説明

脂肪族・芳香族ポリエステル組成物及びその用途

【課題】柔軟性、開封・密封性、成形加工性に優れたチャックを得るに好適な生分解性を有する樹脂組成物及びそれからなるチャックを開発することを目的とする。
【解決手段】脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(a2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(A)99.95〜95重量%及びポリブチレン・テレフタレート(B)0.05〜5重量%からなることを特徴とする脂肪族・芳香族ポリエステル組成物、それからなるチャック及び袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、開封・密封性(咬合性)、成形加工性に優れたチャックを得るに好適な生分解性を有する脂肪族・芳香族ポリエステル組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、各種フィルムが開発されて来ている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。
そして、それら生分解性フィルムからなる包装用袋の口部をも生分解性樹脂からなるチャックを備えた生分解性チャック付き袋が提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
しかしながら、1,4−ブタンジオール・コハク酸共重合体からなるチャックは柔軟性が不十分であり、また、脂肪族・芳香族ポリエステルからなるチャックは柔軟性には優れるが、脂肪族・芳香族ポリエステルは微結晶性樹脂であるため、チャックの成形加工性が不安定な場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−146936号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2000−264343号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2004−244553号公報(実施例10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、柔軟性、開封・密封性、成形加工性に優れたチャックを得るに好適な生分解性を有する樹脂組成物及びそれからなるチャックを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(a2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(A)99.95〜95重量%及びポリブチレン・テレフタレート(B)0.05〜5重量%からなることを特徴とする脂肪族・芳香族ポリエステル組成物、かかる組成物からなるチャック及びかかるチャックを口部に備えてなる袋に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物は異形押出成形した際に成型物の形状保持性が優れるので良好な外観のチャックを容易に得ることができる。又、かかる脂肪族・芳香族ポリエステル組成物からなるチャックは生分解性を具備し、且つ柔軟性、開封・密封性(咬合性)に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
脂肪族・芳香族ポリエステル(A)
本発明の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物を構成する成分の一つである脂肪族・芳香族ポリエステル(A)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(a2)80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)からなるポリエステルである。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)は脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と芳香族ジカルボン酸成分(a2)との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)は、好ましくは、融点が50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、より好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、チャックが押出成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0008】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものである。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、アジピン酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(A)の酸成分中の脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、脂肪族・芳香族ポリエステル(A)の加水分解性や生分解性を向上させ、得られるフィルムを柔軟にする。
【0009】
芳香族ジカルボン酸成分(a2)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)を構成する成分である芳香族ジカルボン酸成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、8〜12個の炭素原子を有する化合物、特に8個の炭素原子を有する化合物が挙げられる。
かかる芳香族ジカルボン酸成分(a2)としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸のジ−C1〜C6アルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等を例示できる。
これら芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
芳香族ジカルボン酸成分(a2)としては、特に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(A)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(a2)は80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%の範囲にある。芳香族ジカルボン酸成分(a2)を共重合することにより、脂肪族・芳香族ポリエステル(A)の耐熱性を保ちながら、柔軟なポリエステルが得られる。
【0010】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
【0011】
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)としては、例えば、BASF社からECOFLEX(商品名)として製造・販売されている。
【0012】
ポリブチレン・テレフタレート(B)
本発明の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物を構成する他の成分であるポリブチレン・テレフタレート(B)は、通常、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)として一般に製造・販売されている、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸若しくはテレフタル酸ジメチルとを重合して得られるポリエステルであり、融点が210〜230℃、好ましくは220〜225℃の範囲にある。また、ポリブチレン・テレフタレート(B)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、250℃、荷重2160g)は、前記脂肪族・芳香族ポリエステル(A)と混合した組成物が押出成形できる限り特に限定はされないが、通常1〜100g/10分、好ましくは5〜90g/10分、さらに好ましくは10〜80g/10分の範囲にある。
又、本発明に係るポリブチレン・テレフタレート(B)としては、例えば、ウインテックポリマー社からジュラネックス(商品名)、東レ社からトレコン(商品名)、BASF社からウルトラデュアー(商品名)として製造・販売されている。
【0013】
脂肪族・芳香族ポリエステル組成物
本発明の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物は、前記脂肪族・芳香族ポリエステル(A)が99.95〜95重量%、好ましくは99.9〜97重量%及びポリブチレン・テレフタレート(B)が0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%からなる組成物である。
ポリブチレン・テレフタレート(B)の量が0.05重量%未満の組成物は、溶融押出物の固化性が改良されず、得られるチャックの形状が不安定になる虞があり、5重量%を超える組成物は得られるチャックの柔軟性、生分解性が損なわれる虞がある。
脂肪族・芳香族ポリエステル組成物のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、チャックが押出成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜10g/10分、好ましくは0.2〜5g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
本発明の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物には、脂肪族・芳香族ポリエステル(A)及びポリブチレン・テレフタレート(B)の夫々別個に、あるいは組成物を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0014】
チャック
本発明のチャックは、前記脂肪族・芳香族ポリエステル組成物からなるチャックであり、凹部が形成されてなる咬合部と凸部が形成されてなる咬合部を有してなる。
本発明のチャックはチャック咬合部の裏面に生分解性樹脂製テープ、特に熱融着性に優れた生分解性樹脂製テープを積層しておくことにより、生分解性樹脂製フィルムからなる袋の口部に容易にチャックを熱融着することができる。
生分解性樹脂製テープとしては、好ましくはポリ乳酸から得られる二軸延伸フィルムを中間層とし、その両面に融点が60〜120℃の範囲の生分解性樹脂から得られる無延伸フィルムを積層してなる積層フィルムから得られる生分解性樹脂製テープが好ましい。かかる構成の生分解性樹脂製テープを用いることにより、溶融押出されたチャックと容易に当該テープを熱融着することができ、且つ得られるチャックを容易に袋口部に熱融着することができる。
かかる生分解性樹脂としては種々公知の生分解性樹脂、例えば、D−乳酸若しくはL−乳酸の含有量が5重量%未満、好ましくは3重量%未満のL−乳酸若しくはD−乳酸の単独重合体若しくは共重合体等のポリ乳酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族又は脂環族ジヒドロキシ化合物あるいはかかる脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族又は脂環族ジヒドロキシ化合物とε―カプロラクトン、δ―バレロラクトン等のラクトン類若しくはグリコール酸、乳酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体からなる脂肪族系ポリエステル;ε―カプロラクトン、δ―バレロラクトン、β−メチル−δ―バレロラクトン等のラクトン類の1種類若しくは2種以上を重合して得られるポリラクトンあるいはかかるラクトン類とグリコール酸、乳酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体等のラクトン系重合体;及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(A)等を例示することができる。これら生分解性樹脂は単一でも二種以上の組成物であってもよい。
これら生分解性樹脂からなる無延伸フィルムあるいは延伸フィルムは種々公知の製造方法で製造し得る。
【0015】
本発明の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物からなるチャックは種々公知の方法で製造し得る。例えば、脂肪族・芳香族ポリエステル(A)とポリブチレン・テレフタレート(Bを所定の量で配合した後、直接押出成形機に投入して所望の形状を有する凸型及び凹型ダイを用いて溶融押出成形して得た溶融押出物を水等の媒体で冷却してチャックを得る方法、予め脂肪族・芳香族ポリエステル(A)とポリブチレン・テレフタレート(B)を所定の量で混合して押出機等で溶融混練して脂肪族・芳香族ポリエステル組成物を得た後、所望の形状を有する凸型及び凹型ダイから溶融押出成形して得た溶融押出物を水等の媒体で冷却してチャックを得る方法する方法がある。
又、凸型及び凹型ダイを用いて溶融押出成形して得られるチャックの融押出物を冷却する前に、生分解性樹脂製テープと熱融着しておくと、チャック咬合部の裏面に生分解性樹脂製テープが積層されたチャックが得られるので好ましい。
また、チャック部の凹部あるいは凸部を押出成形すると同時に、生分解性樹脂製フィルムを押出成形して、両者が固化する前に熱融着により一体化することも行われる。さらに、チャックの凹部、凸部と生分解性製フィルムのいずれかを予め成形した後に、他方を押出成形して、両者を一体化することも行われる。
【0016】

本発明の袋は、前記本発明の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物からなるチャックを袋口部に具備してなる。かかる袋として、ポリ乳酸二軸延伸フィルム等の生分解性樹脂製フィルムから得られる袋を用いると、生分解性を具備する袋が得られるので好ましい。
本発明の袋の好適な態様を以下に説明する。
すなわち、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(a2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(A)を主成分とするフィルム、例えばチャックに用いられている材料と同じ材料から成形されたフィルムと、脂肪族・芳香族ポリエステル(A)99.95〜95重量%及びポリブチレン・テレフタレート(B)0.05〜5重量%からなる脂肪族・芳香族ポリエステル組成物から形成されたチャック(凹部および凸部)を用いて、これらを熱融着や接着などにより結合一体化してチャックつき袋とすることが行われる。
このようなチャックつき袋に適したフィルムとしては、厚さ25μmのポリ乳酸二軸延伸フィルムの両面に生分解性脂肪族ポリエステル(コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体):80重量%と脂肪族・芳香族ポリエステル:20重量%からなる厚さ30μmの無延伸フィルムをドライラミして得た積層フィルムが挙げられる。
これらの場合、チャック咬合部裏面に予め生分解性樹脂製テープを積層したチャックも必要に応じて用いられる。
さらに、チャック(凹部あるいは凸部)とフィルムを同時に一体成形することも行われる。
【実施例】
【0017】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0018】
実施例及び比較例等で使用したポリエステル等は次の通りである。
(1)脂肪族・芳香族ポリエステル(A)
(i)アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(A−1)
テレフタル酸:46モル%、アジピン酸:54モル%及び1,4−ブタンジオール:100モル%、BASF社製、商品名 ECOFLEX、MFR(190℃、荷重2160g):3g/10分、融点(Tm):112℃、密度:1.26g/cm
(2)ポリブチレン・テレフタレート(B)
(i)ポリブチレン・テレフタレート(B−1)
MFR(250℃、荷重2160g):50g/10分、融点(Tm):220−225℃、密度:1.3g/cm
(3)脂肪族ポリエステル共重合体
(i)コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(C−1)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AZ91T MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):108.9℃、結晶化温度(Tc):68.0℃、(Tm)−(Tc):40.9℃、密度:1.25g/cm
(4)ポリ乳酸
(i)ポリ乳酸(C−2)
D−乳酸含有量:1.6重量%、MFR(190℃、荷重2160g):3.0g/10分、融点(Tm):164.0℃、ガラス転位温度(Tg):56.0℃、密度:1.3g/cm
【0019】
実施例1
脂肪族・芳香族ポリエステル組成物としてアジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(A−1):99.5重量%及びポリブチレン・テレフタレート(B−1):0.5重量%にシリカ:4000ppm及びステアリン酸アミド:2000ppmとを加えた脂肪族・芳香族ポリエステル組成物(組成物1)を溶融混練して用意した後、先端の凹部及び凸部形状を有するダイを備えた押出機を用い、組成物1を180〜200℃で溶融した後、ダイ温度;210℃、押出し速度(成形速度);20m/分で押出した後、別途製造して得た厚さ25μmのポリ乳酸二軸延伸フィルムの両面にコハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(C−1):80重量%とアジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(A−1):20重量%の組成物からなる厚さ30μmの無延伸フィルムをドライラミして得た積層フィルムからなる幅:26mmの生分解性樹脂製テープの片面に、熱融着させた後、20〜25℃の水槽で冷却して凹部及び凸部を有するチャック(チャックの幅;約1.3mm、高さ;約1.5mm、テープ幅;13mm)を得た。得られたチャックの形状を目視で観察した結果、凹部及び凸部の形状が明確であり良好な外観を示した。
得られたチャックから長さ:150mmのサンプルを切取り、凹部と凸部を指で咬合させた後、引張り試験機(オリエンテック社製;万能試験機RYC−1255)を用い、300mm/分の速度で咬合部を剥離した。その結果、剥離力の最大値は5.6N、最小値は2.4Nと安定した剥離力(咬合力)を示した。
【0020】
実施例2
実施例1で用いた組成物1に代えて、A−1;99.0重量%及びB−1;1.0重量%にシリカ:4000ppm及びステアリン酸アミド:2000ppmとを加えた脂肪族・芳香族ポリエステル組成物(組成物2)を用いる以外は実施例1と同様に行いチャックを得た。得られたチャックの形状を目視で観察した結果、凹部及び凸部の形状が明確であり良好な外観を示した。
得られたチャックから長さ:150mmのサンプルを切取り、凹部と凸部を指で咬合させた後、引張り試験機(オリエンテック社製;万能試験機RYC−1255)を用い、300mm/分の速度で咬合部を剥離した。その結果、剥離力の最大値は5.2N、最小値は1.6Nと安定した剥離力(咬合力)を示した。
【0021】
比較例1
実施例1で用いた組成物1に代えて、A−1;100重量%シリカ:4000ppm及びステアリン酸アミド:2000ppmとを加えた脂肪族・芳香族ポリエステル組成物(組成物3)を用いる以外は実施例1と同様に行いチャックを成形した。しかしながら、押出し速度(成形速度)が20m/分では押出し成形物の固化が不十分であり、良好な外観のチャクを得ることができなかった。
【0022】
参考例1
実施例1で用いた組成物1に代えて、A−1;90重量%及びC−1;10重量%にシリカ:4000ppm及びステアリン酸アミド:2000ppmとを加えた脂肪族・芳香族ポリエステル組成物(組成物4)を用いる以外は実施例1と同様に行いチャックを得た。得られたチャックの形状を目視で観察した結果、凹部及び凸部の形状が明確であり良好な外観を示した。
得られたチャックから長さ:150mmのサンプルを切取り、凹部と凸部を指で咬合させた後、引張り試験機(オリエンテック社製;万能試験機RYC−1255)を用い、300mm/分の速度で咬合部を剥離した。その結果、剥離力の最大値は21.2N、最小値は2.0Nと剥離力の最大値と最小値の幅が大きく、安定した剥離力(咬合力)を示すチャックが得られなかった。
【0023】
参考例2
実施例1で用いた組成物1に代えて、A−1;90重量%及びポリ乳酸(C−2);10重量%にシリカ:4000ppm及びステアリン酸アミド:2000ppmとを加えた脂肪族・芳香族ポリエステル組成物(組成物4)を用いる以外は実施例1と同様に行いチャックを得た。得られたチャックの形状を目視で観察した結果、凹部及び凸部の形状が波打ち咬合できるようなチャックを得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物からなるチャックは、柔軟性、開封・密封性(咬合性)、成形加工性に優れ、且つ生分解性を有するので、袋の開閉部として好適に用いることができる。又、かかるチャックを口部に備えた袋、とくに、生分解性樹脂製フィルムからなる袋は、袋自体も生分解性を有するので、食品用をはじめ、あらゆる被包装材の包装用の袋として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(a2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(A)99.95〜95重量%及びポリブチレン・テレフタレート(B)0.05〜5重量%からなることを特徴とする脂肪族・芳香族ポリエステル組成物。
【請求項2】
脂肪族・芳香族ポリエステル組成物が、チャック用であることを特徴とする請求項1記載の脂肪族・芳香族ポリエステル組成物。
【請求項3】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(a2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(A)99.95〜95重量%及びポリブチレン・テレフタレート(B)0.05〜5重量%からなることを特徴とする脂肪族・芳香族ポリエステル組成物から形成されてなるチャック。
【請求項4】
チャックのチャック咬合部裏面に生分解性樹脂製テープを積層してなる請求項3記載のチャック。
【請求項5】
請求項3又は4記載のチャックを袋の口部に具備してなることを特徴とする袋。
【請求項6】
袋が生分解性樹脂性フィルムからなることを特徴とする請求項5記載の袋。

【公開番号】特開2006−131895(P2006−131895A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289488(P2005−289488)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】