説明

脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法

【課題】脂肪族第一級アミンを収率よくモノメチル化し、高い選択率で脂肪族アミンのモノメチル化体を製造することができる、脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法に関する。
【解決手段】本発明の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法は、白金族元素を炭素担体に担持させた白金族触媒の存在下、水素雰囲気下で、パラホルムアルデヒドを用いて、脂肪族第一級アミン(1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、又は1,10−ジアミノデカン等のアルキレンジアミン)をモノメチル化させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法に関する。本発明を用いることにより、目的とする脂肪族第二級アミンを選択的に高収率で製造することができる。
【背景技術】
【0002】
脂肪族第二級アミンは、医薬品の合成中間体等、多くの化学工業製品に用いられる、極めて重要な化学物質である。
アミンのメチル化方法としては、例えば、第一級アミンをハロゲン化メチル化合物によってメチル化する方法が知られている。しかしながら、この方法では、第一級アミンがメチル化された第二級アミンだけでなく、ジメチル化反応やトリメチル化反応が進行して、第三級アミンやアンモニウム塩も生成する場合がある。このため、目的とする脂肪族アミンを高選択的に製造することは困難である。また、副生成物として、無機塩類がハロゲン化アルキル化合物の当量分だけ生成するため、その無機塩類を分離し、処分をしなければならないという問題もある。
【0003】
また、アミン化合物のメチル化方法として、例えば、特許文献1には、水素雰囲気下で、ラネーニッケル触媒を用いるメチル化方法が開示されている。しかしながら、この方法では、選択的にメチル化させるように制御する場合には、ホルムアルデヒドに対し数倍モル以上のアミンが必要であり、効率が悪い。
また、脂肪族アミンのアルキル化方法として、例えば、特許文献2及び非特許文献1には、ニトリル化合物を用いて還元的にアルキル化する方法が開示されている。しかしながら、この方法によって、脂肪族アミンをメチル化させるには、毒性の高い青酸を使用しなければならない問題がある。
脂肪族アミンを選択的に得るためのその他の方法としては、例えば、保護基を利用した合成法の手法が一般的に公知である。すなわち、第一級アミンをベンゾイル化し、次にベンゾイル化された第一級アミンをハロゲン化メチルでモノメチル化し、最後にベンゾイル基を脱離させる方法である。この方法によれば、第三級アミンを副生させることなく第二級アミンを選択的に合成することができる。しかしながら、この方法は保護基の導入及び保護基の脱離のために工程数が多くなり、製造コストの高騰化を招くこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭和54−103804公報
【特許文献2】特開2005−239594公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本プロセス化学会2003サマーシンポジウム講演要旨集60頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、脂肪族アミンを収率よくモノメチル化し、高い選択率で脂肪族アミンのモノメチル化体を製造することができる、脂肪族アミンのモノメチル化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、脂肪族第一級アミンのメチル化方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下に示すとおりの脂肪族第一級アミンのメチル化方法である。
[1]白金族触媒の存在下、水素雰囲気下で、パラホルムアルデヒドを用いて、脂肪族第一級アミンをモノメチル化させることを特徴とする脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
[2]前記白金族触媒が、白金族元素を担体に担持した触媒である上記[1]に記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
[3]前記担体が、炭素である上記[2]記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
[4]前記白金族元素が、ロジウムである上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
[5]前記脂肪族第一級アミンが、下記一般式(1)で表されるアルキレンジアミンであり、得られるモノメチル化体が、下記一般式(2)で表される上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
N−R−NH (1)
N−R−NH−CH (2)
〔上記一般式(1)及び(2)において、Rは炭素数2〜16の2価の有機基を表す。〕
[6]前記アルキレンジアミンが、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、又は1,10−ジアミノデカンである上記[5]に記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
[7]反応溶媒として、メタノール、ヘキサン及びテトラヒドロフランから選ばれる少なくとも1種を用いて反応させる上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
[8]水素加圧下で反応を行う上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来困難であった脂肪族第一級アミン化合物のモノメチル化反応を、簡便かつ低コストに実施することが可能となる。
また、本発明により、脂肪族第一級アミンのモノメチル化反応を行って、脂肪族第二級アミンを合成した後、別のアルキル化反応によってさらに異なるアルキル基を脂肪族第二級アミンに導入することで、三つの異なるアルキル基を有する非対称第三級アミンを僅か2段階で合成することができる。
このように、本発明は、目的とする脂肪族アミンを収率よく、選択的に製造することができるものであり、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法(以下、単に「メチル化方法」ともいう)は、白金族触媒の存在下、水素雰囲気下で、パラホルムアルデヒドを用いて、脂肪族第一級アミンをモノメチル化させることを特徴とする。
【0010】
本発明のメチル化方法は、少なくとも「−CH−NH」を含む化合物である脂肪族第一級アミンを基質として用いて、高い選択率で脂肪族第一級アミンのモノメチル化体を得る方法である。具体的には、下記一般式(3)及び(4)で表される原料の脂肪族第一級アミンから、それぞれ下記一般式(5)及び(6)で表されるモノメチル化体を効率良く得ることができる。
−NH (3)
(NH (4)
−NH−CH (5)
(NHn−1−NH−CH (6)
上記一般式(3)及び(5)におけるRは1価の有機基であり、この有機基は、炭化水素基又は窒素原子(N)を含む炭化水素基であり、この炭化水素基における窒素原子の結合状態は第二級アミノ基又は第三級アミノ基である。
また、上記一般式(4)及び(6)におけるRはn価の有機基であり、この有機基は
、炭化水素基又は窒素原子を含む炭化水素基であり、この炭化水素基における窒素原子の結合状態は第二級アミノ基又は第三級アミノ基である。nは、通常、2〜10の整数である。
【0011】
また、上記一般式(4)で表される原料の脂肪族第一級アミンが、下記一般式(1)で表されるアルキレンジアミン化合物である場合、下記一般式(2)で表されるモノメチル化体を得ることができる。
N−R−NH (1)
N−R−NH−CH (2)
但し、上記一般式(1)及び(2)におけるRは2価の有機基であり、この有機基は
、炭化水素基又は窒素原子を含む炭化水素基であり、この炭化水素基における窒素原子の結合状態は第二級アミノ基又は第三級アミノ基である。
【0012】
また、アミノ基を3以上有する脂肪族第一級アミンを原料とする場合にも、上記と同様にモノメチル化体が得られる。
本発明においては、1つ以上のアミノ基を有する脂肪族第一級アミンから、高い選択率で、効率良くモノメチル化体を得ることができる。特に、原料として上記一般式(1)で表されるアルキレンジアミン化合物から、上記一般式(2)で表されるモノメチル化体を高い選択率で、効率的に得ることができることから、アルキレンジアミン化合物のモノメチル化体の製造に好適に用いることができる。
【0013】
本発明において、脂肪族第一級アミンとしては、特に限定するものではないが、上記一般式(3)及び(4)で表される、少なくとも1つの第一級アミノ基を有する脂肪族第一級アミンを使用することができる。このような脂肪族第一級アミンとしては、具体的には、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はアリール基等の1価の炭化水素基を持つモノアミン化合物、直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、又はアリール基等の2価の炭化水素基を持つジアミン化合物、直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基をもつポリアミン化合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、下記式(1)で示されるジアミン化合物である。
N−R−NH (1)
但し、上記一般式(1)における、Rは2価の有機基であり、この有機基は、炭化水素基又は窒素原子を含む炭化水素基であり、Rの炭素数は、好ましくは2〜16(より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下)である。
【0014】
上記一般式(1)における有機基(R)としては、少なくとも2つのアミノ基にそれぞれメチレン基が結合して含まれる基である。具体的には、直鎖状又は分岐状の鎖状炭化水素基、又は、窒素原子を含む直鎖状又は分岐状の鎖状炭化水素基であり、これらの鎖状炭化水素基は、その他、芳香族基、脂環族基等を含んでいてもよい。これらの芳香族基及び脂環族基は、炭化水素基の主鎖に含まれてもよく、側鎖に含まれてもよい。好ましくは、2価のアルキレン基(「−C2n−」、但し、nは2以上の整数)である。
【0015】
即ち、原料として用いられる脂肪族第一級アミンとしては、例えば、上記一般式(3)、及び(4)並びに(1)で示されるモノアミン化合物、ジアミン化合物、ポリアミン化合物、及びその他のアミン化合物等が挙げられる。
上記モノアミン化合物としては、具体的には、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、及びベンジルアミン等が挙げられる。
また、上記ジアミン化合物としては、具体的には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、及びイソホロンジアミン等が挙げられる。
また、上記ポリアミン化合物としては、具体的には、ジエチレントリアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビスー(3−アミノプロピル)アミン等が挙げられる。
また、その他のアミン化合物としては、トリス(3−アミノプロピルアミン)、及びトリス(2−アミノエチルアミン)等の第三級アミノ基を有するアミン化合物が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、及び1,10−ジアミノデカン等のアルキレンジアミンである。
【0016】
本発明に用いられる上記白金族触媒としては、特に限定するものではなく、例えば、パラジウム黒や白金黒等のように単体をそのまま用いることもできるが、白金族元素を、炭素、シリカ及びアルミナ等の担体に担持させたものを用いることもできる。これらのうち
、担体に担持させることにより、白金族元素が細かく分散し、触媒としての機能が高められることから、白金族元素を担体に担持させた触媒が好ましい。また、白金族元素を担体に担持させた触媒を用いることにより、反応後の触媒の回収も容易となる。
また、上記担体としては、特に限定するものではないが、炭素を使用することが好ましい。炭素を担体とすることにより、目的とする脂肪族第二級アミン(モノメチル化体)を極めて効率よく、選択的に高収率で合成できる。
【0017】
また、上記白金族元素としては、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金、並びにこれらの合金等が挙げられる。これらのうち、ロジウムが好ましい。ロジウムを白金族元素として用いることにより、脂肪族第一級アミンのモノメチル化反応が円滑に進行するため、脂肪族第二級アミン(モノメチル化体)を選択的に合成することができる。
【0018】
本発明において、添加する白金族触媒の配合量は、特に限定されず、脂肪族第一級アミン(反応基質)の種類、及び反応温度等の反応条件により適宜選択される。白金族触媒の配合量(白金族元素の量)としては、通常、原料の脂肪族第一級アミン1molに対して
、0.0001〜0.2molが好ましく、0.001mol以上がより好ましく、0.005mol以上が更に好ましい。添加する触媒の配合量が、上記範囲内にある場合、効率的に、モノメチル化体の脂肪族第二級アミンを製造することができる。また、添加する触媒の配合量を増やすことで、反応速度をさらに向上させることができるが、必要以上に増量すると経済性に乏しくなる。
【0019】
パラホルムアルデヒドは、本発明において、メチル化剤として作用する化合物である。このパラホルムアルデヒドは、通常、下記一般式(7)で表されるホルムアルデヒドの重合体である。
HO(CHO)H (7)
但し、上記一般式(7)において、nは1以上の整数である。
また、パラホルムアルデヒドとしては、市販品を用いることができる。
【0020】
本発明において、パラホルムアルデヒドの配合量は、脂肪族第一級アミン1molに対して、0.1〜10molが好ましく、0.5〜5molが更に好ましい。添加するパラホルムアルデヒドの配合量が、上記範囲内にある場合、効率的にモノメチル化体の脂肪族第二級アミンを製造することができる。尚、上記パラホルムアルデヒドの配合量は、パラホルムアルデヒドが、ホルムアルデヒドを構成単位とするポリマーであることから、モノマー(ホルムアルデヒド)で換算して、mol量を計算した。即ち、パラホルムアルデヒドは、一般式(CHO)で示されることから、上記のパラホルムアルデヒドの配合量(mol量)は、CHO=30.026を1molの分子量として計算した。
【0021】
本発明において、反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、プロトン性溶媒及び非プロトン性溶媒、並びにそれらの混合溶媒が挙げられる。この反応溶媒としては、具体的には、メタノール、ヘキサン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、パラホルムアルデヒドがほぼ定量的にメチル化剤として働くため、メタノールが特に好ましい。
本発明においては、反応は懸濁床による回分、半回分、連続式でも、また固定床流通式でも実施できる。
【0022】
反応温度は、反応溶媒の沸点等により選択されるが、通常、0〜150℃、好ましくは15〜60℃の範囲である。150℃以下とすることで、原料及び生成物の分解が抑制され、0℃以上とすることで十分な反応速度が得られる。更に、本発明では、15〜25℃の常温又は常温付近でも好適にモノメチル化体を得ることができ、常温又は常温付近であれば、製造条件を簡略化できる点で好ましい。
【0023】
本発明は、水素雰囲気下で実施される。水素雰囲気下とは、通常、水素ガスを含有する雰囲気であり、水素ガスが100%でもよいし、水素ガスと、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスとを含むものであってもよい。水素ガス濃度は70容量%以上が好ましく、80容量%以上がより好ましい。水素ガスの量は、通常、上記脂肪族第一級アミンの当量以上とすることができる。
また、反応時における水素圧は、大気圧(通常、0.09〜0.11MPa範囲)〜5MPa、好ましくは大気圧〜0.5MPaの範囲である。加圧とすることにより、反応を促進することができる。一方、0.09〜0.11MPaの範囲である、常圧又は常圧付近であれば、製造条件を簡略化できる点で好ましい。
また、本発明においては、反応は懸濁床による回分、半回分、連続式のいずれでもよい。また、固定床流通式でもよい。
【0024】
本発明における反応時間は、特に限定されない。原料である脂肪族第一級アミンの種類、反応溶媒の種類及び反応温度等のその他の反応条件により適宜選択される。反応時間は、通常、30分〜72時間であり、上記のように加熱や加圧することにより反応時間を短縮することができる。
【0025】
本発明のモノメチル化方法では、目的とするモノメチル化体である脂肪族第二級アミンへの反応を効率よく進めることができ、高い収率でモノメチル化体である脂肪族第二級アミンを得ることができる。本発明のモノメチル化方法により得られるモノメチル化体である脂肪族第二級アミンの収率は、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは100である。特に収率が100%である場合には、目的とする脂肪族第二級アミン以外の化合物が副生等することがなく、脂肪族第二級アミンの精製及び回収を極めて効率よく進めることができる。
本発明の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法により、脂肪族第一級アミンから、脂肪族第二級アミンを製造することができる。
【0026】
本発明のモノメチル化方法による反応後の反応液に含まれる、原料脂肪族第一級アミンに由来する成分は、通常、目的とするモノメチル化体である脂肪族第二級アミン、及び、未反応の脂肪族第一級アミンである。また、副生物として、微量のジメチル化体が含まれる場合もある。
【実施例】
【0027】
本発明を以下に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
実施例1〜7では、脂肪族第一級アミンをロジウム触媒の存在下において水素雰囲気下で反応させ、メチル化を行った。なお、脂肪族第一級アミン及びパラホルムアルデヒドは、市販品をそのまま用いた。
また、比較例1〜3では、メチル化剤を変えて検討を行った。各メチル化剤は市販品をそのまま用いた。
実施例及び比較例において、得られた生成物は塩酸と反応させて、塩酸塩とした後、重水(DO)に溶解し、核磁気共鳴装置(日本電子JEOL−EX400 Spectrometer)を用いて分析(核磁気共鳴分析(H−NMR))をした。生成物(塩酸塩)の化学シフト値は溶媒中に存在するプロトンによる吸収(4.65ppm)を内部標準としてppm単位で表示した。
【0028】
(実施例1)
1,6−ジアミノヘキサン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)116mg(1mmol)及びパラホルムアルデヒド(和光純薬工業社製)36.0mg(1.2mmol)を5mlのメタノールに溶解した。さらに、白金族触媒として、炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を31mg(基質に対してロジウムが3mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。大気圧の水素ガス(約1500ml)を封入し、25℃で36時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物160mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサン〔HN(CHNHCH〕の塩酸塩のH−NMRデータ(DO):δ1.28(m、4H)、1.56(m、4H)、2.57(s、3H)、2.90(m、4H)が得られた。
以上から、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサンが収率100%で得られたことがわかった。
【0029】
(実施例2)
1,6−ジアミノヘキサン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)116mg(1mmol)及びパラホルムアルデヒド(和光純薬工業社製)33.0mg(1.1mmol)を5mlのメタノールに溶解した。さらに、白金族触媒として、炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を31mg(基質に対してロジウムが3mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。大気圧の水素ガス(約1500ml)を封入し、25℃で42時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物219mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサンの塩酸塩のデータが得られた。そして、そのデータより、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサンが収率92%で得られたことがわかった。
【0030】
(実施例3)
1,6−ジアミノヘキサン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)116mg(1mmol)及びパラホルムアルデヒド(和光純薬工業社製)30.0mg(1.0mmol)を5mlのメタノールに溶解した。さらに、白金族触媒として、炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を31mg(基質に対してロジウムが3mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。大気圧の水素ガス(約1500ml)を封入し、25℃で24時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物193mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサンの塩酸塩のデータが得られた。そして、そのデータより、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサンが収率73%で得られたことがわかった。
【0031】
(実施例4)
1,4−ジアミノブタン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)88.2mg(1mmol)及びパラホルムアルデヒド(和光純薬工業社製)36.0mg(1.2mmol)を5mlのメタノールに溶解した。さらに、白金族触媒として炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を8.8mg(基質に対してロジウムが0.86mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。大気圧の水素ガス(約1500ml)を封入し、25℃で24時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物132mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析によって、この生成物を解析した結果、N−メチル−1,4−ジアミノブタン〔HN(CHNHCH〕の塩酸塩のH−NMRデータ(DO):δ1.68(m、4H)、2.63(s、3H)、2.98(m、4H)が得られた。
以上から、N−メチル−1,4−ジアミノブタンが収率100%で得られたことがわかった。
【0032】
(実施例5)
1,2−ジアミノエタン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)60.1mg(1mmol)及びパラホルムアルデヒド(和光純薬工業社製)36.0mg(1.2mmol)を5mlのメタノールに溶解した。さらに、白金族触媒として炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を20.6mg(基質に対してロジウムが2mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。0.3MPaの水素ガス(約200ml)を封入し、40℃で24時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物166mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、N−メチル−1,2−ジアミノエタンの塩酸塩のデータが得られた。そして、そのデータより、N−メチル−1,2−ジアミノエタンが収率63%で得られたことがわかった。
【0033】
(実施例6)
1,2−ジアミノエタン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)60.1mg(1mmol)及びパラホルムアルデヒド(和光純薬工業社製)36.0mg(1.2mmol)を5mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。さらに、白金族触媒として炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を17.9mg(基質に対してロジウムが1.74mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。0.5MPaの水素ガス(約200ml)を封入し、60℃で24時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物160mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、N−メチル−1,2−ジアミノエタンの塩酸塩のデータが得られた。そして、そのデータより、N−メチル−1,2−ジアミノエタンが収率65%で得られたことがわかった。
【0034】
(実施例7)
1,2−ジアミノエタン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)60.1mg(1mmol)及びパラホルムアルデヒド(和光純薬工業社製)36.0mg(1.2mmol)を5mlのヘキサンに溶解した。さらに、白金族触媒として炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を20.6mg(基質に対してロジウムが2mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。0.5MPaの水素ガス(約200ml)を封入し、60℃で24時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物109mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、N−メチル−1,2−ジアミノエタンの塩酸塩のデータが得られた。そして、そのデータより、N−メチル−1,2−ジアミノエタンが収率63%で得られたことがわかった。
【0035】
(比較例1)
1,6−ジアミノヘキサン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)116mg(1mmol)及び35%ホルマリン(和光純薬工業社製)85.8mg(1.0mmol)を5mlのメタノールに溶解した。さらに、白金族触媒として炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を31mg(基質に対してロジウムが3mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。大気圧の水素ガス(約1500ml)を封入し、25℃で26時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物110mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、生成物は未反応の1,6−ジアミノヘキサン、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N‘−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N,N‘−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N,N‘,N‘−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンの塩酸塩の混合物であることがわかった。そして、そのデータより、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサンが11%の収率で得られたことがわかった。
【0036】
(比較例2)
1,6−ジアミノヘキサン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)116mg(1.0mmol)及びトリメチルシリルシアニド(和光純薬工業社製)496mg(5.0mmol)を5mlのメタノールに溶解した。さらに、白金族触媒として炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を31mg(基質に対してロジウムが3mol%となる)を加え、有機合成装置(Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。大気圧の水素ガス(約1500ml)を封入し、25 ℃で24時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物105mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、メチル化反応は進行せず、1,6−ジアミノヘキサンが未反応のままであることがわかった。N−メチル−1,6−ジアミノヘキサンの収率は0%であった
【0037】
(比較例3)
1,6−ジアミノヘキサン〔HN(CHNH〕(和光純薬工業社製)116mg(1.0mmol)及びシアノアミン(和光純薬工業社製)210mg(5.0mmol)を5mlのメタノールに溶解した。さらに、白金族触媒として炭素担体に対して10質量%のロジウムが担持されているRh/C(N.E.Chemcat社製、k−type、dry)を31mg(基質に対してロジウムが3mol%となる)を加え、有機合成装置(製品名:Chemist Plaza、柴田科学社製)に据え付けた。大気圧の水素ガス(約1500ml)を封入し、25℃で24時間撹拌し反応を行った。その後、反応液をセライト(和光純薬工業社製)ろ過してRh/Cを除去し、メタノール(40ml)で洗浄した。こうして得られたろ液に35%塩酸(和光純薬工業社製)1mlを加えた後、溶媒を減圧留去し、白色固体の生成物108mgを得た。
そして、核磁気共鳴分析(H−NMR)によって、この生成物を解析した結果、メチル化反応は進行せず、1,6−ジアミノヘキサンが未反応のままであることがわかった。N−メチル−1,6−ジアミノヘキサンの収率は0%であった。
以上の結果を表1に併せて示す。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族触媒の存在下、水素雰囲気下で、パラホルムアルデヒドを用いて、脂肪族第一級アミンをモノメチル化させることを特徴とする脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
【請求項2】
前記白金族触媒が、白金族元素を担体に担持させた触媒である請求項1に記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
【請求項3】
前記担体が、炭素である請求項2記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
【請求項4】
前記白金族元素が、ロジウムである請求項1乃至3のいずれかに記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
【請求項5】
前記脂肪族第一級アミンが、下記一般式(1)で表されるアルキレンジアミンであり、得られるモノメチル化体が、下記一般式(2)で表される請求項1乃至4のいずれかに記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
N−R−NH (1)
N−R−NH−CH (2)
〔上記一般式(1)及び(2)において、Rは炭素数2〜16の2価の有機基を表す。〕
【請求項6】
前記アルキレンジアミンが、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、又は1,10−ジアミノデカンである請求項5に記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
【請求項7】
反応溶媒として、メタノール、ヘキサン及びテトラヒドロフランから選ばれる少なくとも1種を用いる請求項1乃至6のいずれかに記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。
【請求項8】
加圧条件下で反応を行う請求項1乃至7のいずれかに記載の脂肪族第一級アミンのモノメチル化方法。

【公開番号】特開2011−168566(P2011−168566A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36630(P2010−36630)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(805000018)財団法人名古屋産業科学研究所 (55)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】