説明

脂肪酸アルキルエステルの酵素的合成のためのプロセス

バイオ燃料、食品および洗剤の各産業で使用される脂肪酸アルキルエステルの生成のための酵素のバッチ式プロセスまたは連続プロセスおよびそのシステムを開示する。該プロセスは、疎水性樹脂上に固定化された酵素を脂肪酸源と、アルコールまたはアルコール供与体とをアルカリ性もしくは弱アルカリ性の水性緩衝液の存在下で、または水溶液の存在下で混合させて利用する。脂肪酸アルキルエステルの生成プロセスは、エステル交換またはエステル化を同時に、もしくは順次行うことによって実行される。生体触媒活性は、複数回の使用で何ら著しい活性消失もなく維持され、かつ生体触媒上でのグリセロールおよび水の副産物または他の親水性化合物の蓄積を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バイオ燃料、食品および海面活性剤の産業での使用用の脂肪酸アルキルエステルの生成のための酵素法が開示される。このプロセスでは、脂肪酸源およびアルコールまたはアルコール供与体は、疎水性樹脂上に固定化された酵素の存在下、アルカリ性水性緩衝液または水の存在下で、反応させる。開示されるプロセスは、または連続撹拌タンク反応器もしくは充填層反応器を連続で用いるバッチ式でまたは連続的でのいずれかで行われることができる。
【背景技術】
【0002】
酵素の固定化は、全酵素法において酵素の費用分担を減少させること;生成物から酵素の回収を容易すること;および該プロセスの連続操作を可能にすることを基本的に目標とする夥しい数の技法によって説明されてきた。
【0003】
固定化技法は、通常、以下によって分類される:
1.シリカ高分子および不溶性高分子などの固体担体への酵素の物理的吸着。
2.イオン交換樹脂への吸着。
3.エポキシ化無機担体または高分子担体などの固体担体材料との酵素の共有結合。
4.成長する高分子内での酵素の封入。
5.膜反応器または半透性ゲル内での酵素の封入。
6.架橋酵素結晶(CLEC)または架橋酵素凝集体(CLEA)。
【0004】
上述のすべての酵素固定化プロセスは、以下のステップで構成されている:
1.pH、温度、緩衝塩の種類およびイオン強度に関して適切な緩衝液系で酵素を溶解するステップ。
2.酵素溶液に固体担体を加えて、酵素分子が該固体担体上に固定化されるまで暫く混合するステップ。
3.固定化した酵素を含む固体担体を濾過するステップ。
4.固体担体を適切な緩衝液で洗浄して、結合が弱い酵素分子を除去し、次いで該固体担体を乾燥させるステップ。
【0005】
大部分はリパーゼである界面酵素は、上述した技法の後に固定化されてきた。これらの技法は、低い合成活性および/または短い作用半減期を有する固定化酵素調製物を提供した。固定化リパーゼおよび他の界面酵素の合成活性と安定性を増加させる試みにおいて、様々な活性化法が適用されてきた。これらの方法は以下を含む:
1.脂肪酸またはポリエチレングリコールなどの疎水性残基に酵素の表面官能基を結合すること。
2.酵素の表面を、ポリオール脂肪酸エステルなどの界面活性物質で被覆すること。
3.エタノールまたはイソプロパノールなどの親水性溶媒で前処理されている疎水性担体(典型的にはポリプロピレン)と酵素を接触させること。
【0006】
酵素逆変換を工業量で行うために、固定化界面酵素の安定化および対費用効果に関して、上述の方法のいずれも、満足な結果をもたらさなかった。また、上述した方法によって固定化される場合、固定化方法によって課せられるいくつかの制約のため、または反応媒体中にいくつかの酵素抑制物質が存在するために、その合成活性のかなりの部分を失う、もしくはその活性の完全な性能を示さないことが報告されている。
【0007】
リパーゼおよびホスホリパーゼの別の主要な弱点は、親水性基質、特に短鎖アルコール類および短鎖脂肪酸(Cが4以下のもの)に対するそれらの耐性が低いことである。多くの研究調査では、短鎖アルコール類および短鎖脂肪酸(それぞれメタノールおよび酢酸など)がこれらの酵素の四次構造から重要な水分子が分離することに関与しており、それらの触媒活性の変性およびその結果、触媒活性の消失を引き起こすことが観察されている。この弱点のために、基質としてオイルトリグリセリドおよびメタノールを用いる、脂肪酸メチルエステル「バイオディーゼル」の商業量の生産のためにリパーゼの使用が妨げられてきた。
【0008】
遊離アルコールによる脂肪酸源のエステル交換/エステル化のために固定化リパーゼを用いるさらなる弱点は、生体触媒上に形成されたグリセロールおよび水の副産物が蓄積され、したがって基質が固定化酵素の活性部位に自由に接近するのを妨げていることである。かかる生体触媒は通常、同じバッチの生体触媒が使用される場合、数サイクル後にその触媒性能を失う。
【0009】
本発明者らは、多くの生成サイクルにわたり良好な安定性を示し、活性を持続する特別な固定化酵素調製物を開発した。かかる酵素調製物の例は、とりわけ、国際公開第WO2008/084470号、同第WO2008/139455号、および同第WO2009/069116号に開示されている。
【0010】
触媒反応が行われる条件は、固定化酵素調製物の安定性および効率に悪影響を与えることもある。触媒反応条件下で安定性および活性を保持する酵素調製物を有することは重要である。
【0011】
本発明のこれらおよび他の目的は、説明が進むにつれて明らかになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一実施形態では、本発明は、脂肪酸アルキルエステルを形成するために、固定化リパーゼ調製物の存在下で脂肪酸源をアルコールまたはアルコール供与体と反応させることを含む、脂肪酸源のアルコールでのエステル交換/エステル化を行うプロセスに関し、該固定化リパーゼ調製物が疎水性多孔質の担体上に固定化された少なくとも1つのリパーゼを含み、および反応媒体が水性アルカリ性緩衝液を含む。
【0013】
前述の水性アルカリ性緩衝液は、弱アルカリ性水性緩衝液であってもよい。前述の水性アルカリ性緩衝液は、脂肪酸源の最高5重量%までの量で反応混合物に含まれてもよい。該水性緩衝液は、7から約11、例えば、7〜8.5、7〜9、7〜9.5、7〜10および7〜11のいずれか1つのpH値であってよい。該緩衝液を含む補充した弱アルカリ性試薬のpKaは、脂肪酸源を含む酸類のpKaよりも高いまたは等しい。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、脂肪酸アルキルエステルを形成するために、固定化リパーゼ調製物の存在下で脂肪酸源とアルコールとを反応させることを含む、脂肪酸源のアルコールとのエステル交換/エステル化を行うプロセスに関し、固定化リパーゼ調製物が疎水性多孔質担体上に固定化された少なくとも1つのリパーゼを含み、および反応媒体が水を含有する。水は、3〜11のpH値を有する水溶液の形状である。反応媒体は、脂肪酸源の5重量%までの水または水溶液を含んでもよい。
【0015】
本発明のすべての実施形態および態様では、アルコールは短鎖アルコール、例えば、C−Cアルキルアルコール、より具体的にはC−Cアルキルアルコール、特にメタノールまたはエタノールであってもよい。前述のアルコールがメタノールである場合、結果として生じる脂肪酸エステルは、脂肪酸メチルエステル(FAME−Biodiesel)である。また、アルコールは、中鎖脂肪アルコール(C−C10)または長鎖脂肪アルコール(C12−C22)であってもよい。アルコール供与体は、モノアルキルエステル、または炭酸ジメチルもしくは炭酸ジエチルなどの炭酸ジアルキルであってもよい。
【0016】
本発明のすべての実施形態および態様では、前述の固定化リパーゼは、遊離脂肪酸のエステル化を触媒して、脂肪酸アルキルエステルおよび副産物として水をもたらすことができ、トリグリセリドおよび部分グリセリドのエステル交換を触媒して脂肪酸アルキルエステル、および副産物としてグリセロールをもたらすことができる。
【0017】
アルカリ性緩衝液またはアルカリ性溶液の使用に関する本発明のすべての実施形態および態様では、反応媒体中の前述のアルカリ性緩衝液またはアルカリ性溶液の量は、脂肪酸源の0.001〜5重量%である。
【0018】
本発明のすべての実施形態および態様では、前述の少なくとも1つのリパーゼは、リゾームコールミーハイ(Rhizomucor miehei)、シュードモナスエスピー(Pseudomonas sp.)、リゾプスニベウス(Rhizopus niveus)、ムコールジャバニクス(Mucor javanicus)、リゾプスオリゼ(Rhizopus oryzae)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウムカメンベルティ(Penicillium camembertii)、アルカリジェネスエスピー(Alcaligenes sp.)、アクロモバクターエスピー(Acromobacter sp.)、ブルクホルデリアエスピー(Burkholderia sp.)、サーモマイセスラヌギノサ(Thermomyces lanuginosa)、クロモバクテリウムビスコサム(Chromobacterium viscosum)、カンジダアンタークティカB(Candida antarctica B)、カンジダルゴサ(Candida rugosa)、カンジダアンタークティカA(Candida antarctica A)、パパイヤ種子およびパンクレアチンのいずれか1つに由来するリパーゼであってもよい。リパーゼ調製物は、同じ疎水性担体上でそれぞれ別々に固定化されうる、または共固定化されてもよい。前述のリパーゼは、同一のまたは異なる位置特異性を有することもある。前述のリパーゼは、同時に、または連続的に遊離脂肪酸のエステル化を触媒して、脂肪酸アルキルエステルおよび副産物として水をもたらすことができ、トリグリセリドおよび部分グリセリドのエステル交換を触媒して脂肪酸アルキルエステルおよび副産物としてグリセロールをもたらすことができる。
【0019】
本発明のすべての実施形態および態様では、前述の担体は、疎水性脂肪族高分子をベースにした担体および疎水性芳香族高分子をベースにした担体のうちのいずれか1つでありうる。前述の疎水性高分子担体は、線状または分岐状の有機鎖から構成されてもよい。前述の担体は、マクロ網状有機高分子鎖またはコポリマー鎖を含むこともある。前述の担体は多孔質、または非多孔質の無機担体であってもよく、これらは疎水性であってもよく、または疎水性有機材料で被覆されている。前述の有機材料は、線状、分岐状、または官能基を有する疎水性有機鎖であってもよい。
【0020】
本発明のすべての実施形態および態様では、アルカリ性緩衝液が使用される場合、前述の水性アルカリ性緩衝液は、無機アルカリ塩または有機塩基の溶液でありうる。前述のアルカリ性緩衝液は、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩およびクエン酸塩、第一級、第二級および第三級のアミン、ならびにそれらの任意の混合物のいずれか1つの溶液であってもよい。特定の実施形態では、前述のアルカリ性緩衝液は、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムから選択される弱塩基の溶液であってもよい。本発明のプロセスについての一部の実施形態では、前述のアルカリ性緩衝液は、前述の脂肪酸源の予備混合の段階で、または直接的に反応媒体に加えられてもよい。
【0021】
本発明のすべての実施形態および態様では、アルカリ性緩衝液が使用される場合、エステル交換/エステル化反応媒体中の前述のアルカリ性緩衝液の含有量は、油供給原料の0.001〜5重量%、例えば1〜2重量%でありうる。
【0022】
本発明の一部の実施形態では、脂肪酸源は、まずアルカリ性緩衝液と、または水もしくは水溶液と混合されてもよく、次いでこの混合物を前述の固定化リパーゼ調製物で処理してもよく、続いて前述のアルコールを加えることで、前述の脂肪酸源が脂肪酸エステルに変わるまで適切な条件下で反応が進行することが可能になる。
【0023】
本発明のすべての実施形態および態様では、前述の脂肪酸源は、植物油、動物性脂肪、藻油、魚油、廃油およびそれらの任意の混合物のいずれか1つであってもよい。前述の脂肪酸源は、リン脂質およびステロールエステルなどの他の微量な脂肪酸誘導体の非存在下または存在下で、遊離脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリド、任意の割合でのそれらの混合物を含んでもよい。脂肪酸源は、未精製、精製、漂白、脱臭したものまたはそれらのいずれかの組み合わせであってもよい。
【0024】
本発明のすべての実施形態および態様では、反応は、10℃と100℃との間、具体的には、25℃と30℃との間の温度で行われうる。
【0025】
本発明のすべての実施形態および態様では、前述の脂肪酸源は、プレ反応調整容器中で、前述のアルコールもしくはアルコール供与体と、および水もしくは緩衝液と予備混合させて、エマルジョンを形成し、次いで前述の固定化リパーゼ調製物とともにエステル交換/エステル化反応容器に供給されてもよい。
【0026】
本発明のすべての実施形態および態様では、前述の固定化リパーゼを、バッチ方式でまたは連続方式で作動する充填層反応器で使用してもよい。
【0027】
本発明の別の態様によれば、脂肪酸アルキルエステルを形成するために、脂肪酸のアルコールとのエステル交換/エステル化のためのシステムが提供され、該システムは脂肪酸と、アルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つとを含む反応媒体を固定化リパーゼ調製物の存在下で反応させるように構成された反応容器を含み、該固定化リパーゼ調製物が疎水性多孔質の担体上に固定化された少なくとも1つのリパーゼを含み、該反応媒体が水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
該システムは、任意の所望の組み合わせまたは順列で、以下の特徴の1つまたは複数を含みうる:
A.前述の脂肪酸アルキルエステルの生成のための前述のシステムの少なくとも作動中に、反応容器は固定化リパーゼ調製物を含むことができる。
B.Aの特徴に加えてまたはその代わりに、前述の脂肪酸アルキルエステルの生成のための前述のシステムの少なくとも作動中に、反応容器は脂肪酸と、アルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つとを含むことができる。
C.AもしくはBの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、前述の脂肪酸アルキルエステルの生成のための前述のシステムの少なくとも作動中に、前述の反応媒体は混合物を含み、前述のシステムは前述の反応容器と選択的流体連通しているプレ反応容器をさらに含み、前述のプレ反応容器は前述の混合物を形成するために少なくとも脂肪酸と、アルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つとを予備混合するように、および前述の混合物を前述の反応容器に選択的に送るように構成されている。該システムは、前述のシステムの少なくとも前述の作動中に、前述のプレ反応容器と選択的流体連通し、かつ脂肪酸を前述のプレ反応容器に選択的に送るように構成された脂肪酸源と、前述のシステムの少なくとも前述の作動中に、前述のプレ反応容器と選択的流体連通し、かつアルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つを前述のプレ反応容器に選択的に送るように構成されたアルコール源とを随意にさらに含むことができる。該システムは、前述のシステムの少なくとも前述の作動中に、前述のプレ反応容器と選択的流体連通し、かつ前述の混合物に含まれるべく水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つを前述のプレ反応容器に選択的に送るように構成された緩衝液源を随意にさらに含む。
D.AからCの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該システムは、前述のシステムの少なくとも前述の作動中に、脂肪酸および/またはアルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つおよび/または水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つからの1つまたは複数を連続方式または別々のバッチでのいずれかでそれぞれ前述のプレ反応容器に選択的に送るように構成されることができる。
E.AからDの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該プレ反応容器は、前述のシステムの少なくとも前述の作動中に、前述の混合物を連続方式および/または別々のバッチで前述の反応容器に選択的に送るように構成されることができる。
F.AからEの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該システムは、少なくとも1つの脂肪酸と;アルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つと;水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つとを前述の反応容器に選択的かつ直接的に送るように構成されることができる。
G.AからFの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該反応容器は、前述の反応容器中の反応媒体を選択温度範囲内に維持するように構成された温度調節装置を含むことができる。
H.AからGの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該システムは、前述のシステムの少なくとも前述の作動中に、固定化リパーゼ調製物を前述の反応容器内に保持するように構成された保持装置をさらに随意に含むことができる。
I.AからHの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該システムは、前述の反応容器と選択的流体連通している生成物分離容器をさらに随意に含むことができ、前述のシステムが反応産物を含む反応混合物を前述の反応容器から前述の生成物分離容器に選択的に送るように構成され、および前述の生成物分離容器がそこに送られた反応混合物から脂肪酸アルカルエステルの生成物を選択的に分離するように構成されている。例えば、生成物分離容器は、遠心分離機および重力分離装置のうちの1つでありうる。
J.AからIの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該反応容器は、前述のシステムの少なくとも前述の作動中に、前述の反応混合物を前述の生成物分離容器に連続方式でおよび/または別々のバッチで選択的に送るように構成される。
K.AからIの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該システムは、前述の生成物分離容器からの脂肪酸アルキルエステルの前述の生成物を選択的に送るように構成される。例えば、該システムは、前述の生成物分離容器からの脂肪酸アルキルエステルの前述の生成物を連続方式でおよび/または別々のバッチで選択的に送るように構成される。
L.AからKの特徴に加えてまたはそれらの代わりに、該システムは、前述の生成物分離容器に送られた反応混合物からの脂肪酸アルキルエステルの前述の生成物を増加させるように構成される。この特徴を有するシステムの一構成では、該システムは、続いて前述の生成物分離容器に送られた反応混合物からの脂肪酸アルキルエステルの前述の生成物をさらに増加させるために、脂肪酸アルキルエステルの前述の生成物を選択的に別のルートで送るように構成される。この特徴を有するシステムの別の構成では、該システムは、補助反応器のモジュールに脂肪酸アルキルエステルの前述の生成物を選択的に別のルートで送るように構成され、前述の補助反応器のモジュールが補助反応容器と補助生成物分離容器とを含み、脂肪酸アルキルエステルの前述のさらに増加した生成物は、続いて前述の補助生成物分離容器を介して選択的に送られる。
【0029】
本発明を理解し、および本発明をどのようにして実際に行えうるかを調べるために、ここで添付の図面を参照して、非限定的な例だけの目的で、実施形態を説明する:
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】疎水性樹脂としてAmberlite XAD1600(Amb.XAD1600)上に、および親水性樹脂としてDuolite D568(Duo D568)上に固定化されたリパーゼ・サーモマイセスラヌギノサ(TL)、ならびに疎水性樹脂としてSepabeads SP70(SB SP70)上に、および親水性樹脂として多孔質シリカ(Sil.)上に固定化されたリパーゼ・シュードモナスエスピー(PS)のエステル交換活性を示すグラフである。略語:Conv.−変換;Cyc.−サイクル
【図2】複数のバッチ実験において同じバッチの生体触媒を用いて、0.1Mの重炭酸ナトリウムを異なるレベルで6時間反応させた後の、大豆油のバイオディーゼルおよびグリセロールへの変換を示すグラフである。生体触媒は、疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサに由来するリパーゼであった。略語:Conv.−変換;Cyc.−サイクル
【図3】複数のバッチ実験において同じバッチの生体触媒を用いて、0.1Mの重炭酸ナトリウムを異なるレベルで6時間反応させた後の、大豆油のバイオディーゼルおよびグリセロールへの転換を示すグラフである。生体触媒は、疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピーに由来するリパーゼであった。略語:Conv.−変換;Cyc.−サイクル
【図4】複数のバッチ実験において同じバッチの生体触媒を用いて、水を含まずに、および異なるレベルの水で6時間反応させた後の、大豆油のバイオディーゼルおよびグリセロールへの変換を示すグラフである。生体触媒は、疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサに由来するリパーゼであった。略語:Conv.−変換;Cyc.−サイクル;DW−蒸留水
【図5】複数のバッチ実験において同じバッチの生体触媒を用いて、異なるレベルの水で6時間反応させた後の、大豆油のバイオディーゼルおよびグリセロールへの変換を示すグラフである。生体触媒は、疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピーに由来するリパーゼであった。略語:Conv.−変換;Cyc.−サイクル;DW−蒸留水
【図6】複数のバッチ実験において同じバッチの生体触媒を用いて、0.1Mの重炭酸ナトリウムを異なるレベルで4時間エステル化/エステル交換を行った後の、FFAおよび大豆油の混合物のバイオディーゼルと、グリセロールおよび水の副産物とへの変換を示すグラフである。生体触媒は、疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピーに由来するリパーゼであった。略語:Conv.−変換;Cyc.−サイクル;DW−蒸留水
【図7】複数のバッチ実験において同じバッチの生体触媒を用いて、0.1Mの重炭酸ナトリウム2%の存在下で4時間反応させた後の、大豆油加水分解産物のバイオディーゼルおよび水へのエステル化を示すグラフである。生体触媒は、疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピーに由来するリパーゼであった。略語:Ac.Val.−酸価;Cyc.−サイクル
【図8】複数のバッチ実験において同じバッチの生体触媒を用いて、0.1Mの重炭酸ナトリウム1重量%の存在下で6時間反応させた後の、魚油のエタノールとのエステル交換を示すグラフである。生体触媒は、Amberlite XAD1600上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサおよびシュードモナスエスピーに由来するリパーゼ(それぞれTL Lip.、PS Lip.)であった。略語:Conv.−変換;Cyc.−サイクル
【図9】複数のバッチ実験において同じバッチの生体触媒を用いて、0.1Mの重炭酸ナトリウム2重量%の存在下で6時間反応させた後の、獣脂のエタノールとのエステル交換を示すグラフである。生体触媒は、Amberlite XAD1600上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサ、シュードモナスエスピー由来のリパーゼ(PS Lip.;TL Lip.)であった。略語:Conv.−変換;Cyc.−サイクル
【図10】疎水性で多孔質の樹脂上に固定化されたカンジダアンタークティカとともに、疎水性で多孔質の樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピーまたはサーモマイセスラヌギノサを用いて、7mg KOH/1gのFFA値を含む、4時間後に得られたエステル交換/エステル化の反応媒体の処置を示すグラフである。略語:Ac.Val.−酸価;Cyc.−サイクル
【図11】本発明の一態様によって脂肪酸アルキルエステルの生成のためのシステムの第1の実施形態を示す概略図である。
【図12】本発明の一態様によって脂肪酸アルキルエステルの生成のためのシステムの第2の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
酵素で触媒される工業プロセス、特に固定化リパーゼの存在下で、脂肪酸源のアルコールとのエステル交換/エステル化を行うプロセスについての改善を求めて、本発明者らは、固定化リパーゼの安定性が多数の生成サイクルにわたり維持される特定の条件を開発した。
【0032】
本発明の一実施形態では、本発明は、脂肪酸のアルキルエステル、具体的には、脂肪酸メチルエステルおよびエチルエステル(バイオディーゼル)などの脂肪酸の短鎖アルキルエステルを無溶媒のアルカリ性微水系で調製するプロセスに関する。特定の実施形態では、アルカリ性微水系は、弱アルカリ性微水系である。前述のプロセスは、脂肪酸源を供給し、前述のアルカリ性もしくは弱アルカリ性の条件下で、固定化リパーゼ調製物の存在下で、脂肪酸源を遊離アルコールまたはアルコール供与体と反応させることを含む。理論に束縛されることなく、アルカリ性緩衝液による脂肪酸源の前処理は、酵素に阻害効果を及ぼすこともある酸の中和をもたらすであろう。最高100%までの変換までの反応を完了するために必要とされるアルコールの量を段階的にまたは1つのバッチで添加してもよい。さらに、該アルコールは、短鎖アルコール、例えばメタノールまたはエタノールであってもよい。他のアルコール供与体を加水分解酵素の存在下で脂肪酸源との反応で用いてもよく、これにより前述の脂肪酸源が脂肪酸アルキルエステル、具体的には、脂肪酸メチルエステル(FAME)または脂肪酸エチルエステルに変換されるまで、適切な条件下で該反応が進行することが可能になり、ここで前述の加水分解酵素調製物が適切なマクロ網状の多孔質疎水性高分子をベースにした担体上に別々にまたは一緒に固定化された1つまたは複数のリパーゼを含む。
【0033】
さらなる実施形態では、脂肪酸源とアルコールまたはアルコール供与体との間のエステル交換/エステル化反応は、反応混合物に水を添加することで、水性微小環境で行われる。特定の実施形態では、水は、脂肪酸源の0.0001〜5重量%で添加されてもよい。ここで用いられる水とは、純水または蒸留水、および「水溶液」も意味し、水溶液とは、水道水、海水もしくはいずれの他の天然水源もしくは貯水池からの水、脱塩水、化学的にもしくは酵素的に精製または処理された水、およびいずれの他の水溶液であってもよいがこれらに限定されるものではない。反応系または水溶液のpH値は変化することがあり、例えば、約3〜11、例えば4〜10、5〜10、5〜9、6〜10、6〜9、または7〜9でありうる。
【0034】
本発明のプロセスは、形成されるグリセロールおよびいずれの過剰な水を反応混合物から連続的に除去しながら、行われることも可能である。前述の脂肪酸源に含まれる遊離脂肪酸の脂肪酸アシル基の、脂肪酸アルキル、具体的にはメチルエステルへの変換は、反応の間、種々の時点でモニターされることができる。反応媒体は、反応の間、任意の所望の時点で適切な手法より除去されてもよく、それによって反応が停止され、形成された脂肪酸メチルエステルと、随意に、形成されたグリセロールとが該反応媒体から単離される。前述の脂肪酸源に含まれる脂肪酸アシル基または遊離脂肪酸の脂肪酸メチルエステルへの変換が少なくとも70%、例えば少なくとも85%、または少なくとも90%に達したときに、該反応は明確に停止されてもよい。
【0035】
該反応系は、同時係属中の国際公開第WO2009/069116号に記述されているものと同じようでありうる。例えば、生成システは、反応器内に生体触媒を保持するが、しかし反応媒体が反応器を通って浸透することを可能する焼結ガラスまたはステンレス鋼フィルタの底部を有する撹拌タンク反応器を用いてもよい。かかる反応器の構成は、副産物、具体的にはグリセロールおよび水を考慮に入れている。副産物は、固定化酵素から、シンク、反応器の底部へと自己脱離し、フィルタを通って染み出る。形成され、脱離したグリセロールおよび過剰な水分も反応媒体から連続的に除去される結果、合成に向かって反応の変化がもたらされ、それによって98%を超える変換が達成される。この反応器で用いられる生体触媒は、本明細書に記述するように、それらの位置特異性ならびにそれらの起源を考慮すると、単一種または複数種のリパーゼから構成されてもよい。代替の、底部フィルタを有する2つの連続した撹拌タンク反応器を用いてもよい。沈殿タンクまたは遠心分離機をこれら2つの反応器の間に用いてもよい。第1の反応器は、単一種または複数種のリパーゼから構成される固定化生体触媒を含んでもよい。両反応器の間の沈殿タンクまたは遠心分離機の役割は、形成されるグリセロールおよび過剰な水を反応媒体から除去することであり、それによって原料の対応する脂肪酸アルキルエステルへの変換が増加し、第2の反応器において適切な反応時間で98%を超えることになる。一部の特定の反応系およびその方法は、後述する。
【0036】
用語「反応混合物」、「反応系」および「反応媒体」とは、本明細書では同意語として使われることもある。
【0037】
本発明の実施形態におけるように、アルカリ性緩衝液または水溶液の存在下で、疎水性樹脂上に固定化されたリパーゼを用いることで、安定性の高い酵素を確保し、かつ水および形成されるグリセロール副産物などの親水性物質が生体触媒上に蓄積されないようにする。本発明のプロセスの特定の実施形態では、0.001〜5%のアルカリ性または弱アルカリ性緩衝液、例えば、0.01〜5%、0.05〜5%、0.1〜5%、0.5〜5%、例えば0.001%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、0.75%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%。4.5%または5%などのアルカリ性または弱アルカリ性緩衝液を用いる。本発明のプロセスの特定の実施形態では、水を用いる場合、該水は0.0001〜5%の水、例えば0.001〜5%、0.01〜5%、0.05〜5%、0.1〜5%、0.5〜5%、例えば0.0001%、0.001%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、0.75%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%などのレベルで用いる。上述のように、アルカリ性溶液を用いる場合、該溶液は、脂肪酸源中に典型的に存在するまたは副反応物のために生成される酸を中和することが可能である。これらの副産物を持続的かつ積極的に除去することで、プロセスの効率さえも上昇しうる。単離したグリセロールを、工業的に使用してもよい。
【0038】
本発明のプロセスで用いられる脂肪酸源は、大豆油、カノーラ油、藻類油、菜種油、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油、ひまわり油、落花生油、綿実油、ジャトロファ油、粗トウモロコシ油、魚油、動物性油脂、廃食油、ブラウングリース、非食油植物源に由来するオイルトリグリセリド、これらの油またはそれらの少なくとも2つの任意の混合物(任意の所望の割合で)に由来する部分グリセリドおよび遊離脂肪酸のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0039】
本発明のすべてのプロセスでは、反応によって形成される脂肪酸短鎖アルキルエステルは、具体的には、脂肪酸メチル、エチル、イソプロピルまたはブチルエステル(バイオディーゼル)である。他の中鎖脂肪アルコール(C−C10)および長鎖脂肪アルコール(C12−C22)も本発明の生成プロセスで用いてもよい。これらの長鎖アルコールは、具体的にワックスの製造、例えば化粧品に適していることがある。
【0040】
リパーゼは、サーモマイセスラヌギノサ(Thermomyces lanuginosa)、リゾームコールミーハイ(Rhizomucor miehei)、ムコールミーハイ(Mucor miehie)、シュードモナスエスピー(Pseudomonas sp.)、リゾプスエスピー(Rhizopus sp.)、ムコールジャバニクス(Mucor javanicus)、ペニシリウムロックフォルティ(Panicillium roqueforti)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、クロモバクテリウムビスコサム(Chromobacterium viscosum)、アクロモバクターエスピー(Acromobacter sp.)、ブルクホルデリアエスピー(Burkholderia sp.)、カンジダアンタークティカA(Candida antarctica A)、カンジダアンタークティカB(Candida antarctica B)、カンジダルゴサ(Candida rugosa)、アルカリジェネスエスピー(Alcaligenes sp.)、ペニシリウムカメンベルティ(Penicillium camembertii)、パパイヤ種子およびパンクレアチンに由来するリパーゼであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0041】
複数のリパーゼは、適切な担体、具体的には疎水性脂肪族高分子をベースした担体または疎水性芳香族高分子の担体上に一緒に固定化されることもある。前述のリパーゼの各々は、適切な担体上に固定化されてもよく、前述のリパーゼがその上に固定化される担体は、同一であるか、または異なっている。使用されるリパーゼは、それらの基質に対して位置特異的であるか、またはランダムであってもよい。複数のリパーゼが用いられる場合、リパーゼは、同一または異なる疎水性担体上に固定化されてもよい。同一の担体上に共固定化されるリパーゼは、それらの基質に対して同一もしくは異なる基質選択性または位置特異性を示すことができる。
【0042】
複数のリパーゼは位置特異的(または部位特異的)であってもよく、各々は単独で、または同一もしくは異なる部位特異性のリパーゼとの組み合わせで用いられてもよい。snー1位、sn−2位またはsn−3位と呼ぶとき、これらは種々のグリセリドのグリセロール骨格の位置である。このように、本発明のプロセスで用いられるリパーゼは、ランダムリパーゼのそれよりも高いsn−2位に対する選択性(すなわち、アルコールもしくはアルコール供与体と、sn−2位の脂肪酸アシル基との間の反応を触媒することを好む)を有することもあるが、ランダムリパーゼは、グリセロール骨格上の3つのすべての位置で脂肪酸アシル基に対して同じエステル交換活性を示す。一部のリパーゼは、sn−2位で、特に、基質、生成物などによって決定される特定の条件下で、位置活性を独自に示す。本発明のプロセスで用いられる他のリパーゼは、sn−1、3位特異的である。それらのリパーゼは単独で、またはランダムリパーゼ、具体的には部分グリセリドに親和性を有するリパーゼとともに、およびsn−2位に対して高親和性を有する第3のリパーゼと随意に用いられてもよい。
【0043】
担体は、具体的には、多孔質およびマクロ網状疎水性担体であり、有機または無機担体であってもよい。担体の例としては、これらに限定されないが疎水化シリカまたは、およびアルミナをベースした担体などの多孔質無機担体、ならびにこれらに限定されないが高分子担体または高分子をベースにした担体などの疎水性有機担体がある。担体は、エポキシ基もしくは、およびアルデヒド基から選択される活性官能基、またはイオン基を随意に含んでもよい。
【0044】
本発明のプロセスで用いられる不溶性担体は、具体的には、Amberlite(登録商標)XAD1600およびSepabeads(登録商標)SP70(両方とも、ジビニルベンゼンから、またはジビニルベンゼンとポリスチレンとの混合物から調製された多孔質のミクロ網状樹脂で構成されている)、Amberlite(登録商標)XAD 7HP(ミクロ網状脂肪族アクリル高分子で構成されている)などの多孔質で網状の疎水性脂肪族高分子もしくは芳香族高分子をベースにした担体、および多孔質ポリプロピレン(Accurel(登録商標))などの多孔質脂肪族高分子である。
【0045】
担体は、ジビニルベンゼン、またはジビニルベンゼンとスチレンとの混合物で構成された網状疎水性高分子、および脂肪族アクリル高分子、またはポリプロピレンなどのポリアルケンで構成された網状疎水性脂肪族高分子であってもよい。特定の担体は、孔径が25〜1000Åの範囲内、より具体的には80〜200Åの範囲内の多孔質母材である。また、担体は、粉末状もしくは顆粒状の多孔質疎水性シリカまたは他の無機酸化物であってもよい。また、担体は、粉末状もしくは顆粒状の多孔質疎水化シリカまたは他の無機酸化物であってもよい。特定の実施形態では、担体樹脂の表面積は、100m/gよりも高い。
【0046】
脂肪酸源とアルコールとの間のエステル交換/エステル化を触媒したリパーゼに補充されることになるアルカリ性もしくは弱アルカリ性の水溶液の量は、通常、反応媒体の5重量%未満である。このアルカリ性溶液は、例えば、アルカリ性の無機塩基もしくは塩から、または有機塩基から調製される。無機塩基および塩類は、例えば、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩およびクエン酸塩である。有機塩基は、例えば、第一級、第二級または第三級のアミンであってもよい。これらのアルカリ性薬剤の混合物も、考えられる。本発明によるプロセスでは、固定化酵素の微環境のpHは、アルカリ度または弱アルカリ度で維持される。図4および5に示すように、蒸留水を反応系に添加すると、疎水性担体(樹脂)上に固定化されたリパーゼの性能が向上するが、用いる塩基の種類に応じてpH値が異なる種々のアルカリ性緩衝液を添加すると、例えば図2および3に示すように、疎水性担体(樹脂)上に固定化され、さらに安定したリパーゼがもたらされた。炭酸緩衝液および重炭酸緩衝液は、疎水性担体上に固定化されたリパーゼの安定性を増加させる際に効果的な弱塩基の例である。他の適切な塩基を本明細書に記述する。通常、緩衝液を構成する補充されたアルカリ性試薬または弱アルカリ性試薬のpKaは、脂肪酸源を含む酸類のpKaと等しいか、それよりも高い。本明細書で用いた弱アルカリ性溶液は、通常、7〜約11、例えば7〜8.5、7〜9、7〜9.5、7〜10または7〜11のpH値を有する溶液である。通常、用いられるアルカリ性または弱アルカリ性水溶液の量は、反応で用いられる油の量に基づいて重量パーセント(重量%)で表される。
【0047】
多孔質疎水性の高分子をベースにした担体(樹脂)上に固定化されたリパーゼをアルカリ性溶液または弱アルカリ性溶液の存在下で、例えば、0.01〜5重量%、0.05〜5重量%、0.05〜4重量%、1〜5重量%、または1〜4重量%の量で用いると、脂肪酸源とアルコールとの間のエステル交換/エステル化反応において生体触媒の安定した活性がもたらされる。これは、以下の実施例で示す。
【0048】
脂肪酸源は、トリグリセリド、部分グリセリド、遊離脂肪酸、リン脂質、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミド、または前述の少なくとも2つの源で構成される混合物のうちの少なくとも1つである。
【0049】
脂肪酸アルキルエステルの生成は、エステル交換またはエステル化を同時にまたは順次行うことによって実行される。かかる反応系下で、生体触媒活性は、複数回の使用で何ら著しい活性消失もなく維持され、かつ生体触媒上にグリセロールおよび水の副産物または他の親水性化合物も蓄積されない。
【0050】
本発明は。多数の生成サイクルにわたり高い活性および安定性を保持する特定の固定化界面酵素を使用するプロセスを提供する。具体的には、エステル交換/エステル化反応において、リパーゼおよびホスホリパーゼ調製物が使用される。これらの反応物は、食料品、化粧品およびバイオ燃料(「バイオディーゼル」)の生成で使用されることが可能である。特に興味深いのは、これらの酵素が、「バイオディーゼル」としての用途用の脂肪酸短鎖アルキルエステルの合成のために使用されることが可能なことである。
【0051】
本発明は、メタノール、エタノールおよびグリセロールなどの短鎖アルコール、ならびに酢酸などの短鎖脂肪酸に対する耐用が高い、安定の固定化界面酵素を用いた。また、これらの酵素調製物を使用すると、親水性物質、特にグリセロールおよび水が固定化生体触媒上に蓄積されるのを防止する。
【0052】
本発明の一実施形態では、適切な反応時間、典型的には5時間未満で、ほぼ完全な変換で所望の産物、すなわち脂肪酸アルキルエステルを得るために、疎水性担体(樹脂)上に固定化された1つまたは複数のリパーゼをアルカリ性もしくは弱アルカリ性の水溶液の存在下で用いることによる、脂肪酸源とアルコールとの同時または順次のエステル交換/エステル化反応を行うプロセスが提供される。弱アルカリ性溶液、例えば、0.001M、0.1M、0.5Mまたは1Mの重炭酸ナトリウムは、反応で用いられる油の量の約5重量%未満、または約4重量%の量で、反応系中に存在してもよい。
【0053】
以下の実施例で示すように、リパーゼの固定化のための疎水性樹脂担体をアルカリ性または弱アルカリ性の緩衝液の使用と組み合わせて、例えば、エステル交換/エステル化の反応媒体中0.001〜5重量%の範囲で用いることで、リパーゼの作用寿命をのばすこともできる。以下の実施例でさらに示すように、pH値に関係なく、反応混合物の含水量は増加させてもよい。このように別の実施形態では、例えば、脂肪酸源の0.0001〜5重量%で、または上で規定した特定の部分範囲のいずれかで水を添加することによって反応系の含水量を増加させることで、生体触媒の安定性が増加する。脂肪酸源の0.0001〜5重量%の範囲のアルカリ性溶液(図2および3)を、または脂肪酸源の0.001〜4重量%で水(図4および5)を添加することで、多数の反応サイクルにわたり酵素の活性および安定性が維持される結果となることをこの結果が示している。
【0054】
本発明のプロセスで使用されるアルコールまたはアルコール供与体は、短鎖アルキルアルコール、具体的にはC−Cアルキルアルコール、より具体的にはC−Cアルキルアルコールであってもよく、特にメタノールもしくはエタノールもしくはアルコール供与体は、モノアルキルエステル、または炭酸ジメチルなどの炭酸ジアルキルであってもよい。例えば、炭酸ジアルキルなどのアルコール供与体は、反応系のアルカリ度または弱アルカリ度の源として役立つことも可能である。
【0055】
本発明の別の態様によると、脂肪酸アルキルエステルの生成のためのシステムが提供される。図11を参照して、概して参照番号100と称される、かかるシステムの第1の実施形態は、反応容器120、プレ反応調整容器140、および生成物分離容器160を含む。
【0056】
プレ反応調整容器140は、供給原料と緩衝液(および/または水)を受け取り、それらから適切なエマルジョンを形成し、次いで調製したエマルジョンPE(本明細書では乳化原料ともよぶ)を反応容器120に送るように構成される。特に、かかる供給原料は、脂肪酸源182からの脂肪酸FA(例えば廃食油)と、アルコール源184からのアルコールAL(例えばメタノール)と、緩衝液/水源186からの緩衝液(および/または水)BUとを含んでもよく、プレ反応調整容器140と、それぞれ容器注入口172、174、176および適切な弁(図示せず)を介して流体連通しているそれぞれ適切な供給ライン152、154、156を介して供給される。
【0057】
プレ反応調整容器140は、内容積V1を規定し、容器注入口172、174、176を介してそこに供給される供給原料および緩衝液/水を含む反応混合物が、電動源(図示せず)によって駆動される適切な撹拌装置142を用いて一緒に混合され、エマルジョンPEが形成される。プレ反応調整容器140は、外部ジャケット149を含み、それを通って適切な作動流体が循環して、内容積V1を所望の定常温度に維持することが可能となる。例えば、作動流体は、油もしくは水であってもよく、別の容器(図示せず)で加熱または冷却されて、適切な注入口を介して外部ジャケット149にポンプで通し、ポート(図示せず)から出る。この実施形態の代替変形では、プレ反応調整容器140は、外部ジャケット149の代わりにまたはそれに追加して、加熱エレメントおよび/または冷却エレメントの系、例えば電動加熱エレメントおよび/または冷却エレメントを含んでもよい。
【0058】
反応容器120は、プレ反応調整容器140から調製されたエマルジョンPEを受け取り、その中の供給原料を適切な生体触媒BCの存在下で反応させて、反応産物RPを生成し、次いで反応産物RPを反応混合物から生成物分離容器160に送るように構成される。送出ライン148は、プレ反応調整容器140と、反応容器120との間に適切な弁(図示せず)を介して選択的流体連通をもたらし、かつプレ反応調整容器140で調製された調製エマルジョンPEが所望通り反応容器120に送られるのを可能にする。
【0059】
反応容器120は、内容積V2を規定し、その中に反応容器注入口122を介して供給された反応混合物中の調製されたエマルジョンを反応させ、次いで反応混合物を適切な電動源(図示せず)によって駆動される撹拌装置124で撹拌して、反応産物RPを形成する。生体触媒BCは適切な酵素を含んでもよく、かつ固定化酵素ビーズの形状で提供される。該ビーズは無効になるまで、または十分な効果がなくなり、除去されて新しい生体触媒BCと交換されることになるまで反応容器120に残存する。例えば、生体触媒BCは、疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサに由来するリパーゼを含んでもよい。
【0060】
反応容器120は、外部ジャケット129の形状で温度調節装置を含み、それを通って適切な作動流体が循環して、内容積V2を所望の定常温度で維持することが可能になる。例えば、作動液体は、油もしくは水であってもよく、別の容器(図示せず)で加熱または冷却されて、適切な注入口を介して外部ジャケット129にポンプで通し、ポート123から出る。この実施形態の代替変形では、温度調節装置は、外部ジャケット129の代わりにまたはそれに追加して、加熱エレメントおよび/または冷却エレメント、例えば電動加熱エレメントおよび/または冷却エレメントを含む。
【0061】
反応容器120の下方部分は送出口127を含み、および反応容器120から除去される前に、反応混合物、特に反応産物RPを濾過し、次いで生体触媒BCを反応産物RPとともに除去されることから防ぐように構成された適切な保持装置が、フィルタ125の形状で送出口127の上流に具備される。
【0062】
生成物分離容器160は、反応産物RPから所望の生成物P(脂肪酸アルキルエステル)を取り出し、過剰な水およびグリセロールGを含む副産物を分離するように構成される。送出ライン147は、生成物分離容器160と、反応容器120との間に適切な弁(図示せず)を介して選択的流体連通をもたらし、かつ反応産物RPが所望通り反応容器120から生成物分離容器160に送られるのを可能にする。この実施形態では、生成物分離容器160は、前述の分離を行うための遠心分離機または重力分離装置を含み、かつ生成物Pをアウトプットするための第1の送出口162と、過剰な水およびグリセロールGを収集するための第2の送出口164とを含む。生成物Pはタップ163を介して収集されてもよい。
【0063】
このように、本システムは、連続生成方式で操作されることが可能であり、該方式では調製されたエマルジョンPEは、反応容器120に送られ、次いで所望の生成物Pはタップ163を介して連続方式で収集される。エマルジョンPEは調製されて、連続方式で反応容器120に送られ、反応産物RPが送出口127から取り出されるのと同じ速度でその中の反応物の量を補給することができる。あるいは、エマルジョンPEは調製されて、反応容器120にバッチで送られ、送出口127を介して反応産物RPが連続的に取り出された後に、反応容器120内の反応物のレベルが特定の最低レベルまで低下したときはいつでも不連続の間隔で反応混合物中の反応物の量を補給することができるもちろん、システム100が連続的よりはむしろバッチで所望の生成物Pをもたらすように操作することも可能である。
【0064】
あるいは、システム100は、歩留り改善方式で操作されることも可能であり、生成物Pは、タップ163を介して即時収集される代わりに、ライン165、容器注入口121および弁166を含む、随意に別ルートに切り替えるシステムを介して反応容器120に別のルートで送られ、弁166が選択的に操作されて、タップ163から生成物Pの方向を転換させることも可能である。別のルートから反応容器120に送られる場合、歩留りの高い生成物Pを生成するために、生成物Pは、アルコール源184から、別のアルコール源(図示せず)から、またはプレ反応調整容器140を介してアルコ−ル源184から別のライン(図示せず)を介して供給されるアルコールALと反応容器内でさらに反応させてもよい。生成物Pは、生成物分離容器160を用いて、副産物から再度分離されることも可能である。アルコールが反応調整容器140を介して供給される場合、反応調整容器は、まず調製されたエマルジョンPEが空の状態であり、次いで適切な弁で脂肪酸Fを止めて、随意に緩衝液/水がそれぞれの源182および186から供給される。適切なポンプまたは重力送り装置および制御可能な弁は、それぞれのライン152、154、156、148、147、165を介してそれぞれの原料を選択的に運ぶために具備されることも可能であり、および適切な制御装置(図示せず)が該システムの操作をモニターして制御する。
【0065】
第1の実施形態の少なくとも一部の代替変形では、プレ反応調整容器140は、反応容器120との一体型であってもよい。例えば、それぞれの内容積V1およびV2は、ライン148に対応する開口装置を有する壁によって分離されてもよい。あるいは、それぞれの内容積V1およびV2は、隣接していてもよいが、内容積V1は、生体触媒BCから十分に間隔を空けることで、生体触媒BCに達する前にエマルジョンPEが形成されるのに十分な時間をもたらすことが可能である。
【0066】
第1の実施形態の代替変形では、脂肪酸FA、アルコールAL、および緩衝液/水BUのうちの1、2またはすべては、プレ反応調整容器140を迂回して、反応容器120に直接供給されてもよい。例えば、脂肪酸源182、アルコール源184、および緩衝液/水源186のうちの1または複数は、プレ反応調整容器140を迂回して、適切な供給ライン(図示せず)を介して反応容器120と直接、選択的流体連結されてもよい。
【0067】
第1の実施形態、またはその代替変形によって、システム100のすべての構成部品は、温度、圧力、pHなどを含むそれぞれの条件で各構成部品がそれぞれの機能を果たすことを可能にするためなど、当技術分野で知られている適切な形状であり、かつ適切な原料から作られていると理解される。
【0068】
図12を参照して、参照番号200と称される該システムの第2の実施形態は、図11で同様の番号が付いたすべての部品を含み、必要な変更を加えて一部の相違とともに、その代替変形を含む第1の実施形態のエレメントおよび特徴のすべてを含む。例えば、システム200も以下を含む:第1の実施形態で開示され、必要な変更を加えた、反応容器120、プレ反応調整容器140、生成物分離容器160、脂肪酸源182、アルコール源184、緩衝液/水源186、供給ライン152、154、156、容器注入口172、174、176、撹拌装置142、外部ジャケット149、送出ライン148、容器注入口122、撹拌装置124、生体触媒BC外部ジャケット129、注入および排出ポート123、送出口127、フィルタ125、送出ライン147、第1の送出口162、第2の送出口164。
【0069】
しかしながら、第2の実施形態では、第1の実施形態のライン165、タップ163および弁166は除外されており、代わりに補助反応モジュール300が、生成物分離容器160の第1の送出口162に作動可能なように接続されている。
【0070】
補助反応モジュール300は、補助反応容器220および補助生成物分離容器260を含み、この実施形態では、必要な変更を加えた反応容器120および生成物分離容器160にそれぞれ実質的に類似している。作動中、生成物分離容器160からの所望の生成物Pは、ライン266、弁267および容器注入口221を介して補助反応容器220に送られる。補助反応容器220に送られると、生成物Pはその中で、アルコール源184からまたは別のアルコール源(図示せず)からの別個のライン(図示せず)を介して供給されるアルコールALとさらに反応して、さらに反応した生成物FRPを生成する。ライン249は、さらに反応した生成物FRPが補助生成物分離容器260に送られるのを可能し、次いで補助生成物分離容器は、より歩留りの高い生成物P’を副産物から分離するように作動する。
【0071】
システム200は、必要な変更を加えて、システム100と同様のプロセスで操作されうる。
【0072】
開示されかつ記述されるように、本発明は、本明細書に開示される特定の実施例、プロセスのステップ、および原料に限定されるものではなく、かかるプロセスのステップおよび原料は、いくらか変わりうると理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲とその均等物によってのみ限定されることから、本明細書で用いた専門用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ用いられ、かつ限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0073】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用した単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明確に指示しない限り、複数の参照対象を含むことに留意すべきである。
【0074】
文脈上異なる解釈を要する場合を除き、本明細書および以下に続く特許請求の範囲全体を通して、語「含む(comprise)」、および「含む(comprises)」および「含むこと」などの変形は、記述した整数もしくはステップまたは複数の整数もしくはステップの群を含むが、いかなる他の整数もしくはステップまたは複数の整数もしくはステップの群を除外するものではないことを意味すると理解されよう。
【0075】
以下の実施例は、本発明の態様を実施する際に本発明者らによって用いられた技法の代表例である。これらの技法が本発明の実行のための好適な実施形態の好例であり、本開示を踏まえて、当業者は多数の修正が本発明の意図する範囲から逸脱することなく行われうることを認識するであろう。
(実施例)
(概要)
【0076】
すべての実験を、ガラスフィルタが中心に位置する底部を有する30mLの容量のガラス管または150〜250μmの多孔性の焼結ガラスフィルタの底部を有する500mLの容量の機械撹拌反応器のいずれかで実行した。典型的な反応媒体は、脂肪酸源、アルコール、通常は、遊離またはグリセロール骨格上に結合しているかにかかわらず脂肪酸に関して1:1のモルベース(遊離脂肪酸およびモノグリセリドの場合は1:1、ジグリセリドの場合は1:2、およびトリグイセリドの場合は1:3とアルコールが多め)でのメタノールまたはエタノールを含んでいた。脂肪酸源を異なる量のアルカリ性緩衝液(特定の実施形態では重炭酸ナトリウム)と予備混合した。疎水性樹脂上に固定化されたリパーゼを添加する(10〜15重量%)ことで反応を開始し、反応媒体を30℃で機械的に振盪させるかまたは撹拌させた。別段示さない限り、アルコール量は、各1時間空けて3段階で同量を添加した。反応変換の後に、異なる時間間隔で反応媒体から試料を採取して、脂肪酸成分を分析した。バイオディーゼルへの変換を、以下のように算出した:100*脂肪酸アルキルエステルのピーク面積/すべてのピーク面積の合計
【0077】
リパーゼ固定化:特定の微生物に由来するリパーゼを特定のpH値(例えば7.5)の0.1Mの緩衝液に可溶化する標準手順に従ってリパーゼを固定化した。有機または無機高分子樹脂を該リパーゼ溶液に導入した。混合物を室温で8時間振盪した。樹脂上でのタンパク質酵素沈殿を増加させるために、冷アセトンを随意に混合物に添加した。該混合物を濾過して、酵素ビーズを乾燥させて含水量を5%未満まで減少させた。
【0078】
疎水性高分子樹脂をベースにしたポリスチレン・ジビニルベンゼン、パラフィンまたはそれらの任意の組み合わせを含む種々の樹脂を用いて、樹脂の疎水性特徴を得た。Amberlite(登録商標)XAD1600(Rohm&Hass,USA)およびSepabeads(登録商標)SP70(Resindion,Italy)を含む典型的な疎水性樹脂を用いた。Duolite(登録商標)D568(Rohm&Hass)および多孔質シリカゲルを含む典型的な親水性樹脂を用いた。リパーゼは樹脂上に別々に固定化してもよく、または異なるリパーゼを同一の樹脂上に共固定化する。
(実施例1)
【0079】
疎水性樹脂としてAmberlite(登録商標)XAD1600上に、および親水性樹脂としてDuolite(登録商標)D568上に固定化したサーモマイセスラヌギノサに由来するリパーゼ、ならびに疎水性樹脂としてSepabeads(登録商標)SP70上に、および親水性樹脂として多孔質シリカ上に固定化したシュードモナスエスピーに由来するリパーゼのエステル交換活性。
反応条件:0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を1重量%含む精製、漂白した大豆油(20g)。メタノール(2.5mL)を等量の3バッチで、各々1時間間隔で段階的に添加した。10重量%リパーゼ調製物を含む反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図1に示す。
【0080】
図1に示した結果は、異なる樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサおよびシュードモナスエスピー由来の両リパーゼが、1重量%の重炭酸ナトリウム溶液の存在下で、同じバッチの酵素を用いた最初の5サイクルの間、高いエステル交換活性を示したことを表している。5回目のバッチの後、同じバッチの酵素を用いると、親水性樹脂、すなわちDuolite(登録商標)D568および多孔質シリカ上に固定化された両リパーゼのビーズの周りにゲル様沈着物が形成されたために、システムからの反応媒体の濾過は困難になったことが観察された。親水性樹脂上に固定化された両リパーゼのエステル交換活性は、さらなる連続的なバッチで急激に減少し、次いで両リパーゼは、10回目のサイクルの後、不活性になった。対照的に、疎水性樹脂、Sepabeads(登録商標)SP70上に固定化されたシュードモナスエスピー由来のリパーゼは70サイクル後もその初期活性の80%以上を保持したが、一方疎水性樹脂Amerlite(登録商標)XAD1600上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサ由来のリパーゼは、70を超えるサイクル後、その初期活性の20%以上を保持した。
(実施例2)
【0081】
A.複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒を用いて6時間反応を行った後の大豆油のバイオ燃料およびグリセロールへの変換。
反応条件:0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を異なる濃度で含有する精製、漂白した大豆油(20g)。メタノール(2.5mL)を等量の3バッチで、各々1時間間隔で段階的に添加した。疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサ由来のリパーゼを用いた(10重量%)。反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図2に示す。
【0082】
B.複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒を用いて6時間反応を行った後の大豆油のバイオ燃料およびグリセロールへの変換。
反応条件:0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を異なる濃度で含有する精製、漂白した大豆油(20g)。メタノール(2.5mL)を等量の3バッチで、各々1時間間隔で段階的に添加した。疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピー由来のリパーゼを用いた(10重量%)。反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図3に示す。
【0083】
図2および3は、反応媒体中の炭酸ナトリウムの量が疎水性樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサおよびシュードモナスエスピー由来のリパーゼの作用寿命に主要な役割を有することを示している。アルカリ性溶液の非存在下で両固定化リパーゼは、数サイクル後にそれらの活性を急激に消失するが、一方、同固定化リパーゼは、反応系におけるベースとして重炭酸ナトリウム溶液の存在下で複数回使用にわたりそれらのエステル交換活性を維持することが図2および3から理解される。両固定化酵素の結果は、0〜4重量%の範囲で反応媒体中の重炭酸ナトリウム溶液の量が増加すると、同じバッチの固定化酵素の複数回使用での酵素活性の消失が減少する結果になることを示している。
(実施例3)
【0084】
A.複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒を用いて6時間反応を行った後の大豆油のバイオディーゼルおよびグリセロールへの変換。
反応条件:蒸留水を異なる濃度で含有する精製、漂白した大豆油(20g)。メタノール(2.5mL)を等量の3バッチで、各々1時間間隔で段階的に添加した。疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサ由来のリパーゼを用いた(10重量%)。反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図4に示す。
【0085】
B.複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒を用いて6時間反応を行った後の大豆油のバイオディーゼルおよびグリセロールへの変換。
反応条件:蒸留水を異なる濃度で含有する精製、漂白した大豆油(20g)。メタノール(2.5mL)を等量の3バッチで、各々1時間間隔で段階的に添加した。疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピー由来のリパーゼを用いた(10重量%)。反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図5に示す。
【0086】
図4および5は、複数の実験において疎水性樹脂上に固定化された同じバッチのリパーゼ(サーモマイセスラヌギノサおよびシュードモナスエスピー由来)を用いるエステル交換活性も、反応系での水の量によって影響されることを示す。連続サイクルで用いる場合、何もない(ゼロ)から4重量%まで水の量を増加させると、生体触媒の残留するエステル交換活性をより高く維持するという結果になったことがわかる。図2〜5に示した結果は、連続サイクルで用いる場合、エステル交換反応物中の重炭酸ナトリウム溶液などの弱塩基は、疎水性樹脂上に固定化されたリパーゼの活性を維持するために有利に働くことを明らかに示している。
(実施例4)
【0087】
複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒を用いて4時間のエステル化/エステル交換を行った後の、遊離脂肪酸(FFA)と大豆油との混合物のバイオディーゼルおよびグリセロールへの変換。
反応条件:0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を異なる量で含有する、遊離脂肪酸大豆の加水分解物(50重量%)と、初期のFFA値72mg KOH/1gの大豆油(50重量%)との混合物。メタノール(4.5mL)を等量の3バッチで、各々1時間間隔で段階的に添加した。疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピー由来のリパーゼを用いた(20重量%)。反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図6に示す。
【0088】
図6は、異なる量の塩基性溶液が、大豆油加水分解物と大豆油トリグリセリドとを等量比率で含む反応混合物中に存在するFFAの同時エステル化反応に主要な影響を及ぼすことを示す。エステル化/エステル交換反応系にアルカリ性溶液が何も添加されないと、疎水性樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピー由来のリパーゼはそのエステル化活性を消失するが、一方、0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を1重量%および2重量%、該反応系に別々に添加すると、同じ生体触媒は連続サイクルにおいてその活性を維持したことがわかる。図6に示した結果は、0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液の1重量%および2重量%の存在下で、疎水性樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピー由来のリパーゼを用いると、FFA含有量が、72mg KOH/1gの初期値からそれぞれ平均8mg KOH/1gおよび6mg KOH/1gまで減少し、かつ22回の連続サイクルでこの活性を維持したことを示している。
(実施例5)
【0089】
複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒を用いて4時間の反応を行った後の、大豆油加水分解物のバイオディーゼルおよび水への変換。
反応条件:0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を1重量%含有する、FFA値150mg KOH/1gの遊離脂肪酸大豆の加水分解物(20g)。メタノール(2mL)を1バッチで反応物に添加した。疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピー由来のリパーゼを用いた(10重量%)。反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図7に示す。
【0090】
図7は、疎水性樹脂上に固定化されたシュードモナスエスピー由来のリパーゼが遊離脂肪酸のエステル化を触媒して、脂肪酸メチルエステルと水の副産物とを形成することもできることを示している。リパーゼ調製物は、0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を1%含有する媒体中で、同じバッチの生体触媒を用いて25を超えるサイクルにわたりいずれの著しい活性消失も観察されることなく、そのエステル化/エステル交換活性を維持したことを結果が示している。
(実施例6)
【0091】
複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒を用いて6時間の反応を行った後の、魚油のエタノールとのエステル交換。
反応条件:0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を1%含有する精製魚油(20g)。エタノール(2.5mL)を等量の3バッチで、各々1時間間隔で段階的に添加した。Amberlite(登録商標)XAD1600上に固定化したサーモマイセスラヌギノサおよびシュードモナスエスピーに由来するリパーゼを別々に用いた(10重量%)。反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図8に示す。
【0092】
図8は、疎水性樹脂上に固定化されたサーモマイミセスラヌギノサおよびシュードモナススピー由来の両リパーゼが、魚油トリグリセリドのエタノールとのエステル交換を触媒して、脂肪酸エチルエステルとグリセロール副産物とを形成することもできることを示している。両生体触媒調製物は、1%重炭酸ナトリウム溶液の存在下で、同じバッチの生体触媒を用いて20を超えるサイクルにわたり著しい活性消失もなく、それらのエステル交換活性を維持したことを結果が示している。
(実施例7)
【0093】
複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒を用いて6時間の反応を行った後の、獣脂のエタノールとのエステル交換。
反応条件:獣脂(4g)の脂肪酸エチルエステルおよび1Mの炭酸カリウム溶液を1%含有する獣脂(16g)。エタノール(2.5mL)を等量の3バッチで、各々1時間間隔で段階的に添加した。Amberlite(登録商標)XAD1600上に固定化したサーモマイセスラヌギノサおよびシュードモナスエスピーに由来するリパーゼを別々にまたは等量比の組み合わせで用いた(10重量%)。反応媒体を37℃、300rpmで振盪した。結果を図9に示す。
【0094】
図9は、疎水性樹脂上に別々にまたは組み合わせて固定化されたサーモマイセスラヌギノサおよびシュードモナススピー由来の両リパーゼが、獣脂トリグリセリドのエタノールとのエステル交換を触媒して、脂肪酸エチルエステルとグリセロール副産物とを形成することもできることを示している。反応媒体の供給原料は、該反応媒体の融点を下げるために、獣脂(80%)と、獣脂に由来する脂肪酸エチルエステルとを含んでいた。図9に示した結果は、1Mの炭酸カリウムなどの弱アルカリ性溶液の存在下で、同じバッチの生体触媒を100連続サイクルで用いたとき、すべての生体触媒がそれらの初期活性の80%以上を保持したことを示している。
(実施例8)
【0095】
疎水性多孔質の樹脂上に固定化されたシュードモナススピー由来のリパーゼおよびサーモマイセスラヌギノサ由来のリパーゼを用いて4時間後に得た、7mg KOH/1gのFFA値を含有するエステル交換/エステル化反応媒体の、複数バッチでの実験において、同じバッチの生体触媒(10重量%)を用いる、疎水性多孔質の樹脂上に固定化されたカンジダアンタークティカB由来のリパーゼおよびメタノール(FFAとメタノールとのモルベースで、それぞれ1:10の比)での処理。反応媒体を30℃、300rpmで振盪した。結果を図10に示す。
【0096】
図10は、上述したサーモマイセスラヌギノサ由来のリパーゼまたはシュードモナススピー由来のリパーゼのいずれかでの処理の後に得たエステル交換反応媒体が、典型的には3〜7mg KOH/1gのFFA値を含有し、親水性または疎水性のいずれかの担体上に固定化されたカンジダアンタークティカB由来のリパーゼで処理されることができ、その結果FFA値が2mg KOH/1g未満まで低下することを示している。固定化されたリパーゼは、100サイクルを超えてその活性を維持することができる。
(実施例9)
【0097】
バイオディーゼル、水およびグリセロールを形成するために、図11に図示したシステムの第1の実施形態を用いることによる、10%FFAを含有する廃食油のメタノールでのエステル交換/エステル化。
反応条件:0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液を2%含有する廃食油(1100g)およびメタノール(140g)をまず、プレ反応調整容器140で予備混合して、エマルジョンを形成し、次いでこれを約2リットルの内容積V2を有する反応容器120に導入した。反応容器120中で反応混合物を、疎水性で多孔質のポリスチレン・ジビニルベンゼンをベースにした樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサに由来するリパーゼ(油の30重量%)と30℃で6時間混合した。フィルタ125を介して反応混合物を濾過して、生成物分離容器160に送った。生成物分離容器160中の反応混合物からグリセロールおよび過剰な水を除去した。脂肪酸メチルエステルを含有する上相および非反応グリセリドを、別ルートライン165を介して反応容器120に再導入し、次いでメタノール(110g)を反応容器120中の反応媒体に添加してから、反応容器120での撹拌を再び始めた。2時間後のメチルエステルへの変換は、98%であった。廃食油(83重量%)、メタノール(15%)および0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液(2%)を含有する乳化反応媒体(調製したエマルジョン)をおよそ30mL/分の流量で反応容器120に連続的に送った。マクロ多孔質の疎水性樹脂上に固定化されたサーモマイセスラヌギノサリパーゼに由来する同じバッチの生体触媒を用いると、脂肪酸メチルエステルへの変換は、著しい活性消失もなく、3カ月以上維持された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸アルキルエステルを形成するために、脂肪酸源のアルコールとのエステル交換/エステル化のためのプロセスであって、固定化リパーゼ調製物の存在下で脂肪酸源と、アルコールまたはアルコール供与体とを反応させることを含み、前記固定化リパーゼ調製物が疎水性多孔質の担体上に固定化された少なくとも1つのリパーゼを含み、および反応媒体が水性アルカリ性緩衝液を含むプロセス。
【請求項2】
前記水性アルカリ性緩衝液が水性弱アルカリ性緩衝液である請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水性アルカリ性緩衝液が脂肪酸源の最高5重量%までの量で含まれる請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記水性緩衝液が7から約11までのpH値を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記pH値が7〜8.5、7〜9、7〜9.5、7〜10および7〜11のいずれか1つである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記緩衝液を含む補充された弱アルカリ性試薬のpKaが、前記脂肪酸源を含む酸類のpKaよりも高いまたは等しい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
脂肪酸アルキルエステルを形成するために、脂肪酸源のアルコールとのエステル交換/エステル化のためのプロセスであって、固定化リパーゼ調製物の存在下で脂肪酸源と、アルコールとを反応させることを含み、前記固定化リパーゼ調製物が疎水性多孔質の担体上に固定化された少なくとも1つのリパーゼを含み、および反応媒体が水を含む、プロセス。
【請求項8】
前記水が3〜11のpH値の水溶液の形状である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応媒体が前記脂肪酸源の最高5重量%までの水または水溶液を含有する、請求項7または8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アルコールが短鎖アルコールである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記アルコール供与体が、酢酸メチルなどのモノアルキルエステル、または炭酸ジメチルなどの炭酸ジアルキルであり、反応媒体中で弱アルカリ性試薬の源としても役立つ、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つのリパーゼが、リゾームコールミーハイ(Rhizomucor miehei)、シュードモナスエスピー(Pseudomonas sp.)、リゾプスニベウス(Rhizopus niveus)、ムコールジャバニクス(Mucor javanicus)、リゾプスオリゼ(Rhizopus oryzae)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウムカメンベルティ(Penicillium camembertii)、アルカリジェネスエスピー(Alcaligenes sp.)、アクロモバクターエスピー(Acromobacter sp.)、ブルクホルデリアエスピー(Burkholderia sp.)、サーモマイセスラヌギノサ(Thermomyces lanuginosa)、クロモバクテリウムビスコサム(Chromobacterium viscosum)、カンジダアンタークティカB(Candida antarctica B)、カンジダルゴサ(Candida rugosa)、カンジダアンタークティカA(Candida antarctica A)、パパイヤ種子およびパンクレアチンいずれか1つに由来するリパーゼである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記固定化リパーゼが、遊離脂肪酸のエステル化を触媒して、脂肪酸アルキルエステルと、副産物として水とをもたらすことができ、ならびにトリグリセリドおよび部分グリセリドのエステル交換を触媒して、脂肪酸アルキルエステルと副産物としてグリセロールとをもたらすことができる、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記反応媒体中の前記アルカリ性溶液の量が、脂肪酸源の0.001〜5重量%である、請求項1〜6および10〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記リパーゼ調製物が、疎水性担体上に各々別々に固定化されうる、または同じ疎水性担体上に共固定化されうる少なくとも2つのリパーゼを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記リパーゼが同一のまたは異なる位置特異性を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記リパーゼが、遊離脂肪酸のエステル化を同時にもしくは連続的に触媒して、脂肪酸アルキルエステルと、副産物として水とをもたらすことができ、ならびにトリグリセリドおよび部分グリセリドのエステル交換を同時にもしくは連続的に触媒して、脂肪酸アルキルエステルと、副産物としてグリセロールとをもたらすことができる、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記担体が、疎水性脂肪族高分子をベースした担体および疎水性芳香族高分子をベースにした担体のいずれか1つである、請求項1〜17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記疎水性高分子担体が線状または分岐状の有機鎖から構成される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記担体がマクロ網状有機高分子またはコポリマー鎖を含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記担体が、疎水性でありうるまたは疎水性の有機材料で被覆されている、多孔質もしくは非多孔質の無機担体であり、請求項1〜17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記有機材料が線状、分岐状、または官能基を有する疎水性有機鎖である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記水性アルカリ性緩衝液が無機アルカリ塩または有機塩基の溶液である、請求項1〜6および10〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記アルカリ性緩衝液が、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩およびクエン酸塩、第一級、第二級および第三級のアミン、ならびにそれらの混合物である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記アルカリ性緩衝液が、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムから選択される弱塩基性溶液である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記アルカリ性緩衝液が、予備混合の段階で前記脂肪酸源に、または反応媒体に直接的に添加される、請求項1〜6および10〜25のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
エステル交換/エステル化の反応媒体中の前記アルカリ性緩衝液の含有量が、油供給原料の0.001〜5重量%の範囲にある、請求項1〜6および10〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記アルカリ性緩衝液の含有量が油供給原料の1〜2重量%である、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記脂肪酸源が、まず前記アルカリ性緩衝液と混合され、次いで該混合物が前記固定化リパーゼ調製物で処理され、続いて前記アルコールが添加され、前記脂肪酸源が脂肪酸エステルに変換するまで適切な条件下で該反応が進行することができる、請求項1〜6および10〜28のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記脂肪酸源が、植物油、動物性脂肪、藻油、魚油、廃油およびそれらの任意の混合物のいずれか1つである、請求項1〜29のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記脂肪酸源が、リン脂質およびステロールエステルなどの他の微量な脂肪酸誘導体の非存在下または存在下で、遊離脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリド、任意の割合でのそれらの混合物を含み、より具体的には前記脂肪酸源が、未精製、精製、漂白、脱臭されたものまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項1〜30のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記アルコールが、短鎖アルキルアルコール、具体的にはC−Cアルキルアルコール、より具体的にはC−Cアルキルアルコール、特にメタノールまたはエタノールである、請求項1〜10および12〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記アルコールがメタノールであり、結果としてもたらされる前記脂肪酸エステルが脂肪酸メチルエステル(FAME−Biodiesel)である、請求項1〜10および12〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記アルコールが中鎖脂肪アルコール(C−C10)または長鎖脂肪アルコール(C12−C22)である、請求項1〜10および12〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記反応が10℃と100℃の間、具体的には25℃と30℃の間の温度で行われる、請求項1〜34のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項36】
前記脂肪源が、プレ反応調整容器内で前記アルコールもしくはアルコール供与体と、次いで前記水もしくは緩衝液と予備混合されて、エマルジョンを形成し、次いで前記固定化リパーゼ調製物とともに、エステル交換/エステル化反応容器に送られる、請求項1〜35のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項37】
前記固定化リパーゼが、バッチ方式でもしくは連続方式で作動する連続撹拌タンク反応器または充填層反応器で用いられる、請求項1〜36のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項38】
脂肪酸アルキルエステルを形成するために、脂肪酸とアルコールとのエステル交換/エステル化を行うシステムであって、脂肪酸と、アルコールおよびアルコール供与体の少なくとも1つとを含む反応媒体を固定化リパーゼ調製物の存在下で反応させるように構成された反応容器を含み、前記固定化リパーゼ調製物が疎水性多孔質の担体上に固定化された少なくとも1つのリパーゼを含み、前記反応媒体が水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つを含有する、システム。
【請求項39】
前記反応容器が、前記脂肪酸アルキルエステルの生成のための前記システムの少なくとも作動中に固定化リパーゼ調製物を含む、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記反応容器が、前記脂肪酸アルキルエステルの生成のための前記システムの少なくとも作動中に脂肪酸と、アルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つとを含む、請求項38または39に記載のシステム。
【請求項41】
前記反応媒体が混合物を含み、前記システムが、前記反応容器と選択的流体連通しているプレ反応容器をさらに含み、前記脂肪酸アルキルエステルの生成のための前記システムの少なくとも作動中に、前記プレ反応容器が、少なくとも脂肪酸と、アルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つとを予備混合して前記混合物を形成し、前記混合物を前記反応容器に選択的に送るように構成される、請求項38〜40のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項42】
前記プレ反応容器と選択的流体連通し、かつ前記システムの少なくとも前記作動中に脂肪酸を前記プレ反応容器に選択的に送るように構成された脂肪酸源と、前記プレ反応容器と選択的流体連通し、かつ前記システムの少なくとも前記作動中にアルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つを前記プレ反応容器に送るように構成されたアルコール源とをさらに含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記プレ反応容器と選択的流体連通し、かつ前記システムの少なくとも前記作動中に、前記混合物に含まれるべく、水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つを前記プレ反応容器に選択的に送るように構成された緩衝液源をさらに含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記システムの少なくとも前記作動中に、1つまたは複数の脂肪酸と、アルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つとを連続方式で前記プレ反応容器に選択的に送るように構成された、請求項42または45に記載のシステム。
【請求項45】
前記システムの少なくとも前記作動中に、水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つを連続方式で前記プレ反応容器に選択的に送るように構成された、請求項43または44に記載のシステム。
【請求項46】
前記システムの少なくとも前記作動中に、1つまたは複数の脂肪酸と、アルコールおよびアルコール供与体の少なくとも1つとを別々のバッチで前記プレ反応容器に選択的に送るように構成された、請求項42〜45のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項47】
前記システムの少なくとも前記作動中に、水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つを別々のバッチで前記プレ反応容器に選択的に送るように構成された、請求項43〜46のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項48】
前記システムの少なくとも前記作動中に、前記プレ反応容器が前記混合物を連続方式で前記反応容器に選択的に送るように構成された、請求項41〜47のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項49】
前記システムの少なくとも前記作動中に、前記プレ反応容器が前記混合物を別々のバッチで前記反応容器に選択的に送るように構成された、請求項41〜48のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項50】
前記システムが、少なくとも1つの脂肪酸と;アルコールおよびアルコール供与体のうちの少なくとも1つと;水性アルカリ性緩衝液および水のうちの少なくとも1つとを前記反応容器に選択的におよび直接的に送るように構成される、請求項38〜49のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項51】
前記反応容器が、前記反応容器中の反応媒体を選択温度範囲内で維持するように構成された温度調節装置を含む、請求項38〜50のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項52】
前記システムの少なくとも前記作動中に、固定化リパーゼ調製物を前記反応容器内に保持するように構成された保持装置をさらに含む、請求項38〜51のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項53】
前記反応容器と選択的流体連通した生成物分離容器をさらに含み、前記システムが反応産物を含む反応混合物を前記反応容器から前記生成物分離容器に選択的に送るように構成され、および前記生成物分離容器がそこに送られた反応混合物から脂肪酸アルキルエステルの生成物を選択的に分離するように構成される、請求項38〜52のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項54】
前記生成物分離容器が遠心分離機および重力分離装置のうちの1つを含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記システムの少なくとも前記作動中に、前記反応容器が、前記反応混合物を連続方式で前記生成物分離容器に選択的に送るように構成される、請求項53および54のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項56】
前記システムの少なくとも前記作動中に、前記反応容器が、前記反応混合物を別々のバッチで前記生成物分離容器に選択的に送るように構成される、請求項53〜55のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項57】
脂肪酸アルキルエステルの前記生成物を前記生成物分離容器から選択的に送るように構成された、請求項53〜56のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項58】
脂肪酸アルキルエステルの前記生成物を連続方式で前記生成物分離容器から選択的に送るように構成された、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
脂肪酸アルキルエステルの前記生成物を別々のバッチで前記生成物分離容器から選択的に送るように構成された、請求項57に記載のシステム。
【請求項60】
前記システムが、前記生成物分離容器に送られた反応混合物からの脂肪酸アルキルエステルの前記生成物を増加するように構成される、請求項53〜59のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項61】
前記システムが、続いて前記生成物分離容器に送られる反応混合物からの脂肪酸アルキルエステルの前記生成物をさらに増加させるために、脂肪酸アルキルエステルの前記生成物を前記反応容器に選択的に別のルートで送るように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記システムが、脂肪酸アルキルエステルの前記生成物を選択的に別のルートで補助反応モジュールに送るように構成され、前記補助反応モジュールが補助反応容器および補助生成物分離容器を含み、脂肪酸アルキルエステルのさらに増加した前記生成物が、続いて前記補助生成物分離容器を介して選択的に送られる、請求項60に記載のシステム。
【請求項63】
請求項38〜62のいずれか1項に記載のシステムにおいて行われる、請求項1〜37のいずれか1項に記載のプロセス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−520985(P2013−520985A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555538(P2012−555538)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【国際出願番号】PCT/IL2011/000121
【国際公開番号】WO2011/107977
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(509192802)トランスバイオディーゼル リミテッド (4)
【Fターム(参考)】