説明

脂質代謝改善用組成物

【課題】脂質の代謝を改善することによって、高脂血症、肥満などの予防効果および改
善効果が期待できる脂質代謝改善組成物を提供する。
【解決手段】ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有する脂質代
謝改善用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂質代謝改善作用を有し、肥満及び高脂血症などの予防・改善効果を期待できる脂質代謝改善用組成物に関する。また、本発明は高脂血症の予防または治療用組成物および予防または改善用食品に関する。さらに、本発明は肥満の予防または治療用組成物および予防または改善用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の向上ないし洋風化に伴って脂質の摂取量が増加し、脂肪の過剰摂取が問題となってきている。脂肪の過剰摂取は、肥満や血清脂質の上昇を引き起こし、それに伴うさまざまな合併症(例えば、循環器系疾患、特に、冠・脳血管疾患、および、乳ガン、大腸ガン等のある種のガン等の生活習慣病)の発症の危険率が高まるなど、国民の健康保持、増進の上から社会問題ともなっている。
循環器系疾患発症のリスク要因として従来から血中コレステロール濃度の上昇が挙げられているが、最近ではコレステロールとは独立した要因として、血中トリアシルグリセロール(トリグリセリド)濃度も問題視されている。高脂血症とは、血中コレステロール濃度の上昇および/または中性脂肪の一種である血中トリアシルグリセロール濃度の上昇した病態である。血中のコレステロール値が上昇した場合には、高コレステロール血症(高βリポタンパク質血症)とよばれるが、これは主として低密度リポタンパク質(LDL、βリポタンパク質)の上昇であり、動脈硬化の危険率があがることがよく知られている。
また、脂質を過剰に摂取すると、血中トリアシルグリセロール濃度が上昇し、高トリアシルグリセロール血症とよばれる病態となり、高血圧症や虚血性心疾患などの動脈硬化性疾患につながる危険性が高いことが指摘されている。
【0003】
脂質の過剰摂取によるエネルギー過剰は、肥満の原因ともなる。肥満とは、体脂肪が正常以上に増加した状態と定義されており、内臓脂肪及び/又は皮下脂肪の増加を伴う。増加した部位によって上半身肥満、下半身肥満、中心性肥満、末梢性肥満、あるいは内臓性肥満、皮下脂肪肥満などに分類される。肥満は、生活習慣病の原因としても問題となっている。生活習慣病としては、たとえば、糖尿病、高脂血症、高血圧、脂肪肝、動脈硬化、通風、心筋梗塞、狭心症等々が挙げられる。これらの疾患は脂肪の蓄積部分によっては合併症に発展し、最近では内臓脂肪の蓄積が最も危険性の高いものであることが判ってきている。高脂血症や肥満の治療法には、食事療法、薬物療法等があり、運動や生活指導と合わせて行なわれることが多い。しかし、こうした従来の治療法には、長期的実行には非常な困難を伴い、副作用の危険性等いくつかの問題点がある。このような問題点を鑑みて糖質のなかのある種の化合物が特異的に脂質代謝を改善する効果に注目して脂質代謝改善剤に利用する提案がなされている。たとえば特許文献1には3糖類の一種であるガラクトシルラクトースを有効成分とする脂質代謝改善剤が開示されている。また、特許文献2にはオーツ麦由来の多糖、特許文献3にはアセトバクターの産生する新規フラクタン、特許文献4には耐性澱粉が脂質代謝改善に有効であることが開示されている。これらの糖質についての脂質代謝改善効果については、安全性の面では問題がないものの必ずしも満足できるものでないといわれている。
【0004】
一方本願発明の発明者らは二糖類の一種であるダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)について、そのカルシウム代謝に係る研究を行う過程で脂質代謝を劇的に改善する作用を見出し、本発明を完成するにいたった。
二糖類の一種であるダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)は公知の糖であるが、これまでの用途としては、現在までにカルシウム吸収促進(特許文献5)、鉄や亜鉛等の微量金属元素の吸収促進(特許文献6)、ミネラルバランスに影響を及ぼさない利尿促進作用(特許文献7)、虫歯予防(特許文献8)などが知られている。しかし、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を脂質代謝の改善あるいは高脂血症、肥満の予防、改善、治療等に用いる用途については、知られていないし、それを示唆する文献も見出されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−242529号公報
【特許文献2】特公平06−83652号公報
【特許文献3】特開平11−46785号公報
【特許文献4】特表2003−529616号公報
【特許文献5】特開平11−43438号公報
【特許文献6】特開2004−149427号公報
【特許文献7】特開2003−321371号公報
【特許文献8】特開2004−284985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、脂質の代謝を改善することによって、高脂血症、肥満などの予防効果および改善効果が期待できる脂質代謝改善組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構成は、ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分とする脂質代謝改善、高脂血症、肥満の予防や治療に使用できる組成物にある。さらに、高脂血症や肥満の予防や改善に使用できる食品にある。
【0008】
本発明は主として以下の構成からなる。
1.ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有することを特徴とする脂質代謝改善用組成物。
2.ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有することを特徴とする高脂血症の予防または治療用組成物。
3.ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有することを特徴とする肥満の予防または治療用組成物。
4.ダイフラクトースアンハイドライドIIIを固形物重量当たり0.025重量%以上を有効成分として含有することを特徴とする脂質代謝改善用食品。
5.ダイフラクトースアンハイドライドIIIを固形物重量当たり0.025重量%以上を有効成分として含有することを特徴とする高脂血症の予防または改善用食品。
6.ダイフラクトースアンハイドライドIIIを固形物重量当たり0.025重量%以上を、有効成分として含有することを特徴とする肥満の予防または改善用食品。
7.機能性食品であることを特徴とする4乃至6のいずれか1つに記載の食品。
8.食品中の炭水化物とダイフラクトースアンハイドライドIIIの重量比率が100/0.25乃至100/1.5である4乃至7のいずれか1つに記載の食品。
9.1.に記載された脂質代謝改善用組成物、2.に記載された高脂血症の予防または治療用組成物、3.に記載された肥満の予防または治療用組成物の1あるいは複数を含有することを特徴とする飼料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施により脂質代謝改善剤を提供することができる。また、この脂質代謝改善剤を含有する新規な脂質代謝改善用食品を提供することができる。
本発明による脂質代謝改善組成物は、哺乳動物全般(例えば、ヒト、ウサギ、マウス等)に対して脂質代謝改善作用を示し、高脂血症(高トリアシルグリセロール血症)、肥満症(皮下脂肪型肥満、内臓脂肪型肥満)等の予防、治療あるいは改善に効果を奏すことが期待される。また、これらに伴うさまざまな合併症(例えば、動脈硬化症、高血圧症等の循環器系疾患、および、乳ガン、大腸ガン等のある種のガン等の生活習慣病)の予防、改善等にも寄与することが期待される。
また、本発明の高脂血症の予防または治療用組成物および予防または改善用食品は、高脂血症の予防、治療あるいは改善に効果を奏することが期待され、それに伴うさまざまな合併症の予防、改善等にも寄与することが期待される。
本発明の肥満の予防または治療用組成物および予防または改善用食品は、肥満症の予防、治療あるいは改善に効果を奏することが期待され、それに伴うさまざまな合併症の予防、改善等にも寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】体脂肪量の変化を示す。
【図2】TG量(血中トリグリセリド)変化を示す。
【図3】卵巣脂肪重量の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、ラットに、通常の食餌に加えてダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を投与すると脂肪増加が抑制されることを見出し、本発明を完成したものである。
即ち、本発明は、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を有効成分として含有することを特徴とする脂質代謝改善用組成物を提供する。
本発明の組成物は、有効成分として実質的にダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)のみを含む組成物であってもよいし、他の脂質代謝に影響を及ぼす成分と併用してもよい。
【0012】
さらに、本発明は、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を有効成分として含有することを特徴とする高脂血症の予防または治療用組成物を提供する。
本発明は、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を有効成分として含有することを特徴とする肥満の予防または治療用組成物を提供する。
【0013】
また本発明は、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を有効成分として含有することを特徴とする脂質代謝改善用食品を提供する。
また本発明は、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を有効成分として含有することを特徴とする高脂血症の予防または改善用食品を提供する。
また、本発明は、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を有効成分として含有することを特徴とする肥満の予防または改善用食品を提供する。
【0014】
上記の食品が機能性食品であることが好ましい。また上記の食品は、食品中の炭水化物とダイフラクトースアンハイドライドIIIの重量比率が100/0.25乃至100/1.5である食品であることが好ましい。
また、ペットを中心とする動物用飼料を提供する。
【0015】
本発明の脂質代謝改善組成物、高脂血症の予防または治療用組成物、あるいは肥満の予防または治療用組成物を生体に投与する場合は、経口的あるいは、髄腔内、筋肉内、静脈内、動脈内、経皮等の非経口的に投与することができるが、好ましくは経口的にあるいは静脈内に投与する。
【0016】
これらの本発明の組成物を適当な剤型に製剤化して用いてもよい。例えば錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、チュワブル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、坐剤、シロップ剤等の製剤で用いることができる。これらの剤型に製剤化するには薬学上許容しうる適当な担体、賦形剤、添加剤等を用いて行うことができる。
【0017】
本発明の組成物を静脈内投与する際には、液剤、乳剤または懸濁剤とすることが好ましい。液剤を調製するには、例えば精製水、生理食塩水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレングリコール等のアルコール類、トリアセチン等の溶媒を用いて行うことができる。このような製剤にはさらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤のような補助剤を加えても良い。
【0018】
また、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、トローチ剤、チュワブル剤等の固形製剤を調製するには、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、デンプン、ショ糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース等の担体、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン等の添加剤を加えて行うことができる。またセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、スチレン−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等の腸溶性物質の有機溶媒あるいは水中溶液を吹き付けて、腸溶性被膜を施して、腸溶性製剤として製剤化することもできる。薬学上許容しうる担体には、その他通常、必要により用いられる補助剤、芳香剤、安定剤あるいは防腐剤を含む。さらに本発明の組成物は、輸液製剤と併用してもよく、他の輸液製剤に添加して用いてもよい。
【0019】
本発明の組成物を、医薬として使用する場合には、その投与量は、患者の性別、体型、体質、年齢、症状あるいは投与剤型等により異なるが、一般にダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を有効成分として成人1日当り0.1〜50g、好ましくは1〜25gの範囲で適宜選択することができる。投与回数は、患者の症状あるいは投与剤型等により異なるが、1日1ないし数回が適当である。
【0020】
本発明の高脂血症の予防または改善用食品および肥満の予防または改善用食品は、実質的にダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)のみを含む食品であってもよいし、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を既存の食品や飲料等に直接添加したものであってもよい。例えば、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)をガム、キャンディー、ゼリー、グミ、クッキー、ビスケット、チョコレート等の菓子類、ジュース等の清涼飲料、チーズ、バター、ヨーグルト等の乳製品、アイスクリーム、ハム等の農産加工品、ちくわ、はんぺん等の水産加工品、そば、うどん等の麺類、パン、ケーキ等の小麦粉加工品、さとう、人工甘味料等の調味食品等に直接添加することができる。特にダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)は砂糖に非常に近い甘味を呈するため、砂糖の代替品として調理に使用することもできる。また、上記食品の加工段階で混合してもよい。
【0021】
ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を食品に加工する際は、通常の食品加工方法に基づき行うことができる。また、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を食品に添加・混合する際は、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を粉末、顆粒、細粒等の固形状で用いてもよく、あるいは液状で用いてもよい。本発明の高脂血症の予防または改善用食品および肥満の予防または改善用食品は、高脂血症または肥満の予防または改善用の特定保健用食品、機能性食品、健康食品としても応用可能である。なお、「機能性食品」とは、生体調節機能をもつ物質を含む食品を意味し、厚生労働省より特定保健用食品として食品毎に個別の許可を得ることにより、機能性を表示することができる食品を意味する。
【0022】
本発明の食品においては、一般に食品100gあたり0.025gから50g程度の範囲でダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を配合することが好ましい。通常は食品中の炭水化物の総量の0.1乃至10%程度を配合すればよい。摂取量は、摂取対象の性別、体型、体質、年齢、他の摂取食品等により異なるが、一般にヒト成人が対象の場合には、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)摂取量が1日あたり1g〜25gとなる範囲で摂取させることが好ましい。摂取回数は、1日1ないし数回が適当である。
【0023】
本発明の脂質代謝改善組成物は、ヒト以外の哺乳動物に対しても有効である。例えば、ウシやブタなどの家畜あるいはハマチやタイなどの養殖魚の体脂肪の過剰蓄積を抑制し、肉質を改善する目的で使用することができる。また、イヌやネコなどの高脂血症や肥満の予防や改善あるいは健康管理の目的で用いることができる。
本発明の脂質代謝改善組成物を動物に対して使用する場合には、例えば、家畜用飼料、魚類用飼料、ペットフード等に配合してもよい。飼料やペットフードの形態及びその製造方法は特に限定されず、当業者に適宜選択可能である。一般的には、製造原料として用いられる炭水化物原料中に、予めダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を添加したり、加工中に適宜の手段でダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を添加することにより目的の飼料又はペットフードを容易に製造することができる。飼料やペットフードにおいては、対象とする動物の種類などによっても異なるが、一般に、ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を100gあたり0.1gから50gの範囲で含有させることが好ましい。
【0024】
実施例
以下の試験によりその作用効果を確認したものであり、実施例を示す。実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0025】
<脂質代謝改善効果確認試験>
3週齢のWistar系雄性ラットを1週間の予備飼育を行った後、表1の組成の基本飼料7gに対し0.5gのダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を添加した餌を与えて3日間、続いて同量の基本飼料に1.0gのダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を添加した餌を与えて3日間、さらに、同量の基本飼料に1.5gのダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)を添加した餌を与えて3日間飼育した。
【0026】
【表1】

【0027】
続いて、体重層別法により以下の8群に群分けを行った。
群設定は、次のとおり。
1.基本飼料7g+ショ糖0.25g(ショ糖0.25群)。
2.基本飼料7g+ショ糖0.5g(ショ糖0.5群)。
3.基本飼料7g+1.0g(ショ糖1.0群)。
4.基本飼料7g+ショ糖1.5g(ショ糖1.5群)。
5.基本飼料7g+ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)0.25g (ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)0.25群)。
6.基本飼料7g+ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)0.5g(ダ イフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)0.5群)。
7.基本飼料7g+ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)1.0g(ダ イフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)1.0群)。
8.基本飼料7g+ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)1.5g(ダ イフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)1.5群)。
この飼料を与え、20日間飼育し、21日目に体重を測定し、採血後、断頭により屠殺した。屠体は消化管内容物除去後、細断、均一にし、一部を採取しホルヒ法で脂肪重量を測定し、ケルダール法で蛋白質量を測定した。脂肪重量に屠体重量を掛け、体脂肪量とした。また採血した血液について、全コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、リン脂質(PL)、インシュリン、レプチンを測定した。
【0028】
(1)体重変化
糖質による体重変化を表2に示す。蔗糖投与群とダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)投与群には差は認められなかった。
【0029】
【表2】

【0030】
(2)体蛋白質量
糖質の種類による体たんぱく質量の変化を表3に示す。蔗糖投与群とダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)投与群には差は認められなかった。
【0031】
【表3】

【0032】
(3)体脂肪量
糖質の種類による体脂肪量の変化を表4及び図1に示す。蔗糖投与群とダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)投与群ではDFAIII投与群の体脂肪量が蔗糖投与群に比較して有意(P<0.001)に減少していた。DFAIII0.5群以上では、顕著な効果が確認できた。
【0033】
【表4】

【0034】
(4)TC量(全コレステロール)
糖質によるTC濃度変化を表5に示す。蔗糖投与群とダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)投与群には全体としては大きな差は認められなかったが、DFAIII1.5群では、やや低い値が観測された。
【0035】
【表5】

【0036】
(5)TG量(血中トリグリセリド)
糖質による血中TG変化を表6及び図2に示す。蔗糖投与群とダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)投与群ではDFAIII投与群のTG量が蔗糖投与群に比較して有意(P<0.001)に減少していた。蔗糖には濃度依存性が認められないが、DFAIII投与濃度依存的にTGが低下した。
【0037】
【表6】

【0038】
(6)PL量(血中リン脂質)
糖質によるPL濃度変化を表7に示す。蔗糖投与群とダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)投与群には差は認められなかった。
【0039】
【表7】

【0040】
(7)インシュリン量
糖質によるTC濃度変化を表8に示す。蔗糖投与群とダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)投与群には顕著な差は認められなかった。
【0041】
【表8】

【0042】
(8)レプチン量
糖質による血中TG変化を表9に示す。蔗糖投与群とダイフラクトースアンハイドライドIII(DFAIII)投与群ではDFAIII投与群のレプチン量が蔗糖投与群に比較して有意(P<0.001)に減少していた。DFAIIIには濃度依存性は認められないが、蔗糖との同量添加比較では、0.5群以上では、顕著な差異が確認できた。
【0043】
【表9】

【0044】
以上の結果、DFAIIIは血液中のTGを選択的に低下させ、体脂肪量を選択的に減少させることが明らかとなった。またDFAIIIは対蛋白質には影響を与えず筋肉量の低下をもたらさずに体重を減少させることが可能である。
【実施例1】
【0045】
高純度乳清蛋白質(蛋白質含量50%)8.7kg及び市販のカゼイン粉末(ニュージーランド・デイリーボード製蛋白質含量86%)6.0kgを温水150lに溶解した。この溶液に市販の乳糖56kg、DFAIII 1kg、市販の植物性油脂(日本油脂社製)28kg、ビタミン、ミネラルを添加、混合し、均質化し、120℃で3秒間加熱殺菌し、常法により噴霧乾燥し、調製粉乳約100kgを得た。
【実施例2】
【0046】
市販の乳清蛋白質(蛋白質含量50%)1.5kg、市販の砂糖(東洋精糖社製)10kg、DFAIII 0.15kg、市販のクエン酸(三栄化学社製)0.2kg、及び市販のペクチン(三栄化学社製)0.3kgを温水90lに溶解した。この溶液に市販の果汁10lを添加、混合し、均質化し、120℃で3秒間加熱殺菌し、冷却し、乳清蛋白質飲料約100lを得た。
【実施例3】
【0047】
大豆14kgを剥皮し、15℃の水に10時間浸漬し、浸漬した大豆に水120lを加えながら磨砕し、60℃で30分間加熱し、スクリューデカンターで残渣を分離し、豆乳を得た。この豆乳に市販の植物油脂(日本油脂社製)1.5kg、市販の砂糖(東洋精糖社製)3kg及びDFAIII 45gを溶解し、均質化し、145℃で2秒間加熱殺菌し、真空脱臭し、乳清蛋白質を強化した調製豆乳約100lを得た。
【実施例4】
【0048】
市販の高純度乳清蛋白質(蛋白質含量50%)1.3kg、市販のカゼイン粉末(ニュージーランド・デイリーボード製。蛋白質含量85%)1.8kg及び市販の大豆蛋白質(不二製油社製。蛋白質含量88%)1.4kgを温水60lに溶解した。この溶液に市販のデキストリン(松谷化学工業社製)4.5kg、市販の難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)8.0kg、DFAIII 200g、市販の植物性油脂(日本油脂社製)3kg、ビタミン、ミネラルを添加、混合し、均質化し、全量を100lに調整し、150℃で2秒間加熱殺菌し、液状経腸栄養剤約100kgを得た。
【0049】
<肥満モデルラット試験>
以下に、肥満モデル動物であるOVXラットを用いた試験例を示す。
日本エスエルシー株式会社より入手した12匹の6週齢メスSDラットを室温23±1℃、12時間の明暗サイクル(明期3:00−15:00)の環境で、ステンレス製ゲージ内で個別飼育した。
実験動物搬入後、2日間市販の固形飼料を与えて飼育し、飼育環境に馴化させた後、ネンブタール麻酔(Pentobarbital Sodium Salt; Abbot Laboratories, North Chicago, USA)下において卵巣摘出手術(OVX)を施し、術後は市販の固形飼料を1日間与えた。充分に回復したのを確認後、6匹ずつコントロール飼料、DFAIII 6%含有飼料を与える2群に分けた。
飼料はペアフェッド法により2群に同量摂取させ、また、水道水を自由摂取させて3週間飼育した。飼育21日目に解剖を実施し、卵巣脂肪組織重量を測定した。
表10に飼料組成を示す。
【0050】
【表10】

【0051】
卵巣脂肪重量の結果は、コントロール群は4.24g±0.23であったのに対し、DFAIII摂取群は2.96g±0.22であり、DFAIII摂取群の卵巣脂肪重量はコントロール群の70%弱であった。これを図3に示す。
この結果からも、DFAIIIの摂取により、肥満モデル動物であるOVXラットにおいてもDFAIII摂取により脂肪組織の低減が認められ、DFAIIIが脂質代謝改善効果をもつことが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有することを特徴とする脂質代謝改善用組成物。
【請求項2】
ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有することを特徴とする高脂血症の予防または治療用組成物。
【請求項3】
ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有することを特徴とする肥満の予防または治療用組成物。
【請求項4】
ダイフラクトースアンハイドライドIIIを固形物重量当たり0.025重量%以上を有効成分として含有することを特徴とする脂質代謝改善用食品。
【請求項5】
ダイフラクトースアンハイドライドIIIを固形物重量当たり0.025重量%以上を有効成分として含有することを特徴とする高脂血症の予防または改善用食品。
【請求項6】
ダイフラクトースアンハイドライドIIIを固形物重量当たり0.025重量%以上を、有効成分として含有することを特徴とする肥満の予防または改善用食品。
【請求項7】
機能性食品であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の食品。
【請求項8】
食品中の炭水化物とダイフラクトースアンハイドライドIIIの重量比率が100/0.25乃至100/1.5である請求項4乃至7のいずれか1項に記載の食品。
【請求項9】
請求項1に記載された脂質代謝改善用組成物、請求項2に記載された高脂血症の予防または治療用組成物、請求項3に記載された肥満の予防または治療用組成物の1あるいは複数を含有することを特徴とする飼料。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−188426(P2012−188426A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99443(P2012−99443)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【分割の表示】特願2006−183472(P2006−183472)の分割
【原出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】