説明

脂肪酸/L−カルニチン誘導体の製造方法

本発明は、脂肪酸/L−カルニチン誘導体の製造方法であって、モノクロロ酢酸の存在下で抽出物を反応させる方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、モノクロロ酢酸を用いた脂肪酸/L−カルニチン誘導体の製造方法を開示する。
【0002】
3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオ−ブタノエート(以下、「L−カルニチン」と称する)は、アミノ酸リジンおよびメチオニンから生合成される4級アンモニウム化合物である。生細胞において、代謝エネルギーの生成のための脂質(または脂肪)の分解の間、脂肪酸を細胞質ゾルからミトコンドリアへの輸送することが必要とされる。
【0003】
パルミトイル−L−カルニチンのような脂肪酸/L−カルニチン誘導体は、L−カルニチン抽出物と脂肪酸の塩化物を気体のHClおよびトリハロゲン化酢酸の存在下で反応させることにより、当該分野の技術により合成される。
【0004】
US5,741,816は、n−ペンタデカン酸と塩化チオニルの反応、およびその後のトリクロロ酢酸中でのL−カルニチンとの反応を開示している。
【0005】
しかしながら、当該分野の現在の技術であるこれらの方法には、さらなる改良が必要とされている。この点において、トリハロゲン化酢酸をより低分子量であり且つより価値の低い酸(現在は、トリクロロ酢酸1トン当り4338USD)で置換することは、利点を有する。
【0006】
上述した問題は、脂肪酸/L−カルニチン誘導体の製造においてモノクロロ酢酸を使用する本発明により解決される。前記試薬は、より低分子量であり且つ力価(factor)5.4だけ価値(prize)がより低いという利点を有する(現在、1トン当り800USD)。
【0007】
本発明による「誘導体」は、L−カルニチンと脂肪酸または脂肪酸塩化物の反応生成物、すなわちエステル化L−カルニチンであり、L−カルニチンの炭素原子3におけるヒドロキシル部分を脂肪酸または脂肪酸塩化物の酸または塩化アシル部分と反応させることにより、エステル部分を形成する。
【0008】
モノクロロ酢酸は、好ましくは3.3〜4.4mol/L、より好ましくは3.5〜4.3mol/Lの濃度で使用される。
【0009】
脂肪酸塩化物は、好ましくは1.25〜1.85mol/L、より好ましくは1.6〜1.85mol/Lの濃度で使用され、一方、L−カルニチン塩酸塩は、好ましくは1.2〜1.5mol/L、より好ましくは1.2〜1.4mol/Lの濃度で使用される。
【0010】
気体のHClは、好ましくは3〜4mol/L、より好ましくは3.25〜3.75mol/Lの濃度で使用される。
【0011】
本発明の反応は、好ましくは、70℃〜80℃の温度で行う。
【0012】
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
比較例:トリクロロ酢酸中のパルミトイル−L−カルニチン塩酸塩
120 gのL−カルニチンおよび368 gのトリクロロ酢酸を器具中に充填し、73℃に加熱する。完全に融解させた後、溶液を30℃に冷却する。27.5gのHClガスを反応器に加え、反応を1時間撹拌する。
【0014】
320.4 gの塩化パルミトイルを1時間にわたってゆっくりと加え、溶液を50℃に加熱し、1.5時間撹拌する。
195.3 gのイソプロパのールおよび498 gの酢酸エチルを反応系に室温で加え、0℃まで冷却する。固体をろ過し、65.1 gのイソプロパノールおよび191.8 gの酢酸エチル(予め0℃に冷却)で洗浄し、一晩乾燥する。
【0015】
固体を、1050 mlのイソプロパノール中で再結晶する。混合物を70℃に加熱する。イソプロパノールおよび酢酸エチルを系に加え、0℃に冷却する。202.9 gのパルミトイル−L−カルニチン塩酸塩を得る(74%収率)。その融点を164〜184℃で測定する。
【0016】
H-NMR (500 MHz, DMSO) δ 0.85 (t, 3 H); 1.25 (m, 24 H), 1.55 (m, 2 H), 2.35 (m, 2 H), 2.7 (d, 2 H), 3.12 (s, 9 H), 3.65 (d, 1 H), 3.85 (dd, 1 H), 5.45 (m, 1H)。
【0017】
実施例1:モノクロロ酢酸中のパルミトイル−L−カルニチン塩酸塩
100 gのL−カルニチンおよび180 gのモノクロロ酢酸を器具に充填し、70℃に加熱する。完全に融解させた後、溶液を30℃に冷却する。24gのHClガスを反応器に加え、反応を50℃で1時間撹拌する。
【0018】
213 gの塩化パルミトイルを1時間にわたってゆっくりと加え、溶液を70℃に加熱し、2時間撹拌する。
1000 gのアセトンを室温で加える。固体をろ過し、500 gのアセトンで洗浄し、60℃、14 mbarで一晩乾燥する。
【0019】
固体を450gのアセトンで再結晶する。202.9 gのパルミトイル−L−カルニチン塩酸塩を得る(74%収率)。その融点は164〜184℃である。
【0020】
H-NMR (500 MHz, DMSO) δ 0.85 (t, 3 H); 1.22 (m, 24 H), 1.5 (m, 2 H), 2.3 (m, 2 H), 2.7 (d, 2 H), 3.1 (s, 9 H), 3.65 (d, 1 H), 3.85 (dd, 1 H), 5.45 (m, 1H)。
【0021】
実施例2:ラウリル−L−カルニチン塩酸塩
20.0 gのL−カルニチン塩酸塩および25.3 gのモノクロロ酢酸を器具に充填し、70℃に加熱する。完全に融解させた後、50℃に冷却する。
29.6 gの塩化ラウリルを1時間にわたってゆっくりと加え、溶液を70℃に加熱し、3時間撹拌する。
【0022】
30.7 gのイソプロパノールを室温で発熱反応の最後に加えた後、135.2 gの酢酸エチルを加え、懸濁液を一晩3℃に冷却する。
固体をろ過し、147.8 gのイソプロパノール/酢酸エチル (1:2.7) で洗浄し、50℃、24 mbarで一晩乾燥する。
【0023】
34.2 gのラウリル−L−カルニチン塩酸塩を得る。
99.4%の収率を達成する。最終生成物の融点は、177℃である。
【0024】
H-NMR (500 MHz, DMSO) δ 0.86 (t, 3 H), 1.24 (m, 16 H), 1.52 (m, 2 H), 2.31 (m, 2 H), 2.68 (d, 2 H), 3.1 (s, 9 H), 3.61 (d, 1 H), 3.8 (dd, 1 H), 5.45 (m, 1H)。
【0025】
実施例3:オクタノイル−L−カルニチン塩酸塩
20.0 gのL−カルニチン塩酸塩および25.3 gのモノクロロ酢酸を器具に充填し、70℃に加熱する。完全に融解させた後、溶液を50℃に冷却する。
22.0 gの塩化オクタノイルを30分にわたってゆっくりと加え、溶液を70℃に加熱し、3時間撹拌する。
【0026】
30.8 gのイソプロパノールを室温で発熱反応の最後にゆっくりと加え、104.5 gの酢酸エチルを加え、懸濁液を一晩3℃に冷却する。
固体をろ過し、147.8 gのイソプロパノール/酢酸エチル (1:2.7) で洗浄し、50℃、24 mbarで一晩乾燥する。
【0027】
25.4 gのオクタノイル−L−カルニチン塩酸塩を得る。
81.1%の収率を達成する。最終生成物の融点は178〜181℃である。
【0028】
H-NMR (500 MHz, DMSO) δ 0.85 (t, 3 H), 1.25 (m, 8 H), 1.5 (m, 2 H), 2.3 (m, 2 H), 2.7 (d, 2 H), 3.1 (s, 9 H), 3.65 (d, 1 H), 3.8 (dd, 1 H), 5.45 (m, 1 H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸/L−カルニチン塩酸塩誘導体の製造方法であって、抽出物をモノクロロ酢酸の存在下で反応させる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記抽出物はL−カルニチンおよび脂肪酸の塩化物である方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記脂肪酸は、パルミチン酸、ラウリル酸およびオクタン酸からなる群より選択される方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記モノクロロ酢酸は、3.3〜4.4 mol/L、好ましくは3.5〜4.3 mol/Lの濃度で使用される方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記脂肪酸の塩化物は、1.25〜1.85 mol/L、好ましくは1.6〜1.85 mol/Lの濃度で使用される方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、前記L−カルニチンは、1.2〜1.5mol/L、好ましくは1.2〜1.4mol/Lの濃度で使用される方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、前記反応は70〜80℃の温度で行われる方法。

【公表番号】特表2012−516861(P2012−516861A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548597(P2011−548597)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000654
【国際公開番号】WO2010/089094
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(391003864)ロンザ リミテッド (36)
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
【Fターム(参考)】