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脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法
説明

脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法

【課題】多数の被験処理条件の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果を適切に検出するために、肥大化後の脂肪蓄積の前後で大きく変化するマーカーを利用する、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法と、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法と、該評価方法を実施するためのキットと、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する化合物のスクリーニング方法とを開発する。
【解決手段】本発明は、生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量eを決定するステップを含む、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法を提供する。本発明は、被験処理条件による脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法を提供する。本発明の評価方法は、(1)被験処理前の生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、(2)被験処理後の生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量Eを決定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法と、被験処理条件による脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法と、前記評価方法を実施するためのキットと、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する化合物のスクリーニング方法とに関する。本発明は、具体的には、スタニオカルシン1(STC1)遺伝子産物の発現量を決定するステップを含む、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法と、STC1遺伝子産物の発現量を決定するステップを含む、被験処理条件による脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法と、STC1遺伝子産物の発現量を決定するための試薬を含む、前記評価方法を実施するためのキットと、STC1遺伝子産物の発現量を決定するステップを含む、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する化合物のスクリーニング方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、脂肪が体内に過剰に蓄積した状態をいう。肥満が進行すると、高血圧、2型糖尿病、循環器系疾患等の全身性疾患にかかる可能性が高くなる。また肥満が進行した人の皮膚には、肥大化した脂肪細胞がセルライトを形成し、腰から臀部を経て大腿部にかけての皮下組織が不均一に肥厚して、皮膚表面の凹凸が生じる、「オレンジピールスキン」という症状が現れる。脂肪の体内蓄積は、脂肪細胞の体積が増大する肥大化と、脂肪前駆細胞の増殖及び分化という異なるメカニズムによって進行するが、いずれも、さまざまなサイトカイン及び転写因子を介するカスケードが関与することが知られている(非特許文献1)。そして、TNF(腫瘍壊死因子)−α(非特許文献2)、IGFBP(インシュリン様成長因子結合タンパク質)3(非特許文献3)等の液性因子が、培養脂肪細胞の分化、すなわち、肥大化を阻害することが知られている。したがって、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害の実験系は、生体での肥満の予防及び/又は軽減に有効な化合物をスクリーニングするのに利用できる。しかし、従来の脂肪細胞の肥大化阻害の実験系で用いられたマーカーでは、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態を評価できない。
【0003】
一方、スタニオカルシンは、もともとミネラル代謝を調節するタンパク質として知られてきたが、脂肪細胞の分化、成熟を抑制する活性を有し、肥満の予防、治療用製剤としてスタニオカルシンを利用することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO 00/16795号公報明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gregoire,F.M.、Exp.Biol.Med.、226:997(2001)
【非特許文献2】Xing,H.ら、Endocrinology、138:2776(1997)
【非特許文献3】Chan,S.S.Y.ら、Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.、296:654(2009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、多数の被験処理条件の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果を適切に検出するために、肥大化後の脂肪蓄積の前後で大きく変化するマーカーを利用する、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法と、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法と、該評価方法を実施するためのキットと、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する化合物のスクリーニング方法とを開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量eを決定するステップを含む、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法を提供する。本発明の脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法では、正常な生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量eと、肥満状態の生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量eとに基づいて評価される場合がある。本発明の脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法において、前記STC1遺伝子産物の発現量は、STC1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定される場合がある。
【0008】
本発明は、被験処理条件による脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法を提供する。本発明の評価方法は、(1)被験処理前の生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、(2)被験処理後の生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、(3)E及びEに基づいて、前記被験処理条件の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果を評価するステップとを含む。
【0009】
本発明の評価方法において、前記生物学的試料は、被験者から採取された血液、細胞及び組織からなるグループから選択される少なくとも1種類から調製される場合がある。
【0010】
本発明は、被験処理条件による培養脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法を提供する。本発明の評価方法は、(1)前記培養脂肪細胞の脂肪蓄積処理前のSTC1遺伝子産物の発現量E’を決定するステップと、(2)前記培養脂肪細胞の脂肪蓄積処理後のSTC1遺伝子産物の発現量E’を決定するステップと、(3)E’及びE’に基づいて、前記被験処理条件の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果を評価するステップとを含む。
【0011】
本発明の評価方法において、前記被験処理条件は、試験化合物が添加された培地中での前記培養脂肪細胞の脂肪蓄積処理の場合がある。
【0012】
本発明の評価方法において、前記脂肪細胞は哺乳類由来の脂肪細胞株の場合がある。
【0013】
本発明の評価方法において、前記STC1遺伝子産物の発現量は、STC1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定される場合がある。
【0014】
本発明の評価方法において、前記STC1遺伝子産物の発現量は、対照遺伝子のmRNA及び/又はタンパク質の存在量を基準とする相対値として決定される場合がある。
【0015】
本発明の評価方法において、前記STC1のmRNAは、RT−PCR法又は固相雑種形成法で検出される場合がある。本発明の評価方法において、前記STC1のmRNAは、前記STC1のmRNAに特異的なプライマー対及び/又はプローブを用いるRT−PCR法又は固相雑種形成法で検出される場合がある。
【0016】
本発明の評価方法において、前記STC1のタンパク質は、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫比濁法からなるグループから選択される少なくとも1つの方法で検出される場合がある。本発明の評価方法において、前記STC1のタンパク質は、前記STC1のタンパク質に特異的な抗体を用いるELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫比濁法からなるグループから選択される少なくとも1つの方法で検出される場合がある。
【0017】
本発明は、前記STC1遺伝子産物の発現量を決定するための試薬を含む、本発明の評価方法を実施するためのキットを提供する。
【0018】
本発明のキットにおいて、前記試薬は、前記STC1のmRNAに特異的なプライマー対及び/又はプローブか、前記STC1のタンパク質に特異的な抗体かの場合がある。
【0019】
本発明は、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する化合物のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、(1)前記脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する候補化合物を用意するステップと、(2)脂肪蓄積処理と、前記候補化合物の投与とが実施される前に、前記脂肪細胞のSTC1遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、(3)前記脂肪蓄積処理だけが実施された後に、前記脂肪細胞のSTC1遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、(4)前記脂肪蓄積処理と、前記候補化合物の投与とが実施された後に、前記脂肪細胞のSTC1遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、(5)E’’がE’’よりも低い値を示す候補化合物を、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する化合物として選択するステップとを含む。
【0020】
本発明のスクリーニング方法において、前記STC1遺伝子産物の発現量は、STC1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定される場合がある。
【0021】
本発明は、被験者から採取された生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量を決定するステップを含む、肥満の診断方法を提供する。本発明の診断方法において、前記生物学的試料は、採取された血液か、生検により採取された脂肪細胞かの場合がある。本発明の診断方法において、前記STC1遺伝子産物の発現量は、STC1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定される場合がある。
【0022】
本明細書におけるSTC1遺伝子産物の発現量とは、生物学的試料におけるSTC1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量をいう。前記生物学的試料は、血液、脂肪細胞等の生体内から採取された細胞及び組織と、培養細胞とを含むが、これらに限定されない。前記生物学的試料は、当業者に標準的な方法で調製することができる。前記生物学的試料の生物種は、ヒト、サル、マウス及びラットを含むが、これらに限定されない。前記STC1のmRNAは、成熟mRNA、スプライシング・バリアント及び未成熟mRNAを含むが、これらに限定されない。
【0023】
本発明における培養脂肪細胞とは、生体内から採取された脂肪細胞の初代培養と、継代された脂肪細胞株とを含み、白色脂肪細胞及び/又は褐色脂肪細胞の細胞系譜に属するか、他の細胞タイプの細胞系譜に属するかに関係なく、以下に説明する脂肪蓄積処理によって細胞内の脂肪滴を増大させることのできるいずれかの細胞をいう。本発明の培養脂肪細胞には、マウス由来の3T3−L1細胞株、3T3−F442A細胞等の株細胞が含まれるが、これに限定されない。
【0024】
本発明の培養脂肪細胞の脂肪蓄積処理とは、本発明の培養脂肪細胞内の脂肪滴を増大させることのできるいずれかの処理をいい、インシュリン、デキサメタゾン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン等を含むが、これらの限定されない成分を含む培地で培養されるのが典型的である。
【0025】
本明細書におけるSTC1とは、本発明の評価方法に用いられる脂肪細胞と同じ動物種のスタニオカルシン1の相同遺伝子をいう。
【0026】
STC1の発現は脂肪細胞の分化にともなって増大することが示されている(Serlachius,M.及びAndersson,LC.、Exp Cell Res.、296:256(2004))。しかし、脂肪細胞の脂肪蓄積におけるSTC1の生理作用は明らかにされていない。
【0027】
以下の実施例に示すとおり、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積に伴ってSTC1遺伝子産物の発現量が顕著に増大することはこれまで知られていなかった。したがって、本発明のSTC1遺伝子産物の発現量を指標とする脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法は新規発明である。
【0028】
本発明におけるSTC1遺伝子産物の発現量は、脂肪細胞内に存在するSTC1のmRNAの存在量の他、前記脂肪細胞におけるSTC1遺伝子の転写活性を含む。前記脂肪細胞内に存在するSTC1のmRNAの存在量は、RT−PCR法、ノザンブロット法その他の固相雑種形成法を含むがこれらに限定されない方法によって決定される。前記脂肪細胞におけるSTC1遺伝子の転写活性は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、ルシフェラーゼ(Luc)、緑蛍光タンパク質(GFP)その他のレポータータンパク質がSTC1遺伝子の発現制御領域によって駆動されるコンストラクトを培養脂肪細胞に一時的又は永続的に導入することによって測定されるのが典型的である。前記培養脂肪細胞がマウス由来のとき、前記細胞内に存在するSTC1のmRNAの存在量をRT−PCR法によって決定するためには、配列番号1及び2に列挙されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドが、プライマーの対として用いられる場合がある。
【0029】
本発明におけるSTC1のmRNAの存在量は、決定するときの細胞の数又は全タンパク質の存在量によって標準化された絶対値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、脂肪蓄積処理後及び被験処理条件における培養後の容器1つあたりのSTC1のmRNAの存在量は、脂肪蓄積処理前の前記脂肪細胞のSTC1のmRNAの存在量を基準とする相対値で表される場合がある。さらに、本発明におけるSTC1のmRNAの存在量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照遺伝子のmRNAの存在量で標準化される場合がある。前記対照遺伝子は、いわゆるハウスキーピング遺伝子を含むが、これらに限定されず、例えば遺伝子発現アレイチップ等の手段で見つけることができる。本発明におけるハウスキーピング遺伝子は、28SrRNA、18SrRNA、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、βアクチン等を含むが、これらに限定されない。前記対照遺伝子が28S又は18SrRNAの場合には、本明細書における「対照遺伝子のmRNAの存在量」という文言は、28S又は18SrRNAの存在量を意味するものとする。前記培養脂肪細胞がマウス由来のとき、前記細胞内に存在する28SrRNAの存在量をRT−PCR法によって決定するためには、配列番号3及び4に列挙されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドが、プライマーの対として用いられる場合がある。
【0030】
本発明における固相雑種形成法には、いわゆるノザンブロット法の他、遺伝子発現アレイチップへの雑種形成法を含むが、これらに限定されない。
【0031】
本発明におけるSTC1遺伝子産物の発現量を決定するための試薬には、前記脂肪細胞内に存在するSTC1のmRNAの存在量を決定するための試薬の他、前記脂肪細胞におけるSTC1の転写活性を測定するための試薬が含まれるが、これらに限定されない。前記脂肪細胞内に存在するSTC1のmRNAの存在量を決定するための試薬には、STC1に特異的なプライマー対と、STC1に特異的なプローブとが含まれるが、これらに限定されない。前記脂肪細胞がマウス由来のとき、前記STC1(Stc1)に特異的なプライマー対は、配列番号1及び2に列挙されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドの場合がある。本発明のキットには、測定する細胞の数、細胞の全タンパク質の存在量等を決定するための試薬と、本発明の対照遺伝子のmRNAの存在量を決定するための試薬とを含むが、これらに限定されない、他の試薬が少なくとも1つ含まれる場合がある。
【0032】
本発明におけるSTC1遺伝子産物の発現量は、脂肪細胞により産生されたSTC1のタンパク質の存在量の他、生検により採取された生物学的試料中に存在するSTC1のタンパク質の存在量を含む。STC1のタンパク質の存在量は、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫比濁法を含むがこれらに限定されない方法によって決定される。前記方法において、STC1のタンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。前記抗体は、当業者に標準的な方法で調製されてもよく、商業的に入手可能な抗体であってもかまわない。
【0033】
本発明におけるSTC1のタンパク質の存在量は、決定するときの細胞の数又は全タンパク質の存在量によって標準化された絶対値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、脂肪蓄積処理後及び被験処理条件における培養後の容器1つあたりのSTC1のタンパク質の存在量は、脂肪蓄積処理前の前記脂肪細胞のSTC1のタンパク質の存在量を基準とする相対値で表される場合がある。さらに、本発明におけるSTC1のタンパク質の存在量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照タンパク質の存在量で標準化される場合がある。前記対照タンパク質は、いわゆるハウスキーピング遺伝子のタンパク質、例えば、βアクチン、γチューブリン等を含むが、これらに限定されない。ハウスキーピング遺伝子のタンパク質の存在量をELISA法等によって決定するためには、前記タンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。
【0034】
本発明におけるSTC1のタンパク質の存在量を決定するための試薬には、前記脂肪細胞により産生されたSTC1のタンパク質の存在量の他、生検により採取された生物学的試料中に存在するSTC1のタンパク質の存在量を決定するための試薬が含まれるが、これらに限定されない。前記STC1のタンパク質の存在量を決定するための試薬には、STC1のタンパク質に特異的な抗体が含まれるが、これらに限定されない。本発明のキットには、測定する細胞の数、細胞の全タンパク質の存在量等を決定するための試薬と、本発明の対照タンパク質の存在量を決定するための試薬とを含むが、これらに限定されない、他の試薬が少なくとも1つ含まれる場合がある。
【0035】
脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果が評価されるとき、本発明の被験処理条件は、温熱刺激その他の物理的処理と、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する候補化合物の投与のような化学的処理を含むが、これらに限定されない。また、培養脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果が評価されるとき、本発明の被験処理条件は、試験化合物が添加された培地中で前記培養脂肪細胞に前記脂肪蓄積処理を施すことを含むが、その他に、培養の際の温度、ガス組成、ガス分圧その他の物理的条件が操作される場合がある。
【0036】
本発明のスクリーニング方法において、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する候補化合物は、微生物、菌類、植物及び動物から調製される化合物と、化学的に合成される化合物とを含むが、これらに限定されない。前記候補化合物は、培養脂肪細胞と、マウス、ラット等を含む実験動物とに投与される場合がある。本発明のスクリーニング方法において、脂肪蓄積処理は、インシュリン、デキサメタゾン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン等を前記培養脂肪細胞に投与すること、高脂肪食等を前記実験動物に給餌すること等を含むが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の診断方法において、被験者のSTC1遺伝子産物の発現量が決定されるとき、前記発現量が基準値よりも高い値を示す場合に、前記被験者は肥満であると判断される。前記基準値は、当業者に周知な統計処理によって算出することができる。前記基準値は、健康な被験者の母集団から採取された生物学的試料中におけるSTC1遺伝子産物の発現量の平均値として決定される場合がある。前記母集団の被験者と、診断される被験者とは、生物種、年齢及び性別が同じであることが好ましい。
【0038】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】マウス3T3−L1細胞の肥大化後の脂肪蓄積に伴うSTC1のmRNAの存在量の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例1】
【0041】
マウス3T3−L1細胞の肥大化後の脂肪蓄積に伴うSTC1遺伝子産物の発現量の変化
1.材料及び方法
(1)細胞培養
培養脂肪細胞としてマウス3T3−L1細胞が用いられた。マウス3T3−L1細胞は、1ウェルあたり7.5×10個/mLとなるように市販の培養プレート(353043、ファルコン、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に播種され、市販の細胞培養用培地(D−MEM、11885084、GIBCO、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)にウシ胎仔血清(FBS、16010159、GIBCO、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を10%添加した培地(以下、「FBS10%添加D−MEM」という。)を用いて培養された。前記細胞は、37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で6時間培養された。
【0042】
その後、前記脂肪前駆細胞を培養する培地は、インシュリン、デキサメタゾン及びイソブチルメチルキサンチン(IBMX)それぞれが、最終濃度0.2、0.3及び200マイクロモルとなるように添加されたFBS10%添加D−MEMに切り換えられ、前記脂肪前駆細胞は、37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で2日間培養された。2日間の培養後、培地は、インシュリンが最終濃度0.2マイクロモルとなるように添加されたFBS10%添加D−MEMに切り換えられ、前記脂肪前駆細胞は、37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で2日間培養された。その後、培地はFBS10%添加D−MEMに切り換えられ、培養期間中1日置きに培地が交換された。
【0043】
(2)STC1遺伝子産物の発現量の定量
培地はアスピレーターで除去され、各ウェルがそれぞれPBS 2mLで2回洗浄された。RNAがRNeasy Protect Kit(74104、株式会社キアゲン)を用いて各ウェルの細胞それぞれから製造者の指示に従って抽出された。cDNAが定法に従って作成され、定量リアルタイムPCRで用いられた。前記定量リアルタイムPCRには、LightCycler(登録商標)FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green I(カタログ番号03 515 885 001、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)が用いられた。マウスStc1遺伝子から転写されたmRNA由来のcDNAの断片を増幅するために、配列番号1及び2に列挙されるヌクレオチド配列からなる順方向及び逆方向プライマーの対が用いられた。マウス28SrRNAの由来のcDNAの断片を増幅するために、配列番号3及び4に列挙されるヌクレオチド配列からなる順方向及び逆方向プライマーの対が用いられた。PCRの反応条件は、95°C、10分間を1回と、95°C、15秒間、60°C、5秒間及び72°C、5秒間を35回とであった。STC1のmRNAの存在量は、LightCycler Software Ver.3.5(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)で解析され、28SrRNAの存在量で標準化された。
【0044】
2.結果
図1は、マウス3T3−L1細胞のSTC1のmRNAの存在量の変化を調べた実験結果を示すグラフである。誤差棒それぞれは、同一条件のウェル3個のmRNAの存在量を決定した値の標準誤差を示す。脂肪細胞が分化するとき、及び、脂肪が肥大化後の脂肪細胞に蓄積するとき、STC1のmRNAの存在量は顕著に増大した。
【0045】
結論
STC1のmRNAの存在量は、脂肪細胞の脂肪蓄積に伴って増大する。したがって、本発明の評価方法は、脂肪細胞の脂肪蓄積状態、特に、肥大化後の脂肪蓄積状態を評価できるため、従来技術と比較して顕著に優れている。
【0046】
STC1遺伝子産物は、被験処理条件の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果を適切に検出することができるので、多数の被験処理条件、例えば、多数の試験化合物が添加された培地における培養脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果をハイスループットに評価することができる。これは、肥満の予防及び/又は軽減に有効な化合物をスクリーニングするうえで非常に有用である。また、本発明の評価方法は、単純培養と異なり、目視による評価が困難な3次元培養においても、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態が容易に評価できるため、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量eを決定するステップを含むことを特徴とする、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積状態の評価方法。
【請求項2】
被験処理条件による脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法であって、
(1)被験処理前の生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、
(2)被験処理後の生物学的試料中のSTC1遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、
(3)E及びEに基づいて、前記被験処理条件の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果を評価するステップとを含むことを特徴とする、評価方法。
【請求項3】
前記生物学的試料は、被験者から採取された血液、細胞及び組織からなるグループから選択される少なくとも1種類から調製されることを特徴とする、請求項2に記載の評価方法。
【請求項4】
被験処理条件による培養脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果の評価方法であって、
(1)前記培養脂肪細胞の脂肪蓄積処理前のSTC1遺伝子産物の発現量E’を決定するステップと、
(2)前記培養脂肪細胞の脂肪蓄積処理後のSTC1遺伝子産物の発現量E’を決定するステップと、
(3)E’及びE’に基づいて、前記被験処理条件の肥大化後の脂肪蓄積阻害効果を評価するステップとを含むことを特徴とする、評価方法。
【請求項5】
前記被験処理条件は、試験化合物が添加された培地中での前記培養脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積処理であることを特徴とする、請求項4に記載の評価方法。
【請求項6】
前記脂肪細胞は哺乳類由来の脂肪細胞株であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の評価方法。
【請求項7】
前記STC1遺伝子産物の発現量は、STC1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の評価方法。
【請求項8】
前記STC1のmRNAは、RT−PCR法又は固相雑種形成法で検出されることを特徴とする、請求項7に記載の評価方法。
【請求項9】
前記STC1のタンパク質は、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫比濁法からなるグループから選択される少なくとも1つの方法で検出されることを特徴とする、請求項7に記載の評価方法。
【請求項10】
前記STC1遺伝子産物の発現量を決定するための試薬を含む、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の評価方法を実施するためのキット。
【請求項11】
前記試薬は、前記STC1のmRNAに特異的なプライマー対及び/又はプローブか、前記STC1のタンパク質に特異的な抗体かであることを特徴とする、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する化合物のスクリーニング方法であって、
(1)前記脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する候補化合物を用意するステップと、
(2)脂肪蓄積処理と、前記候補化合物の投与とが実施される前に、前記脂肪細胞のSTC1遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、
(3)前記脂肪蓄積処理だけが実施された後に、前記脂肪細胞のSTC1遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、
(4)前記脂肪蓄積処理と、前記候補化合物の投与とが実施された後に、前記脂肪細胞のSTC1遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、
(5)E’’がE’’よりも低い値を示す候補化合物を、脂肪細胞の肥大化後の脂肪蓄積を抑制する化合物として選択するステップとを含むことを特徴とする、スクリーニング方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−5744(P2013−5744A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139492(P2011−139492)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】