説明

脂質ベースの医薬化合物の製造のための水性系、その組成物、方法、および使用

本発明は、有機溶媒を含まない水性系を使用して、脂質と複合化される活性化合物を製造する方法と、例えば、被験体の疾患を治療する際に該複合体を使用する方法と、に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、ポリエン抗生物質、タクロリムス等の免疫抑制剤、またはタキサンもしくはタキサン誘導体といった、少なくとも1つの活性化合物と、1つ以上の脂質とを含む、複合体を含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの活性化合物と少なくとも1つの脂質とを含む脂質複合体を含む組成物を製造すること、該組成物を被験体に投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、被験体は、哺乳類である。ある特定の好ましい実施形態では、被験体は、ヒトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年10月10日出願米国仮出願第60/850,446号、および2007年8月21日出願米国仮出願第60/957,022号の両方の優先権を主張するものであって、それぞれ、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、活性成分または化合物、例えば、医薬化合物と、例えば、複合体、ミセル、乳剤、リポソームまたは脂質粒子、ならびにミセルおよびベシクルの混合物を含む、脂質とを含む、組成物に関する。さらに、本発明は、その製造方法と、疾患の治療の際の使用とに関する。いずれかの特定の活性成分を制限する目的としてではなく、一例として、いくつかの実施形態では、本発明は、デオキシコール酸塩の有無にかかわらず、アムホテリシンBと、1つ以上の脂質とを含む、組成物と、水性系内でのその製造方法と、哺乳類疾患等の疾患の治療のためのその使用とに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、免疫抑制剤、例えば、タクロリムス、抗癌化合物、例えば、ドセタキセルまたはパクリタキセル、あるいはタキサンファミリーの任意の他の化合物と、1つ以上の脂質とを含む、組成物と、有機溶媒の不在下でのその製造方法と、例えば、哺乳類疾患等の治療のためのその使用とに関する。本発明による方法は、工業生産規模での実施に対し好適であって、例えば、連続的工程として実施され得る。これらの方法の他の有意な利点は、簡便性、粒子形成速度、大容量へのスケーリングの容易性、高濃度および規定粒径の脂質懸濁液の形成、ならびに水に対する難溶性を有する薬学的活性化合物のカプセル化における水性系に対する能力を含む。
【背景技術】
【0003】
ほとんどの脂質製造系は、有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、クロロホルム、エタノール、またはメタノールの使用を伴う。有機溶媒は、例えば、生産労働者に対し、健康上の危険をもたらす可能性があり、有機溶媒の除去は、概して、煩雑な工程である。したがって、有機溶媒を必要としない、脂質ベースの製剤の製造のための方法の必要性が存在する。
【0004】
ポリエン抗生物質は、一例として、水性系中での溶解性に制限を有する活性医薬化合物の部類を提供する。ポリエン抗生物質は、前全身性(pre-systemic)および全身性真菌感染症の両方の治療において広く使用される。これらは、いくつかの異なる種のストレプトミセスによって産生される。最近、他の薬剤とのその相乗的殺真菌作用(Medoff,G.and Kobayashi,G.S.1975)と、抗腫瘍作用の報告(Valeriote,F.et al.1976)とによって、これらの抗体に対する関心が高まりつつある。特に、ポリエン抗生物質、例えば、アムホテリシンB(AmB)およびナイスタチン(Nys)は、真菌感染症の治療において、最も効果的であって、広く使用されている薬剤である。さらに、これらの薬剤のうちの全部ではないが、いくつかは、免疫アジュバント特性を有することが示されている(Hammarstron,L.and Smith,C.I.E.,1977、Little,J.R.et al.1978)。
【0005】
ポリエン抗生物質は、ステロール、特に、真菌膜の大量かつ主要ステロールである、エルゴステロールを標的とする。異なる種類のポリエン抗生物質は、共通標的を共有するにもかかわらず、異なる作用様式を示す。アムホテリシンおよびナイスタチン等のより大きいポリエンは、エルゴステロールと一体となって、原形質膜内に細孔構造を形成し、イオン勾配を崩壊し、それによって、細胞を死滅させる。また、より小さい非荷電フィリピンも、膜障壁を破壊するが、完全に異なる機構による。フィリピンは脂質二重層の弁尖(leaflet)間に、ステロールと巨大複合体を形成し、膜の破損をもたらす(De Kruijff and Demel,1974)。他のポリエン抗体と同様に、ナタマイシンは、特異的に、膜内のエルゴステロールに結合するが、障壁機能の損失をもたらすことはない。
【0006】
アムホテリシンBは、土壌放線菌であるストレプトマイセス・ノドーサス(streptomyces nodusus)の発酵副産生物として産生される、非経口殺真菌抗生物質である。これは、真菌細胞および哺乳類細胞の両方の細胞膜内のステロールに結合する。これは通常、生体内(in vivo)では静真菌性であるが、高濃度で、または極度に感受性の強い生物に対し、殺真菌活性を有することが可能である。ヒト細胞膜内に見られるステロールであるコレステロールと比べ、真菌細胞膜内に見られるステロールであるエルゴステロールに対するそのより高い親和性によって、アムホテリシンBは、系統的に使用可能である。この結合の結果、真菌膜の完全性が損なわれ、細胞内カリウムおよび他の細胞含有物の損失をもたらす。電解質の喪失および腎毒性等のアムホテリシンBに対するいくつかの有害反応は、その薬理作用の延長線上にある一方、アナフィラキシー様注入関連反応は、プロスタグランジンの合成の刺激および放出に関連し得る。貧血は、エリトロポエチン産生の阻害に続発し得る。
【0007】
アムホテリシンBは、重度の生命にかかわる真菌感染症に対し広く使用される。用量依存性腎毒性によって制限されるその使用は、糸球体濾過量の減少および尿細管機能不全を呈する。アムホテリシンBに付随するクレアチニンの排泄増加は、腎機能不全のマーカーであるだけでなく、血液透析使用の実質的危険性および高死亡率にもつながる。したがって、アムホテリシンB腎毒性は、良性合併症ではなく、その防止は、不可欠である(Deray,G.et al.Nephrologie,2002)。
【0008】
アムホテリシンBは、水、アルコール、クロロホルム、および他の一般的なハロカーボン溶媒中において難溶性である。アムホテリシンBは、有効な殺菌剤であるが、治療濃度をわずかに上回る濃度では、危険な毒性を有する。リポソーム内へのカプセル化は、哺乳類細胞に対する体内毒性を低減し、殺真菌活性を比較的に変化させずに残すと考えられる(F.C.Szoka et.al.,1987)。リポソームは、難溶性または治療用量において許容できない毒性を呈する、他種多様の化合物をカプセル化するために使用されている。例えば、アムホテリシンBのような化合物の細胞毒性および殺真菌活性に及ぼすリポソームカプセル化の効果は、特定のリポソーム構造(例えば、SUV、MLV等)およびその製造方法に依存する。
【0009】
新しい脂質組成物を使用する新しい製剤の開発は、有効性を改善し、組成物、例えば、ポリエン抗生物質、特に、デオキシコール酸塩の有無にかかわらず、アムホテリシンBに付随する毒性を低減するために必要とされる。
【0010】
タキサンは、チューブリンに結合し、安定な非機能性微小管形成を不適切に促進することによって、細胞毒性を呈する、独特の部類の疎水性抗癌剤である(Schiff PB et.al.1979)。微小管機能への干渉は、破壊された有糸分裂および細胞死につながる。ある特定のタキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルは、乳癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、および前立腺癌の治療用として、ヒトへの使用が認められている。これらの薬剤の用量制限毒性プロファイルは、幾分異なる。パクリタキセルは、末梢神経障害および筋肉痛/関節痛に最も広く関連する一方、ドセタキセルは、最も一般的には、ある場合には、用量制限となり得る体液貯留をもたらす(Hennenfent,K.L et al 2006)。
【0011】
パクリタキセルおよびドセタキセルを含むが、それらに限定されないタキサンは、事実上、水中において不溶性であって、市販製剤のためには複合溶媒系を必要とする。ポリオキシエチル化ヒマシ油ビヒクルであるクレモホールEL(Cremophor EL)と、米国薬局方(USP)無水エタノール(1:1、v/v)とは、パクリタキセルの市販製剤中の溶媒として使用される一方、ポリソルベート80(ツイーン80(Tween80)界面活性剤)は、ドセタキセルの製剤中に採用される。これらの溶媒系は、生物学的および薬理学的に許容可能であるが、急性過敏症反応および末梢神経障害を含む、副作用を有することが知られている。さらに、いくつかの報告は、これらの溶媒をパクリタキセルおよびドセタキセルの両方の薬物動態プロファイルにおける変化に結びつけている(ten Tije,AJ et al.2003)。
【0012】
いくつかの製剤は、タキサンを可溶化し、それに付随する毒性を回避するように行われている。脂質ベースの製剤(例えば、リポソーム)を含む、これらの製剤はすべて、製剤化方法の際、活性化合物を可溶化するための有機溶媒の使用を必要としてきた(Straubinger,et.al.US5,415,868、1995、Bisery,et al US6,146,663、2000)。前述のように、有機溶媒の使用は、煩雑な方法をもたらし、したがって、既存の製剤に付随する課題を克服するために、有機溶媒を含まない製剤が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】Abra,R.and Szoka,F.C.;PCT Appl W08701933,1987;Sanders,S.et al.1991
【特許文献2】Abra,R.US Patent 5,032,582,1991.
【特許文献3】Abra,R.US Patent 4,822,777,1989
【特許文献4】Abra,R.and Gua,L.S US Patent 5,194,266,1993
【特許文献5】Bissery,M−C.;Laborie,M.;Vacu,J.;Verrecchia,T.US Patent 6,146,663,2000.
【特許文献6】Proffitt,R.T.;Adler−Moore,J.,Chiang,S−M US Patent 5,965,156 1999.
【特許文献7】Straubinger,R.M.;Sharma,A.;Mayhew,E.US Patent 5,415,869,1995.
【特許文献8】Szoka,F.C.Jr.US 5277914 A,1994
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Adler−Moore,J.;Jill,P.;Proffitt,R.t.J.Liposome Res.1993,2,429−450.
【非特許文献2】Ahmad,I.,Agarwal,A.;Pal,A.;Guru,P.Y.;Bachhawat,B.K.and Gupta,C.M.J.Biosciences,1991,14,217−221.
【非特許文献3】Ahmad,I.;Sarkar,A.K.;and Bachhawat,B.K.Mol.Cell.Biochem.1989,91,85−90.
【非特許文献4】Ahmad,I.;Sarkar,A.K.;and Bachhawat,B.K.Biot.Appl.Biochein.1990,12,550−556.
【非特許文献5】Brajtburg,J.;Powderly,W.G.;Kobayashi,G.S.;Medoff,G.Antimicrob.Agents and Chemother.1990,34,381−384.
【非特許文献6】De Kruijff,B.and Demel,R.A.;Biochim.Biophys.Acta,1974,339,57−70.
【非特許文献7】Deray G.;Mercadal,L.;Bagnis,C.Nephrologie,2002,23,119−122.
【非特許文献8】Dumont,F.J.In:Libermann,R.Mukherjee,A.Eds.Drug development in transplantation and autoimmunity,Austin,TX: RG landes,1996,175.
【非特許文献9】Hammarstrom,L.;and Smith,C.I.E.Acta Patho.Microbial.Scand.1977,85,277−283.
【非特許文献10】Hennenfent,K.L.and Govindan,R.Annals of Oncol.2006,17,735−749.
【非特許文献11】Janoff,A.S.;Madden,T.D.;Cullis,P.R.;Kearns,J.J.;Durning,A.G.;U.S.Patent No.6,406,713,2002.
【非特許文献12】Ingle,G.R.;Sievers,T.M.;Holt,C.D.Ann Pharmacother,2000,34,1044−1055.
【非特許文献13】Knoll,G.A.and Bell,R.C.BMJ,1999,318,1104−1107.
【非特許文献14】Lister,J.Eur J.Haematol.1996,56(suppl 57),18−23.
【非特許文献15】Little,J.R.;Plut E.J.,Kotler−Brajtburg,J.;Mendoff,G.and Kobayashi,G.S.Immunochem.,1978,15,219−224.
【非特許文献16】Medoff,G.and Kobayashi,G.S.J.Am.Med.Assoc.1975,232,619−620.
【非特許文献17】Podder,H.;Podbielski,J.;Hussein,I.;Katz,S.;van Buren,C.;Kahan,B.D.;Transpl.Int.2001,14,135−142.
【非特許文献18】Proffitt,R.T.;Adler−Moore,J.;Fujii,G.;Satorius,A,Lee,M.J.A.;Bailey,A.;J.Controlled Release 1994,28,342−343.
【非特許文献19】Otsubo,T.;Maesaki,S.;Hossain,M.A.;Yamamoto,Y.;Tomono,K.;Tashiro,T.;Seki,J.;Tomii,Y.;Sonoke,S.;Kohno,S.J.Antimicrob.Agents and Chemother.1999,43,471−475.
【非特許文献20】Proffitt,R.T.;Satorius,A.;Chiang,S.M.;Sullivan.L.;Adler−Moore,J.P.J.Antimicrob.Agents Chemother.1991,28(Suppl.B),49−61.
【非特許文献21】Sanders,S.W.;Buchi,K.N.;Goddard,M.S.;Lang,J.K.;Tolman,K.G.Antimicrob.Agents and Chemother.1991,35,1029−1034.
【非特許文献22】Ramos,H.;Brajtburg,J.;Marquez,V.;Cohen,B.E.Drugs Exptl.& Clin.Res.1995,21,211−216.
【非特許文献23】Ramos,H.;Valdivieso,E.;Gamargo,M.;Dagger,F.;Cohen,B.E.J.Memb.Biol.1996,152,6575.
【非特許文献24】Schiff,P.B.;Fant,J.;Horowitz,S.B.Nature,1979,227,665−667.
【非特許文献25】Szoka,F.C.Jr,;Milholland,D.;Barza,M.Antimicrob.Agents and Chemother.1987,31,421−429.
【非特許文献26】ten Tije,A.J.;Verweij,J.;Loos,W.J.;Sparreboom,A.Clin Pharmacokinet,2003,42,665−685.
【非特許文献27】Valeriote,F.;Lynch,R.;Medoff,G.;and Kumar,B.V.J Natl.Cancer.Inst.1976,56,557−559.
【非特許文献28】Walsh,T.J.;Whitcomb,P.;Piscitelli,S.Figg,W.D.;Hill,S.;Chanock,S.J.;Jarosinski,P.;Gupta,R.;Pizzo,P.A.J.Antimicrob.Agents Chemother.1997,41,1944−1948.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、脂質と複合化された活性化合物を製造する新しい方法と、例えば、被験体の疾患を治療するために、被験体を治療する際に複合体を使用する方法とに関する。複合体相互作用は、イオン性または親油性であり得る。本発明のすべての実施形態では、複合体形成は、水性媒体内で行われる。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの活性剤、例えば、ポリエン抗生物質と、免疫抑制剤、例えば、タクロリムス、あるいはタキサンまたはタキサン誘導体と、1つ以上の脂質とを含む、複合体を含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの活性化合物、例えば、ポリエン抗生物質と、1つ以上の脂質とを含む、複合体を含む組成物を製造するステップと、組成物を被験体に投与するステップとを含む、方法を含む。ある実施形態では、被験体は、哺乳類である。ある好ましい実施形態では、被験体は、ヒトである。
【0016】
本発明の目的は、少なくとも1つの活性成分と、少なくとも1つの脂質、例えば、有機溶媒を使用せずに形成されるリン脂質とを含む、脂質製剤または脂質複合体を提供することである。
【0017】
本発明による、脂質複合体内に含まれるリン脂質の量は、最終組成物または複合体のいかなる特定の量または百分率(例えば、重量)にも制限されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのリン脂質の割合は、最終脂質複合体(例えば、市販形態)の約5重量%と約98重量%との間である。いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1つのリン脂質の量は、脂質複合体の10重量%と90重量%との間である。
【0018】
ある実施形態では、本発明による脂質製剤系は、約4.0と約8.0との間のpHを有する。いくつかの好ましい実施形態では、pHは、約4.5と約7.5との間である。
【0019】
本発明の脂質製剤は、任意の特定の使用または用途に制限されない。例えば、薬学的活性成分を含む、本発明による活性成分の脂質製剤は、異なる医薬用途に使用可能である。また、本発明の水性系は、例えば、活性成分を含む複合体の制御として使用するために、非装填脂質複合体(例えば、いかなるカプセル化した活性成分をも含まない)の製剤に使用可能である。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗癌剤と、1つ以上の脂質とを含む、複合体を含む組成物を含む。抗癌剤の例は、ドセタキセル、パクリタキセル、エピルビシン、エンドキシフェン等を含むが、それらに限定されない。
【0021】
例として、本発明のリポソーム系内にタクロリムスをカプセル化または封入することが可能であって、そのような医薬品は、例えば、免疫抑制剤として、または皮膚感染の治療のために使用される。そのような医薬品は、注射または経口使用に特に好適である。さらに、既知の活性成分は、癌、肝臓疾患、腎臓疾患、AIDS、細菌、真菌、およびウイルス感染の治療のためのものである。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの免疫抑制剤と、1つ以上の脂質とを含む、複合体を含む組成物を含む。免疫抑制剤の例は、タクロリムスおよびサクロリムスを含むが、それらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物のポリエン抗生物質は、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンBであるが、一方、いくつかの好ましい実施形態では、デオキシコール酸アムホテリシンBは、ファンギゾン(Fungizone)(登録商標)抗生物質である。いくつかの実施形態では、デオキシコール酸アムホテリシンBは、アムホテリシンBおよびデオキシコール酸ナトリウムから製造される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物の1つ以上の脂質は、コレステロール、硫酸コレステリルおよびその塩(例えば、ナトリウム塩)、コレステリルヘミスクシナート、コハク酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、コレステロールのポリエチレングリコール誘導体(コレステロール−PEG)、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン、またはカルシフェロールのうちの1つ以上を含むが、一方、いくつかの実施形態では、1つ以上の脂質は、ステロールを含む。ある実施形態では、ステロールは、β−シトステロール、スチグマステロール、スチグマスタノール、ラノステロール、α−スピナステロール、ラソステロール、カンプエステロール、またはこれらの混合物である。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物の1つ以上の脂質は、鎖長約C−C34を有する脂肪酸のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸鎖は、不飽和であるが、一方、いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖のうちの1つ以上は、飽和である。いくつかの実施形態では、脂肪酸のうちの1つ以上は、塩の形態であるが、一方、いくつかの実施形態では、脂肪酸のうちの1つ以上は、酸の形態である。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、エステルの形態である。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物の1つ以上の脂質は、リン脂質を含む。いくつかの好ましい実施形態では、組成物の脂質のうちの1つ以上は、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルグリセロールを含むが、一方、いくつかの好ましい実施形態では、組成物の脂質のうちの1つ以上は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、またはホスファチジン酸を含む。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の1つ以上の脂質は、大豆リン脂質を含む。いくつかの特に好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物で使用される大豆リン脂質は、高濃度のホスファチジルコリンを含む。さらにより特に好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物で使用される大豆リン脂質は、少なくとも90重量%のホスファチジルコリンを含有する。いくつかの実施形態では、1つ以上のリン脂質は、リン脂質のペグ化(PEG)誘導体である。ある実施形態では、組成物の脂質のうちの1つ以上は、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、またはジオレオイルホスファチジルグリセロールリン脂質のペグ化誘導体を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物の1つ以上の脂質は、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリド脂質を含む。
【0028】
モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの前記脂肪酸は、短鎖または長鎖を有する飽和および不飽和脂肪酸の群から選択される、組成物形成の方法。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物の1つ以上の脂質は、炭水化物ベースの脂質を含む。ある好ましい実施形態では、組成物の1つ以上の脂質は、ガラクト脂質、マンノ脂質、およびガラクトレシチンを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む。いくつかの実施形態では、PEGは、平均分子量200〜20,000の範囲を有するが、一方、ある好ましい実施形態では、PEGの平均分子量は、500〜2000の範囲である。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、活性化合物(例えば、デオキシコール酸ナトリウムを含むまたは含まない、アムホテリシンB)と、コレステロールまたはコレステロール誘導体と、1つ以上のリン脂質とを含む。ある好ましい実施形態では、組成物は、デオキシコール酸ナトリウムを含み、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)対デオキシコール酸ナトリウムのモル比は、約1:2である。組成物がコレステロール誘導体を含む。いくつかの実施形態では、組成物はコレステロール誘導体を含み、コレステロール誘導体は、硫酸コレステリルである。いくつかの実施形態では、リン脂質が大豆ホスファチジルコリンまたは水素添加ホスファチジルコリンを含む。いくつかの好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)とコレステロールまたはコレステロール誘導体とのモル比は、約1:1から約1:10の範囲であるが、一方、ある特に好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)とコレステロールまたはコレステロール誘導体とのモル比は、約1:1から約1:5の間である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物の1つ以上の脂質は、水素添加大豆ホスファチジルコリンを含み、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と水素添加大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、約1:5から約1:80の間である。ある好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と水素添加大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、約1:5から約1:60の間である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、濃度約0.5mg/mLから約25mg/mLの活性化合物(例えば、デオキシコール酸ナトリウムを含むまたは含まない、アムホテリシンB)を含むが、一方、いくつかの好ましい実施形態では、組成物の活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)は、濃度約1mg/mLから約10mg/mLである。いくつかの特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、濃度約1mg/mLから約5mg/mLの活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、総脂質濃度または割合約2.5重量%から約95重量%を含むが、一方、いくつかの好ましい実施形態では、組成物は、総脂質濃度約5重量%から約95重量%を含む。ある特に好ましい実施形態では、組成物は、総脂質濃度約10重量%から約90重量%を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と、約1:10から約1:100の範囲のモル比を有するデオキシコール酸ナトリウム(使用される場合)を含む、総脂質とを含むが、一方、いくつかの実施形態では、このモル比は、約1:20から約1:70の間である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と、約1:1から約1:100の範囲の重量対重量比を有するデオキシコール酸ナトリウムを含む、総脂質とを含むが、一方、ある好ましい実施形態では、この比率は、約1:10から約1:60の間である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、ミセルおよび乳剤から成る群から選択される、複合体を含む。ある好ましい実施形態では、組成物は、複数のミセルを含み、該ミセルは、単量体、二量体、重合体、または混合ミセルの形態である。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、直径約20ミクロン以下を有する複合体、リポソーム、ミセル、および/またはベシクルを含むが、一方、いくつかの実施形態では、直径約10ミクロン以下を有するこれらの複合体、リポソーム、ミセル、および/またはベシクルである。いくつかの実施形態では、これらの複合体、リポソーム、ミセル、および/またはベシクルは、直径約5ミクロン以下を有するが、一方、いくつかの実施形態では、これらの複合体、リポソーム、ミセル、および/またはベシクルは、直径約1ミクロン以下を有する。いくつかの実施形態では、これらの複合体、リポソーム、ミセル、および/またはベシクルは、直径約500nm以下を有するが、一方、いくつかの実施形態では、複合体、リポソーム、ミセル、および/またはベシクルは、直径約200nm以下を有する。いくつかの好ましい実施形態では、これらの複合体、リポソーム、ミセル、および/またはベシクルは、直径約100nm以下を有する。
【0039】
本発明は、本発明の複合体を含む、いかなる特定の形態の組成物にも限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、本発明による組成物中の複合体は、凍結乾燥された形態である。いくつかの実施形態では、組成物は、低温保護剤をさらに含む。ある好ましい実施形態では、低温保護剤は、1つ以上の糖類を含むが、一方、特に好ましい実施形態では、この1つ以上の糖類は、トレハロース、マルトース、乳糖、スクロース、グルコース、および/またはデキストランを含む。
【0040】
本発明の方法および組成物のいくつかの実施形態では、活性成分は、リポソーム系の製造後に添加される。いくつかの特に好ましい実施形態では、活性成分(例えば、活性医薬化合物)は、脂質製造物、例えば、リポソーム系に、使用直前(例えば、患者または被験体への投与直前)に添加される。例えば、いくつかの実施形態では、乾燥形態の活性成分は、水性非装填リポソーム系内に分散または乳化されてもよいが、一方、他の実施形態では、乾燥したリポソーム系は、薬学的活性成分が前もって分散または乳化されている水中に乳化されてもよい。このように製造された医薬品は、優れた透過性を示し、例えば、望ましくない異物粒子の存在の検査をより容易にし得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物中の複合体は、粉末形態であるが、一方、いくつかの実施形態では、複合体は、溶液形態である。いくつかの実施形態では、複合体は、懸濁液形態であるが、一方、他の実施形態では、複合体は、乳剤形態であり、一方、さらに他の実施形態では、複合体は、ミセル形態または混合ミセル形態、あるいはリポソーム形態である。いくつかの実施形態では、複合体は、凍結乾燥またはゲル形態であるが、一方、いくつかの実施形態では、複合体は、ペースト形態である。いくつかの実施形態では、複合体は、混合ミセル、リポソーム、またはベシクル形態の混合物である。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、カプセル内にカプセル化される。いくつかの好ましい実施形態では、カプセルは、ゲルカプセルであるが、一方、いくつかの特に好ましい実施形態では、カプセルは、腸溶性コーティングを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物中の複合体は、ポリエン抗生物質ではない、水に対して不溶性または難溶性の薬物を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、マクロライド、例えば、タクロリムス(Knoll,G.A.et al.1999、Dumont FJ In:Liebermann R,Mukherjee A,eds.1996)またはシロリムス(Ingle GR,et al.2000、Podder H,et al.2001)、を含む、活性成分を含む。マクロライド、例えば、タクロリムスは、現在、肝臓および腎臓移植拒絶反応の予防のために臨床的に使用される。いくつかの実施形態では、本発明による脂質組成物は、マクロライドを含み、例えば、免疫抑制および/または移植拒絶反応の抑制における使用に見られる。同様に、いくつかの実施形態では、本発明による脂質組成物は、抗癌剤を活性成分として含み、例えば、癌疾患の治療における使用に見られる。
【0045】
本発明の方法、組成物、および系は、いずれかの特定の活性成分または薬剤との使用、あるいはそれを含む使用に限定されない。例えば、本発明の方法、組成物、および系における使用に見られる薬物、活性剤、または治療剤は、例えば、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経エフェクター機能部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、栄養および排泄系、ヒスタミン系、および中枢神経系に作用する薬剤を含む。好適な活性剤は、例えば、タンパク質、酵素、およびホルモン、ヌクレオチド(センスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)(例えば、米国特許第6,126,965号、2000)、ポリヌクレオチド、核タンパク質、ポリサッカリド、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、ステロイドから選択され得る。活性剤は、鎮痛剤、麻酔剤、抗不整脈剤、抗生剤、抗アレルギー剤、殺真菌剤、抗癌剤、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗炎症性コルチコステロイド、アルツハイマーまたはパーキンソン病治療剤、抗潰瘍剤、抗原虫剤、抗不安剤、甲状腺剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、食欲抑制剤、ビスホスホネート類、強心剤、心血管作動剤、コルチコステロイド、利尿剤、ドーパミン作動剤、胃腸剤、止血薬、高コレステロール剤、抗高血圧剤(例えば、ジヒドロピリジン)、抗うつ剤、およびcox−2阻害剤、免疫抑制剤、抗痛風剤、抗マラリア剤、ステロイド、テルピノイド、トリテルピン、レチノイド、抗潰瘍H2−受容体拮抗剤、血糖降下剤、保湿剤、化粧品、片頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗炎症剤、例えば、リウマチ、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、クローン病の治療剤、または多発性硬化症を含む脱髄疾患の治療剤、点眼剤、ワクチン(例えば、肺炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、コレラ毒素Bサブユニット、インフルエンザウイルス、腸チフス、熱帯熱マラリア原虫、ジフテリア、破傷風、HSV、結核、HIV、SARSウイルス、慢性百日咳、はしか、おたふく風邪、および風疹ワクチン(MMV)、細菌毒素、ワクチンウイルス、アデノウイルス、カナリア、ポリオウイルス、バチルス・カルメット・ゲラン菌(BCG)、肺炎桿菌等に対するもの等)、ヒスタミン受容体拮抗剤、睡眠剤、腎臓保護剤、脂質調節剤、筋弛緩剤、神経安定剤、向神経剤、オピオイド作動剤および拮抗剤、副交感神経興奮剤、プロテアーゼ阻害剤、プロスタグランジン、鎮静剤、性ホルモン(例えば、エストロゲン、アンドロゲン)、刺激剤、交感神経様作用剤、血管拡張剤、およびキサンテン、ならびにこれらの種の合成類似体であることができる。治療剤は、腎毒性、例えば、シクロスポリンおよびアムホテリシンB、または心臓毒性、例えば、アムホテリシンBおよびパクリタキセルであることができる。例示的な抗癌剤は、メルファラン、クロルメチン、リン酸エクストラムスチン、ウラムスチン、イホスファミド、マンノムスチン、トリホスファミド、ストレプトゾトシン、ミトブロニトール、ミトキサントロン(例えば、国際特許出願公開第WO 02/32400号参照)、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、テガフル、イドキシド、タキサン((例えば、タキソール、パクリタキセル等、国際特許出願公開第WO 00/01366号、米国特許第5,415,869号参照))、ダウノマイシン、またはダウノルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、エトポシド、タモキシフェン、ヒドロキシタモキシフェン、エンドキシフェンカルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、BCNU、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビノレルビン(例えば、国際特許出願公開第WO 03/018018号等)、カンプトテシンおよびその誘導体(例えば、国際特許公開第WO 02/058622号参照)、SN38、イリノテカン(例えば、国際特許公開第WO 03/030864号等参照)、サイトカイン、リボザイム、インターフェロン、オリゴヌクレオチド、および機能性アントラサイクリン、抗体、サイトカイン、ドキソルビシン、エトポシド、上述のものの誘導体を含む。本発明の方法、組成物、および系における使用に見られる薬物の追加的な例は、アジドチミジン(AZT)、アシクロビル、タクロリムス、プロクロルペラジンエディシレート、硫酸第一鉄、アミノカプロン酸、塩酸メカミルアミン、塩酸プロカインアミド、硫酸アンフェタミン、塩酸メタンフェタミン、塩酸ベンザムフェタミン、硫酸イソプロテロノール、塩酸フェンメトラジン、塩化ベタネコール、塩化メタコリン、塩酸ピロカルピン、硫酸アトロピン、臭化スコポラミン、ヨウ化イソプロパミド、塩化トリジヘキセチル、塩酸フェンホルミン、塩酸メチルフェニデート、テオフィリンコリネート、塩酸セファレキシン、ジフェニドール、塩酸メクリジン、マレイン酸プロクロルペラジン、フェノキシベンズアミン、マレイン酸チエチルペラジン、アニシンドン、ジフェナジオン、四硝酸エリトリチル、ジゴキシン、イソフルオロフェート、アセタゾラミド、メタゾラミド、ベンドロフルメチアジド、クロロプロパマイド、トラザミド、酢酸クロルマジノン、フェナグリコドール、アロプリノール、アスピリンアルミニウム、メトトレキサート、アセチルスルフィキサゾール、エリスロマイシン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチコステロン、酢酸コルチゾン、デキサメタゾン、およびその誘導体、例えば、ベタメタゾン、トリアムシノロン、メチルテストステロン、17−β−エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3−メチルエーテル、プレドニゾロン、17−α−酢酸ヒドロキシプロゲステロン、19−ノルプロゲステロン、ノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチエデロン、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノルエチノドレル、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダク、インドプロフェン、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロルプロマジン、メチルドパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラク、乳酸第一鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンズアミン、ジルチアゼム、ミルリノン、マンドール、クアンベンズ、ヒドロクロロチアジド、ラニチジン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナク、メフェナミック、フルフェナミック、ジフュニナル、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミル、ガロパミル、アムロジピン、ミオフラジン、リシノプリル、エナラプリル、エナラプリラト、カプトプリル、ラミプリル、ファモチジン、ニザチジン、スクラルファート、エチンチジン、テトラトロール、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリン、およびイミプラミンを含む。さらなる例は、タンパク質およびペプチドであって、骨形態形成タンパク質、インスリン、コルヒチン、グルカゴン、甲状腺刺激ホルモン、副甲状腺および脳下垂体ホルモン、消化ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロピン、甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性性腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ウシのソマトロピン、ブタのソマトロピン、オキシトシン、バゾプレシン、GRF、ソマトスタチン、リプレシン、パンクレオチミン、黄体ホルモン、LHRH、LHRH作動剤および拮抗剤、リュープロライド、インターフェロン(例えば、コンセンサスインターフェロン、インターフェロンα−2α、インターフェロンα−2β、α−、β−、またはγ−インターフェロン)、インターロイキン、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン、およびその誘導体、例えば、メチオン−ヒト成長ホルモンおよびジフェニルアラニンヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンおよびブタ成長ホルモン、受精抑制剤、例えば、プロスタグランジン、受精促進剤、成長因子、例えば、インスリン様成長因子、凝固因子、膵臓ホルモン放出因子、これらの化合物の類似体および誘導体、ならびにこれらの化合物の薬学的に容認可能な塩、あるいはその類似体または誘導体を含むが、それらに限定されない。治療剤は、リポソーム製剤中に有益に同時投与可能な薬物または薬剤の混合物であってもよい(例えば、2つ以上の薬剤)。
【0046】
本発明の方法は、有機溶媒を含まない水性リポソーム系を産生するための単純、迅速、かつ安価な方法であって、特に、外因性粒子の簡単かつ迅速な検査を可能にする。さらに、本発明の方法によって産生されたリポソーム系は、平均粒径5ミクロン未満、好ましくは、50nmから1ミクロンを有する、高度に再現性のある粒径を示す。また、当技術分野において周知の無菌濾過を通して、生成物を濾過することが可能である。押出または高圧分離均質化の持続時間は、リポソームが所望の平均直径を示すように、十分長く選択される。前記押出、高圧分離均質化は、リポソームが、平均直径50nmから1ミクロンを有するまで行われる。
【0047】
本発明の方法によって生産されるリポソーム系は、直ちに使用可能な状態の対応するアンプル内に直接充填され、当技術分野において周知の所望の量の炭水化物を添加後、生成物を凍結乾燥させることが可能であって、それによって、凍結乾燥は、水分乾燥の最善の方法を構成する。これによって、粉末形態のリポソーム系が提供され、好適な量の注射用の水、生理食塩水、または5%デキストロースをゆっくりと振盪させながら添加することによって、ベシクルに還元することができる。注入可能な水の添加後に形成されたリポソーム系を、さらなる撹拌または高圧分離均質化に供する必要はない。
【0048】
本発明の方法および組成物は、真菌または細菌感染によって生じる疾患を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、アクレモニウムエス・ピー(Acremonium sp.)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニューモニア(Aspergillus pneumonia)、ブラストミセスデルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギュィラーモンディ(Candida guillermondi)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、フサリウムエス・ピー(Fusarium sp.)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ムコール・ムセド(Mucor mucedo)、ロドトルラエス・ピー(Rhodotorula sp.)、スポロトリクス・シェンキー(Sporothrix schenckii)、アカントアメーバ・ポリファーガ(Acanthamoeba polyphaga)、エントモフトラエス・ピー(Entomophthora sp.)、ヒストプラスマ・カプスラーツム、(Histoplasma capsulatumm)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania brasiliensis)、リゾパスエス・ピー(Rhizopus sp.)、ロドトルラエス・ピー(Rhodotorula sp.)、トルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)から成る真菌から選択される真菌のうちの少なくとも1つによって生じる真菌疾患を治療するために使用される。追加的な真菌病原菌は、トリコスポロン(Trichosporon)、ムコ(Muco)、アルテルナリア(Alternaria)、バイポラリス(Bipolaris)、カーブラリア(Curvularia)等を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、リーシュマニア(Leishmania)の種によって生じる疾患を治療するために使用され、例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、内臓リーシュマニア症(Visceral Leishmaniasis)を治療するために使用される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、ウイルス感染、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV2)、C型肝炎ウイルス(HCV)、またはサイトメガロウイルス(CMV)によって生じるウイルス感染を治療するために使用される。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンBによって細胞を処理し、本明細書の記載に従って組成物を製造し、細胞を組成物に曝露する方法を含む。いくつかの好ましい実施形態では、細胞の曝露は、生体内、例えば、患者または被験体内で生じる。
【0052】
いくつかの実施形態では、被験体内の細胞の曝露は、被験体への組成物の経口送達を含むが、一方、他の実施形態では、細胞の曝露は、被験体への組成物の静脈内送達を含むことが意図される。本発明において使用が見られる被験体への組成物の送達の経路は、皮下送達、非経口送達、腹腔内送達、直腸内送達、膣内送達、および/または局所送達を含むが、それらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、被験体は、哺乳類である。いくつかの特に好ましい実施形態では、哺乳類は、ヒトである。
【0053】
定義
本明細書で使用される、「脂質組成物」という用語は、リポソーム形態、ベシクル形態、ミセル形態、乳剤形態が可能であって、投与される場合、実質的に非毒性である、両性化合物を指す。脂質組成物は、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、コレステロール(Chol)、コレステロール硫酸およびその塩(CS)、コレステロールヘミスクシナートおよびその塩(Chems)、コレステロールリン酸およびその塩(CP)、リン酸コレステリル、ならびに他のヒドロキシコレステロールまたはアミノコレステロール誘導体を含み得るが、それらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用される「水性」という用語は、溶媒、流体、または系の参照において使用される場合、いかなる有機溶媒をも含有しない、水を主成分とする溶媒、流体、または系を指す。
【0055】
本明細書で使用される「水性系」という用語は、少なくとも1つの活性化合物と、少なくとも1つの脂質とを含む、複合体の生産の参照において使用される場合、生産の工程または方法を示す、あるいは水を主成分とする溶媒および脂質を含有またはその使用を含むが、有機溶媒を含有またはその使用を含まない、そのような生産において使用される物質の組み合わせを示す。
【0056】
本明細書で使用される、「有機溶媒」という用語は、別の物質を溶解するために使用される、概して、液体形態の炭素含有化学物質を指す。有機溶媒の例は、アルコール、グリコール、エーテル、ジメトキシエタン、アセトン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン等を含むが、それらに限定されない。
【0057】
「カプセル化量」という用語は、難溶性化合物をカプセル化し、直径5,000nm未満、好ましくは、30〜l000nmの適切な平均粒径のリポソームまたは脂質粒子を形成するために必要な脂質の量を指す。カプセル化量は、選択される薬学的活性化合物およびプロセス条件に依存するが、一般に、化合物:脂質比は、2:1から約1:100の間、好ましくは、約1:1から約1:50の範囲である。
【0058】
本明細書で使用される、「脂質粒子」という用語は、好適な脂質と、カプセル化または複合化された薬学的活性化合物とから成る、非規定構造の粒子を指す。高抗生物質:脂質比のポリエン抗生物質は、典型的には、ポリエン構造と、脂質とのその相互作用とによって、リポソームよりも脂質粒子を形成する。脂質粒子は、ラメラ構造を有し得るが、任意の規定構造を呈する必要はない。
【0059】
本明細書で使用される、「有効量」という用語は、有益または所望の結果をもたらすために、十分な活性組成物(例えば、脂質製剤中の成分として提供される、医薬化合物または組成物)の量を指す。有効量は、1つ以上の投与、用法、または用量で投与可能であるが、特定の製剤または投与経路に制限されることを意図するものではない。
【0060】
本明細書で使用される「活性」または「薬学的活性」という用語は、薬剤、組成物、または化合物の参照において使用される場合、投与または用法に応じて、有益な、所望の、あるいは期待される効果を生じさせる薬剤を指す。投与は、1つ以上の投与、用法、または用量において成され、かつ特定の製剤または投与経路に限定されることを意図するものではない。用語は、任意の特定のレベルの活性に制限されない。例えば、脂質製剤中の活性剤が十分に活性で、活性剤の有効量が薬剤の脂質製剤の投与によって投与可能である限り、活性剤の脂質製剤は、活性剤の異なる製剤と同一レベルの活性を有する必要はない。
【0061】
「薬剤」および「化合物」という用語は、本明細書において同義に使用され、属性の特徴を有する任意の原子、分子、混合物、またはさらに複雑な組成物を指す。例えば、「活性剤」または「活性化合物」は、投与または用法に応じて、有益な、所望の、または期待される効果を生じさせる、任意の原子、分子、調製、混合物等を指す。
【0062】
本明細書で使用される、「投与」という用語は、薬物、プロドラッグ、または他の活性剤、あるいは医薬治療(例えば、本発明の組成物)を生理系(例えば、被験体、または生体内(in vivo)、生体外(in vitro)、あるいはエクス・ビボ(ex vivo)細胞、組織、および器官)に提供する行為を指す。人体への投与の例示的経路は、目(点眼)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、直腸内、膣内、口腔粘膜(頬側)、耳を通して、注射による(例えば、静脈内、皮下的、腫瘍内、腹腔内等)等であってもよい。投与は、1つ以上の投与、用法、または用量において成され得るものであり、かつ特定の投与経路に限定されることを意図するものではない。
【0063】
本明細書で使用される、「同時投与」という用語は、少なくとも2つの薬剤(例えば、異なる活性化合物を含有する、2つの別個の脂質組成物)また療法を被験体に投与することを指す。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤または療法の同時投与は、併用投与である。他の実施形態では、第1の薬剤/療法は、第2の薬剤/療法の前に投与される。当業者は、使用される種々の薬剤または療法の製剤および/または経路は異なり得ることを理解している。同時投与に適切な用量は、当業者によって、容易に判断可能である。いくつかの実施形態では、薬剤または療法が同時投与される場合、それぞれの薬剤または療法は、その単独投与に適切な用量よりも少なく投与される。したがって、薬剤または療法の同時投与によって、潜在的に有害な(例えば、毒性)薬剤の必要用量を低減させる実施形態において、同時投与は特に望ましい。
【0064】
本明細書で使用される、「毒性」という用語は、毒物の投与前の同一細胞または組織と比較して、被験体、細胞、あるいは組織に及ぼす何らかの悪性または有害である影響を指す。
【0065】
本明細書で使用される、「医薬組成物」という用語は、生体外、生体内、またはエクス・ビボでの診断あるいは治療に特に好適な組成物を作製する、活性剤(例えば、活性医薬化合物)と、不活性担体または活性担体(例えば、リン脂質)との組み合わせを指す。
【0066】
本明細書で使用される、「薬学的に容認可能」または「薬理学的に容認可能」という用語は、被験体に投与される場合、有害反応、例えば、毒性、アレルギー、あるいは免疫反応を実質的に産生しない組成物を指す。
【0067】
本明細書で使用される、「局所的に」という用語は、皮膚表面ならびに粘膜細胞および組織(例えば、歯槽、頬側、舌側、咀嚼面、または鼻粘膜、および中空器官または体腔を覆う他の組織および細胞)への本発明の組成物の塗布を指す。
【0068】
本明細書で使用される、「薬学的に容認可能担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、乳剤(例えば、例えば、油/水または水/油乳剤)、ならびに種々の種類の湿潤剤、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張遅延剤および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉またはグリコール酸ナトリウム澱粉)等を含むが、それらに限定されない、任意の標準的医薬担体を指す。また、組成物は、安定剤および防腐剤を含むことができる。担体の例は、安定剤および補助剤である(例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,Pa.(1975)を参照されたいが、その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)。さらに、ある実施形態では、本発明の組成物は、園芸または農業使用のために製剤化され得る。そのような製剤は、浸漬、スプレー、種子粉衣、茎部注入、スプレー、および噴霧を含む。
【0069】
本明細書で使用される、「薬学的に容認可能な塩」という用語は、標的被験体(例えば、哺乳類被験体、および/または体内、あるいは生体外細胞、組織、または器官)において生理的に耐性である、本発明の化合物の任意の塩(例えば、酸または塩基との反応によって得られる)を指す。本発明の化合物の「塩」は、無機または有機酸および塩基から派生し得る。酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、スルホン酸、ネフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸等を含むが、それらに限定されない。他の酸、例えば、シュウ酸は、それ自体は薬学的に容認可能ではないが、本発明の化合物およびその薬学的に容認可能な酸付加塩を得る際に中間物として有用な塩の製造において採用され得る。
【0070】
塩基の例は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW(式中、Wは、C1−4アルキルである。)の化合物等を含むが、それらに限定されない。
【0071】
塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカンサン酸塩等を含むが、それらに限定されない。塩の他の例は、好適なカチオン、例えば、Na、NH、およびNW(式中、Wは、C1−4アルキル基である。)等と化合される、本発明の化合物のアニオンを含む。治療の使用として、本発明の化合物の塩は、薬学的に容認可能であると想定される。しかしながら、薬学的に容認できない酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に容認可能化合物の製造または精製においての使用に見られ得る。
【0072】
治療の使用として、本発明の化合物の塩は、薬学的に容認可能であると想定される。しかしながら、薬学的に容認不可能な酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に容認可能化合物の製造または精製において、使用が見られ得る。
【0073】
「ポリエチレングリコール(PEG)」という用語は、低級アルキレンオキサイドのポリマー、特に、ポリマー分子の少なくとも一端がエステル化可能なヒドロキシル基を有するエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ならびにエステル化可能なカルボキシ基を有するそのようなポリマーの誘導体を含む。平均分子量200〜20,000のポリエチレングリコールが、好ましい。平均分子量500〜2000を有するものが、特に好ましい。
【0074】
本発明を記載する文脈(特に、下記の請求項の文脈)において、「a」、「an」、および「the」という用語、ならびに類似言及の使用は、別途本明細書に記載される、または文脈によって明確に反論されない限り、単数および複数の両方を網羅するものと解釈される。「備える」、「含む」、「有する」、および「含有する」という用語は、別途記載がない限り、非制約用語(すなわち、「含まれるが、限定されない」ことを意味する)として解釈される。本明細書に提供されるあらゆる例、または例示的言語(例えば、「等」)の使用は、別途請求されない限り、単に、本発明をより明瞭にすることを意図し、本発明の範囲に制限を課すものではない。明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な任意のクレームされない要素を示すものとして解釈されないものとする。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明は、水性系中における懸濁液、リポソーム、脂質複合体、またはミセルの製造に関する。本発明の製剤は、少なくとも1つのリン脂質、例えば、大豆ホスファチジルコリンを、治療的活性な不溶性化合物または難溶性の化合物を有する水性媒体中に含む。
【0076】
本発明の特定の実施形態は、発明の概要および発明を実施するための形態に記載される。本発明は、具体的実施形態と関連させて記載されたが、請求される本発明は、そのような具体的実施形態に不当に制限されるものではないことを理解されるものとする。例えば、本発明の組成物および方法は、特定のポリエン抗生物質、例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンBと関連させて記載される。このことは、本発明が、アムホテリシンBを使用する、または含む、方法あるいは組成物に限定されないことを理解されるものとする。特に、本発明は、1つ以上の活性化合物を含む、有機溶媒を含まない製剤を製造する組成物および方法に関する。
【0077】
また、本発明は、抗癌剤、例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセルと、免疫抑制剤、例えば、タクロリムスおよびサクロリムスとを送達する組成物および方法に関する。
【0078】
本発明は、治療される宿主に対する抗生物質の毒性を低減する、ポリエン抗生物質を送達するための組成物および方法に関する。いくつかの製剤化戦略は、アンフォテリシンの腎毒性を低減するために使用されている。
【0079】
アムホテリシンBは、水性溶液中で不溶性であって、殺真菌剤として臨床的に使用され得る前に、分散を生じさせるために、ビヒクル(担体)が添加される必要がある。アムホテリシンBの市販製剤であるファンギゾン(Fungizone)(登録商標)は、デオキシコール酸界面活性剤であるアムホテリシンBと、緩衝液との混合物である。グルコース溶液中で懸濁すると、ファンギゾン(登録商標)は、静脈内注射に好適なコロイド分散を形成する(Brajtburg,J.et al.1990)。ファンギゾン(登録商標)は、デオキシコール酸塩を有するアムホテリシンBとして最初に販売された製剤であるが、その腎毒性にもかかわらず、依然として標準的製剤である。ファンギゾン(登録商標)は、現在、凍結乾燥されたケーキとして市販されており、アムホテリシンB50mgと、デオキシコール酸塩41mgと、緩衝液としてリン酸ナトリウム20.2mgとを提供する。
【0080】
真菌疾患の治療におけるアムホテリシンBの送達を改善するための努力において、いくつかのリポソーム製剤が、設計されている。モル比6:1:3で、卵ホスファチジルコリンと、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンと、コレステロールとを含有するリポソーム組成物は、遊離薬物と比較して、治療指数を向上させる上で、より効率的であった。さらに、マンノシル化されたリポソーム内に挿入されたアムホテリシンBは、より毒性が少なく、かつ殺菌剤としてより有効である(Ahmad,I.et al.,1989,1990,1991)。
【0081】
アムビゾーム(AmBisome)(登録商標)は、大豆ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、およびコレステロールから形成される、単層リポソーム内に挿入されるアムホテリシンBの凍結乾燥された製剤である。アムビゾーム(登録商標)は、真菌細胞に結合し、真菌の死滅をもたらす。(Adler−Moore,Jill P.et al.,1994、Adler−Moore et al.1993)。アムビゾーム(登録商標)製剤は、アムホテリシンBの毒性を大幅に低減し、薬物の高血漿濃度および薬物の組織内蓄積は、非毒性用量のアムビゾーム(登録商標)によって達成可能である(Proffitt et al,US 5,965,156,1999、Proffitt、R.T.1991)。
【0082】
アベルセット(Abelcet)(登録商標)は、比率7:3のジミリストイルホスファチジルコリンおよびジミリストイルホスファチジルグリセロールと組み合わせて、1:1の比率のアムホテリシンBから成るリポソーム製剤である。結果として生じる複合体は、直径約250nmの密集したリボン構造を形成する。アベルセット(登録商標)の安全性および有効性は、臨床研究において広範囲に評価され、アベルセット(登録商標)は、一般に、デオキシコール酸アムホテリシンBよりも毒性が少ないことが示されている(Lister,J.1996、Walsh,T.J.et al 1997)。
【0083】
アムホテリシンBの毒性を低減するために、アムホテリシンBとの硫酸コレステリル複合体から成る新しい製剤、アムホテリシンBコロイド分散(Amphotec(登録商標))が開発されている。アンホテック(Amphotec)(登録商標)は、モル比1:1のアムホテリシンBと硫酸コレステリルとの安定した複合体である。新鮮なヒト血液を使用した体外研究では、薬物−脂質複合体は、赤血球の溶血をもたらさず、血漿リポタンパク質への結合は、ファンギゾンでの観察よりも少ないことが示されている。しかしながら、ABCDの注入後のアムホテリシンBの薬物動態は、ファンギゾン(登録商標)の薬物動態と有意に異ならない(Szoka,F.C.Jr.US 5277914 A 1994、Abra,R.and Guo,L.S.US 5,194,266,1993、Abra,R.US5,032,582,1991、Abra,R.US4,822,777,1989、Abra,R.et al.PCT Appl WO8701933,1987、Sanders,S.et al.1991)。
【0084】
しかしながら、前述のアムホテリシンBの種々の脂質製剤は、依然として、アムホテリシンB単独に付随するあらゆる毒性を生じさせる可能性があるが、腎毒性は、これらの製剤すべてによって、ある程度低減される。
【0085】
本発明は、活性化合物、例えば、デオキシコール酸アムホテリシンBに付随する毒性を低減する、新しい脂質組成物を使用する製剤を提供する。
【0086】
本発明は、活性化合物、例えば、ポリエン抗生物質を、例えば、哺乳類宿主に送達するための組成物および方法を提供する。本発明において使用が見られるポリエン抗生物質の例は、デオキシコール酸アムホテリシンB(ファンギゾン(登録商標))、ナイスタチン(Nystatin)(Nys)、ナタマイシン(Natamycin)、カンジシジン(Candicidin)、アウレロファンジンA(Aureofungin A)、アウレロファンジンB(Aureofungin B)、ハマイシンA(Hamycin A)、ハマイシンB(Hamycin B)、トリエニン(Trienin)、ピマリシン(Pimaricin)、エトルスコマイシン(Etruscomycin)、カイニン(Chainin)、デルモスタチン(Dermostatin)、フィリピン(Filipin)、およびリンフォサシン(Lymphosarcin)を含むが、それらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、デオキシコール酸アムホテリシンB(ファンギゾン(登録商標))の哺乳類宿主への送達のための組成物および方法を含む。任意の好適な量の活性化合物、例えば、ポリエン抗生物質、例えば、デオキシコール酸アムホテリシンBが使用可能である。好適な量のポリエン抗生物質は、本発明の複合体に安定して取り込み可能な量である。
【0087】
本発明は、抗癌剤を、例えば、哺乳類宿主に送達する組成物および方法を提供する。本発明において使用が見られる抗癌剤の例は、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、エトポシド、タモキシフェン、エンドキシフェン、ビンクリスチンアントラサイクリン等を含むが、それらに限定されない。任意の好適な量の抗癌剤が使用可能である。好適な量の抗癌剤は、本発明の複合体に安定して取り込み可能な量である。
【0088】
本発明は、免疫抑制剤を送達する組成物および方法を提供する。本発明において使用が見られる免疫抑制剤の例は、タクロリムスおよびサクロリムスを含むが、それらに限定されない。任意の好適な量の免疫抑制剤が使用可能である。好適な量の免疫抑制剤は、本発明の複合体に取り込み可能な量である。
【0089】
本発明は、移植器官および組織によって生じる拒絶反応を治療するための組成物および方法を提供する。器官および組織移植の例は、心臓、腎臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚、角膜、膵臓、小腸、筋肉、肢、筋芽細胞、椎間板、軟骨、骨、血管、神経系、食道等を含むが、それらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明は、活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)を伴う脂質複合体を含み、該複合体は、脂質または脂質の混合物を含有する。いくつかの実施形態では、複合体は、ミセル、乳剤、またはミセルおよびベシクルの混合物の形態である。本発明のミセルは、例えば、単量体、二量体、多量体、または混合ミセルの形態であることができる。いくつかの実施形態では、ミセル、乳剤、またはミセルおよびベシクルの混合物を含む複合体は、主に、50nm〜20ミクロンのサイズ範囲であるが、一方、いくつかの好ましい実施形態では、ミセルおよび乳剤は、50nm〜5ミクロンのサイズ範囲である。本発明の複合体では、抗生物質は、共有結合、疎水結合、静電結合、水素結合、または他の結合によって、脂質に結合可能であって、抗生物質が脂質内部に単に封入される場合でも、「結合されている」とみなされる。
【0091】
いくつかの実施形態では、活性剤−脂質複合体(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB−脂質複合体)は、コレステロールまたはコレステロール誘導体を含有する。本発明において使用が見られるコレステロール誘導体の例は、硫酸コレステリル、コレステリルヘミスクシナート、コハク酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、エイコサペンタエン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、アラキドン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、コレステロールのポリエチレングリコール誘導体(コレステロール−PEG)、水溶性コレステロール(例えば、コレステロールメチル−β−シクロデキストリン)、コプロスタノール、コレスタノール、あるいはコレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロンまたはヒドロコルチゾン、および7−デヒドロコレステロールを含むが、それらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、コレステロールまたはコレステロール誘導体は、低pH(例えば、約pH1.0からpH4.0の範囲)で、活性化合物と複合化される。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態では、組成物はまた、α−、β−、γ−トコフェロール、ビタミンE、カルシフェロール、α−、β−、γ−トコフェロールの有機酸誘導体、例えば、α−トコフェロールヘミスクシナート(THS)、α−コハク酸トコフェロール、またはそれらの混合物を含む。
【0093】
いくつかの好ましい実施形態では、活性剤−脂質複合体(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まないアムホテリシンB−脂質複合体)は、ステロールを含有する。本発明における使用に見られるステロールの例は、β−シトステロール、スチグマステロール、スチグマスタノール、ラノステロール、α−スピナステロール、ラソステロール、カンペステロール、および/またはそれらの混合物を含む。
【0094】
また、本発明の組成物は、遊離および/または塩、あるいはエステル形態の脂肪酸との活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB複合体)を含む。いくつかの好ましい実施形態では、脂肪酸は、炭素鎖長約CからC34、好ましくは、約Cから約C24の範囲であって、特に、テトラ酸(C4:0)、ペンタン酸(C5:0)、ヘキサン酸(C6:0)、ヘプタン酸(C7:0)、オクタン酸(C8:0)、ノナン酸(C9:0)、デカン酸(C10:0)、ウンデカン酸(C11:0)、ドデカン酸(C12:0)、トリデカン酸(C13:0)、テトラデカン(ミリスチン)酸(C14:0)、ペンタデカン酸(C15:0)、ヘキサデカン(パルマチン)酸(C16:0)、ヘプタデカン酸(C17:0)、オクタデカン(ステアリン)酸(C18:0)、ノナデカン酸(C19:0)、エイコサン(アラキジン)酸(C20:0)、ヘンエイコサン酸(C21:0)、ドコサン(ベヘン)酸(C22:0)、トリコサン酸(C23:0)、テトラコサン酸(C24:0)、10−ウンデセン酸(C11:1)、11−ドデセン酸(C12:1)、12−トリデセン酸(C13:1)、ミリストレイン酸(C14:1)、10−ペンタデセン酸(C15:1)、パルミトオレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、エイコサン酸(C20:1)、エイコサジエン酸(C20:2)、エイコサトリエン酸(C20:3)、アラキドン酸(シス−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、およびシス−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸を含む。また、他の脂肪酸鎖も、組成物中に採用可能である。そのような例は、飽和脂肪酸、例えば、エタン(または、酢)酸、プロパン(または、プロピオン)酸、ブタン(または、酪)酸、ヘキサコサン(または、セロチン)酸、オクタコサン(または、モンタン)酸、トリアコンタン(または、メリシン)酸、ドトリアコンタン(または、ラッセル)酸、テトラトリアコンタン(または、ゲダ)酸、ペンタトリアコンタン(または、セロプラスチン)酸等;モノエタン不飽和脂肪酸、例えば、トランス−2−ブテン(または、クロトン)酸、シス−2−ブテン(または、イソクロトン)酸、2−ヘキセン(または、イソヒドロソルビン)酸、4−デカン(または、オブツシル)酸、9−デカン(または、カプロレイン)酸、4−ドデセン(または、リンデン)酸、5−ドデセン(または、デンチセン)酸、9−ドデセン(または、ラウロレイン)酸、4−テトラデセン(または、ツズ)酸、5−テトラデセン(または、フィセテリン)酸、6−オクタデセン(または、ペトロセレン)酸、トランス−9−オクタデセン(または、エライジン)酸、トランス−11−オクタデセン(または、バクセン)酸、9−エイコセン(または、ガドレイン)酸、11−エイコセン(または、ゴンドレイン)酸、11−ドコセン(または、セトレイン)酸、13−デコセン(または、エルカ)酸、15−テトラコセン(または、ネルボン)酸、17−ヘキサコセン(または、キシメン)酸、21−トリアコンテン(または、ルメクエン)酸等;ジエン不飽和脂肪酸、例えば、2,4−ペンタジエン(または、β−ビニルアクリル)酸、2,4−ヘキサジエン(または、ソルビン)酸、2,4−デカジエン(または、スチリング)酸、2,4−ドデカジエン酸、9,12−ヘキサデカジエン酸、シス−9、シス−12−オクタデカジエン(または、α−リノール)酸、トランス−9、トランス−12−オクタデカジエン(または、リノエライジン)酸、トランス−10、トランス−12−オクタデカジエン酸、11,14−エイコサジエン酸、13,16−ドコサジエン酸、17,20−ヘキサコサジエン酸等;トリエン不飽和脂肪酸、例えば、6,10,14−ヘキサデカトリエン(または、ヒラゴン)酸、7,10,13−ヘキサデカトリエン酸、シス−6、シス−9−シス−12−オクタデカトリエン(または、γ−リノール)酸、トランス−8、トランス−10−トランス−12−オクタデカトリエン(または、β−カレンジン)酸、シス−8、トランス−10−シス−12−オクタデカトリエン酸、シス−9、シス−12−シス−15−オクタデカトリエン(または、α−リノレン)酸、トランス−9、トランス−12−トランス−15−オクタデカトリエン(または、α−リノレンエライジン)酸、シス−9、トランス−11−トランス−13−オクタデカトリエン(または、α−エレオステアリン)酸、トランス−9、トランス−11−トランス−13−オクタデカトリエン(または、β−エレオステアリン)酸、シス−9、トランス−11−シス−13−オクタデカトリエン(または、プニカ)酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸等;テトラエン不飽和脂肪酸、例えば、4,8,11,14−ヘキサデカテトラエン酸、6,9,12,15−ヘキサデカテトラエン酸、4,8,12,15−オクタデカテトラエン(または、モロクチン)酸、6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸、9,11,13,15−オクタデカテトラエン(または、α−またはβ−パリナリン)酸、9,12,15,18−オクタデカテトラエン酸、4,8,12,16−エイコサテトラエン酸、6,10,14,18−エイコサテトラエン酸、4,7,10,13−ドコサテトラエン酸、7,10,13,16−ドコサテトラエン酸、8,12,16,19−ドコサテトラエン酸等;ペンタエン不飽和脂肪酸およびヘキサエン不飽和脂肪酸、例えば、4,8,12,15,18−エイコサペンタエン(または、ティムノドン)酸、4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、4,8,12,15,19−ドコサペンタエン(または、イワシ)酸、7,10,13,16,19−ドコサペンタエン、4,7,10、13,16,19−ドコサヘキサエン酸、4,8,12,15,18,21−テトラコサヘキサエン(または、ニシン)酸等;分枝鎖脂肪酸、例えば、3−メチルブタン(または、イソ吉草)酸、8−メチルドデカン酸、10−メチルウンデカン(または、イソラウリル)酸、11−メチルドデカン(または、イソウンデシル)酸、12−メチルトリデカン(または、イソミリスチン)酸、13−メチルテトラデカン(または、イソペンタデシル)酸、14−メチルペンタデカン(または、イソパルミチン)酸、15−メチルヘキサデカン、10−メチルヘプタデカン酸、16−メチルヘプタデカン(または、イソステアリン)酸、18−メチルノナデカン(または、イソアラキン)酸、20−メチルヘンエイコサン(または、イソベヘン)酸、22−メチルトリコサノン(または、イソリグノセリン)酸、24−メチルペンタコサン(または、イソセロチン)酸、26−メチルヘプタコサノン(または、イソモナトニン)酸、2,4,6−トリメチルオクタコサン(または、ミコセラニンまたはミコセロシン)酸、2−メチル−シス−2−ブテン(アンゲリカ)酸、2−メチル−トランス−2−ブテン(または、チグリン)酸、4−メチル−3−ペンテン(または、ピロテレブ)酸等を含む。
【0095】
ある好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB−脂質複合体)は、リン脂質を含む。任意の好適なリン脂質が使用可能である。例えば、リン脂質は、天然源から得る、または化学的に合成することが可能である。本発明における使用に見られるリン脂質の例は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、スフィンゴミエリン等を含み、別個または組み合わせてのいずれかで使用される。ホスファチジルグリセロールは、短鎖または長鎖、飽和あるいは不飽和の、例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドニルホスファチジルグリセロール、短鎖ホスファチジルグリセロール(C−C)、およびそれらの混合物を有し得る。ホスファチジルコリンの例は、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジアラキドニルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、または水素添加大豆ホスファチジルコリンを含み、これらの例はそれらの混合物としても使用可能である。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)と、モノ−、ジ−、およびトリ−グリセリドの誘導体とを含む、組成物を提供する。本発明における使用に見られるグリセリドの例は、1−オレオイル−グリセロール(モノオレイン)、および1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロールを含むが、それらに限定されない。
【0097】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)を、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルチオエタノール、N−ビオチニルホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジルエチレングリコールを含むが、それらに限定されない、少なくとも1つの官能化リン脂質と複合することである。いくつかの好ましい実施形態では、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンBは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンと複合化される。
【0098】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)と、少なくとも1つの炭水化物ベースの脂質とを複合することである。本発明における使用に見られる炭水化物ベースの脂質の例は、ガラクト脂質、マンノ脂質、ガラクトレシチン等を含むが、それらに限定されない。
【0099】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)と、リン脂質の誘導体、例えば、ペグ化リン脂質とを複合化することである。例は、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール等のポリエチレングリコール(ペグ化、PEG)誘導体を含むが、それらに限定されない。
【0100】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)と、ポリエチレングリコール(PEG)と、1つ以上の脂質とを含む、組成物を提供する。
【0101】
別の態様によると、本発明は、1つ以上の脂質と複合化される、少なくとも1つの活性化合物(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB)を含む、組成物を提供する。例は、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンBと、コレステロールまたはコレステロール誘導体と、1つ以上のリン脂質を含む、組成物を含む。本発明による組成物の他の例は、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンBと、β−シトステロールと、1つ以上のリン脂質とを含む。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の組成物は、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンBと、硫酸コレステリルと、水素添加大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンとを含む。
【0102】
本発明の組成物は、活性化合物、例えば、デオキシコール酸アムホテリシンB(例えば、ファンギゾン(登録商標))を、濃度約0.5mg/mLから約25mg/mLで、水で溶解することによって作製可能である。いくつかの実施形態では、抗生物質は、濃度1mg/mLと約20mg/mLとの間で溶解される。ある好ましい実施形態では、抗生物質は、濃度1mg/mLと10mg/mLとの間で溶解される。特に好ましい実施形態では、抗生物質は、濃度1mg/mLと5mg/mLとの間で溶解される。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、約2.5重量%から約95重量%の総脂質、好ましくは、約10重量%から約90重量%の総脂質、またはより好ましくは、約20重量%から約90重量%の総脂質を含有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの活性化合物(例えば、デオキシコール酸ナトリウムを含むまたは含まない、アムホテリシンB)と、脂質とを、モル比1:1と1:100との間、例えば、モル比1:1から1:20の間、またはモル比1:1から1:30の間、またはモル比1:1から1:40の間、またはモル比1:1から1:50の間、モル比1:1から1:60の間、モル比1:1から1:70の間、およびモル比1:1から1:80の間で含有する。本明細書で使用される、「の間」という用語は、記載の範囲の臨界値を含む。例えば、モル比1:1から1:20「の間」は、1:1および1:20の比率を含む。
【0105】
ある好ましい実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの活性化合物(例えば、デオキシコール酸ナトリウムを含むまたは含まない、アムホテリシンB)と、硫酸コレステリルと、水素添加大豆ホスファチジルコリンとを含有する。そのような組成物は、アムホテリシンBと、デオキシコール酸ナトリウムとを、モル比1:2で含む。
【0106】
ある好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と、デオキシコール酸ナトリウムと、硫酸コレステリルと、水素添加大豆ホスファチジルコリンとを含む、組成物中の、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と硫酸コレステリルとのモル比は、1:1から1:20の間、例えば、1:1から1:10の間、または1:1から1:5の間、または1:lから1:2の間である。特に好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と硫酸コレステリルとのモル比は、1:1から1:5の間である。
【0107】
ある好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、デオキシコール酸ナトリウムを含むまたは含まない、アムホテリシンB)と、硫酸コレステリルと、水素添加大豆ホスファチジルコリンとを含む、組成物中の、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と水素添加大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、約1:1から1:90の間、例えば、1:1から1:70、または1:1から1:60、または1:1から1:50、または1:1から1:40、および1:1から1:30の間である。特に好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と水素添加大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、1:5から1:60の間である。
【0108】
ある好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と、デオキシコール酸ナトリウムを含むまたは含まない、硫酸コレステリルと、大豆ホスファチジルコリンとを含む、組成物中の、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、1:1から1:90の間、例えば、1:1から1:70、または1:1から1:60、または1:1から1:50、または1:1から1:40、および1:1から1:30の間である。特に好ましい実施形態では、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、1:5から1:60の間である。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、重量対重量比1:1と1:100との間の比率、例えば、1:1から1:20の比率の間、または1:1から1:30の比率の間、または1:1から1:40の比率の間、または1:1から1:50の比率の間、または1:1から1:60の比率の間、または1:1から1:70の比率の間、および1:1から1:80の比率の間、あるいは1:1から1:90の比率の間を有する、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と、総脂質とを含有する。
【0110】
いくつかの実施形態では、コレステロールまたはコレステリル誘導体(例えば、硫酸コレステリル)と、1つ以上のリン脂質(例えば、大豆ホスファチジルコリン)とのモル比は、1:1から1:90の間、例えば、1:1から1:70、または1:1から1:60、または1:1から1:50、または1:1から1:40、および1:1から1:30の間である。特に好ましい実施形態では、コレステロール誘導体(例えば、硫酸コレステリル)と、大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、1:1から1:20の間である。
【0111】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、活性化合物、例えば、アムホテリシンB(デオキシコール酸塩を含むまたは含まない)を、水で溶解するステップと、溶解した抗生物質と脂質とを混合するステップとを伴う。活性化合物−脂質複合体溶液は、好適なフィルタを通して濾過し、形成される複合体のサイズ分布を制御することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、脂質とデオキシコール酸ナトリウムとを水中で混合するステップと、次いで、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)を添加するステップとを伴う。活性化合物−脂質複合体溶液は、好適なフィルタを通して濾過し、形成される複合体のサイズ分布を制御することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、本方法は、アムホテリシンBとコレステリル誘導体、例えば、硫酸コレステリル、とを、水、またはpH1から3.0の範囲を有する緩衝液中で混合するステップを含み、所望に応じて、温度25℃から60℃の範囲で加熱可能である。結果として生じる懸濁液は、次いで、リン脂質、例えば、大豆ホスファチジルコリンまたは水素添加大豆ホスファチジルコリンと、水あるいは緩衝液中で混合され、pHは、好適な塩基または緩衝液で調節され、したがって、結果として生じる懸濁液は、pH5.00から8.00の範囲を達成する。酸性pHは、任意の好適な酸、例えば、塩酸、リン酸等によって、達成可能である。塩基または緩衝液の例は、二塩基性コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、三塩基性リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等を含むが、それらに限定されない。組成物は、糖類をさらに含有し得る。糖類の例は、スクロース、乳糖、デキストロース、トレハロース、マルトース等を含むが、それらに限定されない。糖類の百分率は、5%から約25%の範囲であり得る。結果として生じる懸濁液は、均質化または超音波処理され、粒径を減少させることができる。いくつかの実施形態では、水和化懸濁液は、好適なフィルタを通して濾過され、形成される複合体のサイズ分布を制御する。いくつかの実施形態では、水和化組成物は、凍結乾燥され、粉末形態の組成物を得ることができる。いくつかの実施形態では、水和化組成物は、加圧滅菌可能である。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明は、結果として生じる本発明の組成物が、アムホテリシンBと、デオキシコール酸ナトリウムと、1つ以上の脂質とを含むように、アムホテリシンBと、デオキシコール酸ナトリウムと、1つ以上の脂質とを、任意の好適な順番で混合するステップを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、デオキシコール酸ナトリウムを水に含有する溶液内にアムホテリシンBを混合するステップと、次いで、アムホテリシンBが完全に溶解するまで、水酸化ナトリウムによってpHを調節するステップとを含む。その後、脂質、例えば、大豆ホスファチジルコリンを、アムホテリシンB−デオキシコール酸ナトリウム溶液に添加され、続いて、もう1つの脂質、例えば、硫酸コレステリルが添加される。アムホテリシンB−脂質複合体溶液は、好適なフィルタを通して濾過し、形成される複合体のサイズ分布を制御することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明は、結果として生じる本発明の組成物が、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と、1つ以上の脂質とを含むように、活性化合物(例えば、アムホテリシンB)と、1つ以上の脂質とを、任意の好適な順番で混合するステップを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、アムホテリシンBを水に混合するステップと、次いで、アムホテリシンBが完全に溶解するまで、水酸化ナトリウムによってpHを調節するステップとを含む。脂質、例えば、大豆ホスファチジルコリンは、次いで、アムホテリシンB溶液に添加され、続いて、もう1つの脂質、例えば、硫酸コレステリルが添加される。アムホテリシンB−脂質複合体溶液は、好適なフィルタを通して濾過し、形成される複合体のサイズ分布を制御することができる。別の実施形態では、アムホテリシンBおよび硫酸コレステリルは、任意の所望のpHで、例えば、低pHで、例えば、pH1.00から4.00の間、または高pHで、例えば、pH9.00から12.00の間で、混合される。次いで、pHは、好適な塩基または緩衝液で調節され、4.00と8.00との間の範囲の結果として生じる懸濁液のpHを達成し、次いで、リン脂質、例えば大豆ホスファチジルコリンまたは水素添加ホスファチジルコリンと混合される。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明の製造の方法は、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、活性化合物(例えば、水中のアムホテリシンB)と、1つ以上の脂質とを含む、組成物を加熱するステップを含む。いくつかの実施形態では、加熱するステップは、温度30〜121℃の範囲で行われる。いくつかの好ましい実施形態では、加熱するステップは、温度40〜80℃で行われるが、一方、いくつかの特に好ましい実施形態では、加熱するステップは、温度40〜70℃で行われる。いくつかの実施形態では、水和化組成物は、加圧滅菌可能である。
【0117】
いくつかの実施形態では、本発明の製造の方法は、活性化合物(例えば、タクロリムス)と、コレステリル誘導体(例えば、硫酸コレステリル)と、ホスファチジルコリン、例えば、大豆ホスファチジルコリンまたは水素添加大豆ホスファチジルコリンとを、水または緩衝液中で混合するステップを含む。結果として生じる懸濁液は、任意の所望の温度20〜60℃の範囲で、均質化または超音波処理可能である。塩基または緩衝液の例は、二塩基性コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、三塩基性リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等を含むが、それらに限定されない。組成物は、さらに糖類を含有し得る。糖類の例は、スクロース、乳糖、デキストロース、トレハロース、マルトース等を含むが、それらに限定されない。糖類の百分率は、5%から約25%の範囲であり得る。結果として生じる懸濁液は、均質化または超音波処理され、粒径を減少することができる。いくつかの実施形態では、水和化懸濁液は、好適なフィルタを通して濾過し、形成される複合体のサイズ分布を制御される。いくつかの組成物では、水和化懸濁液は、凍結乾燥され、粉末形態の組成物を得ることができる。いくつかの実施形態では、水和化組成物は、加圧滅菌可能である。
【0118】
いくつかの実施形態では、本発明の製造の方法は、活性化合物(例えば、ドセタキセル)と、コレステリル誘導体(例えば、硫酸コレステリル)と、ホスファチジルコリン、例えば、大豆ホスファチジルコリンまたは水素添加大豆ホスファチジルコリンとを、水または緩衝液中で混合するステップを含む。結果として生じる懸濁液は、任意の所望の温度20〜120℃の範囲で、均質化または超音波処理可能である。塩基または緩衝液の例は、二塩基性コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、三塩基性リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等を含むが、それらに限定されない。組成物は、さらに糖類を含有し得る。糖類の例は、スクロース、乳糖、デキストロース、トレハロース、マルトース等を含むが、それらに限定されない。糖類の百分率は、5%から約25%の範囲であり得る。結果として生じる懸濁液は、均質化または超音波処理され、粒径を減少することができる。いくつかの実施形態では、水和化懸濁液は、好適なフィルタを通して濾過し、形成される複合体のサイズ分布を制御される。いくつかの組成物では、水和化懸濁液は、凍結乾燥され、粉末形態の組成物を得ることができる。いくつかの実施形態では、水和化組成物は、加圧滅菌可能である。
いくつかの実施形態では、本発明の製造方法は、活性化合物(例えば、パクリタキセル)と、コレステリル誘導体(例えば、硫酸コレステリル)と、ホスファチジルコリン、例えば、大豆ホスファチジルコリンまたは水素添加大豆ホスファチジルコリンとを、水または緩衝液中で混合するステップを含む。結果として生じる懸濁液は、任意の所望の温度20〜120℃の範囲で、均質化または超音波処理可能である。塩基または緩衝液の例は、二塩基性コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、三塩基性リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等を含むが、それらに限定されない。組成物は、さらに糖類を含有し得る。糖類の例は、スクロース、乳糖、デキストロース、トレハロース、マルトース等を含むが、それらに限定されない。糖類の百分率は、5%から約25%の範囲であり得る。結果として生じる懸濁液は、均質化または超音波処理され、粒径を減少することができる。いくつかの実施形態では、水和化懸濁液は、好適なフィルタを通して濾過し、形成される複合体のサイズ分布を制御される。いくつかの組成物では、水和化懸濁液は、凍結乾燥され、粉末形態の組成物を得ることができる。いくつかの実施形態では、水和化組成物は、加圧滅菌可能である。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物のpHは、約3から約11、好ましくは、pH約3.5から約8、より好ましくは、pH約4.0からpH8.0の範囲である。いくつかの実施形態では、好適なpHを有する水性溶液は、その中に溶解される適切な量の緩衝液を有する水から製造される。いくつかの好ましい実施形態では、緩衝液は、一塩基性リン酸ナトリウムと、二塩基性リン酸ナトリウムと、三塩基性リン酸ナトリウムとの混合物を含む。いくつかの好ましい実施形態では、緩衝液は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸アンモニウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシ−メチル)アミノエタン、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、フィルタを使用して、濾液から所望のサイズ範囲の複合体を得る。例えば、複合体を形成し、その後、5ミクロンフィルタを通して濾過して、直径約5ミクロン以下を有する複合体を得ることができる。別様に、1μm、500nm、200nm、100nm、または他のフィルタを使用し、それぞれ、直径約1μm、500nm、200nm、100nm、または任意の好適なサイズ範囲を有する複合体を得ることができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、無菌状態下、0.22μmまたは0.45μmフィルタを通して濾過することによって、殺菌可能である。別の実施形態では、本発明の組成物は、15〜20分間、120℃〜130℃の範囲で加圧滅菌することによって殺菌可能である。
【0122】
いくつかの実施形態では、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、活性化合物−脂質複合体(例えば、アムホテリシンB−脂質複合体)は、例えば、蒸発または凍結乾燥によって乾燥される。本発明のある実施形態では、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、活性化合物−脂質複合体(例えば、アムホテリシンB−脂質複合体)は、1つ以上の低温保護剤、例えば糖類、と共に凍結乾燥される。本発明における使用に見られる糖類の例は、トレハロース、マルトース、乳糖、スクロース、グルコース、およびデキストランを含むが、それらに限定されない。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、トレハロースおよび/またはスクロースを含む。凍結乾燥は、概して、真空下で行われ、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、活性化合物−脂質複合体(例えば、アムホテリシンB−脂質製剤)の事前凍結を、行うまたは行わずに、遂行することが可能である。本発明の凍結乾燥を何等かの特定の設定に制限せずに、本発明における凍結乾燥を、例えば、所望の容積を有するバイアルまたは他の容器中で行うことができる。また、凍結乾燥は、トレイ内で、バルクとして行うことができる。所望に応じて、複合体は、水と、生理食塩水と、デキストロースと、緩衝液とを含む、いずれかの所望の溶媒中に再懸濁可能である。
【0123】
本発明における使用に見られる医薬製剤は、錠剤、カプセル、丸薬、糖衣錠、坐薬、溶液、懸濁液、乳剤、軟膏を含むが、それらに限定されない。ゲルは、好適な医薬製剤とすることができる。いくつかの実施形態では、例えば、経口様式の投与のために、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、活性化合物−脂質複合体(例えば、アムホテリシンB−脂質複合体、タクロリムス脂質複合体、パクリタキセル、またはドセタキセル脂質複合体)は、錠剤、カプセル、トローチ剤、粉末、シロップ、水性溶液、懸濁液等の形態で使用される。いくつかの実施形態では、例えば、局所用途および座薬のために、活性化合物−脂質複合体(例えば、アムホテリシンB−脂質複合体、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない)は、例えば、好適な水溶性または水不溶性賦形剤、例えば、ポリエチレングリコール、ある種の脂肪、およびエステル、高含量のポリ不飽和脂肪酸を有する化合物、ならびにその誘導体の添加によって周知の、ゲル、油、および乳剤の形態で提供される。誘導体は、モノ−、ジ−、およびトリグリセリド、ならびにその脂肪族エステル(例えば、魚油、植物油等)、またはこれらの物質の混合物を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物との併用使用で見られる賦形剤は、薬物複合体が、十分安定しており、治療のための使用が可能であるものを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、活性化合物−脂質複合体(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB−脂質複合体、あるいはタクロリムス−脂質複合体、パクリタキセル、またはドセタキセル脂質複合体)の製剤は、例えば、胃酸から保護する、腸溶性コーティング錠剤またはカプセル内に調製される。「腸」は、小腸を指し、したがって、「腸溶性コーティング」は、概して、小腸に達する前に、薬剤の放出を実質的に防止するコーティングを指す。本発明はいかなる特定の作用機構にも制限していないが、ほとんどの腸溶性コーティングは、酸性pHでは、安定しているが、より高いpHでは、迅速に破壊される表面を呈することによって作用すると理解されたい。本発明における使用に見られる腸溶性コーティングは、当技術分野において周知の方法に従って、活性化合物−脂質複合体(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB−脂質複合体、タクロリムス脂質複合体、パクリタキセル、あるいはドセタキセル脂質複合体)で充填されたカプセルを含む。
【0125】
デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、活性化合物−脂質複合体(例えば、アムホテリシンB−脂質複合体)の本発明の製剤は、様々なサイズの複合体、または実質的に均一サイズの複合体を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、複合体は、サイズ範囲約1mm以下を有するが、一方、好ましい実施形態では、複合体は、ミクロンまたはサブミクロン範囲である。いくつかの実施形態では、複合体は、直径約5μm以下、例えば、0.2μm以下、またはさらに0.1μm以下の直径を有する。
【0126】
本発明の活性化合物−脂質複合体(例えば、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンB−脂質複合体)は、異なる形状およびサイズのミセル、混合ミセル、リポソーム、およびベシクルを含む、あるいは本質的にそれらから成り得る。
【0127】
前述のように、アムホテリシンB複合体の製造のために、本発明で概略される技術はまた、任意の他の水不溶性薬物への使用にも好適である。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明のアムホテリシンB−脂質複合体(デオキシコール酸塩を含むまたは含まない)は、例えば、哺乳類における真菌感染症を治療するために提供される。この点において、本発明は、デオキシコール酸塩を含むまたは含まない、アムホテリシンBと脂質の複合体を含む組成物を、被験体内の真菌感染症を治療するために十分な量で、被験体(例えば、真菌感染症患者)に投与することを含む、真菌感染症を治療する方法を提供する。
【0129】
本発明の組成物は、アクレモニウムエス・ピー(Acremonium sp.)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニューモニア(Aspergillus pneumonia)、ブラストマイセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギュィラーモンディ(Candida guillermondi)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、フサリウムエス・ピー(Fusarium sp.)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ムコール・ムセド(Mucor mucedo)、ロドトルラエス・ピー(Rhodotorula sp.)、スポロトリクス・シェンキー(Sporothrix schenckii)、アカントアメーバ・ポリファーガ(Acanthamoeba polyphaga)、エントモフトラエス・ピー(Entomophthora sp.)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatumm)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania brasiliensis)、リゾパスエス・ピー(Rhizopus sp.)、ロドトルラエス・ピー(Rhodotorula sp.)、トルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)を含むが、それらに限定されない、多数の菌類および寄生虫によって生じる感染を治療するために採用可能である。さらなる真菌病原菌は、トリコスポロン(Trichosporon)、ムコ(Muco)、アルテルナリア(Alternaria)、バイポラリス(Bipolaris)、カーブラリア(Curvularia)等を含む。
【0130】
また、本発明の組成物は、黒熱病(Kala−azar)とも称される内蔵リーシュマニア(Visceral Leishmaniasis)、ならびにドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)複合体、ドノバンリーシュマニア、(L.d donovani)小児リーシュマニア、(L.d infantum)、アーチボルド リーシュマニア(L.d archibaldi)、シャガシリーシュマニア(L.d chagasi)、サシチョウバエ(Phlebotomus sp.)、およびスナバエ(Lutzomya logipalpis)によって生じる感染症を治療するために採用可能である。
【0131】
また、本発明の組成物は、ウイルス感染、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV2)、C型肝炎ウイルス(HCV)、およびサイトメガロウイルス(CMV)によって生じるものを治療するために使用可能である。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明の活性化合物脂質−複合体(例えば、ドセタキセル−脂質複合体またはパクリタキセル−脂質複合体)は、例えば、哺乳類における癌を治療するために採用される。この点において、本発明は、活性化合物脂質−複合体(例えば、ドセタキセル−脂質複合体またはパクリタキセル−脂質複合体)と脂質との複合体を含む組成物を、被験体内の癌を治療するために十分な量で、被験体(例えば、癌患者)に投与するステップを含む、癌を治療する方法を提供する。癌は、哺乳類におけるあらゆる種類の癌であってもよい。例は、頭部、首、脳、血液(例えば白血病、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、骨髄腫)、胸部、肺、膵臓、骨、脾臓、膀胱、前立腺、精巣、結腸、腎臓、卵巣、および皮膚(例えばカポジ肉腫)、骨髄、肝臓、胃、舌、口、ならびに喉頭の癌を含むが、それらに限定されない。さらに、本発明の活性化合物−脂質複合体は、抗癌剤、化学療法、放射線等の他の治療剤に対する抵抗を発達させる癌細胞の傾向を低減する際に有用である。したがって、他の治療剤は、有利に、有効な組み合わせの形態で、または別個の投与によって、本発明において使用可能である。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明の活性化合物脂質−複合体(例えば、タクロリムス−脂質複合体)は、器官(臓器)移植によって生じる拒絶反応を治療するために使用され、例えば、哺乳類における器官または組織移植に投与可能である。この点において、本発明は、活性化合物脂質−複合体(例えば、タクロリムス−脂質複合体)と脂質との複合体を含む組成物を、被験体内の器官または組織拒絶反応を防止するために十分な量で、被験体(例えば、器官または組織移植患者)に投与するステップを含む、器官または組織拒絶反応を防止する方法を提供する。
【0134】
本発明の実施例は、以下に例証されるが、本発明は、以下の実施例に制限されず、本願に記載される趣旨から逸脱することなく、変更が成され得る。
【実施例1】
【0135】
アムホテリシンB(1gm)をpH1.5から3.5の水性媒体中に懸濁し、硫酸コレステリルナトリウム3gmと混合した。大豆ホスファチジルコリン(7gm)を、アムホテリシンBおよび硫酸コレステリルナトリウム複合体と30分間撹拌および混合した。次いで、混合物を高圧均質化に供した。7.5〜9.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥させ、注射用に水で再構成した。ナイコンプ(Nicomp)粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積直径(mean volume diameter)は、200nm未満であった。
【実施例2】
【0136】
実施例1に記載のように、脂質を有するアムホテリシンB製剤を使用して、赤血球(RBC)の溶血を試験した。ファンギゾン(登録商標)0.16mg/mLで、50%の細胞が溶解したがこれと比較して、アムホテリシンB脂質懸濁液では、RBCとのインキュベーション後に溶解は生じなかった。また、毒性試験をBalb/cマウスで行った。合計9匹のマウス(7週齢)を、20mg/kgでアムホテリシンB製剤の静脈内投与に供した。マウスを30日間モニタリングした。30日経過時点で、死亡は認められなかった。これは、本製剤を使用した最大耐性用量は、20mg/kgを上回ることを示唆した。
【表1】

【実施例3】
【0137】
アムホテリシンB(1gm)をpH1.5から3.5の水性媒体中に懸濁し、硫酸コレステリルナトリウム3gmと混合した。水素添加大豆ホスファチジルコリン(7gm)を、アムホテリシンBおよび硫酸コレステリルナトリウム複合体と30分間撹拌および混合した。次いで、混合物を高圧均質化に供した。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥させ、注射用に水で再構成した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。Nicomp粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積重量直径は、200nm未満であった。
【実施例4】
【0138】
アムホテリシンB(20mg)およびデオキシコール酸ナトリウム(6.56mg)を、水酸化ナトリウムを使用して、pH11.00から12.5で水(10mL)中に溶解した。次いで、好適な酸(例えば、リン酸)によって、pHをpH7.00〜8.5に調節した。水素添加大豆ホスファチジルコリン(930mg)および硫酸コレステリル(10.4mg)を水(10mL)中で混合し、30分間均質化または超音波処理した。次いで、脂質懸濁液をアムホテリシンB−デオキシコール酸塩溶液と混合し、さらに1時間均質化または超音波処理した。懸濁液は、所望に応じて、温度25℃から60℃の範囲で加熱してもよい。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。製剤をBalb/cマウスにおいて毒性試験し、アムホテリシンBのデオキシコール酸塩製剤(ファンギゾン(登録商標))と比較した。動物の体重を測定し、異なる群に無作為に割り当てた(5動物/群)。合計当たりのマウス生存数として、結果を以下の表に報告する。
【表2】

【0139】
データは、アムホテリシンBのリポソーム製剤が、市販の製品(ファンギゾン(登録商標))と比較して、有意に毒性が少ないことを示した。
【実施例5】
【0140】
実施例4に記載されるように、脂質を有するアムホテリシンB製剤を、デオキシコール酸塩を含まずに製造した。結果として生じる製剤を7.5%スクロースまたは乳糖の存在下、凍結乾燥した。本製剤もまた、実施例4と同様の特性を示した。
【実施例6】
【0141】
アムホテリシンB(50mg)および硫酸コレステリル(50mg)を、pH2.5〜3の水中で混合した。SPC(500mg)を別途水中に懸濁させ、アムホテリシンBおよび硫酸コレステリル懸濁液と混合し、高圧均質化装置を使用して、均質化した。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。再構成した製剤を、単回用量の静脈内注射によって、Balb/cマウスにおいて毒性試験したが、実施例2において見られた20mg/kg用量レベルでの死亡は認められなかった。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。粒径データを以下の表に示す。
【表3】

【実施例7】
【0142】
アムホテリシンB(100mg)およびデオキシコール酸塩(33mg)をpH9〜12.00の水で溶解し、その後、pH7.5に調節した。次いで、アムホテリシンB懸濁液を硫酸コレステリル(52mg)および水素添加大豆ホスファチジルコリン(4.62g)を水中で混合し、60分間超音波処理した。7.5%スクロースの存在下、バイアルおよびバルクの両方の中で製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積重量直径は、200nm未満であった。
【表4】

【実施例8】
【0143】
アムホテリシンB(50mg)および硫酸コレステリル(50mg)をpH2.5〜3のコハク酸ナトリウム緩衝液中で混合する。コハク酸ナトリウム緩衝液中のSPC(500mg)を、別途アムホテリシンBおよび硫酸コレステリル懸濁液と混合し、高圧均質化装置を使用して均質化した水中に懸濁させる。7.5〜9.5%スクロースまたは9.5%乳糖の存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成する。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積重量直径は、200nm未満であった。
【実施例9】
【0144】
アムホテリシンB(2g)および硫酸コレステリル(1.04g)をpH2.5のコハク酸緩衝液中で混合し、室温で5分間超音波処理した。コハク酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)中の大豆レシチン(18.96g)をアンフォテリシン−硫酸コレステリル懸濁液と一緒にし、高圧均質化装置を使用して均質化した。次いで、無菌状態下、7.5〜9.5%スクロースまたは9.5%乳糖溶液と混合する前に、121℃で15分間、製剤を加圧滅菌した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。粒径データを以下の表に示す。
【表5】

【0145】
アムホテリシンBと、大豆ホスファチジルコリンと、硫酸コレステリルとを含む、本発明の製剤のHPLC分析を行い、その結果を以下の表に概略した。
【表6】

【0146】
全身性有害事象:健康なヒトボランティアにおけるファンギゾン(登録商標)とアムホテリシンB脂質懸濁液との比較。
【0147】
ファンギゾン(登録商標)対アムホテリシンB脂質懸濁液の安全性および耐性を、ヒト男性被験者において評価した。本研究では、合計24名のボランティアが参加した。このうち、6名(n=6)にファンギゾン(登録商標)(0.6mg/kg)を静脈内投与し、18名(n=18)にアムホテリシンB脂質懸濁液(0.6mg/kg〜1.5mg/kg)を投与した。
【0148】
アムホテリシンB脂質懸濁液では、軽度の有害事象が、3/18名(17%)の健康な男性被験者およびファンギゾン(登録商標)を注入した4/6名(66%)において報告された。総合的に、アムホテリシンB脂質懸濁液は、明らかに安全であって、1.5mg/kgまでの良好な耐容性を示す。
【実施例10】
【0149】
タクロリムス(20mg)および硫酸コレステリル(20mg)を水(10mL)中で混合し、30分間超音波処理し、懸濁液を形成した。水(10mL)中のSPCを、タクロリムスおよび硫酸コレステリル懸濁液と混合し、高圧均質化装置を使用して均質化した。7.5%スクロースの存在下、バイアルおよびバルクの両方の中で製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積径は、200nm未満であった。
【実施例11】
【0150】
デオキシコール酸塩(1mg)および硫酸コレステリル(1mg)を水中で混合し、30分間超音波処理し、懸濁液を形成した。水中のSPCを、タクロリムスおよび硫酸コレステリル懸濁液と混合し、高圧均質化装置を使用して均質化した。7.5−%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積直径は、200nm未満であった。
【実施例12】
【0151】
タクロリムス(100mg)、硫酸コレステリル(60mg)、および大豆レシチン(3.94g)を水(70mL)中で一緒に混合し、高圧均質化装置を使用して均質化した。次いで、結果として生じる懸濁液を0.2μフィルタを通して濾過し、次いで、7.5%スクロース溶液(30mL)と混合し、バイアルおよびバルクの両方の中で凍結乾燥した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積重量直径は、200nm未満であった。
【表7】

【実施例13】
【0152】
タクロリムス(200mg)、硫酸コレステリル(120mg)、および大豆レシチン(7.88g)を水(70mL)中で一緒に混合し、高圧均質化装置を使用して均質化した。次いで、結果として生じる懸濁液を0.2μフィルタを通して濾過し、次いで、7.5%スクロース(30mL)と混合し、バイアルおよびバルクの両方の中で凍結乾燥した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積重量直径は、200nm未満であった。
【表8】

【0153】
タクロリムス脂質懸濁液をBalb/cマウスにおいて毒性試験した。10mg/kgおよび20mg/kgの単回試験用量を、マウスに静脈内投与した。有意な体重減少もなく、全匹のマウスが生存した。同様に、用量10mg/kgまたは20mg/kgを連続5日、それぞれ、蓄積用量50mg/kgおよび100mg/kgで、反復投与毒性試験を行った。群内全匹の動物が生存した。合計当たりのマウス生存数として、結果を以下の表に報告する。
【表9】

【実施例14】
【0154】
0.9%塩化ナトリウム水溶液(2mL)中のドキソルビシン(40mg)を添加し、さらに60分間超音波処理する前に、0.9%aq.塩化ナトリウム水溶液中に硫酸コレステリル(2.08mg)および水素添加大豆ホスファチジルコリン(185.92mg)(2mL)を65℃で30分間超音波処理した。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。
【実施例15】
【0155】
0.9%塩化ナトリウム溶液(10mL)中のドキソルビシン(40mg)を添加し、さらに60分間超音波処理する前に、0.9%aq.塩化ナトリウム水溶液中の硫酸コレステリル(20mg)および大豆レシチン(156.8mg)を65℃で30分間超音波処理した。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。Nicomp粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積直径は、200nm未満であった。
【実施例16】
【0156】
ドセタキセル(20mg)、硫酸コレステリル(12.0mg)、および大豆レシチン(788mg)を水(10mL)中で混合し、高圧均質化装置を使用した。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積重量直径は、200nm未満であった。
【表10】

【実施例17】
【0157】
ドセタキセル(40mg)、硫酸コレステリル(24.0mg)、および大豆レシチン(1.57g)を水(10mL)中で、高圧均質化装置を使用して混合した。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積直径は、200nm未満であった。
【実施例18】
【0158】
パクリタキセル(20mg)、硫酸コレステリル(11.4mg)、大豆レシチン(788.6mg)を水(10mL)中で混合し、高圧均質化装置を使用して均質化した。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。平均体積重量直径は、200nm未満であった。
【表11】

【0159】
パクリタキセル脂質懸濁液をBalb/cマウスにおいて毒性試験した。試験用量(40mg/kg)をマウスに静脈内投与し、動物を30日間モニタリングした。有意な体重減少もなく、全匹のマウスが生存した。同様に、用量40mg/kgを連続5日、蓄積用量200mg/kgで、反復投与毒性試験を行った。群内全匹の動物が生存した。試験を30日間モニタリングした。合計当たりのマウス生存数として、結果を以下の表に報告する。
【表12】

【実施例19】
【0160】
パクリタキセル(40mg)、硫酸コレステリル(22.8mg)、および大豆レシチン(1.58g)を水(10mL)中で混合し、高圧均質化装置を使用して均質化した。7.5%スクロースの存在下、製剤を凍結乾燥し、注射用に水で再構成した。ナイコンプ粒径測定器380を使用して、粒径を測定した。粒径データを以下の表に示す。
【表13】

【0161】

【0162】

【0163】
先行一覧内のもの、および本明細書に別様に引用されるものを含む、本明細書に引用の刊行物、特許出願、特許を含む、すべての参照文献は、各参照文献が、個々に、かつ具体的に、参照することによって、本明細書に組み込まれるように示され、全体として記載される場合と同程度に、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0164】
本発明を実行する発明者に既知の最良の様式を含み、本発明の好ましい実施形態が記載されている。本発明の記載の方法および系の種々の変更および変形例は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明白であり、発明者は、具体的に本明細書に記載される以外に別様に実施可能な発明も意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の請求項に記載の主題のあらゆる変更および均等物を含む。さらに、そのあらゆる可能な変形例における前述の要素の任意の組み合わせは、本明細書に示される、または文脈によって明確に反論されない限り、本発明に包含される。実際、当業者に明白な、本発明を実行するための記載の様式のいかなる変更も、以下の特許請求の範囲内であると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の疾患を治療する方法であって、
a)水性系を使用して、少なくとも1つの活性化合物と少なくとも1つの脂質とを含む複合体を含む組成物を製造すること、および
b)前記組成物を被験体に投与すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記複合体が、脂質化合物懸濁液を含み、前記水性系が、
a)前記少なくとも1つの活性化合物と前記少なくとも1つの脂質とを含む懸濁液を、約pH4.0と約pH8.0との間のpHの第1の水性媒体中で製造すること、
b)前記懸濁液を処理し、規定の粒径の脂質−化合物懸濁液を形成すること、
c)前記規定の粒径の脂質−化合物懸濁液を凍結乾燥し、凍結乾燥された物質を形成すること、
d)前記凍結乾燥された物質を第2の水性媒体で再構成し、規定の粒径の脂質製剤の懸濁液を得ること
を含み、前記規定の粒径が、5ミクロン未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの活性化合物が、デオキシコール酸塩を含むアムホテリシン−B、デオキシコール酸塩を含まないアンフォテリシンB、ドセタキセル、パクリタキセル、タクロリムス、ドキソルビシン、エピルビシン、アントラサイクリン類、およびエトポシドから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの脂質が、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、コレステロール(Chol)、コレステロール硫酸およびその塩(CS)、コレステロールヘミスクシナートおよびその塩(Chems)、コレステロールリン酸およびその塩(CP)、コレステリルホスホコリンおよび他のヒドロキシコレステロールまたはアミノコレステロール誘導体、コハク酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、コレステロールのポリエチレングリコール誘導体(コレステロール−PEG)、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン、ならびにカルシフェロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ガラクト脂質、マンノ脂質、ガラクトレシチンから成る群から選択される炭水化物ベースの脂質、β−シトステロール、スチグマステロール、スチグマスタノール、ラノステロール、α−スピナステロール、ラソステロール、カンペステロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、およびジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロールおよびジオレオイルホスファチジルグリセロールのペグ化誘導体から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの脂質が、飽和または不飽和脂肪酸から成る群から選択される、1つ以上の脂肪酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの脂質が、コレステロールまたはコレステロール硫酸およびその塩、コレステロールヘミスクシナートおよびその塩、コレステロールリン酸およびその塩から成る群から選択され、前記組成物が、少なくとも1つのリン脂質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの脂質が、コレステロールまたはコレステロール誘導体を含み、活性化合物対コレステロールまたはコレステロール誘導体のモル比が、約1:1と約1:10との間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの脂質が、水素添加大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンを含み、活性化合物と水素添加大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンのモル比が、約1:1と約1:90との間である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、濃度約0.5mg/mLから約25mg/mLの活性化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、総脂質濃度2.5重量%から約95重量%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物中の活性化合物対脂質のモル比が、1:10と1:100との間である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物中の総活性化合物対総脂質の重量対重量比が、1:10と1:60との間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、粉末、溶液、懸濁液、乳剤、ミセル、リポソーム、脂質粒子、ゲル、およびペースト形態から成る群から選択される形態を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、複数のミセルを含み、前記ミセルが、単量体、二量体、多量体、またはミセルとベシクルとの混合物の形態である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複合体を含む組成物の前記製造が、前記複合体を凍結乾燥された形態で製造することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複合体を凍結乾燥された形態で製造することが、低温保護剤を使用することを含み、前記低温保護剤が、トレハロース、マルトース、乳糖、スクロース、グルコース、およびデキストランから成る群から選択される1つ以上の糖類を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、錠剤または充填カプセルを含み、任意に、腸溶性コーティング物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化合物が、部分的に、水溶性または水不溶性薬物である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記投与することが、前記被験体への前記脂質組成物の経口、静脈内、皮下、非経口、腹腔内、直腸内、膣内、および/または局所送達を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
活性化合物の脂質製剤を製造するための方法であって、水性系を使用して、複合体を含む組成物を製造することを含み、前記複合体が、少なくとも1つの活性化合物と、少なくとも1つの脂質とを含む、前記方法。
【請求項22】
前記方法が、規定の粒径の脂質製剤を製造するための方法であって、
a)少なくとも1つの活性化合物と、少なくとも1つの脂質とを含む懸濁液を、約pH4.0と約pH8.0との間のpHの第1の水性媒体中で製造すること、
b)前記懸濁液を処理し、規定の粒径の脂質−化合物懸濁液を形成すること、
c)規定の粒径の前記脂質−化合物懸濁液を凍結乾燥し、凍結乾燥された物質を形成すること、
d)前記凍結乾燥された物質を第2の水性媒体で再構成し、規定の粒径の脂質製剤の懸濁液を得ること
を含み、前記規定の粒径が、5ミクロン未満の平均粒径を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の水性媒体が、水である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の水性媒体および前記第2の水性媒体が異なる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記懸濁液を処理することが、選択されたサイズの開口部を通して、前記懸濁液を押し出すことを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記懸濁液を処理することが、高圧分離均質化を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記凍結乾燥することが、低温保護剤の存在下で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記活性化合物が、ポリエン抗生物質、マクロライド、抗癌剤、および免疫抑制剤から成る群から選択される活性化合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記活性化合物が、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、タモキシフェン、エンドキシフェン、エトポシド、アントラサイクリン類、アムホテリシンB、タクロリムス、およびサクロリムスから成る群から選択される化合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの脂質が、卵ホスファチジルコリン、卵ホスファチジルグリセロール、大豆ホスファチジルコリン、水素添加大豆ホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、コレステロール、コレステロール硫酸およびその塩、コレステロールヘミスクシナートおよびその塩、コレステロールリン酸およびその塩、コレステリルホスホコリンおよび他のヒドロキシコレステロールまたはアミノコレステロール誘導体、コハク酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、コレステロールのポリエチレングリコール誘導体(コレステロール−PEG)、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン、ならびにカルシフェロールから成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記脂質製剤が、コレステロール硫酸を含み、前記懸濁液中の活性化合物対コレステロール硫酸のモル比が、約1:1から約1:10の間である、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
再構成時の前記組成物の平均粒径が、約10〜5000nmである、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの活性化合物が、水、アルコール、およびハロゲン化炭化水素系溶媒中において難溶性を示す、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
規定の粒径の脂質製剤の前記懸濁液が、リポソームおよび/または脂質粒子の懸濁液を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの活性剤と少なくとも1つの脂質とを含む脂質組成物で細胞を処理する方法であって、
a)水性系を使用して、少なくとも1つの活性化合物と少なくとも1つの脂質とを含む複合体を含む組成物を製造すること、および
b)前記細胞を前記脂質組成物に曝露すること
を含む、前記方法。
【請求項36】
前記細胞を曝露することが、前記細胞を前記脂質組成物に生体内で曝露することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記被験体が、哺乳類である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳類が、ヒトである、請求項37に記載の方法。

【公表番号】特表2010−505965(P2010−505965A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532562(P2009−532562)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/080984
【国際公開番号】WO2008/127358
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509103303)ジャイナ ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】