説明

脂質ナノ粒子の製造方法

本発明は、液状の脂質の核及び固体のシェルを有し、かつ親水性を有する少なくとも1の活性剤を含むナノカプセルを製造するために有用な方法において、i)少なくとも1の第一のマイクロエマルジョンを用意すること、該第一のマイクロエマルジョンは油中水の性質を有し、少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化されており、その親水性相の中に親水性を有する少なくとも1の活性剤を含む、ii)少なくとも1の第二のマイクロエマルジョンを用意すること、該第二のマイクロエマルジョンは第一のマイクロエマルジョンとは別個のものであり、エマルジョンの相反転により形成され、少なくとも1の熱に敏感な非イオン性の親水性界面活性剤により安定化されている、iii)新しいマイクロエマルジョンの構造の形成に好都合である条件において該第一のマイクロエマルジョンを該第二のマイクロエマルジョンに添加すること、該添加において、該親水性活性剤は、第一のマイクロエマルジョンの親水性相に存在したままである、iv)該前の段階において形成された混合物を冷却固化させてナノカプセルを得ること、該ナノカプセルは、該親水性活性剤を含み、室温において液状である脂質の核であって、かつ室温において固体であるフィルム中にカプセル化されているところの脂質の核から形成されている、前記方法に関する。さらに、本発明は、本方法により得られることのできるナノカプセルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1の活性剤を含む脂質ナノカプセルを製造する便利な方法及びそのようなナノカプセル及び該ナノカプセルを含む組成物にもまた関する。
【0002】
粒径が50〜500ナノメートルの範囲であり、かつ外側の膜により取り囲まれた、液状又は半固体の核から形成されたナノカプセル又はナノ小滴のタイプからなるナノベシクル系は既に公知である。その膜の成分は、合成のもの例えばポリマー状、タンパク質又はリポソームのような脂質性であり得る。注意すべきは、水性コンパートメントにより互いに分離されている脂質層の積み重ねから形成されたラメラ構造を有するリポソームは常に水性の核を有する。
【0003】
これらのナノメートルの構造は、水溶性又は水分散性であるときにはその水性核、該活性剤が脂溶性又は脂肪分散性であるときはその脂質相のいずれかに活性剤をカプセル化する目的のためにすでに提案されている。
【背景技術】
【0004】
例えば、米国特許第5961970号明細書は、活性剤ビヒクルとして、サブミクロンスケールの水中油型エマルジョン、即ち脂質の性質の疎水性の核を有し両親媒性及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばリン脂質タイプの界面活性剤、で表面が安定化されたミニエマルジョンを提案している。従って、これらの小滴は、水性相において懸濁物において維持されている。このタイプのサブミクロンエマルジョンは、基本的なエマルジョンを高剪断におけるいくつかの連続的な均一化サイクルに付すことにより該基本的なエマルジョンから得られる。
【0005】
米国特許第5576016号は、マクロエマルジョンであって、該エマルジョンの小滴は固体の脂質の核から形成されており、リン脂質のエンベロープで安定化されているマクロエマルジョンを記載している。このリン脂質のエンベロープは、リポソームのようなリン脂質分子の1以上の層から形成されたラメラ構造を有する。高度に疎水性の活性剤が、該核に含まれていてもよく、他方、水溶性の活性剤がリン脂質エンベロープに存在する水性コンパートメントに取り込まれてもよい。
【0006】
さらに、本発明者らは、欧州特許出願公開第1265698号明細書において、脂溶性又は脂肪分散性の活性剤のためのビヒクルとして、脂質の核及び脂質性の固体のシェルを有するナノカプセル及び該ナノカプセルへのアクセスを得るための新規な技術をもまた記載した。より具体的には、これらのナノカプセルは、脂溶性又は脂質分散性の活性剤を含んでおり、マイクロエマルジョンから得られ、このマイクロエマルジョンは熱の効果による相反転の技術(PITエマルジョン)により製造される。
【0007】
相反転温度(PIT)エマルジョン化の原理は、当業者によく知られており、1968年にK.シノダにより記載されている(J.Chem.Soc.Jpn,1968、第89巻、第435頁)。このエマルジョン化技術は微細な安定エマルジョンを得ることを可能にする(K.シノダ、H.サイトウ、J.Colloid Interface Sci.,1969年、第30巻、第258頁)。
【0008】
この技術は、0.1〜4μm(100〜4000nm)の範囲の、油性相を構成する小球体の平均粒径を得ることを特に可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらのナノカプセルが活性剤をカプセル化することが意図されるとき、この方法は、カプセル化することが所望される活性物質が方法の最初の段階から存在することを余儀なくし、従って、方法全体がこの活性剤の存在下において実行されなければならない。しかし、この義務は、当業者にとって妨害である場合がある。
【0010】
さらに、該文献において、得られたナノカプセルは、その油状の核内に親油性又は脂質分散性の活性剤をカプセル化する目的のためだけに提案された。今、明らかな理由から、これらのナノカプセルは、水溶性又は水に分散可能な活性剤をカプセル化するために有用に用いられることもまた有利である。
【0011】
従って、当業者は、活性剤、特に親水性を有する活性剤、を含むナノカプセルを得るために実施する簡単で速い方法、及びとりわけ、有利なカプセル化収率を有する方法を有していない。
【0012】
本発明の目的は、特に、この必要性を満足する新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より正確には、第一の特徴に従うと本発明は、液状の脂質の核及び固体のシェルを有し、かつ親水性を有する少なくとも1の活性剤を含むナノカプセルを製造するために有用な方法において、
i)少なくとも1の第一のマイクロエマルジョンを用意すること、該第一のマイクロエマルジョンは油中水の性質を有し、少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化されており、その親水性相の中に親水性を有する少なくとも1の活性剤を含む、
ii)少なくとも1の第二のマイクロエマルジョンを用意すること、該第二のマイクロエマルジョンは第一のマイクロエマルジョンとは別個のものであり、エマルジョンの相反転により形成され、少なくとも1の熱に敏感な非イオン性の親水性界面活性剤により安定化されている、
iii)新しいマイクロエマルジョンの構造の形成に好都合である条件において該第一のマイクロエマルジョンを該第二のマイクロエマルジョンに添加すること、該添加において、該親水性活性剤は、第一のマイクロエマルジョンの親水性相に存在したままである、
iv)該前の段階において形成された混合物を冷却固化させてナノカプセルを得ること、該ナノカプセルは、該親水性活性剤を含み、室温において液状である脂質の核であって、かつ室温において固体であるフィルム中にカプセル化されているところの脂質の核から形成されている、
からなる段階を少なくとも含む前記方法、
に関する。
【0014】
一つの特定に実施態様に従うと、本発明に従う方法を使用して配合された親水性活性剤は、本発明が実施された後、該ナノカプセルの液状の脂質の核中に存在する。
【0015】
別の特定の実施態様に従うと、本発明は、第二のマイクロエマルジョンが、混合の前は、油中水のマイクロエマルジョンである、上記方法に関する。
【0016】
本発明の文脈において、用語「親水性の性質」は、活性剤が、水又は水性媒体に優勢な親和性を有することを意味する。
【0017】
従って、親水性化合物は、特に、水溶性化合物又はさもなければ水に分散可能な化合物であり得る。
【0018】
本発明の文脈において、用語「親水性の相」又は「極性の相」は、完全に又は部分的に水から形成された媒体を意味すると理解される。従って、それは完全に又は部分的に水から、完全に又は部分的に少なくとも1の極性溶媒から、又は水/極性溶媒混合物から形成され得る。
【0019】
その別の特徴に従うと、本発明は、本発明に従う方法により得られることのできるナノカプセルに関する。
【0020】
本発明は、液状の脂質の核及び固体のシェルを有するナノカプセルにおいて、これらはその液状の脂質の核内に、親水性、特に水溶性、の性質を有する少なくとも1の活性剤を含んでおり、該活性剤は親水性のマイクロドメイン又は油中水の性質を有するマイクロエマルジョンの形で液状の脂質の核に存在しており、該マイクロエマルジョンは、少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化された油性相及び該活性剤を取り込んでいる親水性相を有している、前記ナノカプセルにもまた関する。
【0021】
本発明は、そのようなナノカプセルを含む組成物にもまた関する。
【0022】
本発明は、すべての期待に反して、エマルジョンの相反転、特にPIT(相反転温度)技術を使用して得られるマイクロエマルジョンが、油中水性の付随的マイクロエマルジョンと相互作用することができ、その親水性の又はさもなければ極性の相の中に、少なくとも1の親水性の活性剤を含むことができて、該活性剤をその内部の親水性のミセル構造の中に含むマイクロエマルジョンタイプの構造物を形成するという本発明者らによる観察からより特に関する。
【0023】
驚いたことに、2つのマイクロエマルジョンの間において本発明に従って要求される相互作用は、安定性の観点において、第一のマイクロエマルジョンの中に存在する親水性の活性剤を含む極性のマイクロドメイン又はミセル構造を損なわない。これらのマイクロドメインは冷却硬化の間、ナノカプセルの液状の脂質の核を形成するのに捧げられる油の小滴内に保留される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】マイクロエマルジョン系の3相ダイアグラムの例を示す
【図2】ウィンザーI,II,又はIIIと呼ばれる特徴的な相ダイアグラムを示す
【図3】相ダイアグラムの例を示す
【図4】相ダイアグラムの例を示す
【発明を実施するための形態】
【0025】
マイクロエマルジョン
第一に、マイクロエマルジョンは、特に米国特許第5961971号及び米国特許第5576016号に説明されており、2相系と命名されるミニエマルジョン又はナノエマルジョンとは異なり、マクロエマルジョンとも異なることに留意することが重要である。具体的にはマイクロエマルジョンは油又は水で膨潤されたミセル構造の形における物質の2つの連続構造(bi−continuous structure)に相当する。これらのミセル構造は、高度に相互に内部結合されており、従って、均一で、凝集性で(cohesive)、安定化された3次元網目構造を構成する。従って、マイクロエマルジョンは、必ずしも球形でないマイクロドメインを有し、粒径が小さく、典型的には約10〜50nmの範囲であり、時間的及び空間的に変動している。
【0026】
言いかえると、マイクロエマルジョンは、ミニ小滴からなるエマルジョンではない。マイクロエマルジョンにおいて、分散された相を連続相から区別することは可能ではない。最後に、マクロエマルジョン、ミニエマルジョン及びナノエマルジョンと異なり、マイクロエマルジョンは、熱力学的に安定である。そのようなマイクロエマルジョンは特にPatelらによる“J.Agric.Food Chem.”2006年、第54巻、7871〜7824頁に記載されている。
【0027】
当業者は、マイクロエマルジョンを配合することは、2つのタイプの変数、即ち組成の変数及び物理化学的配合変数、を選択することに等しいことを知っている。
【0028】
用語「組成の変数」は、系、即ち界面活性剤の系、の主要な成分、親水性又は極性相及び油相の相対的割合を意味する。
【0029】
物理化学的配合変数は、それ自身としては、系に影響を有し易い、すべての他の物理的パラメーター(温度、圧力)又は化学的パラメーター(主要な成分及び添加物の性質)を含む。
【0030】
期待されるマイクロエマルジョンを形成するのに必要なこれらのパラメーターを調節するために、一つの標準的なテクニックは、対応する相ダイアグラムを作ることである。
【0031】
そのようなダイアグラムは種々の方法を使用して作成され得るが、最も簡単なものは、問題の2つの成分の混合物を第3の成分で滴定することである。図1は、Prapaporn Boonmeによる論文“Journal of Cosmetic Dermatology”2007年、第6号、233〜228頁からとったものであるが、マイクロエマルジョン系の3相ダイアグラムの例を示す。
【0032】
一度、相ダイアグラムが作成されると、マイクロエマルジョン領域が識別され(identified)、マイクロエマルジョンは、このマイクロエマルジョン領域に存在する特定の比の一つで、必要な成分を単純に混合することにより容易に製造され得る。
【0033】
このダイアグラムから明白であるように、マイクロエマルジョンのマイクロ構造は、存在する各成分の相対的な量に依存して2つの連続する(bi−continuous)水中油(O/W)性又は油中水(W/O)性を有するとして記載され得る。
【0034】
これらの系を、以下の式に従って油性相及び親水性相の隣接する分子との界面に存在する界面活性剤分子の相互作用を特定するウィンザーの比Rによる特徴付けることもまた公知である。
R=ASO/ASW
ここで、Aは、単位界面面積当たりの分子の相互作用を意味し、W,O及びSは、親水性相、油性相、及び界面活性剤をそれぞれ意味するインデックスである。
【0035】
比Rが該単位より小さい、大きい、又は等しいかどうかに従って、ウィンザーI,II,又はIIIと呼ばれる特徴的な相ダイアグラム、例えば、図2に示されるものが得られる。さらに、これらのダイアグラムの透明な単独相の相はウィンザーIVマイクロエマルジョンと命名される。大多数の場合、このタイプのマイクロエマルジョンの領域の限界は曇った溶液の外観により示される。
【0036】
従って、ある界面活性剤の濃度から出発すると、10%〜50%の間で、多相領域は消失し、界面活性剤が相対的に組織化された構造、例えばマイクロエマルジョン又は液体−結晶相(単独相領域)の形の親水性相及び油性相を「共−溶解」する。図2に示される2相領域に引かれた線は共結線(conjugation line)又は分割線(partition line)と呼ばれる。
【0037】
分割線の傾きは、界面活性剤の大部分が、ウィンザーIの場合は水性相に、ウィンザーIIの場合には油性相にあることを示す。
【0038】
ウィンザーIIIのダイアグラムの場合、系が3つの相、即ち実質的にすべての界面活性剤を含む1つのマイクロエマルジョン及び水性相及び油性相において形成される2つの他の相、に分離するところの三角形内に存在する領域がある。
【0039】
しかし、高い界面活性剤の濃度において、その挙動はウィンザーIVタイプであると言われる単独相の領域が常に観察される。言い換えると、ウィンザーIVの表現(representation)は図2のダイアグラムのウィンザーI,II,及びIIIの1つの単独相に相当する。
【0040】
親水性の活性剤を含むマイクロエマルジョン
上記のように、第一のマイクロエマルジョンは少なくとも1の油性の脂肪相、少なくとも1の親油性の界面活性剤、極性又は親水性の相を含み得、かつその極性又は親水性の相に親水性を有する少なくとも1の活性剤、特に水溶性又は水に分散可能な活性剤を含み得る。
【0041】
好ましい実施態様に従うと、このマイクロエマルジョンもまたウィンザーIVの挙動を示す。
【0042】
有利には、このマイクロエマルジョンは油中水性を有する。
【0043】
a−油性相
油性相は、室温において液状又は半固体である少なくとも1の脂肪の物質、特に少なくとも1のトリグリセリド、脂肪酸エステル、又はそれらの混合物から形成されている。
【0044】
脂肪酸エステルはより特にC〜C18、特にC〜C12,より特にC〜C10の脂肪酸エステル、特にトリブチリン、パルミチン酸エチル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0045】
使用されるトリグリセリドは、合成のトリグリセリド又は天然起源のトリグリセリドであり得る。天然の源は動物の脂肪又は植物油、例えば大豆油又は長鎖のトリグリセリド(LCT)の源を含み得る。
【0046】
関心のある他のトリグリセリドは、主に中鎖の脂肪酸から構成され、中鎖トリグリセリド(MCT)としてもまた公知である。中鎖トリグリセリド(MCT)油は、炭化水素鎖が8〜12の炭素原子を含むトリグリセリドである。
【0047】
そのようなMCTは、市販入手可能である。
【0048】
これらのMCT油の例として、TCR製品(フランス国、Societe Industrielle des Oleagineux製の商品であって、脂肪酸の鎖の約95%が8〜10の炭素原子を含むトリグリセリドの混合物に対する商品名である)、及びMyglyol(商標)812(カプリル酸及びカプリン酸グリセリドトリエステルの混合物に対する、スェーデン国、ダイナミットノーベルにより販売されているトリグリセリド)。
【0049】
これらのトリグリセリドの脂肪酸単位は、不飽和、モノ不飽和又は多不飽和であってもよい。種々の脂肪酸単位を含むトリグリセリドの混合物もまた受け入れ可能である。
【0050】
液状又は半固体の脂肪性物質のHLB値が高いほど、相反転温度は高いことに留意されたい。他方、脂肪性物質のHLB値は、ナノカプセルの粒径に影響を有しないようである。
【0051】
従って、トリグリセリドの末端基の大きさが大ききくなると、そのHLB値は減少し、相転移温度は減少する。
【0052】
HLB値、即ち親水性−親油性バランス、はC.LarpentによりEditions Techniques de l‘Ingenieurの概論K.342において定義されている通りである。
【0053】
Labrafac WL1349(商標)又はLabrafac(商標)CCの名前で販売されているトリグリセリドが、本発明における使用に最も特に適切である。
【0054】
b−親水性又は極性の相
親水性又は極性の相に関して、これは水性相であってもなくてもよい。従って、全体的又は部分的に水から、全体的又は部分的に少なくとも1極性の溶媒から、又は水/極性の溶媒混合物から形成されていてもよい。
【0055】
有利には、親水性の相は水だけからなる。
【0056】
別の実施態様に従うと、親水性相は水を含まなくてもよい。この場合、それは少なくとも1の親水性溶媒から形成されていてもよい。そのような極性溶媒は、問題の活性剤を溶解するその能力のために、及びその無毒性のための意図された(ヒト又は動物における)用途の点において選択される。従って、当業者はそのような溶媒を選択することができる。
【0057】
そのような極性の溶媒は、例えばポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、グリコフロール、低分子量ポリエチレングリコール、ポリオール、及びそれらの混合物から選択され得る。例えば、そのような親水性相は、プロピレングリコールのみからなる(Patelら“J. Agric. Food Chem.”2006年、第54巻、7817〜7824頁)。
【0058】
別の実施態様に従うと、親水性相は、完全に又は部分的に水から形成されていてもよい。
【0059】
より特に、これは水と1以上の極性溶媒との混合物であってもよく、該極性溶媒は上で定義された通りである。
【0060】
ある極性溶媒は、界面活性の性質をもまた有し得ることが理解される。従って、マイクロエマルジョンを製造するとき、これらの性質を考慮に入れることが必要であり得る。そうすると、問題の溶媒は2つの機能、溶媒の機能及び共界面活性剤の機能、又は実際にはある場合には本質的に共活性溶媒の機能、を有する。
【0061】
一つの実施態様に従うと、そのような混合物は0.1%〜50%の水及び50%〜99.9%の少なくとも1の極性溶媒を含み得る。
【0062】
別の特定の実施態様に従うと、そのような混合物は、0.1%〜50%の少なくとも1の極性溶媒及び50%〜99.9%の水を含み得る。
【0063】
別の実施態様に従うと、そのような混合物は、10%〜45%の水、好ましくは15%〜35%、より好ましくは20%〜30%の水、又は約25%の水、及び50%〜95%のプロピレングリコール、好ましくは55%〜85%、より特に70%〜80%、例えば約75%のプロピレングリコールから形成されていてもよい水/プロピレングリコールの混合物であり得る。
【0064】
別の特定の実施態様に従うと、該混合物は等モルの混合物である。
【0065】
別の実施態様に従うと、親水性相は、さらに共界面活性剤、特に親水性の性質を有するもの、を含んでいてもよい。そのような共界面活性剤は、当業者によく知られている。それらは、例えば長いアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、及びそれらの混合物であってもよい。他の例がPatelら(同じ文献)において挙げられている。
【0066】
この第一のマイクロエマルジョンは適切であれば、さらに、親油性の活性剤、特に脂溶性又は脂肪に分散可能な活性剤を含んでいてもよいことが理解されるべきである。そうすると、これはその脂質相の中に保持される。
【0067】
c−界面活性剤
上記の通り、少なくとも1の親水性活性剤を含む第一のマイクロエマルジョンは、少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化されている。
【0068】
明らかな理由から、マイクロエマルジョンを安定化させるために必要な界面活性剤の性質は、互いに接触する親水性及び親油性の相の化学的性質に直接、依存する。
【0069】
従って、基本的には、溶媒、例えばプロピレングリコールから形成された親水性の相と接触する場合には、対応するマイクロエマルジョンは単独の親油性の界面活性剤により効果的に安定化され得る。
【0070】
しかし、親油性の相が水を含む場合、付属の極性溶媒との組み合わせであってもなくても、共界面活性剤を親水性界面活性剤に添加することが必要であり得る。
【0071】
親油性の界面活性剤は、室温において固体であってもなくてもよい。
【0072】
本発明に従って使用される親油性の界面活性剤は、より特に、生体適合性に関して有利であるリン脂質に基づく。
【0073】
リン脂質の中で、ホスファチジルコリン(レシチン)が特に有利である。
【0074】
他のリン脂質は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルリノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸及びホスファチジルジエタノールアミンであり得る。
【0075】
リン脂質誘導体は天然源から単離され得るか、又は合成により製造され得る。
【0076】
リン脂質から誘導された市販の製品として特に以下のものが挙げられ得る。
Epicuron120(商標)(ドイツ国、Lukas Meyer),該製品は約70%のホスファチジルコリン、12%のホスファチジルエタノールアミン及び約15%の他のリン脂質の混合物である、
Ovotine 160(商標)(ドイツ国、Lukas Meyer),該製品は、約60%のホスファチジルコリン、18%のホスファチジルエタノールアミン、及び12%の他のリン脂質の混合物である、
精製されたリン脂質の混合物、例えば製品Lipoid E75又はLipoidE80(商標)(ドイツ、Lipoid)、該混合物は約80重量%のホスファチジルコリン、約8重量%のホスファチジルエタノールアミン、3.6重量%の非極性脂質及び2重量%のスフィンゴミエリンを含むリン脂質の混合物である。
【0077】
一つの好ましい実施態様に従うと、親油性の界面活性剤はホスファチジルコリンの割合が40重量%〜80重量%の範囲であるレシチンである。
【0078】
Lipoid S75−3(商標)(ドイツ国、Lipoid社)が、ホスファチジルコリンの源として最も特に適切である。それは大豆のレシチンである。この製品は、約69%のホスファチジルコリン及び9%のホスファチジルエタノールアミンを含む。この成分は37℃及び配合物においては室温において固体である、ただ一つの成分である。
【0079】
ポリグリセリル−6ジオレエート(Plurol(商標))もまた使用され得る。
【0080】
本発明に適する脂溶性界面活性剤としてスクロースエステル、例えばサッカロース及び脂肪酸のエステル、アルキルグルコースエステル、特にポリオキシエチレン化C〜Cアルキルグルコース脂肪エステル及びそれらの混合物を使用することもまた可能である。
【0081】
より特に、スクロースモノステアレート又はジステアレート及びスクロースモノステアレートの特に高い割合を有するスクロースポリステアレートが挙げられ得る。
【0082】
明らかな理由から、油性相、親水性相、及び界面活性剤の割合は、使用された具体的な化合物の化学的性質に関して、マイクロエマルジョンを得るために調節されることができる。この調節は相ダイアグラムの作成により行われ、該ダイアグラムを作成することは、明らかに当業者の能力の範囲である。下記の実施例1は、そのようなエマルジョンを形成する具体的な方法を与える。さらに、それぞれ相ダイアグラムの例を与える図3及び4は、第一のマイクロエマルジョンのいくつかの例を説明する。
【0083】
一つの実施態様に従うと、第一のマイクロエマルジョンは、脂肪酸トリグリセリド、レシチン、ポリエチレングリコールの2−ヒドロキシステアレート誘導体、及び親水性の活性剤から少なくとも形成される。
【0084】
第一のマイクロエマルジョンは、種々の温度において製造され得、これらの温度はそのマイクロエマルジョン構造を形成するのに必要な成分、即ち油性相、親水性又は極性の相及び界面活性剤、の選択に直接、依存する。
【0085】
親水性活性剤を含む親水性相は、マイクロエマルジョン内に、該マイクロエマルジョンを形成するために保持された温度を通して、精密に調節され得るサイズを有するマイクロドメインを形成することに留意されたい。このサイズは有利には50nm未満である。
【0086】
d−活性剤
上に示されたように、本方法は、親水性活性剤、即ち水溶性又は水に分散可能であるもの、を脂質の核を有するナノカプセル内に吸収するために特に有利である。
【0087】
好ましい実施態様に従うと、この活性剤は水溶性である。
【0088】
水溶性活性剤は、本発明に従って、親水性ミセル構造内に水溶性活性剤を取り込む第一の油中水型マイクロエマルジョンにより配合される。
【0089】
言い換えると、親水性又は水溶性でさえある活性剤を有する活性剤は、油性相において少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化された極性又は親水性マイクロドメインに含まれる。
【0090】
この第一のマイクロエマルジョンへの、その優先的な取り込みは、マイクロエマルジョンを形成することを意図された親水性相に該活性剤を溶解させることにより達成される。
【0091】
同時に、界面活性剤、例えば少なくとも1の親油性の界面活性剤、及び油性相が予め混合され、一度、界面活性剤が油に溶解されると、2つの相、即ち油性相及び水性相、は互いに接触に至らされる。
【0092】
全体の集合は、期待されるマイクロエマルジョンを製造するのに都合のよい温度に加熱される。
【0093】
この温度は、室温〜75℃の範囲である。
【0094】
従って、1つの特定の実施態様に従うと、本発明に従う方法では、混合物のために考慮される第一のマイクロエマルジョンは、混合の間、室温〜75℃の範囲の温度にある。
【0095】
この温度は、一般的に、すべての成分が均一に混合されることを可能にするように調節される。この調節は、化合物の一つが室温において固体であるとき、例えばある種のリン脂質の界面活性剤であるとき、特に勧められる。このようにして、マイクロエマルジョンを形成するためにS75−3 lipiod(商標)を界面活性剤として使用することにより、該混合物は72℃、即ちlipoid(商標)の融点、より上の温度に加熱されなければならない。
【0096】
混合物の温度は、第二のマイクロエマルジョンに導入されるまで、有利には保持されてもよい。
【0097】
しかし、全体の系は、適切であれば、透明になるまで、室温又は37℃においてオーブン中に置かれ得る。この実施態様は熱に敏感な親水性を有する活性剤の場合、最も特に有利である。
【0098】
もちろん、本発明に従う方法は、1以上の親油性活性剤、即ち1以上の脂溶性又は油に分散可能なマイクロエマルジョンの配合ともまた両立する。
【0099】
この親油性の活性剤は、第一又は第二のマイクロエマルジョンの脂質ミセル構造により導入され得る。
【0100】
有利には、活性剤が親油性であるとき、それは第二のマイクロエマルジョンにより導入され得る。
【0101】
本発明に従う関連する活性剤は、薬学的に活性又は化粧的に活性な化合物又は植物保護又は食品分野において活性である化合物であってもよい。
【0102】
好ましい実施態様に従うと、この活性剤は薬学的に活性な成分(pharmaceutically active principle)である。
【0103】
そのような活性剤は、たんぱく質又はペプチドの性質のものであってもよい。それは、核酸、例えばDNAプラスミド又は干渉RNAであってもよい。
【0104】
活性剤は、放射性医薬の剤であってもよい。それは、気体又は気体に転化されることができる流動体であってもよい。
【0105】
第二のマイクロエマルジョン
上で述べられたように、第二のマイクロエマルジョンは少なくとも1の熱に敏感な親水性界面活性剤により安定化される。
【0106】
このマイクロエマルジョンは、油中水型の性質(相反転領域、即ちPIZ、の右側部分)又は水中油型の性質(PIZの左側部分)であり得る。
【0107】
有利には、それは油中水型である。
【0108】
従って、本発明の一つの特定の実施態様に従って、混合する前に第二のエマルジョンは、油中水型のマイクロエマルジョンである。
【0109】
通常使用される乳化するための界面活性剤は、8〜18の範囲のHLB(親水性―親油性バランス)を有する。これらの乳化剤は、その両親媒性構造のおかげで、油性相/水性相の界面に位置し、そのようにして、分散された油の小滴を安定化する。
【0110】
これらの界面活性剤は、一般的に熱に敏感な親水性の非イオン性の界面活性剤と呼ばれる。
【0111】
そのような界面活性剤の選択は、相反転操作が温度の変化によって起こり、マイクロエマルジョン構造をもたらすことを確実にするために特に有利である。
【0112】
従って、本発明に従う第二のマイクロエマルジョンにおいて使用されるこのタイプの界面活性剤の油における溶解度は、温度が上がるにつれて増加する。そのような界面活性剤のHLBは8〜18、好ましくは10〜18、特に10〜16の範囲であり得る。本発明の一つの実施態様に従うとそのような界面活性剤はエトキシル化された脂肪族アルコール、エトキシル化された脂肪酸、エトキシル化された脂肪酸の部分グリセリド、脂肪酸トリグリセリド及びそれらのエトキシル化された誘導体及びそれらの混合物から選択され得る。
【0113】
挙げられ得るエトキシル化された脂肪族アルコールの例は、エチレンオキサイドのラウリルアルコールとの付加物、特に9〜50のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でラウレス−9〜ラウレス−50);エチレンオキサイドのベヘニルアルコールとの付加物、特に9〜50のオキシエチレン基を含むもの、(CTFA名でベヘネス−9〜ベヘネス−50);エチレンオキサイドのセトステアリルアルコール(セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物)との付加物、特に9〜30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でセテアレス−9〜セテアレス−30);エチレンオキサイドとセチルアルコールとの付加物、特に9〜30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でセテス−9〜セテス30)、エチレンオキサイドとステアリルアルコールとの付加物、特に9〜30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でステアレス−9〜ステアレス−30);エチレンオキサイドとイソステアリルアルコールとの付加物、特に9〜50のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でイソステアレス−9〜イソステアレス−50);及びそれらの混合物を含む。
【0114】
挙げられ得るエトキシル化された脂肪酸の例は、エチレンオキサイドとラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、又はベヘン酸及びそれらの混合物との付加物、特に9〜50のオキシエチレン基を含むもの、例えばPEG−9〜PEG50ラウレート(CTFA名:PEG−9ラウレート〜PEG−50ラウレート);PEG−9〜PEG50パルミテート(CTFA名:PEG−9パルミテート〜PEG−50パルミテート);PEG−9〜PEG50ステアレート(CTFA名:PEG−9ステアレート〜PEG−50ステアレート);PEG−9〜PEG−50パルミトステアレート;PEG−9〜PEG−50ベヘネート(CTFA名:PEG−9ベヘネート〜PEG−50ベヘネート)及びそれらの混合物を含む。
【0115】
脂肪族アルコール及び脂肪酸のこれらのオキシエチレン化誘導体の混合物もまた使用され得る。
【0116】
これらの界面活性剤は、天然の化合物、例えばエコレートホスホリピッド、又は合成化合物、例えばソルビトールのポリエトキシル化された脂肪酸エステルであるポリソルベート(Tween(商標))、例えばひまし油由来のポリエチレングリコールエステル及びジグリセリドエステル(Cremophor(商標))、脂肪酸例えばステアリン酸をポリエトキシル化したもの(Simulsol M−53(商標))、ポリオキシエチレン化脂肪族アルコールエーテル(Brij(商標))、ポリオキシエチレン化ノンフェニルエーテル(TrionN(商標))、及びポリオキシエチレン化ヒドロキシフェニルエーテル(トリトンX(商標))であり得る。
【0117】
それは、より特にポリエチレングリコール2−ヒドロキシステアレート及び特にBASF社(ドイツ)によりSolutol(商標)HS15の名前で販売されている製品であり得る。
【0118】
別の実施態様に従うと、本発明に従って考慮されている第二のマイクロエマルジョンは、さらに共界面活性剤を含み得る。より特に、この共界面活性剤は親油性の性質を有する。
【0119】
マイクロエマルジョンの粒径は、親水性界面活性剤の割合が増加するとき、及び親水性及び親油性の界面活性剤の割合が増加するとき、減少することに留意されたい。具体的には、親水性界面活性剤は界面張力の低下をもたらし、従って系を安定化させ、それにより小さな粒子の形成を促進する。
【0120】
さらに、油の割合が増加するとき、粒径は増大する。
【0121】
マイクロエマルジョンの水性相、それ自身は、有利に1〜4%の塩、特に鉱物塩、例えば塩化ナトリウムをもまた含み得る。具体的には、塩濃度を変更することは相反転領域におけるシフトをもたらす。従って、塩濃度が高いほど、相反転温度は低い。この現象は、疎水性の熱に敏感な活性剤をカプセル化するのに最も特に有利である。
【0122】
一つの特定の実施態様に従うと、本発明に従う活性剤を含む第一のマイクロエマルジョンは、もし必要であれば、第一のマイクロエマルジョンを第二のマイクロエマルジョンに導入したときと同じ浸透圧(osmolarity)を維持できるようにそのような塩をもまた含んでいてもよい。
【0123】
一つの特定の実施態様に従うと、第二のマイクロエマルジョンは、5〜15%の親水性界面活性剤、5〜15%の油性相、該油性相は適切な場合には1〜3%の親油性の界面活性剤と組み合わされている、及び64〜89%の水性相を有利に含む(百分率はマイクロエマルジョンの総重量に対する重量により表される)。
【0124】
好ましい実施態様において、脂肪相は、脂肪酸トリグリセリドであり、親油性の界面活性剤はレシチンであり、かつ親水性界面活性剤はSolutol(商標)HS15である。
【0125】
本発明に最も特に適するマイクロエマルジョンは、相反転技術、特に、問題の界面活性剤系により安定化された水中油型エマルジョンからマイクロエマルジョンに向けて出発する、温度で媒介される相転移操作により得られることができる。この技術は、より特に欧州特許第1265698号公報に記載されており、該公報の内容は、本明細書に取り込まれる。
【0126】
第二のマイクロエマルジョンは、一般的に一定の機械的撹拌を維持する間に得られる。
【0127】
従って、第二のマイクロエマルジョンを形成することが意図されているすべての成分は、容器に量り入れられる。混合物は例えば、350rpmにおけるレイネリブレンダーを使用して均一化され、温浴を使用して温度を相反転温度T以上まで、即ち、逆(W/O)エマルジョンが得られたことを示す、より粘凋な白色の相が得られるまで徐々に上げることにより加熱される。それから、加熱は止められ、撹拌は、エマルジョンが相反転温度T、即ち期待されたマイクロエマルジョンが透明又は半透明な相の形で形成する温度、を通過して、室温に冷却するまで維持される。温度が相反転温度領域(T)未満に落ちたとき、水中油型エマルジョンが得られる。
【0128】
より正確には、油/水のエマルジョンと水/油のエマルジョンの間の相反転は、温度が上昇するにつれての、伝導度の減少(ゼロになるまで)により明示される。
【0129】
このようにして、Tは、伝導度が、20℃において測定された伝導度の少なくとも90〜95%に等しい温度であり、Tは伝導度がゼロになり、油中水型エマルジョンが形成する温度である。相反転領域の平均温度がPIT(相反転温度)に該当する。
【0130】
マイクロエマルジョン(半透明な混合物)が形成する領域において、界面活性剤の系の傾向は、直接ミセル及び逆ミセルの両方を形成することができるので、親水性及び疎水性の相互作用は不安定な状態(in balance)である。界面活性剤は油中水型エマルジョンの形成を促進するので、この領域を超えて加熱することにより、W/Oエマルジョン(透明な白色の混合物)が形成する。その後に、相反転領域より下に冷却すると、エマルジョンはO/Wエマルジョンになる。
【0131】
適切な場合には、半透明な懸濁物が観察されるまで(これは新しいマイクロエマルジョンの形成に該当する)、T〜Tの間で相反転領域を巡る1以上の温度サイクルが行われてもよい。その後に、系は、予期されていた新しいマイクロエマルジョンにおける系の構造化に相当する温度において安定化される。
【0132】
一つの実施態様に従うと、段階ii)の第二のマイクロエマルジョンは、第一のマイクロエマルジョンと接触させられる前に、少なくとも1の、温度で媒介された相反転操作に付され得る。
【0133】
より特に、この相反転操作は
第二のマイクロエマルジョンの温度をその相反転温度(PIT)より上の温度Tまで上昇させて油中水型エマルジョンを得、続いて温度を温度Tまで低下させ、ここでT<PIT<Tであり、水中油型エマルジョンを再び得ること、
適切な場合には、T〜Tの間の相反転領域を巡る1以上の温度サイクルを実行すること、及び
相反転の中又は近くの温度において該系を安定化させて、相反転により得られる新しいマイクロエマルジョンを形成すること
からなる段階を少なくとも含む。
【0134】
この第二のマイクロエマルジョンを製造するために使用されることのできる油性相に関しては、これは、第一のマイクロエマルジョンのために上で示された油から形成され得る。この油性相は第一のマイクロエマルジョンを形成する油性相と同じであってもなくてもよい。
【0135】
有利に、本発明に従う方法において、2つのマイクロエマルジョンのそれぞれの油性相はトリグリセリド、脂肪酸エステル又はそれらの混合物の一つを少なくとも含む。
【0136】
有利には、第二のマイクロエマルジョンは、親油性活性剤を取り込んでいてもよい。この場合、本発明に従う方法の後に得られるナノカプセルは、その液状の脂質の核の中へ少なくとも1の親水性活性剤及び少なくとも1の脂溶性活性剤を取り込む。
【0137】
ナノカプセルの形成
上に示されたように、期待されたナノカプセルの形成は上で定義された第一のマイクロエマルジョンが第二のマイクロエマルジョンに取り込まれることを要求する。
【0138】
明らかな理由から、この段階は第一及び第二のマイクロエマルジョンを安定化された形で維持することと両立する条件下で行われる。
【0139】
より正確には、第二のマイクロエマルジョンはそのマイクロエマルジョンの構造の維持と両立する温度になければならない。一般的に安定性のこの状態は、その相反転領域の中に存在する温度、即ち60℃〜90℃、特に65℃〜85℃、最も特に70℃〜75℃、例えば約72℃、において達成される。
【0140】
従って、本発明に従う方法における好ましい実施態様に従うと、混合物のために考慮された第二のマイクロエマルジョンは、混合の間、60℃〜90℃、好ましくは65℃〜85℃、最も特に70℃〜75℃の範囲、例えば72℃、の温度にある。
【0141】
より大きい安定性の理由から、第二のマイクロエマルジョンは、相反転領域の高い範囲、即ち75℃より上の温度、特に75℃〜85℃の温度において有利に維持される。
【0142】
第二のマイクロエマルジョンのために採用された相反転温度に依存して、油中水型又は水中油型のマイクロエマルジョン構造が好まれ得る。
【0143】
少なくとも1の親水性活性剤を取り込んでいる第一のマイクロエマルジョンに関しては、このマイクロエマルジョン構造を形成するために問題となっている種々の成分を考慮に入れて、その温度は、このマイクロエマルジョン構造を達成するために要求される温度に関してもまた変動する。
【0144】
その結果、2つのマイクロエマルジョンは、両方が同じ温度又は似た温度に至らせられるか又はそれぞれ異なる温度にあることにより、互いに接触に至らせられ得る。
【0145】
本発明の文脈において、用語「似た温度」は、値が5%以下だけ互いに異なる2つの温度を意味すると理解されたい。
【0146】
このようにして、一つの特定の実施態様に従うと、本発明の課題である方法において、互いに接触に至らせられた2つのマイクロエマルジョンは同じ温度を有していてもいなくてもよい。
【0147】
第一の選択肢に従うと、問題の温度は、一般的に、第二のマイクロエマルジョンのためにマイクロエマルジョンの状態を達成するために要求される温度に近いか又はその温度でさえあるか、又はそうでなければ第二のマイクロエマルジョンの相反転温度に相当する温度でさえある。
【0148】
上述したように、第一のマイクロエマルジョンは、それ自身、より広い温度範囲にわたって製造され得るが、これは、それを形成するのに要求される成分の選択に直接的に依存する。
【0149】
このようにして、この第一のマイクロエマルジョンは20〜80℃、例えば37℃又は室温において製造され得る。
【0150】
本発明の文脈において、用語「室温」は、約25℃の温度を意味すると理解されたい。
【0151】
室温〜37℃へ変化するする温度、特に室温における実施態様は、熱に敏感な活性剤をカプセル化するためにもっとも特に有利である。
【0152】
本発明に従う方法の一つの特定の実施態様の例として、特に、親油性の界面活性剤、例えばLipoid(商標)により安定化されたLabrafac(商標)を含む油性相と、1つのプロピレングリコールを含む又は1:3の比の水/プロピレングリコール混合物を含む親水性の相とから形成された第一のマイクロエマルジョンを、水、Labrafac(商標)及びNaClから形成された第二のマイクロエマルジョンと接触に至らせることからなる方法が特に挙げられ得、ここで該第二のマイクロエマルジョンは熱に敏感な親水性界面活性剤、例えばSolutol(商標)により安定化されており、それを形成するために使用された温度は、一般的には約70℃、例えば72℃の温度である。その後に、第一のエマルジョンを65℃〜80℃、特に70℃〜75℃、例えば72℃の温度に加熱することが好ましい。この場合の2つのマイクロエマルジョンが互いに接触に至らせられるとき、該2つのマイクロエマルジョンは同じ温度又は似た温度に至らせられる。
【0153】
どのような場合であれ、熱に敏感な活性剤を含む第一のマイクロエマルジョンを第二のエマルジョンと接触させる操作は、それ自身、そのマイクロエマルジョンの構造を安定化するために例えば少なくとも65℃の温度であることを要求するが、該活性剤の安定性を害さないことに留意されたい。これは、混合段階の後、すぐに実行される冷却硬化が、この活性剤がそのような温度と接触する時間を効果的に最小限にするからである。
【0154】
本発明に従って考慮されている2つのエマルジョンの混合は、2つのマイクロエマルジョンを均一化するための機械的混合により一般的に行われる。
【0155】
有利には、本発明に従うiii)の段階で混合された2つのマイクロエマルジョンは、第二のマイクロエマルジョンを安定化するために有利な重量比を有する。
【0156】
より特に、本発明に従うマイクロエマルジョンは、第二のマイクロエマルジョンを安定化するのに有利な(第二のマイクロエマルジョン/活性剤を含む第一のマイクロエマルジョンの)重量比、特に2〜20、好ましくは3〜15、例えば約5、において互いに接触させられる。
【0157】
2つのマイクロエマルジョン又はその均一化の出現は、裸眼で観測され得る(透明な溶液)。
【0158】
このように形成された新規なマイクロエマルジョン構造は、次に本発明に従う冷却硬化段階を受ける。
【0159】
本発明に従うナノカプセルを形成するこの段階は、マイクロエマルジョンを構成する界面のフィルムを固化させるのに適する温度に、マイクロエマルジョン構造を突然に冷却することからなる。この温度は、一般的に、第二のマイクロエマルジョンの相反転温度より十分低い。有利に、冷却は磁気撹拌しながら行われる。
【0160】
例えば、1以上の活性剤を含む該マイクロエマルジョンの冷却硬化は、冷却硬化の間において第二のマイクロエマルジョンのPIT(相反転温度)より少なくとも30℃低い温度において行われ得る。
【0161】
この冷却硬化は、微細なマイクロエマルジョンに添加される2℃±1℃における脱イオン水で3倍〜10倍に媒体を希釈化することにより実行され得る。得られるナノカプセルは5分間撹拌され続ける。
【0162】
冷却硬化後のナノカプセルの形の系の組織は、透明な白色からチンダル効果で半透明の白色(青味を帯びた色合い(blueish tints))に変化する、最初の系の外観における変化により視覚的に反映される。この変化はPITより低い温度において起き、該温度は一般的にはPITより6〜15℃低い。
【0163】
本発明に従う方法が完了した後、少なくとも1の活性剤を含む、本発明に従うナノカプセルが得られる。
【0164】
本発明の文脈において、表現「活性剤を含む」は本発明に従う方法が完了した後に得られたナノ粒子が内部に本発明に従う親水性を有する少なくとも1の活性剤をその液状の脂質の核の中に含むことを意味する。
【0165】
上記の通り、本発明に従う方法は、マイクロエマルジョンの脂質の核を親水性の活性剤で容易に素早く含ませるために特に有利であり、本方法は、慣用の方法により達成されることができない。
【0166】
親水性活性剤は、親水性ミセル構造の形で、又はさもなければ少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化された油性相及び該活性剤を取り込んだ親水性相を有する、油中水の性質を有するマイクロエマルジョンの形で、脂質の核中に含まれる。
【0167】
本発明のナノカプセルは、以下の活性剤の投与のためにより特に適する:殺菌剤;たんぱく質、例えば凝固の現象に含まれるもの、ペプチド;DNAプラスミド;SiRNA;抗感染症薬、例えば殺菌剤;抗生物質;抗ガン剤;免疫抑制剤;血液脳関門を横断しなければならない中枢神経系のために意図された活性剤、例えば抗パーキンソン剤;鎮痛薬;より一般的には神経変性の疾患を治療するための活性剤。
【0168】
本発明に従うナノカプセルへの活性剤のカプセル化は、カプセル化収率を決定することにより測定され得る。
【0169】
本発明に従って得られるナノカプセルのカプセル化収率EY(%)は、配合物に添加された総活性剤に対する、ナノカプセル中に存在する活性剤の割合に相当する。
【0170】
より正確には、この収率は以下の式に従って計算される。
EY(%)=(ナノカプセル中の活性剤の量×100)/(ナノカプセル中の活性剤の量+遊離の活性剤の量)。
【0171】
本発明に従う活性剤の内在化された量(dose)は、分光学により、例えば633nmの波長における光学密度を測定する分光計を使用して測定され得る。
【0172】
有利には、EYは少なくとも1の10%、特に15〜35%、より特に35%〜100%、好ましくは35〜80%、特に40〜60%、例えば50%である。
【0173】
本発明の文脈において、用語「ナノカプセル」は、ナノ球(nanosphere)から区別されるべきである。用語「ナノカプセル」は、マトリックス粒子、即ち質量の全てが固体であるナノ球とは反対に、室温において液状又は半固体である核であって、室温において固体であるフィルムで被覆されている核から形成された粒子を意味する。従って、ナノ球が薬学的に活性な剤を含むとき、それは固体マトリックスに細かく分散される。
【0174】
有利には、本発明に従って得られるナノカプセルは、150nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満の平均流刑粒径を有する。これらの粒径は、光子相関分光学、走査電子顕微鏡、又は凝固点モードの透過型電子顕微鏡により測定され得る。
【0175】
固体フィルムの厚さは有利には、2〜10nmである。それは、粒子の直径の約10分の1でもある。この厚さは質量バランスにより計算され得るか、又は負陰影透過電子顕微鏡又は凝固点モードの透過型電子顕微鏡により視覚化され得る。
【0176】
そのサイズを考えると、本発明のナノカプセルはコロイド状の脂質粒子である。
【0177】
本発明のナノカプセルの多分散性指数は、有利に5%〜15%である。この指数は光子相関分光法により得られたサイズのヒストグラムで決定される。
【0178】
各ナノカプセルは、室温において固体又は半固体であり、室温において固体又は半固体であるシェルで被覆されている本質的に脂質である核から形成される。
【0179】
本発明の目的のために、用語「本質的に脂質」とは、本発明に従うナノカプセルを形成する核が、そのそれぞれの重量の50重量%超、特に75重量%超、特に80重量%超又は90重量%超さえ、より特に95重量%超、又は全部さえから、1以上の脂質(疎水性)化合物から形成されていることを意味する。
【0180】
本発明の文脈において、用語「室温」とは、18〜25℃の範囲の温度を意味する。
【0181】
従って、本発明は、液状の脂質の核と固体のシェルとを有し、その脂質の核の中に、親水性、特に水溶性の性質を有する少なくとも1の活性剤を含んでおり、該活性剤はその中に、少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化された油性相及び該活性剤を取り込んでいる親水性の相を有している、油中水型の性質を有するマイクロエマルジョンの形で存在するナノカプセルにもまた関する。
【0182】
一つの好ましい実施態様に従うと、その中の該活性剤は、逆ミセル系とは異なる形態である。
【0183】
本発明の課題は、該ナノカプセルを含む組成物でもある。本発明は、以下の実施例により説明され、該実施例は本発明の範囲の非制限的な例により与えられる。
【0184】
PG=プロピレングリコール
IPP=パルミチン酸イソプロピル
【0185】
実施例1:フォンダパリナックス(fondaparinux)をカプセル化した、本発明に従う第一のマイクロエマルジョンの製造
フォンダパリナックスは一般式C3143Na1049の五糖類であり、以下に相当する。
【0186】
【化1】

【0187】
水へのその溶解度は、12.5mg/ml超である(そのブランド形態Arixtra(商標)におけるフォンダパリナックスの濃度)。
【0188】
このマイクロエマルジョンを配合するために、親水性の相がプロピレングリコールのみから形成された(Patelら、J.Agric.Food Chem.2006年、第54巻、7817〜7824ページ)。マイクロエマルジョンは、油性相(Labrafac(商標)CC,C〜C10トリグリセリドの混合物)及び脂溶性界面活性剤(Lipoid(商標)S75−3)をもまた含んでいた。
【0189】
以下の一般的なプロトコルが、プロピレングリコール/Labrafac(商標)CC/Lipoid(商標)S75−3の三相ダイアグラムを作成するために採用され、マイクロエマルジョンタイプの単一相領域の特徴に到り、このダイアグラムは図3に示される。
【0190】
フォンダパリナックスは、プロピレングリコールに75℃において溶解された。それが一旦、溶解したら、Lipoid(商標)S75−3及びLabrafac(商標)CCが添加され、混合物は75℃に加熱されて、透明な相を得、該相はそれが脂質のナノカプセルに取り込まれるまで、この温度において保たれた。
【0191】
特に、185mgの油性相(Labrafac(商標))、40mgのプロピレングリコール、40mgの界面活性剤(Lipoid(商標)S75−3)及び500μgのフォンダパリナックスを混合することにより、マクロエマルジョンが形成された。
【0192】
70%の油性相、15%の親水性相、及び15%の界面活性剤から形成された270mgのマイクロエマルジョンが得られた。
【0193】
実施例2: 脂質のナノカプセル状態における実施例1のマイクロエマルジョンの形成
20mlのフラスコにおいて、504mgのSolutol(商標)HS15,44mgのNaCl,504mgのLabrafac(商標)CC及び1.538gの脱ミネラル水が混合された。60〜92℃の3回の温度サイクルが実行された。3番目の温度上昇後に、媒体は72℃に冷却された。媒体は、本発明に従う問題の第二のマイクロエマルジョンに相当する。
【0194】
この同じ温度まで加熱された、実施例1に従って得られた200μlのマイクロエマルジョン(即ち約190mg)が撹拌しながらこの第二マイクロエマルジョンに素早く一度で添加された。
【0195】
得られた混合物は透明のままであった。
【0196】
その後に、8mlの氷水を添加することにより、冷却−硬化段階が70℃において実行された。
【0197】
カプセル化されなかったフォンダパリナックスの量は、アジドAによる錯体化の分光学的方法により決定された(Cadene,M.らJ.biol.Chem.,1995年、第270巻、13204〜13209頁)。
【0198】
このようにして、これは、1グラムの脂質ナノカプセル当たり、約100μgのフォンダパリナックスの濃度、即ち約35〜40%のEY、でフォンダパリナックスをカプセル化した脂質ナノカプセルを含む配合物を与えた。
【0199】
実施例3:フォンダパリナックスを含むナノカプセルの別の配合物
第一の段階において、フォンダパリナックスをカプセル化した、本発明に従う第一のマイクロエマルジョンが実施例1に従う製造方法と同様に、製造されたが、フォンダパリナックスは3.5mgの水に予め溶解されていた。
【0200】
次に、11.5mgのプロピレングリコールが添加され、このようにして得られた極性の相は1/3の水/プロピレングリコール混合物により形成された。一度溶解されると、37.5mgのLipoid(商標)S75−3及び97.5mgのLabrafac(商標)CCもまた上記の混合物に添加された。これはすべて75℃に加熱された。手順の残りは実施例1に記載されたものと類似している。150mgのマイクロエマルジョンが得られ、これは、75℃に加熱された後、実施例2に記載されたプロトコルに従って製造された第二のマイクロエマルジョン(それ自身は72℃の温度にある)に完全に取り込まれた。
【0201】
この第一のマイクロエマルジョンに含まれるパラメーターは、実施例1に示されたものと同じである(図4)。
【0202】
実施例2に記載された操作様式のように、本発明に従う、活性剤を含む第一のマイクロエマルジョンが第二のマイクロエマルジョンに添加された。
【0203】
再現的に得られたものは、脂質ナノカプセル1g当たり、約50μgのフォンダパリナックスの濃度で、即ち15〜25%のEYで、フォンダパリナックスをカプセル化した脂質ナノカプセルからなる配合物であった。
【0204】
実施例4:フォンダパリナックスを含むナノカプセルの別の配合物
第一の段階において、フォンダパリナックスをカプセル化した、本発明に従う第一のマイクロエマルジョンが実施例1に従う製造方法と同様に、製造された。この場合、3mgのフォンダパリナックスを含んでいたが、フォンダパリナックスは水(15mg)に予め溶解されていた。
【0205】
次に、Labrafac(商標)CC(35mg)、Imwitor(商標)308(35mg)及びSpan(商標)60(15mg)が添加され、透明なマイクロエマルジョンを得るために、すべては37℃に加熱された。このマイクロエマルジョンは第二のマイクロエマルジョンに取り込まれるまで37℃において保たれた。
【0206】
第二のマイクロエマルジョンは、78℃に温度において得られたことを除いて、実施例2に記載されたプロトコルに従って製造された。
【0207】
実施例3において記載された操作様式のように、37℃において活性剤を含む第一のマイクロエマルジョン71mgが、78℃における第二のマイクロエマルジョン1gに添加された。
【0208】
これは、脂質ナノカプセル1g当たり、約3000μgのフォンダパリナックスの濃度で、即ち100%のEYで、フォンダパリナックスをカプセル化した脂質ナノカプセルを含む配合物であった。
【0209】
この量(dose)は発色性抗Xa活性分析により定量的に確認された。
【0210】
実施例5:フォンダパリナックスを含むナノカプセルの別の配合物
第一の段階において、フォンダパリナックスをカプセル化した本発明に従う第一のマイクロエマルジョンが、実施例1に記載された製造方法のように製造された。この場合には、1mgのフォンダパリナックスを使用したが、フォンダパリナックスは予め水(10mg)に溶解されていた。
【0211】
次に、Labrafac(商標)CC(37.6mg)、Tween80(商標)(40mg)及びCapmul(商標)MCM(12.5mg)が添加され、透明なマイクロエマルジョンを得るために、数時間、室温において平衡状態に保つようにすべては放置された。このマイクロエマルジョンは第二のマイクロエマルジョンに取り込まれるまで室温において保たれた。
【0212】
第二のマイクロエマルジョンは、80℃に温度において得られたことを除いて、実施例2に記載されているものに従う。
【0213】
実施例3において記載された操作様式のように、室温において活性剤を含む第一のマイクロエマルジョン83mgが72℃の温度における第二のマイクロエマルジョン1gに添加された。
【0214】
このようにして、これは脂質ナノカプセル1g当たり、約350μgのフォンダパリナックスの濃度で、即ち約35%のEYで、フォンダパリナックスをカプセル化した脂質ナノカプセルを含む配合物をもたらす。
【0215】
室温において活性剤を含む第一のマイクロエマルジョンを使用する、この製造様式は、親水性であり、熱に敏感であり、水溶性の性質を有する活性剤をカプセル化するために特に有利である。
【0216】
実施例6;フォンダパリナックスを含むナノカプセルの別の配合物
第一の段階において、フォンダパリナックスをカプセル化した、本発明に従う第一のマイクロエマルジョンが実施例1に記載された製造方法と同様に、製造された。この場合、1mgのフォンダパリナックスを使用したが、フォンダパリナックスは水(20mg)に予め溶解されていた。
【0217】
次に、Labrafac(商標)CC(37.4mg)、Tween80(商標)(35mg)及びLipoid(商標)S75(12.5mg)が添加され、実施例1に記載されたものと類似する、透明なマイクロエマルジョンを得るために、すべては75℃に加熱された。
【0218】
第二のマイクロエマルジョンは、80℃に温度において得られたことを除いて、実施例2に記載されているものに従う。
【0219】
実施例3において記載された操作様式のように、75℃において活性剤を含む第一のマイクロエマルジョン20mgが、72℃における第二のマイクロエマルジョン1gに添加された。
【0220】
このようにして、これは脂質ナノカプセル1g当たり、約100μgのフォンダパリナックスの濃度で、即ち約50%のEYで、フォンダパリナックスをカプセル化した脂質ナノカプセルを含む配合物をもたらす。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の脂質の核及び固体のシェルを有し、かつ親水性を有する少なくとも1の活性剤を含むナノカプセルを製造するために有用な方法において、
i)少なくとも1の第一のマイクロエマルジョンを用意すること、該第一のマイクロエマルジョンは油中水の性質を有し、少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化されており、その親水性相の中に親水性を有する少なくとも1の活性剤を含む、
ii)少なくとも1の第二のマイクロエマルジョンを用意すること、該第二のマイクロエマルジョンは第一のマイクロエマルジョンとは別個のものであり、エマルジョンの相反転により形成され、少なくとも1の熱に敏感な非イオン性の親水性界面活性剤により安定化されている、
iii)新しいマイクロエマルジョンの構造の形成に好都合である条件において該第一のマイクロエマルジョンを該第二のマイクロエマルジョンに添加すること、該添加において、該親水性活性剤は、第一のマイクロエマルジョンの親水性相に存在したままである、
iv)該前の段階において形成された混合物を冷却固化させてナノカプセルを得ること、該ナノカプセルは、該親水性活性剤を含み、室温において液状である脂質の核であって、かつ室温において固体であるフィルム中にカプセル化されているところの脂質の核から形成されている、
からなる段階を少なくとも含む前記方法。
【請求項2】
該方法が実行された後に、該親水性活性剤が該ナノカプセルの液状の脂質の核の中に存在している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二のマイクロエマルジョンが、混合する前に、油中水型マイクロエマルジョンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該混合物のために考慮されている第二のマイクロエマルジョンが、混合の間に、60℃〜90℃、好ましくは65℃〜85℃、最も特に70℃〜75℃、の範囲の温度、例えば72℃の温度、にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該混合物のために考慮されている第一のマイクロエマルジョンが、混合の間に、室温〜75℃の範囲の温度にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の温度。
【請求項6】
互いに接触される該2つのマイクロエマルジョンが、同じ温度を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
互いに接触される該2つのマイクロエマルジョンが、異なる温度を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
活性剤を含む第一のマイクロエマルジョンの親水相が、完全に若しくは部分的に水から、又は完全に若しくは部分的に少なくとも1の極性溶媒から、又は水/極性溶媒の混合物から形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
極性溶媒が、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、グリコフロール、低分子量ポリエチレングリコール、ポリオール、及びそれらの混合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第一のマイクロエマルジョンの親油性の界面活性剤がリン脂質に基づいている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該2つのマイクロエマルジョンのそれぞれの油性相がトリグリセリド、脂肪酸エスエル又はそれらの混合物の一つを少なくとも含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
第一のマイクロエマルジョンが、脂肪酸トリグリセリド、レシチン、ポリエチレングリコールの2−ヒドロキシステアレート誘導体、及び親水性の活性剤から少なくとも形成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第二のマイクロエマルジョンの熱に敏感な非イオン性の親水性界面活性剤が、10〜18、特に10〜16の範囲のHLBを有する親水性界面活性剤から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
親水性界面活性剤が、エトキシル化された脂肪族アルコール、エトキシル化された脂肪酸、エトキシル化された脂肪酸の部分グリセリド、脂肪酸のトリグリセリド及びそれらのエトキシル化された誘導体及びそれらの混合物から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
段階ii)の第二のマイクロエマルジョンが、第一のマイクロエマルジョンと接触させられる前に、少なくとも1の、温度で媒介された相反転操作に付される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
相反転操作が
第二のマイクロエマルジョンの温度をその相反転温度(PIT)より上の温度Tまで上昇させて油中水型エマルジョンを得、続いて温度を温度Tまで低下させ、ここでT<PIT<Tであり、水中油型エマルジョンを再び得ること、
適切な場合には、T〜Tの間の相反転領域を巡る1以上の温度サイクルを実行すること、及び
相反転の中又は近くの温度において該系を安定化させて、相反転により得られる新しいマイクロエマルジョンを形成すること
からなる段階を少なくとも含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
段階iii)のマイクロエマルジョンが、第二のマイクロエマルジョンの安定性に有利な重量比で混合される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
第二のマイクロエマルジョン/活性剤を含む第一のマイクロエマルジョンの重量比が、特に2〜20、好ましくは3〜15、例えば約5、である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
活性剤が、薬学的に活性な化合物、化粧的に活性な化合物、又は植物保護又は食品分野において活性な化合物である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法により得られることのできるナノカプセル。
【請求項21】
液状の脂質の核及び固体のシェルを有するナノカプセルにおいて、該ナノカプセルがその液状の脂質の核内に、親水性、特に水溶性、の性質を有する少なくとも1の活性剤を含んでおり、該活性剤は親水性のマイクロドメインの形で、又は少なくとも1の親油性の界面活性剤により安定化された油性相及び該活性剤を取り込んでいる親水性相を有している、油中水の性質を有するマイクロエマルジョンの形で液状の脂質の核中に存在している、前記ナノカプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−511556(P2012−511556A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540180(P2011−540180)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052500
【国際公開番号】WO2010/067037
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511142051)ユニベルシテ ダンジュ (2)
【出願人】(511142062)アンスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ レシェルシュ メディカル(アンセルム) (3)
【Fターム(参考)】