説明

脂肪族ポリエステルからなるフィルムおよびシート

【課題】 酸素バリアー性に優れた脂肪族ポリエステルを含んでなるフィルム、シートおよび成形体に関する。
【解決手段】 MFRが0.1から50である脂肪族ジカルボン酸成分および、脂肪族グリコール成分とから得られる脂肪族ポリエステルと融点が120℃以上であるポリ乳酸を含んでなるフィルム、シートおよび成形品に関する。前記脂肪族ポリエステルが炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分および、炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分から得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性または酸素バリアー性に優れた脂肪族ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)を含んでなるフィルムおよびシート、成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ポリエステルは一般に生分解性が認められており、その特徴を生かして各種容器、シートやフィルムに成形加工し、包装材料として使用することが期待されている。
【0003】
なお、本願でいう脂肪族ポリエステルとは、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ジオール・ジカルボン酸からの重縮合物などの総称のことを意味する。
【0004】
しかしながら、従来の多くの脂肪族ポリエステルは酸素透過量が大きく包装材料に利用した場合、内容物の保存性の悪さが指摘されていた。これに対して本発明者らは、かねてから研究を重ね、酸素透過量の小さい脂肪族ポリエステルを提案した(特許文献1参照。)。この提案により脂肪族ポリエステルの酸素バリアー性は大幅に改善されたが、さらなる酸素バリアー性の改良が望まれていた。
【0005】
一方、石油枯渇対策と二酸化炭素の増加による地球温暖化防止のために植物を原料とするプラスチックが開発されている。その代表的なものとしてポリ乳酸があげられる。ポリ乳酸は熱可塑性がありフィルム・シートなどにも応用がはかられているが、酸素バリアー性が劣っており食品容器や包装材料への利用が十分とは言えない。
【0006】
さらに酸素バリアー性を改善するために各種添加剤や他の樹脂とのコンパウンド、コーティングなどが試みられているが、本来、ポリ乳酸の有している優れた透明性を犠牲にしていた。
【0007】
一方、従来から利用されている植物を原料とするフィルムにセロハンがあげられる。セロハンはガスバリア性が高く、ひねり特性、易引き裂き性に優れ透明性も高い。また、生分解性を有し、焼却されても有毒ガスなども発生しないなど環境に優しい素材といえる。これらの理由からかつては広く一般に使われていたセロハンも、経済性に優れる石油由来のプラスチックフィルムへの代替が進んでいる。
【0008】
環境に優しい生分解性フィルムでセロハンの持つ特性を満足し経済性にもすぐれるセロハン代替フィルムが望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開2000−204142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来の脂肪族ポリエステルの問題点を解決し、酸素バリアー性に優れた新規で有用な脂肪族ポリエステルを含んでなるフィルムおよびシート、成形品を提供することを目的とする。
【0011】
さらに透明性を維持しつつ、酸素バリアー性に優れた新規で有用な脂肪族ポリエステルを含んでなるフィルムおよびシート、成形品を提供することを目的とする。
【0012】
さらにセロハンの持つ特性を満足し経済性にもすぐれるセロハン代替フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、MFRが0.1から50である脂肪族ジカルボン酸成分および、脂肪族グリコール成分とから得られる脂肪族ポリエステル(A)と融点が120℃以上であるポリ乳酸(B)を含んでなるフィルムまたはシートを開発することにより上記の目的を達成した。
【0014】
すなわち本発明は、MFRが0.1から50である脂肪族ジカルボン酸成分および、脂肪族グリコール成分とから得られる脂肪族ポリエステル(A)と融点が120℃以上であるポリ乳酸(B)を含んでなるフィルムまたはシートに関する。
【0015】
前記フィルムまたはシートから成形された成形品に関する。
【0016】
前記脂肪族ポリエステル(A)が、炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分および、炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分とから得られる脂肪族ポリエステル(A)であることが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル(A)が、ポリエチレンサクシネートを含んでなる脂肪族ポリエステル(A)であることが好ましい。
【0017】
前記フィルムまたはシートのヘーズ値が、15以下であり、または酸素透過係数が10cm3・mm/m2・day・atm以下であることが好ましい。
前記フィルムまたはシートのひねり性試験におけるひねり指数が0から360であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の成形体は、酸素バリアー性および生分解性に優れ、透明性等にも優れている。したがって、本発明で得られる成形体は、各種容器、シートやフィルムに成形加工し、包装材料等に有効に使用でき、またセロハン代替フィルムとしても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に用いる肪族ポリエステル(A)を得るには、イ)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールを重縮合する方法、ロ)環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方法が挙げられる。
【0020】
イ)の方法で用いられる多塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸あるいはそれらのエステル等が挙げられ、グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール等が挙げられる。また、グリコール成分の一部としてポリオキシアルキレングリコールを使用することも可能であり、例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールおよびこれらの共重合体が例示される。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮するとコハク酸とエチレングリコール及び/またはコハク酸と1,4ーブタンジオールの組合せが好ましく、さらにコハク酸とエチレングリコールの組合せが好ましい。脂肪族ポリエステル(A)の製造に際しては多塩基酸(あるいはそのエステル)成分およびグリコール成分の全量を初期混合し反応させてもよく、または反応の進行にともなって分割して添加してもさしつかえない。重縮合反応としては通常のエステル交換法またはエステル化法さらには両方の併用によっても可能であり、また必要により反応容器内を加圧または減圧にすることにより重合度を上げることができる。
【0021】
ロ)の方法で用いられる環状酸無水物としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。これらのうちで、得られる脂肪族ポリエステル(A)の融点、生分解性、経済性を考慮すると無水コハク酸とエチレンオキシドの組合せが好ましい。開環重合は公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
【0022】
イ)、ロ)のいずれの方法によって得られた脂肪族ポリエステル(A)も数平均分子量が10000よりも低い場合、さらにエステル交換反応で高分子量化しても良い。イソシアネート化合物のようなカップリング剤で高分子量化することもできる。
【0023】
融点が120℃以上であるポリ乳酸(B)を得るには、モノマーである乳酸の光学純度を一定以上にする必要がある。光学純度が高いほど融点の高いポリ乳酸が得られ、本発明に好適なポリ乳酸(B)となる。本発明のポリ乳酸(B)の融点は120℃以上であるが、好ましくは140℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。
【0024】
ポリ乳酸(B)の重合方法としては、乳酸を重縮合する方法と乳酸の環状二量体であるラクチドを開環重合する方法が挙げられる。また、重合後、イソシアネート化合物のようなカップリング剤で高分子量化することもできる。
【0025】
本発明に用いる脂肪族ポリエステル(A)は、MFRが0.1から50である脂肪族ジカルボン酸成分および、脂肪族グリコール成分とから得られるものであれば特に制限はなく、単独で使用しても良いし、2種以上の脂肪族ポリエステルを組み合わせて使用しても良い。さらに酸素バリアー性をより良くするために、公知のバリヤー性コーティング液を脂肪族ポリエステル(A)にコートすることもできる。バリヤー性コーティング液の例としては、ポリ塩化ビニリデンのラテックス、ポリ塩化ビニリデンの有機溶剤溶液、ポリビニールアルコール水溶液などがあげられる。また、脂肪族ポリエステル(A)に各種金属や合金、さらにこれらの酸化物を蒸着することにより酸素バリアー性を向上する方法もあげられる。例示すると、アルミ蒸着、ケイ素酸化物などのセラミック蒸着などがあげられる。
【0026】
実施形態としては、生分解性の観点から脂肪族ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)からなる成形体、脂肪族ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)に各種金属や合金、さらにこれらの酸化物を蒸着された成形体が好ましい。
【0027】
本発明に用いる脂肪族ポリエステル(A)の数平均分子量は30000〜200000が好ましく、さらに好ましくは40000〜150000、さらに好ましくは50000〜100000である。数平均分子量が30000以下になると脆かったり、強度が不十分となり成形体として利用できない。数平均分子量が200000以上になると必要以上に溶融粘度が高くなり成形加工が困難になる。
【0028】
本発明に用いるポリ乳酸(B)の数平均分子量は30000〜500000が好ましく、さらに好ましくは40000〜400000、さらに好ましくは50000〜200000である。数平均分子量が30000以下になると脆かったり、強度が不十分となり成形体として利用できない。数平均分子量が500000以上になると必要以上に溶融粘度が高くなり成形加工が困難になる。
【0029】
本発明に用いる脂肪族ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)の混合比率は、脂肪族ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)の組成比(重量比)が95:5〜5:95であり、好ましくは90:10〜10:90、さらに好ましくは85:15〜15:85、さらに好ましくは80:20〜20:80である。
【0030】
本発明に用いる脂肪族ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)を混合するためには、公知の装置を用いることができる。
【0031】
縦型反応装置では、ヘリカルリボン翼や螺旋状変形バッフルの付いた反応釜を挙げることができる。
【0032】
横型反応装置では、変形翼を連ねた撹拌軸を並べて配置した横型1軸或いは2軸混練装置を挙げることができる。
【0033】
また、バッチ式あるいは連続式でも良い。バッチ式としては例えば、マックスブレンド翼式リアクタ(住友重機械工業(株)製)、スーパーブレンド翼式リアクタ(住友重機械工業(株)製)、逆円錐リボン翼式リアクタ(三菱重工業(株)製)、ねじり格子翼式リアクタ((株)日立製作所製)を挙げることができる。連続式では例えばバイボラック(住友重機械工業(株)製)、日立メガネ翼重合機((株)日立製作所製)、日立格子翼重合機((株)日立製作所製)、セルフクリーニング式リアクタ(三菱重工業(株)製)、横型二軸式リアクタ(三菱重工業(株)製)、KRCニーダー((株)栗本鉄工所製)、TEX−K((株)日本製鋼所製)やプラスチックの押出成形あるいは脱揮等に広く用いられている一軸又は二軸の押出機等を挙げることができる。
【0034】
また、これら装置を用いることなく、フィルムやシートにする成形機のホッパーに脂肪族ポリエステルとポリ乳酸を所定比率になるようにペレットの状態で混合投入することで本発明を達成することが出来る。
【0035】
ポリ乳酸の長所は、トウモロコシなどの植物由来原料を使うことが出来、石油枯渇対策と二酸化炭素の増加による地球温暖化防止に有効であること、透明性が優れることがあげられ、欠点は酸素バリアー性が劣っていることである。本発明者らは、長所を残しつつ欠点をなくすべく鋭意研究した結果、特定の脂肪族ポリエステル(A)と特定のポリ乳酸(B)を特定の比率で混合することにより、ポリ乳酸の酸素バリアー性を向上させることのみならず、脂肪族ポリエステルの酸素バリアー性を向上することも達成できたのである。
【0036】
従来の高いバリアー性を有する代表的袋としてアルミラミネート袋が挙げられるが、アルミを使用するため内容物が見えず、またラミネートすることでコスト高になることは避けられなかった。本発明により、一定のバリアー性は有しつつ、透明性と低コストを実現することが出来たのである。
【0037】
本発明で得られるフィルムまたはシートのヘーズ値が、15以下であり、好ましくは10以下である。また、酸素透過係数は10cm3・mm/m2・day・atm以下で、好ましくは5cm3・mm/m2・day・atm以下であり、さらに好ましくは4cm3・mm/m2・day・atm以下である。
【0038】
このように本発明によりポリ乳酸の酸素バリアー性を大幅に改良することが出来、本来酸素バリアー性に優れる脂肪族ポリエステルさえも酸素バリアー性を大幅に改良することが出来たことは驚くべきことである。さらに透明性を維持したままの酸素バリアー性も改良することが出来る。
このような結果に至る理由は、定かではないが脂肪族ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)の混合された状態での結晶構造に依存していると考えられる。従って、フィルムまたはシートに成形するときの成形条件も重要である。
本発明で得られるフィルムまたはシートのひねり性試験におけるひねり指数が0から360であり、好ましくは0から300、さらに好ましくは0から240である。ひねり指数の測定方法については実施例で説明する。
【0039】
本発明のフィルムまたはシートの成形方法は、特に限定されないが、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法、キャスト法、切削法、エマルション法、およびホットプレス法などがある。また、未延伸フィルムの場合はさらに延伸することが好ましい。結晶構造または結晶構造の延伸の点から、好ましくはTダイ法、インフレーション法、カレンダー法が選択され、品質または経済性の点からさらに好ましくはTダイ法、インフレーション法が選択される。
【0040】
脂肪族ポリエステル(A)は温度190℃におけるMFRが0.1〜50である。好ましくは0.1〜20、更に好ましくは0.1〜10であり、50より大きいとインフレーション成形においてバブルが著しく不安定となり、インフレーション成形が困難となり、一方0.1を下回るとダイスを通過時の流れが著しく悪くなり、発熱やダイス出口より流動ムラが生じて良質なフィルムが得られない。
また、T−ダイ成形法においては、50より大きいと両サイドの耳ブレが著しく発生して不安定となり、成形が困難となり、一方0.1を下回るとダイスを通過時の流れが著しく悪くなり、T−ダイの中央部と両サイド部からでてくる樹脂の流出量が大きく異なり(中央部に比し両サイド部が少なくなる。)、厚みが均一にできなくなり、良質なフィルムが得られなくなる。
【0041】
空冷インフレーションフィルムは押出成形方法により樹脂を押出機の中で充分に溶融させて混合したのち樹脂温度を均一にした状態でサーキュラーダイスより均一に押し出して通常の空冷インフレーション方式でブロー比0.5〜6.0程度に膨張させることにより、フィルム厚み10μm〜150μm程度のチューブ状フィルムを得ることができる。特に成形温度の設定が重要であり、押出機のシリンダー及びダイスの温度は120〜250℃、好ましくは130〜220℃であり、さらに好ましくは130〜190℃である。120℃以下では粘度が高すぎて安定したフィルム成形ができない。一方、250℃を越えると樹脂が劣化してゲルや異物が多発して良質のフィルム成形が困難となる。
【0042】
サーキュラーダイスより押し出されたときの雰囲気温度も重要である。サーキュラーダイスより上方1mの雰囲気温度は、マイナス10℃から40℃が好ましく、さらに好ましくはマイナス10℃から30℃、さらに好ましくはマイナス10℃から20℃、さらに好ましくはマイナス10℃から10℃である。40℃より高くなると透明性が低下したり、フィルムの口開きが悪くなり好ましくない。マイナス10℃よりも低くすることは経済的に困難である。
【0043】
また、水冷インフレーションフィルムは樹脂を押出機の中で充分に溶融させて混合した後樹脂温度を均一にした状態でサーキュラーダイスにより均一に押し出して通常の水冷インフレーション方式でブロー比1.0〜4.0程度に膨張させることにより、フィルム厚み10μm〜150μm程度のチューブ状フィルムを得ることができる。特に成形温度の設定が重要であり、押出機のシリンダー及びダイスの温度は120〜250℃、好ましくは130〜220℃であり、さらに好ましくは130〜190℃である。120℃以下では粘度が高すぎて安定したフィルム成形ができない。一方、250℃を越えると樹脂が劣化してゲルや異物が多発して良質のフィルム成形が困難となる。
【0044】
サーキュラーダイスより押し出されたときの水温も重要である。水温は、0℃から30℃が好ましく、さらに好ましくは0℃から20℃、さらに好ましくは0℃から10℃である。30℃より高くなると透明性が低下したり、フィルムの口開きが悪くなり好ましくない。0℃よりも低くすることは経済的に困難である。
さらに、T−ダイフラットフィルムは樹脂組成物を押出機の中で充分に溶融させて混合した後、樹脂温度を均一にした状態でT−ダイより押出し、チルロールで冷却しながらフィルム厚み10μm〜150μm、引き取り速度40〜200m/minでフラットフィルムを得ることができる。特に成形温度の設定が重要であり、押出機のシリンダー及びダイスの温度は120〜250℃、好ましくは130〜220℃であり、さらに好ましくは130〜190℃である。120℃以下では粘度が高すぎて安定したフィルム成形ができない。一方、250℃を越えると樹脂が劣化してゲルや異物が多発して良質のフィルム成形が困難となる。
【0045】
T−ダイより押し出された後の引き取りロール温度も重要である。引き取りロール温度は、マイナス10℃から30℃が好ましく、さらに好ましくはマイナス10℃から20℃、さらに好ましくはマイナス10℃から10℃である。30℃より高くなると透明性が低下したり、ロールへの付着がおこり好ましくない。マイナス10℃よりも低くすることは経済的に困難である。
またホットプレス法は、ペレットを2枚の熱板の間で、圧縮成形機により加圧して製膜する方法である。この時のプレス温度は120〜250℃の範囲であり、プレス圧は10〜200kgf/cm2、また冷却温度は5〜90℃の範囲であることが好ましい。
次に、延伸フィルムを製造する方法について説明する。
延伸は、インフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの既存の延伸フィルムの製造法により行うことができるが、フィルムの配向状態を制御しやすいこと、また、製膜速度を高速にできることから逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸法を行う場合、Tダイから押し出したシートを金属冷却ロール上に密着させ、未延伸フィルムを得、加熱ロールの周速差を用いてフィルム長手方向の延伸を行い、次いでクリップでフィルム両端を把持してテンター内でフィルム幅方向に延伸し、さらにクリップで幅方向に把持した状態で熱処理を行うテンター式逐次二軸延伸法が好ましく用いられる。
【0046】
本発明の成形体の例としては、押出、射出、中空、及び真空成形等の方法によって成形されるシート、フィルム、及び容器などの酸素バリヤー性が要求される成形体があげられる。特に食品用包装材料、電機・電子部品用包装材料などの用途に好適である。
【0047】
本発明成形体には、必要に応じて他の成分、例えば酸化防止剤、結晶核剤、顔料、染料、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、強化材、難燃剤、可塑剤、他の重合体を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、例中の部は重量部を表わす。実施例で実施した評価方法は以下の通りである。結果をまとめて表1に示した。
【0049】
(融点)
DSC装置を用いて測定した。試料約10mgを200℃まで昇温した後−40℃まで急冷し、次いで10℃/分の速度で昇温した時の融解ピークを測定した。ピークトップの温度を融点とした。
DSC装置:セイコーインスツル株式会社 DSC220
(分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いてポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。
GPC装置:東ソー(株)製HLC−8120
使用カラム:東ソー TSKgel superHZ−L ×1本(ガードカラム)+TSKgel superHZM−M×2本
溶媒:クロロホルム
サンプル溶液濃度:0.025wt/vol%
サンプル溶液注入量:10μl
溶媒流速:0.6ml/分
ポンプ、カラム、検出器温度:40℃
(MFR(メルト・フロー・レート))
測定機器は、株式会社テクノ・セブン製のメルトインデクサー L244(商品名)を用い、JIS K 7210に準じて測定した。
荷重:2.16kg
測定温度:190℃
(酸素透過量)
東洋精機製作所製GTRテスターM−C3型を用いた。また、130℃、150kg/cm、2分間の条件で圧縮成形機により所定の厚さのフィルムを作成した。得られたフィルムを所定の大きさに切って、測定雰囲気に充分なじますと同時に減圧することによりフィルム内の揮発分を取り除いて測定に供した。
【0050】
(ヘイズ値)インフレーション成形で得られたフィルムを23℃、相対湿度55%の条件下、日本電色工業製NDH300AにてJIS K7136に準拠して測定した。
【0051】
(ヒートシール性)
簡易のヒートシーラー(富士インパルス社製ポリシーラー301E型)を用いてフィルムのヒートシール性を評価した。ヒートシール性が良好なものを○、良くないものを×、どちらとも言えないものを△とした。
【0052】
(生分解性試験)
フィルムを土壌を仕込んだプランター中に埋設して、一日一回散水し23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室中に保存し、100日後の外観変化を観察した。
【0053】
なお、土壌は箕面市小野原および吹田市西御旅町で採取したもの、腐葉土を3:1:3の割合で混合したものを使用した。
【0054】
結果は下記の通りに記載した。
(+):外観変化が認められた。
(−):外観変化が認められなかった。
【0055】
(ひねり指数)
25℃にて3cm×10cmの大きさに切ったフィルムまたはシートの試料を用意し、この試料の片側の端に筆記具で目印を付ける。この試料の長手方向の両端を両手で保持し、中央部を720度(二回転)ねじる。一方の手を離し、離してから1分後に目印を目安にして分度器を使用し、何度戻ったかを測定し、その角度をひねり指数とした。1つのフィルムにつき3つの試料を用意し測定、得られた3つの値を平均する。
(易引き裂き性)
フィルムを官能試験した。幅3cmのテープ状の試料を手で切断した際、容易に切断出来るものを○、容易に出来ないものを×、○と×の中間のものを△とした。
【0056】
(実施例1)
脂肪族ポリエステル(A)としてポリエチレンサクシネート((株)日本触媒製、商品名ルナーレSE P−3000、MFR=8.5、数平均分子量78000)、ポリ乳酸(B)(三井化学(株)製、商品名レイシア H−440、融点156℃、数平均分子量134300)を組成比ルナーレSE:レイシア=30:70でドライブレンド後、ホッパーに仕込み、ダイリップ径85mm、リップギャップ1.2mmのLDPE用インフレーション成形機にてフィルム成形を行った。成形温度は160℃、ブローアップ比は2.7、巻取り速度は10m/分で厚み25μmのフィルムを得た。
【0057】
尚、得られたフィルムは透明感が高く、ヘイズ値は7.0であった。このフィルムは簡易のヒートシーラー(富士インパルス社製ポリシーラー301E型)で容易にヒートシールが可能であった。
【0058】
(実施例2)
実施例1のポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸の組成比をルナーレSE:レイシア=50:50でドライブレンドしたほかは、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムの酸素透過量を測定したところ3.25cm3・mm/m2・day・atmであった。
【0059】
(実施例3)
実施例1のポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸の組成比をルナーレSE:レイシア=70:30でドライブレンドしたほかは、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムの酸素透過量を測定したところ5.08cm3・mm/m2・day・atmであった。
【0060】
(比較例1)
ポリ乳酸(B)を厚さ25μmのフィルムに成形し、このフィルムの酸素透過量を測定したところ22.0cm3・mm/m2・day・atmであった。
【0061】
(比較例2)
ポリエチレンサクシネートを厚さ25μmのフィルムに成形し、このフィルムの酸素透過量を測定したところ5.04cm3・mm/m2・day・atmであった。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
MFRが0.1から50である脂肪族ジカルボン酸成分および、脂肪族グリコール成分とから得られる脂肪族ポリエステル(A)と融点が120℃以上であるポリ乳酸(B)を含んでなるフィルムまたはシート。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステル(A)が、炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分および、炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分とから得られる脂肪族ポリエステル(A)である請求項1記載のフィルムまたはシート。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステル(A)が、ポリエチレンサクシネートを含んでなる脂肪族ポリエステルである請求項1記載のフィルムまたはシート。
【請求項4】
前記フィルムまたはシートのヘーズ値が、15以下であり、または酸素透過係数が10cm3・mm/m2・day・atm以下である請求項1記載のフィルムまたはシート。
【請求項5】
請求項1から4記載のフィルムまたはシートから成形された成形品。
【請求項6】
ひねり性試験におけるひねり指数が0から360である請求項1から4記載のフィルムまたはシート。


【公開番号】特開2006−348263(P2006−348263A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301382(P2005−301382)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】