説明

脂質含有調製品、特に化粧品

脂質含有調製品、特に、スティックまたは扱いやすいペースト状のものを開示しており、それらは、化粧品、とりわけ、皮膚、唇および瞼を彩色し、見栄えをよくするための仕上げ化粧品分野への使用に適している。リップグロス、口紅定着剤、リップケア、スキンケア用のケアファンデーション、または太陽光線保護剤としての使用にも適している。本発明の脂質含有調製品は、水不含であり、脂質相には特に、植物由来の原料を含む。水添ホホバ油(INCI:水添ホホバ油)およびメドゥフォームの種子から得られた油(INCI:リムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)の組み合わせが特に適していることが証明された。本調製品は、色素剤および適切な化粧用活性物質をさらに含有することができる。そのような調製品の製造方法についても開示している。本発明に従う水不含の脂質含有調製品を保存することを目的として、植物もしくは植物に基づく原料、あるいは、天然香料もしくは天然のものと同一の香料またはそれらの混合物を使用することについても開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載しているような脂質含有調製品、特に、スティックまたは扱いやすいペースト状のものに関し、それらは、化粧品、とりわけ皮膚、唇および瞼を彩色し、見栄えをよくするための仕上げ化粧品の分野への使用に適している。そのようなものの例としては、口紅、ほお紅、リップライナー、アイライナー、眉墨鉛筆(アイブローペンシル)、メーキャップ、カバー用鉛筆(covering pencil)、コンシーラーまたはアイシャドーなどが挙げられる。リップケアスティック、リップバーム、リップグロスとして、唇用定着剤(fixing base)として、スキンケア用ファンデーションとして、または太陽光線保護剤として使用することもできる。そのような脂質含有調製品は、特に、水を含有しない形態である。
【背景技術】
【0002】
上述したような種類の調製品は、通常脂質を含有しており、例えば、脂肪、油、油溶性の植物抽出物、ならびに中鎖〜長鎖の脂肪酸類およびロウ類などが挙げられ、それらは、植物もしくは動物を起源とするものであり、石油などの鉱物源から取り出されたものであり、または、合成もしくは特定の物質について化学修飾をおこなうことによって得られたものである。シリコン−有機化合物、例えば、ジメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、揮発性シクロメチコン類、シリコンロウ類などを使用することも既知である。
【0003】
さらに、上述の調製品は、細かく砕いた賦形剤および色素剤を含む固相を有する場合がある。太陽光線保護剤の場合には、いわゆるナノピグメントとよばれる特に微粉砕した顔料を用いることがあるが、その平均粒子径は5〜25nmであり、皮膚上では透明であり、発色しない。そのような顔料の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタンおよび二酸化亜鉛などが挙げられる。
【0004】
石油由来の製品は、有限の資源に由来するものであるので、無限に入手できるわけではない。さらに、皮膚科の観点からは、例えば、SCFなどにより、胃腸管内への石油の蓄積を避けることを目的として、唇とその周辺には石油に基づく原料を使用すべきではないという予防策としての勧告がある。故に、再育成可能な植物原料が好ましい。また、植物原料は、家畜の連続的使用を伴う集約的牧畜に関して生じる問題点とは無関係である。
【0005】
例えば、特許文献1は、自立スティック状のボディーケア剤を開示している。そのようなスティックがその形状を維持するためには、非常に特殊な構造をとっているはずであり、この点に関して、そのスティックは化粧用材料を含む内部コアを有し、さらに、タンパク質、ポリオール類、軟化剤および追加の化粧用添加剤からなる層に封入されている。構造が予め定められているということは、製造の際に複数の工程を要することを意味する。
【0006】
特許文献2は、固体化された多様な化粧用油類から製造された固体の化粧用組成物を開示している。実施例においては、動物性油類および合成油類を使用している。そのような組成物の欠点は、非常に少量(わずか0.1〜4質量%の範囲)の顔料しか使用できないことである。
【0007】
特許文献3は、油類と油中のケン化できない成分との混合物を含むエマルション状の化粧用組成物を開示している。この組成物については、スティック状またはペースト状にすることを意図して調製したわけではなく、そのような形状に適しているわけでもない。
【0008】
特許文献4においては、発明者らは、ソフトペースト状のリップメーキャップを提供することを目的としており、そのようなメーキャップ剤は、アプリケーターを用いて塗布することができ、粘性係数が既定の範囲に調整されている脂肪相中にロウ組成物を供することによって目的を達成している。この件における好ましい脂肪材料は、石油由来の構成成分であり、例えば、パラフィン油、ワセリン、鉱油などであるが、本発明においてはこれらの使用を厳格に避けている。
【0009】
リップスティック(棒状口紅)に関して、水を有する組成物の使用を考察しているのは特許文献5である。水を有する組成物の欠点は、細菌が非常に混入しやすいことであり、従って、安定性の点で劣る。
【0010】
油相および顔料を含む組成物については、特許文献6に開示されている。しかしながら、この件には、永久的に着色するわけではなく、除去が可能な液状タトゥーインクを含むことに注意されたい。そのような組成物は、スティックまたはペースト状にすることを目的として製造されてはいない。
【0011】
化粧用材料に関して、油との相溶性を持たせて加工を行うためには、精製工程を要する。そのような側面に関する特定の実施態様は、特許文献7に記載されている。
【0012】
複数の不飽和脂肪酸を多量に含有する組成物については、特許文献8に開示されており、そのような組成物を加工して化粧用調製物、特にエマルションを調製している。そのような組成物の欠点は、安定性が低いことである。
【0013】
特許文献9の発明者らは、超臨界液体抽出により、化粧用組成物への添加物として有用なルーバス・カメモラス(Rubus chamaemorus:キイチゴの一種)の成分を抽出することが可能であることを発見した。しかしながら、そのような化粧用製品の製造は非常に複雑であり、費用がかさむ。
【特許文献1】独国特許第199,40,221号
【特許文献2】独国特許第107,07,309号
【特許文献3】独国特許第304,76,49号
【特許文献4】欧州特許第0,667,146号
【特許文献5】欧州特許第0,522,618号
【特許文献6】米国特許第6,013,122号
【特許文献7】米国特許第5,653,966号
【特許文献8】米国特許第5,445,822号
【特許文献9】国際公開W/O 02/38109
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
脂質を含有する特定の種類の組成物の製造および加工に関しては、そのような組成物が、長時間にわたり、比較的高い温度(約70〜110℃)にさらされる可能性があることに留意しなければならない−一方では、原料を溶融し、色素剤およびその他の添加剤と混合させる場合、他方では、組成物を最終的な形状にする場合において。そのような場合には、熱および空気中の酸素の影響を考慮して、使用する原料は、化学修飾をしていないもの、または、化学的に最小限しか変化させていないものを用いる。植物原料に関しては、特にそれらが炭素鎖内に二重結合または縮合二重結合を有する場合には、再配列、付加、過酸化物形成などを受ける傾向があり、それによって負の不快な変化を招く可能性がある。そのような変化は、ある種の顔料が存在することにより、触媒作用によって誘導される、または速められる。これまでに知られている植物原料はごくわずかであるが、それらを加工することにより、満足のゆく結果が得られ、かつ、品質に悪影響を及ぼさないような、脂質を含有する特定の種類の調製品をつくることができた。
【0015】
故に、本発明の目的は、脂質含有調製品(lipid-bearing preparation)、特に、スティックまたは扱いやすいペースト状の調製品を提供することであり、それらは化粧品用途、とりわけ、皮膚、唇および瞼を彩色し、見栄えをよくするための仕上げ化粧品の分野に適しており、塗布が容易であり、付きが良く、もちが良く、かつ、にじみがなく、もしくは、塗布した場所からその周辺の最小限の範囲にしかにじまない。本調製品は、純粋な植物原料および植物に基づく原料を基本としており、そのような原料は上述したような欠点に悩まされることがない。しかし、他方では、動物原料、石油に基づく原料をできる限り排除したが、これは、特に、そのような原料が目の周辺に与えることが知られているダメージを避けるためである。上掲の目的に加えて、シリコーン油またはシリコーン誘導体類の使用を控えることが可能である。調製品がスティック状の場合には、多様な輸送経路および使用者側において生じ得る多様な保存温度における保存中に安定でなければならならず、調製品が扱いやすいペースト状の場合には、長期間の保存後にシネレシス効果を示さないことである。
【0016】
故に、従来の技術に従った製品と比較して、本発明の調製品は、滑らかに薄く、かつ扱いやすい方法で塗布することができ、皮膚、瞼および唇上で固まらず、乾燥させず、化粧持ちがよく、他の物および衣服または皮膚の他の領域および目の近傍に移染することなく、さらに、刺激もしくはその他の副作用を引き起こさない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的は、特に、植物または植物に基づく原料を使用してつくられた、脂質含有調製品を提供することによって達成され、そのような原料は、水素化された植物原料または植物に基づく原料を少なくとも一部に含有する。
【0018】
驚くべきことに、その組成の特性により、本発明に従う調製品は、顔料の含量が40〜50質量%に達しても、キャストして(型に流し込んで)鉛筆状またはスティック芯状に成型することに適しており、従って、本発明に従う原料から容易にスティック状の製品を製造することができる。このことは、植物原料を使用した既知の材料では、従来不可能であった。さらに、本発明は特に安定な調製品を供給する。
【0019】
本発明の目的は、請求項1に定義している脂質含有調製品を調製することによって達成することができる。
【0020】
特に、本発明に従うことにより、少なくともひとつの油相および固相を含む、脂質含有調製品を提供する。その点で、油相は、特に、植物または植物に基づく原料から成り立っている。
【0021】
原料とは、「化粧品材料に関する国際名称(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)」(「INCI名称」と称される)に従い、当該分野において、当業者に既知である定義に基づいて定義される。例えば、本明細書においては、以下にその例を示す:水添ホホバ油、水添綿実油、水添植物油、水添菜種油、水添ヒマシ油、水添ココグリセリド類(coco-glycerides)およびそれらと同様の油、ならびに、マンゴー(Mangifera indica)(マンゴー種子油)、リムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)種子油)、シアバターノキ(Butyrosperum parkii)(シアバター)、クイーンズランドナッツノキ(Macadamia ternifolia)の実の油(マカダミアナッツ油)、ブクサス・シネンシス(Buxus chinensis)(ホホバ油)などの水添植物油;カルナウバロウ、カンデリラロウ、モクロウ(ハゼノキ(Rhus succedanea))、コメロウ(rice wax)、サトウキビロウなどのロウ類。
【0022】
脂質含有調製品中の水添植物油の含量に関しては、5〜80質量%であり、好ましくは、15〜50質量%である。植物ロウの含量は、0.1〜30質量%であり、好ましくは1〜20質量%である。ホホバ油(化学的には液体ロウに属する)を含む植物油の含量は、1〜65質量%であり、好ましくは、5〜45質量%である。ただし、使用量および好ましい使用量に関する定義としては、それらを合計して最終的に100質量%にする。
【0023】
本発明に従う脂質含有調製品は、水添ホホバ油およびリムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)種子油)を組み合わせて含有している点で特に有用であることが証明されている。水添ホホバ油は市販されており、多様な水素化レベルのもの、従って、固さ(例えば、針の貫通などによって測定する)の異なるもの、融点の異なるもの入手することができる。当業者であれば、市販されている多様な種類の製品を適切に混合することにより、目的に叶った混合物を見出すことができ、密度および粘度などに関して最適な状態になるように最終製品を調整することができる。
【0024】
水添ホホバ油およびリムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)種子油)の使用量は、それぞれ、2〜35質量%であり、好ましくは5〜25質量%であり、かつ、両者は1:2〜2:1の割合で使用する。リムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)種子油)は、特に酸化に対して安定であり、腐敗に対して安定な植物油である。水添ホホバ油と組み合わせることによって製品の特性をさらに高めることができたことから、本発明に従う調製品は、高温での貯蔵においても驚異的な安定性を示した。しかしながら、そのような調製品は、酸化安定性が高いのみならず、匂いに関しても長期間変化しなかった。本発明に従う脂質含有調製品は、約42℃の温度において変質することなく使用可能であり、保存に関しては約52℃まで安定である。また、そのような調製品は、さらっとして、扱いやすく、均一に塗布することができ、付きがよく、塗り直しをすることなく長時間持続する。従って、例えば、脂質を含有する特定の調製品から、キャスト芯を有する化粧用鉛筆を製造することができるが、このとき、芯の直径は2〜6mmであり、調製品の総量に対して顔料および固体含量が1〜50質量%であり、好ましくは5〜40質量%であり、特に好ましくは10〜30質量%である。従来、顔料の含量が40〜50質量%であるような化粧用鉛筆は、特に、リップライナー、アイライナーまたは眉墨鉛筆の製造に使用される押出し法によって製造されることが好ましかったが、これは、それらの付着能が高かったためである。上述の水添ホホバ油およびリムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)種子油)の組み合わせを使用することは、固体含量が50質量%までであるような、本発明に従う脂質含有調製品を最新の注型(キャスティング)法で成型できることを意味する。しかしながら、原則的には、脂質を含有するそのような調製品は、既知の方法に従って押出し成型し、次に、既知の方法に従ってさらに加工を行い、木材で包んだ化粧用鉛筆を製造することもできる。
【0025】
本発明に従う調製品において二番目に重要な材料は、賦形剤および/または顔料を含む固相である。固相の割合は、原料に対して所望する濃度および所望する効果に合わせて調整することができる。従って、顔料の割合は、特に、所望する色彩によって定まり、賦形剤の割合は、原料に対して所望する濃度によって定まる。光輝材料または発光材料などのような効果剤を加えることも可能である。
【0026】
固相を形成することができる物質の例としては、例えば、タルク(滑石)、カオリン、デンプンおよび変形デンプン、ポリテトラフルオロエチレン粉末(テフロン(登録商標))、ナイロン粉末、窒化ホウ素などのような賦形剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸亜鉛などの不溶性金属石けん類、ならびに無機性もしくは有機性顔料などが挙げられる。後者の例としては、次のようなものが挙げられる:二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄類、酸化クロム、水酸化クロム、群青、ベルリンブルー(紺青)、雲母、真珠様光沢剤(二酸化チタンで被覆した雲母、二酸化チタンおよび金属酸化物類で被覆した着色雲母、塩化酸化ビスマス、塩化酸化ビスマス被覆)、薄片状の金属粉(アルミニウム、真鍮、青銅、銅、銀、金など)、ならびに、有機着色剤にアルミニウム、バリウム、カルシウムもしくはストロンチウムなどを加えたレーキ法など。これらは例として挙げたものであり、これらに限定されるわけではない。これらの添加剤は、各国家または各地域における化粧品に関する法律によって承認された要件を満たすものである。
【0027】
固相の量は、化粧に関する法律によって各国で制限されている最大量によって決まることが好ましい。
【0028】
顔料の含有量は、1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、5〜40質量%の範囲であり、特に好ましくは、10〜30質量%の範囲である。本発明に従う脂質含有調製品を太陽光線保護剤として使用する場合には、二酸化チタンおよび/もしくは酸化亜鉛をいわゆる「ナノピグメント」の形で添加することができ、ここで、ナノピグメントとは、粒子径が5〜25nmであり、その添加量は、1〜20質量%であり、好ましくは5〜25質量%であり、さらに、各国家または地域における法律によって承認され、従来から使用されている油溶性のUV−A波および/もしくはUV−B波フィルター物質をさらに含有するこことができる。固相におけるそれらの量は、上述した脂質含有調製品の全ての材料の総量が100質量%になるように定めることもできる。
【0029】
本発明に従う調製品には、化粧品に通常使用されている香料、抗酸化剤、保存剤などの添加剤を、化粧品原料として有効性を発揮するために必要であり、通常使用される量で加えることもできる。そのような物質は、植物由来であることが好ましい。
【0030】
無機性および有機性顔料ならびに有機性染料は、色素剤として考える。
【0031】
本発明のさらなる目的は、請求項28〜31に定義しているように、本発明に従う脂質含有調製品を製造する方法である。
【0032】
上述したように、脂質含有調製品は、その特徴的な特性により、押出し法のみならず注型法(キャスティング)によっても、スティックまたは鉛筆芯状に成型することができる。故に、本発明の目的は、化粧用鉛筆を製造する方法に関し、該方法においては、キャスティングにより、本発明に従う脂質含有調製品を芯状にし、既知の方法に従って木材中に接着し、さらに加工して鉛筆状にする。
【0033】
好ましい実施態様においては、脂質含有調製品は、高温において、プラスチック製のケーシングスリーブ内にキャストするが、スリーブの先端は尖らせることができ、それによって先端を形成することができる。そのような目的に適した方法は、当業者においては既知である。
【0034】
本発明に従う調製品の特に優れた特性により、回転式スピンドル機を使用することにより、そのような調製品から芯をキャストすることができる。故に、本発明のさらなる目的は、化粧用鉛筆を製造する方法であって、ここで、本発明に従う脂質含有調製品を高温において回転式スピンドル機にキャストする。
【0035】
本発明に従う調製品は、ペースト状にしてチューブ、ポットおよびカップに入れることもできる。
【0036】
本発明は、脂質含有調製品、特に、スティックもしくは鉛筆状、または扱いやすいペースト状の調製品に関し、それらは、皮膚、半粘膜性膜、または粘膜の近傍(例えば、目の近傍など)に塗布するものである。特に、本明細書においては、唇を半粘膜性膜と判断する。唇の彩色もしくはケアのための調製品、皮膚の彩色もしくはケアのための調製品の例としては、メーキャップ、口紅、しみもしくは酒さ(rosacea)を隠すためのカモフラージュ、コンシーラー、唇の輪郭、目の輪郭および眉を描くためのペンシル類、ならびに、多様な太陽光線保護指数(SPF)を有する太陽光線保護製品、さらには、非常に細かく粉砕されたナノピグメントもしくは鮮やかな色素を使用したいわゆるサンブロック、より顔料の含有量が高く、例えば、サーファーおよびウインドサーファー達の間ではボディーペイントとして知られているようなサンブロックなどが挙げられる。
【0037】
そのような調製品は、追加の色素剤を使用することなく製造することもでき、さらに、いわゆる化粧活性物質をさらに含有することもできる。そのようにして得られた調製品は、口紅の上に塗布するリップグロスまたは定着剤として使用することができる。無色の調製品が太陽光線保護剤を含有している場合には、該調製品は唇の保護および唇のケア用に使用することができる。既に知られているように、身体の皮膚とは対照的に、唇の皮膚は色素を含んでいない。UV−A波およびUV−B波に対して良好な防護作用を示す油溶性の太陽光線保護剤のうちの適切なものとしては、多数のものが知られており、欧州、日本および米国などの各国家または地域における法律によって規制されている。例えば、ドイツにおいては、化粧品に関する規制の第7章の規則3bによって規制されており、故に、本明細書中にはその全てを記載しない。そのようなものの例として、UV−B波フィルター物質としてはイソアミルp−メトキシシンナメート、UV−A波フィルター物質としては4−メチルベンジリデンカンファーが挙げられる。
【実施例】
【0038】
本明細書に従う調製品の処方について、以下の実施例に沿って詳細に記載するが、そのような記載は、本発明を限定するものではない。記載している全ての量は、調製品の総質量に対する質量%で示している。
実施例1−ペースト状口紅(pasty lip rouge)
【表1】

【0039】
製造は次のような方法で行った:錨型攪拌器およびギアリングホモジナイザー(gear ring homogenizer)を備えた適切なホモジナイズ機の中に水添ホホバ油、リムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(ミードゥフォーム種子油)、カルナウバ、ブクサス・シネンシス(Buxus chinensis)および水添綿実油を入れ、約90℃に加熱した。次に、ケイ素を振り入れ、ホモジナイザーで分散させた。次に、顔料を加え、顔料の全ての凝集塊を壊すために、高剪断力で混合物をホモジナイズした。次に、圧力を加えて脱気した。混合物の温度が高い間に抗酸化剤(トコフェロールおよびアスコルビルパルミテート)を加え、しばらくホモジネートした。次に、錨型攪拌器を用いて撹拌しながら混合物を35℃まで冷却した。ペースト状になった混合物を充填容器に入れ、周囲温度まで冷却した(温度は測定していない)。調製品について品質検査を行って合格した後に、充填機または組立て機(assembly machine)上において、適切な容器(例えば、ガラスもしくはプラスチック製のポット、または金属性のボウルなど)に該調製品を入れた。最終的に得られた調製品は、粘度が5000mPasの扱いやすいソフトペーストであった。
【0040】
実施例2−クリームアイシャドー
【表2】

【0041】
製造は実施例1と同様の方法で行ったが、本実施例の場合には、約90℃において脂質相に最初に顔料を加え、ホモジナイズし、その後、真珠様光沢剤を加えて再度しばらくホモジナイズした。得られた調製品は美しい真珠様光沢を有し、粘度が4200mPasの扱いやすいソフトペーストであった。
【0042】
実施例3−リップグロス
【表3】

【0043】
製造は、上記の方法と実質的に同様に行ったが、太陽光線フィルター物質は、約45〜50℃において、トコフェロールと供に加えた。得られた調製品は、無色透明で粘度が2800mPasの非常に柔らかいペーストであり、チューブまたはポットに充填することができた。
【0044】
実施例4−サーファー用サンブロック
【表4】

【0045】
製造は、実施例1に記載されている方法に従って行った。得られた調製品は、赤橙色固体であり、回転式スピンドル法への導入に適していた。該調製品の太陽光線保護指数(SPF)は25以上であった。
【0046】
実施例5−リップライナー
【表5】

【0047】
リップライナー製品は、実施例1と同様に調製した。材料をキャスティング機に移し、約85〜90℃において、先端を有し、先端に向かって尖らせることができる材料でつくられたプラスチック製のキャスティングスリーブにキャストするか、または、金属の流込み型にキャストし、温度が下がった後に型から取りだし、既知の方法に従ってさらに加工を行い、木材に封入された化粧用鉛筆を製造した。
【0048】
実施例6−アイライナー
【表6】

【0049】
アイライナー製品は、実施例5に記載されている方法と同様に調製した。特に使用が好ましい顔料は、無機性顔料であり、例えば、黒、赤および黄色の鉄酸化物類、二酸化チタン、紺青、群青、水酸化クロムグリーン、酸化クロムグリーン、マンガンバイオレット、ならびにそれらの混合物などが挙げられる。さらに、真珠様光沢顔料をさらに含有することもでき、そのようなものの例としては、例えば、雲母、金属酸化物で被覆した雲母、酸化塩化ビスマス、金属酸化物で被覆した酸化塩化ビスマス、金属薄片(粉末アルミニウム、青銅、真鍮、チタン、銀、金、もしくはそれらの混合物など)、さらに、有機性顔料との組み合わせなどが挙げられる。
【0050】
実施例7−眉墨鉛筆(アイブローペンシル)
【表7】

【0051】
製造は実施例1と同様に行った。原料の温度を完全に下げた後、三本ロール練り機に2回通し、既知の方法でカートリッジに入れ、従来法に従って押し出すことによって芯を成型し、これを木棒に接着させ、加工することによって木材に封入された鉛筆を作成した。
【0052】
水相を含まない、脂質含有調製品は、女性消費者の立場に立ち、不相溶反応をできるだけ避けることを目的として、保存剤を添加していないことが多い(相溶性であることは非常に稀である)。しかしながら、鉛筆表面に微生物コロニーが形成され、そのことによる皮膚表面の汚染を防ぐことを目的として、本発明に従う脂質含有調製品に植物に基づく保存剤(例えば、乾燥ローズマリーの油溶性抽出物もしくはカプリン酸グリセリルなど)、または、抗微生物特性を有する天然香料もしくは天然のものと同一の香料の混合物(例えば、ゲラニオール、リナロール、ネロリ、ワセリン、ラノリン、ワニリン、オイゲノール、メチルオイゲノール、パルマロサ油など)などを添加することができ、その量は、所望され、かつ、従来から使用されている量(0.05〜1.0質量%)である。好ましくは、保存剤の必要量は、このような点に比較的詳しい当業者であれば、保存負荷試験を行うことによって決定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相および固相を有し、該油相が植物原料の混合物を含有することを特徴とする、化粧品用途のための脂質含有調製品。
【請求項2】
前記植物原料は、植物油類、水添植物油類、植物ロウ類およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1記載の脂質含有調製品。
【請求項3】
前記植物油類は、マンゴー(Mangifera indica)(マンゴーの種子油)、リムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)の種子油)、クイーンズランドナッツノキ(Macadamia ternifolia)の実の油(マカダミアナッツ油)、シアバターノキ(Butyrosperum parkii)(シアバター)、ブクサス・シネンシス(Buxus chinensis)(ホホバ油)、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項2記載の脂質含有調製品。
【請求項4】
前記水添植物油類は、水添綿実油、水添植物油、水添ヒマシ油、水添ココグリセリド類、水添ホホバ油、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項2記載の脂質含有調製品。
【請求項5】
前記植物ロウ類は、カルナウバロウ、キャンデリラ・セラ(Candelilla cera)、ハゼノキ(Rhus succedanea)(モクロウ)、コメロウ、サトウキビロウ、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項2記載の脂質含有調製品。
【請求項6】
植物油類の含有量が1〜65質量%の範囲であり、好ましくは5〜45質量%の範囲であることを特徴とする請求項2から5いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項7】
植物ロウ類の含有量が0.1〜30質量%の範囲であり、好ましくは1〜20質量%の範囲であることを特徴とする請求項2から6いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項8】
水添植物油類の含有量が10〜80質量%の範囲であり、好ましくは15〜50質量%の範囲であることを特徴とする請求項2から7いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項9】
水添ホホバ油とリムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)の種子油)との混合物を含有することを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項10】
水添ホホバ油およびリムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)の種子油)の含有量は、それぞれ、2〜35質量%の範囲であり、好ましくは5〜25質量%の範囲であることを特徴とする請求項9記載の脂質含有調製品。
【請求項11】
水添ホホバ油およびリムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)(メドゥーフォーム(meadowfoam seed)の種子油)の使用量の比が1:2〜2:1であることを特徴とする請求項9または10項記載の脂質含有調製品。
【請求項12】
賦形剤、無機性顔料、有機性顔料、またはそれらの混合物を含む固相をさらに含有することを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項13】
前記賦形剤は、タルク(滑石)、カオリン、デンプンおよび変形デンプン、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ナイロン粉末、窒化ホウ素、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸亜鉛、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項12記載の脂質含有調製品。
【請求項14】
前記無機性顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄類、酸化クロム、水酸化クロム、群青、ベルリンブルー(紺青)、雲母、二酸化チタンで被覆した雲母、二酸化チタンおよび金属酸化物類で被覆した雲母、塩化酸化ビスマス、塩化酸化ビスマス被覆、薄片状の金属粉(アルミニウム、真鍮、青銅、銅、銀、金)、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項12または13記載の脂質含有調製品。
【請求項15】
前記有機性顔料は、有機着色剤にアルミニウム、バリウム、カルシウムストロンチウム、ジルコニウムおよびそれらの混合物を加えたレーキであることを特徴とする請求項12から14いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項16】
顔料の含有量は、1〜50質量%の範囲であり、好ましくは5〜40質量%の範囲であり、特に好ましくは10〜30質量%の範囲であることを特徴とする請求項12から15いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項17】
粒子径が5〜25nmの範囲の顔料が使用されていることを特徴とする請求項12から16いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項18】
太陽光線保護剤として使用される酸化チタンおよび/または酸化亜鉛が、5〜25質量%、好ましくは5〜15質量%の量で、ナノピグメントの形態で使用されていることを特徴とする請求項12から17いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項19】
国家および地域の法律によって許可されている通常の油溶性UV−A波およびUV−B波フィルター物質と組み合わせてナノピグメントが使用されていることを特徴とする請求項18記載の脂質含有調製品。
【請求項20】
好ましくは4−メチルベンジリデンカンファーおよびイソアミルp−メトキシシンナメートが、UV−A波およびUV−B波フィルター物質として、ナノピグメントと組み合わせて使用されていることを特徴とする請求項19記載の脂質含有調製品。
【請求項21】
スキンケア剤、ならびに/あるいは、皮膚、唇および/または瞼を彩色しおよび見栄えをよくするための仕上げ化粧品に属する製品を提供することを特徴とする請求項1から20いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項22】
口紅、ほお紅、リップライナー、アイライナー、眉墨鉛筆、アイシャドー、メーキャップ、カバー用鉛筆、コンシーラー、リップケア鉛筆、リップクリーム、リップグロス、唇用の定着ファンデーション、皮膚用のケアファンデーション、または太陽光線保護剤を提供することを特徴とする請求項1から20いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項23】
保存剤として、植物性保存剤、天然香料、天然のものと同一の香料、またはそれらの混合物を含有することを特徴とする請求項1から22いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項24】
植物性保存剤、天然香料、天然のものと同一の香料、またはそれらの混合物の使用量が、0.05〜1.0質量%であることを特徴とする請求項23記載の脂質含有調製品。
【請求項25】
保存剤として、乾燥ローズマリーの油溶性乾燥抽出物、カプリン酸グリセリル、またはそれらの混合物を含有することを特徴とする請求項1から22いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項26】
保存剤として、天然香料、天然のものと同一の香料、またはそれらの混合物を含み、該香料は、ゲラニオール、リナロール、ネロリ、バニリン、オイゲノール、メチルオイゲノールまたはパルマローザオイルより成る群から選択されることを特徴とする請求項1から22いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項27】
木材の中に接着されているスティックの形状を有することを特徴とする請求項1から26いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項28】
先端に向かって尖らせることにより、先端を形成することができるようなプラスチック製のケーシングスリーブにキャストされた形状であることを特徴とする請求項1から26いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項29】
スティックの形状であり、回転式スピンドル機にキャストされていることを特徴とする請求項1から26いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項30】
チューブまたはポットに入れられたペースト状であることを特徴とする請求項1から26いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項31】
金属性のボウルに入れられたペースト状であることを特徴とする請求項1から26いずれか1項記載の脂質含有調製品。
【請求項32】
化粧用鉛筆を製造する方法であって、請求項1から26いずれか1項記載の調製品をキャストすることによって芯状の形状にし、さらに、当該分野において既知の方法に従って加工することにより、鉛筆状にすることを特徴とする方法。
【請求項33】
キャストすることによって成型された芯がロータリー機にはめ込まれていることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
キャストによって成型された芯を木材に入れ、接着し、加工することによって鉛筆を製造することを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項35】
保存安定性の高い化粧用塊を製造するための、水添ホホバ油とリムナンセス・アルバ(Limnanthes alba)との組合せの使用。

【公表番号】特表2006−500397(P2006−500397A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535062(P2004−535062)
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008793
【国際公開番号】WO2004/024105
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(597139631)シュヴァン−スタビロ コスメティクス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (15)
【Fターム(参考)】