説明

脂肪族ケトンの接触水素化用白金固定炭素触媒及びそれを使用する脂肪族ケトンからの脂肪族第2級アルコールの製造方法

【課題】常圧下、水素存在下で脂肪族ケトンの接触水素化による脂肪族第2級アルコールを製造する方法を提供する。
【解決手段】白金固定炭素粒子からなり、白金含有率が7重量%以上である触媒の存在下で、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンを接触水素化し、脂肪族第2級アルコールに転換する反応に用いられる白金固定炭素触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ケトンの接触水素化による脂肪族第2級アルコールの製造に有用な白金固定炭素触媒、及び該触媒を使用して常圧下、水素存在下で脂肪族ケトンの接触水素化による脂肪族第2級アルコールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素の存在下で触媒を用いた脂肪族ケトンの接触水素化による脂肪族第2級アルコールの製造方法は知られている。例えば、90 kgf/cm2の圧力の水素の存在下でルテニウム炭素触媒を用いてアセトンを接触水素化してイソプロピルアルコールを製造した例(特許文献1)、3.5〜7 kgf/cm2の圧力の水素の存在下でパラジウム炭素触媒を用いてヘキサフルオロアセトンを接触水素化して1,1,1−3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールを製造した例(特許文献2)などが知られている。これらの例では、加圧した水素を存在させなければならないという不利がある。
【0003】
また、常圧の水素存在下で触媒を用いた脂肪族ケトンの接触水素化による脂肪族第2級アルコールの製造方法が知られている。例えば、常圧の水素の存在下でスポンジニッケル触媒を用いて脂肪族ケトンを接触水素化して脂肪族第2級アルコールを製造した例(非特許文献1)などが知られている。この例では、自然発火性のスポンジニッケルを使用しなければならず取り扱いに危険性を伴う他、0.72 g(10 mmol)の2-ブタノンに対して0.5 g (反応基に対して69重量%)の触媒金属を用いる必要があり、触媒の使用量が多い、という不利を有している。
【0004】
また、常圧の水素存在下で白金触媒を用いた接触水素化による脂肪族第2級アルコールの製造方法が知られている。例えば、常圧の水素の存在下で酸化白金(アダムス)触媒を用いて脂肪族ケトンを接触水素化して脂肪族第2級アルコールを製造した例(非特許文献2)などが知られている。この例では、反応系に塩酸を加える必要があり、その腐食性のためにステンレスなどの金属製の反応容器を使用できない他、基質重量の5重量%の触媒金属を用いる必要があり前記のスポンジニッケルほどではないにしても触媒の使用量が多い、という欠点を有している。
【0005】
また、常圧の水素存在下で反応系に塩酸などの腐食性物質を添加することなく白金触媒を用いた接触水素化による脂肪族第2級アルコールの製造方法が知られている。例えば、常圧の水素の存在下で酸化白金(アダムス)触媒を用いてアセト酢酸エチルを接触水素化して2-ヒドロキシ酪酸エチルを製造した例(非特許文献3)などが知られている。この例では、適用できる基質がカルボニル基の水素化を受けやすいアセト酢酸エチルなどのベータケトエステルに限られ、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンを接触水素化して第2級アルコールを製造する方法としては適用できないという不利がある。
【0006】
【特許文献1】特開平2−279643
【特許文献2】特公昭61−25694
【非特許文献1】S. Nishimura, “Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Syntheses”, p.186 (2001) John Wiley & Sons Inc.
【非特許文献2】S. Nishimura, “Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Syntheses”, p.189 (2001) John Wiley & Sons Inc.
【非特許文献3】P. Rylander, “Catalytic Hydrogenation in Organic Syntheses”, p.86 (1979) Academic Press
【0007】
そこで、常圧下、水素存在下で塩酸などの腐食性物質やスポンジニッケルなどの危険物質を用いることなく、少ない触媒金属の使用量にて、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンを接触水素化して脂肪族第2級アルコールを製造する方法の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、常圧下水素の存在下で、塩酸などの腐食性物質やスポンジニッケルなどの危険物質を用いることなく、少ない触媒金属の使用量にて、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンを接触水素化することによる脂肪族第2級アルコールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、常圧下、水素の存在下での脂肪族ケトンの接触水素化による脂肪族第2級アルコールの製造について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、炭素粒子と、該炭素粒子に固定された白金とを有してなる触媒にして、前記白金の該触媒中の含有率が7重量%以上である、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンの接触水素化により脂肪族第2級アルコールに転換する反応に用いられる白金固定炭素触媒を提供する。
【0011】
本発明は、第二に、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンの該カルボニル基を水素化して脂肪族第2級アルコールを製造する方法であって、
前記の脂肪族ケトンを触媒の存在下において、常圧下、水素と湿式で接触させること、
前記触媒として、炭素粒子と、該炭素粒子に固定された白金とを有してなる触媒にして、該白金の該触媒中の含有率が7重量%以上であるものを用いること、
を特徴とする上記脂肪族第2級アルコールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の脂肪族ケトン接触水素化用白金固定炭素触媒を用いる脂肪族第2級アルコールの製造方法によれば、常圧下、水素存在下で、少ない触媒金属の使用量にて、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンを接触水素化して、高収率にて脂肪族第2級アルコールを製造することができる。この方法においては、塩酸などの腐食性物質やスポンジニッケルなどの危険物質を用いる必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0014】
<白金固定炭素触媒>
本発明において用いられる白金固定炭素触媒は、白金含有率が7重量%以上、好ましくは7〜50重量%、より好ましくは8〜20重量%となるように白金を炭素粒子に固定したものである。
【0015】
−担体−
前記炭素粒子は、前記白金の担体であり、その特に好適な例をしては活性炭が挙げられる。
【0016】
炭素粒子の比表面積は特に制限するものではないが、700〜2000 m2/gが好ましく、900〜1500 m2/gが特に好ましい。比表面積はBET法で測定した値である。
【0017】
また、炭素粒子の形状は特に制限するものではないが、粉末状または顆粒状が好適であり、粉末状が特に好適である。
【0018】
−触媒の調製方法(炭素粒子への白金の固定)−
炭素粒子への白金の固定は、該炭素粒子担体に白金を含む溶液を接触させることにより行うことができる。
【0019】
具体的には、本発明で用いる白金固定炭素触媒は、例えば、白金化合物を溶媒に溶解し、当該溶液中に炭素担体を投入し、白金化合物を該炭素担体に吸着または含浸することにより行う。白金化合物がヘキサクロロ白金(IV)酸など水溶性の場合には水を溶媒として用いることができる。また、白金化合物が水溶性で、中和によって水酸化物などとして固定できる場合には中和処理を実施してもよい。このような例としては、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸のアルカリ性溶液を塩酸で中和する例、テトラクロロ白金(II)酸を水酸化ナトリムで中和する例などが挙げられる。白金化合物が、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金(II)など非水溶性の場合には、当該白金化合物を溶解する有機溶媒を用いて炭素担体に吸着または含浸することができる。白金を吸着または含浸などの方法で担体に固定した触媒は、必要に応じて還元処理を実施してもよい。湿式で還元する場合には、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸などの還元剤のほか、ガス状水素を用いることができる。乾式で還元する場合にはガス状水素を用いて行うが、水素ガスを窒素等の不活性ガスで希釈して使用することも可能である。こうして、白金が炭素担体に固定された白金固定炭素触媒が得られる。
【0020】
触媒調製に用いる溶媒は、白金の化合物を溶解するものであれば特に制限されないが、水溶性の白金化合物を用いる場合には水が好ましく、非水溶性で有機溶媒に可溶な白金化合物の場合には、エタノール、アセトン、クロロホルム等の有機溶媒であって該白金化合物を溶解するものが好適である。
【0021】
上記の白金化合物としては、触媒調製工程に使用する溶媒に可溶性であれば特に限定されないが、硝酸白金(IV)、硫酸白金(IV)、テトラアンミン白金(II)塩化物、テトラアンミン白金(II)臭化物、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、ヘキサクロロ白金(IV)酸、テトラクロロ白金酸(II)、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸(2−ヒドロキシエチルアンモニウム)、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、ジニトロジアンミン白金(II)アンモニア水溶液等の水溶性化合物の他、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二白金(0)等の有機溶媒に可溶な錯体が使用することができる。中でも、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、ヘキサクロロ白金(IV)酸、テトラクロロ白金酸(II)、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸(2−ヒドロキシエチルアンモニウム)、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金(II)が好ましい。
【0022】
本発明に用いられる白金固定炭素触媒は、例えば、商品名SGH−10MR(エヌイーケムキャット株式会社製)で入手することもできる。
【0023】
<脂肪族ケトンの接触水素化による脂肪族第2級アルコールの製造方法>
本発明によれば、上記の白金固定炭素触媒の存在下、湿式で、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンを、常圧下、水素と接触させることにより、当該カルボニル基を水酸基へ変成して脂肪族第2級アルコールを製造することができる。ここで、「湿式で」とは、通常、「溶媒の存在下で」を意味し、好ましくは「溶媒中で」を意味する。
【0024】
本発明の方法において、基質として用いられる、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンとしては、下記一般式(I):
【0025】
【化1】


(I)
(式中、R1及びR2は、異なっていても同じでもよい一価脂肪族炭化水素基を表し、相互に結合して一体化して2価の脂肪族炭化水素基を形成してもよく、該一価炭化水素基の炭素原子に結合している1つ以上の水素原子がハロゲン原子および/または水酸基で置換されていてもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
該一般式(I)で表される脂肪族ケトンとしては、具体的には、例えば、アセトン、2−ブタノン、4−メチルブタン−2−オン、2−デカノン、4−デカノン、1,1,1−
トリフルオロアセトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。
【0026】
上記一般式(I)で表される脂肪族ケトンに本発明の方法を適用することにより、下記一般式(II):
【0027】
【化2】


(II)
(式中、R1及びR2は、前記と同じ意味を表す)
で表される脂肪族第2アルコールが得られる。
【0028】
該一般式(II)で表される脂肪族第2アルコールとしては、具体的には、例えば、2−プロパノール、2−ブタノール、4−メチル−2−ブタノール、2−デカノール、4−デカノール、1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノール、1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0029】
例えば、脂肪族ケトン化合物である2−デカノンを、白金固定炭素触媒を用いてシクロヘキサン溶媒中で常圧下、水素を接触させることにより、常温の条件で3時間反応させることにより、脂肪族アルコールである2−デカノールを2−デカノン基準の収率100%で得ることができる。
【0030】
上記一般式(I)および(II)において、R1およびR2は、脂肪族炭化水素基であり、異なっていても同じでもよく、相互に結合して一体化して2価の脂肪族炭化水素基を形成してもよく、炭素原子に結合している1つ以上の水素原子がハロゲン原子および/または水酸基で置換されていてもよい。R1およびR2が結合しないで独立した例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基またはω−シクロアルキルアルキル基であり、炭素原子に結合している1つ以上の水素原子がハロゲン原子および/または水酸基で置換されていてもよく、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素原子数1〜16のアルキル基;2−シクロペンチルエチル基、3−シクロヘキシルプロピル基である。
【0031】
また、R1およびR2が結合して一体化して形成される2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、1,3−プロパンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,11−ウンデカンジイル基、メチルテトラデカン−1,14−ジイル基、1,2,2−トリメチル−3−メチレン−シクロペンタン−1−イル基、ビシクロ−[3,3,1]−ノナン−3,7−ジイル基などが挙げられる。
【0032】
R1およびR2が結合して一体化して2価の脂肪族炭化水素基を形成すると、一般式(I)においてR1およびR2が結合した炭素原子も環構成員として含む、脂肪族の環が形成され、一般式(I)の化合物は脂環式ケトンとなる。このような脂環式ケトンの例としては、炭素原子数3〜16のシクロアルカノン、炭素原子数6〜16のビシクロアルカノン、炭素原子数8〜16のトリシクロアルカノンであり、炭素原子に結合した1つ以上の水素が炭素原子数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子および/または水酸基で置換されていても差し支えない。好ましくは、シクロブタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロドデカノン、メチルシクロペンタデカノン、カンファー、アダマンタノンである。
【0033】
本発明で用いる触媒は、反応物である脂肪族ケトン化合物に対して白金金属として、通常、0.001〜10重量%の間で用いられ、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜2重量%の範囲で用いられる。また反応の際に、白金を固定していない活性炭、アルミナまたは珪藻土などの粒子を混在させても差し支えない。
【0034】
接触水素化反応に用いる溶媒は、特に制限されないが、好ましくは、水;メタノール、エタノール、2−プロパノールなどの炭素原子数1〜6のアルカノール;炭素原子数5〜10のアルカン、炭素原子数5〜10のシクロアルカン;クロロホルム、ジクロロメタンなどの炭素原子数1〜2の塩素化炭化水素;またはこれらの組み合わせであり、2−プロパノール、シクロヘキサン、クロロホルムが特に好ましい。
【0035】
この接触水素化反応は、常圧下、水素の存在下で行われる。水素は純粋な水素ガスでもよいが、必要に応じて窒素などの不活性気体で水素を希釈した混合ガスでも差し支えない。通常、0〜40℃の温度領域で1〜48時間程度で反応が行われる。反応器に加熱や冷却などの操作を行わない室温での操作でも差し支えない。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例1>
(10重量%白金固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成)
2−デカノン78 mg (0.5 mmol)をシクロヘキサン2 mlに溶解させた。得られた溶液に10%白金固定炭素粉末触媒(商品名:SGH−10MR、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を白金金属として反応基質の1重量%相当量加え、バルーンによる水素雰囲気下、室温25 ℃で3時間攪拌して反応させた。その後、触媒をろ過分離し、1H-NMRにて得られた生成物を分析したところ、2−デカノールであった。投入した2−デカノンに対する2−デカノールの収率は100%であった。
【0038】
<実施例2>
(10重量%白金固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成)
実施例1において、シクロヘキサンの代わりに2−プロパノール2mlを用いた以外は実施例1と同様にして、2−デカノールを得た。収率は98%であった。
【0039】
<実施例3>
(10重量%白金固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成)
実施例1において、シクロヘキサンの代わりにクロロホルム2mlを用いた以外は実施例1と同様にして、2−デカノールを得た。収率は93%であった。
【0040】
<実施例4>
(10重量%白金固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成)
実施例1において、反応時間を3時間の代りに1時間とした以外は実施例1と同様にして、2−デカノールを得た。収率は98%であった。
【0041】
<実施例5>
(10重量%白金固定炭素触媒を用いた4−デカノンの接触水素化による4−デカノールの合成)
実施例1において、2−デカノン78 mg (0.5 mmol)の代りに4−デカノン78 mg (0.5 mmol)を使用した以外は実施例1と同様にして、4−デカノールを得た。収率は98%であった。
【0042】
<実施例6>
(10重量%白金固定炭素触媒を用いた4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノンの接触水素化による4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノールの合成)
実施例1において、2−デカノン78 mg (0.5 mmol)の代わりに4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノン77 mg (0.5 mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノールを得た。収率は90%であった。
【0043】
<実施例7>
(10重量%白金固定炭素触媒を用いた2−アダマンタノンの接触水素化による2−アダマンタノールの合成)
実施例1において、2−デカノン78 mg (0.5 mmol)の代わりに2−アダマンタノン75 mg (0.5 mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして、2−アダマンタノールを得た。収率は90%であった。
【0044】
<比較例1>
(5重量%白金固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成
実施例1において、10重量%白金固定炭素触媒の代りに5重量%白金固定炭素触媒(商品名:5%Ptカーボン粉末Kタイプ、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にして2−デカノンの接触水素化により2−デカノールを生成させた。投入した2−デカノンに対する2−デカノールの収率は74%であった。
【0045】
<比較例2>
(5重量%白金固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成
実施例1において、10重量%白金固定炭素触媒の代りに5重量%白金固定炭素粉末触媒(商品名:プラチナム オン カーボン(5wt% サポート アクティベイテッドカーボン)、アルドリッチ製)を使用した以外は、実施例1と同様にして2−デカノンの接触水素化により2−デカノールを生成させた。投入した2−デカノンに対する2−デカノールの収率は77%であった。
【0046】
<比較例3>
(10重量%ロジウム固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成
実施例1において、10重量%白金固定炭素触媒の代りに10重量%ロジウム固定炭素粉末触媒(商品名:10%Rhカーボン粉末Kタイプ、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を使用し、ロジウム金属として反応基質の1重量%相当量加えた以外は、実施例1と同様にして2−デカノンの接触水素化により2−デカノールを生成させた。投入した2−デカノンに対する2−デカノールの収率は21%であった。
【0047】
<比較例4>
(10重量%パラジウム固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成
実施例1において、10重量%白金固定炭素触媒の代りに10重量%パラジウム固定炭素粉末触媒(商品名:10%Pdカーボン粉末Kタイプ、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を使用し、パラジウム金属として反応基質の1重量%相当量加えた以外は、実施例1と同様にして2−デカノンの接触水素化を試み、生成物の分析を行った。投入した2−デカノンに対する2−デカノールの収率は0%であった。
【0048】
<比較例5>
(10重量%ルテニウム固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成
実施例1において、10重量%白金固定炭素触媒の代りに10重量%ルテニウム固定炭素粉末触媒(商品名:10%Ruカーボン粉末Kタイプ、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を使用し、ルテニウム金属として反応基質の1重量%相当量加えた以外は、実施例1と同様にして2−デカノンの接触水素化を試み、生成物の分析を行った。投入した2−デカノンに対する2−デカノールの収率は0%であった。
【0049】
<比較例6>
(10重量%イリジウム固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成
実施例1において、10重量%白金固定炭素触媒の代りに10重量%イリジウム固定炭素粉末触媒(商品名:10%Irカーボン粉末Kタイプ、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を使用し、イリジウム金属として反応基質の1重量%相当量加えた以外は、実施例1と同様にして2−デカノンの接触水素化を試み、生成物の分析を行った。投入した2−デカノンに対する2−デカノールの収率は0%であった。
【0050】
<比較例7>
(10重量%金固定炭素触媒を用いた2−デカノンの接触水素化による2−デカノールの合成
実施例1において、10重量%白金固定炭素触媒の代りに10重量%金固定炭素粉末触媒(商品名:10%Auカーボン粉末Kタイプ、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を金金属として反応基質の1重量%相当量加えた以外は、実施例1と同様にして2−デカノンの接触水素化を試み、生成物の分析を行った。投入した2−デカノンに対する2−デカノールの収率は0%であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の脂肪族第2級アルコールの製造方法は、医薬中間体製造や機能性材料製造などのファインケミカル産業や石油化学産業での研究、開発及び製造において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粒子と、該炭素粒子に固定された白金とを有してなる触媒にして、前記白金の該触媒中の含有率が7重量%以上である、カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンの接触水素化により脂肪族第2級アルコールに転換する反応に用いられる白金炭素触媒。
【請求項2】
前記白金炭素触媒の白金含有率が7〜50重量%である請求項1に係る白金炭素触媒。
【請求項3】
担体に使用される前記炭素粒子のBET法による比表面積が700〜2000 m2/gである請求項1または2に係る白金炭素触媒。
【請求項4】
前記脂肪族ケトンが下記一般式(I):
【化1】

(I)
(式中、R1及びR2は、異なっていても同じでもよい一価脂肪族炭化水素基を表し、相互に結合して一体化して2価の脂肪族炭化水素基を形成してもよく、該一価炭化水素基の炭素原子に結合している1つ以上の水素原子がハロゲン原子および/または水酸基で置換されていてもよい。)
で表される化合物であり、
前記脂肪族第2級アルコールが下記一般式(II):
【化2】

(II)
(式中、R1及びR2は、前記と同じ意味を表す)
で表される化合物である請求項1〜3に係る白金炭素触媒。
【請求項5】
カルボニル基をただ一つ有する脂肪族ケトンの該カルボニル基を水素化して脂肪族第2級アルコールを製造する方法であって、
前記の脂肪族ケトンを触媒の存在下において常圧下で水素と湿式で接触させること、
前記触媒として、炭素粒子と、該炭素粒子に固定された白金とを有してなる触媒にして、該白金の該触媒中の含有率が7重量%以上であるものを用いること、
を特徴とする上記脂肪族第2級アルコールの製造方法。
【請求項6】
前記脂肪族ケトンが請求項4に記載の一般式(I)で表される化合物であり、
前記脂肪族第2級アルコールが請求項4に記載の一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に係る脂肪族第2級アルコールの製造方法。
【請求項7】
前記白金炭素触媒の白金含有率が7〜50重量%である請求項5または6に係る脂肪族第2級アルコールの製造方法。
【請求項8】
反応基質である前記脂肪族ケトンに対する前記触媒中の白金分の割合が0.001〜10重量%である請求項5〜7のいずれか1項に係る脂肪族第2級アルコールの製造方法。
【請求項9】
前記の脂肪族ケトンと水素との接触が0〜40℃で行われる請求項5〜8のいずれか1項に係る脂肪族第2級アルコールの製造方法。

【公開番号】特開2009−207976(P2009−207976A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52677(P2008−52677)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000228198)エヌ・イーケムキャット株式会社 (87)
【Fターム(参考)】