説明

脂肪族ポリエステルの製造方法

【課題】アルコールによるCD抽出効率が高く、抽出時の物性低下が少なく、CD含有量の低減された、脂肪族ポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料として、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経て得られる脂肪族ポリエステルをペレット化し、得られるポリエステルペレットを、水の割合が13質量%以上95質量%以下のイソプロパノール/水混合液と接触させることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪族ポリエステルの製造方法に関する。更に詳しくは環状二量体などのオリゴマー含有量の少ない脂肪族ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンサクシネートに代表される脂肪族ポリエステルは、その原料を植物資源由来のものに求めることができること、良好な物性および生分解性を有することなどから、農業資材、土木資材、植生資材、包装材等の製品に加工され、広範な利用が期待されている。
【0003】
しかしながら、上記脂肪族ポリエステルの成形品は、成形後一定期間放置すると、その表面に曇り(ブリードアウト、白化現象と同義。)が生じて表面光沢が消失するという問題があった。こうした問題は、脂肪族ポリエステルの製造時、ポリエステルの生成と同時に生成される環状二量体(CDと表す)が、成形後、一定期間経過した後に成形品の表面に白色物として析出することによるものである。このため、脂肪族ポリエステルから環状二量体を取り除く方法が研究されている。
【0004】
特許文献1には脂肪族ポリエステルのアセトン処理によるCD低減方法が記載されているが、抽出後のペレットに残存するアセトンによる異臭の問題が生じることなどから、別途水処理工程を要するなど過大な設備を要するという問題がある。特許文献2には脂肪族ポリエステルを粉末、ペレットまたは成形品の状態にてアルコール単独及びアルコールを主成分とする水/アルコール混合液によるCD低減処理方法が記載されているが、具体的に示されたメタノール、イソプロパノールの系ではCD低減の効果が必ずしも満足できるものではない。水を主成分とする水/アルコール混合液の記載もあるが、残留した微量の鎖延長剤(HMDI)を不活性化し、分子量増加を防ぐ目的で使用しており、該条件下ではオリゴマー除去効果は低く、また処理時間も長いなどの問題点がある。
【0005】
又、CDを効率よく低減させようと処理温度をより高温にする方法があるが、その場合接触処理時の加水分解が大きく、分子量低下など物性を損なうという問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−107457号公報。
【特許文献2】特開平7−316276号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、アルコールによるCD抽出効率が高く、抽出時の物性低下が少なく、CD含有量の低減された、脂肪族ポリエステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して検討を行った結果、脂肪族ポリエステル中に含有されるCDを効率よく抽出する液としてイソプロパノール/水混合液が優れていることを見出し本発明に到達した。即ち本発明の要旨は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料として、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経て得られる脂肪族ポリエステルをペレット化し、得られるポリエステルペレットを、水の割合が13質量%以上95質量%以下のイソプロパノール/水混合液と接触させることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によりCD含有量の低減された、脂肪族ポリエステルを効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で採用するエステル化反応工程の一例の説明図である。
【図2】本発明で採用する重縮合反応工程の一例の説明図である。
【図3】本発明で採用するイソプロパノール/水混合液接触処理工程の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料として、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経て得られる脂肪族ポリエステルをペレット化し、得られるポリエステルペレットをイソプロパノール/水混合液と接触させる脂肪族ポリエステルの製造方法である。各反応は回分法でも連続法でも行えるが、品質の安定化、エネルギー効率の観点からは、原料を連続的に供給し、連続的にポリエステルを得るいわゆる連続法が好ましい。
【0012】
脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオールはそれぞれ本発明の脂肪族ポリエステルの主原料であり、本発明のポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分の50モル%以上が脂肪族ジカルボン酸であること、及び、本発明のポリエステルを構成する全ジオール成分の50モル%以上が脂肪族ジオールであることが好ましい。
【0013】
<ジカルボン酸>
又、その脂肪族ジカルボン酸成分としては、具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、などが挙げられ、これらの中で、得られるポリエステルの物性の面から、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましい。特にはコハク酸、無水コハク酸が好ましい。尚、これらは2種以上が併用されていてもよい。コハク酸は得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から全脂肪族ジカルボン酸に対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、特に好ましくは90モル%以上である。
【0014】
又、脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては 、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。芳香族ジカルボン酸の具体的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びジフェニルジカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として上記脂肪族ジカルボン酸に加えて使用してもよい。又、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、などは植物原料由来のものを使用することができる。
【0015】
<ジオール>
その脂肪族ジオール成分としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、これらの中で得られるポリエステルの物性の面から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好ましい。尚、これらは2種以上が併用されていてもよい。1,4−ブタンジオールは得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から全脂肪族ジオールに対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、特に好ましくは90モル%以上である。又、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどは植物原料由来のものを使用することができる。
【0016】
<その他の共重合成分>
本発明のポリエステルのその他の構成成分となる共重合成分としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸等のオキシカルボン酸、及びこれらオキシカルボン酸のエステルやラクトン、オキシカルボン酸重合体等、或いはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール、或いは、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの無水物などの3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物等が挙げられる。また、3官能以上のオキシカルボン酸、3官能以上のアルコール、3官能以上のカルボン酸などは少量加えることにより高粘度のポリエステルを得やすい。中でも、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸などのオキシカルボン酸が好ましく、特にはリンゴ酸が好ましく用いられる。3官能以上の多官能化合物は全ジカルボン酸成分に対して、0.001〜5モル%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5モル%である。この範囲の上限超過ではゲル(未溶融物)が生成しやすく、下限未満では粘度上昇の効果が得にくい。
【0017】
<ポリエステルの製造>
以下に連続製造法を例にして本発明のポリエステル製造方法について述べる。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法は、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとを連続する複数の反応槽において、エステル化反応工程、溶融重縮合反応工程を経て連続的にポリエステルのペレットを得るにおいては従来公知のポリエステルの製造方法を採ることができる。本発明においては得られたペレットをイソプロパノール/水混合液と接触させる処理をし、ペレット中に含有されるCDを抽出する。
【0018】
<エステル化反応工程>
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応は連続する複数の反応槽で行うことが出来るが、一槽でも行うことが出来る。反応温度は、下限が215℃、好ましくは218℃、上限は240℃、好ましくは235℃、より好ましくは233℃である。下限未満であるとエステル化反応速度が遅く反応時間を長時間必要とし、脂肪族ジオールの脱水分解など好ましくない反応が多くなる。上限超過では脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸の分解が多くなり、また反応槽内に飛散物が増加し異物発生原因となりやすく反応物に濁り(ヘーズ)を生じやすくなる。又、エステル化温度は一定温度であることが好ましい。一定温度であることによりエステル化率が安定する。一定温度は設定温度±5℃、好ましくは±2℃である。
【0019】
反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、50kPa〜200kPaであり、下限は好ましくは60kPa、更に好ましくは70kPa、上限は好ましくは130kPa、更に好ましくは110kPaである。下限未満では反応槽内に飛散物が増加し反応物のヘーズが高くなり異物増加の原因となりやすく、又脂肪族ジオールの反応系外への留出が多くなり重縮合反応速度の低下を招きやすい。上限超過では脂肪族ジオールの脱水分解が多くなり、重縮合速度の低下を招きやすい。反応時間は、通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは4時間以下である。
【0020】
エステル化反応を行う脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比は、エステル化反応槽の気相及び反応液相に存在する、脂肪族ジカルボン酸及びエステル化された脂肪族ジカルボン酸に対する、脂肪族ジオール及びエステル化された脂肪族ジオールとのモル比を表し、反応系で分解されエステル化反応に寄与しない脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール及びそれらの分解物は含まれない。分解されてエステル化反応に寄与しないとは、例えば、脂肪族ジオールである1,4−ブタンジオールが分解してテトラヒドロフランになったものはこのモル比には含めない。本発明において 上記モル比は下限が1.10であり、好ましくは1.12、更に好ましくは1.15、特に好ましくは1.20である。上限は2.00、好ましくは1.80、更に好ましくは1.60、特に好ましくは1.55である。下限未満ではエステル化反応が不十分になりやすく後工程の反応である重縮合反応が進みにくく高重合度のポリエステルが得にくい。上限超過では脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸の分解量が多くなり、好ましくない。このモル比を好ましい範囲に保つ為にエステル化反応系に脂肪族ジオールを適宜補給するのは好ましい方法である。
【0021】
本発明においては、エステル化率80%以上のエステル化反応物を重縮合反応に供する。本発明において、重縮合反応とは反応圧力50kPa以下で行うポリエステルの高分子量化反応をいい、エステル化反応は50〜200kPaで、通常エステル化反応槽で行い、重縮合反応は50kPa以下、好ましくは10kPa以下で重縮合反応槽で行う。本発明でエステル化率とはエステル化反応物試料中の全酸成分に対するエステル化された酸成分の割合を示すものであり次式で表される。
エステル化率(%)=(ケン化価−酸価) /ケン化価)×100
重縮合反応に供するエステル化反応物のエステル化率は、好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。下限未満であると後工程の反応である重縮合反応性が悪くなる。また、重縮合反応時の飛散物が増え、壁面に付着して固化し、更にこの飛散物が反応物内に落下し、ヘーズの悪化(異物発生)の要因となる。上限は後工程の反応である重縮合反応の為には高いほうが良いが、通常99%である。
【0022】
本発明において、エステル化反応におけるジカルボン酸とジオールとのモル比、反応温度、反応圧力及び反応率とを上記範囲にして連続反応を行い、連続的に重縮合反応に供することにより、ヘーズが低く異物が少ない高品質の脂肪族ポリエステルを効率的に得ることが出来る。
【0023】
<重縮合反応工程>
重縮合反応は連続する複数の反応槽を用い減圧下で行うことが出来る。最終重縮合反応槽の反応圧力は、下限が通常0.01kPa以上、好ましくは0.03kPa以上であり、上限が通常1.4kPa以下、好ましくは0.4kPa以下として行う。重縮合反応時の圧力が高すぎると、重縮合時間が長くなり、それに伴いポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が引き起こされ、実用上充分な特性を示すポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。一方、超高真空重縮合設備を用いて製造する手法は重縮合反応速度を向上させる観点からは好ましい態様であるが、極めて高額な設備投資が必要となる為、経済的には不利である。
【0024】
反応温度は、下限が通常215℃、好ましくは220℃であり、上限が通常270℃、好ましくは260℃の範囲である。下限未満であると、重縮合反応速度が遅く、高重合度のポリエステル製造に長時間を要するばかりでなく、高動力の撹拌機も必要となる為、経済的に不利である。一方、上限超過であると製造時のポリエステルの熱分解が引き起こされやすく、高重合度のポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下である。反応時間が短すぎると反応が不充分で高重合度のポリエステルが得にくく、その成形品の機械物性が劣る傾向となる。一方、反応時間が長すぎると、ポリエステルの熱分解による分子量低下が顕著となり、その成形品の機械物性が劣る傾向となるばかりでなく、ポリエステルの耐久性に悪影響を与えるカルボキシル基末端量が熱分解により増加する場合がある。
【0025】
<反応触媒>
エステル化反応及び重縮合反応は反応触媒を使用することにより、反応が促進される。エステル化反応においてはエステル化反応触媒が無くても十分な反応速度を得ることが出来る。又エステル化反応時にエステル化反応触媒が存在するとエステル化反応によって生じる水により触媒が反応物に不溶の析出物を生じ、得られるポリエステルの透明性を損なう(即ちヘーズが高くなる)ことがあり、又異物化することがあるので、反応触媒はエステル化反応中には添加使用しないことが好ましい。また、触媒を反応槽の気相部に添加するとヘーズか高くなることがあり、又触媒が異物化することがあるので反応液中に添加することが好ましい。
【0026】
重縮合反応においては無触媒では反応が進みにくく、触媒を用いることが好ましい。重縮合反応触媒としては、一般には、周期表1〜14族の金属元素のうち少なくとも1種を含む化合物が用いられる。金属元素としては、具体的には、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。その中では、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、亜鉛、鉄、ゲルマニウムが好ましく、特に、チタン、ジルコニウム、タングステン、鉄、ゲルマニウムが好ましい。更に、ポリエステルの熱安定性に影響を与えるポリエステル末端濃度を低減させる為には、上記金属の中では、ルイス酸性を示す周期表3〜6族の金属元素が好ましい。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステンであり、特に、入手のし易さからチタン、ジルコニウムが好ましく、更には反応活性の点からチタンが好ましい。
【0027】
本発明においては、触媒として、これらの金属元素を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ―ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が好ましく用いられる。
【0028】
本発明においては、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。また、重縮合は無溶媒で行うことが好ましいが、これとは別に、触媒を溶解させる為に少量の溶媒を使用しても良い。この触媒溶解用の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールなどの前述のジオール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ヘプタン、トルエン等の炭化水素化合物、水ならびにそれらの混合物等が挙げられ、その使用量は、触媒濃度が、通常0.0001重量%以上、99重量%以下となるように使用する。
【0029】
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネート及びその加水分解物が好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネート、及びこれらの加水分解物が挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好んで用いられる。
【0030】
又、アルコール、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステル化合物、及びチタン化合物を混合することにより得られる液状物も用いられる。これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー及び、アルコール、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステル化合物、及びチタン化合物を混合することにより得られる液状物、が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー及び、アルコール、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステル化合物、及びチタン化合物を混合することにより得られる液状物がより好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート及び、アルコール、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステル化合物、及びチタン化合物を混合することにより得られる液状物が好ましい。
【0031】
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が例示される。これらの中では、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましく、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドがより好ましく、特にジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが着色のない高重合度のポリエステルが容易に得られる理由から好ましい。
【0032】
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲル及びム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0033】
その他の金属含有化合物としては、炭酸スカンジウム、スカンジウムアセテート、スカンジウムクロリド、スカンジウムアセチルアセトネート等のスカンジウム化合物、炭酸イットリウム、イットリウムクロリド、イットリウムアセテート、イットリウムアセチルアセトネート等のイットリウム化合物、バナジウムクロリド、三塩化バナジウムオキシド、バナジウムアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネートオキシド等のバナジウム化合物、モリブデンクロリド、モリブデンアセテート等のモリブデン化合物、タングステンクロリド、タングステンアセテート、タングステン酸等のタングステン化合物、セリウムクロリド、サマリウムクロリド、イッテルビウムクロリド等のランタノイド化合物等が挙げられる。
【0034】
これらの重縮合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常、0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、より好ましくは1ppm以上であり、上限値が通常、3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、理由は未だ詳らかではないが、ポリエステル中のカルボキシル基末端濃度が多くなる場合がある為、カルボキシル基末端量ならびに残留触媒濃度の増大によりポリエステルの熱安定性や耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリエステル製造中にポリエステルの熱分解が誘発され、実用上有用な物性を示すポリエステルが得られにくくなる。
【0035】
触媒の反応系への添加位置は、重縮合反応工程以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよいが、水が多く存在、もしくは発生している状況下で触媒が共存すると触媒が失活し、異物が析出する原因となり製品の品質を損なう場合がある為、エステル化反応工程以後に添加するのが好ましい。
【0036】
<反応槽>
本発明に用いるエステル化反応槽としては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよく、又、単数槽としても、同種又は異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部および軸受、軸、攪拌翼からなる通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転するタイプも用いることができる。攪拌の形態にも制限はなく、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、反応液の一部を反応槽の外部に配管等で持ち出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法もとることができる。攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
【0037】
本発明に用いる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを挙げることができる。重縮合反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできるが、反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は界面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した横型攪拌重合機を選定することが好ましい。
【0038】
<イソプロパノール/水混合液接触処理工程>
重縮合反応を経て得られた脂肪族ポリエステルはペレット化され、ペレットの状態でイソプロパノール/水混合液接触処理を行う。イソプロパノール/水混合液接触処理はペレット化工程内で行われても良いし、ペレットを工程外へ移送した後処理しても良い。
【0039】
イソプロパノールと水との混合液はイソプロパノールの危険物としての性状の緩和、抽出条件(温度、接触時間、回収条件など)の選択の可能性拡大などから有用である。例えば、脂肪族ポリエステルとイソプロパノールのみとを接触させる場合、危険物を取り扱うことによるハンドリング性、爆発等の未然防止に要する設備が必要となるなど経済的に不利であるばかりか、抽出条件によってはアルコール分解による粘度低下から品質を損なうなど、抽出条件を制限する必要性が生じる。一方、脂肪族ポリエステルと水のみとを接触させる場合、オリゴマー除去が十分でないことから、目標とする品質のポリエステルを得ることができないばかりか、末端酸価の高いポリエステルペレットは加水分解による固有粘度(IV)低下が顕著となるなど、接触処理に供するペレット品質を制限する必要性が生じる。これに対し、脂肪族ポリエステルペレットとイソプロパノール/水混合液を接触させる場合、取り扱い時の危険性が緩和され、ハンドリング性が向上するだけでなく、IV低下等の品質を損なうことなく、オリゴマー除去を効率よく行うことができるなど、抽出条件の選択可能性が拡大する利点がある。
【0040】
脂肪族ポリエステルペレットと接触させる処理液(イソプロパノール/水混合液)における水の割合は、下限が13質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは60質量%以上である。上限は95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。水の使用割合を少なく(イソプロパノールの割合を増加)すると、アルコール分解による分子量低下により、品質を損なう傾向がある。また、アルコール使用割合の増加により、使用時の液組成およびガス組成の爆発危険性が高くなるなど、安全性の観点から取り扱いに困難を要する。さらに、ペレット乾燥後のイソプロパノール残存量が多くなる傾向にあるなど、用途上あるいは成形加工条件に制限を要する場合がある。一方、水の割合が上限を超えると、オリゴマー除去が十分でなく、望ましい品質の脂肪族ポリエステルが得られない場合がある。
【0041】
脂肪族ポリエステルペレットと処理液とを接触させる温度は、下限が40℃以上であり、好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上、特に好ましくは55℃以上である。上限は通常脂肪族ポリエステルの融点以下であり、好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは85℃以下である。接触させる温度を下限未満にすると、処理時間に長時間を必要とし、経済的に不利となるばかりでなく、オリゴマー除去効果の低下により、望ましい脂肪族ポリエステルが得られない場合がある。一方、接触させる温度が上限を超えると、加水分解、アルコール分解により粘度低下が大きくなり、品質を損なうばかりでなく、ペレット間の融着やペレット抜き出し不良を引き起こすなど運転面にも困難を伴う。
【0042】
ペレットと処理液を接触させる時間は、下限が通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、更に好ましくは3時間以上である。上限は通常24時間以下であり、好ましくは18時間以下、更に好ましくは10時間以下である。接触させる時間が下限未満であると、オリゴマー除去が十分でなく、望ましい品質の脂肪族ポリエステルが得られない場合がある。一方、接触させる時間が上限を超えると、加水分解、アルコール分解により粘度低下が大きくなり、品質を損なう場合がある。
【0043】
接触させるペレットと処理液の比(ペレット/液比)は質量比にして、下限が通常1.0以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは2.0以上である。上限は通常50以下であり、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。接触させるペレットと液の質量比が下限未満であると、処理時の液中オリゴマー濃度増加によりオリゴマー除去効果が低下し、望ましい品質の脂肪族ポリエステルが得られない場合がある。一方、接触させるペレットと液の質量比が上限を超えると、使用する処理液量が多いことによる設備の大型化、処理液のコスト増加などプロセス面、コスト面で不利である。
【0044】
脂肪族ポリエステルペレットと処理液とを接触させる態様としては、回分式と連続式があり、いずれの態様もとることができる。本発明における回分式の態様としては、処理槽にペレットと処理液を入れて所定温度、時間接触処理させた後抜き出す方法が挙げられる。ペレットと処理液とを接触処理させる間、処理液の循環下に行うこともできるし、非循環下に行うこともできる。本発明における連続式の態様としては、配管、又は処理槽にペレットを連続的に供給しつつ、所定温度の処理液をペレットの流れに対して並流、又は向流で接触させ所定の接触時間を保持しつつ連続的にペレットを抜き出す方法などがある。
【0045】
本発明において、接触処理後の処理液は蒸留で回収しリサイクル使用できる。また、抽出された環状二量体を含んだオリゴマー類は冷却などにより処理液と分離された後、又は濃縮された後に、エステル化反応工程や重縮合反応工程に戻され、脂肪族ポリエステルの原料として使用することができる。エステル化反応工程のエステル化反応槽や、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのスラリー槽に戻すのは好ましい方法である。
【0046】
接触処理後の処理液は、抜き出した処理液をそのまま循環再利用することもできるし、抜き出した処理液の一部を廃棄し、廃棄した量だけ新たに処理液を追加することもできる。また、抜き出した処理液を蒸留精製して再利用することもでき、濃縮液として回収されなかった量だけ、イソプロパノール/水混合液として追加することもできる。
【0047】
接触処理後、蒸留濃縮および/または、冷却などにより処理液と分離されたCDを含んだオリゴマー類は、一旦溶融状態あるいは原料である脂肪族ジオールに加熱溶解させた溶液とした後、脂肪族ポリエステルの原料として回収することができる。回収したオリゴマー類は、エステル化反応槽に直接供給することもできるし、図1に例示する脂肪族ジオールの再循環ライン(2)、エステル化反応物の抜き出しライン(4)に供給することもできる。また、図2に例示する重縮合槽(a)に供給することもできる。また、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのスラリー槽に供給することもできる。
【0048】
本発明において、イソプロパノール/水混合液と接触処理させる脂肪族ポリエステルペレットの固有粘度(IV、dL/g)は、下限が1.4dL/gであることが好ましく、特に好ましくは、1.6dL/gである。上限は2.8dL/gが好ましく、更に好ましくは2.5dL/gであり特に好ましくは2.3dL/gである。固有粘度が下限未満であると、成形品にしたとき 十分な機械強度が得にくい。固有粘度が上限超過であると、成形時に溶融粘度が高く成形しにくい。
【0049】
本発明において、イソプロパノール/水混合液と接触処理させる脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(当量/トン)は通常80以下であり、好ましくは60以下、更に好ましくは40以下、特に好ましくは25以下である。下限は低いほど熱安定性、耐加水分解性がよいが、通常5である。上限を超えると、イソプロパノール/水混合液と接触処理させる工程において、加水分解による粘度低下が顕著となり、品質を著しく損なう場合がある。
【0050】
<製造ライン例>
以下に脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸、脂肪族ジオールとして1,4−ブタンジオール、多官能化合物としてリンゴ酸を原料とする脂肪族ポリエステルの製造方法の好ましい実施態様を説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
以下、添付図面に基づき、脂肪族ポリエステルの製造方法の好ましい実施態様を説明する。図1は、本発明で採用するエステル化反応工程の一例の説明図、図2は、本発明で採用する重縮合工程の一例の説明図である。図1において、原料のコハク酸及びリンゴ酸は、通常、原料混合槽(図示せず)で1,4−ブタンジオール(BGと表すことがある)と混合され、原料供給ライン(1)からスラリー又は液体の形態でエステル化反応槽(A)に供給される。また、エステル化反応時に触媒添加する場合は、触媒調整槽(図示せず)でBGの溶液とした後、BG供給ライン(3)に溶液を供給してなされる。図1では再循環1,4−ブタンジオールの再循環ライン(2)にBG供給ライン(3)を連結し、両者を混合した後、エステル化反応槽(A)の液相部に供給する態様を示した。
【0052】
エステル化反応槽(A)から留出するガスは、留出ライン(5)を経て精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離される。通常、高沸成分の主成分は1,4−ブタンジオールであり、低沸成分の主成分は、水およびBGの分解物であるテトラヒドロフラン(THFと表すことがある)である。精留塔(C)で分離された高沸成分は抜出ライン(6)から抜き出され、ポンプ(D)を経て、一部はBG再循環ライン(2)からエステル化反応槽(A)に循環され、一部は循環ライン(7)から精留塔(C)に戻される。また、余剰分は抜出ライン(8)から外部に抜き出される。一方、精留塔(C)で分離された軽沸成分はガス抜出ライン(9)から抜き出され、コンデンサ(G)で凝縮され、凝縮液ライン(10)を経てタンク(F)に一時溜められる。タンク(F)に集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン(11)、ポンプ(E)及び循環ライン(12)を経て精留塔(C)に戻され、残部は、抜出ライン(13)を経て外部に抜き出される。コンデンサ(G)はベントライン(14)を経て排気装置(図示せず)に接続されている。エステル化反応槽(A)内で生成したエステル化反応物は、抜出ポンプ(B)及びエステル化反応物の抜出ライン(4)を経て図2第1重縮合反応槽(a)に供される。
【0053】
図1に示す工程においては、再循環ライン(2)にBG供給ライン(3)が連結されているが、両者は独立していてもよい。また、原料供給ライン(1)はエステル化反応槽(A)の液相部に接続されていてもよい。重縮合槽前のエステル化反応物に触媒を添加する場合は、触媒調製槽(図示せず)で所定濃度に調製した後、図2における触媒供給ライン(L7)を経て、BG供給ライン(L8)に連結され、BGで更に希釈された後、前述の図1に示すエステル化反応物の抜出ライン(4)に供給される。
【0054】
次に、エステル化反応物の抜出ライン(4)からフィルター(p)を経て第1重縮合反応槽(a)に供給されたエステル化反応物は、減圧下に重縮合されてポリエステル低重合体となりその後、抜出用ギヤポンプ(c)及び出口流路である抜出ライン(L1)、フィルター(q)を経て第2重縮合反応槽(d)に供給される。第2重縮合反応槽(d)では、通常、第1重縮合反応槽(a)よりも低い圧力で更に重縮合反応が進む。得られた重縮合物は、抜出用ギヤポンプ(e)及び出口流路である抜出ライン(L3)、フィルター(r)を経て、第3重縮合槽(k)に供給される。第3重縮合反応槽(k)は、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの攪拌翼を具備した横型の反応槽である。抜出ライン(L3)を通じて第2重縮合反応槽(d)から第3重縮合反応槽(k)に導入された重縮合反応物は、ここで更に重縮合反応が進められた後、ペレット化の工程に移送される。
【0055】
<ペレット化工程>
ペレット化工程では、抜出用ギヤポンプ(m)、出口流路である抜出ライン(L5)及びフィルター(s)を経てダイスヘッド(g)から溶融したストランドの形態で大気中に抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(h)で切断されてポリエステルペレットとなる。又、大気中に抜き出さずに水中にストランドの形態で抜きだし、回転式水中カッターで切断してペレットとすることもできる。符号(L2)、(L4)、(L6)は、それぞれ、第1重縮合反応槽(a)、第2重縮合反応槽(d)、第3重縮合反応槽(k)のベントラインである。フィルターp、q、r、sは必ずしも全部設置する必要は無く、異物除去効果と運転安定性とを考慮して適宜設置することができる。
【0056】
得られた脂肪族ポリエステルペレットはイソプロパノール/水混合液と接触させる処理を行う。図3は、本発明で採用するイソプロパノール/水混合液接触処理工程の一例の説明図である。接触液としてのイソプロパノール/水混合液は循環タンク(I) からポンプ(IX)により熱交換器(II)を経由し温度コントロールされ、供給ライン(ア)より処理槽(III) へ供給される。処理槽内でペレットと向流接触させた後、抜き出しライン(イ)より抜き出し、微粉除去機(IV)を経由して循環タンク(I) へ回収する。接触処理に供するペレットは供給ライン(ウ)より連続的に供給され、所定時間イソプロパノール/水混合液と接触処理された後、ロータリーバルブ(V) で抜き出し量を調整しながら抜き出しライン(エ)より連続的に抜き出す。ペレットに同伴して抜き出された接触液は、予備固液分離機(VI)で分離され、回収タンク(VII) を経由後、ポンプ(X) により供給ライン(オ)を通じて、回収ライン(カ)へ戻す。循環タンクからは抜き出しライン(キ)より、接触液の抜き出しを連続的に行う。供給ライン(ク)からは抜き出された接触液相当量のイソプロパノール/水混合液を供給する。連続的に抜き出されたペレットは予備固液分離機で同伴された接触液と分離された後、固液分離機(VIII)を経由し、乾燥工程へ連続的に供給される。乾燥は70℃の大気エアーを送り、所定時間樹脂の乾燥を行う。乾燥後本発明の脂肪族ポリエステル樹脂を得る。
【0057】
<ポリエステル>
本発明で得られるイソプロパノール/水混合液接触処理後の脂肪族ポリエステルの固有粘度(IV、dL/g)は、下限が1.4dL/gであることが好ましく、特に好ましくは、1.6dL/gである。上限は2.8dL/gが好ましく、更に好ましくは2.5dL/gであり、特に好ましくは2.3dL/gである。固有粘度が下限未満であると、成形品にしたとき 十分な機械強度が得にくい。固有粘度が上限超過であると、成形時に溶融粘度が高く成形しにくい。尚、イソプロパノール/水混合液接触処理後の固有粘度(dL/g)の接触処理前の固有粘度(dL/g)に対する比の百分率は、好ましくは98.0%以上であり、さらに好ましくは98.5%以上である。
【0058】
本発明で得られるイソプロパノール/水混合液接触処理後の脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(当量/トン)は通常80以下であり、好ましくは60以下、更に好ましくは40以下、特に好ましくは25以下である。下限は低いほど熱安定性、耐加水分解性がよいが、通常5である。上限を超えると、熱安定性が悪く成形時などに熱分解が多くなる。
【0059】
本発明で得られるイソプロパノール/水混合液接触処理後の脂肪族ポリエステルの環状二量体含有量は、上限が通常6,000質量ppm以下であり、好ましくは5,000質量ppm以下、より好ましくは4,000質量ppm以下、更に好ましくは3,500質量ppm以下、特に好ましくは3,000質量%以下である。上限を超えると、成形後一定期間放置すると、その表面に曇り(ブリードアウト、白化現象と同義。)が生じて表面光沢が消失するなど、当初の目的をかなえることができない。
【0060】
本発明で得られるイソプロパノール/水混合液接触処理後の脂肪族ポリエステルは、固有粘度が1.4dL/g以上、環状二量体含有量が5,000質量ppm以下であることにより、成形後品質を損なうことのない。良好なポリエステル成形品の原料となることが出来る。
【0061】
<脂肪族ポリエステル組成物>
本発明の脂肪族ポリエステルに、芳香族−脂肪族共重合ポリエステル、及び脂肪族オキシカルボン酸等を配合させてもよい。更に必要に応じて用いられるカルボジイミド化合物、充填材、可塑剤以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の生分解性樹脂、例えば、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物を配合することが出来る。更に、成形体の物性や加工性を調整する目的で、熱安定剤、可塑剤、滑剤、ブロッキング防止剤、核剤、無機フィラー、着色剤、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤、改質剤、架橋剤等を含有させてもよい。
【0062】
本発明の脂肪族ポリエステル組成物の製造方法は、特に限定されないが、ブレンドした脂肪族ポリエステルの原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブレンダー等の通常の混練機を用いて混練することによって混合する等が挙げられる。また、各々の原料チップを直接成形機に供給して組成物を調製すると同時に、その成形体を得ることも可能である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法は次の通りである。
【0064】
<固有粘度(IV) dL/g>
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLのポリマー溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(1)より求めた。
IV=〔(1+4KH ηSP)0.5 −1〕/(2KH C) ・・・(1)
(ただし、ηSP=η/η0 −1であり、ηは試料溶液落下秒数、η0 は溶媒の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KH はハギンズの定数である。KH は0.33を採用した。)
【0065】
<ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(AV) 当量/トン>
ペレット状ポリエステルを粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させた。次いで、クロロホルム5cm3 を徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル試料を加えずに同様の操作を実施し、以下の式(2)によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出した。
末端カルボキシル量(当量/トン)=(a−b)×0.1×f/W・・・(2)
ここで、aは、滴定に要した0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、bは、ブランクでの滴定に要した0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、wはポリエステルの試料の量(g)、fは、0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。
【0066】
なお、0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、以下の方法で求めた。
試験管にメタノール5cm3 を採取し、フェノールレッドのエタノール溶液の指示薬として1〜2滴加え、0.lmol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4cm3 で変色点まで滴定し、次いで力価既知の0.1mol・L−1の塩酸水溶液を標準液として0.2cm3 採取して加え、再度、0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)。そして、以下の式(3)によって力価(f)を算出した。
力価(f)=0.1mol・L−1の塩酸水溶液の力価×0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μL)/0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)・・・(3)
【0067】
<ペレット中環状二量体含有量の測定>
試料0.5gを精秤量し、クロロホルム10mLを加え、室温で溶解後、エタノール/水混合液(容量比4/1)30mLを攪拌下ゆっくりと滴下し、ポリマー成分を沈殿させた。15分後、攪拌を止め、90分間静置分離を行った。次いで、上澄み液を2mL採取し、蒸発乾固させた後、アセトニトリルを2mLを加え溶解させた。0.45μmのフィルターでろ過した後、島津製作所製液体クロマトグラフィー「LC―10」を用い、移動相をアセトニトリル/水(容量比=4/6)とし、カラムは資生堂社製「SHISEIDOCAPCELL PAK C−18 TYPE MG」を用いて定量した。
【0068】
<ペレット中残存イソプロパノール量の測定>
試料0.1gを秤量し、ヘッドスペースバイアル(Chromacol社製 20−MCB)に入れ、1,2,4−トリクロロベンゼンを5mL加えた後、120℃で30分間かけてポリマーを溶解させた。バイアルを120℃の恒温槽に入れ、30分後の気相部のガスをガスタイトシリンジで採取し、ガスクロマトグラフ注入口に導入した。ガス注入時から30秒間カラムの先端を−150℃に冷却(GERSTEL社製 CTS2)することにより、ガス成分を凝縮した後、280℃まで急速に加熱し気化させてガスクロマトグラフに導入した。装置は、ガスクロマトグラフ:Hewlett−Packard社製
HP6890(スプリット比 50:1)を、カラムはJ&W社製のDB−1(内径:0.25mm、長さ:60m、膜圧:1.0μm)を使用した。注入部および検出器温度は280℃、カラム温度は40℃で7分保持後、250℃まで10℃/minで昇温し、250℃で5分保持した。キャリヤガスにはヘリウム(1mL/min)を用いた。
ペレット中の残存イソプロパノール量(質量ppm)は、以下の方法により算出した。トリクロロベンゼンが5mL入ったバイアルに、イソプロパノールが800μg/mLに調製された溶液を10μL、20μL、40μL、100μL、200μL、400μLそれぞれ添加したバイアルを用意し、上記と同様な方法でガスクロマトグラフ分析を実施し、検量線を作成した。ペレット中残存イソプロパノール量(質量ppm)は、試料測定時のイソプロパノールピーク面積と検量線の式より算出した。
【0069】
(実施例1)
[重縮合用触媒の調製]
撹拌装置付きのガラス製ナス型フラスコに、酢酸マグネシウム・4水和物を100質量部入れ、更に1500質量部の無水エタノール(純度99質量%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合質量比は45:55)を65.3質量部加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを122質量部添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、ナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体を得た。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、5Torrの減圧下で更に濃縮を行い粘稠な液体を得た。この液体状の触媒を、1,4−ブタンジオールに溶解させ、チタン原子含有量が3.36質量%となるよう調製した。この触媒溶液の1,4−ブタンジオール中における保存安定性は良好であり、窒素雰囲気下40℃で保存した触媒溶液は少なくとも40日間析出物の生成が認められなかった。また、この触媒溶液のpHは6.3であった。
【0070】
[脂肪族ポリエステルの製造]
図1に示すエステル化工程と図2に示す重縮合工程により、以下のようにして脂肪族ポリエステルを製造した。先ず、リンゴ酸を0.18重量%含有したコハク酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオールを1.30モルおよびリンゴ酸を総量0.0033モルの割合となるように混合した50℃のスラリーを、スラリー調製槽(図示せず)から原料供給ライン(1)を通じ、予め、窒素雰囲気下エステル化率99%の脂肪族ポリエステル低分子量体(エステル化反応物)を充填した攪拌機を有するエステル化反応槽(A)に、45.5kg/hとなる様に連続的に供給した。エステル化反応槽(A)を内温230℃、圧力101kPaとし、生成する水、テトラヒドロフラン及び余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン(5)から留出させ、精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は精留塔(C)の液面が一定になる様に、抜出ライン(8)を通じて、その一部を外部に抜き出した。一方、水とテトラヒドロフランを主体とする低沸成分は、塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(F)の液面が一定になる様に、抜出ライン(13)より外部に抜き出した。同時に、BG再循環ライン(2)より100℃の精留塔(C)の塔底成分(98重量%以上が1,4−ブタンジオール)全量を、また、BG供給ライン(3)より、エステル化反応槽で発生したテトラヒドロフランと等モルの1,4−ブタンジオールを併せて供給し、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比が1.30となるように調整した。供給量は、再循環ライン(2)とBG供給ライン(3)合わせて3.8kg/hであった。また、1,4−ブタンジオールがテトラヒドロフランに転化した量はコハク酸1.00モルに対し、0.042モルであった。(THF化率4.2モル%対コハク酸)
【0071】
エステル化反応槽(A)で生成したエステル化反応物は、ポンプ(B)を使用し、エステル化反応物の抜出ライン(4)から連続的に抜き出し、エステル化反応槽(A)内液のコハク酸ユニット換算での平均滞留時間が3時間になる様に液面を制御した。抜出ライン(4)から抜き出したエステル化反応物は、図2第1重縮合反応槽(a)に連続的に供給した。系が安定した後、エステル化反応槽(A)の出口で採取したエステル化反応物のエステル化率は92.4%であり末端カルボキシル濃度は884当量/トンであった。予め前述手法で調製した触媒溶液を、触媒調製槽において、チタン原子としての濃度が0.12重量%となる様に、1,4−ブタンジオールで希釈した触媒溶液を調製した後、供給ライン(L8)を通じて、1.4kg/hで連続的にエステル化反応物の抜出ライン(4)に供給した(触媒は反応液の液相に添加された)。供給量は運転期間中安定していた。
【0072】
第1重縮合反応槽(a)の内温は240℃、圧力2.7kPaとし、滞留時間が120分間になる様に、液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応器(d)に連続的に供給した。第2重縮合反応器(d)の内温は240℃、圧力400Paとし、滞留時間が120分間になる様に、液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L4)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、抜出用ギヤポンプ(e)により抜出ライン(L3)を経由し、第3重縮合反応器(k)に連続的に供給した。第3重縮合反応器(k)の内温は240℃、圧力は130Pa、滞留時間は60分間とし、更に、重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、ダイスヘッド(g)からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター(h)でカッティングしペレットとした。エステル化反応、重縮合反応は連続7日間行い反応スタート後16時間経過してから8時間ごとにサンプリングして得られた脂肪族ポリエステル物性を測定した。それぞれのサンプルの平均値および触れ幅を示す。固有粘度は1.85±0.02dL/g、末端カルボキシル基濃度は19±1当量/トン、カラーb値は1.9±0.1、溶液ヘーズは0.4±0.1%であり、品質の安定した透明性の高いポリエステルであった。
【0073】
[脂肪族ポリエステルのイソプロパノール/水混合液接触処理]
図3に示す接触処理工程により、次の要領で脂肪族ポリエステル樹脂の接触処理を行った。接触液としてのイソプロパノール/水混合液(水13質量%)は循環タンク(I) からポ
ンプ(IX)により熱交換器(II)を経由して40℃に制御され、供給ライン(ア)より処理槽(III) へ供給した。処理液は、処理槽内でペレットと向流接触させた後、抜出ライン(イ)より抜き出し、微粉除去機(IV)を経由して循環タンク(I) へ回収した。接触処理に供するペレットは供給ライン(ウ)より連続的に供給され、6時間接触処理された後、ロータリーバルブ(V) で抜き出し量を調整しながら抜出ライン(エ)より連続的に抜き出した。ペレットに同伴して抜き出された接触液は、予備固液分離機(VI)で分離され、回収タンク(VII) を経由後、ポンプ(X) により供給ライン(オ)を通じて、回収ライン(カ)へ戻した。循環タンク(I) からは抜出ライン(キ)より、接触液の抜き出しを連続的に行い、その量は接触液全循環流量の1/20(流量比)とした。供給ライン(ク)からは抜き出された接触液相当量のイソプロパノール/水混合液を循環タンク(I) へ供給した。連続的に抜き出されたペレットは予備固液分離機(IV)で同伴された接触液と分離された後、脱水機(VIII)より抜出ライン(ケ)を経由し、乾燥工程へ連続的に供給された。乾燥は70℃に加温された空気を乾燥タンク(図示せず)の下方より上方に向けて流した状態で12時間行った。乾燥後のサンプルについて測定した固有粘度の接触処理前の固有粘度に対する比(保持率%表示)、乾燥後のサンプルの環状2量体含有量、及びペレット中残存イソプロパノール量を表1に示す。尚、表中の「IPA」は「イソプロパノール」である。
【0074】
(実施例2)〜(実施例7)
実施例1において 接触処理液であるイソプロパノール/水混合液における水の割合をそれぞれ表1に示すように替え、接触処理液温度、接触処理時間をそれぞれ表1に示すように替えて、接触処理を行い、実施例1と同様にIV保持率、CD含有量、及びペレット中残存イソプロパノール量を測定し、結果を表1に示した。
【0075】
(比較例1)
実施例1において 接触処理液をイソプロパノールに替えた以外は、実施例1と同様に接触処理を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において 接触処理液を水に替えた以外は、実施例1と同様に接触処理を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例3)〜(比較例6)
実施例1において 接触処理液のイソプロパノール/水混合液のイソプロパノール部分をそれぞれエタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、アセトン(AcMe)、テトラヒドロフラン(THF)に替え、接触処理時間を5時間とした以外は、実施例3と同様に接触処理を行った。結果を表2に示す。
【0077】
(実施例8)
実施例1において、0.12重量%に調製された触媒溶液を2.0kg/hで連続的に供給した以外は、実施例3と同様に接触処理を行った。結果を表3に示す。
(実施例9)
実施例1において、0.12重量%に調製された触媒溶液を4.2kg/hで連続的に供給した以外は、実施例3と同様に接触処理を行った。結果を表3に示す。
(比較例7)
実施例1において、0.12重量%に調製された触媒溶液を4.2kg/hで連続的に供給し、接触処理液をエタノールとした以外は、実施例3と同様に接触処理を行った。結果を表3に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の製造方法によりCD含有量の低減された、脂肪族ポリエステルを効率的に得ることができ、表面に曇りが生じない成形品の成形原料となるポリエステルを提供することができる。
【符号の説明】
【0082】
1:原料供給ライン
2:BG再循環ライン
3:BG供給ライン
4:エステル化反応物の抜出ライン
5:留出ライン
6:抜出ライン
7:循環ライン
8:抜出ライン
9:ガス抜出ライン
10:凝縮液ライン
11:抜出ライン
12:循環ライン
13:抜出ライン
14:ベントライン
15:供給ライン
A:エステル化反応槽
B:抜出ポンプ
C:精留塔
D、E:ポンプ
F:タンク
G:コンデンサ
L1、L3、L5:重縮合反応物抜出ライン
L2、L4、L6:ベントライン
L7:触媒供給ライン
L8:BG供給ライン
a:第1重縮合反応槽
d:第2重縮合反応槽
k:第3重縮合反応槽
c、e、m:抜出用ギヤポンプ
g:ダイスヘッド
h:回転式カッター
p、q、r、s:フィルター
I :循環タンク
II:熱交換器
III :処理槽
IV:微粉除去機
V :ロータリーバルブ
VI:予備固液分離機
VII :回収タンク
VIII:固液分離機
IX:ポンプ
X :ポンプ
ア:供給ライン
イ:抜出ライン
ウ:供給ライン
エ:抜出ライン
オ:供給ライン
カ:回収ライン
キ:抜出ライン
ク:供給ライン
ケ:抜出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料として、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経て得られる脂肪族ポリエステルをペレット化し、得られるポリエステルペレットを、水の割合が13質量%以上95質量%以下のイソプロパノール/水混合液と接触させることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料として、エステル化反応工程、重縮合反応工程及び得られる脂肪族ポリエステルをペレット化する工程を有する脂肪族ポリエステルの製造方法において、該ペレット化工程内に、脂肪族ポリエステルペレットを、水の割合が13質量%以上95質量%以下のイソプロパノール/水混合液と接触させる工程を有することを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
脂肪族ポリエステルペレットをイソプロパノール/水混合液と接触させる温度が40℃以上、脂肪族ポリエステルの融点以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
脂肪族ポリエステルペレットとイソプロパノール/水混合液との接触によりイソプロパノール/水混合液中に抽出されたオリゴマーを脂肪族ポリエステルの原料の一部として使用することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法で得られた脂肪族ポリエステルであって、固有粘度が1.40dL/ g以上、環状二量体含有量が5,000質量ppm以下であることを特徴とする脂肪族ポリエステル。
【請求項6】
イソプロパノール/水混合液との接触後の固有粘度(dL/ g)の接触前の固有粘度(dL/ g)に対する比の百分率が98.0%以上であることを特徴とする請求項5に記載の脂肪族ポリエステル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−195989(P2010−195989A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44771(P2009−44771)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】