる繰り返し単位と式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が5以上10000以下である。
【化9】
【化10】
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
Arは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含まない2価の基である。)
【0012】
本発明の共重合体は、脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体であって、高強度且つ高安定性であるアダマンタン構造を含むユニットを有するので、ポリマー中のエーテル結合の自由回転を拘束することが可能であり、共重合体の耐熱性及び強度を飛躍的に向上できる。一方で、アダマンタン構造を含まないユニットも特定範囲含むことで、有機溶媒に対する溶解性を高めることができ、共重合体の加工・成形性を向上させることができる。
また、本発明の共重合体は、アダマンタン構造を含むユニットとアダマンタン構造を含まないユニットの共重合比を任意に選択することで屈折率を調整することができる他、R部位及びAr部位に、任意の構造のモノマーを導入させることができるため、それぞれ選択したモノマー構造に起因する所望の効果も得られる。
尚、本発明の共重合体の両端は特に限定されないが、例えば共重合体の端となった繰り返し単位に含まれる、他の繰り返し単位と結合していない2つの結合手同士が結合し、炭素−炭素間で二重結合を形成していてもよい。また、溶媒として用いる水(HとOHがそれぞれ二重結合の炭素に結合)、相間移動触媒の分解物(例えば、オニウム塩のハロゲン、−NR2など)、その他の不純物が付加反応した構造になっていてもよい。その他、端同士が付加反応して環状ポリマーになっていてもよい。さらに、単官能性のモノマーや当該二重結合に付加反応する末端封止剤によって端を封じられていてもよい。
【0013】
本発明の共重合体において、「アダマンタン構造を含む」とは、例えばRが下記式(I)で表わされる構造を含むことをいう。
【化11】
(式中、Xは、式(I)に含まれる各炭素原子と直接に結合する1つの原子のみを表す。
Xは、式(I)に含まれない他の原子と結合していてもよい。
Xは、それぞれ水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ケイ素原子、リン原子又は硫黄原子である。
Xは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0014】
例えばRが(−フェニレン基−アダマンチレン基−フェニレン基−)であった場合には、Rは、式(I)の複数のXのうち2つが炭素原子、残りのXが全て水素原子のアダマンタン構造を含む。従って、Rは上記式(I)で表されるアダマンタン構造を少なくとも1つ含むことになる。同様に、Rが(−フェニレン基−ジアマンチレン基−フェニレン基−)であった場合には、式(I)の複数のXのうち4つが炭素原子、残りのXが全て水素原子のアダマンタン構造を含む。従って、Rは上記式(I)で表されるアダマンタン構造を少なくとも1つ含むことになる。
【0015】
Xが、式(I)に含まれない他の原子と結合するということを以下で説明する。
例えばRが1つのトリクロロメチル基を置換基として有するアダマンチレン基であった場合には、式(I)の複数のXのうち1つが炭素原子、2つが酸素原子、残りのXが全て水素原子である。この場合、炭素原子であるXは、式(I)に含まれる炭素原子と直接結合している他、式(I)に含まれない他の原子である塩素原子と直接結合している。このように、Xは式(I)に含まれない他の原子と結合していてもよい。
【化12】
【0016】
式(1)のRは、好ましくは下記式(3)で表わされる2価の基である。
【化13】
(式中、R2は、置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
R1及びR3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
【0017】
式(3)のR2は、好ましくは式(4)〜(9)で表わされる2価の基のいずれかである。
【化14】
(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
また、m’’は0以上28以下の整数であり、m’’が2個の場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【0018】
R’の特に好ましい具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基、アダマンチル基、ビアダマンチル基、ジメチルビアダマンチル基、ジブチルビアダマンチル基、ジアマンチル基、トリアマンチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロアダマンチル基、及びこれら置換基を2以上を組み合わせてなる置換基が挙げられる。
R’が上述した置換基以外の場合、置換基自身の分子運動又は熱分解によって、共重合体の耐熱性、強度、有機溶媒溶解性、成形性等が低下するおそれがある。
【0019】
R2の具体例を以下に示す。
尚、下記具体例のR’及びm’’は上記と同様である。
【化15】
【化16】
【化17】
【0020】
R1及びR3は、好ましくはそれぞれ置換又は非置換のフェニレン基である。
【0021】
Rは、好ましくは下記式(24)又は(25)で表わされる2価の基である。
【化18】
(式中、R’及びm’’は、上記と同様であり、R’は、アダマンタン部位構造に置換していてもアリーレン部位に置換していてもよい。)
【0022】
式(1)のArは、好ましくは下記式(26)で表わされる2価の基である。
【化19】
(式中、Ar2は、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基又は置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基である。
Ar1及びAr3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
【0023】
式(26)において、Ar2は、好ましくは置換若しくは非置換の直鎖状飽和脂肪族基、又は置換若しくは非置換の分岐状飽和脂肪族基である。また、Ar1及びAr3は、好ましくはそれぞれ置換又は非置換のフェニレン基である。
【0024】
式(1)のArは、好ましくは下記式(27)で表わされる2価の基である。
【化20】
(R’’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
2つのR’’は、互いに同じでも異なってもよく、互いに結合して環状構造を構成してもよい。)
【0025】
式(27)において、R’’の特に好ましい具体例は、R’と同様の置換基に加えて、一組のR’’で形成されるシクロへキシル構造及びシクロドデシル構造が挙げられる。
R’’が上述した置換基以外の場合、置換基自身の分子運動又は熱分解によって、共重合体の耐熱性、強度、有機溶媒溶解性、成形性等が低下するおそれがある。
【0026】
本発明の共重合体に含まれる式(1)で表わされる繰り返し単位と式(2)で表わされる繰り返し単位の総数は5以上10000以下である。
繰り返し単位の総数が5未満の場合、共重合体としての特性が得られないおそれがある。一方、繰り返し単位の総数が10000超の場合、共重合体の溶解度が低下し、重合反応時の重合度の上昇が抑制され、薄膜形成用の共重合体溶液が調製できないおそれがある。
【0027】
本発明の共重合体は、式(1)で表わされる繰り返し単位と式(2)で表わされる繰り返し単位を含めばよく、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれでもよい。
尚、後述する本発明の共重合体の製造方法では、ランダム共重合体が製造できるのが一般的であるが、製造方法、構造の選択により交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれの共重合体も製造することができる。
【0028】
本発明の共重合体において、式(1)で表わされる繰り返し単位と式(2)で表わされる繰り返し単位の比は、好ましくは1:1000〜1000:1(式(1)で表わされる繰り返し単位:式(2)で表わされる繰り返し単位)である。
【0029】
以下、各置換基について説明する。
R、R1、R3、Ar、Ar1、Ar2、Ar3の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ジフルオロメチレン基が挙げられる。
【0030】
R、R1、R3、Ar、Ar1、Ar2及びAr3の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基としては、メチルメチレン基、トリフルオロメチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基が挙げられる。
【0031】
R、R1、R3、Ar、Ar1及びAr3の炭素数6〜10の2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、テトラフルオロフェニレン基が挙げられる。
【0032】
R、R1、R2、R3の炭素数5〜50の2価の脂環式基としては、アダマンタン構造、パーフルオロアダマンタン構造、ビアダマンタン構造、ジアマンタン構造、トリアマンタン構造、ノルボルネン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造又はこれらシクロアルカン構造を構成する1つの炭素の代わりにヘテロ原子を有する環構造を含む炭素数5〜50の2価の脂環式基が挙げられる。
上記のうち、好ましくはアダマンタン構造、パーフルオロアダマンタン構造、ビアダマンタン構造、ジアマンタン構造又はトリアマンタン構造を含む炭素数5〜50の2価の脂環式基であり、より好ましくはアダマンタンチレン基、パーフルオロアダマンタンチレン基、ビアダマンタンチレン基、ジアマンタンチレン基又はトリアマンタンチレン基のいずれかである。
【0033】
また、Ar、Ar1、Ar3の炭素数5〜50の2価の脂環式基としては、ノルボルネン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、又はこれらシクロアルカン構造を構成する1つの炭素の代わりにヘテロ原子を有する環構造を含む炭素数5〜50の2価の脂環式基が挙げられる。ここで脂環式基は、単環であっても複環であってもよい。
尚、Arはアダマンタン構造を含まないので、Ar、Ar1及びAr3の脂環式基はアダマンタン構造を含まない。
【0034】
上述の2価の脂環式基、芳香族基、直鎖状脂肪族基及び分岐状脂肪族基は、いずれもその一部にエーテル結合(−O−)、エステル結合(−CO2−)、炭酸エステル結合(−OCO2−)、チオエーテル結合(−S−)、チオエステル結合(−SO2−)を有してもよく、また、これらにさらにヘテロ原子が結合した結合を含んでもよい。
【0035】
Rの2価の脂環式基、芳香族基、直鎖状脂肪族基、分岐状脂肪族基が置換基を有する場合、当該置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン元素、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基が挙げられる置換していてもよい。
尚、上記の炭素数6〜30の置換の芳香族置換基、炭素数1〜20の置換の直鎖状脂肪族置換基、炭素数3〜20の置換の分岐状脂肪族置換基及び炭素数5〜50の置換の脂環式置換基の「置換」とは、ハロゲン元素、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基のいずれかの置換基で置換されていることを意味する。
【0036】
Arの2価の脂環式基、芳香族基、直鎖状脂肪族基、分岐状脂肪族基が置換基を有する場合の当該置換基は、Rと同様である。但し、Arの置換基はアダマンタン構造は含まない。
【0037】
R’及びR’’の炭素数6〜30の芳香族置換基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
R’及びR’’の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基及び炭素数5〜50の脂環式置換基としては、R及びArで説明した2価の置換基に対応する1価の置換基が挙げられる。
【0038】
本発明の共重合体の具体例を以下に示す。
【化21】
(式中、m及びm’は、それぞれ繰り返し単位数を表わし、m+m’は5以上10000以下である。
また、これら共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。)
【0039】
本発明の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体は、例えば下記式(28)で表わされるモノマー及び下記式(29)で表わされるモノマーを共重合させることにより製造できる。
【化22】
(式中、R及びArは、式(1)と同様である。)
【0040】
例えば、式(28)及び(29)で表されるモノマーを共存させ、段階的に混合する、あるいは傾斜的に共存比を変化させ、熱、紫外線、赤外線、電子線、プラズマ等を用いた付加環化反応をすることにより選択率及び収率よく製造することができる。
【0041】
好ましい重合条件は、用いるモノマー及び得られる共重合体の所望する構造、物性により異なるが、熱による付加環化反応による場合は、50℃〜300℃の範囲の温度で加熱することによりモノマーを付加環化反応させることができる。
【化23】
(式中、m及びm’は、それぞれ繰り返し単位数を表わし、m+m’は5以上10000以下である。
また、式(100)で表わされる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。)
【0042】
式(28)で表わされるモノマー及び式(29)で表わされるモノマーの重合比は、1:10000〜10000:1(モル比)であり、好ましくは1:1000〜1000:1である。
重合比が上記範囲外の場合、得られる共重合体の物性が、過剰量存在するモノマーのみからなる重合体と実質的に同一の物性を示すことになるおそれがある。
【0043】
式(28)及び(29)で表されるモノマーは従来公知の方法(例えばMacromolecules,37,5724(2004))により製造することができる。
具体的な製造条件は、モノマーの所望の構造により異なるが、反応剤、触媒、原料の濃度や添加比率、溶媒の添加量、反応温度、反応時間、反応後処理方法等により制御することが可能である。
【0044】
尚、製造したモノマーは、好ましくは精製して用いる。精製したモノマーを用いることにより、本発明の共重合体の複屈折率、耐熱性及び強度に加えて安定性を向上させることができる。
モノマーの精製方法としては、イオン交換樹脂処理、再沈殿、再結晶、精密ろ過、乾燥等が挙げられ、これら精製方法によりモノマーに含まれるFe3+、Cl−、Na+、K+、Ca2+等のイオン性不純物、反応溶媒、後処理溶媒、水分等を取り除くことができる。
【0045】
また、触媒又は反応剤を添加して本発明の共重合体を製造する場合、得られた共重合体を上述の精製方法を用いて精製することにより、本発明の共重合体の複屈折率、耐熱性及び強度に加えて安定性を向上させることができる。
【0046】
本発明の共重合体は、アダマンタン構造を含む繰り返し単位と、アダマンタン構造を含まない繰り返し単位からなる共重合体である。
本発明の共重合体からなる透明材料の屈折率は、アダマンタン構造を含む繰り返し単位の割合が一定になるまでは、アダマンタン構造を含む繰り返し単位の割合に比例して増加又は減少する。従って、屈折率の任意の調整が可能である。
加えて、本発明の共重合体からなる透明材料は、アダマンタン構造を全く含まない、あるいは全ての繰り返し単位にアダマンタン構造を含む芳香族構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する単独重合体に比べて、複屈折率が同程度か、又は高くなる。
【0047】
本発明の共重合体は、炭素からなる化合物のうち、地球上で最も高強度かつ高安定性であるダイヤモンドと共通の構造を有するアダマンタン構造を含むので、共重合体中のエーテル結合の自由回転を拘束することが可能となり、アダマンタン構造を全く含まない芳香族構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する単独重合体に比べて、耐熱性及び強度が高い。具体的には、本発明の共重合体からなる透明材料のガラス転移温度は、それぞれの繰り返し単位のみからなる単独重合体のガラス転移温度に、それぞれの繰り返し単位の割合を乗じた値の総和に近い値となる。
【0048】
本発明の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を有する共重合体を含む透明材料は、光学レンズ、光ファイバー、光導波路、フォトニック結晶等の種々の光情報処理装置や、フラットパネルディスプレー等の表示装置の性能及び耐久性を向上させることができる。また、本発明の共重合体を含む透明材料は、高い耐熱性を有する。また、共重合体に用いるモノマーの構造、モノマー種の組み合わせ、使用モル比を適切に選択することにより、前記特性に加えて、有機溶媒溶解性や成形性の付与、屈折率を所望の値に調整することが可能となる。
尚、本発明の透明材料には、本発明の共重合体のほかに樹脂成形分野で使用される各種添加剤を含んでもよい。
【0049】
本発明の透明材料は公知の成形方法によって各種成形品(シリコンウェハ等の基板に形成した薄膜、フィルム、薄板、ファイバー等)を製造することができる。
成形方法としては、射出成型法、射出圧縮成型法、押出成型法、ブロー成型法、加圧成型法、トランスファー成型法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、CVD法等が挙げられ、これら成形方法を所望の製品の形態、性能に応じて適宜選択できる。
また、モノマー又は上述の方法で予備重合したnが2〜25の低分子量ポリマー(オリゴマー)を用いて成型し、得られた成形体を熱、紫外線、赤外線、電子線、プラズマ等により硬化(環化付加反応)させてもよい。
【0050】
スピンコーティング法等により本発明の透明材料を薄膜状に成形する場合、本発明の透明材料を有機溶媒に溶解させた塗料を使用することができる。
有機溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、DMF、NMP、ジメチルアセトアミド、DMSO、アニソール、アセトフェノン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、THF、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
【0051】
塗料中における本発明の透明材料の濃度は、塗料の粘度や成形方法等を考慮して適宜調製すればよい。
薄膜の厚さは特に限定されないが、一般に10nm〜10μm程度のものが好適に使用される。
【0052】
尚、本発明の透明材料からなるフィルムの厚さは1μm〜1mm程度であり、薄板の厚さは1mm〜1cm程度である。
【0053】
本発明の透明材料又は薄膜は、公知の透明材料が利用されている部材として使用することができる。具体的には、FPD保護膜等の透明フィルム、光拡散板、光反射板等の透明薄板、光ファイバー、光導波路等の線状透明部材、フォトニック結晶等の光情報処理用部材が挙げられる。上記部材は、装置の構成部材として用いることができ、例えば、光情報処理装置、FPD等の表示装置の構成部材として使用できる。
【0054】
本発明の透明材料は、公知の透明材料が利用されている部材に使用できる透明性を有する。透明性を有するとは、光の一部又は全部を吸収せずに透過することを意味する。
本発明の透明材料では、透明性の指標である最大非透過光波長(λcutoff)が150nm以上325nm以下の範囲であることが好ましい。最大非透過光波長が325nmを超えると黄色を帯びるおそれがある。
本発明の透明材料では、また透明性の指標である透過率80%の波長(λ80)が、380nm未満であることが好ましい。透過率80%波長が可視光領域になった場合には、着色が認められる可能性があるからである。好適には、360nm未満である。透明性の観点からは、透過率80%波長は短い程よい。最も短い波長としては、例えば、最大非透過光波長の下限値が挙げられる。
最大非透過光波長及び透過率80%波長は、例えば上記式(4)〜(9)の置換数m’’を調整することにより調整できる。
尚、最大非透過光波長及び透過率80%波長はフィルム状試料の透過スペクトルを紫外可視分光装置にて測定して決定できる。
また、本発明の透明材料においては、特に紫外領域における透明性の指標として、分光エリプソメトリーによる消衰係数(k)の測定結果を採用できる。併せて、光学材料として用いる際の重要な物性である、各波長における屈折率(n)も分光エリプソメトリーにより求めるがことができる。
【0055】
耐熱性の指標であるガラス転移温度(Tg)は115℃以上400℃以下の範囲であることが好ましく、150℃以上400℃以下の範囲がさらに好ましい。また、10%重量減少温度(Td10)が400℃以上600℃以下の範囲であることが好ましい。
尚、ガラス転移温度は示差走査熱量計にて測定でき、10%重量減少温度は、窒素雰囲気下、示差熱熱重量同時測定装置にて測定できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下の合成例及び実施例で用いている出発原料、試薬等は全て市販品又は公知の方法で調製した化合物である。
【0057】
合成例1
容量500ミリリットルのフラスコ中で、水素化ナトリウム(3.08g、127ミリモル)及びジメチルスルホキシド(200ミリリットル)の混合物に、窒素雰囲気下で1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(20.37g、63.6ミリモル)のジメチルスルホキシド(200ミリリットル)溶液を滴下してから、80℃に加熱し12時間攪拌した。次いで、氷浴を用いて反応液を冷却し30℃以上にならないように、1,2−ジブロモテトラフルオロエタン(49.6g、191ミリモル)を滴下した後、室温で12時間、さらに50℃で12時間攪拌した。この反応液を冷却後、2リットルの蒸留水に投入し、しばらく撹拌した後、析出物をろ別回収した。得られた析出物を100℃で12時間減圧乾燥した後、ヘキサンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、下記式(A−1)で表される合成中間体を白色結晶として得た(19.92g、収率47%)。式(A−1)で表される化合物の融点は107℃であった。
【化24】
【0058】
次いで、容量500ミリリットルのフラスコ中で、得られた式(A−1)で表される白色結晶(19.92g、29.4ミリモル)のアセトニトリル(100ミリリットル)溶液を調製した後、亜鉛粉末(3.84g、58.8ミリモル)を添加し、窒素雰囲気下で80℃に加熱して30時間攪拌した。その後、反応液を冷却後、500ミリリットルの蒸留水に投入し、しばらく撹拌した後、ヘキサンにより抽出した。ヘキサン抽出液に無水硫酸ナトリウムを添加し脱水し、減圧下濃縮し、得られた析出物を60℃で12時間減圧乾燥した。得られた粗生成物をヘキサンによるシリカゲルカラムクロマトグラフィー、及びメタノールによる再結晶で精製し、下記式(A−2)で表されるモノマーを白色結晶として得た(12.29g、収率87%)。式(A−2)で表されるモノマーの融点は51℃であった。
【化25】
【0059】
合成した式(A−2)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.78(t,2H,adamantane),1.93(d,8H,adamantane),1.97(s,2H,adamantane),2.32(m,2H,adamantane),7.05(d,4H,o-Ar-H),7.37(d,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=29.4,35.6,37.0,42.3,49.2,115.6,126.4,147.2,153.1
19F-NMR(376MHz,CDCl3,ppm):δ=-120.9(dd,1F),-127.8(dd,1F),-134.4(dd,1F)
FT-IR(KBr,cm-1):2911(CH2),1833(CF=CF2),1272(C-F),1135(C-F)
【0060】
合成例2
合成例1において、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンを用いた以外は合成例1と同様にして合成中間体として下記式(A−3)で表される白色結晶(15.7g、収率36%)を得た。次いで、式(A−1)で表される合成中間体の代わりに式(A−3)で表される合成中間体を用いた他は合成例1と同様にして、下記式(A−4)で表されるモノマーを白色結晶として得た(8.9g、収率80%)。式(A−4)で表されるモノマーの融点は128℃であった。
【化26】
【0061】
合成した式(A−4)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.71-1.73(m,4H,adamantane),1.76(m,2H,adamantane),1.82(m,2H,adamantane),1.97-2.00(m,4H,adamantane),3.19(m,2H,adamantane),6.96(d,4H,o-Ar-H),7.37(d,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=27.4,32.2,33.2,37.8,49.9,116.0,127.3,144.9,152.3
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-120.9(dd,1F),-127.6(dd,1F),-134.3(dd,1F)
FT-IR(KBr,cm-1):2909(CH2),1833(CF=CF2),1272(C-F),1139(C-F)
【0062】
合成例3
合成例1において、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの代わりにビスフェノールAを用い、シリカゲルクロマトグラフィーの代わりにジエチルエーテルで抽出した以外は合成例1と同様にして、合成中間体として下記式(A−5)で表される無色透明油状物(11.2g、収率30%)を得た。次いで、式(A−1)で表される合成中間体の代わりに式(A−5)で表される合成中間体を用い、ヘキサンによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した以外は合成例1と同様にして、下記式(A−6)で表されるモノマーを無色透明油状物(6.2g、収率84%)として得た。
【化27】
【0063】
合成した式(A−6)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.65(s,6H,CH3),6.99(d,4H,o-Ar-H),7.20(d,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=30.9,42.3,115.5,128.3,147.0,153.1
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-120.9(dd,1F),-127.7(dd,1F),-134.5(dd,1F)
FT-IR(KBr,cm-1):2974(CH3),1833(CF=CF2),1277(C-F),1140(C-F)
【0064】
合成例4
合成例1において、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いた以外は合成例1と同様にして、合成中間体として下記式(A−7)で表される無色透明油状物(20.7g、収率20%)を得た。次いで、式(A−1)で表される合成中間体の代わりに式(A−7)で表される合成中間体を用い、ヘキサンによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した以外は合成例1と同様にして、下記式(A−8)で表されるモノマーを無色透明油状物(8.76g、収率59%)として得た。
【化28】
【0065】
合成した式(A−8)で表される化合物の構造は、NMR測定及びIR測定で確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=7.11(d,4H,o-Ar-H),7.40(d,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=113.4,115.8,121.1,131.8,149.4
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-65.0(s,3F),-119.8(dd,1F),-126.4(dd,1F),-135.4(dd,1F)
FT-IR(KBr,cm-1):1833(CF=CF2),1277(C-F),1140(C-F)
【0066】
比較例1
容量100ミリリットルのフラスコ中で、合成例3で合成したモノマー(A−6)(1.00g)を窒素雰囲気下180℃で24時間加熱した後、240℃で8時間加熱し、得られた固体をTHFに溶解させてからメタノール中に投入し再沈殿させた。得られた白色沈殿をろ別し、80℃で12時間真空乾燥することにより、下記式(B−1)で表される脂環式構造を含有しないペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有するポリマーを白色固体として得た(0.90g、収率90%)。
【化29】
【0067】
得られた式(B−1)で表されるポリマーの構造は、NMR及びIRにより確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.63(s,6H,CH3),6.98(d,2H,o-Ar-H),7.07(d,2H,o-Ar-H),7.14(m,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=30.7,42.2,117.6,128.0,147.1,150.5
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-127.7,-128.7,-129.2,-129.3,-129.8,-130.6,-131.1,-131.7,-132.2,-132.9
FT-IR(KBr,cm-1):2972(CH3),1309(C-F),1204(C-F),963(C-F)
【0068】
比較例2
比較例1において、合成例3で合成したモノマー(A−6)の代わりに合成例4で合成したモノマー(A−8)を用い、窒素雰囲気下180℃で12時間加熱した後、220℃で8時間加熱した以外は比較例1と同様にして、下記式(B−2)で表される脂環式構造を含有しないペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有するポリマーを白色固体として得た(0.81g、収率81%)。
【化30】
【0069】
得られた式(B−2)で表されるポリマーの構造は、NMR及びIRにより確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=7.07(d,2H,o-Ar-H),7.18(d,2H,o-Ar-H),7.36(m,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=117.6,124.1,129.8,130.0,131.8,152.8
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-65.0,-127.4,-127.92,-128.1,-128.3,-129.3,-129.9,-130.4,-132.4,-132.9
FT-IR(KBr,cm-1):2972(CH3),1309(C-F),1204(C-F),963(C-F)
【0070】
参考例1
容量100ミリリットルのフラスコ中で、合成例1で合成したモノマー(A−2)(0.50g)を窒素雰囲気下180℃で9時間加熱した後、220℃で3時間さらに加熱し、固体状のポリマーを得た。得られたポリマーをテトラヒドロフランに溶解させ、メタノール中に再沈殿させて、下記式(B−3)の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有するポリマーを白色固体として得た(0.46g、収率92%)。
【化31】
【0071】
得られた式(B−3)で表されるポリマーの構造は、NMR及びIRにより確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.75(t,2H,adamantane),1.89(d,8H,adamantane),1.93(s,2H,adamantane),2.28(m,2H,adamantane),7.04(d,2H,o-Ar-H),7.11(d,2H,o-Ar-H),7.31(m,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(100MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=29.4,35.6,36.9,42.2,49.1,117.8,126.1,147.3,150.4
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-127.7,-128.8,-129.2,-129.4,-129.8,-130.6,-131.2,-131.8,-132.1,-132.6
FT-IR(film,cm-1):2905(CH2),1317(C-F),1204(C-F),963(C-F)
【0072】
参考例2
容量100ミリリットルのフラスコ中で、合成例2で合成したモノマー(A−4)(0.50g)を窒素雰囲気下180℃で2時間加熱した後、220℃で3時間さらに加熱し、固体状のポリマーを得た。得られたポリマーをテトラヒドロフランに溶解させ、メタノール中に再沈殿させて、下記式(B−4)の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有するポリマーを白色固体として得た(0.47g、収率94%)。
【化32】
【0073】
得られた式(B−4)で表されるポリマーの構造は、NMR及びIRにより確認した。測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=1.69-1.71(m,6H,adamantane),1.78(m,2H,adamantane),1.94(m,4H,adamantane),3.13(m,2H,adamantane),6.78(d,2H,o-Ar-H),6.99(d,2H,o-Ar-H),7.27(m,4H,m-Ar-H)
13C-NMR(100MHz,CDCl3,TMS,ppm):δ=27.4,32.1,33.1,37.8,49.9,118.0,127.0,145.2,149.5
19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ=-127.7,-128.8,-129.1,-129.5,-130.0,-130.7,-131.2,-131.8,-132.7,-133.3
FT-IR(film,cm-1):2917(CH2),1319(C-F),1204(C-F),962(C-F)
【0074】
実施例1
脂環式構造を含有するモノマー(モノマーa)であるモノマー(A−2)を0.240g、及び脂環式構造を含有しないモノマー(モノマーb)であるモノマー(A−6)を0.582g、容量100ミリリットルのフラスコにそれぞれ入れて混合し、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱した後、220℃で1時間加熱した。
得られた固体をテトラヒドロフランに溶解させ、メタノール中に再沈殿させた。得られた白色沈殿をろ別し、80℃で24時間真空乾燥することにより、脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する共重合体(B−5)を白色固体として得た(0.68g、83%)。
得られた共重合体の構造は、モノマーのパーフルオロビニルエーテル部位が環化付加して得られたペルフルオロシクロブチルエーテル構造により結合した共重合体であり、共重合比は用いたモノマーのモル比と同等となっていることをNMR及びIRにより確認した。
【0075】
実施例2〜13
表1に示すモノマーa及びモノマーbを用い、表1に示す添加量及び加熱条件とした他は実施例1と同様にして、以下に示す白色固体の共重合体(B−5)〜(B−17)を得た。共重合体の構造、収量及び収率を表1に示す。
尚、(B−5)〜(B−17)におけるm及びm’は、(B−5)〜(B−17)の共重合体におけるそれぞれの繰り返し単位の総数の比を表すものとする。
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【0076】
【表1】
【0077】
[ポリマーの評価]
実施例1〜13で製造した共重合体、並びに、比較例1、比較例2、参考例1及び参考例2で製造したポリマーについて、以下の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(1)対数粘度(ηinh)
ポリマー0.1gをクロロホルム20ミリリットルに溶解させ、内10ミリリットルをキャノンフェンスケ粘度管に入れ、30℃の恒温槽中にて落下時間t(3回測定平均値)を求め、下記式により対数粘度(ηinh)を求めた。
ηinh={ln(t/t0)}/C
(ηinh:対数粘度(dL/g)、t:ポリマー溶液の落下時間、t0:溶媒のみの場合の落下時間、Cポリマー溶液の濃度(g/dL))
【0078】
(2)数平均分子量及び重量平均分子量
ポリマーを希薄なテトラヒドロフラン溶液とした後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて数平均分子量及び重量平均分子量(ポリスチレン標準換算)を測定した。
【0079】
(3)10%重量減少温度(Td10)
窒素雰囲気下での示差熱熱重量同時測定装置により10%重量減少温度(Td10)を測定した。
【0080】
(4)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計によりガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0081】
(5)屈折率(n)及び消衰係数(k)
(5−1)n及びk測定のための薄膜サンプル作成
実施例1〜実施例13、比較例1〜2及び参考例1〜2の重合体、それぞれを単独に用いて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を作成したところ、いずれも目視上均一溶液となった。それら均一溶液を用いて膜厚100〜120nm薄膜をスピンコート法にてシリコン基板上に作製した。いずれも、目視上透明な均一な薄膜が得られた。
(5−2)分光エリプソメトリーによるn及びkの測定
作製した薄膜サンプルを、分光エリプソメトリー装置(J.A. Woollam Co., Inc.製、M−2000D)を用いて、室温(23℃)下、標準エリプソメトリック収集条件にて波長192nm〜1000nmのΨ、Δを取得した。得られたΨ、Δから、エリプソメトリー解析ソフト(J.A. Woollam Co., Inc.製、WVASE32)を用いて、最適化した屈折率n、消衰係数kを測定波長領域(192nm〜1000nm)に渡って求めた。最適化方法としては、 Cauchy ModelのPoint by Point Fittingにて、膜厚、n、kの暫定値を求め、得られたn、kがKramaers−Kronigの関係を満たすことを確認した後、General Oscillation ModelにてGaussian振動子を用いて Cauchy Modelにより求めたn、kの暫定値を初期値としてフィッティングし、General Oscillation Modelパラメータを求め、次いで、実測データΨ、Δにフィッティングすることにより、General Oscillation Modelに基づくn、kを、波長192nm〜1000nmに渡って決定した。実施例1〜実施例13、比較例1〜2及び参考例1〜2のそれぞれの結果を図1〜図17に示す。
【0082】
(6)D線屈折率
分光エリプソメトリー装置にて求めた測定波長領域におけるnより、波長589nmにおける屈折率nDを定め、D線屈折率とした。
【0083】
(7)アッベ数
分光エリプソメトリー装置にて求めた測定波長領域におけるnより、波長486nmにおける屈折率nF、波長589nmにおける屈折率nD、波長656nmにおける屈折率nC定め、下記式より可視光領域屈折率の波長依存性を示すアッベ数νDを求めた。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
【0084】
【表2】
【0085】
表2の結果より、本発明の脂環式構造及びペルフルオロシクロブチルエーテル構造を含有する共重合体は、共重合比により所望の屈折率を導くことが可能であることが分かる。
また、比較例及び参考例と比べて、本発明の共重合体は、可視光領域屈折率の波長依存性が同等であるか又は低くなっており、さらに脂環式構造を共重合により含有することに起因して高耐熱性を具備するようになることが明らかであり、透明材料として極めて有用であることがわかる。
【0086】
対数粘度は、その値が低いことにより、成形性が向上する。具体的には、塗布成形の際に均一に広げるのが容易であるという効果がある。また、細かな空隙にポリマーを充填するような成形(例えば、半導体実装のアンダーフィル剤)の際に内部まで良く浸透するという効果がある。
【0087】
比較例3〜6
比較例3〜6として、比較例1の重合体と参考例1の重合体、比較例2の重合体と参考例2の重合体、比較例1の重合体と参考例2の重合体、比較例2の重合体と参考例1の重合体の組み合わせで、それぞれ重量比1:1で混合したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を調製したところ、比較例2の重合体と参考例2の重合体の混合物(比較例4)、及び比較例1の重合体と参考例2の重合体の混合物(比較例5)の場合は目視上均一な混合溶液となったが、比較例1の重合体と参考例1の重合体の混合物(比較例3)、及び比較例2の重合体と参考例1の重合体の混合物(比較例6)の場合は若干白濁した混合液となった。
【0088】
これら混合液を用いて同様にシリコン基板上に薄膜を成膜したところ、比較例1の重合体と参考例1の重合体の混合溶液からなる薄膜(参考例3)、比較例2の重合体と参考例1の重合体の混合溶液からなる薄膜(比較例6)、比較例2の重合体と参考例2の重合体の混合溶液からなる薄膜(比較例4)の場合は、目視上、全面に濁りが観察された。
また、比較例1の重合体と参考例2の重合体の混合溶液からなる薄膜(比較例5)、比較例2の重合体と参考例2の重合体の混合溶液からなる薄膜(比較例4)の場合は、製膜過程で析出した重合体粒子を起点とすると思われる彗星状欠陥が多数観測された。
これら混合液では、得られる薄膜が不透明若しくは不均一な薄膜であることから、透明材料、光学材料として不適であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の共重合体は、光ファイバー、光学レンズ等の光学デバイス、フラットパネルディスプレイ等の表示機器の透明材料として好適に使用できる。
本発明の透明材料は、光ファイバー、光導波路等の光情報伝達装置、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ、CD、DVD、ブルーレイディスク、光コンピューター等の光情報処理装置、又は液晶ディスプレー、液晶プロジェクター、プラズマディスプレー、ELディスプレー、LEDディスプレー等の表示装置の構成部材の材料として好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる繰り返し単位と、下記式(2)で表わされる繰り返し単位とからなる共重合体であって、
前記式(1)で表わされる繰り返し単位と前記式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が5以上10000以下である共重合体。
【化37】
【化38】
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
Arは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含まない2価の基である。)
【請求項2】
Rが、下記式(3)で表わされる2価の基である請求項1に記載の共重合体。
【化39】
(式中、R2は、置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
R1及びR3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
【請求項3】
R2が、下記式(4)〜(9)で表わされる2価の基のいずれかである請求項2に記載の共重合体。
【化40】
(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
m’’は0以上28以下の整数であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【請求項4】
R1及びR3が、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である請求項2又は3に記載の共重合体。
【請求項5】
Rが、下記式(24)又は(25)で表わされる2価の基である請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体。
【化41】
(式中、R’及びm’’は、前記式(4)〜(9)と同様である。)
【請求項6】
Arが、下記式(26)で表わされる2価の基である請求項1〜5のいずれかに記載の共重合体。
【化42】
(式中、Ar2は、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基又は置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基である。
Ar1及びAr3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
【請求項7】
Ar2が、置換若しくは非置換の2価の直鎖状飽和脂肪族基、又は置換若しくは非置換の2価の分岐状飽和脂肪族基である請求項6に記載の共重合体。
【請求項8】
Ar1及びAr3が、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である請求項6又は7に記載の共重合体。
【請求項9】
Arが下記式(27)で表わされる2価の基である請求項1〜8のいずれかに記載の共重合体。
【化43】
(R’’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
2つのR’’は、互いに同じでも異なってもよく、互いに結合して環状構造を構成してもよい。)
【請求項10】
下記式(28)で表わされるモノマー及び下記式(29)で表わされるモノマーを1:10000〜10000:1のモル比で共重合させる共重合体の製造方法。
【化44】
(式中、R及びArは、式(1)と同様である。)
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法により得られる共重合体。
【請求項12】
請求項1〜9及び11のいずれかに記載の共重合体を含む透明材料。
【請求項13】
請求項1〜9及び11のいずれかに記載の共重合体を有機溶媒に溶解させた塗料。
【請求項14】
請求項13に記載の塗料を用いて形成される薄膜。
【請求項15】
請求項12に記載の透明材料又は請求項14に記載の薄膜を含む部材。
【請求項16】
請求項15に記載の部材を備える装置。
【請求項1】
下記式(1)で表わされる繰り返し単位と、下記式(2)で表わされる繰り返し単位とからなる共重合体であって、
前記式(1)で表わされる繰り返し単位と前記式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が5以上10000以下である共重合体。
【化37】
【化38】
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
Arは、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜10の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、又は前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基であって、アダマンタン構造を含まない2価の基である。)
【請求項2】
Rが、下記式(3)で表わされる2価の基である請求項1に記載の共重合体。
【化39】
(式中、R2は、置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基であって、アダマンタン構造を含む2価の基である。
R1及びR3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
【請求項3】
R2が、下記式(4)〜(9)で表わされる2価の基のいずれかである請求項2に記載の共重合体。
【化40】
(式中、R’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
m’’は0以上28以下の整数であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、m’’が2以上の場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【請求項4】
R1及びR3が、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である請求項2又は3に記載の共重合体。
【請求項5】
Rが、下記式(24)又は(25)で表わされる2価の基である請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体。
【化41】
(式中、R’及びm’’は、前記式(4)〜(9)と同様である。)
【請求項6】
Arが、下記式(26)で表わされる2価の基である請求項1〜5のいずれかに記載の共重合体。
【化42】
(式中、Ar2は、置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基又は置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基である。
Ar1及びAr3は、それぞれ単結合、又は置換又は非置換の炭素数1〜20の2価の直鎖状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数3〜20の2価の分岐状脂肪族基、置換又は非置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基、及び置換又は非置換の炭素数5〜50の2価の脂環式基からなる群から選択される2価の基、若しくは前記群から選択される2以上の2価の基が結合してなる2価の基である。)
【請求項7】
Ar2が、置換若しくは非置換の2価の直鎖状飽和脂肪族基、又は置換若しくは非置換の2価の分岐状飽和脂肪族基である請求項6に記載の共重合体。
【請求項8】
Ar1及びAr3が、それぞれ置換又は非置換のフェニレン基である請求項6又は7に記載の共重合体。
【請求項9】
Arが下記式(27)で表わされる2価の基である請求項1〜8のいずれかに記載の共重合体。
【化43】
(R’’は、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、チオエステル基、チオール基、チオアルコキシル基、置換又は非置換の炭素数6〜30の芳香族置換基、置換又は非置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数3〜20の分岐状脂肪族置換基、置換又は非置換の炭素数5〜50の脂環式置換基、又は炭素数1〜20のパーフルオロ脂肪族置換基である。
2つのR’’は、互いに同じでも異なってもよく、互いに結合して環状構造を構成してもよい。)
【請求項10】
下記式(28)で表わされるモノマー及び下記式(29)で表わされるモノマーを1:10000〜10000:1のモル比で共重合させる共重合体の製造方法。
【化44】
(式中、R及びArは、式(1)と同様である。)
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法により得られる共重合体。
【請求項12】
請求項1〜9及び11のいずれかに記載の共重合体を含む透明材料。
【請求項13】
請求項1〜9及び11のいずれかに記載の共重合体を有機溶媒に溶解させた塗料。
【請求項14】
請求項13に記載の塗料を用いて形成される薄膜。
【請求項15】
請求項12に記載の透明材料又は請求項14に記載の薄膜を含む部材。
【請求項16】
請求項15に記載の部材を備える装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−35994(P2013−35994A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175139(P2011−175139)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】
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