説明

脂肪族ポリエステル樹脂組成物

【課題】本発明の目的は、優れたガスバリア性を有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、脂肪族ポリエステル(A)および有機化された層状粘土鉱物(B)を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)であって、前記(C)の酸素透過係数の値が1cc・mm/atm・m・day以下であることを見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性に優れる脂肪族ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチックはそれぞれの物性を生かし、農業用、土木用、食品包装用、日用品用など様々な分野で利用されてきた。そのような物性のうちガスバリア性に優れているものは、例えば、除放性を利用した農薬散布、ガスバリア性あるいは保香性を生かした食品包装やボトル容器として利用されてきた。しかし、回収が困難な分野での利用は制限され、回収が可能な場合においても使用後の埋め立てや廃棄が問題となってきた。
【0003】
一方、上記のような環境にかかわる問題を解決する生分解性を有するプラスチックとして、近年、脂肪族ポリエステルは、農業用、土木用、食品包装用、日用品用と多岐にわたり使用することが期待されており、実用化に向けて物性の改良がおこなわれている。
【0004】
これまで脂肪族ポリエステルの物性が改良されてきた中で、ガスバリア性に関しても検討されてきた。(参考文献1)あるいは(参考文献2)のように層状粘土鉱物を混合する方法も有用な手段の一つであり、一定の効果は得られているが、既存のガスバリア材料のような実用的なレベルには程遠く、さらなる改良が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−17157号公報明細書
【特許文献2】特開2002−338796号公報明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、生分解性を有し、且つ良好なガスバリア性を持つ脂肪族ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、脂肪族ポリエステルに有機化された層状粘土鉱物を微分散させることにより、ガスバリア性を既存のガスバリア材料のレベルまで向上させることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル(A)および有機化された層状粘土鉱物(B)を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)であって、前記(C)の酸素透過係数の値が3cc・mm/atm・m・day以下であることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における脂肪族ポリエステル(A)を得るには、イ)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールを重縮合する方法、ロ)ヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)を重縮合する方法、ハ)多塩基酸(あるいはそのエステル)、グリコール、およびヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)を重縮合する方法、ニ)環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方法、ホ)環状エステルを開環重合する方法が挙げられる。
【0010】
イ)の方法で用いられる多塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸あるいはそれらのエステル等が挙げられ、グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、グリコール成分の一部としてポリオキシアルキレングリコールを使用することも可能であり、例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールおよびこれらの共重合体が例示される。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮するとコハク酸とエチレングリコールおよび/またはコハク酸と1,4−ブタンジオールの組合せが好ましい。脂肪族ポリエステル(A)の製造に際しては多塩基酸(あるいはそのエステル)成分およびグリコール成分の全量を初期混合し反応させてもよく、または反応の進行にともなって分割して添加してもさしつかえない。重縮合反応としては通常のエステル交換法またはエステル化法さらには両方の併用によっても可能であり、また必要により反応容器内を加圧または減圧にすることにより重合度を上げることができる。
【0011】
ロ)の方法で用いられるヒドロキシカルボン酸としては、例えばグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸、3−ヒドロキシ−3−メチル−酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、クエン酸、リンゴ酸あるいはそれらのエステル等が挙げられる。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮するとグリコール酸、乳酸の重合体が好ましい。重縮合反応としては通常のエステル交換法またはエステル化法さらには両方の併用によっても何らさしつかえなく、また必要により反応容器内を加圧または減圧にすることにより重合度を上げることができる。
【0012】
ハ)の方法で用いられる多塩基酸(あるいはそのエステル)、グリコール、およびヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)は前記イ)、ロ)の方法で挙げられたものをそれぞれ用いることができる。重縮合反応としては通常のエステル交換法またはエステル化法さらには両方の併用によっても可能であり、また必要により反応容器内を加圧または減圧にすることにより重合度を上げることができる。
【0013】
ニ)の方法で用いられる環状酸無水物としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮すると無水コハク酸とエチレンオキシドの組合せが好ましい。開環重合は公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
【0014】
ホ)の方法で用いられる環状エステルとしては、例えばβ−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。開環重合は公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
【0015】
重合反応はいずれも縦型反応器、回分式反応器、横型反応器、二軸押出し機などが用いられ、バルク状、あるいは溶液中での反応が実施される。
【0016】
エステル化触媒、開環重合触媒および脱グリコール触媒としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、カドミウム、マンガン、鉄、ジルコニウム、バナジウム、イリジウム、ランタン、セレンなどの金属、およびこれらの有機金属化合物、有機酸の塩、金属アルコキシド、金属酸化物などが挙げられ、必要に応じてリン酸等の助触媒と併用することも可能である。これらの触媒は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができ、添加量は全ジカルボン酸100モルに対して0.1モル以下が好ましく、より好ましくは0.8モル以下、さらに好ましくは0.6モル以下である。
【0017】
さらに必要に応じて鎖延長剤を用いて高分子量化することもできる。鎖延長剤としては、2官能以上のイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、ならびに多価金属化合物、多官能酸無水物、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられ、1種、または2種以上を組み合わせてもよい。
【0018】
イ)、ロ)、ハ)、ニ)、ホ)のいずれの方法によって得られたポリエステルも数平均分子量が10000よりも低い場合、さらにエステル交換反応で高分子量化しても良いし、種々の鎖延長剤と反応させて高分子量化しても良い。
【0019】
鎖延長剤としては、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、多価金属化合物、多官能酸無水物、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられ、1種、または2種以上を組み合わせてもよい。
【0020】
イソシアナート化合物としては特に制限はないが、1分子中にイソシアナート基を2個以上有するものであり、例えば、トリレンジイソシアナート(「TDI」とも言う)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(「MDI」とも言う)、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、メタキシリレンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、水素化ジフェニルメタンジイソシアナート、水素化トリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等のイソシアナート化合物;スミジュールN(住友バイエルウレタン社製)の如きビュレットポリイソシアナート化合物;デスモジュールIL、HL(バイエルA.G.社製)、コロネートEH(日本ポリウレタン工業(株)製)の如きイソシアヌレート環を有するポリイソシアナート化合物;スミジュールL(住友バイエルウレタン(株)社製)の如きアダクトポリイソシアナート化合物、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)の如きアダクトポリイソシアナート化合物等を挙げることができる。これらは、単独で使用し得るほか、2種以上を併用することもできる。また、ブロックイソシアナートを使用しても構わない。
【0021】
ポリエステルとイソシアナート化合物との反応比率は特に限定されないが、例えば、イソシアナート化合物が有するイソシアナート基とポリエステルが有する水酸基との比率(NCO/OH(モル比))が0.5〜3.0であることが好ましく、0.8〜1.5であることがより好ましい。
【0022】
なお、ポリエステルとイソシアネート化合物とのウレタン化反応を促進するために、必要に応じて、有機スズ化合物や第3級アミン等の公知の触媒を用いることは自由である。
【0023】
エポキシ化合物としては特に制限はないが、分子中に少なくとも二個エポキシ基を有するものであり、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ο−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
なお、ポリエステルとエポキシ化合物との反応を促進するために、必要に応じて、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール化合物等の公知の触媒を用いることは自由である。
【0025】
アジリジン化合物としては特に制限はないが、例えば2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、エチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ポリエチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、プロピレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ポリプロピレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、テトラメチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ポリテトラメチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、、N,N’−テトラメチレンビスエチレン尿素、N,N’−ペンタメチレンビスエチレン尿素、N,N’−ヘキサメチレンビスエチレン尿素、N,N’−ヘプタメチレンビスエチレン尿素、N,N’−オクタメチレンビスエチレン尿素、N,N’−フェニレンビスエチレン尿素、N,N’−トルイレンビスエチレン尿素、N,N’−ジフェニル−4,4’−ビスエチレン尿素、3,3’−ジメチルジフェニル4,4’−ビスエチレン尿素、3,3’−ジメトキシジフェニル4,4’−ビスエチレン尿素、ジフェニルメタンP,P−ビスエチレン尿素等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0026】
アジリジン化合物の使用量はポリエステルに対して0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0027】
オキサゾリン化合物としては特に制限はないが、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。これらの中から一種または二種以上を用いることができる。さらに好ましくは2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィドである。
【0028】
ポリエステルとオキサゾリン化合物との反応比率は特に限定されないが、例えば、オキサゾリン化合物が有する2−オキサゾリン基(Ox)とポリエステルが有するカルボキシル基(COOH)との比率(Ox/COOH(モル比))が0.5〜10.0であることが好ましく、0.8〜5.0であることがより好ましい。
【0029】
なお、ポリエステルとオキサゾリン化合物との反応を促進するために、必要に応じて、酸性化合物のアミン塩等の公知の触媒を用いることは自由である。
【0030】
多価金属化合物としては特に制限はないが、2価以上の有機金属化合物、金属塩および/または金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0031】
2価以上の有機金属化合物および/または金属塩の好ましい金属としては、亜鉛、カルシウム、銅、鉄、マグネシウム、コバルト、バリウムなどが挙げられる。さらに好ましくは中和後、反応系中から多価金属化合物の対アニオンを揮発分として分離・回収できる亜鉛(II)アセチルアセトネート、酢酸亜鉛、蟻酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。
【0032】
金属アルコキシドとしてはアルミニウムイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムエチレート、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタンなどが挙げられる。
【0033】
ポリエステルと多価金属化合物との反応比率は特に限定されないが、ポリエステル末端のカルボキシル基と2価以上の有機金属化合物および/または金属塩との中和反応の場合、例えば、金属化合物とポリエステルが有するカルボキシル基との比率(金属化合物/COOH(モル比))が0.1〜2.0であることが好ましく、0.2〜1.2であることがより好ましい。
【0034】
ポリエステル末端の水酸基と金属アルコキシドとの反応の場合、例えば、金属化合物とポリエステルが有する水酸基との比率(金属化合物/OH(モル比))が0.1〜2.0であることが好ましく、0.2〜1.2であることがより好ましい。
【0035】
多官能酸無水物としては特に制限はないが、例えば、二無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0036】
多官能酸無水物の使用量はポリエステルに対して0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0037】
リン酸エステルまたは亜リン酸エステルとしては特に制限はないが、ジエステル、トリエステルいずれでもよくエステル基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、2−エチルヘキシルなどが挙げられるが反応性、経済性を考慮するとメチル、エチル、フェニルが好ましい。
【0038】
リン酸エステルまたは亜リン酸エステルの使用量はポリエステルに対して0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0039】
鎖延長剤とポリエステルの反応温度は20〜250℃が好ましく、より好ましくは100〜200℃である。
【0040】
鎖延長剤とポリエステルとの反応方法は特に制限はないが、ポリエステルを適当な溶媒に溶かして鎖延長剤と反応させる方法、ポリエステルを加熱溶融させて鎖延長剤と反応させる方法などが挙げられる。
【0041】
以上のようにして得られる脂肪族ポリエステル(A)は1種であっても2種以上の共重合体でもかまわないが、ガスバリア性の観点から、ポリエチレンサクシネート系重合体、ポリグリコール酸系重合体が好ましい。また、成形性、柔軟性の観点から、ポリエチレンサクシネート系重合体が最も好ましい。
【0042】
ポリエチレンサクシネート系重合体、ポリグリコール酸系重合体とは、各々エチレンサクシネート単位、グリコール酸単位が50質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは70質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
【0043】
本発明における有機化された層状粘土鉱物(B)は市販品でも、新たに合成してもどちらでもよい。用いられる層状粘土鉱物としては、例えば、カオリナイト、ハロサイト等のカオリナイト族、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト等のスメクタイト族、膨潤性フッ素雲母等の天然物由来のものでも、天然物の処理品でも、合成品でもよい。
【0044】
本発明の効果は、層状粘土鉱物によるガス遮蔽効果によるものと考えられることから、ガスの平均流路をかせぐために、前記層状粘土鉱物としては平均粒径が好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であり、かつアスペクト比が大きいものが好ましい。このようなものを選択することにより、脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)の透明性、伸び率、結晶化、耐熱性、生分解性等の効果も期待できる。
【0045】
用いられる有機カチオンとしては、1級、2級、3級アミンおよびそれらの塩、4級のアンモニウム塩、有機ホスホニウム塩等がいずれも使用できる。1級アミンとしては、例えばオクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。2級アミンとしては、例えばジステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン等が挙げられる。3級アミンとしては、例えばジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。4級アンモニウムイオンとしては、例えばドデシルトリメチルアンモニウムイオン、ミリスチルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、アラキルトリメチルアンモニウムイオン、ベヘニルトリメチルアンモニウムイオン、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムイオン、セチルジメチルエチルアンモニウムイオン、ステアリルジメチルエチルアンモニウムイオン、アラキルジメチルエチルアンモニウムイオン、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムイオン、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムイオン、セチルジエチルメチルアンモニウムイオン、ステアリルジエチルメチルアンモニウムイオン、アラキルジエチルメチルアンモニウムイオン、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルセチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムイオン、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムイオン、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムイオン、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムイオン、ドデシルモノメチルジエタノールアンモニウムイオン、ジオクタジメチルアンモニウムイオン、オレイルビスメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。有機ホスホニウムイオンとしては、例えばテトラエチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムイオン、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムイオン、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウムイオン等が挙げられる。これらの有機カチオンは単独で使用しても良いが2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0046】
本発明において脂肪族ポリエステル(A)と有機化された層状粘土鉱物(B)との相溶性が良い場合に、特に本発明の効果が得られるため、前記有機カチオンとしては、層状粘土鉱物の層間を広げるのに十分な鎖長を持ち、脂肪族ポリエステル(A)と相溶性があるものが好ましい。
【0047】
層状粘土鉱物を上記有機カチオンで処理する方法としては、層状粘土鉱物を水、アルコール等の溶媒に懸濁させ、有機カチオンを塩の形で添加撹拌した後、ろ別・洗浄・乾燥して得られる。
【0048】
前記脂肪族ポリエステル(A)と有機化された層状粘土鉱物(B)との混合方法としては、i)脂肪族ポリエステル(A)を構成するモノマーに有機化された層状粘土鉱物(B)を分散させ、脂肪族ポリエステル(A)を合成する方法、ii)脂肪族ポリエステル(A)と有機化された層状粘土鉱物(B)を溶媒中で混合した後、溶媒を除去する方法、iii)脂肪族ポリエステル(A)と有機化された層状粘土鉱物(B)を溶融混練する方法、等が挙げられるが、簡易な点で、iii)の方法が適している。
【0049】
前記脂肪族ポリエステル(A)に対する有機化された層状粘土鉱物(B)の混合割合としては、前者100重量部に対して後者が好ましくは0.01〜50重量部であり、さらに好ましくは0.1〜10重量部であり、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。0.01重量部より少ない場合、いかに分散性に優れていても本発明の効果が現れず、50重量部より多い場合、フィルム化に困難で、透明性、伸び率といった他の物性を犠牲にするため現実的ではない。
【0050】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)には必要に応じて他の成分、例えば結晶核剤、顔料、染料、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、強化材、難燃剤、可塑剤、抗菌剤、生分解しない他の重合体を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0051】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)は、(B)成分を(A)成分中に任意の方法によって分散させ複合化することによって調製されるが、この脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)のJIS K7126(差圧法)における酸素透過係数の値が0以上、1cc・mm/atm・m・day以下、好ましくは0.8cc・mm/atm・m・day以下、さらに好ましくは0.5cc・mm/atm・m・day以下になるように配合されなければならない。
【0052】
この酸素透過性は市販の装置、例えば東洋精機製GTR TESTERを用いて常法により測定することができる。例えば前記脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)を圧縮成形することにより得られた厚さがおよそ100μmのフィルムを、25℃で1日放置した後、測定前に減圧脱揮しフィルム内の水分を十分除いた後、フィルムの片側を大気圧と同程度の酸素で満たし高圧部とし、逆側を真空状態に保ち低圧部とした際の低圧部における圧力変化を測定することにより酸素透過係数を求めることができる。
【0053】
通常、脂肪族ポリエステルはこのような酸素透過係数が3cc・mm/atm・m・dayより大きい値であるため、既存のガスバリア性が必要とされる分野には利用できない。
【0054】
これに対して、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)においては、酸素透過係数が3cc・mm/atm・m・day以下である。そして、この係数の値は0以上、3cc・mm/atm・m・day以下、好ましくは2cc・mm/atm・m・day以下、さらに好ましくは1cc・mm/atm・m・day以下である。
【0055】
従って、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)の場合はガスバリア性に優れ、かつ生分解性を有するため、コーティング剤、フィルム、シート、ボトルなどの成形品として利用することができる。より具体的には、コーティング剤としては、例えば除放性農薬、肥料のコーティング剤、種子コーティング、フィルム成形品としては、例えばシュリンクフィルム、ラップフィルム、食品包装、ゴミ袋、風船、緩衝材、梱包材、シート成形品としては、例えば紙おむつ、生理用品、ボトル成形品としては、例えばリンス、シャンプー、化粧品、飲料などのボトル、など多岐にわたる用途が挙げられる。
【0056】
また、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)のJIS Z0208(カップ法)における水蒸気透過係数の値は0以上、20g・mm/m・day以下、好ましくは15g・mm/m・day以下、さらに好ましくは10g・mm/m・day以下である。
【0057】
この水蒸気透過性は市販の装置、例えば安田精機製透湿カップを用いて常法により測定することができる。例えば圧縮成形により得られた厚さがおよそ100μmのフィルムを、25℃で1日放置した後、カップ内に塩化カルシウムを適量入れ、その上にフィルムを載せた後、封蝋することでカップ内を外部と遮断し、外部を温度40℃、湿度90%に保ち、カップ内の塩化カルシウムの含水量の変化を測定することで水蒸気透過係数を求めることができる。
【0058】
本発明における脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)は脂肪族ポリエステル(A)および有機化された層状粘土鉱物(B)を必須成分として含み本願発明の効果を損なわない限り、1種以上の脂肪族ポリエステル(A)以外の生分解性樹脂(D)を含んでも良い。この際、脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)の含有量は30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上であり、生分解性樹脂(D)の含有量は70質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。
【0059】
生分解性樹脂(D)としては、脂肪族ポリエステル、芳香族ジカルボン酸を構成単位として含む生分解性樹脂、天然物系の生分解性樹脂等が挙げられる。
【0060】
脂肪族ポリエステルとしてはポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンオキザレート、ポリブチレンオキザレート、ポリネオペンチルオキザレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリグリコール酸やポリ乳酸などのようなポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(β−プロピオラクトン)のようなポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシカプロレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)のようなポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)とポリ(4−ヒドロキシブチレート)、などが挙げられ、これらの共重合体でも良い。
【0061】
芳香族ジカルボン酸を構成単位として含む生分解性樹脂としてはポリエチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレートなどであり、BASF社製のエコフレックス、イーストマン社製のイースターバイオ、デュポン社製のバイオマックスなどが挙げられる。
【0062】
天然物系の生分解性樹脂としては修飾デンプン、変性デンプン、セルロース、変性セルロース、酢酸セルロース、キトサンなどが挙げられる。
【0063】
本発明の樹脂組成物の形態としては、上述の組成割合を満たす範囲であれば、脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)と生分解性樹脂(D)との単なるブレンドであってもよいし、また、それぞれの樹脂を積層した形態であってもよい。さらに樹脂組成物と脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)を積層した形態、または樹脂組成物と生分解性樹脂(D)とを積層した形態であってもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0065】
(生分解性試験)
生分解性は、吹田市西御旅町5−8(株)日本触媒の敷地内において、5cm角のフィルムを半年間埋設した後の減少割合を次のように評価した。
60%以上:○、10%以上60%未満:△、10%未満:×
【0066】
(実施例1〜4)
エチレングリコール、コハク酸、トリメチロールプロパンがモル比でそれぞれ、103、100、0.2の割合で縮重合、脱グリコール反応をおこない、更にヘキサメチレンジイソシアネートで鎖延長した重量平均分子量24万、MFR値4.7(190℃、2.14kg)のポリエチレンサクシネート36gおよび有機化された市販層状粘土鉱物(表1)を所定量東洋精機製ラボプラストミルを用いて150℃、30rpmの条件下で5分間混練をおこなった。得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を150℃で圧縮成形を行い、25℃で1日放置して結晶化を安定させた後、酸素透過係数、水蒸気透過係数の測定をおこなった。結果を表2に示す。
【0067】
(実施例5)
実施例1で作成した組成物32.4gおよびラクチドから合成した融点165℃のポリ乳酸3.6gを東洋精機製ラボプラストミルを用いて180℃、30rpmの条件下で5分間混練をおこなった。得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を150℃で圧縮成形を行い、25℃で1日放置して結晶化を安定させた後、酸素透過係数、水蒸気透過係数の測定をおこなった。結果を表2に示す。
【0068】
(比較例1)
実施例1で作成したポリエチレンサクシネートを150℃で圧縮成形を行い、25℃で1日放置して結晶化を安定させた後、酸素透過係数、水蒸気透過係数の測定をおこなった。結果を表2に示す。
【0069】
(比較例2)
昭和高分子製ビオノーレ1001(ポリブチレンサクシネート)36gを用いた以外は実施例1と同様にして組成物を作成し、得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を150℃で圧縮成形を行い、25℃で1日放置して結晶化を安定させた後、酸素透過係数の測定をおこなった。結果を表2に示す。
【0070】
(比較例3)
ラクチドから合成した融点165℃のポリ乳酸36gを用い、混練温度を180℃とした以外は実施例1と同様にして組成物を作成し、得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を180℃で圧縮成形を行い、25℃で1日放置して結晶化を安定させた後、酸素透過係数の測定をおこなった。結果を表2に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
上表を比べると、明らかに本実施例は比較例に対して酸素バリア性に優れることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、生分解性材料を実用的なレベルで使用することができる。
本発明で得られる脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、ガスバリア性に優れており、フィルム、シート、ボトル等での利用、包装材料や日用雑貨品等に有効に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル(A)および有機化された層状粘土鉱物(B)を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物(C)であって、前記(C)の酸素透過係数の値が3cc・mm/atm・m・day以下であることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−199729(P2006−199729A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9938(P2005−9938)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】