説明

脂環構造含有重合体、脂環構造含有重合体組成物及び光学部品

【課題】
高屈折率と高アッベ数とを兼ね備えた光学部品を得ることができる樹脂材料、及びこの樹脂材料を用いて得られる光学レンズ等の光学部品を提供する。
【解決手段】
−A−Si(R)(R)(R)(Aは単結合等であり、R〜Rは炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基等である。)で表される含ケイ素基と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、芳香環構造を有しない脂環構造含有重合性単量体(A)5〜30重量%と、芳香環構造と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、ケイ素原子を有しない脂環構造含有重合性単量体(B)50〜90重量%と、これらと共重合可能な重合性単量体(C)0〜45重量%とからなる重合性単量体組成物を、少なくとも重合して得られる脂環構造含有重合体、この脂環構造含有重合体、及び無機化合物を含有する脂環構造含有重合体組成物、この組成物を用いて得られる、屈折率が1.56以上、アッベ数が50以上、3mm厚の板での全光線透過率が85%以上である光学部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品の成形材料等として有用な脂環構造含有重合体、該重合体及び無機化合物を含有する、脂環構造含有重合体組成物、並びにこの組成物を成形して得られる光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像用の光学レンズとして樹脂製のものを採用する場合、小型化と高性能化とを実現するためには、高屈折率と高アッベ数とを両立することが重要である。
しかしながら、樹脂製の光学レンズ等において、高屈折率性と高アッベ数とを両立させることは困難であり、このための方策が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献2には、芳香環を有する脂環構造含有化合物とエチレンとの付加共重合体の内ある種のものが、屈折率が1.55以上の高屈折率性を有する光学部品を与えることが記載されている。しかし、この付加共重合体を用いても、アッベ数はせいぜい40であった。
【0004】
特許文献3、4には、ジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物やエピスルフィド基とエポキシ基とを有するジスルフィド化合物等を重合性単量体に配合した重合性組成物を硬化して、光学部品を得る方法が提案されている。
【0005】
また、単量体に対して配合剤を添加した重合性組成物から、重合しながら成形体を得る反応成形の他に、既にある樹脂に対してガラスフィラー等の配合剤を添加した後、成形する方法も検討されている。
【0006】
例えば、特許文献5には、脂環構造を有する(メタ)アクリレート樹脂や脂環エポキシ樹脂に、ガラスフィラーを配合する旨が記載されている。また、特許文献6では、環状ポリオレフィンに、特定のガラスフィラーを配合している。
しかしながら、これらの公報に記載の方法では、確かに50を超えるアッベ数を実現しているが、屈折率は1.54以下にしかならなかった。
【0007】
従って、高屈折率と高アッベ数とを兼ね備えた光学部品を得ることができる新しい樹脂材料の開発が要望されている。
【特許文献1】特開2005−330465号公報
【特許文献2】特開平11−322930号公報
【特許文献3】特開2000−230050号公報
【特許文献4】特開2004−231934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、高屈折率と高アッベ数とを兼ね備えた光学部品を得ることができる樹脂材料、及びこの樹脂材料を用いて得られる光学レンズ等の光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定構造を所定の割合で有する脂環構造含有重合体に、Laを含有する無機化合物等を配合した樹脂組成物を用いると、高い屈折率と高いアッベ数と高い光線透過率とを兼ね備えた光学レンズが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明の第1によれば、−A−Si(R)(R)(R)(式中、Aは単結合、酸素原子又は炭素数1〜3の二価の炭化水素基であり、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である。)で表される含ケイ素基と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、芳香環構造を有しない脂環構造含有重合性単量体(A)5〜30重量%と、芳香環構造と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、ケイ素原子を有しない脂環構造含有重合性単量体(B)50〜90重量%と、これらと共重合可能な重合性単量体(C)0〜45重量%とからなる重合性単量体組成物を、少なくとも重合して得られる脂環構造含有重合体が提供される。
【0011】
本発明の第2によれば、本発明の脂環構造含有重合体、及び無機化合物を含有する脂環構造含有重合体組成物が提供される。
本発明の第3によれば、本発明の脂環構造含有重合体組成物を用いて得られる、屈折率が1.56以上、アッベ数が50以上で、かつ、3mm厚の板での全光線透過率が85%以上である光学部品が提供される。
本発明の光学部品は、撮像用レンズに用いられるものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高屈折率と高アッベ数とを兼ね備えた光学部品を得ることができる樹脂材料、及びこの樹脂材料を用いて得られる光学レンズ等の光学部品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、1)脂環構造含有重合体、2)樹脂組成物、及び3)光学部品に項分けして詳細に説明する。
【0014】
1)脂環構造含有重合体
本発明の脂環構造含有重合体は、−A−Si(R)(R)(R)(式中、Aは単結合、酸素原子又は炭素数1〜3の二価の炭化水素基であり、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である。)で表される含ケイ素基と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、芳香環構造を有しない脂環構造含有重合性単量体(A)5〜30重量%と、芳香環構造と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、ケイ素原子を有しない脂環構造含有重合性単量体(B)50〜90重量%と、これらと共重合可能な重合性単量体(C)0〜45重量%とからなる重合性単量体組成物を、少なくとも重合して得られるものである。
【0015】
(1)脂環構造含有重合性単量体(A)
本発明に用いる脂環構造含有重合性単量体(A)は、−A−Si(R)(R)(R)で表される含ケイ素基と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、芳香環構造を有しないものである。
【0016】
式:−A−Si(R)(R)(R)中、Aは、単結合;酸素原子;又はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基の炭素数1〜3の二価の炭化水素基;を表す。
【0017】
〜Rはそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基等の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基;又は、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、炭素数2〜10のアルキニルオキシ基、炭素数3〜10のシクロアルコキシ基等の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素オキシ基;を表す。
【0018】
これらの中でも、R〜Rとしては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、R〜Rの1以上、好ましくは2以上が、炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。
【0019】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0020】
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
−A−Si(R)(R)(R)で示される含ケイ素基の具体例としては、シリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基、トリクロロシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリn−プロポキシシリル基、トリn−ブトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等の、Aが単結合である含ケイ素基;
【0022】
シリルオキシ基、ジメチルシリルオキシ基、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、メチルジクロロシリルオキシ基、ジメチルクロロシリルオキシ基、トリクロロシリルオキシ基、トリメトキシシリルオキシ基、トリエトキシシリルオキシ基、トリn−プロポキシシリルオキシ基、トリn−ブトキシシリルオキシ基、メチルジメトキシシリルオキシ基等の、Aが酸素原子である含ケイ素基;
【0023】
ジメチルシリルメチル基、2−ジメチルシリルエチル基、3−ジメチルシリルプロピル基、トリメチルシリルメチル基、2−トリメチルシリルエチル基、3−トリメチルシリルプロピル基、4−トリメチルシリルブチル基、t−ブチルジメチルシリルメチル基、2−(t−ブチルジメチルシリル)エチル基、3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピル基、トリエチルシリルメチル基、3−トリエチルシリルプロピル基、3−ジメチルフェニルプロピル基、(メチルジクロロシリル)メチル基、2−(メチルジクロロシリル)エチル基、3−(メチルジクロロシリル)プロピル基、(ジメチルクロロシリル)メチル基、2−(ジメチルクロロシリル)エチル基、3−(ジメチルクロロシリル)プロピル基、(トリクロロシリル)メチル基、2−(トリクロロシリル)エチル基、3−(トリクロロシリル)プロピル基、(トリメトキシシリル)メチル基、2−(トリメトキシシリル)エチル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基、(トリエトキシシリル)メチル基、2−(トリエトキシシリル)エチル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、(トリn−プロポキシシリル)メチル基、3−(トリn−プロポキシシリル)プロピル基、(トリn−ブトキシシリル)メチル基、3−(トリn−ブトキシシリル)プロピル基、(メチルジメトキシシリル)メチル基、2−(メチルジメトキシシリル)エチル基、3−(メチルジメトキシシリル)プロピル基等の、Aが炭素数1〜3の2価の炭化水素基である含ケイ素基;等が挙げられる。
【0024】
脂環構造含有重合性単量体(A)が有する脂環構造としては、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造であれば特に限定されない。例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられる。これらの中でも、得られる成形体(光学部品)の熱安定性を向上させることを目的とするのであれば、シクロアルカン構造が好ましい。
【0025】
脂環構造を形成する炭素数は、通常は4〜30、好ましくは、5〜20、より好ましくは、5〜15である。炭素数がこの範囲にあると、優れた耐熱性と柔軟性を有する成形体を得ることができる。
【0026】
本発明に用いる脂環構造含有重合性単量体(A)の具体例としては、5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルジメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジメチルメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジメチルクロロシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリクロロシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリプロポキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリブトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリメチルシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジメチルフェニルシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−トリメトキシシリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−トリエトキシシリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリメチルシリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−トリメチルシリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
【0027】
8−トリイソプロポキシシリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−トリブトキシリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−トリクロロテトラシリルシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−ジメチルクロロシリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−(トリメトキシシリル)メチル−2−ノルボルネン、5−(2−トリメトキシシリル)エチル−2−ノルボルネン、5−(2−ジメトキシクロロシリル)エチル−2−ノルボルネン、5−(2−トリメトキシシリル)エチル−2−ノルボルネン、5−(3−トリメトキシシリル)プロピル−2−ノルボルネン、5−(3−トリメトキシシリル)プロピル−2−ノルボルネン、5−(2−トリエトキシシリル)エチル−2−ノルボルネン、5−ジメトキシメチルシリルメチル−2−ノルボルネン、5−(3−トリメトキシシリル)プロピル−2−ノルボルネン、
5−(トリメチルシリル)メチル−2−ノルボルネン、5−(2−トリメチルシリル)エチル−2−ノルボルネン、5−(3−トリメチルシリル)プロピル−2−ノルボルネン、
【0028】
5−ノルボルネン−2−カルボン酸(トリメトキシシリル)メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸(2−トリエトキシシリル)エチル、5−ノル5−ノルボルネン−2−カルボン酸(3−トリメトキシシリル)プロピル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸(トリメチルシリル)メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸(2−トリメチルシリル)エチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸(3−トリメチルシリル)プロピル等が挙げられる。
これらの脂環構造含有重合性単量体(A)は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
(2)脂環構造含有重合性単量体(B)
本発明に用いる脂環構造含有重合性単量体(B)は、芳香環構造と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、ケイ素原子を有しないものである。
【0030】
脂環構造含有重合性単量体(B)が有する芳香環構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、インダン環、テトラヒドロナフタレン環等が挙げられる。
脂環構造含有重合性単量体(B)は、これら芳香環の二種以上を有していてもよい。
【0031】
炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造としては、前記脂環構造含有重合性単量体(A)が有する脂環構造として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
脂環構造含有重合性単量体(B)としては、脂環に縮合した芳香環を有するものと、脂環に置換基として結合した芳香環を有するものとがあり、脂環に縮合した芳香環を有するものが好ましい。
【0033】
脂環に縮合した芳香環を有するものとしては、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−クロロ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−ブロモ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロジベンゾフラン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロジベンゾチアジン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール、1,4−メタノ−9−フェニル−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール、7,10−メタノ−6b,7,10,10a−テトラヒドロフルオランセン、7,10−メタノ−6b,7,10,10a−テトラヒドロフルオランセンにシクロペンタジエンを付加した化合物、アセアントリレンにシクロペンタジエンを付加した化合物、アセフェナントリレンにシクロペンタジエンを付加した化合物、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、14,15−ベンゾ−ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコサン、5,6−ベンゾ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
【0034】
脂環に置換基として結合した芳香環を有するものとしては、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−o−トリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−m−トリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−p−トリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−o−エチルフェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−m−エチルフェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−p−エチルフェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−p−イソプロピルフェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−(ナフタレン−1−イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
これらの脂環構造含有重合性単量体(B)は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
(3)重合性単量体(C)
重合性単量体(C)は、前記脂環構造含有重合性単量体(A)及び/又は脂環構造含有重合性単量体(B)と共重合可能な重合性単量体である。
【0036】
重合性単量体(C)の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の、炭素数が2〜20であるα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。
これらの共重合可能な単量体はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
(4)重合性単量体組成物
本発明に用いる重合性単量体組成物は、脂環構造含有重合性単量体(A)5〜30重量%、好ましくは7〜30重量%、脂環構造含有重合性単量体(B)50〜90重量%、好ましくは60〜85重量%、及びこれらの単量体と共重合可能な重合性単量体(C)0〜45重量%、好ましくは0〜40重量%からなる。なお、重合性単量体(A)〜(C)の合計は、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体の総量(100重量%)である。
【0038】
本発明に用いる重合性単量体組成物は、脂環構造含有重合性単量体(A)、脂環構造含有重合性単量体(B)、及びこれらの単量体と共重合可能な重合性単量体(C)のほかに、有機溶媒、並びに後述する他の配合剤を含有していてもよい。
【0039】
用いる有機溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等の含窒素系炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、ケトン類又はエステル類の使用が好ましい。
【0040】
(5)脂環構造含有重合体
本発明の脂環構造含有重合体は、前記重合性単量体組成物を、少なくとも重合して得られるものである。
【0041】
ここで、「少なくとも重合して得られる」とは、得られる脂環構造含有重合体が、前記重合性単量体組成物を重合して得られたものであっても、重合性単量体組成物を重合したのち、得られた重合体が有する炭素−炭素二重結合をさらに水素化して得られたものであってもよいことを意味する。
【0042】
本発明の脂環構造含有重合体としては、具体的には、(a)前記重合性単量体組成物を開環重合して得られる開環重合体、(b)前記(a)の開環重合体の主鎖炭素−炭素二重結合を水素化して得られる開環重合体水素化物、(c)前記重合性単量体組成物を付加重合して得られる付加重合体、(d)前記(c)の付加重合体が有する芳香環を水素化して得られる付加重合体水素化物が挙げられる。
【0043】
前記(a)の開環重合体は、前記重合性単量体組成物を、公知の開環重合触媒の存在下に開環重合することにより得ることができる。
【0044】
用いる開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;あるいは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒、ルテニウム錯体からなる重合触媒等が挙げられる。
【0045】
開環重合は、通常−20〜+100℃、好ましくは10〜80℃下で、メタセシス重合触媒を用いて行う。
前記開環重合反応における温度、圧力等は、特に限定されない。
【0046】
前記(b)の開環重合体水素化物は、前記(a)の開環重合体の主鎖炭素−炭素二重結合を水素化することにより得ることができる。
【0047】
水素化反応は、公知の水素化触媒の存在下に、水素ガスを(a)の開環重合体と反応させることによって行うことができる。
【0048】
用いる水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムのごとき遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組合せからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金等の不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナのごとき金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒等が挙げられる。
【0049】
前記開環重合体の水素化反応における、温度、水素圧等は特に制限されない。
水素化反応方法としては、水素化触媒を重合体溶液に懸濁させておこなう方法や、触媒を固定床等に固定し、その固定床に重合体溶液を流す方法等が挙げられる。
【0050】
得られる開環重合体水素化物の水素化率(開環重合体の主鎖炭素−炭素二重結合の水素化された割合)は、通常80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上である。
【0051】
また、水素化反応は開環重合体を単離した後に行っても良いし、開環重合体を単離することなく、開環重合反応を行った反応液に水素化触媒を添加して連続的に水素化反応を行っても良い。
【0052】
前記(c)の付加重合体は、前記重合性単量体組成物を付加重合することにより得ることができる。
重合性単量体組成物の付加共重合反応は、通常、公知の付加重合触媒の存在下に行うことができる。
【0053】
用いる付加重合触媒としては、特に制限されない。例えば、チタン、ジルコニウム、バナジウム等の金属化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒;リビングアニオン重合触媒;等の公知の付加重合触媒が挙げられる
前記付加重合反応における温度、圧力等は、特に限定されない。
【0054】
(d)の付加重合体水素化物は、前記(c)の付加重合体の芳香環を水素化して得られるものである。
【0055】
芳香環の水素化反応は、公知の水素化触媒の存在下で、前記(c)の付加重合体と水素とを反応させることにより行うことができる。
【0056】
用いる水素化触媒としては、前記の開環重合体の水素化で用いることができるものと同じものが挙げられる。
水素化反応における、温度、水素圧等は特に制限されない。
【0057】
得られる付加重合体水素化物の芳香環の水素化率は、通常、80%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。
【0058】
本発明の脂環構造含有重合体は、その分子量によって特に制限されない。
脂環構造含有重合体の分子量は、シクロヘキサン又はテトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜100,000、好ましくは25,000〜80,000、より好ましくは25,000〜50,000の範囲である。分子量があまりに大きいと、流動性が悪くなり成型が不良となるおそれがある。一方、あまりに小さいと、強度不足となるおそれがある。
【0059】
本発明の脂環構造含有重合体の分子量分布は、シクロヘキサン又はテトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。この比(Mw/Mn)が大き過ぎると、低分子成分が多くなり強度不足となるおそれがある。
【0060】
本発明の脂環構造含有重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、最も好ましくは125℃以上である。ガラス転移温度があまりに低いと、使用中に形状が変化するおそれがある。
なお、ガラス転移温度はDSC法によって測定されたものである。
【0061】
2)脂環構造含有重合体組成物
本発明の脂環構造含有重合体組成物は、本発明の脂環構造含有重合体、及び無機化合物を含有するものである。
【0062】
用いる無機化合物としては、特に限定はなく、成形して得られる光学部品の光線透過率、屈折率、アッベ数が本発明の目的の達成を可能とする無機化合物の中から任意に選択することができる。具体的には、酸化物微粒子、金属塩微粒子、半導体微粒子、金属クラスター等が好ましく用いられ、この中から、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものを適宜選択して使用することが好ましい。
【0063】
酸化物微粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属である金属酸化物を用いることができる。
【0064】
具体的には、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等の金属酸化物;これら酸化物より構成される、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl)等の複酸化物;等が挙げられる。
【0065】
金属塩微粒子としては、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩等が挙げられ、具体的には炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0066】
半導体微粒子は半導体結晶組成の微粒子である。該半導体結晶組成の具体的な組成例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体;
リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体;
セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体;
炭化ケイ素等の複数の周期表第14族元素からなる化合物;
酸化錫(IV)、硫化錫(II,IV)、硫化錫(IV)、硫化錫(II)、セレン化錫(II)、テルル化錫(II)、硫化鉛(II)、セレン化鉛(II)、テルル化鉛(II)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物;
窒化ホウ素、リン化ホウ素、砒化ホウ素、窒化アルミニウム、リン化アルミニウム、砒化アルミニウム(、アンチモン化アルミニウム、窒化ガリウム、リン化ガリウム、砒化ガリウム、アンチモン化ガリウム、窒化インジウム、リン化インジウム、砒化インジウム、アンチモン化インジウム等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体);
【0067】
硫化アルミニウム、セレン化アルミニウム、硫化ガリウム(Ga)、セレン化ガリウム、テルル化ガリウム、酸化インジウム、硫化インジウム、セレン化インジウム、テルル化インジウム等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物;
塩化タリウム(I)、臭化タリウム(I)、ヨウ化タリウム(I))等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物;
酸化亜鉛、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、テルル化亜鉛、酸化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、硫化水銀、セレン化水銀、テルル化水銀等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体);
硫化砒素(III)、セレン化砒素(III)、テルル化砒素(III)、硫化アンチモン(III)、セレン化アンチモン(III)、テルル化アンチモン(III)、硫化ビスマス(III)、セレン化ビスマス(III)、テルル化ビスマス(III)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物;
酸化銅(I)、セレン化銅(I)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物;
塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、塩化銀、臭化銀等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物;
酸化ニッケル(II)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物;
酸化コバルト(II)、硫化コバルト(II)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物;
【0068】
四酸化三鉄、硫化鉄(II)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物;
酸化マンガン(II)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物;硫化モリブデン(IV)、酸化タングステン(IV)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物;
酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(IV)、酸化タンタル(V)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物;
酸化チタン等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物;
硫化マグネシウム、セレン化マグネシウム等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物;
酸化カドミウム(II)クロム(III)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)、硫化銅(II)クロム(III)、セレン化水銀(II)クロム(III)等のカルコゲンスピネル類;
バリウムチタネート;等が挙げられる。
【0069】
また、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF2)15F15や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
【0070】
金属クラスターとしては、希土類金属からなる中心金属と、中心金属に対して酸素原子を介して存在しているカウンター金属とを含むものが挙げられる。金属クラスターの構造の一態様を図1に示す。
【0071】
図1において、M1は希土類金属を示し、M2はカウンター金属を示す。なお、図1に示すものは金属クラスターの一態様であり、中心金属の周囲に酸素原子を介してカウンター金属が存在している限り、中心金属に対して存在するカウンター金属の数、存在に関与する酸素原子の数等は図1の態様に限定されない。
金属クラスターがかかる構造を採るため、金属クラスターの凝集が抑制されており、有機媒体中において均一な分散状態を形成し得る。
【0072】
希土類金属としては、スカンジウム、イットリウム並びに原子番号57〜71のランタノイド(ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロムチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホロミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム)が挙げられる。
【0073】
これらの希土類金属の中でも、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、ホロミウム、プラセオジウム、ジスプロシウム、ツリウム、イッテリビウム及びルテチウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0074】
カウンター金属としては、酸素原子を介して希土類金属に結合可能なものとして、Al、Ga、Zr、Hf、Nb及びTaからなる群から選択された少なくとも1種を用いる。
【0075】
これらのカウンター金属の中でも、Al、Ga、Zr、Ta及びHfの少なくとも1種が好ましい。これらのカウンター金属が結合した場合、希土類元素によって発現される低分散性を阻害することなく、高屈折率を実現し易い。
【0076】
カウンター金属と結合している酸素原子及び/又は中心金属とカウンター金属との間に介在している酸素原子には、炭素原子を介して又は介さずに、更に官能基が結合していてもよい。この官能基は、図1ではRで表す。
【0077】
官能基Rは、金属クラスターが分散する有機媒体との相溶性等を考慮して選択できる。官能基Rとしては、(i)水素原子、(ii)アルキル基、(iii)ビニル基、アリル基、アミノ基、ジアゾ基、ニトロ基、シンナモイル基、アクリロイル基、イミド基、エポキシ基及びシアノ基の1種以上、(iv)前記(iii)の1種以上を置換基として有するアルキル基、(v)前記(iii)の1種以上を置換基として有するアルキルシリル基、(vi)前記(iii)の1種以上を置換基として有するアルキルカルボキシル基等が挙げられる。
【0078】
金属クラスターにおける中心金属とカウンター金属とのモル比は、中心金属とカウンター金属の組合せで決定されるもので一定ではないが、中心金属:カウンター金属=1:1〜1:5程度が好ましく、1:1.5〜1:4程度がより好ましい。
【0079】
無機化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。複数種類の無機化合物を併用してもよい。異なる性質を有する複数種類の無機化合物を用いることで、必要とされる特性を更に効率よく向上させることができる場合がある。
【0080】
本発明に用いる無機化合物の形状は、特に限定されるものではないが、球状の無機微粒子であることが好ましい。具体的には、無機微粒子の最小径(無機微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最小値)/最大径(無機微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最大値)が0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。
【0081】
本発明に用いる無機化合物としては、平均粒子径が1〜30nm以下の微粒子状物であることが好ましく、0.1〜20nm以下の微粒子状物であることがより好ましく、0.1〜10nm以下の微粒子状物であることがさらに好ましい。平均粒子径が1nm未満の場合、無機化合物の分散が困難になり所望の性能が得られないおそれがある。一方、平均粒子径が30nmを超えると、得られる光学部品が濁る等して透明性が低下し、光線透過率が70%未満となるおそれがある。なお、「平均粒子径」は、各無機化合物を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値のことである。
【0082】
また、用いる無機化合物が微粒子状物である場合、該微粒子の粒子径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好ましい。
【0083】
本発明に用いる無機化合物が微粒子状物である場合、該微粒子は表面処理が施されているものであってもよい。
【0084】
無機微粒子の表面処理の方法としては、カップリング剤等の表面修飾剤による表面処理、ポリマーグラフト、メカノケミカルによる表面処理等が挙げられる。
【0085】
無機微粒子の表面処理に用いられる表面修飾剤としては、シラン系カップリング剤を始め、シリコーンオイル、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0086】
シラン系の表面処理剤としては、ビニルシラザントリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、微粒子の表面を広く覆うためにヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
【0087】
シリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、及びフッ素変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル;等が挙げられる。
これらの表面修飾剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
またこれらの処理剤は、n−ヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン水等で適宜希釈して用いられてもよい。
【0089】
表面修飾剤による表面処理の方法としては、湿式加熱法、湿式濾過法、乾式攪拌法、インテグルブレンド法、造粒法等が挙げられる。
【0090】
無機化合物の配合量は、組成物全体に対して好ましくは5〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%である。無機化合物の配合量が多すぎると、得られる光学部品の全光線透過率が低下するおそれがある。一方、配合量があまりに少ないと、アッベ数が小さくなるおそれがある。
【0091】
本発明の脂環構造含有重合体組成物は、本発明の脂環構造含有重合体、及び無機化合物のほかに、他の配合剤を含有していてもよい。
【0092】
用いる配合剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;帯電防止剤;他の種類の重合体;離型剤;等が挙げられる。
これらの配合剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0093】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、光学部品の耐候性を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による光学部品の着色や強度低下を防止できる。
【0094】
酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0095】
紫外線吸収剤及び耐候安定剤としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−{2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベゾエート系化合物等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤及び耐候安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤及び耐候安定剤の配合量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは、0.01〜2重量部の範囲である。
【0096】
帯電防止剤としては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の長鎖アルキルアルコール;アルキルスルホン酸ナトリウム塩及び/又はアルキルスルホン酸ホスホニウム塩;ステアリン酸のグリセリンエステル等の脂肪酸エステル;ヒドロキシアミン系化合物;無定形炭素、酸化スズ粉、アンチモン含有酸化スズ粉等を例示することができる。
帯電防止剤の配合量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部の範囲である。
【0097】
他の種類の重合体としてはゴム質重合体が挙げられる。ゴム質重合体は、ガラス転移温度が40℃以下の重合体である。ゴム質重合体にはゴムや熱可塑性エラストマーが含まれる。ブロック共重合体のごとくガラス転移温度が2点以上ある場合は、最も低いガラス転移温度が40℃以下であればゴム質重合体として用いることができる。ゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常5〜300である。
【0098】
ゴム質重合体としては、エチレン−α−オレフィン系ゴム;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンとブタジエン又はイソプレンとのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体等のジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体;スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体等の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂等が挙げられる。
これらのゴム質重合体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
ゴム質重合体の配合量は、使用目的に応じて適宜選択される。耐衝撃性や柔軟性が要求
される場合にはゴム質重合体の量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは、0.01〜70重量部、より好ましくは、0.01〜50重量部の範囲である。
【0100】
本発明の脂環構造含有重合体組成物は、所定量の脂環構造含有重合体及び無機化合物に、所望により各種の配合剤を添加し、全容を混練することにより調製することができる。例えば、所定量の脂環構造含有重合体及び無機化合物に、所望により各種の配合剤を添加し、これらを溶融状態で、開放型のミキシングロールや非開放型のバンバリーミキサー、加圧型ニーダー、連続ミキサー等の公知の混練装置を用いて混練後、ペレット化して、これを樹脂型製造に供することができる。
【0101】
混練温度は、180〜400℃の範囲であると好ましく、200〜350℃の範囲であるとより好ましい。また、混練するに際しては、各成分を一括添加して混練しても、数回に分けて添加しながら混練してもよい。
【0102】
3)光学部品
本発明の光学部品は、本発明の脂環構造含有重合体組成物を用いて得られるものである。また、本発明の光学部品の屈折率は1.56以上、アッベ数は50以上、3mm厚の板での全光線透過率は85%以上である。屈折率、アッベ数及び全光線透過率がこの範囲のものを得るためには、無機化合物の配合量を組成物全体に対して25〜30重量%、好ましくは5〜20重量%にするのが良い。
本発明の脂環構造含有重合体は、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、各種光学部品への適用が好適である。
【0103】
本発明の光学部品は、具体的には、本発明の脂環構造含有重合体組成物を成形して得ることができる。成形する方法としては、特に限定されるものではないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成形物を得るためには、溶融成形法が好ましい。
【0104】
溶融成形法としては、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、ブロー成形法、キャスト成形法等の、通常の成形方法を用いることができる。
【0105】
また、成形工程における成形条件は、使用目的又は成形方法により適宜選択されるが、射出成形における脂環構造含有重合体組成物の温度は、成形時に適度な流動性を脂環構造含有重合体に付与して成形品のヒケや、ひずみの発生とともに、脂環構造含有重合体の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、さらには、成形物の黄変を効果的に防止する観点から、150℃〜400℃の範囲であることが好ましく、200℃〜350℃の範囲であることがより好ましく、200℃〜330℃の範囲であることが特に好ましい。
【0106】
得られる光学部品の形状としては、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルム又はシート形状等が挙げられる。
【0107】
本発明の光学部品は、屈折率が1.56以上、アッベ数が50以上、3mm厚の板での全光線透過率が85%以上のものである。
【0108】
光学部品の屈折率及びアッベ数は、例えば、本発明の脂環構造含有重合体組成物を射出成形して、厚さ3mm、縦20mm、横20mmのサンプルを作製し、公知の精密屈折計を用いて測定して求めることができる。
【0109】
また光学部品の全光線透過率は、本発明の脂環構造含有重合体組成物を射出成形して、厚さ3mm、縦40mm、横40mmのサンプルを作製して、JIS K7105に基づいて、公知の濁度計を用いて測定して求めることができる。
【0110】
本発明の光学部品としては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズ等のレンズ;眼鏡レンズ等の全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等の光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズ等のレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズ;液晶ディスプレイ等の導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板等が挙げられる。
【0111】
なかでも、本発明の光学部品としては、ピックアップレンズ、ビデオカメラ用レンズ、望遠鏡レンズ、レーザビーム用fθレンズ等の撮像用光学レンズが好ましい。本発明の光学部品は、特に、ピックアップレンズやレーザービーム用fθレンズ等のレンズ類として、波長390〜430nmの青紫レーザーを用いる装置に使用するのに適している。
【実施例】
【0112】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。以下の実施例及び比較例において、各種物性の測定法は、次のとおりである。
【0113】
(1)脂環構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
脂環構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
(a)測定装置
測定装置としては、GPC−8120シリーズ(東ソー社製)を用いた。
標準ポリスチレンとしては、標準ポリスチレン、Mw=500、1050、2630、5970、10200、18100、37900、96400、190000、42700、706000(以上、東ソー社製)の計11点を用いた。
(b)測定用サンプル
測定用サンプルは、サンプル濃度が4mg/mlになるように、測定試料をテトラヒドロフランに溶解後、カートリッジフィルター(孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン製フィルター)でろ過して調製した。
(c)測定
測定は、カラムとして、TSKgel GMHHR・H(東ソー社製)を2本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
【0114】
(2)水素化率
水素化前後の脂環構造含有重合体を重クロロホルム/四塩化炭素の混合溶液(1/1重量比)にそれぞれ溶解して、H−NMRスペクトルを測定した。スペクトルにおいて、7.4〜6.8ppmにベンゼン環に結合したプロトン、5.9〜4.4ppmに−HC=CH−基の不飽和炭素に結合したプロトン、4.0〜0.8ppmに飽和炭素に結合したプロトンに基づく吸収が観測されることが知られている。
水素化前後の脂環構造含有重合体のH−NMRスペクトルにおけるこれらの値の比より、ベンゼン環、主鎖構造中の不飽和結合の水素化率を算出した。
【0115】
(3)屈折率、アッベ数
屈折率とアッベ数は、脂環構造含有重合体組成物の射出成形品を厚さ3mm、縦20mm、横20mmのサンプルを作成し、カルニューデジタル精密屈折計(KPR−200、カルニュー光学工業社製)を用いて、25℃の条件で測定してもとめた。
【0116】
(4)全光線透過率
全光線透過率は、厚さ3mm、縦40mm、横40mmの射出成形品を用いて、JIS K7105に基づいて、濁度計(NDH−2000、日本電色工業社製)により測定してもとめた。
【0117】
[実施例1]脂環構造含有重合体Aの製造
<開環重合>
内部を窒素置換した反応器に、5−トリメチルシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「NBSiMe」という。)と、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(以下、「MTF」という。)とテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下、「TCD」という。)(重量比:NBSiMe/MTF/TCD=7/85/8、モル比:NBSiMe/MTF/TCD=8/83/9)の混合物7部(重合に使用するモノマー全量に対して重量1%)、シクロヘキサン1100部、及びトルエン500を加えた。そこへ、トリ−イソブチルアルミニウム0.55部、イソブチルアルコール0.21部、反応調整剤としてジイソプロピルエーテル0.84部、及び分子量調節剤として1−ヘキセン4.32部を添加した。さらに、シクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液24.1部を添加して、55℃で10分間攪拌した。
【0118】
次いで、反応系を55℃に保持しながら、NBSiMe、MTF及びTCD(重量比:NBSiMe/MTF/TCD=7/85/8、モル比:NBSiMe/MTF/TCD=8/83/9)の混合物693部と、シクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液48.9部とをそれぞれ系内に150分かけて連続的に滴下した。その後、30分間反応を継続したのち、重合を終了した。
重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより測定したモノマーの重合転化率は重合終了時で100%であった。
得られた開環重合体は、重量平均分子量(Mw)が25,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.90であった。
【0119】
<水素添加>
得られた開環重合反応液を耐圧性の水素化反応器に移送し、シリカに担持されたPd触媒(パラジウム担持率3%)3.5部及びトルエン167部を加え、180℃、水素圧3.0MPaで4時間反応させた。この反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製、製品名「フンダフィルター」)して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。さらに、濾液を強く撹拌したイソプロピルアルコール7000部中に注いで開環重合体の水素化物を沈澱させ、濾取した。
【0120】
得られた開環重合体の水素化物を、1.33×10Pa(1mmHg)以下に減圧した真空乾燥機中、100℃で24時間乾燥させて、樹脂組成物Aを650部得た。開環重合体水素添加物のオレフィン部位の水素転化率は99.9%、芳香環の水素化率は1.0%未満であった。
尚、開環重合体合成時の重合転化率が100%であることから、開環重合体水素添加物中の、モノマー構造単位の組成比は、開環重合体の製造に用いたモノマーの使用量に等しいと推定される。
得られた開環重合体水素化物(脂環構造含有重合体A)は、重量平均分子量(Mw)が28,200で、分子量分布(Mw/Mn)が2.12であった。
【0121】
[実施例2〜4、合成例1〜6]
NBSiMe、MTF及びTCDの配合量を第1表に示す量とした以外は、実施例1と同様にして、脂環構造含有重合体B〜D、F〜Jを製造した。
得られた脂環構造含有重合体B〜D、F〜Jの、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を第1表に示す。
【0122】
[実施例5]脂環構造含有重合体Eの製造
<付加重合>
攪拌機付き耐圧反応器に、トルエン2000部、NBSiMeとMTF(重量比:NBSiMe/MTF=17/83、モル比:NBSiMe/MTF=10/90)の混合物530部、及びトルエン14.0部に溶解したトリエチルアルミニウム2.25部を仕込んだ。一方、ガラス器に、トルエン116.3部、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド0.11部、及びトルエン7.2部に溶解したメチルアルミノキサン1.36部を仕込み、混合した。この混合液を前記耐圧反応器に添加した。
【0123】
次いで、0.2MPaのエチレンガスを前記耐圧反応器に導入し、40℃で重合反応を開始した。40分間経過後、脱圧して、メタノール15部を添加し、重合反応を停止させた。この反応溶液をラジオライト#800を濾過床として濾過した。得られた濾液に塩酸酸性メタノール5000部に注いで付加重合体を析出させた。析出した付加重合体を分取し、洗浄し、100℃で15時間減圧乾燥し、450部の付加重合体(脂環構造含有重合体E)を得た。
得られた脂環構造含有重合体Eは、重量平均分子量(Mw)が63,000で、分子量分布(Mw/Mn)が2.10、脂環構造含有重合体B中のNBSiMeとMTFとエチレン単位のモル比は、NBSiMe/MTF/エチレン=7/60/33であった。
【0124】
【表1】

【0125】
[製造例1]La[Al(Osec−Bu)の合成
<有機媒体中にLaを中心金属とする金属クラスターが分散してなる材料の作製>
合成は特開2007−178921号公報に記載の方法に従って行った。
プロピレングリコール−α−モノメチルエーテル(PGME)1500部に、110℃で1時間減圧脱水処理した酢酸ランタン150部と、トリ−sec−ブトキシアルミニウム(Al(Osec−Bu))432部を加え、全容を1時間還流して、無色透明な反応溶液を得た。得られた反応溶液を80℃で減圧濃縮して、La[Al(Osec−Bu)を530部得た。
【0126】
[実施例6]
得られた脂環構造含有重合体A200部と、単離したLa[Al(Osec−Bu)35部を、小型混練機(DSM Xplore社製、Micro 15 Compounder)を用いて、250℃、100RPMの条件で2分間混練して脂環構造含有重合体組成物Aを得た。
【0127】
次いで、得られた脂環構造含有重合体組成物Aを、小型射出成形機(DSM Xplore社製、Micro Injection Moulding Machine 10cc)を用いて、成形温度 250℃、金型温度 100℃、射出圧力 0.6MPaの条件で射出成形して、縦40mm、横40mm、厚さ3mmの成形体Aを得た。この成形品Aを用いて、全光線透過率、屈折率をそれぞれ測定した。測定結果を第2表にまとめて示す。
【0128】
[実施例7〜10、比較例1〜7]
La[Al(Osec−Bu)の配合量を第2表に示す量とした以外は、実施例6と同様にして脂環構造含有重合体組成物B〜Jを得、成形体B〜Lをそれぞれ製造した。得られた成形体B〜Lを用いて、全光線透過率、屈折率をそれぞれ測定した。測定結果を第2表にまとめて示す。
【0129】
【表2】

【0130】
第2表より、本願発明の脂環構造含有重合体組成物A〜Eを成形して得られた成形体A〜Eは、屈折率が1.56以上、アッベ数が50以上で、かつ、3mm厚の板での全光線透過率が85%以上であった。
【0131】
一方、NBSiMe(脂環構造含有重合性単量体(A))の含有量が5重量%未満である重合性単量体組成物から得られた成形体Fや、MTF(脂環構造含有重合性単量体(B))の含有量が90重量%以上である重合性単量体組成物から得られた成形体Iは全光線透過率が低かった。
また、NBSiMe(脂環構造含有重合性単量体(A))の含有量が30重量%を越えた重合性単量体組成物から得られた成形体Gや、MTF(脂環構造含有重合性単量体(B))の配合量が50重量%未満である重合性単量体組成物から得られた成形体Hは、全光線透過率に優れるものの、屈折率が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明に用いることができる金属クラスターの構造模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−A−Si(R)(R)(R)(式中、Aは単結合、酸素原子又は炭素数1〜3の二価の炭化水素基であり、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である。)で表される含ケイ素基と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、芳香環構造を有しない脂環構造含有重合性単量体(A)5〜30重量%と、芳香環構造と、炭素−炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、ケイ素原子を有しない脂環構造含有重合性単量体(B)50〜90重量%と、これらと共重合可能な重合性単量体(C)0〜45重量%とからなる重合性単量体組成物を、少なくとも重合して得られる脂環構造含有重合体。
【請求項2】
請求項1記載の脂環構造含有重合体、および無機化合物を含有する脂環構造含有重合体組成物。
【請求項3】
請求項2記載の脂環構造含有重合体組成物を用いて得られる、屈折率が1.56以上、アッベ数が50以上、3mm厚の板での全光線透過率が85%以上である光学部品。
【請求項4】
撮像用レンズに用いられるものである請求項3記載の光学部品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−108282(P2009−108282A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284956(P2007−284956)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】