説明

脂質代謝改善機能を有するカリン由来ポリフェノール

【課題】カリン抽出物由来の生理活性物質及びそれを利用した脂質代謝改善剤、飲料、食品等を提供する。
【解決手段】生カリン果実を、熱水、エタノール、又はそれらの混合溶媒により抽出した抽出物から得られる、カテキン重合度が2〜18のポリフェノール、このポリフェノールを有効成分として含有する脂質代謝改善剤、及びこのポリフェノールを添加した飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質代謝改善機能を有するカリン由来ポリフェノール、及びそれを含む脂質代謝改善剤及び飲食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
カリン(学名:Chaenomeles sinesis)の可食部等にはポリフェノールが含まれており、カリン由来抽出物が糖尿病の改善に対して有効であることについてはいくつかの報告がある。例えば、カリン可食部の凍結乾燥粉末の熱水抽出物は、抗酸化活性(DPPHラジカル消去活性)、糖化タンパク質(AGE)生成阻害活性を有し、糖尿病ラットに経口投与した場合、血漿中の糖濃度を減少させ、糖尿病に特徴的な体重の減少を抑制する作用を有することが公知である(非特許文献1:小浜ら、岩手県工業技術センター研究報告 第13号、2006)。特許文献1(特開2009−167153号公報)には、カリンの果肉以外の部位(葉等)のメタノール抽出物が、血糖値上昇抑制作用を有することが記載されている。特許文献2(特開2007−131599号公報)には、カリンの果実、種子等の熱水又はアルコール等の水性液体による抽出物が、グリケーション抑制作用を有することが記載されている。
しかし、カリンは、抗肥満効果を有することについては知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−167153号公報
【特許文献2】特開2007−131599号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小浜ら、「機能性に優れた県産食品素材の検索(III)」、岩手県工業技術センター研究報告 第13号(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、カリン抽出物の更なる有効利用を企図してその作用を詳細に調べた。すなわち、本発明は、カリン抽出物由来の生理活性物質及びそれを利用した脂質代謝改善剤、飲料、食品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カリン抽出物に含まれるポリフェノールが肥満を改善する優れた作用を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、
〔1〕 生カリン果実を、熱水、エタノール、又はそれらの混合溶媒により抽出した抽出物から得られる、カテキン重合度が2〜18のポリフェノール;
〔2〕 前記〔1〕記載のポリフェノールを有効成分として含有する脂質代謝改善剤;
〔3〕 前記〔1〕記載のポリフェノールを添加した飲食品
が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリフェノールは、カリン果実から容易に得ることができ、市販のブドウ種子ポリフェノールと比較して顕著に優れた脂質代謝改善作用を有する。また、カリンは、古くから食用に供せられており、毒性又は副作用については報告されておらず、非常に安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、カリン熱水抽出物(KW)及びエタノール抽出物(KA)のSephadex(セファデックス)LH−20ゲルによるカリンポリフェノールの分画を表す図である。
【図2】図2は、カリン熱水抽出物(KW)とエタノール抽出物(KA)のDPPHラジカル消去能を表す図である。
【図3】図3は、ORAC法によるカリン熱水抽出物(KW)及びエタノール抽出物(KA)のDPPHラジカル消去能を表す図である。
【図4】図4は、カリン抽出物の膵リパーゼ阻害活性を表す図である。G=市販ブドウ種子抽出物、KA=カリンアルコール抽出物ポリフェノールである。
【図5】図5は、カリン抽出物ポリフェノールを摂取した高脂肪食負荷KK−Ayマウスの血糖値の経時変化及び最終日血糖値を表す図である。C=20%カゼイン食、G=ブドウ種子抽出物添加20%カゼイン食、K=カリン抽出物添加20%カゼイン食を、それぞれ与えた群。値は、平均値±標準偏差を示す(n=5〜6)。*は、C群に対し、P<0.05を表す。
【図6】図6は、カリン抽出物ポリフェノールを摂取した高脂肪食負荷KK−Ayマウスの血中アディポネクチン、血中インスリン、血中トリグリセリド及び血中総コレステロール濃度を表す図である。C=20%カゼイン食、G=市販ブドウ種子抽出物添加20%カゼイン食、K=カリン抽出物添加20%カゼイン食。値は、平均値±標準偏差を示す(n=5〜6)。a、bは、それぞれ異なる符号の群に対し、P<0.05を表す。
【図7】図7は、カリン抽出物ポリフェノールを摂取した高脂肪食負荷KK−Ayマウスの肝臓トリグリセリド、肝臓コレステロール含量及び糞中胆汁酸排泄量を表す図である。C=20%カゼイン食、G=ブドウ種子抽出物添加20%カゼイン食、K=カリン抽出物添加20%カゼイン食。値は、平均値±標準偏差を示す(n=5〜6)。a、bは、それぞれ異なる符号の群に対し、P<0.05を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカリン抽出物ポリフェノールは、生のカリン果実を、熱水又はエタノール、又はそれらの混合溶媒を用いて抽出することにより、得られる。この抽出物は、そのまま使用することができるが、必要に応じて凍結乾燥したものを用いることもできる。さらに、後述するようなカラムクロマトグラフィ等の技術を用いて精製することもできる。
【0010】
抽出工程は、植物原料に熱水又はエタノール、あるいはこれらの混合溶媒を用いて行う。これらの液体を用いて抽出することにより、溶媒の残留による影響が懸念されないので、好都合である。
【0011】
抽出温度は、熱水を用いる場合、好ましくは50℃以上120℃以下である。抽出効率、操作性、経済性などのバランスから、最も好ましくは70℃以上100℃以下である。エタノールを用いる場合は、常温で行うことができ、混合溶媒を用いる場合はそれらの中間的な温度で抽出を行うことができる。
【0012】
抽出は、通常は常圧下で行うが、加圧又は減圧条件下で実施してもよい。なお、抽出温度又は圧力条件によっては、抽出媒体は液体ではなく、蒸気又は気体の形態であってもよい。
【0013】
このようにして得られた本発明のポリフェノールを含む液状の抽出物は、そのまま脂質代謝改善剤又は飲食品、医薬品、飼料などの素材として利用することができる。抽出物を、吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等の手法を用いて濃縮及び/又は精製してもよい。また、噴霧乾燥、凍結乾燥、膜ろ過等による乾燥、濃縮などによって、粉末状、ペースト状などの形態として利用してもよい。
【0014】
本発明の抽出物ポリフェノールを飲食品とする場合は、単独で又は他の果実ジュースなどと混合して液状組成物としたり、パンやクッキーなどに混入して固体組成物としたり、又はヨーグルトやジャムなどに混入してクリーム状の組成物としたりすることができる。
また、抽出物ポリフェノールを原料として、発酵させて酒類や酢等とすることができる。
【0015】
本発明の抽出物ポリフェノールは、医薬品や医薬部外品などに使用することもできる。たとえば、医薬組成物とする場合、抽出物をそのまま、あるいは常用される無機又は有機の担体又は医薬賦形剤を加えて、固形、半固形、又は液状で経口投与剤や、経腸剤、外用剤などの非経口投与剤とすることができる。
【0016】
このような脂質代謝改善作用を有する本発明の医薬品組成物の有効な投与量は、投与対象の年齢、体重、一般的な身体状態などに応じて適宜変化させることができるが、たとえば成人1日当たり総ポリフェノール含量に換算して0.01〜10g、一般的には0.05〜5g、さらに一般的には0.1〜0.5gを、経口投与することができる。
【0017】
以下に本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明は何らこれらに限定されることはない。
【実施例】
【0018】
カリン抽出物ポリフェノールの製造
1cm角程度に刻んだ生のカリン果実(岩手県産)に10倍量の水を加え、オートクレーブを用いて100℃で1時間加熱してカリン熱水抽出物を得た。ろ紙で不溶物を除去し、可溶性部分を凍結乾燥し、これをカリン熱水抽出物ポリフェノール(「KW」と表記することがある)とした。1kgのカリンから約30gの試料が得られた。
【0019】
同様に、生のカリン果実に10倍量のエタノールを加えて室温で一晩抽出して抽出物を得、ろ紙で不溶物を除去し、可溶性部分をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。この抽出物をカリンアルコール抽出物ポリフェノール(「KA」と表記することがある)とした。1kgのカリンから約15gの試料が得られた。
【0020】
これらの各試料を、ポリフェノール量として2.5mg/mlになるように水に溶解して、「セファデックスLH−20」(商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス、東京)を充填したカラム(3.2×19cm)に4ml添加し、次いで600mlの水、50%メタノール、80%メタノール、70%アセトンの順に試料溶液中の成分を流速1.5ml/分で溶出させた。
【0021】
この分画により、低分子のポリフェノールはほとんどゲルに吸着されずに水で溶出され、分子量(重合度)が大きくなるに従いメタノール、アセトンで溶出される。KW及びKAは、いずれも80%メタノール画分と70%アセトン画分がFolin−Denis法で測定した全ポリフェノール含量の30〜40%程度を占めていた(図1)。
【0022】
また、上記で製造したKW及びKAのそれぞれを、「Discovery HS PEF」(商品名、4.6×250mm, Sigma-Aldorich, USA)カラムに添加し、移動相として60%メタノール−0.1%ギ酸を用いて0.6ml/minで溶出させ、280nmの吸光度で検出した。このカラムに充填されているゲルは、ポリフェノールの水酸基と相互作用するため、カテキンが重合したプロシアニジンの場合、モノマー、ダイマー、トリマーと重合度にしたがって溶出される。
【0023】
その結果、KW及びKAのいずれについても、重合度2(ダイマー)から重合度18のピークが検出された。したがって、KW及びKAには、重合度2〜18のポリフェノールが含有されていることが示された。
【0024】
試験例1
インビトロ抗酸化活性の測定
KW及びKAのそれぞれについて上記で得たセファデックスLH−20各分画の抗酸化性を測定した。各分画のポリフェノール含量をFolin−Denis法で測定した。水で10倍、50倍、100倍、200倍等に適宜希釈した試料溶液1mlに、1N フェノール試薬(和光純薬)を0.5ml加え、さらに10%(W/V)炭酸ナトリウム水溶液を1.5ml加えて室温で30分放置後、750nmの吸収を分光光度計(UV−1200、島津製作所)で測定した。標準試料としては0.1mg/mlの没食子酸(gallic acid)を用いた。
【0025】
抗酸化活性をDPPHラジカル消去活性及び酸素ラジカル吸収活性(ORAC)法で測定した。標準物質としては没食子酸を用いた。DPPHラジカル消去活性は、適宜水で10倍、50倍、100倍、200倍等に希釈した抽出物試料を96ウェルマイクロプレートに20μlずつ分注し、0.1M トリス塩酸、500μM DPPHエタノール溶液(4:5)を180μl加えて撹拌し、室温で20分間の517nmにおける吸光度の変化をプレートリーダー(商品名「Powerscan HT」、大日本住友製薬)を用いて測定した。
【0026】
ORACは、ポリフェノール量として適宜水で10倍、50倍、100倍、200倍等に希釈した抽出物試料を96ウェルマイクロプレートに10μlずつ分注し、0.2nM R−フィコエリトリン(R-phycoerythrin)溶液を170μl加え、さらに0.3M AAPH溶液を加えて、80分間の蛍光強度の変化(励起波長532nm、蛍光波長565nm)をプレートリーダー(商品名「Powerscan HT」、大日本住友製薬)を用いて測定した。対照としてはトロロックス(Calbiochem, Germany)を用いた。
【0027】
抽出物全体(KW、KA)についても同様に測定し、これらとの比較のため、市販のブドウ種子抽出物ポリフェノール(商品名「グラヴィノール」、キッコーマン)も測定した。
【0028】
DPPHラジカル消去活性は、KWの水画分の抗酸化活性が他の半分程度と弱く、それ以外の画分は、多少のばらつきはあるものの同程度の活性を示した。KAも同様に、水画分の抗酸化活性が弱く、それ以外の画分はほぼ同じ値を示した(図2)。
【0029】
ORAC法では、KW、KAともに水画分で抗酸化活性が強く、50%メタノール画分、80%メタノール画分となるに従い、活性が減少した。70%アセトン画分ではほとんど活性を示さなかった(図3)。
【0030】
以上の結果より、カリン抽出物の低分子画分に抗酸化性の強いポリフェノールが多く存在し、80%メタノール、アセトン画分には、分子量が大きいプロシアニジンが多いため、ポリフェノール存在量としては比較的多いものの、抗酸化性としては弱いことが考えられた。
【0031】
また、KAと市販のブドウ種子ポリフェノールとを比較すると、市販のブドウ種子ポリフェノールのORACは0.47mg没食子酸当量であったのに対し、KAでは0.72mg没食子酸当量であった。
【0032】
試験例2
カリン抽出物ポリフェノールの膵リパーゼ阻害活性
食事中性脂肪は、膵臓から分泌されるリパーゼによって小腸で脂肪酸とモノアシルグリセロールとに加水分解され、小腸から吸収される。したがって膵リパーゼの阻害により、中性脂肪の吸収が阻害される可能性がある。
【0033】
本試験例では、カリンエタノール抽出物ポリフェノール(KA)の膵リパーゼ阻害活性を、蛍光性のリパーゼ基質である4−メチルウンベリフェリルオレエート(4-methylumbelliferyl oleate;4−MUオレエート)の加水分解活性の阻害から評価した。4−MUオレエート及び膵リパーゼ(Type VI-S, from porcine pancreas)はSigma Chemical Co. USAから購入した。96ウェルマイクロプレートに、5〜100μg/mlに水で希釈した試料を25μlずつ分注し、0.1mM 4−MUオレエート/トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を50μl及び50U/ml 膵リパーゼ/トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を25μl加え、25℃で30分間インキュベーションした。蛍光プレートリーダーで励起波長355nm、蛍光波長460nmにおける蛍光強度を測定した。
【0034】
膵リパーゼ阻害活性は次の式で求めた。
膵リパーゼ阻害活性(%)=(1−A/B)×100
(式中、A:試料溶液の蛍光強度、B:ブランクの蛍光強度)
【0035】
ポリフェノール濃度が100μg/mlのとき、代表的なプロシアニジン含有物であるブドウ種子抽出物(前記と同じ市販品;G)は31.3±4.0%の阻害を示したのに対し、KAは63.4±1.0%の阻害を示した。各試料のリパーゼ阻害活性のIC50値は、Gでは154.5μg/mL、KAでは66.5μg/mLとなった。したがって、カリン抽出物ポリフェノールは、極めて強力な膵リパーゼ阻害活性を有することが示された(図4)。
【0036】
試験例3
高脂肪食肥満モデルマウスにおけるカリン抽出物ポリフェノールの効果
実験動物として、5週齢KK−Ay/TaJc1雄マウス(23〜26g、日本クレア株式会社、東京)を用いた。5日間の予備飼育後、高脂肪飼料(「20%カゼイン食」;C)を与えるコントロール群(C群)、高脂肪飼料にFolin−Denis法で測定したポリフェノールとして0.39%(W/W)の市販ブドウ種子抽出物を添加した飼料(「ブドウ種子抽出物添加20%カゼイン食」;G)を与える群(G群)、及び高脂肪飼料にFolin−Denis法で測定したポリフェノールとして0.5%(W/W)のカリンエタノール抽出物(KA)を添加した飼料(「カリン抽出物添加20%カゼイン食」;K)を与える群(K群)に群分けし(n=5〜6)、28日間飼育した。水は水道水を自由に飲ませた。実験に用いた飼料の組成を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
実験食を与えてから25日目に代謝ケージを使用して3日間糞を採取し、28日目から12時間絶食させ、29日目にマウスをジエチルエーテル麻酔下で開腹し、下大静脈からヘパリン処理した注射器で採血後、屠殺した。
【0039】
血糖値、血中インスリン濃度及び血中アディポネクチン濃度を、それぞれ市販の測定キット(商品名「グルコース CII−テストワコー」(和光純薬株式会社、大阪)、「モリナガ超高感度マウスインスリン測定キット」(株式会社森永生科学研究所、横浜)及び「マウス/ラットアディポネクチンELISAキット」(大塚製薬株式会社、東京))を用いて測定した。血中トリグリセリド濃度、総コレステロール濃度、HDL−コレステロール濃度は、和光純薬製の測定キット(商品名「トリグリセリド E−テストワコー」、「コレステロール E−テストワコー」、「HDL−コレステロール E−テストワコー」)を用いて測定した。血糖値の測定は飼育2週後及び4週後に行い、それ以外の各成分の測定は4週後に行った。
【0040】
肝臓のトリグリセリド及びコレステロールは、肝臓を20倍量のクロロホルム−メタノール(2:1 (v/v))でホモジナイザーを用いてホモジナイズし、25,000gで遠心分離した上清のクロロホルム層を用いて上記キットで測定した。
【0041】
最終日体重は、C群の41.0±1.4gに対して、G群、K群はそれぞれ44.4±0.9g、43.6±1.9gと有意に重かったが、摂食量は各群に有意差が見られなかった。血糖値の変化を見ると、飼育2週後では各群の差は認められなかったが、4週後ではC群に比べK群で顕著な低下が認められた。一方、G群は、C群との間で有意な差が認められなかった(図5)。
【0042】
血中アディポネクチン濃度は、C群に対してG群、K群で有意に増加した(図6)。アディポネクチン濃度の増加は、脂質代謝改善効果の存在を示すことが知られている。したがって、本実験結果により、本発明のカリン抽出物ポリフェノールは、優れた脂質代謝改善作用を有することが示された。
【0043】
血中インスリン濃度は、有意差はなかったがC群に対してG群、K群ともに増加抑制傾向を示した(図6)。血中トリグリセリド濃度は、C群に比べK群で50%程度まで低下した(図6)。一方、G群ではC群と有意な差を示さなかった。血中総コレステロール濃度は、各群の間で有意差はなかったが、K群でG群に比べわずかに低下傾向が認められた(図6)。したがって、カリン抽出物ポリフェノールは、肥満モデルマウスにおいて顕著な血中のトリグリセリド濃度の抑制作用を示すことが明らかになった。
【0044】
肝臓のトリグリセリド濃度は、各群間に有意差は認められなかった(図7)。コレステロール濃度では、K群でC群に比べ減少する傾向が認められた(図7)。糞中に排泄された胆汁酸はK群でC群に比べ有意に減少した(図7)。高脂肪食負荷による肥満モデルにおいては、トリグリセリドの代謝に異常が見られるが、肝臓のトリグリセリドに変化がなかったことから、トリグリセリドの吸収あるいは脂肪組織における代謝に本発明のカリン抽出物ポリフェノールが好ましい影響を与えたものと考えられる。
【0045】
また、肝臓コレステロール濃度の減少、胆汁酸排泄量の減少から、本発明のカリン抽出物ポリフェノールは、肝臓におけるコレステロールの合成にも影響を与えている可能性が考えられる。
【0046】
これらのカリン抽出物ポリフェノールの効果は、市販ブドウ種子抽出物よりも顕著であり、優位性の高いものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生カリン果実を、熱水、エタノール、又はそれらの混合溶媒により抽出した抽出物から得られる、カテキン重合度が2〜18のポリフェノール。
【請求項2】
請求項1記載のポリフェノールを有効成分として含有する脂質代謝改善剤。
【請求項3】
請求項1記載のポリフェノールを添加した飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−207796(P2011−207796A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75934(P2010−75934)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(306017014)地方独立行政法人 岩手県工業技術センター (61)
【Fターム(参考)】