説明

脂肪族ポリエステル共重合体フィルム。

【課題】柔軟性に優れた特定の脂肪族ポリエステル共重合体に帯電防止性を付与することにより、包装用フィルムに適した生分解性フィルムを開発することを目的とする。
【解決手段】融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)に、グリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)を500〜1400ppm、ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)を300〜800ppm及び脂肪族カルボン酸(B−3)を200〜500ppmの範囲で含む脂肪族ポリエステル共重合体組成物からなることを特徴とする脂肪族ポリエステル共重合体フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
帯電防止性に優れた包装用フィルムを得るに適した生分解性を有する脂肪族ポリエステル共重合体フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、各種フィルムが開発されて来ている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。
かかる生分解性フィルムを包装用フィルムとして用いるには、用途によっては帯電防止性が求められており、例えば、生分解性フィルムの代表例であるポリ乳酸に多価アルコールの脂肪酸エステルを添加してなる帯電防止性ポリ乳酸系フィルムあるいはポリ乳酸系二軸延伸フィルムの片面に高級脂肪酸塩等のアニオン系界面活性剤とポリグリセリン脂肪酸エステル等のアニオン系界面活性剤を塗布することが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、これらの方法はポリ乳酸系フィルムへの帯電防止性の付与を目的にしており、ポリ乳酸とは組成が異なる脂肪族ポリエステル共重合体の帯電防止性は改良されない場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−221587号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2002−12687号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリ乳酸系フィルムに比べ、柔軟性に優れた特定の脂肪族ポリエステル共重合体に帯電防止性を付与することにより、包装用フィルムに適した生分解性フィルムを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)に、グリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)を500〜1400ppm、ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)を300〜800ppm及び脂肪族カルボン酸(B−3)を200〜500ppmの範囲で含む脂肪族ポリエステル共重合体組成物からなることを特徴とする脂肪族ポリエステル共重合体フィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の脂肪族ポリエステル共重合体フィルムは、柔軟性を有し、且つ帯電防止性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、融点(Tm)が80〜120℃、好ましくは80〜115℃、より好ましくは80〜95℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃、好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)である。
融点(Tm)が80℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムの融点が低過ぎ、包装用フィルムとして用いた場合、べたつく虞があり、包装適性に劣る。一方、融点(Tm)が120℃を越える脂肪族ポリエステル共重合体は、結果として2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が少なく、得られるフィルムの柔軟性が損なわれる虞がある。
結晶化温度(Tc)が35℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、結晶化温度が低過ぎ、かかる共重合体からフィルムを得ようとしても、通常の冷却温度(5〜30℃)では完全に固化せず、得られるフィルムにニップロール等の押し跡が転写したり、冷却ロールから容易に剥がれず、外観に劣るフィルムとなる虞がある。
(Tm)−(Tc)が30℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムは耐衝撃性、耐突刺し性に劣る虞がある。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0008】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、コハク酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(A)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。
【0009】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、特には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0010】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。
かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等、かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。
【0011】
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)としては、例えば、三菱化学株式会社からGS Pla(商品名)として製造・販売されている。
【0012】
グリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)
本発明に係わるグリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)は、グリセリンとラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキシジン酸、ベヘニン酸等の通常炭素数が9〜23のアルキル基を有する脂肪族カルボン酸の部分エステル、好ましくはモノエステルであり、具体例としては、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノカプリレート等が挙げられる。これらグリセリンモノエステルの中でもグリセリンモノステアレートが特に好ましい。
【0013】
ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)
本発明に係わるジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)は、ジグリセリンと上記脂肪族カルボン酸のエステル、好ましくはモノエステルであり、具体例としては、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレート及びジグリセリンモノカプリレート等が挙げられる。これらジグリセリンモノエステルの中でも、ジグリセリンモノステアレートが特に好ましい。
【0014】
脂肪族カルボン酸(B−3)
本発明に係わる脂肪族カルボン酸(B−3)は、上記脂肪族カルボン酸であり、具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキシジン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。これら脂肪族カルボン酸の中でも、ステアリン酸が特に好ましい。
【0015】
脂肪族ポリエステル共重合体組成物
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体組成物は、上記脂肪族ポリエステル共重合体(A)に、グリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)を500〜1400ppm、好ましくは600〜1300ppm、ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)を300〜800ppm、好ましくは400〜700ppm及び脂肪族カルボン酸(B−3)を200〜500ppm、好ましくは250〜400ppmの範囲で含んでなる。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体組成物は、グリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)、ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)及び脂肪族カルボン酸(B−3)をそれぞれ上記範囲で含むものであり、何れか一成分が上記範囲未満であると、得られるフィルムの帯電防止性が発現しない虞があり、一方、何れか一成分が上記範囲を超える場合は、得られるフィルムの表面に添加剤がブリードアウトし、外観が損なわれる虞がある。
【0016】
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体組成物を構成する成分である脂肪族ポリエステル共重合体(A)には、50重量%を超えない限り、他の生分解性重合体を含んでいてもよい。かかる生分解性重合体としては、前記脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)からなる脂肪族ポリエステル、ラクトン類を開環重合してなるポリラクトン等が挙げられるが、特に、融点(Tm)が45〜80℃未満、好ましくは55〜75℃の範囲の生分解性重合体が好適であり、具体的には、ε―カプロラクトン、δ―バレロラクトン、β−メチル−δ―バレロラクトン等のラクトン類の1種類若しくは2種以上を重合して得られるポリラクトンあるいはかかるラクトン類とグリコール酸、乳酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体等のラクトン共重合体若しくはポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリヘキサメチレンオキザレート等が挙げられる。
これら低融点の生分解性重合体を50重量%未満、好ましくは10〜30重量%の範囲で添加することにより、得られる脂肪族ポリエステル共重合体フィルムの柔軟性、低温ヒートシールが向上する。
これら生分解性重合体の中でも、ポリε―カプロラクトン、ポリδ―バレロラクトン等のポリラクトンが特に好ましい。
かかるポリラクトンのメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0017】
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体組成物には、上記成分に加え、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0018】
脂肪族ポリエステル共重合体フィルム生分解性フィルム
本発明の脂肪族ポリエステル共重合体フィルムは、前記脂肪族ポリエステル共重合体組成物からなるフィルムである。
本発明の脂肪族ポリエステル共重合体フィルムは、無延伸フィルムであっても、一軸あるいは二軸延伸フィルムのいずれでもよい。
本発明の脂肪族ポリエステル共重合体フィルムは、印刷性あるいは他のフィルムとの接着性、滑り性等を改良するために、一方の表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
又、用途によっては脂肪族ポリエステル共重合体フィルムの片面に後述の基材層を貼り合せて種々の用途に用いることもできる。
【0019】
本発明の脂肪族ポリエステル共重合体フィルムは、種々公知の方法で製造し得る。例えば、脂肪族ポリエステル共重合体(A)とグリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)、ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)及び脂肪族カルボン酸(B−3)とをそれぞれ所定の量で配合した後、直接フィルム成形機に投入してT−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムにする方法、得られたフィルムを更に一軸あるいは二軸延伸して延伸フィルムにする方法、予め脂肪族ポリエステル共重合体(A)とグリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)、ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)及び脂肪族カルボン酸(B−3)とをそれぞれ所定の量で混合して押出機等で溶融混練して脂肪族ポリエステル共重合体組成物を得た後、T−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムに成形する方法、得られたフィルムを更に一軸あるいは二軸延伸して延伸フィルムにする方法を例示できる。
【0020】
基材層
本発明の脂肪族ポリエステル共重合体フィルムに用い得る基材層は、通常、包装材料として使用されている種々材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体等、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、スルホネート基含有芳香族ポリエステル等の生分解性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等から得られるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、ガラス、金属、アルミニューム箔、紙等が挙げられる。
基材として、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いる場合は無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。
これら基材層として、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、スルホネート基含有芳香族ポリエステル等の生分解性ポリエステルからなる基材層を用いると得られる脂肪族ポリエステル共重合体フィルムは生分解性を有するので好ましい。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0022】
実施例及び比較例等で使用したポリエステル等は次の通りである。
(A)脂肪族ポリエステル共重合体
(1)コハク酸・アジピン酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AD92W MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):87℃、密度:1.25g/cm
(B−1)グリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル
(1)グリセリンモノステアレート(b−1);理研ビタミン社製、商品名 S−100
(B−2)ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)
(1)ジグリセリンモノステアレート(b−2);理研ビタミン社製、商品名 S−71−D
(B−3)脂肪族カルボン酸
(1)ステアリン酸(b−3);理研ビタミン社製
(C)生分解性重合体
(1)ポリε―カプロラクトン(C−1)
ダイセル化学工業社製、商品名PH7、MFR(190℃、荷重2160g):2.0g/10分、融点60℃。
【0023】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)表面固有抵抗(Ω):シシド静電気株式会社製 スタチックオネストメータ タイプH−0110を用いて測定した。
(2)ブリード:フィルム表面を指先でこすることで、表面の性状の変化からブリードあり/なしを求めた。ありを×、なしを○で評価した。
【0024】
実施例1
<脂肪族ポリエステル共重合体組成物の製造>
脂肪族ポリエステル共重合体組成物として、脂肪族ポリエステル共重合体(A−1)、グリセリンモノステアレート(b−1)、ジグリセリンモノステアレート(b−2)及びステアリン酸(b−3)を表1に示す組成の比で夫々計量し、40mmφの1軸押出機を用いて200℃で溶融混練して各脂肪族ポリエステル共重合体を用意した。
<フィルム(無延伸フィルム)の製造>
先端にリップ幅:400mmのT−ダイを備えた40mmφ1軸押出機を用いシリンダー温度:180〜200℃、ダイ温度:220℃、チルロール温度:15℃、スクリュー回転数:40rpm、引取り速度:13m/分で、各脂肪族ポリエステル共重合体を押出し、厚さ30μmのフィルムを得た。
<延伸フィルムの製造>
同様に、先端にリップ幅:400mmのT−ダイを備えた40mmφ1軸押出機を用いシリンダー温度:180〜200℃、ダイ温度:220℃、チルロール温度:15℃、スクリュー回転数:120rpm、引取り速度:3m/分で、各脂肪族ポリエステル共重合体を押出し、厚さ230μmのシートを得て、延伸原反とした。
上記延伸用原反を、パンタグラフ式バッチ2軸延伸装置(東洋精機製作所、ヘビー型)を用いて85℃×30秒のホットエアーにより予熱した後、5m/分の速度で、縦横方向に4.0倍延伸(同時二軸延伸)した。また延伸後85℃雰囲気中で1分間ヒートセットした後、直ちに試料を扇風機で冷却し、厚さ約15μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルム及び二軸延伸フィルムを前記測定方法で各物性を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0025】
実施例2
実施例1で用いた脂肪族ポリエステル共重合体に代えて、脂肪族ポリエステル共重合体(A−1)/ポリカプロラクトン(C−1)=80/20で用いる以外は実施例1と同様に行い、フィルム(無延伸フィルム)を得た。
【0026】
比較例1〜5
実施例1で用いたグリセリンモノステアレート(b−1)等を表1に示す組成の比で夫々用いる以外は実施例1と同様に行い、フィルム及び二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルム及び二軸延伸フィルムの測定結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から、脂肪族ポリエステル共重合体(A)、または脂肪族ポリエステル共重合体(A)と生分解性重合体との組成物にグリセリンモノステアレート(b−1)、ジグリセリンモノステアレート(b−2)及びステアリン酸(b−3)を添加(併用)することにより、表面固有抵抗が格段に改良されたフィルム及び延伸フィルムが得られることが明らかである。
一方、グリセリンモノステアレート(b−1)等を併用しない場合は帯電防止性が十分発揮されず(比較例1、3、4及び5)、グリセリンモノステアレート(b−1)等の添加量を多くした場合(比較例2)は、帯電防止効果は発現するが、添加剤がフィルム表面にブリード・アウトし外観が悪くなる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の脂肪族ポリエステル共重合体フィルムは、生分解性を有し、且つ、帯電防止性、柔軟性に優れたれるので、かかる特性を活かし、各種包装用フィルム、特に、ラッピング包装等の自動充填包装用フィルムとして好適に使用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)に、グリセリン・脂肪族カルボン酸部分エステル(B−1)を500〜1400ppm、ジグリセリン・脂肪族カルボン酸エステル(B−2)を300〜800ppm及び脂肪族カルボン酸(B−3)を200〜500ppmの範囲で含む脂肪族ポリエステル共重合体組成物からなることを特徴とする脂肪族ポリエステル共重合体フィルム。
【請求項2】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある請求項1記載の脂肪族ポリエステル共重合体フィルム。
【請求項3】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)が、乳酸である請求項1若しくは2記載の脂肪族ポリエステル共重合体フィルム。
【請求項4】
脂肪族ポリエステル共重合体フィルムが延伸フィルムである請求項1〜3の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステル共重合体フィルム。
【請求項5】
延伸倍率が3×3以上の二軸延伸フィルムである請求項4記載の脂肪族ポリエステル共重合体フィルム。
【請求項6】
基材層の少なくとも片面に、請求項1〜3の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステル共重合体フィルムが積層されてなる積層フィルム。

【公開番号】特開2006−143841(P2006−143841A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334380(P2004−334380)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】