説明

脂肪減少用外用剤及び脂肪減少装置

【課題】貼付/塗布等の簡単な手段で局所的な脂肪減少をおこなう脂肪減少用外用剤および脂肪減少装置を提供する。
【解決手段】脂肪減少用外用剤は、カプサイシン、その同族体及びそれらの誘導体又はノニル酸ワニリルアミド等の脂肪分解成分、脂肪生成抑制成分の少なくとも1つを含む。基材と基材上に形成され皮膚に接触する薬剤層とを備え、該薬剤層に脂肪分解成分および/又は脂肪生成抑制成分を含む貼付外用剤とできる。該基材は超音波を透過可能な材料とできる。又前記基材は多孔質又は多数の小孔を備え、該基材に含浸させる超音波を透過可能とする超音波音響結合剤を備えることができる。前記貼付外用剤の薬剤層を皮膚に接触した時、又は脂肪分解成分および/若しくは脂肪生成抑制成分を含む塗布外用剤として皮膚に塗布した時に、体表から物理的刺激を付与する物理的刺激付与手段を併用できる。前記物理的刺激手段は、生体に対して、超音波、電磁波又は機械的振動の少なくとも1種とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体脂肪減少、肥満解消による医療、健康、美容の分野に属し、脂肪減少用外用剤および脂肪減少装置に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満解消に用いられる薬剤は、従来、脂肪生成抑制剤としての食欲抑制剤、消化吸収阻害剤、脂肪分解剤としての代謝亢進剤等が大部分で、全て経口摂取とされている。外用に使用される脂肪減少剤としては僅かにスベルトパッチ、ディオールスベルトパーフェクトがある。
【0003】
経口摂取の熱代謝亢進による脂肪減少剤としてカプサイシンが知られている。カプサイシンは唐辛子に含まれる辛味成分で、唐辛子からアルコール抽出又は臨界CO抽出で唐辛子エキスとして抽出される。このエキスにはカプサイシンのほかに同族体のディヒドロカプサイシン、ノルディヒドロカプサイシン等が含まれる。エキスの儘使用される事が多いが、精製されてカプサイシンとして用いられる事も多い。同族体にはこの他種々あるがいずれも人体に対して経口投与で強弱の差はあるがほぼ同様な効果をもつので、本明細書では以下同族体、誘導体等を含めてカプサイシン類と総称する。又生薬である唐辛子自体や、その抽出された唐辛子エキスも含めてカプサイシン類と呼ぶ事にする。なおその中には人工合成品のシス2重結合カプサイシンも含まれるが、経口投与の安全性が確認されていないので温感湿布等の外用剤に用いられている。
【0004】
カプサイシン類は、経口投与の場合消化器から吸収されて血中アルブミンと結合して血流により全身に運ばれる。副腎ではその刺激によりエピネフィリン(アドレナリン)を分泌し、エピネフィリンは血流で全身に運ばれて脂肪減少を促しFFAを産生する。又カプサイシン類は、舌やその他の局所末梢交感神経を刺激してノルエピネフィリンを分泌する。これらのエピネフィリン、ノルエピネフィリン等は総称してカテコールアミンと呼ばれ、脂肪細胞の脂肪分解酵素を刺激して脂肪分解するホルモンである。
【0005】
又カプサイシン類は、熱代謝を亢進する働きを有する。即ち筋肉や褐色脂肪細胞ではその刺激はFFAの燃焼を促進する熱産生効果を持ち人体で約0.3℃の体温の上昇が見られる。しかしその作用の正確な詳細はいまだに判明していない。
【0006】
又その刺激は全身の血管血流を促進し体表からの放熱作用を有し一時的に体温低下効果が見られるが、やがてFFA燃焼による体温上昇に移行する。このためカプサイシン類は、熱代謝亢進剤として経口投与で健康食品として広く用いられている。
【0007】
これら経口投与カプサイシン類は血流に運ばれ全身的な脂肪分解と脂肪燃焼作用を持つ。この場合希望する部位の痩身が得難く、希望しない部位の痩身が生じる事もある。他方健康と美容上からは局部的な脂肪減少と肥満解消が要請される。この解決には本発明の如き経皮的な外用薬の貼付/塗布が解決策となる。
【0008】
以下に経皮的外用薬について従来技術を述べる。
【0009】
脂肪分解用貼付剤としてはスベルトパッチが知られている。これは主成分として海藻のFUCUSを用いており、皮膚から浸透して脂肪を吸収し、燃焼するとしている。しかしUSAのQUACKWATCH(まやかし監視)のホーム頁にはHelthy Weight JournalがWorst Claim賞を授与したとしており効果は疑問視されている。
【0010】
脂肪分解作用を有する塗布剤としてはディオールスベルトパーフェクトが知られている。これはサイクリックAMPを主剤とする。一時ブームになったが現在はその効果は不明である。
【0011】
カプサイシン等の脂肪分解・熱代謝亢進剤、その他の脂肪生成抑制剤の経口投与では局部脂肪減少、局部痩身を実現できない。
【0012】
スベルトパッチ、ディオールスベルトパーフェクト等の外用剤(貼付/塗布剤)は局部痩身を狙っているが、痩身の効果が明確でなく、科学的な実証が十分でない。
【0013】
美容用としてマッサージを主体とした肌ひき締めが行われている。これに併用して肌ひき締め効果を増加する温感塗布剤が製造発売されている。いずれもマッサージが必須であり、肌ひき締剤としてヒバマタ等の海草エキス、カフェイン又は各種の茶を含み、更に温感血流促進用に唐辛子エキスを含むとしている。その1つは更に温感用のノニル酸ワニリルアミドをも含む。唐辛子エキスは肌ひき締め剤として見なされず、勿論脂肪分解を生起し脂肪減少に有効であるとの記述はなく、カプサイシンを使用すればマッサージが不要との記述もない。
【0014】
前記温感塗布剤にはカプサイシン類が含まれるが、血行促進、温感用でマッサージの補助剤の性格である。脂肪減少効果を利用するものではない。
【0015】
市場にはカプサイシン(唐辛子エキスの形で用いられる事が多い)やノニル酸ワニリルアミド又は両者を含む鎮痛用温感湿布が供給されている。上記カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等は貼付部の血行を高め温感を与える。同じ目的に血管拡張用としてビタミンEが配合されている例が8例中5例ある。
【0016】
主目的の消炎鎮痛用には、鎮痛剤(サリチル酸等)、消炎剤(サリチル酸グリコール等)を併用配合している。肩凝り、関節痛、腰痛、筋肉痛、筋肉疲労、打撲、捻挫、霜焼け等に効くとし、1日1〜2回の貼り替えを指示している。これらは目的上その他に増量剤、展張剤、粘着剤、吸水(汗)剤、清涼剤(薄荷油、メントール、カンフル等)、香料等が配合されている。しかしカプサイシンを含む鎮痛消炎剤による脂肪減少については全く記載されていない。
【0017】
又、市場には鎮痛用塗布剤として軟膏型(クリーム)で唐辛子エキス(カプサイシン含有)を含有するものが供給されている。これは主剤として鎮痛用サリチル酸メチル、消炎用サリチル酸グリコールが含まれている。目的は鎮痛消炎で、筋肉疲労、肩凝り、打撲捻挫、関節炎、ロイマチ、神経痛、頭痛、歯痛、凍傷、虫さされ、かゆみ止めに効くとしている。この唐辛子含量は極めて微量で、血行促進用を目的とし、勿論脂肪減少効果の記載は全く無い。
【0018】
前記鎮痛用温感湿布・塗布剤はカプサイシン類を含むが、消炎、鎮痛剤の補助として血行を促進し鎮痛消炎効果を高めるためのもので、脂肪分解効果や脂肪燃焼効果を示していない。
【0019】
以上を要約するとカプサイシン類の経口投与では局部脂肪減少を生起できない。又、カプサイシン類以外を含む外用薬は効き目が定かでない。
【0020】
カプサイシン類の経皮適用(貼付/塗布剤)には次の2群がある。第1は肌ひき締めにおいてマッサージ効果を高めるために皮膚刺激で血行促進を計り温熱効果を肌ひき締めに利用するものであり、第2は鎮痛消炎において局所の血行促進を計り鎮痛消炎剤の効果を高めるものである。
【0021】
しかし、いずれの群も経皮血行促進であって脂肪減少については記載がない。
【0022】
一方超音波照射により脂肪分解が生じFFAが産生される事、その照射条件として約500KHz付近では診断用連続の安全基準1W/cmで十分である事等を発明者等は実験的に発見している(第19回日本肥満学会抄録集(日本肥満学会誌1998VOL.4,Supplement、129頁)。
【0023】
この脂肪分解は照射領域付近でまず局所的に産生したFFA濃度が上昇する。このFFAは燃焼消費されなければ再び脂肪に戻るので、FFAの燃焼消費のための運動等が必要となる。
【0024】
電磁波を照射すると共に、食事管理を行う方式が痩身に有効との報告が第19回日本肥満学会抄録集(日本肥満学会誌1998VOL.4,Supplement)128頁に記載されている。前記報告は、580KHz、50〜60Wの電磁波を60分(両足底部20分、背部15分、腹部25分)、周2回、10週照射し、食事療法を併用して肥満指数BMIの減少を確認している。
【0025】
前記電磁波照射の痩身効果のメカニズムは不明である。又その効果が局所的なものか、全身的なものかも不明であるが、580KHzではその生体内減衰はわずかである。従って、前記電磁波は広域に照射されたものと理解すべきであり、このような照射は局所的痩身に困難があると理解される。何よりも長期にわたり食事制限をする事は人にとって苦痛であるという問題が大きい。
【0026】
又、マッサージでその局部の脂肪分解を生じるとの報告(奥田)もある。
【0027】
前記マッサージは、マッサージした局部の脂肪分解を生起するが、その分解産生した遊離脂肪酸FFAを燃焼消費しなければならない。この事は超音波による脂肪減少と事情は同じで、運動等によるFFA燃焼を行う必要があり、人の努力を必要とする問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開平10−139034号公報
【特許文献2】特開昭60−262571号公報
【特許文献3】特開平10−218765号公報
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Pharmazie, 1997年, 52, pp.135−138
【非特許文献2】Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 1986年, 183, pp.250−256
【非特許文献3】Agric. Biol. Chem., 1987年, 51(1), pp.75−79
【非特許文献4】J. Nutr., 1986年, 116, pp.1272−1278
【非特許文献5】Nutr. Res., 1991年, 11, pp.917−928
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、以上の先行技術に代わってマッサージ、運動、食事制限等の努力や強固な意志を要せずに有効に生体の脂肪減少、脂肪生成抑制ができ、特に貼付/塗布等の簡単な手段で局所的な脂肪分解、局所的痩身をおこなう脂肪減少用外用剤および脂肪減少装置を提供する事を目的とする。
【0031】
又、本発明は、超音波照射、電磁波照射、機械的振動の適用等の物理的刺激で発生した脂肪分解FFAをその適用部位で局所的に燃焼して消費する脂肪減少用外用剤、脂肪減少装置を提供し、特に超音波照射の場合、その透過を可能とする外用剤を提供する事を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の脂肪減少用外用剤は、カプサイシン類又はノニル酸ワニリルアミドの少なくとも1つを含む事を特徴とする。前記カプサイシン類は、カプサイシン、その同族体およびそれらの誘導体を含み、さらに前記カプサイシン類を含む乾燥唐辛子粉末のような生薬、唐辛子エキス等であってもよい。本発明の外用剤は、貼付又は塗布されて使用する事ができる。
【0033】
カプサイシン類は皮膚に接触した場合、皮膚の痛覚又は温覚を刺激し、付近の血流を促進するとされている。
【0034】
一方、カプサイシン類は、その分子構造に脂溶性部があり、経皮的に皮膚の脂腺から体内(組織、リンパ液、毛細血管)に取り入れられる。この経皮的に体内に取り入れられたカプサイシン類は当然近傍の末梢交感神経を刺激してノルエピネフィリンを分泌し、その結果脂肪分解を生起し、その熱代謝性はFFAを燃焼し脂肪減少すると考えられる。皮膚刺激のみでは神経系経由で交感神経を刺激し、同様に脂肪分解してFFAを発生し得るが、カプサイシン類が体内にはいらないとFFAの燃焼は生起しないと考えられる。しかし、本発明では、リンパ液、毛細血管に入ったカプサイシンは体液に薄められて効果は低下するが経口摂取と同じ効果を発生すると考えられる。
【0035】
カプサイシン類に替えて、ノニル酸ワニリルアミドも同様に用いる事ができる。
【0036】
本発明実施にあたっては、勿論先行例の温感湿布に含まれるような他の配合剤を含有して良い。特にカプサイシンの濃度を上げると炎症や水泡を生じる事があるので、消炎剤や亜鉛華等の緩和剤等を用いる事が好ましい。鎮痛を目的としないので鎮痛剤は必ずしも必要でない。
【0037】
本発明の脂肪減少用外用剤は、基材と基材上に形成され皮膚に接触する薬剤層とを備え、該薬剤層に脂肪分解成分および/又は脂肪生成抑制成分を含む貼付外用剤であって、該基材は超音波を透過可能な材料からなる事を特徴とする。
【0038】
脂肪分解成分には前述のカプサイシン等やシブトラミン等の熱代謝亢進剤がある。脂肪生成抑制成分には、食欲抑制剤のマジンドール、デクスフェンフルアミン、シブトラミン、消化吸収阻害剤のオーリスタット、等が含まれる。前者は脂肪を分解して燃焼消費するものであり、後者は脂肪が生成増加するのを防ぎつつ、日常生活程度の運動量での脂肪減少燃焼消費により脂肪を減少させるものである。
【0039】
又、本発明の脂肪減少用外用剤は、貼付剤として基材と基材上に形成され皮膚に接触する薬剤層とを備え、該薬剤層に脂肪分解成分および/又は脂肪生成抑制成分を含む貼付外用剤であって、該基材は多孔質又は多数の小孔を備える材料からなり、該基材に含浸させる超音波を透過可能とする超音波音響結合剤を備える事を特徴とする。前記基材は、前記多孔質の空孔部又は多数の小孔に予め超音波音響結合剤を充填されていてもよく、使用時に超音波音響結合剤を充填されるものでもよい。
【0040】
前記基材は、使用時に超音波音響結合剤を充填可能とするために、超音波音響結合剤が前記空孔部及び小孔を容易に充填する構造を有するか、超音波結合剤に濡れる表面を有するか、充填を容易にする表面処理をされているかする事が好ましい。
【0041】
貼付剤は一般に基材と、その上に形成される薬剤層と、保存時に薬剤層を保護する保護層とからなる。保護層は使用に当り除去されて使用される。
【0042】
基材は薬剤層を支える強度材である。体の曲率に合わせたり、関節の自由な運動を可能とするために一般に伸縮自在な材質とされる。又皮膚の通気や発汗水分の蒸発を可能とするために通気性を持たせる。具体的には天然繊維や合成繊維の織布、不織布、紙等が用いられる。従ってその構造は多孔質であり、空気が大量に含まれる。この空気は超音波を反射し透過させない。従って超音波を透過可能にするには空気を含まない基材を用いる必要がある。その様な基材にはプラスチックフィルム等がある。
【0043】
又空気を含む多孔質基材の構造の目を荒くして超音波結合剤が容易に空孔部を充填し得る構造とする。その基材の材質を超音波結合材が濡れやすい物とする。あるいはその基材の表面を超音波結合剤の濡れやすい表面処理をする。あるいは基材の空孔部に超音波結合剤を予め充填しておく事で解決できる。
【0044】
本発明の脂肪減少装置は、基材と基材上に形成され皮膚に接触する薬剤層とを備え、該薬剤層に脂肪分解成分および/又は脂肪生成抑制成分を含む貼付外用剤、又は脂肪分解成分および/又は脂肪生成抑制成分を含む塗布外用剤と、該塗布外用剤の該薬剤層を皮膚に接触した時、又は該塗布外用剤を皮膚に塗布した時に、該貼付部又は該塗布部を含む生体体表領域に、体表側から物理的刺激を付与する物理的刺激付与手段とからなる事を特徴とする。
【0045】
又、該物理的刺激付与手段は、生体に対して、超音波、電磁波又は機械的振動の少なくとも1種の刺激を付与する手段を用いる事ができる。
【0046】
生体に対して、約500KHz付近で診断用連続波の安全基準1W/cm程度の超音波を照射すると、照射領域付近で脂肪分解が生じFFAが産生される。その領域および付近にカプサイシン等の脂肪分解熱代謝亢進成分を有する外用剤が貼付又は塗布されていて、その成分が経皮的に体内に入りその付近で高濃度になるので、超音波産生FFAはその局部で有効に燃焼される。
【0047】
又その超音波照射領域に脂肪生成抑制成分が貼付および/又は塗布されていると、その成分の吸収が超音波により促進され、脂肪生成を抑制するので、超音波で産生されたFFAは格別の運動を要せず、通常の生活の運動量で消費され、再びその局部に蓄積する確率は低下する。
【0048】
電磁波照射や機械的振動等による脂肪分解FFAも超音波と同様な理由で経皮外用剤の脂肪分解成分の熱代謝亢進作用で有効に燃焼され運動食事制限を要せずに脂肪減少に結び付く。又、脂肪生成抑制成分は新たな脂肪生成を抑制し、格別の運動を必要とせず通常の生活の運動量でFFAを燃焼でき、脂肪を減少できる。ここに言う機械的振動には、電気的に機械振動する接触子を用いたマッサージ機、バイブレータ、指サイズのボール状振動接触子がゆっくり移動する電気按摩機等が含まれる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によればカプサイシン等の脂肪減少剤を含む貼付剤/塗布剤等の脂肪減少外用剤が得られ、簡単に身体に付着して長時間に渡り経皮摂取され、局所的又は全身的な脂肪分解・脂肪燃焼・脂肪生成抑制が得られ、脂肪が減少される。超音波照射による脂肪分解と併用して局所的な脂肪分解・燃焼が得られ、脂肪が減少される。又電磁波照射や、機械的振動と併用してより効率的な脂肪分解・脂肪生成抑制・局部的な痩身が得られ、脂肪が減少される。
【発明を実施するための形態】
【0050】
貼付/塗布剤は大きく分けて、薬剤が経皮浸透して血中に入り全身的に作用するものと、局所的に作用するものとがある。一般には外用貼付/塗布剤は後者の局部作用を目的とする。例えば本発明や筋肉痛、神経痛等の治療用インドメタシン含有塗布剤、湿布等は後者である。
【0051】
貼付剤は一般に基材と、その上に形成される薬剤層と、保存時に薬剤層を保護する保護層とからなる。保護層は使用に当たり除去されて薬剤層を皮膚に接触させる。湿布剤、膏薬等はその例である。
【0052】
薬剤層は一般に皮膚に粘着する成分を含むが、粘着性の無い薬剤層も、基材の上から粘着テープや粘着シートを用いて皮膚に圧着する事で皮膚接触させる事が可能である。
【0053】
薬剤層には、カプサイシン類で総称する乾燥唐辛子粉末のような生薬、唐辛子エキス、各種カプサイシン同族体、その一部を修飾した誘導体および/又はノニル酸ワニリルアミド等が含まれる。これらを高濃度に配合すると皮膚刺激が強すぎて、皮膚炎症や水泡等を生じる恐れがあるので、各種消炎剤や亜鉛華軟膏等の緩和剤を配合する事が望ましい。消炎剤にはサリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等がある。
【0054】
その他、粘着剤(テルペン系樹脂、石油系樹脂)、非転着性粘着剤(A−B−A型ブロック共重合体、A−B型ブロック共重合体)、接着力保持力調整剤(流動パラフィン、オリーブ油、大豆油、動物脂、ポリブテン、低級イソプレン、ワックス)、充填増量剤(酸化チタン、酸化亜鉛、メタケイ酸アルミニウム、硫酸カルシウム、燐酸カルシウム)、保水剤(CMC,ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン等)、軟化・伸展剤(高級脂肪酸、液化ゴム、鉱油、植物油)、汗等を吸収する吸水性高分子、老化防止剤、酸化防止剤、清涼剤(薄荷油、メントール、カンフル等)、香料等を配合する事ができる。
【0055】
これらは温度軟化性、揮発性等を勘案して適宜の順に適宜の温度で混練しペースト状とされ基材に塗布される。
【0056】
保護層にはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン等のフィルムが使用できる。
【0057】
基材は薬剤層を支える強度材である。体の曲率に合わせたり、関節の自由な運動を可能とするために一般に伸縮自在な材質とされる。又皮膚の通気や発汗水分の蒸発を可能とするために通気性を持たせる。具体的には天然繊維や合成繊維の織布、不織布、紙等が用いられる。
【0058】
さて外用剤には上記貼付剤のほかに塗布剤がある。塗布剤は、直接生体に塗布してもよく、温泉、温水等に該塗布剤を混入し、生体をその中に浸漬させてもよい。又、塗布剤を含む蒸気を生体に当ててもよい。
【0059】
塗布剤は、前記カプサイシン類および/又はノニル酸ワニリルアミドと、前記貼付剤の薬剤層に含まれてもよい他の適宜の成分と、伸展剤、溶剤等を混合してクリーム状又は液状とされる。成分の油性、水性に応じて油性又は水性の伸展剤、溶剤を使用する事は言うまでも無い。クリーム状は衣服を汚染する恐れがあるので塗布時クリーム状又は液状でも溶媒が早く気化して皮膚面には比較的硬質の衣服を汚染しない薄層が残るようにした溶媒蒸発型とする事ができる。
【0060】
次に、本発明者等は実験で本発明の外用剤の脂肪分解作用を確認すべく、ラットを先ずネンブタールで中枢神経を麻酔して後、ラットの腹部を剃毛し、100gr中唐辛子エキスを0.2gr含有する温感湿布剤を20分間貼り付け、その前後の静脈血中のFFAを計測しFFAが有意に増大する事を見いだし、脂肪分解の生起を確認した。
【0061】
本発明はこの実験事実に基いて従来血行促進、局部温感効果用とされていたカプサイシンを含む外用剤を、新たに経皮的脂肪減少剤として用いるものである。
【0062】
次に、本発明の外用剤として貼付剤を体表に適用した領域に更に超音波を照射する形態について説明する。
【0063】
前述のごとく、貼付剤の基材は一般に通気性を持たせるように、又伸縮性を持たせるように設計されている。従ってその構造は多孔質であり、空気が大量に含まれる。この空気は超音波を反射し透過させない。従って超音波を透過可能にするには空気を含まない基材を用いる必要がある。その様な超音波透過性基材にはプラスチックフィルム等がある。この場合も勿論その基材表面に接する超音波適用子振動子と基材表面の間には音響結合剤(超音波ゼリー、超音波ゲル等と呼ばれている)を用いる。
【0064】
この場合は長期貼り付けていると、体表の呼吸作用や発汗作用がフィルムで阻害されるので数mmから10数mm間隔で分布する0.1〜1mm径の小孔群をフィルムに設けると良い。この小孔は容易に超音波音響結合液又は超音波音響結合剤で満たす事ができる。又汗を吸う吸水剤(紙おむつ等に使用される上述の吸水性高分子)等を配合しておく事でも解決できる。
【0065】
次に、本発明の外用剤として貼付剤を体表に適用した領域に更に超音波を照射する、他の形態について説明する。
【0066】
一般的な貼付剤の基材は通気性と伸縮性の点から多孔質又は多数の小孔を備える材料よりなる事は既に述べた。この様な基材を本発明に使用した場合、容易に超音波音響結合剤がその空孔部に充填されるように、繊維の織りを粗にして個々の空孔部を大きくするとか多孔質基材の構造の目を荒くした構造とする。又その基材の材質を超音波音響結合剤に濡れやすいものとする。一般に超音波音響結合剤は使用後の除去が水洗で可能なように水性とされる事が多い。従ってこの場合には親水性素材を基材に用いると良い。もし素材が非親水性である場合には、その表面を親水性界面活性剤等で親水性処理して使用すればよい。逆に、超音波音響結合剤が油性の場合は低粘度の油を塗布し、表面を親油性としておくと良い。
【0067】
あるいは基材の空孔部に超音波音響結合剤を予め充填しておく事で解決できる。この充填には、超音波音響結合剤を充填する部分の空気を真空で抜いた後に、超音波音響結合剤を充填する等の手段を使用する事もできる。
【0068】
以上は貼付剤について述べたが、本発明の塗布剤が粘稠で、そのままでは超音波振動子が粘着して体表上を移動走査したり、体表との接触・離脱をする事が困難な場合は、更にその上に通常の超音波音響結合剤を用いる事で、超音波の照射ができる。又塗布剤が低粘度の場合は紙等に染込ませて貼り、あたかも貼付剤であるかのごとく取り扱えば良い。
【0069】
次に、本発明の外用剤を適用した体表に更に物理的刺激を適用する形態について説明する。前記物理的刺激は、超音波照射、電磁波照射、機械的振動の少なくとも1つである。又、その複合の有効性についても既に述べた。以下、各物理的刺激手段について具体的に述べる。
【0070】
外用剤の貼付、塗布等は脂肪減少を希望する体の部位に適用する。貼付外用剤は取り扱い上便利な寸法例えば10cm×20cmのユニットに裁断されて使用される。広い面積にはその複数枚を貼付すればよい。塗布剤では希望する部位の希望する面積領域に塗れば良い。有効成分はその適用部位およびその周辺に浸透する。
【0071】
物理的刺激はその外用剤適用部位や近傍に皮膚に接触して適用される。超音波や機械振動の適用子は一般に知られているように体接触面積は20〜50mmφ程度で広い適用野を得るには適用子を体表にそって移動走査する。
【0072】
超音波や機械的振動は有効成分の皮膚浸透を促進する。又交感神経を刺激して脂肪減少ホルモンのノルエピネフィリンを放出させ、付近の脂肪を分解する。
【0073】
電磁波の適用子は電極板又は電磁コイルとする事ができる。電磁波の空間や生体透過伝搬の性質上、適用子は適用時皮膚に接触するのが良いが皮膚から若干離れていても良い。
【0074】
電極板では対向するほぼ同面積の適用子で1個を給電側とし他を接地側とする。あるいは給電側適用子を角型又は円形とし、その1辺又は直径が5〜20cm程度とし、他の対向接地電極は生体を含む広い面積として設置しても良いし、大地や建屋床を対向接地電極の代用としても良い。いずれにしても容量性負荷となり、電磁波は給電側電極から放射され対向接地電極に流れる。前者では給電側電極と対向接地電極とで作られる空間を大部分の電磁エネルギーが流れる。この空間内に生体を設置するとその部分が局所的に電磁波で照射される。後者では適用子付近では電磁波エネルギー密度は高いが、離れると急速に3次元的に拡散し照射エリアは広がるがエネルギー密度は低下する。即ち照射部分は前者よりも広がるがその境界は不明確となる。これらの照射部分に外用薬を適用しておけば良い。
【0075】
コイルの場合は線輪性負荷となり、コイルの両端間に電力が供給される。コイルは角型又は円形のループ状とする事ができる。磁束路がそのループコイル線の回りにループ面を貫通する形で形成される。ループが生体に接して又はやや離れて設置されると、その磁束路は生体に侵入し、生体は電磁波に照射された事になる。この場合ループ面で最もエネルギー密度が高く、生体はほぼループ面積の局所的な照射を受ける。この電磁波に照射される生体部位に本発明の外用剤が適用されていれば良い。ループコイルは角形又は円形とされた場合、その一辺又は直径寸法は5〜20cm程度が使用に便利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプサイシン、その同族体及びそれらの誘導体又はノニル酸ワニリルアミドの少なくとも1つを含む事を特徴とする脂肪減少用外用剤。
【請求項2】
基材と基材上に形成され皮膚に接触する薬剤層とを備え、該薬剤層に脂肪分解成分および/又は脂肪生成抑制成分を含む貼付外用剤であって、該基材は超音波を透過可能な材料からなる事を特徴とする脂肪減少用外用剤。
【請求項3】
基材と基材上に形成され皮膚に接触する薬剤層とを備え、該薬剤層に脂肪分解成分および/又は脂肪生成抑制成分を含む貼付外用剤であって、該基材は多孔質又は多数の小孔を備える材料からなり、該基材に含浸させる超音波を透過可能とする超音波音響結合剤を備える事を特徴とする脂肪減少用外用剤。
【請求項4】
前記基材は、使用に際し超音波音響結合剤が前記多孔質の空孔部又は前記小孔を容易に充填する構造を有するか、前記材料が超音波音響結合剤に濡れる表面を有するか、前記材料が超音波音響結合剤の充填を容易にする表面処理をされているか、又は予め前記材料が前記多孔質の空孔部又は前記小孔に超音波音響結合剤を充填されている事を特徴とする請求項3記載の脂肪減少用外用剤。
【請求項5】
基材と基材上に形成され皮膚に接触する薬剤層とを備え、該薬剤層に脂肪分解成分および/若しくは脂肪生成抑制成分を含む貼付外用剤、又は脂肪分解成分および/若しくは脂肪生成抑制成分を含む塗布外用剤と、該貼付外用剤の該薬剤層を皮膚に接触した時、又は該塗布外用剤を皮膚に塗布した時に、該貼付部又は該塗布部を含む生体体表領域に、体表側から物理的刺激を付与する物理的刺激付与手段とからなる事を特徴とする脂肪減少装置。
【請求項6】
前記物理的刺激手段は、生体に対して、超音波、電磁波又は機械的振動の少なくとも1種の刺激を付与する手段である事を特徴とする請求項5記載の脂肪減少装置。

【公開番号】特開2009−191073(P2009−191073A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124897(P2009−124897)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【分割の表示】特願平10−332480の分割
【原出願日】平成10年11月24日(1998.11.24)
【出願人】(596015343)有限会社三輪サイエンス研究所 (2)
【Fターム(参考)】