説明

脂肪廃棄物を加工するための方法

【課題】良好な価格の安定化をもたらす、特に燃料として使用するための、脂肪廃棄物を加工するための方法を提供する。
【解決手段】脂肪廃棄物1,1’を、水8および酸性試薬7と混合し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の族に属する無機元素を含んでいない、無機物が除去された脂肪相と、沈殿物としての固体残留物を含み得る水相とを得る化学的処理、得られた混合物をデカンテーションまたは濾過によって機械的に分離し、無機物が除去された脂肪相を、水相12から分離する機械的処理からなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、一般的に、廃棄物の加工の分野に関し、特に燃料として使用するための廃棄物の加工の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、脂肪廃棄物を加工するための方法、特に燃料として使用するために脂肪廃棄物を加工するための方法に関する。
【0003】
より詳細には、本発明は、農業食品または化粧品産業からの脂肪廃棄物、特にこれらをデカンテーションする施設からの脂肪廃棄物、あるいは飲食店および食品調製施設からの脂肪廃棄物、ならびに都市廃水または工業廃水を前処理する施設(スキミングタンクおよびデグリーサーなど)からの脂肪廃棄物、あるいはさらに解体業者(knackeries)からの脂肪廃棄物に適用可能である。
【0004】
これらの脂肪廃棄物は、主として、脂肪画分、水溶性画分および残留物画分から構成されている。
【0005】
本発明によって扱われかつ不均質な組成を有する脂肪廃棄物は、固体および/または液体であってもよい。この脂肪廃棄物は、複数の種類の植物油および/または複数の種類の動物油から構成されていてもよい。
【0006】
本発明は、無水ベースで少なくとも90%の有機物を含むが、無水ベースで100%までの灰も含み得る脂肪画分に、特に適用可能である。
【0007】
灰は、脂肪廃棄物のサンプル中に含まれている無機物に相当する。より詳細には、灰は、メンデレーエフの化学元素の周期表に記載の、アルカリ金属の族(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)および/またはアルカリ土類金属の族(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)に属する無機元素に相当する。
【0008】
この脂肪画分は、エネルギーの目的に使用することを可能にするような高発熱量を有している。脂肪画分の正味の発熱量(即ち、NCV)は、33.494×10〜37.681×10ジュール/kg(即ち、8000〜9000kcal/kg)であり得る。
【0009】
それにもかかわらず、脂肪画分中に無機物が高い割合で含有されているため、エネルギーの目的への使用は制限されている。
【0010】
例えば、バーナーの製造業者は、コジェネレーションエンジン(cogeneration engine)の場合において、最大で0.03wt%の無機物の割合、さらには最大で0.01wt%の無機物の割合を推薦しているに対し、本発明が関与する脂肪画分は、無水ベースで10wt%以下の無機物を含んでいてもよい。
【0011】
目下のところ、ボイラー内における脂肪画分の燃焼は、重大なファウリングを招き、さらに、ガス中に多量の埃の屑をもたらす。自動車のエンジンまたはコジェネレーションエンジン内における脂肪画分の燃焼は、機械の不調を引き起こすこともある。
【0012】
従って、この脂肪画分の価格の安定化(valorization)の代替方法は、工業用炉またはセメント工場の炉における、今日の脂肪画分の使用を単に低減させる。
【0013】
これに関して、本発明の目的は、上述の制限の少なくとも1つを免除する脂肪廃棄物の加工方法、特に、これらの廃棄物の価格の安定化を改善することを可能にする脂肪廃棄物の加工方法を提案することである。
【0014】
この目的を達成するために、本発明は、脂肪廃棄物の化学的処理と、この化学的処理の後に実施する機械的処理とを含んでいることを特徴としている、脂肪廃棄物を加工するための方法に関する。化学的処理において、脂肪廃棄物を水および酸性試薬(acid-type reagent)と混合し、無機物が除去された脂肪相と、沈殿物の形態の固体残留物を含み得る水相とを得る。機械的処理の間に、得られた混合物を、デカンテーションまたは濾過によって機械的に分離し、無機物が除去された脂肪相を水相から分離する。
【0015】
このため、本発明の無機物が除去された脂肪相は、アルカリ金属の族および/またはアルカリ土類金属の族に属する無機元素を含んでいない。
【0016】
化学的処理による脂肪廃棄物からの無機物の除去は、メンデレーエフの化学元素の周期表において、アルカリのファミリー(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)および/またはアルカリ土類のファミリー(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)に属する無機元素の除去に相当する。
【0017】
無機物の割合の分析は、無機物除去反応の性能を示す。この分析は、適用されたスタンダードに依存して550℃〜815℃の温度で(例えば、バイオマスの場合は550℃であり、NF EN ISO 6245に基づく石油製品の場合は775℃であり、NF M 03−003に準じる石炭の場合は815℃である。)、完全な燃焼(即ち、か焼)を実施することからなる。
【0018】
有利な形態の本発明によれば、脂肪廃棄物は、農業食品または化粧品産業からの(特にこれらをデカンテーションする施設からの)廃棄物であるか、飲食店および食品調製施設からの廃棄物であるか、都市廃水または工業廃水を前処理する施設(スキミングタンクおよびデグリーサーなど)からの廃棄物であるか、あるいは解体業者からの廃棄物である。
【0019】
脂肪廃棄物は、主として、脂肪画分、水溶性画分および残留物画分から構成されてもよく、無水ベースで少なくとも90%(好ましくは90〜99%)の有機物と、無水ベースで10%以下(好ましくは1〜10%)の灰とを含む脂肪画分のみを保持するように、本発明の方法の前に加工されてもよい。
【0020】
無水ベースにおける有機物または灰の含有量は、脂肪廃棄物の固体(即ち、水から遊離された脂肪廃棄物の抽出物)の、有機物または灰の含有量に相当する。
【0021】
より具体的には、本発明の方法の機械的分離を、重力によるデカンテーションまたは促進的なデカンテーション(accelerated decanting)によって実施してもよいし、さらに、例えば20μm〜1mm(好ましくは50μm〜1mm)のメッシュを用いた、加圧式または非加圧式の熱時表面濾過(hot surface filtering)によって実施してもよい。
【0022】
好ましくは、脂肪廃棄物、水および酸性試薬を、45〜130℃の温度で混合する。
【0023】
脂肪廃棄物、水および酸性試薬を、混合物を均質化するために、攪拌によって混合することが有利である。
【0024】
例えば、脂肪廃棄物に混合される水の量は、脂肪廃棄物の体積の1/10〜1/2であり、好ましくは脂肪廃棄物の体積の約1/4である。
【0025】
脂肪廃棄物に水を混合する前において、水は、室温または30〜100℃の温度であることが好ましく、50〜70℃の温度であることが最も好ましい。
【0026】
無機物が除去された水、飲料水または清潔なプロセス水を使用してもよい。「プロセス水」は、プロセスを実施するか、製品を製造するための工業施設において使用される水を意味する。
【0027】
好ましい実施形態の本発明によれば、脂肪廃棄物に混合される酸性試薬の量は、脂肪廃棄物の体積の0.5〜10%であり、好ましくは脂肪廃棄物の体積の0.5〜4%である。
【0028】
脂肪廃棄物に混合される酸性試薬の量は、これらの廃棄物に含まれる灰の割合と比例することが有利である。
【0029】
脂肪廃棄物に混合される酸性試薬は、無機酸(式HCl、式HPO、式HNOまたは式HSOの無機酸など)、およびpKaが水性媒体中の脂肪廃棄物のpHよりも低い有機酸から成る群より選択される少なくとも1つの酸から構成されることが有利である。例えば、水性媒体中においてpHが約4.5である脂肪廃棄物についての有機酸は、ギ酸HOOHである。
【0030】
特定の形態の本発明によれば、脂肪廃棄物の化学的処理は、主として、少量(脂肪廃棄物に混合されるべき水の総量の10〜30%)の水に、これらの脂肪廃棄物を最初に混合して、この混合物が均質化され、45〜130℃の温度にまで加熱し、次いで、脂肪廃棄物に混合されるべき水の総量の残余および酸性試薬を、この混合物に同時に添加することからなる。
【0031】
脂肪廃棄物を、常にまたは断続的に攪拌しながら、5分〜3時間の反応時間にわたって、水および酸性試薬と混合することが好ましい。反応時間は約45分であることがより好ましい。
【0032】
本発明の方法は、脂肪廃棄物を水および酸性試薬に混合する前に、任意の不純物の除去を意図した、脂肪廃棄物を濾過する第一の操作をさらに含んでいてもよい。
【0033】
例えば、脂肪廃棄物を濾過する第一の操作は、20μm〜1mmのメッシュを用いて実施される加圧式の表面濾過である。メッシュは、好ましくは50μm〜1mmのメッシュであり、最も好ましくは約250μmのメッシュである。
【0034】
機械的処理の後に、無機物が除去された脂肪相を濾過する第二の操作を、実施してもよい。
【0035】
この無機物が除去された脂肪相を濾過する第二の操作は、20μm〜1mm、好ましくは50μm〜1mmのメッシュを用いて実施される、加圧式または非加圧式の熱時表面型の濾過操作であることが好ましい。
【0036】
化学的処理の後に得られた混合物を、機械的処理を実施するために加熱することが有利である。
【0037】
このようにして、脂肪廃棄物を化学的処理に供し、次いで機械的処理に供した後に得た、無機物が除去された脂肪相を、価格の安定化のプロセスに供してもよい。
【0038】
特定の形態の本発明によれば、脂肪廃棄物を化学的処理に供し、次いで機械的処理に供した後でかつ価格の安定化の前に得た、無機物が除去された脂肪相を、貯蔵し、加熱する。貯蔵する間に注がれた残留物があれば、この残留物を、無機物が除去された脂肪相から除去する。
【0039】
このように、本発明の方法は、脂肪廃棄物の由来が如何なるものであれ、脂肪廃棄物から無機物を除去して、価格の安定化の任意の代替方法においてエネルギーの目的のためにこの脂肪廃棄物を使用することを可能する。
【0040】
本発明の脂肪廃棄物(より具体的には、脂肪画分)を加工するための方法は、アルカリ金属の族および/またはアルカリ土類金属の族に属する無機物を除去し、0.1wt%未満または0.03wt%未満の灰の割合を達成することができる。
【0041】
このように無機物の割合が減少しているため、生産現場におけるボイラー用燃料の形態の脂肪廃棄物および/または脂肪画分の価格を特に安定させることができ、例えば、輸送に関連するコストを低減させることができ、それ故、脂肪廃棄物および/または脂肪画分を、生産現場から比較的遠距離にあるセメント工場の炉または工業用炉へ輸送する状況と比べて、二酸化炭素の放出を低減することができる。
【0042】
一方、このように無機物の割合が減少しているため、より過激な汚染物質、環境への優しさにより乏しい燃料(燃料油など)の代わりに、無機物が除去された脂肪廃棄物を、この脂肪廃棄物を生物燃料へ変換した後に、新規の用途に使用することができる。新規の用途としては、都市のボイラーまたは工業用ボイラー、コジェネレーションエンジン、自動車のエンジンなどが挙げられる。
【0043】
さらに、本発明に従って加工した後の脂肪廃棄物の燃料としての使用は、大気に煙を放出する前のさらなる処理を必要としない煙を放出するという利点を有しており、燃焼施設のファウリングを回避するという利点も有している。
【0044】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図1を参照しながら、非限定的な例を用いて記載される以下の詳細な説明を読めば、より明らかになるであろう。図1は、本発明の方法を実行するために適合された装置の模式図である。
【0045】
加工される脂肪廃棄物1(好ましくは、水溶性画分および残留物画分を予め除去した脂肪廃棄物1の脂肪画分(図示しない))を、図1に示す装置に提供する。
【0046】
脂肪廃棄物1は、第一の濾過器2において第一の濾過を実施され、不純物が可能な限り多く除去される。
【0047】
この濾過は、20μm〜1mmのメッシュを用いて実施される加圧式の表面濾過であってもよい。メッシュは、50μm〜1mmのメッシュであることが好ましく、約250mmのメッシュであることがより好ましい。
【0048】
次いで、濾過された脂肪廃棄物1’を反応槽3に提供し、化学処理を実施する。
【0049】
この反応槽3は、攪拌器4、加熱部材、およびレベル検出器を備えていることが好ましい。加熱部材としては、反応槽3内に沈められ、かつ熱水6を供給される加熱チューブ5などが挙げられる。この反応槽は、絶縁されていることが有利である。
【0050】
水8および酸性試薬7を、この反応槽3に添加する。
【0051】
反応槽3に導入した試薬は、攪拌器4によって均質化される混合物を形成する。
【0052】
混和性の液体−液体を混合することからなる攪拌の操作は、軸方向の流量を変更する素子(axial flow rate mobile element)によって実施されることが好ましい。
【0053】
攪拌器4は、ポンプ運転にて作動してもよい。
【0054】
反応槽3における流体力学的な負荷は、低いせん断型のものであることが好ましい。
【0055】
反応槽3は、反応槽の温度を45〜130℃(好ましくは50〜90℃)の温度にまで誘導する加熱チューブ5によって加熱される。
【0056】
反応槽3に添加される水8の総量は、脂肪廃棄物1または1’の体積の1/10〜1/2であり、好ましくは脂肪廃棄物1または1’の体積の約1/4である。
【0057】
反応槽3内の水8は、熱くてもよいし、室温であってもよい。すなわち、反応槽3内の水8は、30〜100℃、好ましくは50〜70℃の温度であってもよい。例えば水8を、ボイラーによって加熱することが好ましい。
【0058】
添加された水は、無機物が除去された水であってもよいし、飲料水であってもよいし、清潔なプロセス水であってもよい。
【0059】
反応槽3内に添加される酸性試薬7の量は、脂肪酸1または1’の体積の0.5〜10%である。この量は、換言すれば、無水ベースで10%以下の灰と無水ベースで90〜99%の有機物とを含む脂肪廃棄物1Lあたり、0.07〜1.5当量のHである。また、この量は、脂肪廃棄物の体積の0.5〜4%であることが好ましく、換言すれば、脂肪廃棄物1Lあたり、0.07〜0.6当量のHである。
【0060】
本発明に従って脂肪廃棄物中の無機物を低減させるために、添加した酸性試薬7は、無機酸(塩酸(HCl)、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)および硫酸(HSO)など)、またはpKaが十分低くかつ水性媒体中の脂肪廃棄物のpHよりも低い有機酸、あるいはこれらの酸の組合せであってもよい。このような有機酸としては、例えば、pKaが3.75であるギ酸HOOHが挙げられる。
【0061】
酸性試薬を選択する場合、無機物の低減割合に加えて、以下の基準を考慮してもよい:工業量における利用可能性、酸性試薬によって脂肪廃棄物の脂肪が破壊されないこと、酸性試薬の沸点は適切であるべきであり、具体的には100℃よりも高くあるべきであること、化学的処理の間に有害物が放出されないこと、酸性試薬によって反応槽3の材料が腐食されないこと。
【0062】
例えば、反応槽3がステンレス鋼から作製されている場合、リン酸は、反応槽の壁を腐食しないため、好ましい。
【0063】
試薬(すなわち、脂肪廃棄物1’(より詳細には脂肪画分)、水8および酸性試薬7)を、種々のシークエンスに従って反応槽3内に注入してもよい。
【0064】
好ましくは、脂肪廃棄物1’(または脂肪画分)を反応槽3へ最初に提供する。次いで、反応槽3内における試薬間の接触を促進するために、少量の水を添加する。この少量は、例えば、反応槽3内に導入される水8の総量の10%〜30%である。
【0065】
この第一の混合物を均質化し、化学的処理に理想的な温度(45〜130℃の温度)に達するまで加熱する。
【0066】
次いで、添加される水8の総体積のうちの水8の残量および酸性試薬7を、第一の混合物に同時に注入し、第二の混合物を得る。
【0067】
常にまたは断続的に均質化しながら、反応槽3の内部における化学的処理を5分〜3時間、持続することが有利である。好ましくは、反応槽3内における反応を45分間、実施する。
【0068】
反応槽3内における反応の後に、第二の混合物を、ポンプ9によって熱交換器10へ移動させる。熱交換器10は、プレート型であってもよいし、コイル型であってもよいし、スパイラル型であってもよい。
【0069】
この混合物を熱交換器10へ移動させる目的は、機械的処理の間にこの混合物が液体の状態を十分に維持するように、機械的処理を受ける前にこの混合物の温度を上昇させるためである。
【0070】
混合物を、機械的処理の前に、少なくとも80℃の温度にすることが好ましい。
【0071】
次いで、ポンプ9によって、反応混合物は機械的分離手段(遠心デバイス11など)へ到達させられる。
【0072】
この機械的分離の目的は、化学的処理の間に無機物が除去された脂肪相を、水相および沈殿した残留物から分離することである。
【0073】
この分離は、2相または3相の遠心デバイスまたは絞り器を用いて、促進的なデカンテーションを行うことによって実行されてもよいし、単一の槽、または複合式もしくは単式の沈殿槽において重力によりデカンテーションすることによって実行されてもよいし、20μm〜1mm(好ましくは50μm〜1mm)のメッシュを用いた、加圧式または非加圧式の熱時表面濾過によって実行されてもよい。
【0074】
次いで、水相12および沈殿した残留物13を、それぞれの特性に従って、最良の代替方法を用いて加工または除去する。
【0075】
このようにして精製された脂肪相は、遠心デバイス11の出口において、第二の濾過器14を通過する。このように実施される濾過は、20μm〜1mm(好ましくは50μm〜1mm)から構成されるメッシュを用いた、加圧式または非加圧式の熱時表面濾過であってもよい。
【0076】
次いで、精製し、濾過した脂肪相を、ポンプ15によって貯蔵槽16へ運搬する。貯蔵層16は、反応槽3と類似しており、反応槽3に設けられたチューブと類似のチューブ17によって加熱されるが、攪拌デバイスを備えていない。
【0077】
貯蔵槽16の底部に堆積した残留物18があれば、この残留物18を、例えば第一の濾過器2から得られた固体残留物についての同じ代替方法を用いて除去する。
【0078】
精製し、貯蔵した脂肪相は、ポンプ19によって、価格の安定化施設20へ供給してもよい。
【0079】
例えば、ポンプ9、15および19は、回転式の排水ポンプであるか、または別の型の排水ポンプである。
【0080】
また、脂肪相を、遠心デバイス11の出口または第二の濾過器14の出口において、価格の安定化施設20(図示しない)へ運搬してもよい。
【0081】
〔実施例1〕
本実施例において、本発明の方法は、重力によるデカンテーション、促進的なデカンテーション、または遠心の何れかによる機械的処理を用いて実施される。
【0082】
実施された試験および得られた結果を表1に要約する。
【0083】
脂肪画分の種々のサンプルを、1.6%の体積比の酸性試薬で化学的に処理し、次いで、重力によるデカンテーションを24時間、実施することによって分離するか、促進的なデカンテーションを実施することによって分離した。
【0084】
【表1】

【0085】
両方のデカンテーションの様式において、脂肪画分のサンプル中の無機物の量は、半分未満になる。
【0086】
ほぼ同一の初期特性を有する脂肪画分に関する限り、操作の平均収率は、重力によるデカンテーションのモードを用いるよりも、促進的なデカンテーションのモードを用いる方が良好である。
【0087】
〔実施例2〕
本実施例において、本発明の方法は、種々の試薬を添加するシークエンスによって実行される化学的処理を実施し、次いで、促進的なデカンテーションに基づく機械的処理を実施することによって実施される。
【0088】
4つの異なる注入シークエンスに従って加工された、種々の脂肪画分のサンプルについて得られた結果を表2に要約する。
【0089】
シークエンス1:脂肪画分を導入し、次いで水/酸性試薬の混合物を同時に導入する;
シークケンス2:脂肪画分を導入し、次いで水を導入し、次いで酸性試薬を導入する;
シークケンス3:水/酸性試薬の混合物を導入し、次いで脂肪画分を導入する;
シークケンス4:脂肪画分を導入し、次いで水の一部(注入する水の総量の10〜30%)を導入し、次いで、水の残余および酸性試薬を同時に導入する。
【0090】
【表2】

【0091】
注入シークエンスがどのようなものであれ、脂肪画分の無機物は除去され、高い反応収率(>85%)と、目標とする灰の割合(無水ベースで≦0.1%)とが達成される。
【0092】
品質の近い脂肪画分サンプルに関しては、注入シーケンス4が最良に作動した。事実のところ、注入シーケンス4は、最良の平均収率/平均MM比を示した。
【0093】
これらの注入シーケンスは徹底したものではない。具体的には、シーケンス4の水に関し、酸性試薬の注入は2回実施されてもよい。
【0094】
本発明の方法は、燃料として使用するために脂肪廃棄物を加工する分野に使用され得るか、または脂質化学の分野に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の方法を実施するために適合された装置の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪廃棄物を加工するための方法であって、
脂肪廃棄物(1,1’)の化学的処理、および該化学的処理の後に実施する機械的処理を包含し、
該化学的処理において、該脂肪廃棄物(1,1’)を水(8)および酸性試薬(7)に混合して、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の族に属する無機元素を含まない、無機物が除去された脂肪相と、沈殿物としての固体残留物を含み得る水相とを得、
該機械的処理において、得られた混合物を、デカンテーションまたは濾過による機械的処理(11)に供して、該無機物が除去された脂肪相を該水相から分離する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記脂肪廃棄物(1,1’)が、農業食品または化粧品産業からの廃棄物、特にこれらをデカンテーションする施設からの廃棄物、飲食店および食品調製設備からの廃棄物、スキミングタンクおよびデグリーサーなどの、都市廃水または工業廃水を前処理する施設からの廃棄物、あるいは解体業者からの廃棄物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記脂肪廃棄物(1,1’)が、主として、脂肪画分、水溶性画分および残留物画分から構成されており、無水ベースで少なくとも90%の有機物と無水ベースで10%以下の灰とを含む脂肪画分のみを保持するように予め加工される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記脂肪廃棄物(1,1’)、水(8)および酸性試薬(7)を、45〜130℃、好ましくは50〜90℃の温度で混合する、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記脂肪廃棄物(1,1’)、水(8)および酸性試薬(7)を、上記混合物を均質化するために攪拌(4)しながら、混合する、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記脂肪廃棄物(1,1’)と混合される水(8)の量は、該脂肪廃棄物(1,1’)の体積の1/10〜1/2であり、好ましくは該脂肪廃棄物(1,1’)の体積の約1/4である、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記脂肪廃棄物(1,1’)と混合される酸性試薬(7)の量は、該脂肪廃棄物(1,1’)の体積の0.5〜10%であり、好ましくは該脂肪廃棄物(1,1’)の体積の0.5〜4%である、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記脂肪廃棄物(1,1’)と混合される酸性試薬(7)は、式HCl、式HPO、式HNOまたは式HSOなどの無機酸、およびpKaが水性媒体中の脂肪廃棄物のpHよりも低い有機酸からなる群より選択される少なくとも1つの酸から構成され、
例えば、水性媒体中においてpHが約4.5である脂肪廃棄物についての該有機酸が、ギ酸HOOHである、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記脂肪廃棄物(1,1’)の化学的処理は、主として、該脂肪廃棄物(1,1’)と混合されるべき水(8)の総量の10〜30%の少量の水(8)に、該脂肪廃棄物(1,1’)を最初に混合して、この混合物が均質化され、45〜130℃の温度にまで加熱し、次いで、該脂肪廃棄物(1,1’)と混合されるべき水(8)の総量の残余および酸性試薬(7)を、該混合物に同時に添加することからなる、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記脂肪廃棄物(1,1’)を、常にまたは断続的に攪拌(4)しながら、5分〜3時間の反応時間、好ましくは約45分の反応時間にわたって、水(8)および酸性試薬(7)に混合する、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記化学的処理の後に得られた上記混合物を、上記機械的処理を実施するために加熱する、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−89080(P2010−89080A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−204636(P2009−204636)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(509250098)
【氏名又は名称原語表記】VEOLIA PROPRETE
【住所又は居所原語表記】163−169 Avenue Georges Clemenceau,92000 Nanterre,France
【Fターム(参考)】