説明

脂肪族ポリエステル組成物、それからなるフィルム及び積層フィルム

【課題】透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に優れた包装用フィルムを得るに適した脂肪族ポリエステル組成物、それからなるフィルム及び積層フィルムを開発することを目的とする。
【解決手段】融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)からなることを特徴とする脂肪族ポリエステル組成物、それからなるフィルム及び積層フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に優れた包装用フィルムを得るに適した生分解性を有する脂肪族ポリエステル組成物、それからなるフィルム及び積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、各種フィルムが開発されて来ている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。
ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂の剛性を改良する方法として、脂肪族ポリエステルとして、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分を共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(たとえば、特許文献1参照)、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分若しくはラクトンを共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(たとえば、特許文献2参照)が提案されている。
一方、かかる脂肪族ポリエステル共重合体の物性を改良する目的で、ポリ乳酸を添加する方法が提案されている(たとえば、特許文献3、特許文献4参照)。
しかしながら、これら脂肪族ポリエステル共重合体によっては柔軟性が未だ不十分で、耐衝撃性も劣る虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−239461号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平8−311181号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平9−272789号公報(請求項1)
【特許文献4】WO 02/44249 A1号公報(95頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に優れた包装用フィルムを得るに適した生分解性を有する脂肪族ポリエステル組成物、それからなるフィルム及び積層フィルムを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35重量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65重量%からなることを特徴とする脂肪族ポリエステル組成物、かかる組成物からなるフィルム及び積層フィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の脂肪族ポリエステル組成物から、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に優れた包装用フィルムに好適なフィルムが得られる。また本発明のフィルムからなる基材フィルムの片面に生分解性樹脂組成物層を積層してなる積層フィルムは、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に加え、低温ヒートシール性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、融点(Tm)が80〜120℃、好ましくは80〜115℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃、好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)である。
融点(Tm)が80℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムを基材層として用いるには融点が低過ぎ、包装用フィルムとして用いた場合、ヒートシールする際に、ヒートシールバーにフィルムが融着する虞があり、包装適性に劣る。一方、融点(Tm)が120℃を越える脂肪族ポリエステル共重合体は、結果として2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が少なく、得られるフィルムの柔軟性が損なわれる虞がある。
結晶化温度(Tc)が35℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、結晶化温度が低過ぎ、かかる共重合体からフィルムを得ようとしても、通常の冷却温度(5〜30℃)では完全に固化せず、得られるフィルムにニップロール等の押し跡が転写されたり、冷却ロールから容易に剥がれず、外観に劣るフィルムとなる虞がある。
(Tm)−(Tc)が30℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムは耐衝撃性、耐突刺し性に劣る虞がある。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)に後述の脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を添加した脂肪族ポリエステル組成物をフィルム基材に用い、且つ脂肪族ポリエステル共重合体(A)に後述の生分解性樹脂(C)を添加した生分解性樹脂組成物を熱融着層として、積層フィルムとする場合は、脂肪族ポリエステル組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は融点(Tm)が90〜120℃の共重合体を用い、生分解性樹脂組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は融点(Tm)が80〜95℃の共重合体を用い、且つ脂肪族ポリエステル組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合(A)の融点(Tm)より低い共重合体とすることにより、脂肪族ポリエステル組成物から得られるフィルム基材と生分解性樹脂組成物から得られる熱融着層との融点差を大きくすることができ、低温ヒートシール性に優れ、ピロー包装適性に優れた積層フィルムが得られるので好ましい。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0008】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、コハク酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(A)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。
【0009】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0010】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。
かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等、かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。
【0011】
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)としては、例えば、三菱化学株式会社からGS Pla(商品名)として製造・販売されている。
【0012】
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなるポリエステルである。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)と芳香族ジカルボン酸成分(b2)との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、好ましくは、融点が50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、より好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルムが成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0013】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものである。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、特に、アジピン酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の加水分解性や生分解性を向上させ、得られるフィルムを柔軟にする。
【0014】
芳香族ジカルボン酸成分(b2)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である芳香族ジカルボン酸成分(b2)は、特に限定はされないが、通常、8〜12個の炭素原子を有する化合物、とくに8個の炭素原子を有する化合物が挙げられる。
かかる芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸のジ−C1〜C6アルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等を例示できる。
これら芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、特に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(b2)は80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%の範囲にある。芳香族ジカルボン酸成分(b2)を共重合することにより、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の耐熱性を保ちながら、柔軟なポリエステルが得られる。
【0015】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、とくには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
【0016】
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)としては、例えば、BASF社からECOFLEX(商品名)として製造・販売されている。
【0017】
生分解性重合体(C)
本発明に係わる生分解性重合体(C)は、融点(Tm)が45〜80℃未満、好ましくは55〜75℃の範囲の重合体であり、具体的には、ε―カプロラクトン、δ―バレロラクトン、β−メチル−δ―バレロラクトン等のラクトン類の1種類若しくは2種以上を重合して得られるポリラクトンあるいはかかるラクトン類とグリコール酸、乳酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体等のラクトン共重合体あるいはポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリヘキサメチレンオキザレート等が挙げられる。
これら生分解性重合体の中でも、ポリε―カプロラクトン、ポリδ―バレロラクトン等のポリラクトンが特に好ましい。
かかるポリラクトンのメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0018】
脂肪族ポリエステル組成物
本発明の脂肪族ポリエステル組成物は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35重量%、好ましくは95〜40重量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65重量%、好ましくは5〜60重量%からなる。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の量が2重量%未満の組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性等が改良されない虞があり、一方、65重量%を越える組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性、突刺し破壊エネルギー等が低下する虞がある。
これら脂肪族ポリエステル組成物の中でも、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜65重量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜35重量%からなる組成物が、得られるフィルムの耐衝撃性、突刺し破壊エネルギーが共に優れるので好ましい。
本発明の脂肪族ポリエステル組成物には、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の夫々別個に、あるいは組成物を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0019】
生分解性重合体組成物
本発明に係わる生分解性重合体組成物は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が95〜10重量%、好ましくは90〜70重量%及び前記生分解性重合体(C)が5〜90重量%、好ましくは10〜30重量%からなる。
本発明に係わる生分解性重合体組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)として、融点(Tm)が80〜95℃の共重合体、より好ましくは80〜90℃の範囲の共重合体を用いると、前記本発明の脂肪族ポリエステル組成物から得られるフィルムと積層して低温ヒートシール性に優れた積層フィルムとすることができるので好ましい。
生分解性重合体(C)の量が5重量%未満の組成物は、得られる積層フィルムの低温ヒートシール性が改良されない虞があり、一方、90重量%を越える組成物は、融点が低くなり過ぎ、フィルム成形性に劣り、得られる積層フィルムがブロッキングする虞がある。
本発明に係わる生分解性重合体組成物には、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び生分解性重合体(C)の夫々別個に、あるいは組成物を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0020】
フィルム
本発明のフィルムは、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35重量%、好ましくは95〜40重量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65重量%、好ましくは5〜60重量%との脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルムである。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の含有量が2重量%未満の組成物からなるフィルムは、耐衝撃性等が改良されない虞があり、一方、65重量%を越える組成物からなるフィルムは、耐衝撃性、突刺し破壊エネルギー等が低下する虞がある。
本発明のフィルムに用いる脂肪族ポリエステル組成物の構成成分である脂肪族ポリエステル共重合体(A)は前記したように、融点(Tm)が80〜120℃、好ましくは80〜115℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃、好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲にあること、即ち、(冷却時の)結晶化温度が低い(結晶化が遅い)共重合体であることが必要であり、例えば、融点(Tm)が上記範囲にある脂肪族ポリエステル共重合体であっても、結晶化温度(Tc)が76〜80℃と高い温度(結晶化が速い)、即ち、(Tm)−(Tc)が26〜29℃と30℃未満の共重合体を用いた場合は、得られるフィルムは突刺し破壊エネルギーに劣り、被包装物の形状によっては輸送時に破れる虞がある。
本発明のフィルムの厚さは、用途に応じて種々決め得るが、通常10〜200μm、好ましくは20〜100μmの範囲にある。
本発明のフィルムは、印刷性あるいは他のフィルムとの接着性、滑り性等を改良するために、一方の表面を、たとえば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
又、用途によってはフィルムの片面に後述の基材層を貼り合せて種々の用途に用いることもできる。
【0021】
本発明のフィルムは、種々公知の方法で製造し得る。例えば、脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を所定の量で配合した後、直接フィルム成形機に投入してT−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムにする方法、予め脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)とを所定の量で混合して押出機等で溶融混練して脂肪族ポリエステル組成物を得た後、T−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムに成形する方法を例示できる。
【0022】
積層フィルム
本発明の積層フィルムは、前記脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム基材の少なくとも片面に、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)と前記生分解性重合体(C)との生分解性重合体組成物からなる熱融着層が積層されてなる積層フィルムである。
本発明の積層フィルムは、前記したように、脂肪族ポリエステル組成物(フィルム基材)に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)として融点(Tm)が90〜110℃の共重合体を用い、生分解性樹脂組成物(熱融着層)に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)として融点(Tm)が80〜95℃の共重合体を用い、且つ生分解性樹脂組成物(熱融着層)に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)として、脂肪族ポリエステル組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)より低い共重合体とすることにより、低温ヒートシール性に優れる積層フィルムが得られるので好ましい。
本発明の積層フィルムの厚さは、用途に応じて種々決め得るが、通常、脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルムの厚さが10〜200μm、好ましくは20〜100μm及び生分解性重合体(C)との生分解性重合体組成物からなる熱融着層の厚さが2〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲にある。
本発明の積層フィルムは、印刷性あるいは他のフィルムとの接着性、滑り性等を改良するために、一方の表面を、たとえば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
又、用途によっては積層フィルムの片面に後述の基材層を貼り合せて種々の用途に用いることもできる。
【0023】
本発明の積層フィルムは、種々公知の方法で製造し得る。例えば、フィルム基材を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)並びに脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び生分解性重合体(C)を夫々所定の量で配合し、直接二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムとする方法、予め脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)並びに脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び生分解性重合体(C)を夫々所定の量で配合した後、溶融混練して脂肪族ポリエステル組成物及び生分解性樹脂組成物を得た後、二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムとする方法あるいは夫々別個に脂肪族ポリエステル組成物及び生分解性樹脂組成物からなるフィルムを成形した後貼り合せてもよい。
【0024】
基材層
本発明の脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム若しくは積層フィルムと貼り合せて用いられる基材層は、通常、包装材料として使用されている種々材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体等、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、スルホネート基含有芳香族ポリエステル等の生分解性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等から得られるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、ガラス、金属、アルミニューム箔、紙等が挙げられる。基材として、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いる場合は無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0026】
実施例及び比較例等で使用したポリエステル等は次の通りである。
(A)脂肪族ポリエステル共重合体(A)
(1)コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AZ91T、MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):108.9℃、結晶化温度(Tc):68.0℃、(Tm)−(Tc):40.9℃、密度:1.25g/cm3。
(2)コハク酸・アジピン酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−2)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AD92W、MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):86.9℃、結晶化温度(Tc):40.4℃、(Tm)−(Tc):46.5℃、密度:1.25g/cm3。
(B)脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
(1)アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)
テレフタル酸:46モル%、アジピン酸:54モル%及び1,4−ブタンジオール:100モル%、BASF社製、商品名 ECOFLEX、MFR(190℃、荷重2160g):3g/10分、融点(Tm):112℃、密度:1.26g/cm3。
(C)生分解性重合体(C)
(1)ポリε―カプロラクトン(C−1)
ダイセル化学工業社製、商品名 PH7、MFR(190℃、荷重2160g):2.0g/10分、融点(Tm):60℃。
【0027】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)ヘイズ(HZ)及び平行光線透過率(PLT)
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)及び平行光線透過率(PT:%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
(3)突き刺し試験
試験片として、フィルムから長さ:80mm、幅:60mmの長方形の試験片を切出し、当該試験片を、一方の表面に試験片が外れないようにゴムリングを備えた中心部に内径(直径)が25mmの孔を有する2枚の円形状の金属プレートで挟持し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて、試験片の中央部に試験片面に対し垂直方向から直径1mmの半球状の先を持つ針を50mm/分の速度で突き刺し、破断点荷重(N)及び破断点伸び(mm)を求めると共に、得られた応力―歪曲線で囲まれた部分の面積(重量)を測定することにより突刺し破壊に要するエネルギー(突刺し破壊エネルギー:mJ)を求めた。
(4)インパクトテスト
試験片として、フィルムから長さ:90mm、幅:90mmの正方形の試験片を切出し、半球直径:1/2インチの衝撃頭を取り付けたフィルム衝撃試験機(東洋精機製作所製:フィルムインパクトテスター)を用い、直径2インチの孔の上に試験片を置き、直径2インチの筒で上から挟み込んで固定した後、衝撃強度(mJ)を測定した。
(5)ヒートシール強度
単層フィルムについては、予め、延伸倍率3.0×3.0、厚さ25μmのポリ乳酸二軸延伸フィルムにウレタン系接着剤(武田薬品工業製:商品名タケラックA310(60%)+同A8(5%)+酢酸エチル(35%))を用い、単層フィルムをドライラミネートして厚さ57〜58μmの測定用ラミネートフィルムを用意した。
次いで、測定用ラミネートフィルムのフィルム面を重ね合わせて、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm2、時間:1秒の条件下で熱融着した。尚、加熱は上側のみとした。
熱融着したラミネートフィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を熱融着強度とした。
積層フィルムについては、熱融着層面同士を重ね合わせた後に、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm2、時間:1秒の条件下で熱融着した。尚、加熱は上側のみとした。
熱融着した積層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を熱融着強度とした。
【0028】
実施例1〜6
<脂肪族ポリエステル組成物の製造>
脂肪族ポリエステル組成物として、コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)及びアジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)を表1に示す組成比で夫々計量し、40mmφの1軸押出機を用いて200℃で溶融混練して各脂肪族ポリエステル組成物を用意した。
<フィルム(単層フィルム)の製造>
先端にリップ幅:300mmのT−ダイを備えた40mmφ1軸押出機を用いシリンダー温度:180〜200℃、ダイ温度:220℃、チルロール温度:15℃、スクリュー回転数:40rpm、引取り速度:13m/分で、各脂肪族ポリエステル組成物を押出し、フィルムを得た。
得られたフィルムを前記測定方法で各物性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0029】
比較例1
実施例1で用いた脂肪族ポリエステル組成物に代えて、コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)を単独で用いる以外は実施例1と同様に行い、フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0030】
比較例2
実施例1で用いた脂肪族ポリエステル組成物に代えて、コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1):アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)の比を30:70(重量比)で溶融混練した組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0031】
比較例3
実施例1で用いた脂肪族ポリエステル組成物に代えて、コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1):アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)の比を20:80(重量比)で溶融混練した組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0032】
比較例4
実施例1で用いた脂肪族ポリエステル組成物に代えて、アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)を単独で用いる以外は実施例1と同様に行い、フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から、脂肪族ポリエステル共重合体(A)に脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を添加することにより、衝撃強度(衝撃エネルギー)が格段に改良されたフィルムが得られ、一方、フィルムの突刺し破壊エネルギーは脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の量が増すにしたがい、低下していくことが明らかである。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を本発明の範囲(2〜65重量%)で含む脂肪族ポリエステル組成物から得られるフィルム(実施例1〜6)は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)単体からなるフィルム(比較例1)に比べて衝撃エネルギーが371mJ以上と優れ、且つ、突刺し破壊エネルギーも4mJ以上である。
とくに、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の量が5〜35重量%の範囲にある脂肪族ポリエステル組成物から得られるフィルム(実施例1〜3)は、衝撃エネルギーが479mJ以上と格段に優れ、突刺し破壊エネルギーも5.6mJ以上と、耐衝撃強度に優れている。
一方、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を65重量%を越えて含む脂肪族ポリエステル組成物から得られるフィルム(比較例2〜3)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)単体から得られる(比較例4)は、衝撃エネルギー及び突刺し破壊エネルギーが共に低く、耐衝撃性に劣ったフィルムである。
【0035】
実施例7、8及び比較例5
<基材層用脂肪族ポリエステル組成物の製造>
積層フィルムの基材層に用いる脂肪族ポリエステル組成物として、コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)及びアジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)を表2に示す組成比で夫々計量し、40mmφの1軸押出機を用いて200℃で溶融混練して各脂肪族ポリエステル組成物を用意した。
<熱融着層用生分解性重合体組成物の製造>
積層フィルムの熱融着層に用いる生分解性重合体組成物として、コハク酸・アジピン酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−2)及びポリε―カプロラクトン(C−1)を表2に示す組成比で夫々計量し、40mmφの1軸押出機を用いて200℃で溶融混練して各生分解性重合体組成物を用意した。
<積層フィルムの製造>
二台の40mmφ1軸押出機の先端にリップ幅:300mmのT−ダイ(多層ダイ)を備えた多層フィルム成形機を用い、ダイ温度:220℃及びチルロール温度:15℃に設定し、基材層の押出機のシリンダー温度を180〜200℃、スクリュー回転数を20rpmに、熱融着層の押出機のシリンダー温度を180〜200℃、スクリュー回転数を30rpmに設定し、引取り速度:20m/分で基材層と熱融着層の層比を40:60で各脂肪族ポリエステル組成物及び各生分解性重合体組成物を共押出し成形し、二層構成の積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2から、脂肪族ポリエステル共重合体(A)とポリカプロラクトン(C)との生分解性重合体組成物からなる熱融着層を備えた積層フィルム(実施例7、8)は、低温ヒートシール性に優れていることが明らかである。一方、熱融着層として脂肪族ポリエステル共重合体(A)を単独で用いた積層フィルム(比較例5)は低温ヒートシール性に劣ることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の脂肪族ポリエステル組成物から、生分解性を有し、且つ、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に優れた包装用フィルムに好適なフィルムが得られるので、かかる特性を活かし、柔軟でラッピング包装等の自動充填包装用フィルムとして使用できる。
また本発明のフィルムからなる基材フィルムの片面に生分解性樹脂組成物層を積層してなる積層フィルムは、生分解性を有し、且つ、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に加え、低温ヒートシール性に優れているので、合掌貼りタイプのピロー、2方シール、3方シール包装機用のフィルムとして、あるいはオーバーラップ包装機用のフィルムとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35重量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65重量%からなる脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルムの少なくとも片面に、脂肪族ポリエステル共重合体(A)95〜10重量%及び融点(Tm)が45〜80℃未満の生分解性重合体(C)5〜90重量%との生分解性重合体組成物からなる熱融着層が積層されてなる積層フィルム。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、前記2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)が、乳酸である請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記生分解性重合体(C)が、ポリラクトンである請求項1から3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記生分解性重合体組成物を構成する前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)が80〜95℃の範囲であり、且つ前記脂肪族ポリエステル組成物を構成する前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)より低い脂肪族ポリエステル共重合体である請求項1から4のいずれか1項に記載の積層フィルム。

【公開番号】特開2011−11556(P2011−11556A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196184(P2010−196184)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【分割の表示】特願2004−148022(P2004−148022)の分割
【原出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】