説明

脂質制御薬物製剤の製造のための方法

【課題】脂質制御薬物を微粉化することも、サーファクタントを使用することも必要とすることなく、先行技術によって製造された同様の薬物類の粒子に匹敵する溶出および吸収の特性を示す小粒子、より好ましくはフェノフィブラートの脂質制御薬物の提供。
【解決手段】フェノフィブラートなどの脂質制御薬物をサーファクタント不含の溶媒に溶解すること、乳糖、デンプン、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸マグネシウムなどの賦形剤を予混合すること、前記薬物溶液/賦形剤混合物を湿式造粒すること、前記混合物を乾燥させること、最終剤型を形成することを含む、脂質制御薬物製剤の製造のための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質制御薬物の固形製剤を製造するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]−2−メチル−プロパン酸の1−メチルエチルエステルは、フェノフィブラートとしても知られており、脂質制御薬物としての薬学的有用性を有する広範な化合物類の代表である。より具体的には、この化合物は、一般的にフィブラートとして知られる脂質制御薬物化合物類の1種であり、米国特許第4058552号に開示されている。
【0003】
フェノフィブラートは、いくつかの異なる製剤で製造されてきており、米国特許第4800079号および米国特許第4895726号を参照されたい。フェノフィブラートと固形サーファクタントとを共に微粉砕した製剤が、米国特許第4895726号に開示されている。
【0004】
米国特許第4961890号には、中間層にフェノフィブラートが結晶微粒子型で不活性マトリクス孔中に含まれた制御放出製剤の製造方法が開示されている。この製剤は、結合剤を主成分とする溶液で不活性コアを湿潤化し、次に湿潤化コア上にフェノフィブラート微粒子を一層に押し出し、次に、フェノフィブラート微粒子が結合剤を主成分とする溶液に溶解する前に乾燥させ、中間層が形成されるまで前記3つのステップを繰り返す逐次的ステップを含む方法によって製造される。
【0005】
欧州特許公開793958号には、フェノフィブラート、界面活性剤、およびポリピニルピロリドンを利用したフェノフィブラート固形製剤を作製する方法が開示されており、ここではフェノフィブラート微粒子を、ポリピニルピロリドン溶液と混合する。こうして得られた混合物を、1つまたは複数の界面活性剤水溶液と共に造粒し、こうして作製された粒子を乾燥させる。
【0006】
PCT公開WO82/01649号には、ショ糖とデンプンとの混合物である中性コアを含む粒子からなるフェノフィブラート製剤が開示されている。中性コアは、賦形剤を混合したフェノフィブラートの第1層と可食ポリマーの微孔性第2外層とで被覆されている。
【0007】
米国特許第5645856号には、フェノフィブラート、およびそれに基づく薬学的組成物を含む疎水性剤のための担体の使用が開示されている。担体は、消化性オイルと担体投与時にin vivoでオイルを分散させるための薬学的に許容可能な、親水性サーファクタントからなるサーファクタント成分とを含み、該サーファクタント成分は、消化性オイルのin vivoにおいて脂肪分解を実質的に阻害しない類のものである。
【0008】
米国特許第6383517号には、フェノフィブラートをサーファクタント溶液に溶解し、賦形剤を混合し、混合物を湿式造粒し、乾燥させ、最終剤形を形成することを含む、フェノフィブラートの固形製剤を製造する方法が開示されている。
【0009】
先行技術の方法では、共に微粉砕するステップの使用によってフェノフィブラートの細粒子を得、および/またはサーファクタントの存在を必要とする。これらの方法では、最大の溶出特性を示さないことがあり、胃腸の炎症の原因となることがある製剤が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4058552号明細書
【特許文献2】米国特許第4800079号明細書
【特許文献3】米国特許第4895726号明細書
【特許文献4】米国特許第4961890号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第793958号明細書
【特許文献6】国際公開第82/01649号
【特許文献7】米国特許第5645856号明細書
【特許文献8】米国特許第6383517号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、脂質制御薬物を微粉化することも、サーファクタントを使用することも必要とすることなく、先行技術によって製造された同様の薬物類の粒子に匹敵する溶出および吸収の特性を示す小粒子、より好ましくはフェノフィブラートの脂質制御薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、脂質制御薬物の固形製剤を製造するための方法を対象とする。
【0013】
この方法は、脂質制御薬物をサーファクタント不含の溶媒に溶解すること、1つまたは複数の賦形剤を予混合して混合物とすること、脂質制御薬物溶液とプレミクス(premix)とを湿式造粒して造粒した薬物混合物を形成すること、および混合物を乾燥させることを含む。乾燥造粒混合物は、次にサイジングして、最終剤形を形成してもよい。
【0014】
混合物は、先行技術でよく知られた技術、好ましくは流動層によってあるいは低速せん断または高速せん断の混合機によって、造粒してもよい。
【0015】
最終経口剤形は、当該技術者によく知られた技術によって、混合物の粒径を揃え、得られた粒子を賦形剤と乾燥混和して最終経口剤形、好ましくは錠剤またはカプセル剤として製造してもよい。
【0016】
このように作製した製剤は、造粒した製品として直接投与しても、投与用の適切な媒体に希釈しても、投与用の硬質ゼラチンの殻またはカプセルに封入しても、あるいは当該技術者に自明な他の方法によって投与してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の方法によって製造した代表的組成物と先行技術の組成物との溶出特性を示したグラフである。
【0018】
脂質制御薬物は、適切で薬学的に活性のあるいずれの化合物であってもよく、好ましくはフィブラートであり、さらに好ましくはフェノフィブラートである。
【0019】
脂質制御薬物バルクは、可能ないずれの方法によっても製造可能であり、例えばフェノフィブラート化合物は、米国特許第4658552号に開示された手段または米国特許第4739101号(これらは、参照することにより双方を本明細書に組み込む。)に開示された手段によって製造可能である。
【0020】
次に、脂質制御薬物を、例えばアセトン、塩化メチレン、エタノールまたはクロロホルムなどの適切な溶媒を含む溶液に、脂質低下剤が0.5〜8.0、好ましくは1.0〜5.0重量部となるように溶解させる。
【0021】
賦形剤プレミクスは、従来の方法で製造する。適切な賦形剤には、例えば結合剤、充填剤、ならびに乳糖、デンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウムおよび結晶セルロースなどの崩壊剤が含まれる。
【0022】
次に、脂質制御薬物溶液と賦形剤プレミクスを合わせて混合する。得られた混合物は、次に、例えば流動層あるいは低速または高速のせん断混合機の中で造粒し、よく知られた溶媒蒸発技術、例えば噴霧乾燥法、流動層、トレイ乾燥法、回転噴霧法、回転ディスク乾燥法あるいは大気圧または減圧の下の蒸発法によって乾燥させる。得られた材料は次に、必要であれば、サイジングし、直接圧縮法または他の方法などの従来技術によって、最終剤形、例えば錠剤やカプセル剤を形成してもよい。
【0023】
サーファクタントを除外することによって、原材料および資金のコストが低減し、生産が容易となり、胃腸の副作用を低減させる見込みがあり、および錠剤およびカプセル剤をさらに簡単に製造しうる可能性がある方法が得られる。本発明は、以下の非限定的な代表的実施例によって、より明確に理解されるであろう。
【実施例1】
【0024】
フェノフィブラート(25g)をアセトン10mLに溶解させた。無水乳糖(67g)、ポピドン K30(4g)、およびデンプングリコール酸ナトリウム(4g)を予混合した。プレミクスを上記溶液と共に造粒した。湿潤顆粒を約40〜55Cの乾燥器の中で1晩トレイ乾燥させた。乾燥顆粒をスクリーンを通して篩過し、30〜120メッシュ部分を回収して、硬質ゼラチンカプセルに充填した。
【0025】
カプセルのインビトロ溶出速度を、基準品である同量の有効成分を含む市販カプセル製品であるリパンチルの速度と比較した。米国薬局方II型装置を試験に使用した。試験条件は、パドル速度=50rpm、溶出試験液=50mM SDS溶液、温度=37Cであった。溶出試料を所定の時点で採取し、UV分光分析法によって286nmで分析した。
【実施例2】
【0026】
フェノフィブラート(25g)をアセトン10mLに溶解させた。無水乳糖(57g)、エアセル(Aircel)pH 101(10g)、ポピドン K30(4g)、およびデンプングリコール酸ナトリウム(4g)を予混合した。このプレミクスを、上記溶液と混合した。湿潤塊を40〜55Cの乾燥器中でトレイ乾燥させた。
【0027】
乾燥固体を粉砕し、スクリーンを通して篩過し、30〜120メッシュ部分を回収した。回収した粒子を硬質ゼラチンカプセルに充填した。
【実施例3】
【0028】
実施例1および2で製造したカプセルのインビトロ溶出速度を、基準品である同量の有効成分を含む市販カプセル製品、リパンチルの速度と比較した。米国薬局方II型装置を試験に使用した。試験条件は、パドル速度=50rpm、溶出試験液=50mM SDS溶液、温度=37Cであった。溶出試料5mLを所定の時点で取り出し、UV分光分析法によって286nmで検査した。
【0029】
基準品カプセル剤と本発明のカプセル剤とのインビトロの溶出プロフィールを、図1に表す。このデータは、本発明の代表的なカプセル剤の溶出速度が、基準品カプセル剤と同等であることを示している。米国特許第4895726号に基づいて、インビトロ溶出の結果をヒトにおけるインビトロでの吸収と相関させることができる。したがって、インビトロでの同等または増加した溶出は、ヒトにおいては基準品と同等の生物学的利用能となりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質制御薬物をサーファクタント不含の溶媒に溶解して薬物溶液を形成するステップ、
賦形剤を予混合して混合物を生成するステップ、
前記混合物と前記薬物溶液とを湿式造粒して、造粒薬物混合物を形成するステップ、および
前記造粒混合物を乾燥させるステップを含む、薬物製剤を製造するための方法。
【請求項2】
前記脂質制御薬物がフィブラートである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィブラートがフェノフィブラートである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥させるステップが溶媒を蒸発させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸発させることが減圧下に実施される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記乾燥させるステップが流動層、トレイ乾燥器または回転噴霧器を使用して遂行される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
他の賦形剤を添加する追加のステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
最終剤形を形成する追加のステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
脂質制御薬物をサーファクタント不含の溶媒に溶解して薬物溶液を形成するステップ、
賦形剤を予混合して混合物を生成するステップ、
前記混合物と前記薬物溶液とを湿式造粒して、造粒薬物混合物を形成するステップ、
前記造粒混合物を乾燥させるステップ、および
前記乾燥造粒混合物を錠剤にするステップを含む、薬物製剤を製造するための方法。
【請求項10】
脂質制御薬物をサーファクタント不含の溶媒に溶解して薬物溶液を形成するステップ、
賦形剤を予混合して混合物を生成するステップ、
前記混合物と前記薬物溶液とを湿式造粒して、造粒薬物混合物を形成するステップ、
前記造粒混合物を乾燥させるステップ、および
前記乾燥造粒混合物をカプセルに充填するステップを含む、薬物製剤を製造するための方法。
【請求項11】
前記賦形剤が乳糖、デンプン、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸マグネシウム、および他の薬学的に許容される賦形剤からなる群から選択された1つまたは複数のメンバーである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物を流動層中で造粒する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物を低速せん断または高速せん断の混合機中で造粒する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製造される組成物。
【請求項15】
請求項3に記載の方法によって製造される組成物。
【請求項16】
請求項9に記載の方法によって製造された最終薬物製剤を投与するステップを含む高脂血症を治療するための方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法によって製造された最終薬物製剤を投与するステップを含む高脂血症を治療するための方法。
【請求項18】
請求項3に記載の方法によって製造された製剤を投与することを含む高脂血症を治療するための方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149078(P2012−149078A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−63143(P2012−63143)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2006−518798(P2006−518798)の分割
【原出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】