説明

脂肪厚計測装置および脂肪厚算出プログラム

【課題】光学式の脂肪厚計測の計測精度を向上させる脂肪厚計測装置、脂肪厚計測方法および脂肪厚計測プログラムを提供する。
【解決手段】生体に入射する光を発光する発光部と、生体の表面に現れる光を受光して受光量を検出する受光部を有するセンサ部と、生体の特徴を示す特徴情報を入力する入力部と、処理部を備え、処理部が、予め決められた発光量で発光部を発光させる制御部と、入力部から入力された特徴情報に関連付けられている補正値を求め、求めた補正値と受光量を用いて脂肪厚を求める算出部と、を有する、脂肪厚計測装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて脂肪厚を求める脂肪厚計測装置および脂肪厚計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪厚計測する装置として、生体表面に配置した光源から光を生体内部に入射し、入射した光が生体内部を介して再び生体表面に現れる光を受光することで、生体内部の脂肪の厚みを計測する装置が提案されている。例えば、脂肪厚計測装置として、生体を照明する発光部、発光部から生体内部を伝搬して生体表面より出射した光を受光する受光部、生体表面を所定の形状に成形する成形部、受光した受光量に基づき皮下脂肪厚を算出する演算部、を備える装置が知られている。また、送受光間距離の異なる1つ以上のセンサと、該センサにより生体組織中の吸光度変化を計測する吸光度変化計測手段と、得られた吸光度変化の比率に基づいて脂肪層の厚みを算出する脂肪層厚算出手段とを備える生体の脂肪層厚の計測装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−210465号公報
【特許文献2】特開平11−239573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、光学式の脂肪厚計測の計測精度を向上させる脂肪厚計測装置および脂肪厚計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施態様のひとつである脂肪厚計測装置は、センサ部、入力部、処理部を備えている。センサ部は、生体に入射する光を発光する発光部と、上記生体の表面に現れる光を受光して受光量を検出する受光部を有する。入力部は、上記生体の特徴を示す特徴情報を入力する。処理部は、予め決められた発光量で上記発光部を発光させる制御部と、上記入力部から入力された上記特徴情報に関連付けられている補正値と上記受光量を用いて上記生体の脂肪厚を求める算出部と、を有する。
【0006】
また、他の実施態様のひとつである脂肪厚計測装置は、第1のセンサ部、第2のセンサ部、処理部を備えている。第1のセンサ部は、生体に入射する光を発光する発光部と、上記生体の表面に現れる光を受光して受光量を検出する受光部を有する。第2のセンサ部は、生体に電流を出力する発振部と、上記生体の表面に現れる電流を受信して電流量を検出する受信部を有する。処理部は、制御部と算出部を有する。制御部は、予め決められた発光量で上記発光部を発光させる制御と、予め決められた周波数の電流量で上記発振部を発振させる制御とを行う。算出部は、上記第2のセンサ部で計測した電流量に関連付けられている補正値と上記受光量を用いて上記生体の脂肪厚を求める。
【発明の効果】
【0007】
実施の態様によれば、光学式の脂肪厚計測の計測精度を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態1の脂肪厚計測装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】実施形態1のセンサ部の一実施例を示す断面図である。
【図3】実施形態1の処理部の機能の一実施例を示す図である。
【図4】実施形態1の処理部の動作の一実施例を示すフロー図である。
【図5】年齢各々の生体の水分保有率の関係の一例を示す図である。
【図6】年齢−補正値テーブルの一実施例のデータ構造を示す図である。
【図7】受光量と脂肪厚の関係の一例を示す図である。
【図8】実施形態2の脂肪厚計測装置の一実施例を示すブロック図である。
【図9】実施形態2の処理部の機能の一実施例を示す図である。
【図10】実施形態2の処理部の動作の一実施例を示すフロー図である。
【図11】湿度−補正値テーブル、温度−補正値テーブル、日時−補正値テーブル、地域−補正値テーブルのデータ構造の一実施例を示す図である。
【図12】案内の表示の一実施例を示す図である。
【図13】実施形態3の脂肪厚計測装置の一実施例を示すブロック図である。
【図14】実施形態3のセンサ部の一実施例を示す断面図である。
【図15】実施形態3の処理部の機能の一実施例を示す図である。
【図16】実施形態3の処理部の動作の一実施例を示すフロー図である。
【図17】電流値−補正値テーブルのデータ構造の一実施例を示す図である。
【図18】実施形態4のコンピュータのハードウェア構成の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいて、実施形態1について説明をする。
実施形態1は、生体に光を入射し再び生体表面に現れる光の受光量を計測し、生体の特徴(年齢)と水分量の関係から導かれる補正値を求め、該補正値により受光量を補正し、補正した受光量を用いて脂肪厚を求め、脂肪厚計測精度を向上させる。
【0010】
図1は、実施形態1の脂肪厚計測装置のハードウェアの一実施例を示す図である。図1の脂肪厚計測装置1は、センサ部2、処理部3、記録部4、駆動部7、取得部8、入力部9、出力部10を備えている。センサ部2は、赤外線領域の発光をする発光部5と赤外線領域の受光量を検出する受光部6を備えている。光の波長は、例えば、赤外線領域であり820nm〜865nmを用いることが好ましいが、生体に含まれる水分の影響を受けにくければよく上記波長に限定されるものではない。例えば、水の分光特性を考慮して、水の吸光範囲を避けるために950nm以下の波長の光を使用することが考えられる。センサ部2は、生体に入射する光を1回以上発光する発光部5と、生体表面に現れる出射する光を受光して受光量を検出する受光部6を備えている。また、発光部5と受光部6が生体に直接接触しないように保護するカバーフィルタを備えてもよい。センサ部2、発光部5、受光部6およびカバーフィルタについては後述する。なお、生体とは人間、動物などである。
【0011】
処理部3は、制御部31および算出部32を備えている。処理部3は、Central Processing Unit(CPU)やプログラマブルなデバイス(Field Programmable Gate Array(FPGA)、Programmable Logic Device(PLD)など)を用いてもよい。なお、制御部31、算出部32については後述する。
【0012】
記録部4には、プログラム、テーブル、データなどが記録されている。また、記録部4は、例えばRead Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)などのメモリやハードディスクなどである。また、記録部4は、パラメータ値、変数値などのデータを記録してもよいし、ワークエリアとして用いることもできる。
【0013】
駆動部7は、発光部5を発光させるための駆動回路である。例えば、制御部31が生成した発光部5の発光量と周期を調整するパルスを受信して、該パルスに対応する電流を発光部5に出力する。なお、該パルスによる電流値の制御は、Pulse Width Modulation(PWM)などの方式が考えられる。
【0014】
取得部8は、受光部6が受光した光の光量に対応するアナログ信号を受信して、受信したアナログ信号をディジタル信号に変換して処理部3に出力する。例えば、アナログ信号の電圧値を増幅したのち、ディジタル信号に変換することが考えられる。取得部8は、例えば、アナログ−ディジタル変換器を備えている。また、取得部8は受光したディジタル信号である受光データ(受光量)を、記録部4に記録する。
【0015】
入力部9は、脂肪厚の計測の開始や脂肪厚計測装置1の各種設定を入力する。例えば、出力部10がディスプレイであれば、入力部9としてディスプレイに設けられたタッチパネルなどが考えられる。また、キーボード、スイッチなどが考えられる。なお、ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイなどが考えられる。
【0016】
出力部10は、ディスプレイ、プリンタなどの出力装置である。出力部10は、例えば、処理部3の演算結果である脂肪厚などを表示する。
センサ部2について説明する。
【0017】
図2は、センサ部の一実施例を示す断面図である。図2の例では、生体内部の表皮と真皮を示す皮部21、脂肪層22と筋肉層23が表されている。そして、皮部21の上に脂肪厚計測装置1のセンサ部2が密着して配置されている。センサ部2は、赤外線領域の発光をする発光部5を収納する穴部24と赤外線領域の受光量を検出する受光部6を収納する穴部25を備えている。発光部5は、例えば、近赤外線領域のLight Emitting Diode(LED)、半導体レーザなどであり、チップLEDを用いることが望ましい。受光部6は、生体内部で散乱、吸収されながら伝播して再び生体表面に現れる光を受光する。例えば、フォトダイオードなどを用いることが望ましい。
【0018】
穴部24は発光部5を収納できる大きさであり、形状は、例えば、円筒形状、立方体形状などが考えられる。穴部25は受光部6を収納できる大きさであり、形状は、例えば、円筒形状、立方体形状などが考えられる。本実施例では、発光部5と受光部6を脂肪厚計測装置1の筐体表面に埋め込むように配置する。また、発光部5と受光部6が生体に直接接触しないように、発光部5と受光部6を保護するカバーフィルタ26、27を設ける。カバーフィルタ26、27は、表面が筐体表面と同じ高さになるように配置することが望ましい。なお、脂肪厚計測装置1の筐体表面とカバーフィルタ26、27の表面の高さが同じであることが望ましい理由は、生体をセンサ部2で押し付けて脂肪厚が変形しないようにするためである。また、生体表面とカバーフィルタ26、27の表面を密着させ、生体表面とカバーフィルタ26、27の表面間に空気層ができるのを避け、生体表面とカバーフィルタ26、27の表面間に発生する反射を軽減するためである。なお、カバーフィルタ26、27は、例えば、薄い平板形状であり反射の少ないプラスチック、ガラスなどを用いることが考えられる。また、カバーフィルタ26、27の色は透明であってもよいし、色付きのものであってもよい。
【0019】
なお、本例では外来光などの周辺環境の影響を抑えるためにセンサ部2の構造を図2に示すようにしたが、センサ部2の構造は図2に限定されるものではなく、脂肪厚が計測できる構造であればよい。例えば、発光部5と受光部6が筐体表面から突出していてもよい。
【0020】
発光部5と受光部6の間隔は、発光部5の大きさ、発光量、受光部6の大きさ、受光量などによって決められるものである。センサ部2を小型化する場合には10mm〜15mmであることが望ましい。しかし、発光部5と受光部6の間隔は10mm〜15mmに限定されるものではない。
【0021】
なお、発光部5の取り付け角度は、発光部5から生体に光が入射可能な角度であればよい。受光部6の取り付けは、生体表面に現れる光を受光するさいに、効率よく受光でき、かつ反射の影響を極力避けられる角度に配置することが望ましい。
【0022】
処理部3について説明する。
図3は、処理部3の一実施例を示す機能ブロック図である。処理部3は、制御部31、算出部32を有している。
【0023】
制御部31は、予め決められた発光量で発光部5を発光させる。図3の例では、制御部31から発光部5を制御する発光制御信号が出力される。また、図3の例では、制御部31は入力部9から入力データを取得する。入力データは、例えば、特徴情報などのデータを含み、利用者が入力した年齢情報などが考えられる。また、図3の例では、制御部31は脂肪厚を求めるための脂肪厚算出指示や記録部4から補正値を取得するために特徴情報などを算出部32に出力する。ただし、制御部31を介さずに直接特徴情報を算出部32が取得してもよい。
【0024】
特徴情報は生体の特徴を示す情報であり、例えば、年齢を示す年齢情報などが考えられる。また、補正値を求めるために予め特徴情報は補正値と関連付けられて記録部4に記録されている。年齢各々に対して補正値各々を関連付けた場合であれば、例えば、0歳〜100歳の年齢各々に対応する生体に含まれる水分量から求められる補正値が、関連付けて記録されている。後述する年齢−補正値テーブルなどを記録することが考えられる。
【0025】
算出部32は、入力部9から入力された後述する特徴情報に対応する補正値を求め、求めた補正値と受光量を用いて脂肪厚を求める。脂肪厚Yは式1により表すことができる。
Y=PD×exp((−L×C)×α)×a+b (式1)
Y :脂肪厚 L :光路長 α :補正値
PD:受光量 C :散乱係数+吸収係数 a :傾き b :切片
【0026】
補正値αは、生体に含まれる水分量により受光量が変化した場合に、水分量の影響を抑えて脂肪厚を求めるために用いられる値である。生体に水分が多いと発光部5から出力された光が、発光部5に近い場所から生体表面に出てしまうため、受光部6で生体表面から出てくる光の受光量が減少してしまう。これは、発光部5から出力された光が、受光部6に至る前に、図2で示す皮部21に含まれる水分により散乱してしまう影響によるものと考えられる。そこで、水分による受光量の影響を抑えるために用いる補正値αを利用する。傾きaは、複数の脂肪厚各々を複数回測定した実測値を用いて、統計的に求めた一次直線の傾きから導かれる値である。また切片bは、複数の脂肪厚各々を複数回測定した実測値を用いて、統計的に求めた一次直線の切片を示す値で有る。また、光路長Lは本例では発光部5と受光部6との距離である。ただし、生体内で散乱した光の光路長を用いて表される値であってもよいので、発光部5と受光部6との距離より長い光路長にしてもよい。受光量PDは、取得部8から取得した受光データ(受光量)であり、電圧値を示している。光路長L、散乱係数+吸収係数C、傾きa、切片bは、記録部4に記録されている。なお、上記exp()は、eの累乗(^)を示し、例えば、exp(a)=e^aである。
【0027】
他の受光量PDの取得方法について説明する。脂肪厚の測定精度を向上させるために、例えば、予め決められた期間に予め決めた周期において、複数の発光量でかつ期間内に2回以上同一の発光量で発光部5を発光させてもよい。制御部31が複数の発光量でかつ期間内に2回以上同一の発光量で発光部5を発光させる発光制御信号を出力する。その場合、算出部32にさらに判定部を設けて、受光部6が受光した光の受光量が有効であるか否かを判定する。判定部は、予め1つ以上の判定対象とする発光量を設定し、判定対象の発光量各々に対応する2つ以上の受光量を取得して、取得した2つ以上の受光量各々について互いに差を求める。例えば、2つの受光量を取得したときは受光量Aと受光量Bの差を求める。3つの受光量を取得したときは、受光量Aと受光量Bの差、受光量Aと受光量Cの差、受光量Bと受光量Cの差を求める。次に、判定部は、判定対象の発光量各々で求めた差が全て閾値内のとき、期間内に発光された複数の光に対応する複数の受光量を有効と判定する。そして、受光量が有効であると判定されたとき、期間内に発光された複数の有効と判定された光に対応する複数の受光量を用いて脂肪厚を求める。
【0028】
図3の例では、算出部32は、取得部8から受光量(データ)を取得する。また、算出部32は、特徴情報を用いて記録部4の年齢−補正値テーブルを参照して、特徴情報に含まれる年齢に対応する補正値を取得する。その後、算出部32は受光量と補正値を用いて脂肪厚を求めて、出力部10に出力する。
【0029】
処理部3の動作を説明する。
図4は、処理部3の動作の一実施例を示すフロー図である。ステップS1では、処理部3の制御部31が入力部9から入力データを取得する。入力データには特徴情報が含まれている。例えば、利用者が入力した利用者の年齢を示すデータを入力部9から取得する。また、入力部9から脂肪厚測定を開始することを示す情報なども取得する。
【0030】
ステップS2では、算出部32が制御部31から脂肪厚算出指示を受信すると、脂肪厚を求めるために取得部8から受光データを取得する。また、ステップS3で算出部32は、制御部31から特徴情報を取得して、記録部4の年齢−補正値テーブルを参照して、特徴情報に含まれる年齢に対応する補正値を取得する。年齢−補正値テーブルは、予め測定した図5に示す年齢と皮膚組織の保水率の関係や実際の脂肪厚の計測結果などを用いて、年齢各々について補正値を求めて作成したテーブルである。
【0031】
図5は、実験的に得られたデータを、縦軸に水分保有率[%]、横軸に年齢[歳]をとって示したグラフである。
図6は、年齢−補正値テーブルのデータ構造の一実施例を示す図である。図6に示す年齢−補正値テーブル61は、「年齢」「補正値」を有している。「年齢」には年齢が記録され、本例では0歳から順に年齢が記録され、年齢を示す「0」「1」「2」・・・が記録されている。「補正値」には、「年齢」に記録されている年齢各々に関連付けられて補正値が記録されている。補正値とは、水分による受光量の影響を抑えるために用いる値である。
【0032】
生体に水分が多いと発光部5から出力された光が、発光部5に近い場所から生体表面に出てしまうため、受光部6で受光できる生体表面から出てくる光の受光量が減少する。人間においては、年齢が若いほど図5に示すように保水率が多いため、受光量が減少する傾向にある。そのため、光を用いた脂肪厚の測定では、同じ脂肪厚であっても若いほど脂肪厚は少なく、老いているほど脂肪厚が多くなってしまう。そこで、水分の影響を抑えるために、同じ脂肪厚で異なる水分量の複数の生体などに対して実際に複数回測定をする。生体の水分量により受光量は変化しているが、脂肪厚は予め同じであることが分かっているので、脂肪厚が同じまたは近くなるような補正値を、水分量ごとに求める。そして、求めた水分量ごとの補正値の平均を、年齢各々の水分量に関連付けて年齢−補正値テーブルを作成する。年齢各々の水分量は、年齢と皮膚組織の保水率や実際の計測によって求めることが考えられる。本例では、補正値を示す「hosei_0」「hosei_1」「hosei_2」・・・が記録されている。年齢による補正値は、若いほど小さく、老いているほど大きくなる。
【0033】
ステップS4では、算出部32が受光データと補正値を取得し、上記式1を用いて脂肪厚を求める。算出部32は、出力部10に求めた脂肪厚のデータを出力する。脂肪厚のデータを受信した出力部10は、脂肪厚を画像または音声などを用いて利用者に提示する。
【0034】
実施形態1によれば、光学式の脂肪厚計測の計測精度を向上させるという効果を奏する。図7は、補正をすることにより脂肪厚のばらつきが軽減されてことを示す図である。図7は、縦軸に受光部6の出力値[V]、横軸に脂肪厚[mm]が記録されている。図7の曲線71は補正をしていないひし形で表されている計測値の漸近線である。図7の直線72は補正をしたときの四角形で表されている計測値の漸近線である。図7の例では、受光量を水分量による補正をすることで、脂肪厚のばらつきが軽減されたことが分かる。つまり、四角形で表されている受光量を示す出力値が直線72に近い範囲にあるので、受光量に対する脂肪厚のばらつきを抑えられることが分かる。
【0035】
図6の年齢−補正値テーブルに格納されている補正値の算出方法は上記に限るものではなく、水分量以外にも、年齢各々に対応する生体に含まれるメラニン量から求められる補正値が、関連付けて記録されていても良い。図2で示す皮部21に含まれるメラニンにより、発光部5から出力された光が吸収されてしまうことが考えられる。そして、生体にメラニンが多いと発光部5から出力された光が、反射せずに吸収されてしまうため、受光部6で受光できる生体表面から出てくる光の受光量が減少することが考えられる。
【0036】
そこで、同じ脂肪厚で異なるメラニン量の複数の生体などに対して実際に複数回測定をする。生体のメラニン量により受光量は変化しているが、脂肪厚は予め同じであることが分かっているので、脂肪厚が同じまたは近くなるような補正値を、メラニン量ごとに求める。そして、求めたメラニン量ごとの補正値の平均を、年齢各々の平均的なメラニン量に関連付けて年齢−補正値テーブルを作成する。年齢各々のメラニン量は、年齢と実際の計測によって求めることが考えられる。一般的に、日常生活をする中で日光に当たって日焼けする機会が多くなるため、年齢による補正値は、若いほど大きく、老いているほど小さくなる。
【0037】
実施形態2について説明をする。
実施形態2は、生体に光を入射し再び生体表面に現れる光の受光量を計測し、次に、生体の特徴または生体の周辺環境により生体に含まれる水分が変化することから導かれる補正値を求め、該補正値により受光量を補正し、補正した受光量を用いて脂肪厚を求める。
【0038】
図8は、実施形態2の脂肪厚計測装置のハードウェアの一実施例を示す図である。図8の脂肪厚計測装置81は、センサ部2、データ取得部82、処理部83、記録部84、駆動部7、取得部8、入力部9、出力部10を備えている。入力部9、出力部10、駆動部7、取得部8、データ取得部82、記録部84は、処理部83に接続されている。センサ部2、駆動部7、取得部8、入力部9、出力部10については実施形態1において説明したので省略する。
【0039】
データ取得部82は、脂肪厚計測装置81に備えられている1つ以上の種類の計測器から計測データを取得する。計測機器は、例えば、温度計、湿度計、時計、位置情報を取得する計器などである。
【0040】
処理部83は、制御部91および算出部92を備えている。処理部83は、CPUやプログラマブルなデバイス(FPGA、PLD)などを用いてもよい。なお、制御部91、算出部92については後述する。
【0041】
記録部84は、プログラム、テーブル、データなどが記録されている。また、記録部84は、例えばROM、RAMなどのメモリやハードディスクなどである。また、記録部84は、パラメータ値、変数値などのデータを記録してもよいし、ワークエリアとして用いることもできる。
【0042】
処理部83について説明する。
図9は、処理部83の一実施例を示す機能ブロック図である。処理部83は、制御部91、算出部92を有している。
【0043】
制御部91は、予め決められた発光量で発光部5を発光させる。図9の例では、制御部91から発光部5を制御する発光制御信号が出力される。また、図9の例では、制御部91は入力部9から入力データを取得する。入力データは、例えば、特徴情報などのデータであり、利用者が入力した年齢情報などが考えられる。また、制御部91はデータ取得部82から取得データを受信する。なお、実施形態2では計測データと特徴情報を取得してもよいし、計測データだけを取得して特徴情報を取得しなくてもよい。また、図9の例では、制御部91は脂肪厚を求めるための脂肪厚算出指示や記録部84から補正値を取得するために特徴情報や計測データなどを算出部32に出力する。ただし、制御部91を介さずに直接特徴情報や計測データを算出部32が取得してもよい。
【0044】
特徴情報は生体の特徴を示す情報であり、例えば、年齢を示す年齢情報などが考えられる。また、補正値を求めるために予め特徴情報は補正値と関連付けられて記録部84に記録されている。年齢各々に対して補正値各々を関連付けた場合であれば、例えば、0歳〜100歳の年齢各々に対応する生体に含まれる水分量から求められる補正値が、関連付けて記録されている。後述する年齢−補正値テーブルなどを記録することが考えられる。
【0045】
算出部92は、入力部9から入力された後述する特徴情報に対応する補正値を求め、求めた補正値と受光量を用いて脂肪厚を求める。脂肪厚Yは式2により表すことができる。
Y=PD×exp((−L×C)×β)×a+b (式2)
Y :脂肪厚 L :光路長 β :補正値
PD:受光量 C :散乱係数+吸収係数 a :傾き b :切片
【0046】
補正値βは、生体に含まれる水分量により受光量が変化した場合に、水分量の影響を抑えて脂肪厚を求めるために用いられる値である。生体に水分が多いと発光部5から出力された光が、発光部5に近い場所から生体表面に出てしまうため、受光部6で生体表面から出てくる光の受光量が減少してしまうので、水分による受光量の影響を抑えるために用いる値である。また、補正値βはデータ取得部82が取得した、例えば、湿度、温度、日時、位置情報などの計測データに関連付けられた補正値である。年齢の補正値をα1、湿度の補正値をβ1、温度の補正値をβ2、日時の補正値をβ3、位置情報の補正値をβ4とした場合、βは式3で表すことができる。
年齢のみの場合 :β=α1
湿度のみの場合 :β=β1
温度のみの場合 :β=β2 (式3)
日時のみの場合 :β=β3
位置情報のみの場合:β=β4
年齢、湿度、温度、日時、位置情報により決める場合:
β=α1×β1×β2×β3×β4
【0047】
また、各補正値α1、β1、β2、β3、β4を組み合わせて補正値βを求めてもよい。さらに、上記では補正値を積算して求めているが、積算する以外にも補正をするための演算をして補正値βを求めてもよい。傾きaは、複数の脂肪厚各々を複数回測定した実測値を用いて、統計的に求めた一次直線の傾きから導かれる値である。また切片bは、複数の脂肪厚各々を複数回測定した実測値を用いて、統計的に求めた一次直線の切片を示す値で有る。また、光路長Lは本例では発光部5と受光部6との距離である。ただし、生体内で散乱した光の光路長を用いて表される値であってもよいので、発光部5と受光部6との距離より長い光路長にしてもよい。受光量PDは、取得部8から取得した受光データ(受光量)であり、電圧値を示している。光路長L、散乱係数+吸収係数C、傾きa、切片bは、記録部84に記録されている。なお、上記exp()は、eの累乗(^)を示し、例えば、exp(a)=e^aである。
【0048】
他の受光量PDの取得方法について説明する。実施形態1で説明したように、脂肪厚の測定精度を向上させるために、例えば、予め決められた期間に予め決めた周期において、複数の発光量でかつ期間内に2回以上同一の発光量で発光部5を発光させてもよい。制御部91が複数の発光量でかつ期間内に2回以上同一の発光量で発光部5を発光させる発光制御信号を出力する。その場合、算出部92にさらに判定部を設けて、受光部6が受光した光の受光量が有効であるか否かを判定する。判定部は、予め1つ以上の判定対象とする発光量を設定し、判定対象の発光量各々に対応する2つ以上の受光量を取得して、取得した2つ以上の受光量各々について互いに差を求める。例えば、2つの受光量を取得したときは受光量Aと受光量Bの差を求める。3つの受光量を取得したときは、受光量Aと受光量Bの差、受光量Aと受光量Cの差、受光量Bと受光量Cの差を求める。次に、判定部は、判定対象の発光量各々で求めた差が全て閾値内のとき、期間内に発光された複数の光に対応する複数の受光量を有効と判定する。そして、受光量が有効であると判定されたとき、期間内に発光された複数の有効と判定された光に対応する複数の受光量を用いて脂肪厚を求める。
【0049】
図9の例では、算出部92は、取得部8から受光量(データ)を取得する。また、算出部92は、特徴情報を用いて記録部84の年齢−補正値テーブルを参照して、特徴情報に含まれる年齢に対応する補正値を取得する。算出部94は、計測データ各々を用いて記録部84の湿度−補正値テーブル、温度−補正値テーブル、日時−補正値テーブル、地域−補正値テーブルを参照して、計測データ各々に対応する補正値を取得する。その後、算出部94は受光量と補正値各々を用いて脂肪厚を求めて、出力部10に出力する。
【0050】
処理部83の動作を説明する。
図10は、処理部83の動作の一実施例を示すフロー図である。ステップS101では、処理部83の制御部91が入力部9から入力データを取得する。入力データには特徴情報が含まれている。例えば、利用者が入力した利用者の年齢を示す特徴情報(データ)を入力部9から取得する。また、入力部9から脂肪厚測定を開始することを示す情報なども取得する。ステップS102では、制御部91が湿度、温度、日時、位置情報などの計測データのいずれかをデータ取得部82から取得する。なお、ステップS101とステップS102に順番はどちらが先であってもよい。
【0051】
ステップS103では、算出部92が制御部91から脂肪厚算出指示を受信すると、脂肪厚を求めるために取得部8から受光データを取得する。
ステップS104で算出部92は制御部91から特徴情報を取得して、記録部84の年齢−補正値テーブルを参照して、特徴情報に含まれる年齢に対応する補正値を取得する。また、算出部92は制御部91から計測データを取得して、記録部84の湿度−補正値テーブル、温度−補正値テーブル、日時−補正値テーブル、地域−補正値テーブルを参照して、計測データに対応する補正値を取得する。
【0052】
図11は、湿度−補正値テーブル、温度−補正値テーブル、日時−補正値テーブル、地域−補正値テーブルのデータ構造の一実施例を示す図である。湿度−補正値テーブル111は、「湿度」「補正値」を有している。「湿度」には湿度範囲が記録され、本例では、湿度を示す「−30」「31−40」「41−50」「51−60」「61−65」「66−」が記録されている。「−30」は湿度が30%以下であることを示し、「31−40」は湿度が31%〜40%であることを示し、「41−50」は湿度が41%〜50%であることを示している。「51−60」は湿度が51%〜60%であることを示し、「61−65」は湿度が61%〜65%であることを示し、「66−」は湿度が66%以上であることを示している。「補正値」には、「湿度」に記録されている湿度範囲各々に関連付けられて補正値が記録されている。本例では、湿度範囲に対する補正値を示す「shitudo_0」「shitudo_1」「shitudo_2」・・・が記録されている。湿度による補正値は、湿度が高いほど大きく、湿度が低いほど小さくなる。なお、湿度範囲の設定は上記湿度範囲に限定されるものではない。
【0053】
温度−補正値テーブル112は、「温度」「補正値」を有している。「温度」には温度範囲が記録され、本例では、温度を示す「−0」は温度が0℃以下であることを示し、「1−5」は温度が1℃〜5℃であることを示し、「6−10」は温度が6℃〜10℃であることを示している。「11−15」は温度が11℃〜15℃であることを示し、「16−20」は温度が16℃〜20℃であることを示し、「21−25」は温度が21℃〜25℃であることを示し、「26−30」は温度が26℃〜30℃であることを示している。「31−35」は温度が31℃〜35℃であることを示し、「36−40」温度が36℃〜40℃であることを示し、「41−45」は温度が41℃〜45℃であることを示し、「46−」は温度が46℃以下であることを示している。「補正値」には、「温度」に記録されている温度範囲各々に関連付けられて補正値が記録されている。本例では、温度範囲に対する補正値を示す「ondo_0」「ondo_1」「ondo_2」・・・が記録されている。なお、温度範囲の設定は上記範囲に限定されるものではない。
【0054】
日時−補正値テーブル113は、「日時」「補正値」を有している。「日時」には日時範囲が記録され、本例では、1日を24等分して午前0時から1時間ごとに時間が割り振られている。図11の日時−補正値テーブル113には、「0」「1」「2」・・・「23」が記録されている。なお、日時範囲の設定は上記範囲に限定されるものではなく、例えば、任意の時間を日時範囲にしてもよい。「補正値」には、「日時」に記録されている日時範囲各々に関連付けられて補正値が記録されている。本例では、日時範囲に対する補正値を示す「nitiji_0」「nitiji_1」「nitiji_2」・・・が記録されている。日時範囲に対する補正値は、例えば、食事後または入浴後の期間は補正値を低めに設定し、深夜帯は補正値を高くすることが考えられる。
【0055】
地域−補正値テーブル114は、「地域」「補正値」を有している。「地域」には地域範囲が記録され、本例では、「北海道」「青森」「岩手」・・・が記録されている。本例では、県ごとに地域を分けているが上記に限定されるものではない。例えば、地域を国ごとに分けてもよいし、緯度経度などにより地域を分けてもよい。「補正値」には、「地域」に記録されている地域各々に関連付けられて補正値が記録されている。本例では、地域に対する補正値を示す「tiiki_0」「tiiki_1」「tiiki_2」・・・が記録されている。
【0056】
計測データ各々の取得方法について説明する。「湿度」の選択は、現在の湿度に対応する計測データを算出部92が制御部91から取得して、取得した現在の湿度と一致する湿度を、記録部84を参照して選択する。「温度」の選択は、現在の温度に対応する計測データを算出部92が制御部91から取得して、取得した現在の温度と一致する温度を選択する。「日時」の選択は、現在の日時に対応する計測データを取得して、該現在の日時と一致する日時を、記録部84を参照して選択する。「地域」の選択は、位置情報に含まれる現在の位置を算出部92が制御部91から取得して、取得した現在の位置と一致する地域を、記録部84を参照して選択する。なお、湿度、温度、日時、位置情報は、入力部9から利用者が入力してもよい。
【0057】
実施形態2においても、生体内の水分量ではなく生体内のメラニン量に着目して、地域−補正値テーブル114に格納する補正値を求めても良い。例えば、低緯度地方の方が高緯度地方よりも日照時間の長いので、低緯度地方で生活をしている人は、高緯度地方で生活をしている人よりもメラニン量が多いことが考えられる。そこで、補正値を緯度が低いほど小さく、緯度が高いほど大きくすることが考えられる。
【0058】
また、図12に示すような補正値を選択するための画面を表示して、補正値を決めてもよい。図12の例では、「1)現在いる場所 (屋外、屋内、野外)」「2)現在の体感温度(あつい、丁度いい、寒い)」が表示されている。「1)現在いる場所 (屋外、屋内、野外)」が表示された場合、地域−補正値テーブルに「屋外」「屋内」「野外」と「屋外」「屋内」「野外」に関連付けられた補正値各々が記録されているとすれば、利用者が現在いる場所を選択して入力する。そして、算出部92は入力された「屋外」「屋内」「野外」のうち1つに対応付けられた補正値を選択する。「2)現在の体感温度(あつい、丁度いい、寒い)」が表示された場合、温度−補正値テーブルに「あつい」「丁度いい」「寒い」と「あつい」「丁度いい」「寒い」に関連付けられた補正値各々が記録されているとすれば、利用者が現在いる場所を選択して入力する。そして、算出部92は入力された「あつい」「丁度いい」「寒い」のうち1つに対応付けられた補正値を選択する。
【0059】
地域−補正値テーブル114に格納する補正値が生体内のメラニン量に着目して決定された値である場合には、補正値を選択するための画面121として、メラニン量に関係する日焼けの程度を問う選択肢を出力することも考えられる。
【0060】
ステップS105では、算出部92が受光データと補正値を用いて上記式2を用いて脂肪厚を求める。算出部92は、出力部10に求めた脂肪厚のデータを出力する。脂肪厚のデータを受信した出力部10は、脂肪厚を画像または音声などを用いて利用者に提示する。
【0061】
実施形態2によれば、生体に光を入射し再び生体表面に現れる光の受光量を計測し、次に生体の特徴または生体の周辺環境により生体に含まれる水分が変化することから導かれる補正値を求め、該補正値により受光量を補正し、補正した受光量を用いて脂肪厚を求める。その結果、脂肪厚の計測精度が向上させる。
【0062】
実施形態3について説明する。
実施形態3は、生体に光を入射し再び生体表面に現れる光の受光量を計測し、生体の水分量を水分センサで計測して、計測した水分量から導かれる補正値を求め、該補正値により受光量を補正し、補正した受光量を用いて脂肪厚を求める。
【0063】
図13は、実施形態3の脂肪厚計測装置のハードウェアの一実施例を示す図である。図13の脂肪厚計測装置131は、センサ部2(第1のセンサ部)、水分センサ部132(第2のセンサ部)、処理部133、記録部134、駆動部7、取得部8、入力部9、出力部10、駆動部137、取得部138、を備えている。入力部9、出力部10、駆動部7、取得部8、駆動部137、取得部138、記録部134は、処理部133に接続されている。センサ部2、駆動部7、取得部8、入力部9、出力部10については実施形態1において説明したので省略する。
【0064】
水分センサ部132は、生体の水分量を計測して、センサ部2の付近に設けられている。生体の組織は細胞とその間を満たす細胞外液から構成されており、さらに細胞は細胞内液と細胞膜から構成されている。電流はその周波数によって流れる経路が異なり、周波数が低い場合、電流は細胞膜を透過せず細胞外を流れ、周波数が高い場合、電流は細胞膜を透過する。よって、水分センサ部132は、発振部135から予め設定された周波数で一定の出力値の電流を生体に流して、生体表面に現れる電流を受信部136で受信して、受信した電流の値を取得部138に出力する。水分センサ部132は、例えば、肌の角質程度の深さまでの水分量を計測する。発振部135、受信部136、取得部138ついては後述する。
【0065】
処理部133は、制御部151および算出部152を備えている。処理部133は、CPUやプログラマブルなデバイス(FPGA、PLD)などを用いてもよい。なお、制御部151、算出部152については後述する。
【0066】
記録部134は、プログラム、テーブル、データなどが記録されている。また、記録部134は、例えばROM、RAMなどのメモリやハードディスクなどである。また、記録部134は、パラメータ値、変数値などのデータを記録してもよいし、ワークエリアとして用いることもできる。
【0067】
駆動部137は、発振部135を発振させるための駆動回路である。例えば、制御部151が生成した発振部135の電流量と周期を調整する信号を受信して、該信号に対応する電流を発振部135に出力する。
【0068】
取得部138は、受信部136が受信した電流の量に対応するアナログ信号を受信して、受信したアナログ信号を増幅してディジタル信号に変換して処理部133に出力する。取得部138は、例えば、アナログ−ディジタル変換器を備えている。また、取得部138は受信したディジタル信号である水分データ(電流値)を、記録部134に記録する。
【0069】
図14のAとBは、センサ部と水分センサ部の一実施例を示す断面図である。図14のAとBの例では、生体内部の表皮と真皮を示す皮部21、脂肪層22と筋肉層23が表されている。そして、皮部21の上に脂肪厚計測装置1のセンサ部2が密着して配置されている。センサ部2については、実施形態1で説明したので詳細な説明を省略する。
【0070】
水分センサ部132は、電流を出力する発振部135を収納する穴部141と電流を受信する受信部136を収納する穴部142を備えている。発振部135は、生体に接する電流を出力する端子を有している。受光部6は、生体内部から再び生体表面に現れる電流を受信する。受信部136は、生体に接する電流を受信する端子を有している。発振部135と受信部136の端子各々は、例えば、導体でありCu(銅)、Al(アルミニウム)、Au(金)などが考えられる。
【0071】
穴部141は発振部135を収納できる大きさであり、形状は、例えば、円筒形状、立方体形状などが考えられる。穴部142は受信部136を収納できる大きさであり、形状は、例えば、円筒形状、立方体形状などが考えられる。本実施例では、発振部135と受信部136を脂肪厚計測装置131の筐体表面に埋め込むように配置する。なお、脂肪厚計測装置131の筐体表面と端子各々の表面の高さが同じであることが望ましい。理由は、生体をセンサ部2で押し付けて脂肪厚が変形しないようにするためである。また、生体表面と発振部135と受信部136の端子各々の表面を密着させ、生体表面と端子各々の表面間に空気層ができるのを避けるためである。ただし、発振部135と受信部136の端子各々が生体に接触すればよいので、筐体表面から突出していてもよい。
【0072】
発振部135と受信部136の間隔は、発振部135の大きさ、出力する電流量、受信部136の大きさ、受信する電流量によって決められるものである。
また、水分センサ部132を小型化することが望ましい。
【0073】
センサ部2と水分センサ部132の配置について説明する。
センサ部2は生体の脂肪厚を計測するため、水分センサ部132の位置はセンサ部2に近いことが望ましい。図14のAに示すように、水分センサ部132はセンサ部2の発光部5と受光部6の間に配置してもよい。図14のBに示すように、水分センサ部132はセンサ部2の発光部5と受光部6の間ではなく、外側に配置してもよい。
【0074】
処理部133について説明する。
図15は、処理部133の機能ブロックの一実施例を示す図である。処理部133は、制御部151、算出部152を有している。制御部151は、予め決められた発光量で発光部5を発光させる。図15の例では、制御部151から発光部5を制御する発光制御信号が出力される。また、図15の例では、制御部151は入力部9から入力データを取得する。入力データは、例えば、利用者が入力したデータなどが考えられる。また、図15の例では、制御部151は脂肪厚を求めるための脂肪厚算出指示などを算出部32に出力する。
【0075】
また、制御部151は予め決められた周波数の電流を発振部135から出力させる。図15の例では、制御部151から発振部135を制御する発振制御信号が出力される。例えば、周波数は0.1Hz〜1.0Hzなどが望ましい。また、電流の出力タイミングは光を発光させるのと同じでもよいし、タイミングをずらしてもよい。
【0076】
また、図15の例では、制御部151は入力部9から入力データを取得する。入力データは、例えば、利用者が入力したデータなどが考えられる。
算出部152は、水分センサ部132が計測した水分データが入力され、水分データに対応する補正値を求め、求めた補正値と受光量を用いて脂肪厚を求める。脂肪厚Yは式4により表すことができる。
Y=PD×exp((−L×C)×γ)×a+b (式4)
Y :脂肪厚 L :光路長 γ :補正値
PD:受光量 C :散乱係数+吸収係数 a :傾き b :切片
【0077】
補正値γは、生体に含まれる水分量により受光量が変化した場合に、水分量の影響を抑えて脂肪厚を求めるために用いられる値である。生体に水分が多いと発光部5から出力された光が、発光部5に近い場所から生体表面に出てしまうため、受光部6で生体表面から出てくる光の受光量が減少してしまうので、水分による受光量の影響を抑えるために用いる値である。傾きaは、複数の脂肪厚各々を複数回測定した実測値を用いて、統計的に求めた一次直線の傾きから導かれる値である。また切片bは、複数の脂肪厚各々を複数回測定した実測値を用いて、統計的に求めた一次直線の切片を示す値で有る。また、光路長Lは本例では発光部5と受光部6との距離である。ただし、生体内で散乱した光の光路長を用いて表される値であってもよいので、発光部5と受光部6との距離を光路長にしてもよい。受光量PDは、取得部8から取得した受光データ(受光量)であり、電圧値を示している。光路長L、散乱係数+吸収係数C、傾きa、切片bは、記録部4に記録されている。なお、上記exp()は、eの累乗(^)を示し、例えば、exp(a)=e^aである。
【0078】
上記水分データは、生体の電流値であり水分量に対応する値を示す情報である。また、補正値を求めるために、予め水分データは補正値と関連付けられて記録部に記録されている。後述する電流値−補正値テーブルなどを記録することが考えられる。
【0079】
他の受光量PDの取得方法について説明する。脂肪厚の測定精度を向上させるためには、例えば、予め決められた期間に予め決めた周期において、複数の発光量でかつ期間内に2回以上同一の発光量で発光部5を発光させてもよい。制御部151が複数の発光量でかつ期間内に2回以上同一の発光量で発光部5を発光させる発光制御信号を出力する。その場合、制御部151にさらに判定部を設けて、受光部6が受光した光の受光量が有効であるか否かを判定する。受光量が有効であると判定されたとき、期間内に発光された複数の有効と判定された光に対応する複数の受光量を用いて脂肪厚を求める。
【0080】
図15の例では、算出部152は、取得部8から受光量(データ)を取得する。また、算出部152は、水分データを用いて記録部4の電流値−補正値テーブルを参照して、電流値に対応する補正値を取得する。その後、算出部152は受光量と補正値を用いて脂肪厚を求めて、出力部10に出力する。
【0081】
処理部133の動作を説明する。
図16は、処理部133の動作の一実施例を示すフロー図である。ステップS161では、処理部133の制御部151が入力部9から脂肪厚測定を開始することを示す入力データなどを取得する。
【0082】
ステップS162では、算出部152が制御部151から脂肪厚算出指示を受信すると、脂肪厚を求めるために取得部8から受光データを取得する。
ステップS163では、算出部152が制御部151から水分データを取得して、記録部134の電流値−補正値テーブルを参照して、水分データに含まれる電流値に対応する補正値を取得する。図17は、年齢−補正値テーブルのデータ構造の一実施例を示す図である。図17に示す電流値−補正値テーブル171は、「電流値」「補正値」を有している。「電流値」には電流値が記録され、本例では0mAから順に電流値が記録されている。本例では、電流値を示す「0」「1」「2」・・・が記録されている。なお、電流値の範囲設定は上記に限定されるものではない。「補正値」には、「電流値」に記録されている電流値各々に関連付けられて補正値が記録されている。補正値は、生体に水分が多いと発光部5から出力された光が、発光部5に近い場所から生体表面に出てしまうため、受光部6で生体表面から出てくる光の受光量が減少してしまうので、水分による受光量の影響を抑えるために用いる値である。本例では、補正値を示す「denryu_0」「denryu_1」「denryu_2」・・・が記録されている。電流値による補正値は、電流値が大きいほど水分量が多く、電流値が小さいほど水分量が少ない。
【0083】
ステップS164では、算出部152が受光データと補正値を用いて上記式4を用いて脂肪厚を求める。算出部152は、出力部10に求めた脂肪厚のデータを出力する。脂肪厚のデータを受信した出力部10は、脂肪厚を画像または音声などを用いて利用者に提示する。
【0084】
実施形態3によれば、計測された電流値に対応付けられた補正値を用いて脂肪厚を求めることにより、光学式の脂肪厚計測の計測精度を向上させるという効果を奏する。
なお、上記実施形態1、2、3は、携帯電話、Personal Handy-phone System(PHS)、携帯型パソコンなどの携帯端末などに用いることが考えられる。
【0085】
実施形態4について説明する。
実施形態4は、実施形態1、2、3の処理を、コンピュータを用いて実現する場合について説明する。
【0086】
図18は、実施形態4のコンピュータのハードウェア構成の一実施例を示す図である。コンピュータのハードウェア1800は、CPU1801、記録部1802、記録媒体読取装置1803、入出力インタフェース1804(入出力I/F)、通信インタフェース1805(通信I/F)などを備えている。また、上記各構成部はバス1806によってそれぞれ接続されている。
【0087】
CPU1801は、記録部1802に格納されている上記説明した処理部3、83、133が行う脂肪厚を求めるために必要な処理を実行する。
記録部1802には、CPU1801が実行するプログラムやデータが記録されている。また、ワークエリアなどとして使用される。また、記録部1802は上記説明した記録部4、84、134の機能を有する。記録部1802は、例えば、ROM、RAM、ハードディスクドライブなどである。
【0088】
記録媒体読取装置1803は、CPU1801の制御に従って記録媒体1807に対するデータのリード/ライトを制御する。そして、記録媒体1807に記録媒体読取装置1803の制御で書き込まれたデータを記録させたり、記録媒体1807に記録されたデータを読み取らせたりする。また、着脱可能な記録媒体1807は、コンピュータで読み取り可能なnon−transitory(非一時的)な記録媒体として、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)などがある。光ディスクには、Digital Versatile Disc (DVD)、DVD−RAM、Compact Disc Read Only Memory (CD−ROM)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)、Universal Serial Bus (USB)メモリなどがある。光磁気記録媒体には、Magneto-Optical disk (MO)などがある。また、半導体メモリにはフラッシュメモリなどがある。なお、記録部1802もnon-transitory(非一時的)な記録媒体に含まれる。
【0089】
入出力インタフェース1804には、入出力装置1808が接続され、利用者が入力した情報を受信し、バス1806を介してCPU1801に送信する。また、CPU1801からの命令に従ってディスプレイの画面上に操作情報などを表示する。
【0090】
入出力装置1808は、入力部9、出力部10を備えている。また、実施形態1の場合であれば、入出力装置1808は、センサ部2、駆動部7、取得部8を備えた装置であり、センサ部2の発光部5の発光の制御と受光部6の受光の制御を行うための信号、取得部8からの受光データを、CPU1801に入出力する。
【0091】
実施形態2の場合であれば、入出力装置1808は、センサ部2、データ取得部82、駆動部7、取得部8を備えた装置である。センサ部2の発光部5の発光の制御と受光部6の受光の制御を行うための信号、取得部8からの受光データを、CPU1801に入出力する。
【0092】
実施形態3の場合であれば、入出力装置1808は、センサ部2、駆動部7、取得部8、水分センサ部132、駆動部137、取得部138を備えた装置である。センサ部2の発光部5の発光の制御と受光部6の受光の制御を行うための信号、取得部8からの受光データを、CPU1801に入出力する。また、水分センサ部132の発振部135の発振の制御と受信部136の受信の制御を行うための信号、取得部138からの水分データを、CPU1801に入出力する。
【0093】
通信インタフェース1805は、必要に応じ、他のコンピュータとの間のLocal Area Network(LAN)接続やインターネット接続や無線接続を行うためのインタフェースである。また、他の装置に接続され、外部装置からのデータの入出力を制御する。
【0094】
このようなハードウェア構成を有するコンピュータを用いることによって、上記説明した各種処理機能が実現される。その場合システムが有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体1807に記録しておくことができる。なお、上記各種処理機能は、実施形態1、2、3で説明したフロー図などである。
【0095】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの記録媒体1807が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0096】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、記録媒体1807に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記録部1802に格納する。そして、コンピュータは、自己の記録部1802からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、記録媒体1807から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0097】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。各実施形態は処理に矛盾の無い限りにおいて、互いに組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0098】
1 脂肪厚計測装置
2 センサ部
3 処理部
4 記録部
5 発光部
6 受光部
7 駆動部
8 取得部
9 入力部
10 出力部
24、25 穴部
26、27 カバーフィルタ
31 制御部
32 算出部
61 年齢−補正値テーブル
81 脂肪厚計測装置
82 取得部
83 処理部
84 記録部
91 制御部
92 算出部
111 湿度−補正値テーブル
112 温度−補正値テーブル
113 日時−補正値テーブル
114 地域−補正値テーブル
131 脂肪厚計測装置
132 水分センサ部
133 処理部
134 記録部
135 発振部
136 受信部
137 駆動部
138 取得部
141、142 穴部
151 制御部
152 算出部
171 電流値−補正値テーブル
1800 ハードウェア
1801 CPU
1802 記録部
1803 記録媒体読取装置
1804 入出力インタフェース
1805 通信インタフェース
1806 バス
1807 記録媒体
1808 入出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に入射する光を発光する発光部と、前記生体の表面に現れる光を受光して受光量を検出する受光部を有するセンサ部と、
前記生体の特徴を示す特徴情報を入力する入力部と、
予め決められた発光量で前記発光部を発光させる制御部と、前記入力部から入力された前記特徴情報に関連付けられている補正値と前記受光量とを用いて前記生体の脂肪厚を求める算出部と、を有する処理部と、
を有することを特徴とする脂肪厚計測装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記特徴情報として年齢を示す年齢情報を取得し、取得した前記年齢情報に関連付けられている前記補正値と前記受光量とを用いて前記生体の脂肪厚を求めることを特徴とする請求項1に記載の脂肪厚計測装置。
【請求項3】
前記脂肪厚計測装置はさらに、1つ以上の種類の計測器から計測データを取得するデータ取得部を有し、
前記算出部は、前記計測データ各々に関連付けられている前記補正値と前記受光量とを用いて前記生体の脂肪厚を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の脂肪厚計測装置。
【請求項4】
前記データ取得部は、前記計測器から湿度を示す計測データを取得し、
前記算出部は、取得した前記湿度を示す計測データに関連付けられている前記補正値と前記受光量とを用いて前記生体の脂肪厚を求めることを特徴とする請求項3に記載の脂肪厚計測装置。
【請求項5】
生体に入射する光を発光する発光部と、前記生体の表面に現れる光を受光して受光量を検出する受光部を有する第1のセンサ部と、
生体に電流を出力する発振部と、前記生体の表面に現れる電流を受信して電流量を検出する受信部を有する第2のセンサ部と、
予め決められた発光量で前記発光部を発光させる制御と、予め決められた周波数の電流量で前記発振部を発振させる制御とを行う制御部と、前記第2のセンサ部で計測した電流量に関連付けられている補正値と前記受光量とを用いて前記生体の脂肪厚を求める算出部と、を有する処理部と、
を備えることを特徴とする脂肪厚計測装置。
【請求項6】
コンピュータに、
入力部から入力される生体の特徴を示す特徴情報を取得し、
前記生体に入射する光を発光する発光部を、予め決められた発光量で発光させる制御をし、
前記生体の表面に現れる光を受光する受光部が検出した受光量を取得し、
前記入力部から入力された前記特徴情報に関連付けられている補正値と前記受光量とを用いて前記生体の脂肪厚を求める、
処理を実行させることを特徴とする脂肪厚計測プログラム。
【請求項7】
1つ以上の種類の計測器から計測データを取得し、
前記計測データ各々に関連付けられている前記補正値と前記受光量とを用いて前記生体の脂肪厚を求める処理を
前記コンピュータに実行させることを特徴とする脂肪厚計測プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
入力部から入力される生体の特徴を示す特徴情報を取得し、
前記生体に入射する光を発光する発光部を、予め決められた発光量で発光させる制御をし、
前記生体の表面に現れる光を受光する受光部が検出した受光量を取得し、
生体に電流を出力する発振部を、予め決められた周波数の電流量で発振させる制御をし、
前記生体の表面に現れる電流を受信する受信部が検出した電流量を取得し、
前記電流量に関連付けられている補正値と前記受光量とを用いて脂肪厚を求める、
処理を実行させることを特徴とする脂肪厚計測プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−65724(P2012−65724A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211299(P2010−211299)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】