説明

脂質ブレンドおよび脂質ブレンドを含むリン脂質懸濁液の調製

【課題】リン脂質ブレンドを含む組成物の提供。
【解決手段】本発明は、脂質ブレンド、およびその脂質ブレンドを含む均一で濾過可能なリン脂質懸濁液を調製する方法を記述する。このような懸濁液は超音波用コントラスト剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、脂質ブレンド、および脂質ブレンドを含む均一で濾過可能なリン脂質懸濁液を調製する方法に関する。このような懸濁液は、超音波用コントラスト剤(ultrasound contrast agent)として有用である。
【背景技術】
【0002】
リン脂質コントラスト剤の製造は、以下の工程に分けることができる。(1)脂質ブレンドの調製、(2)脂質ブレンドを本質的に水性の媒質に水和および分散させて脂質懸濁液を生成することを伴うバルク溶液の配合(compounding)、(3)懸濁液に微生物不純物が存在しないようにしておくために、1つまたは複数の滅菌フィルターを通して該バルク溶液を濾過すること、(4)制御された無菌区域内で滅菌懸濁液を各バイアルへ分配すること、(5)分配されたバイアルを凍結乾燥チャンバーに入れて、バイアルのヘッドスペースガスをペルフルオロプロパンガス(PFP)で取り替えすること、(6)最終滅菌をするためにガス交換後に密閉したバイアルをオートクレーブに移すこと。この方法には、以下の3つの主な障害:(1)脂質ブレンドの均一性、(2)脂質ブレンドの水和、(3)懸濁液の均一性および粒径があり、(4)1つまたは複数の滅菌フィルターに通す懸濁液の滅菌濾過がある。
【0003】
リン脂質ブレンドは、通常、必要とされる脂質類を適切な水性または非水性溶媒系に溶解または懸濁し、次いで、凍結乾燥または蒸留のいずれかで体積を減らすことにより生成される。この方法により、理想的には、内容物の均一性および純度が高いブレンド固体が生成される。しかしながら、この単純なアプローチは小さな実験室規模ではうまくいくが、大量生産量までスケールアップした場合に問題のあることが多い。難題としては、(1)(溶解度が異なるため)溶媒除去工程中に内容物の均一性を維持しにくいこと、(2)純度を維持しにくいこと(水を使用した場合、加水分解副反応のために頻繁に起こる問題である)、(3)純度を上げにくいこと、(4)溶媒体積を最小にしにくいこと、および(5)最終固体を回収しにくいこと(例えば、大きなリアクターから固体をかき集めるのは実際的でない)が挙げられる。
【0004】
脂質ブレンドを製造した後に、通常、最後の配合で、このブレンドを水性媒質に導入する。リン脂質類は疎水性であり、容易に水に溶けないので、リン脂質類または脂質ブレンドを水溶液に直接添加すると、この脂質粉末は凝集して、非常に分散しにくい塊を形成する。したがって、水和プロセスを、適当な工程時間内で制御することができない。リン脂質類または脂質ブレンドを水性媒質中で直接水和させると、0.6μm〜100μmの範囲の粒子を含む濁った懸濁液が生成する。比較的大きな粒径分布のために、この懸濁液の温度が脂質類のゲル−液晶相転移温度より低い場合、この懸濁液を周囲温度で濾過することができない。脂質類はフィルター内に蓄積し、これにより流速が制限され、多くの場合、フィルターは、やがて完全に塞がれる。一般的に使用される舶用プロペラを用いて高い温度(例えば、40℃〜80℃)で長時間混合しても(例えば、6時間)、従来のバッチング方法により、懸濁液粒径のさらなる低下は達成することができない。
【0005】
高い温度での(すなわち、脂質類相転移温度より高い温度での)濾過は可能であるが、通常の濾過圧力を使用した場合、より大きな脂質粒子はかなりの量がなお排除される。一方、この滅菌濾液濃縮物の脂質含有量は、最初に脂質類がどのように水和されたかに応じてバッチごとに変わる。この脂質含有量は、出発物質の物理的特徴、例えば、形態によって決まる。
【0006】
脂質類または脂質ブレンドを直接水和して均一な懸濁液を生成し、そして1つまたは複数の滅菌フィルターに通して懸濁液を濾過する方法は、例えば、20Lを超える任意の適度な工業規模にスケールアップするには、困難でありかつ費用がかかり得る。
【0007】
したがって、本特許請求の範囲に記載された、脂質ブレンドを製造する方法、およびそれに続くリン脂質懸濁液は、既存の装置を大幅に改変またはカスタム化することなく容易にスケールアップでき種々の製造施設に適合させることのできる実際的な方法を提供することにより、上記問題を解決することを目的としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、脂質ブレンドを調製する新規の方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、前記脂質ブレンドからリン脂質懸濁液を調製する新規の方法を提供することである。
【0010】
これらの目的およびその他の目的は、以下の詳細な説明を読めば明らかになるはずであり、脂質ブレンドを水溶液に導入する前に適切な非水性溶媒に溶解することによりリン脂質懸濁液が生成できるという、本発明者らの発見により達成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]したがって、第1の実施形態において、本発明は、
(1)脂質ブレンドを非水性溶媒と接触させ、それにより該脂質ブレンドが該非水性溶媒に実質的に溶解する工程と、
(2)工程(1)の溶液を水溶液と接触させて、脂質懸濁液を形成する工程とを含む、リン脂質懸濁液を調製する新規の方法を提供する。
【0012】
[2]好ましい実施形態において、前記非水性溶媒は、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびポリエチレングリコール300から選択される。
【0013】
[3]より好ましい実施形態において、前記非水性溶媒はプロピレングリコールである。
【0014】
[4]別の好ましい実施形態において、前記脂質ブレンドは、
(a)1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン、
(b)1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩、および
(c)N−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩を含む。
【0015】
[5]別の好ましい実施形態において、工程(1)において、前記脂質ブレンドと接触させる前に、前記非水性溶媒は約30〜70℃の温度に加熱される。
【0016】
[6]別のより好ましい実施形態において、前記脂質ブレンドと接触させる前に、前記非水性溶媒は約50〜55℃の温度に加熱される。
【0017】
[7]別の好ましい実施形態において、脂質ブレンドと非水性溶媒の比は、非水性溶媒1mLあたり脂質ブレンド約5mgから約15mg/mLである。
【0018】
[8]別のより好ましい実施形態において、脂質ブレンドと非水性溶媒の比は、約10mg/mLである。
【0019】
[9]別の好ましい実施形態において、工程(2)において、前記水溶液は、水、食塩水、食塩水/グリセリン混合物、および食塩水/グリセリン/非水性溶媒混合物から選択される。
【0020】
[10]別のより好ましい実施形態において、前記水溶液は、食塩水とグリセリンの混合物である。
【0021】
[11]別のより好ましい実施形態において、前記水溶液は、食塩水、グリセリン、およびプロピレングリコールの混合物である。
【0022】
[12]別のより好ましい実施形態において、6.8mg/mLの塩化ナトリウムが存在し、0.1mL/mLのグリセリンが存在し、0.1mL/mLのプロピレングリコールが存在し、約0.75〜1.0mg/mLの脂質ブレンドが存在する。
【0023】
[13]さらに好ましい実施形態において、0.75mg/mLの脂質ブレンドが存在する。
【0024】
[14]別のより好ましい実施形態において、1.0mg/mLの脂質ブレンドが存在する。
【0025】
[15]別の好ましい実施形態において、工程(2)において、工程(1)の溶液と接触させる前に、前記水溶液は約45〜60℃の温度に加熱される。
【0026】
[16]別のより好ましい実施形態において、工程(1)の溶液と接触させる前に、前記水溶液は約50〜55℃の温度に加熱される。
【0027】
[17]別の好ましい実施形態において、前記方法は、
(3)該工程(2)の脂質懸濁液を、該懸濁物中に存在する脂質類の最も高いゲル−液晶相転移温度とほぼ等しい温度か、またはそれより高い温度に加熱する工程をさらに含む。
【0028】
[18]別のより好ましい実施形態において、工程(3)において、前記脂質懸濁液は、少なくとも約67℃の温度に加熱される。
【0029】
[19]別のより好ましい実施形態において、前記方法は、
(4)前記脂質懸濁液を滅菌フィルターに通して濾過する工程をさらに含む。
【0030】
[20]別のさらに好ましい実施形態において、工程(4)において、前記濾過は、2つの滅菌フィルターカートリッジを用いて行われる。
【0031】
[21]別の好ましい実施形態において、工程(4)において、前記滅菌フィルターカートリッジは約70〜80℃の温度である。
【0032】
[22]別のさらに好ましい実施形態において、工程(4)において、0.2μm親水性フィルターが使用される。
【0033】
[23]別のさらに好ましい実施形態において、前記方法は、
(5)工程(4)の濾過溶液をバイアルに分配する工程をさらに含む。
【0034】
[24]別のさらに好ましい実施形態において、前記方法は、
(6)工程(5)のバイアルのヘッドスペースガスをペルフルオロカーボンガスで取替える工程をさらに含む。
【0035】
[25]別のさらに好ましい実施形態において、前記ペルフルオロカーボンガスはペルフルオロプロパンである。
【0036】
[26]別のさらに好ましい実施形態において、前記ヘッドスペースガスの交換は、凍結乾燥チャンバーを用いて行われる。
【0037】
[27]別のさらに好ましい実施形態において、前記方法は、
(7)工程(6)のバイアルを滅菌する工程を含む。
【0038】
[28]さらに好ましい実施形態において、工程(7)において、前記バイアルは、約126〜130℃で、1〜10分間滅菌される。
【0039】
[29]第2の実施形態において、本発明は、
(a)少なくとも2つの脂質類を第1の非水性溶媒と接触させる工程と、
(b)該溶液を濃いゲルにまで濃縮する工程と、
(c)該濃いゲルを第2の非水性溶媒と接触させる工程と、
(d)得られる固体を収集する工程と、
を含む、脂質ブレンドを調製する新規の方法を提供する。
【0040】
[30]好ましい実施形態において、工程(a)において、前記脂質は、
(i)1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン;
(ii)1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩;および
(iii)N−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩である。
【0041】
[31]別の好ましい実施形態において、工程(a)において、前記第1の非水性溶媒は、メタノールとトルエンの混合物である。
【0042】
[32]別の好ましい実施形態において、工程(c)において、前記第2の非水性溶媒は、メチルt−ブチルエーテルである。
【0043】
[33]別の好ましい実施形態において、工程(a)において、前記溶液は、前記脂質類を前記溶媒に完全に溶解するのに十分な温度に温められる。
【0044】
[34]別のより好ましい実施形態において、工程(a)において、前記溶液は約25〜75℃に温められる。
【0045】
[35]別の好ましい実施形態において、工程(d)において、前記収集される固体はメチルt−ブチルエーテルで洗浄され、真空中で乾燥される。
【0046】
[36]第3の実施形態において、本発明は、
(a)懸濁液1mLあたり約0.75〜1.0mg量の脂質ブレンド、
(b)懸濁液1mLあたり約6.8mg量の塩化ナトリウム、
(c)懸濁液1mLあたり約0.1mL量のグリセリン、
(d)懸濁液1mLあたり約0.1mL量のプロピレングリコール、および
(e)水
を含む新規なリン脂質懸濁液であって、該懸濁液が、
(1)脂質ブレンドを非水性溶媒と接触させ、それにより該脂質ブレンドが該非水性溶媒に実質的に溶解する工程と、
(2)工程(1)の溶液を水溶液と接触させて、脂質懸濁液を形成する工程と、
(3)該工程(2)の脂質懸濁液を、該懸濁液に存在する脂質類の最も高いゲル−液晶相転移温度とほぼ等しい温度か、またはそれより高い温度に加熱する工程と、
(4)該脂質懸濁液を滅菌フィルターに通して濾過する工程と
を含む前記方法により調製される、リン脂質懸濁液を提供する。
【0047】
[37]別の好ましい実施形態において、前記脂質ブレンドは、
(a)1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン、
(b)1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩、および
(c)N−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩を含む。
【0048】
[38]別のより好ましい実施形態において、前記脂質と接触させる前に、前記非水性溶媒は約50〜55℃の温度に加熱される。
【0049】
[39]別のより好ましい実施形態において、前記脂質ブレンドと非水性溶媒の比は約10mg/mLである。
【0050】
[40]別のより好ましい実施形態において、前記水溶液は、食塩水、グリセリン、およびプロピレングリコールの混合物である。
【0051】
[41]さらに好ましい実施形態において、0.75mg/mLの脂質ブレンドが存在する。
【0052】
[42]別のより好ましい実施形態において、工程(1)の溶液と接触させる前に、前記水溶液は約50〜55℃の温度に加熱される。
【0053】
[43]別のより好ましい実施形態において、工程(3)において、前記脂質懸濁液は少なくとも約67℃の温度に加熱される。
【0054】
[44]別のさらに好ましい実施形態において、工程(4)において、2つの0.2μm親水性フィルターが使用される。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(処方)
本発明は、少なくとも、マルチグラム(multigram)規模、キログラム規模、マルチキログラム(multikilogram)規模、または工業規模で実施することを企図する。本明細書中で使用するマルチグラム規模は、好ましくは、少なくとも1つの出発物質が10グラム以上、好ましくは少なくとも50グラム以上、さらに好ましくは少なくとも100グラム以上の規模である。本明細書中で使用するマルチキログラム規模とは、少なくとも1つの出発物質を2キログラム以上使用する規模を意味するものとする。本明細書中で使用する工業規模とは、実験室規模以外の規模であり、臨床試験または消費者への販売いずれかに十分な製品を供給するのに十分な規模を意味するものである。
【0056】
本明細書中で使用する脂質ブレンドまたはリン脂質ブレンドとは、混合されている2つ以上の脂質類を表すものである。この脂質ブレンドは、一般的に、粉末形態である。好ましくは、脂質類のうちの少なくとも1つはリン脂質である。好ましくは、この脂質ブレンドは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩(DPPA)、およびN−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩(MPEG5000−DPPE)を含む。このブレンド中に存在する各脂質の量は所望の最終産物に依存する。各脂質の好ましい比は、実施例の部分に記載されている。その内容を本明細書中に参考として援用する、Ungerら、米国特許第5,469,854号に記載の脂質類のような種々の他の脂質も本発明において使用することができる。
【0057】
本明細書中で使用するリン脂質は、極性(親水性)リン酸頭部基を有する1つまたは複数の油性(疎水性)炭化水素鎖を含む、脂肪物質である。リン脂質類は両親媒性である。これらは、自然に、水性媒質中で境界および閉じた小胞を形成する。リン脂質類は、動物細胞形質膜の質量の約50%を構成する。
【0058】
(脂質ブレンドの調製)
脂質ブレンドは、水溶液懸濁−凍結乾燥方法または有機溶媒を用いた有機溶媒溶解−沈殿方法により調製することができる。水溶液懸濁−凍結乾燥方法では、所望の脂質類を高温の水に懸濁し、次いで、凍結乾燥により濃縮する。好ましくは、溶解の手順を用いる。
【0059】
工程(a):
有機溶媒溶解−沈殿手順では、所望の脂質類(例えば、DPPA、DPPC、およびMPEG5000 DPPE)を第1の非水性溶媒系と接触させる。この系は、通常、溶媒の組み合わせ、例えば、CHCl3/MeOH、CH2Cl2/MeOH、およびトルエン/MeOHである。好ましくは、第1の非水性溶媒は、トルエンおよびメタノールの混合物である。この脂質溶液を、完全に溶解する十分な温度に温めることが望ましい。このような温度は、好ましくは約25〜75℃、より好ましくは約35〜65℃である。
【0060】
溶解後、熱濾過するか、または周囲温度に冷却して次いで濾過することにより、溶解しなかった異物を除去することが所望され得る。既知の濾過法を使用することができる(例えば、重力濾過法、減圧濾過法、または加圧濾過法)。
【0061】
工程(b):
次いで、上記の溶液を濃縮して濃い(thick)ゲル/半固体にする。好ましくは、減圧蒸留により濃縮する。ロータリーエバポレーションなどの他の溶液濃縮方法も使用することができる。この工程の温度は、好ましくは約20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。
【0062】
工程(c):
次いで、濃いゲル/半固体を第2の非水性溶媒に分散させる。この混合物を、好ましくは、周囲温度に近い温度(例えば、15〜30℃)でスラリーにする。
有用な第2の非水性溶媒は、脂質類を濾過溶液から沈殿させる溶媒である。好ましくは、第2の非水性溶媒はメチルt−ブチルエーテル(MTBE)である。他のエーテル類およびアルコール類を使用することもできる。
【0063】
工程(d):
次いで、第2の非水溶性溶媒を添加する際に生成した固体を収集する。好ましくは、この収集した固体を、第2の非水性溶媒(例えば、MTBE)でさらに洗浄する。好ましくは周囲温度で、減圧濾過または遠心分離により収集することができる。収集後、この固体は約20〜60℃の温度で真空中で(in vacuo)乾燥することが好ましい。
【0064】
以下の理由により、有機溶媒溶解−沈殿方法は水溶液懸濁/凍結乾燥方法よりも好ましい。
【0065】
(1)脂質類がトルエン/メタノールに非常に溶けるので、(水溶液手順と比較して)溶媒体積は著しく少ない。
【0066】
(2)このように溶解度が高いため、工程温度も水溶液手順に比べて低く、そのため脂肪酸エステルの加水分解不安定性が回避される。
【0067】
(3)冷却して室温に戻した時に、このトルエン/メタノール脂質溶液は均一なままであり、固形異物を除去する室温濾過が可能である。
【0068】
(4)MTBE沈殿により、脂質ブレンド固体を迅速かつ容易に単離できる。
水溶液方法では、時間のかかる凍結乾燥方法を使用して材料を単離する。
【0069】
(5)MTBE沈殿はさらに、任意のMTBE可溶性不純物を除去できる。この不純物は濾液廃水流に入る。溶液を直接固体に濃縮または凍結乾燥した場合、このような不純物除去は実現できない。
【0070】
(6)本方法により均一な固体が生成される。
【0071】
(脂質懸濁液の調製)
工程(1):
工程1では、脂質ブレンドを非水性溶媒と接触させ、それにより脂質ブレンドは非水性溶媒に実質的に溶解する。あるいは、以下の順:DPPC、DPPA、およびMPEG5000−DPPE;DPPC、MPEG5000−DPPE、およびDPPA;MPEG5000−DPPE、DPPA、およびDPPCで個々の脂質類を順次非水性溶媒と接触させることができる。脂質類のうちDPPAは最も溶けにくく最も少ないので、最初に添加しない。DPPAを添加する前またはそれと同時に他方の脂質類の1つを添加することにより、DPPAの溶解が容易になる。別の代替方法では、個々の脂質類を固形形態で組み合せ、その固体の組み合わせを非水性溶媒と接触させることができる。
【0072】
一般的に、脂質ブレンドおよび非水性溶媒の混合物が透明になったときに、実質的に溶解したと分かる。前述したように、一般的に、リン脂質類は水溶性でない。したがって、リン脂質ブレンドを水環境に直接導入すると、この脂質ブレンドは凝集して、非常に分散しにくい塊を形成する。本発明は、脂質ブレンドを水溶液に導入する前に非水性溶媒に溶解することでこの制限を克服する。これにより脂質ブレンドを液体に均一に分散させることができる。次いで、この液体分散物を、所望の水環境に導入することができる。
【0073】
非水性とは、存在する水の量が脂質ブレンド溶解を妨げないくらいに十分に少ない、1種類の溶媒または溶媒混合物を意味するものとする。必要とされる非水性溶媒の量は脂質ブレンドの溶解度に依存し、各成分の所望の最終濃度にも依存する。当業者が理解するように、非水性溶媒中に存在し許容され得る水の割合は、脂質ブレンド中の個々の脂質類の水溶解度に基づいて変化する。個々のリン脂質類が水溶性であるほど、工程(1)で存在することができる水は多くなる。好ましくは、プロピレングリコールを非水性溶媒として使用する。しかしながら、ポリオールファミリーのうち、エチレングリコールやポリエチレングリコール300などの他のメンバーを使用することができる。
【0074】
完全に溶解するには、脂質ブレンドおよび非水性溶媒を機械的に混合することが必要であり得る。種々の混合方法が利用可能であることは当業者に理解されよう。高剪断ホモジナイザーを使用することが好ましい。
【0075】
溶媒温度上昇が脂質ブレンドを溶解する助けとなることは当業者に理解されよう。工程(1)を実施することができる温度には、周囲温度から選択した溶媒の沸点までの範囲が可能である。この温度は、好ましくは約30〜約70℃であり、より好ましくは約45〜約60℃であり、さらにより好ましくは約50、51、52、53、54、または55℃である。エチレングリコールまたはポリエチレングリコール300を使用した場合、この温度は、約50〜約60℃であることが好ましく、より好ましくは約55℃である。溶液を高温で維持すると、溶液粘度が減少し、処方物の調製が容易になるはずである。
【0076】
脂質ブレンドを溶解する好ましい手順は、以下の通りである。(a)プロピレングリコールを適切な秤量容器に添加する。(b)プロピレングリコールを加熱浴中で約40〜80℃に温める。(c)脂質ブレンドを秤量して別々の容器に入れる。(d)プロピレングリコールが所望の温度範囲に達したら、この溶液を、脂質ブレンドを含む容器に移す。(e)溶液が透明になるまで、この容器を加熱浴に戻す。(f)脂質ブレンド/プロピレングリコール溶液を機械的に混合して、さらに確実に、脂質ブレンドを完全に溶解および均一に分散させる。
【0077】
脂質ブレンドと非水性溶媒の比は、もちろん、脂質ブレンドの溶解度により制限される。この比は、最終処方物中の所望の脂質ブレンド量によっても影響される。好ましくは、この比は、溶媒1mLあたり脂質ブレンド約1mg(mg/mL)〜100mg/mLである。より好ましくは、脂質ブレンドは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15mg/mLで存在する。さらにより好ましくは、脂質ブレンドは約10mg/mLで存在する。
【0078】
工程(2):
第2の工程では、工程(1)の溶液を水溶液と接触させて、脂質懸濁液を形成する。水溶液は、水、食塩水、食塩水/グリセリン混合物、または食塩水/グリセリン/非水性溶媒混合物とすることができる。非水性溶媒は上記で定義されたとおりであり、好ましくはプロピレングリコールである。本明細書中で使用する懸濁液とは、不溶性粒子が液体媒質中に分散している分散液(dispersion)を表すものとする。
【0079】
脂質ブレンドを完全に溶解したら(工程(1))、得られた溶液を水溶液に導入することができる。水溶液は、塩化ナトリウム、グリセリン、および非水性溶媒から選択された1つまたは複数の成分を含むことができる。水溶液は、グリセリンおよび塩化ナトリウムを含むことが好ましい。所望の最終濃度のプロピレングリコールを達成するために、工程1の溶液を添加する前に、水溶液中に十分な量のプロピレングリコールが存在することが好ましい。
【0080】
所望の成分を添加する順序は、得られる脂質懸濁液に重大な影響を与えると思われない。しかしながら、脂質ブレンド溶液を、水に添加することが好ましい。
この水には上記の追加成分をすでに含有していてもよい。次いで、所望の追加成分を添加することができる。脂質ブレンド溶液を水および塩化ナトリウムの溶液(すなわち食塩水)に添加することがより好ましい。脂質ブレンド溶液を、水、塩化ナトリウム、およびグリセリンの溶液に添加することがさらに好ましい。脂質ブレンド溶液を、水、塩化ナトリウム、グリセリン、およびプロピレングリコールの溶液に添加することがなおさらに好ましい。
【0081】
処方物1mLあたり6.8mgのNaClが存在することが好ましい。処方物1mLあたり0.1mLのグリセリンが存在することが好ましい。処方物1mLあたり0.1mLのプロピレングリコールの最終濃度が好ましい。処方物の最終pHは、好ましくは約5.5〜7.0である。脂質ブレンドは、処方物1mLあたり0.75〜1.0mg量で存在することが好ましい。
【0082】
水溶液の温度は、周囲温度から70℃までの範囲で変動が可能である。温度は、好ましくは約45〜60℃であり、50、51、52、53、54、または55℃がさらにより好ましい。完全に溶解するために混合物をかき混ぜる、好ましくは攪拌する必要がある。さらに溶液pHは、所望の最終処方物に応じて調節する必要があってもよい。酸(例えば、HCl)または塩基(例えば、NaOH)のいずれかを添加して、このような調節を行うことができる。
【0083】
脂質懸濁液は、種々の大きさの液体粒子を含む。本発明の利点の1つは、ほぼ均一な大きさの小さな粒子が一貫して得られることである。したがって、得られる粒子の大部分は直径100nm未満であることが好ましく、50nm未満であることがより好ましい。
【0084】
脂質ブレンドを溶解する好ましい手順は、以下の通りである。(a)注射用蒸留水(WFI)を配合容器に添加する。(b)混合を開始し、確実に温度を50〜55℃にする。(c)塩化ナトリウムを配合容器に添加する。固体が完全に溶解するまで待ってから、次の工程に移る。(d)グリセリンを配合容器に添加する。完全に混合するのに十分な時間を見越しておく。(e)脂質ブレンド/プロピレングリコール溶液中にない残りのプロピレングリコールを添加する。完全に混合するのに時間を見越しておく。(f)混合速度を下げて、配合容器中の乱流を少なくする。(g)脂質ブレンド/プロピレングリコール溶液を配合容器に添加する。(h)混合を最初の速度に再調節する。(i)必要であれば、追加のWFIを添加する。(j)約25分間混合し続け、確実に完全に混合する。(k)溶液を確認し、標的pHに調節する。
【0085】
工程(3):
工程3では、工程(2)で得られた脂質懸濁液を、該溶液中に存在する脂質類の最も高いゲル−液晶相転移温度とほぼ等しい温度か、またはそれより高い温度に加熱する。
【0086】
この工程の目的の1つは、濾過可能な懸濁液を提供することである。溶液/懸濁液は、通常工程内での流速が著しく減少せず、濾過系における圧力低下が著しくは増大しない場合に、濾過可能であるとみなされる。
【0087】
実験データから、滅菌濾過を簡単にするために、処方物中の脂質類がそれらのゲル−液晶相転移温度以上であるべきことが示される。脂質類が相転移温度より低い場合、懸濁液の粒子は剛性である。しかしながら、脂質類がそれぞれのゲル−液晶相転移温度より高い場合、それらはよりゆるやかに構成された立体配置をとり、したがって、より簡単に濾過される。
【0088】
DPPCおよびDPPAは、それぞれ41℃および67℃で相転移を示す。MPEG5000−DPPEは水に溶け、したがってゲル−液晶相転移を示さない。これは非常に水和した脂質懸濁液の特徴である。好ましい処方物中の脂質類は全て異なるゲル−液晶相転移を示すので、好ましくは、その最の高い相転移温度である67℃を用いて溶液を濾過する。温度を67℃以上に維持することで、脂質類は全てそれぞれの相転移を超えており、フィルターを通過する間、ゆるやかな立体配置をとることを確実にする。
【0089】
配合容器に熱交換コイルを被せることで加熱することができる。制御された供給源(例えば、温水槽または給湯装置)からの温水/熱蒸気により、配合溶液を設定温度に維持するのに十分な熱が送達される。当業者に公知の他の熱源もまた使用することができる。
【0090】
工程(4):
工程4は、脂質懸濁液を滅菌フィルターに通して濾過することにより行われる。本工程の目的は、実質的に細菌を含まない懸濁液を提供することである。この濾液は、少なくとも1つのコロニーを形成する微生物を含む濾液の確率が10-6未満である場合、実質的に細菌を含まないとみなされる。
【0091】
好ましくは、滅菌フィルターカートリッジを用いて濾過する。さらに、溶液をフィルターに強いて通す手段も必要とされ得る(例えば、揚水または加圧)。濾過される溶液は、この溶液中に存在する脂質類の最も高いゲル−液晶相転移温度以上の温度に維持する必要があるので、このほぼ同じ温度で濾過すべきである。
これを達成するために、好ましくは、フィルター(例えば、滅菌フィルターカートリッジ)は、例えば、温度制御水槽からの温水流により連続的に加熱される被覆付きフィルターハウジング内に入れる。この温水流により、懸濁液を確実に脂質相転移温度より高くする。滅菌フィルターの温度は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80℃である。
【0092】
1つまたは複数の滅菌フィルターを使用して、懸濁液を濾過することができる。必要とされる数は、除去細菌に対する滅菌フィルターの有効性に基づく。2つのフィルターを使用することが好ましい。細菌を含まない懸濁液を提供する必要があるため、フィルター孔径には限りがある。好ましくは、0.2μm親水性フィルターを使用する。
【0093】
好ましい処方物のバルク溶液を、2つの0.2μm親水性フィルターに通して、3時間まで1分あたり約1リットル(1L/分)の速度で連続的に濾過した。
すなわち、計180リットルの懸濁溶液をフィルターに通した。実験結果から、フィルターの明らかな閉塞はないことがわかる。脂質アッセイにより、濾過プロセス中に、(フィルター基材内での蓄積による)測定可能な損失はないことが示される。
【0094】
好ましい処方物のバルク溶液を40℃〜80℃で配合し、滅菌濾過前に、懸濁液を周囲温度に冷却した。フィルターの明らかな目詰まりは観察されなかった。
このことから、懸濁液粒径分布がフィルター孔径の0.2μmよりかなり小さいことが指摘される。滅菌濾液中の脂質ブレンドを最大限回収するには(すなわち、フィルター基材内での潜在的な脂質粒子保持を最小にするには)、濾過中に熱を用いることが望ましい。
【0095】
脂質懸濁液を濾過する好ましい手順は、以下の通りである。(a)被覆付きフィルターを全て確実に70℃〜80℃にする。(b)濾過ユニット内の弁を全て確実に閉じる。(c)濾過吸込ホースを配合容器の吸出し口に接続する。(d)弁を開いて、溶液をフィルターに通過させる。(e)3リットルの溶液をフラッシュしてフィルターに通した後、濾液を収集する。(f)完全に濾過するまで濾過を続ける。
【0096】
工程(5):
濾過した溶液をバイアルに分配することで工程5が完了する。好ましくは、本工程は、制御された無菌区域において行われる。選択されるバイアルおよびこのバイアルに送達される懸濁液の量は脂質懸濁液について考慮される最終用途に依存することが、当業者に理解されよう。ピペット、手持ち型注射分配器(例えば、Filamatic(登録商標)注射分配器)、または工業用自動分配機(例えば、CozzoliもしくはTL自動充填機)など、種々の方法により分配することができる。
【0097】
工程(6):
工程6は、工程5のバイアルのヘッドスペースガスをペルフルオロプロパンガスで取替えることにより行われる。好ましい交換方法は、分配されたバイアルを凍結乾燥チャンバーに入れ、バイアルのヘッドスペースガスをペルフルオロプロパンガスと取替えることである。好ましいガスは、ペルフルオロプロパン(PFP)である。当業者に既知の他のヘッドスペースガス交換方法を使用することができる。
【0098】
バイアルヘッドスペースガス交換サイクルの完了時に、バイアルを密閉する。
凍結乾燥チャンバーにPFPを充填することで、凍結乾燥チャンバー圧を大気圧に戻す。バイアルの栓を取り付けて、バイアルを密閉する。
【0099】
工程(7):
工程7では、工程6の後にバイアルを最終滅菌する。最終滅菌する1つの方法は、オートクレーブを使用する方法である。密閉したバイアルを蒸気滅菌器内で最終滅菌して、生成物の滅菌確実性をさらに高めることもできる。オートクレーブの結果として脂質分解がいくらか観察されることがあるので、滅菌過程では注意しなければならない。好ましくは、バイアルを、約126〜130℃で1〜10分間滅菌する。
【0100】
本発明の他の特徴は、例示的な実施形態についての以下の説明の中で明らかになるであろう。この説明は、本発明を例示するために示したものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0101】
表1:脂質ブレンド標的組成物

【0102】

【0103】
フラスコに、トルエン(3.3L)、メタノール(1.2L)、DPPA(59.6g)、DPPC(535g)、およびMPEG5000 DPPE(405g)を充填する。固体が接触している面を0.9Lのメタノールですすいだ後、溶解が完了するまで、スラリーを45〜55℃に温める。
【0104】
溶液を濾過し、次いで、35〜45℃、真空下で濃縮して濃いゲルにする。メチルt−ブチルエーテル(MTBE、5.4L)を添加し、その混合物を15〜30℃でスラリーにする。白色固体を遠心分離または減圧濾過により収集し、MTBE(0.9L)で洗浄する。次いで、固体を真空オーブンに入れ、40〜50℃で一定量となるまで乾燥させる。乾燥した脂質ブレンドを瓶に移し、−15〜−25℃で貯蔵する。
【0105】
本発明の脂質ブレンド製造手順の別の実施形態では、以下の手順も使用することができる。
【0106】

【0107】
分析証明書の「Use As」値に基づく純度にあわせてリン脂質量を調節した。本実験のバッチサイズ(リン脂質重量を合わせたもの)は2kgであった。
【0108】
ロータリーエバポレーションフラスコに、トルエン(3,300mL)、メタノール(1,200mL)、DPPA(122.9g;「Use As」純度97.0%に合わせて補正した)、DPPC(計1,098.5g;500.8gは98.4%「Use As」純度のロットに由来し、597.7gは、96.7%「Use As」純度のロットに由来する)、およびMPEG5000 DPPE(「Use As」純度99.3%に合わせて補正した)を順次に入れる。残留固体をメタノール(900mL)ですすいでフラスコに流した後、このフラスコをロータリーエバポレーター(減圧なし)に置き、スラリーを45〜55℃(外温)に温める。溶解が完了した後、外温を35〜45℃に下げ、減圧をかけ、溶液を半固体まで濃縮する。フラスコをエバポレーターから取り外し、固体をスパチュラで粉砕する。フラスコをエバポレーターに再びかけ、濃縮を続ける。終点に達した後(最終減圧220mbar;顆粒状で粗い白色固体)、ロータリーエバポレーター添加チューブに通してMTBE(5,400mL)を添加し、減圧を中止し、混合物を15〜30℃で15〜45分間スラリーにする。固体を、遠心濾過または減圧濾過のいずれかにより単離し、MTBE(3,800mL)ですすぎ、真空オーブン(40〜50℃)内で一定量となるまで乾燥させる。ポリプロピレンキャップ付きポリエチレン瓶に移す前に、固体を、ふるい(0.079インチ(約0.2cm)メッシュ)に通して粉砕し、白色固体として1,966.7g(98%)の脂質ブレンド(SG896)を得る。
【0109】
好ましい脂質懸濁液は、
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩(DPPA)、
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、
N−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩(MPEG5000−DPPE)、
ポリエチレングリコール、USP、
グリセリン、USP、
塩化ナトリウム、USPおよび
注射用蒸留水、USPを含有する。
【0110】
表2 好ましいコントラスト剤処方物

*処方物Aは1mg/mLの脂質ブレンドを有する。処方物Bは0.75mg/mLの脂質ブレンド濃度を有する。
**脂質ブレンドは、53.5wt%のDPPC、6.0wt%のDPPA、および40.5wt%のMPEG5000−DPPEからなる。
【0111】
表3 好ましい容器およびクロージャー

【0112】
完成生成物の充填量は、1.0〜2.0mL/バイアルが可能である。
【0113】
好ましい処方物の調製では、脂質ブレンドを、注射用蒸留水、塩化ナトリウム、グリセリン、およびプロピレングリコールを含むマトリクス水溶液で直接水和する場合、濾液の脂質類は、濾過前バルク溶液と比較して少ない。脂質類の損失は12%〜48%で変化する。これらの結果から、滅菌濾過方法は有効に制御されておらず、したがって、最終生成物の脂質含有量は非常に変化することが証明される。
【0114】
対照に、本明細書中に記載の方法を用いると、脂質類のアッセイ結果から、この濾過方法間に脂質類が完全に回収されることがわかる。理論標的に関するアッセイ結果の変量は、通常アッセイ方法による変量の範囲内である。最初に脂質ブレンドをプロピレングリコールに溶解することで調製された懸濁液の、数、体積、および反射強度による粒径分布から、粒子の大部分は、55℃の濾過前バルク溶液中で50nm未満であり、70℃の濾過前バルク溶液中でも同様であることが指摘される。この粒子分布プロフィールは濾過後に変化しない。
【0115】
(有用性セクション)
本特許請求の範囲に記載される方法は、超音波用コントラスト剤を調製するのに有用である。このような薬剤は、超音波心臓検査用超音波画像や放射線超音波画像におけるコントラスト増強を含む、種々の画像化用途に有用であろう。
【0116】
上記の教示を考慮すれば、本発明の非常に多くの変更および変形が可能であることは明らかである。したがって、本発明は、付属の特許請求の範囲の範囲内で、本明細書中に詳細に記載されたものと別の方法でも実施できることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、N−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩(MPEG5000−DPPE)、塩化ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、及び水を含む組成物。
【請求項2】
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、及びN−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩(MPEG5000−DPPE)が、約0.75〜1.0mg/mLで存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
塩化ナトリウムが、約6.8mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
グリセリンが、約0.1mL/mLの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
プロピレングリコールが、約0.1mL/mLの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
さらにペルフルオロカーボンガスを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペルフルオロカーボンガスが、ペルフルオロプロパンであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、及びN−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩(MPEG5000−DPPE)が、10%対82%対8%のモル比で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
(a)約0.75〜1.0mg/mLの量で存在する、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、及びN−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩(MPEG5000−DPPE);
(b)約6.8mg/mLの量で存在する、塩化ナトリウム;
(c)約0.1mL/mLの量で存在する、グリセリン;及び
(d)約0.1mL/mLの量で存在する、プロピレングリコール、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸一ナトリウム塩(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、及びN−(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン一ナトリウム塩(MPEG5000−DPPE)が、10%対82%対8%のモル比で存在することを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
さらにペルフルオロカーボンガスを含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ペルフルオロカーボンガスが、ペルフルオロプロパンであることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ペルフルオロカーボンガスと一緒に用いての、超音波用コントラスト剤としての、請求項1の組成物の使用。
【請求項14】
ペルフルオロカーボンガスと一緒に用いての、超音波用コントラスト剤としての、請求項9の組成物の使用。

【公開番号】特開2012−211184(P2012−211184A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−160628(P2012−160628)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2000−539875(P2000−539875)の分割
【原出願日】平成11年1月14日(1999.1.14)
【出願人】(509329903)ランサス メディカル イメージング インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】