説明

脂質含量の低下したHDLの粒子誘導体を製造するための方法及び装置

本発明は、LDLに実質的に影響を及ぼすことなく、少なくとも一種類のHDLの誘導体を作製するための系、装置及び方法を対象とする。これらのHDLの誘導体は、脂質含量の低下、特にコレステロール含量の低下した粒子である。これらの粒子はコレステロールを結合する能力を有し、患者に投与されて細胞のコレステロール流出を増強し、細胞、組織、器官及び血管中のコレステロールレベルを低下させる。本発明の方法はアテローム産生性の血管障害を治療するために有用であり、他の療法、例えばスタチン、コレステロール吸収阻害剤、ナイアシン、抗炎症薬、運動及び食事制限と組み合わせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、単一溶媒又は多溶媒を用いて血漿を体外処理することにより、LDL粒子を実質的に無傷に保ちつつ、HDL粒子から脂質を除去するための系、装置及び方法に関する。本発明の方法は、LDL粒子を実質的に無傷のままで、HDLから脂質を選択的に除去して改変HDL粒子を作製する手法を提供する。本発明の方法は、脂質を除去するためにHDL粒子を処理する前に、血漿からLDL粒子を除去するための手法を提供する。本発明は、治療的使用、例えば動物又はヒトの動脈硬化症及びアテローム硬化性血管障害の治療のために、動物又はヒトに投与され得るHDLの誘導体を含有する粒子を作製する。
【背景技術】
【0002】
序論−高脂血症及び動脈硬化症
心臓血管性、脳血管性及び末梢血管障害は、多数の先進工業国における毎年の死の大きな原因である。これらの疾患の基礎を成す最も一般的な病理学的過程のうちの1つは、動脈硬化症である。動脈硬化症は、心臓、脳、並びに身体全体のその他の器官及び組織に血液を供給する血管の内面の局在性脂肪肥厚として始まる病変により特徴づけられる。時間が経過すると、これらの動脈硬化性病変は潰瘍化することがあり、時に壊れて血液循環に閉塞を起こし得る脂肪プラークの沈着が顕在化する。動脈硬化性病変は、罹患した血管の管腔を塞ぎ、しばしば血管内の血流量を低下させ、これが、血管により栄養供給される組織の虚血を引き起こし得る。動脈硬化性プラークの塞栓化は、遠位血管における急性閉塞及び虚血を生じ得る。このような虚血は、長期であれ、急性であれ、心臓発作(attack又はstroke)を引き起こし得るが、患者はこれから回復する場合もしない場合もある。四肢に栄養供給する動脈における同様の虚血は、四肢の切断を要する壊疽を生じることもあり得る。
【0003】
長い間、医学界は、動脈硬化症と患者の血流内の食事性脂質、血清コレステロール及び血清トリグリセリドとの関係を認識してきた。多数の疫学的研究が実行され、患者の血流内の血清コレステロールの量は冠動脈疾患の重要な予測材料であるということが明示されてきた。同様に、真性糖尿病を引き起こし得る高脂血症とインスリン耐性との関係を、医学界は認識している。さらに高脂血症及び動脈硬化症は、その他の主要な健康問題、例えば肥満及び高血圧に関連すると確認されている。
【0004】
コレステロール運搬
血中を循環するコレステロールは、血液全体に脂質を運搬する血漿リポタンパク質により運ばれる。血漿リポタンパク質は、サイズによって以下の5つの型に分類される:カイロミクロン(最大サイズで且つ最低密度)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)及び高密度リポタンパク質(HDL)(最小サイズ且つ最高密度)。これらの血漿リポタンパク質は、当業者に既知であるように、サイズ、密度、直径、タンパク質含量、リン脂質含量及びトリアシルグリセロール含量における差を示す。これらのうち、低密度リポタンパク質(LDL)及び高密度リポタンパク質(HDL)は主に、主要コレステロール運搬体タンパク質である。LDLのタンパク質構成成分であるアポリポタンパク質−B(Apo B)及びその産物は、アテローム発生要素を含む。Apo BはLDL粒子中に最高濃度で存在し、HDL粒子中には存在しないため、血漿LDLレベルの増大及びHDLレベルの低下は、冠動脈疾患の主因と認識されている。アポリポタンパク質A−1(Apo A−1)及びアポリポタンパク質A−2(Apo A−2)は、HDL中に見出される。その他のアポリポタンパク質、例えばApo C及びそのサブタイプ(C−1、C−2及びC−3)、Ap
o D及びApo Eも、HDL中に見出される。Apo C及びApo Eは、LDL粒子中にも見出される。
【0005】
HDL2b、HDL2a、HDL3a、HDL3b及びHDL3cを含む、多数の主要な分類のHDL粒子が報告されている(Segrest et al., Curr. Opin. Lipidol. 11: 105-115, 2000)。さまざまな種類のHDL粒子が、アガロース上での電気泳動の移動度に基づいて、2つの主要な集団、即ちα−HDLの移動度を有する主要画分及びVLDLに類似の移動を示す小画分として記述されている(Barrans et al., Biochemica Biophysica Acta 1300; 73-85, 1996)。後者の画分は、プレβHDLと呼ばれており、これらの粒子は細胞コレステロールの流出を誘導するための最も効率的なHDL粒子のサブクラスであると考えられる(Segrest et al., Curr. Opin. Lipidol. 11: 105-115, 2000)。プレβHDL粒子は、プレβHDL、プレβHDL及びプレβHDLにさらに分けられている。これらのリポタンパク質粒子は、Apo A−1、リン脂質及び遊離コレステロールからなる。プレβHDL粒子は、細胞内遊離コレステロールの一次受容体であると考えられ、最終的に遊離及びエステル化コレステロールをαHDLに転移させるのに不可欠である(Barrans et al., Biochemica Biophysica Acta 1300; 73-85, 1996)。プレβHDL粒子は、コレステロールをαHDLに転移させ得るかあるいはαHDLに転換され得る。これらのプレβHDL粒子は、それらの電荷、分子量(40kDa〜420kDaの範囲)、サイズ(ストークス半径4nm〜15nm)、形状(長円形、円盤形又は球形)及び化学組成(タンパク質(例えばApo A−1)、遊離コレステロール、エステル化コレステロール、リン脂質、並びに遊離コレステロール対リン脂質比(さらなる詳細に関しては、Barrans et al., Biochemica Biophysica Acta 1300; 73-85, 1996参照))に関して特徴付けられている。HDLレベルは、アテローム硬化症及び冠動脈疾患と逆相関する。したがって必要とされるのは、これらの種々のHDL粒子、特にプレβHDL粒子から、コレステロールを減少させるか又は除去し、その結果それら粒子が細胞からさらにコレステロールを除去できるようにするための方法である。
【0006】
コレステロールは肝臓により合成され、又は食物源から得られる。LDLは、肝臓から身体の様々な部位の組織へのコレステロールの運搬に関与する。しかしながらLDLが動脈壁上に集まる場合には、LDLは、身体の化学過程によって遊離する酸素フリーラジカルにより引き起こされる酸化を受け、血管と有害な相互作用を生じる。この改変されたLDLは、免疫系中の白血球を動脈壁に集まらせて、プラークと呼ばれる脂肪物質を形成し、血管を裏打ちする細胞層を損傷する。改変された酸化型LDLは、血管を弛緩させて血液を自由に流動させる働きを持つ一酸化窒素のレベルも低下させる。このプロセスが継続すると、動脈壁は徐々に収縮して、動脈の硬化を生じ、それにより血流は減少する。プラークの漸進的な構築は、冠血管の遮断を、最終的には心臓発作を引き起こし得る。
【0007】
LDLとは対照的に、高い血漿HDLレベルは、「逆コレステロール運搬」において重要な役割を演じることから望ましいものであり、この場合、過剰なコレステロールは組織部位から肝臓に運搬され、そこで異化され、排出される。最適な総コレステロールレベルは200mg/dl又はそれより低く、LDLコレステロールレベルは160mg/dl又はそれより低く、HDLコレステロールレベルは男性で45mg/dl、女性で50mg/dlである。高コレステロール、アテローム硬化症又は冠動脈疾患の病歴を有する個体に関しては、より低いLDLレベルが推奨される。
【0008】
現在の治療方法
高脂血症は、患者の食物を変更することにより治療され得る。しかしながら治療の主要方式としての食物は、患者、医者、栄養学者、栄養士及びその他の健康管理専門家の一部に多大の尽力を求め、したがって望ましくないことに、健康専門家の精神的能力に重い負担をかける。この療法の別の負の面は、その成功は専ら食物にあるというわけではない、
ということである。むしろ食事療法の成功は、社会的、生理学的、経済的及び行動的因子の組合せによっている。したがって患者の食事の範囲における欠点を修正することのみに基づく療法は、常にうまくいくというわけではない。
【0009】
食物修正がうまくいかなかった場合、代替手段として薬物療法が用いられてきた。このような療法は、食事調節の補足として、単独で又は他の療法と組合せて投与される市販の高脂血症薬の使用を含む。スタチンと呼ばれるこれらの薬剤は、天然スタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、フルバスタチン、アトロバスタチン及びセリバスタチンを含む。スタチンはLDLレベルを下げるために特に有効であり、明らかにそれらのLDL低下作用に直接比例して、トリグリセリドの低減においても有効である。スタチンはHDLレベルを上げるが、他の抗コレステロール薬よりその程度は低い。スタチンは一酸化窒素も増大するが、これは上記のように、酸化LDLの存在下で減少する。
【0010】
別の薬物療法である胆汁酸樹脂は、胆汁酸との結合により作用する。胆汁酸は、肝臓により、その主要な生産成分の1つとしてコレステロールを用いて作られる物質である。該薬剤は消化管中で胆汁酸と結合するため、それらは次に、身体に吸収されるというよりむしろ、糞便と一緒に排泄される。その結果、肝臓は、胆汁酸を構築し続けるために血流からより多くのコレステロールを取り込まなければならず、LDLレベルの全体的な低下を生じる。
【0011】
ニコチン酸又はナイアシンは、ビタミンBとしても既知である。それは、いかなるその他の抗コレステロール薬よりもトリグリセリドレベルを低下させ、HDLレベルを上げるのに非常に有効である。ニコチン酸は、LDLコレステロールも下げる。
【0012】
これらの目的のために普通に用いられる他の薬剤、例えばナイアシンが有効でない場合、フィブリン酸誘導体又はフィブラートが用いられて、トリグリセリドレベルを下げ、HDLを増大させる。
【0013】
プロブコールはLDLコレステロールレベルを下げるが、HDLレベルも下げる。プロブコールは一般に高コレステロールレベルを生じるある種の遺伝子障害のために用いられ、あるいは他のコレステロール低下薬が有効でないか又は使用できない場合に用いられる。
【0014】
高脂血症薬は、程度は様々であるものの、血中脂質の低下を成功させてきた。しかしながら、全ての種類の高脂血症を首尾よく治療する高脂血症薬はない。いくつかの高脂血症薬はかなり成功をおさめてきたが、高脂血症薬がアテローム硬化症の軽減を生じるといういかなる決定的証拠も、医学界は見出していない。さらに高脂血症薬は全て、望ましくない副作用を有する。食事調節、薬物療法及びその他の療法が首尾よくいかなかった結果、アテローム硬化症は依然として世界の多くの地域において死亡の主要原因である。
【0015】
薬物及び食事療法が十分に有効でなかった患者における脂質の量を低減するために、新規の療法が用いられてきた。例えば体外的手法、例えばプラズマフェレーシス(plasmapheresis)及びLDLアフェレーシス(apheresis)が用いられてきており、LDLを低下させるのに有効であることが示されている。
【0016】
プラズマフェレーシス又は血漿交換療法は、患者の血漿をドナーの血漿と、又はより一般的には血漿タンパク質画分と交換することを含む。プラズマフェレーシスは、細胞分離器により血漿が血球から除去される方法である。分離器は、液体から細胞を分離するために高速で血液を回転することにより、あるいは血液の液体構成成分のみを通し得るような小さい孔を有する膜に血液を通すことにより、機能する。細胞は治療を受けている人に戻
されるが、一方、血漿は廃棄され、他の液体と置き換えられる。
【0017】
この治療は、異種タンパク質の導入及び感染性疾患の感染のため、合併症を引き起こした。さらにプラズマフェレーシスは、全ての血清タンパク質、例えばVLDL、LDL及びHDLの非選択的な除去という欠点を有する。さらにプラズマフェレーシスは、いくつかの副作用、例えば発熱、悪寒及び発疹の形態のアレルギー反応、おそらくはアナフィラキシーさえ生じ得る。
【0018】
上記のように、HDL(これは、コレステロール及びリン脂質を含有する新生円盤状粒子として肝臓及び小腸の両方から分泌される)を除去することは望ましくない。HDLは、過剰なコレステロールが組織から除去されて、胆汁中での再使用又は廃棄のために肝臓に運搬される方法である逆コレステロール運搬において役割を果たすと考えられる。
【0019】
プラズマフェレーシスとは対照的に、LDLアフェレーシス法は、HDLを保持しながら、Apo B含有コレステロール、例えばLDLを選択的に除去する。LDLアフェレーシスのためのいくつかの方法が開発されてきた。これらの技法としては、ヘパリン−アガロースビーズにおけるLDLの吸収、硫酸デキストランを固定化するための固定化LDL−抗体、カスケード濾過吸収の使用、ヘパリン存在下での低pHでのLDL沈降が挙げられる。上記の各方法は、LDLを除去するのに有効である。しかしながらこの治療方法は、HDLに対して肯定的に作用することができないか、あるいはアテローム硬化症及びその他の心臓血管障害を増強し得る代謝シフトを生じさせてしまうことを含めた欠点を有する。LDLアフェレーシスは、重度の高脂血症の患者のみを治療する。
【0020】
ホモ接合型の家族性高コレステロール血症、ヘテロ接合型の家族性高コレステロール血症及び後天性の高脂血症患者における血漿コレステロールの低減を達成するためのさらに別の方法は、アフェレーシスと呼ばれる体外の脂質排除工程である。コレステロールアフェレーシスでは、血液が患者から抜き取られ、血漿が血液から分離され、血漿が溶媒混合物と混合される。溶媒混合物は、血漿から脂質を抽出する。その後、脱脂血漿が患者の血球と再混合されて、患者に戻される。
【0021】
しかしながら従来の体外脱脂処理は、LDL及びHDLの同時脱脂を目的としている。この方法は、多数の欠点を有し得る。LDLは脱脂するのがより難しいため、体外の系は、おそらくは多段階の溶媒曝露及び抽出工程を通じて、体液を多くの処理に付すよう計画される。激しい多段階の溶媒曝露及び抽出は、いくつかの不利益を有し得る。脱脂された血漿を患者に安全に戻すために脱脂血漿から十分な量の溶媒を除去することは困難かもしれない。
【0022】
それゆえ、血漿構成成分を処理するための現存のアフェレーシス及び体外の系は、臨床的用途に用いられるそれらの能力を制限する多数の不都合に悩まされることになる。心臓血管障害を治療及び予防する方法を提供するために、血液構成成分から脂質を除去することができる改良型の系、装置及び方法が必要である。さらにまた必要とされるのは、HDL粒子から脂質を選択的に除去し、それによりコレステロールを受容する能力が増大した改変HDLを作製するための方法である。さらにまた必要とされるのは、LDL粒子に実質的に影響を及ぼすことなく、HDL粒子から脂質を選択的に除去し、それによりコレステロールを受容する能力が増大した改変HDLを作製するための方法である。
【発明の開示】
【0023】
本発明は、LDLに実質的に影響を及ぼすことなく改変HDL粒子を作製するための系、装置及び方法を対象とする。これらの改変HDL粒子は、低下した脂質含量、特に低下したコレステロール含量を有するHDLの誘導体である。これらの改変HDL粒子はコレ
ステロールを結合する能力を有し、患者に投与されて細胞内コレステロールの流出を増強し、且つ、細胞、組織、器官及び血管中のコレステロールレベルを低下させ得る。
【0024】
本発明はまた、タンパク質の分布が改変された生体液も提供する。ここで、該生体液は、アルファ高密度リポタンパク質及びプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一の状態であったものが、脂質除去剤に曝露された後には、第一の状態に比べて増大した濃度のプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第二の状態となる。
【0025】
本発明は、総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の第一の濃度を有する液体を改変(ここで、該改変は総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の濃度を増大させる。)することにより製造される、患者のABCA1経路を増強し得る生体液も提供する。
【0026】
本発明はさらに、ある第一のタンパク質分布(ここで、該第一のタンパク質分布は、総タンパク質に対してある濃度のプレベータ高密度リポタンパク質を含有する)を示す患者のABCA1経路の増強方法であって、第一のタンパク質分布を有する液体を脂質除去剤に曝露することにより改変する工程(ここで、該改変は総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の濃度を増大させる)、及び該液体を患者に導入する工程を含む方法を提供する。
【0027】
本発明はさらに、液体中のタンパク質分布(ここで、該タンパク質分布はアルファ高密度リポタンパク質及びプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一の状態である)を改変する方法であって、脂質除去剤に該液体を曝露する工程(ここで、該曝露により第一の状態から第二の状態(該第二の状態は、第一の状態に比べて増大した濃度のプレベータ高密度リポタンパク質を含有する)にタンパク質分布が改変される)、及び該脂質除去剤を該生体液から除去する工程を含む方法を提供する。
【0028】
本発明は、溶媒で液体を処理し、該溶媒と液体を混合するためのエネルギーを付加することにより、LDLに実質的に影響を及ぼすことなく、液体、例えば血漿から、並びにHDL粒子から、脂質を除去するための方法を開示する。HDL粒子からの脂質の除去は、脂質含量の低下した改変HDL粒子を生み出し、これは、さらに脂質と結合し、細胞コレステロールの流出を増強することができる。さらに、特に本発明は、単一溶媒又は多溶媒を用いて血漿中のHDL粒子から脂質を除去し、それにより脂質含量の低下したHDL誘導体である新規の粒子を作製することを志向している。
【0029】
本発明の一実施形態では、LDL及びHDL粒子は、HDL粒子を含有する血漿の処理前に分離される。LDLが除去され、血漿はHDL粒子の脂質含量を低下させるよう処理される。LDLの除去後、HDL粒子を含有する血漿を本発明の方法を用いて脂質除去剤に曝露して脂質レベルを低下させ、脂質含量の低下したHDLの粒子誘導体を作製する。これらの粒子は、コレステロールを結合するための増強された能力を示す。HDLのこれらの粒子誘導体及び脂質含量の低下した血漿は、細胞のコレステロール流出を増強し、脂質関連疾患及び症状を治療するために患者に投与され得る。
【0030】
本発明の別の実施形態では、LDLは保持され(処理前に分離されない)、溶媒系を用いて、HDLから脂質を選択的に除去し、LDLに実質的に影響を及ぼさずに、脂質含量の低下したHDLの誘導体からなる粒子を作製する。分離された血漿は、血漿中に存在するHDL粒子中の脂質を選択的に減少させるように設計された溶媒系と混合される。用いられる溶媒、用いられる混合方法、手法、混合時間及び温度が、HDLから脂質を選択的に除去し、HDLの誘導体からなる粒子を作製し、LDLを実質的に無傷のままにすることを確実にするよう注意がなされる。最初に分離された、少なくとも部分的に又は実質的
に脱脂された血漿は次に、患者への投与のために適切に処理される。
【0031】
本発明を用いて、患者から得られる血漿を、その患者へのその後の投与のために、又は別の患者への投与のために、処理してもよい。本発明は、脂質含量が減少し、かつ脂質含量の低下したHDLの誘導体からなる粒子を含有する血漿を作製することを目的として、血液バンクに保存された血液及び血漿を処理するためにも用いられ得る。脂質含量の低下したHDLの誘導体からなる粒子を含有するこの処理された血漿は、患者におけるコレステロール流出を増強するために、別の個体への投与のために用いられ得る。本発明は、収集及び保存され得るHDLの誘導体からなる粒子を作製するためにも用いられ得る。
【0032】
本発明の方法は、種々の形態の様々なHDL粒子を改変する。このようなHDL粒子としては、種々の方法、例えば電荷、密度、サイズ及び免疫親和性、例えば電気泳動移動度、超遠心分離、免疫反応性(これらに限定されない)を測定する方法、並びに当業者に既知のその他の方法に基づいて分類されたHDL粒子が挙げられるが、これらに限定されない。このようなHDL分子としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。VLDL、αHDL、プレβHDL(例えばプレβHDL、プレβHDL及びプレβHDL)、βHDL、HDL(例えばHDL2a及びHDL2b)、HDL、VHDL、LpA−I、LpA−II、LpA−I/LpA−II、(Barrans et al., Biochemica Biophysica Acta 1300; 73-85, 1996参照)。したがって本発明の方法の実施によって、改変HDL粒子が作製される。これらの改変HDL粒子は、多くの方法で、例えば以下に示す代謝及び/又は物理化学的特性の変更によって改変しうるが、これらに限定されない。分子量(kDa)、電荷、直径、形状、密度、水和密度、浮力特性、コレステロール含量、遊離コレステロール含量、エステル化コレステロール含量、遊離コレステロール対リン脂質のモル比、免疫親和性、酵素又はタンパク質(Apo A−1、Apo A−2、Apo D、Apo E、Apo J、Apo A−IV、コレステロールエステル運搬タンパク質(CETP)、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT))のうちの1又は複数の含有量、活性又はらせん構造、コレステロール結合能力及び/又は速度、コレステロール運搬に関する能力及び/又は速度。HDL粒子の物理化学特性は、当業者に既知である。例えばプレβHDL粒子は、それらの電荷、分子量(40kDa〜420kDaの範囲)、サイズ(ストークス半径4nm〜15nm)、形状(長円形、円盤形又は球形)及び化学組成(タンパク質(例えばApo A−1)、遊離コレステロール、エステル化コレステロール、リン脂質、並びに遊離コレステロール対リン脂質比(さらなる詳細に関しては、Barrans et al., Biochemica Biophysica Acta 1300; 73-85, 1996参照))に関して特徴付けされている。
【0033】
本発明は、LDL粒子の種々の代謝及び/又は物理化学的特性に実質的に影響を及ぼすことなく、これらの改変HDL粒子を作製する。
【0034】
本発明の別の態様では、開示された方法により製造される改変HDL誘導体粒子は、細胞からのコレステロール流出を増強するために患者に投与される。これらの改変HDL粒子は、改変HDL粒子を投与される同一患者又は異なる患者から得られる。これらの粒子は、本発明の方法で処理され、実質的に低下したレベルの脂質を含有する血漿と混合され、次に患者に投与され得る。
【0035】
本発明は、本発明の方法で血漿を処理することにより産生される、脂質含量の低下した改変Apo A−1タンパク質も提供する。改変Apo A−1タンパク質は精製され、単独で、又は脂質含量の低下した改変HDL粒子と一緒に投与されて、コレステロールの流出を増強し得る。
【0036】
これらの改変HDL粒子は、本発明の方法で処理され、実質的に低下したレベルの脂質
を含有する異種の血漿と混合し、次いで患者に投与しても良い。これらの粒子は、他の血漿構成成分と、さらに状況により赤血球と混合した後、血管系に投与しても良い。これらの粒子の投与は、細胞からのコレステロール流出を引き起こすのに必要な頻度で行う。
【0037】
本発明の改変HDL粒子は、コレステロールの細胞内レベルを低下させるために患者に投与され、種々の症状、例えばアテローム硬化症、動脈硬化症、高脂血症、高コレステロール血症、肥満、高血圧、卒中(stroke)、卒中後の神経保護、炎症、アルツハイマー病、糖尿病、低内因性HDLレベル、高LDLレベル、心臓血管障害(例えば冠動脈、頚動脈、鎖骨下動脈、上腕動脈、大動脈、腸骨動脈、腎動脈、大腿動脈、膝窩動脈、脛骨動脈、又は心臓血管系における任意のその他の動脈のアテローム硬化症)、脳血管障害(例えば内頚動脈、中大脳動脈、前大脳動脈、後大脳動脈、脳底動脈、小脳動脈及び/又は脊髄動脈、あるいはこれらの動脈の任意の枝、大脳皮質末端動脈、又は脳神経系に栄養供給する任意のその他の動脈)の治療に適応されるが、それらの症状に限定されるものではない。
【0038】
本発明の改変HDL粒子は、細胞のコレステロール流出を増強するために有効な任意のスケジュールに従って患者に投与される。非限定的な一例では、1リットルの血漿が本発明の方法で毎週処理され、改変HDL粒子を含有する処理された血漿は、4〜6週間にわたり、毎週患者に戻される。あるいは改変HDL粒子は、処理された血漿から分離され、許容可能なビヒクル中で投与され得る。
【0039】
本発明の改変HDL粒子は、上記の疾患及び症状の治療のために、他のレジメン及び治療と組み合せて投与されるのがよい、と理解されるべきである。例えば本発明の改変HDL粒子は、運動及び/又は脂肪及びコレステロール摂取の食事制限と組み合せて投与され得る。
【0040】
本発明の改変HDL粒子は、コレステロールを減少させるための、LDLレベルを減少させるための、及びHDLレベルを増強するための薬剤の投与とともに用いられ得る。これらの薬剤、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤又はスタチンは、当業者に一般に既知の投薬量で、投与スケジュールに従って投与され得る。スタチンとしては、セリバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン及びロバスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば1日1回摂取される10mg、20mg、40mg又は80mgのスタチンの投薬量が一般に用いられる。本発明の改変HDL粒子の投与は、患者におけるスタチン療法の必要性を排除し、あるいはスタチンの必要投薬量を低減することができる。
【0041】
別の態様では、本発明の改変HDL粒子は、脂肪及びコレステロールの吸収を低減するよう意図された薬剤の投与とともに用いられる。このような薬剤(例えばエゼチミブ)、並びに臨床的に適切な投薬量は、当業者に既知である。
【0042】
本発明のさらに別の態様では、改変HDL粒子は、1又は複数の薬剤、例えばフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル)、ニコチン酸(ナイアシン)及び胆汁酸結合樹脂(コレスチラミン、コレスチポール)の投与とともに用いられる。
【0043】
さらに別の態様では、本発明の改変HDL粒子は、当業者に既知の抗炎症薬、例えばアスピリンの投与とともに用いられる。炎症はアテローム硬化症及びその他の血管障害の原因である、と考えられるため、抗炎症薬は、血管障害を有する患者にしばしば処方される。
【0044】
本発明の改変HDL粒子は、脂肪及びコレステロールの吸収を低減するよう設計された
薬剤に加えてスタチンのような薬剤の投与を併用して用いられる。この3つの療法の組合せは、細胞からのコレステロール流出を増強するのに有効であり、より低い用量でのスタチン投与を可能にする。本発明の改変HDL粒子はまた、上記の治療アプローチのいずれかとともに用いられる。
【0045】
これらの改変HDL粒子は、使用前に保存され得る。それらは、患者の血漿から作られ、その患者に戻され得る。あるいは改変HDL粒子は、第一の患者から得られた血漿から作られ、次いで第二の患者に投与され得る。本発明は、血漿バンクにおける保存及びその後の患者への投与のための改変HDL粒子を含有する血漿試料を作製するにあたって有用である。
【0046】
したがって、本発明の一目的は、改変HDL粒子を含む粒子を提供することである。
【0047】
本発明の別の目的は、LDLに実質的に影響を及ぼすことなく改変HDL粒子を含む粒子を提供することである。
【0048】
本発明の別の目的は、少なくとも一種類のHDLの誘導体を含む粒子であって、コレステロール含量の低下した粒子を提供することである。
【0049】
本発明の別の目的は、遊離コレステロール対リン脂質の比率が低下した少なくとも一種類のHDLの誘導体を含む粒子を提供することである。
【0050】
本発明の別の目的は、少なくとも一種類のHDLの誘導体を含む、プレβHDL粒子を提供することである。
【0051】
本発明のさらに別の目的は、アルファ高密度リポタンパク質及びプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一の状態を有していた生体液を、脂質除去剤に曝露することにより、該第一の状態に比べてプレベータ高密度リポタンパク質の濃度が増大した第二の状態を有することとなった、改変されたタンパク質分布を含む生体液を提供することである。
【0052】
したがって、本発明の一目的は、少なくとも一種類のHDLの誘導体を含む粒子の作製のための新規の方法を提供することである。
【0053】
本発明のさらに別の目的は、LDLに実質的に影響を及ぼさずに、少なくとも一種類のHDLの誘導体を含む粒子の作製のための新規の方法を提供することである。
【0054】
本発明の別の目的は、アルファ高密度リポタンパク質及びプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一の状態である液体中のタンパク質分布を改変する方法であって、上記第一の状態から、第一の状態に比べてプレベータ高密度リポタンパク質の濃度が増大した第二の状態にタンパク質分布を改変する、脂質除去剤に上記液体を曝露する工程、及び上記脂質除去剤を該生体液から除去する工程、を含む方法を提供することである。
【0055】
本発明のさらに別の目的は、総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の第一の濃度を有する液体を改変することにより製造され、該改変は総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の濃度を増大させることを特徴とする、患者のABCA1経路を増強し得る生体液を提供することである。
【0056】
本発明の別の目的は、総タンパク質に対してある濃度のプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一のタンパク質分布を有する患者のABCA1経路を増強する方法であって、脂質除去剤に曝露することにより該第一のタンパク質分布を含有する液体を改変して
総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の濃度を増大させる工程、及び該液体を患者に導入する工程、を含む方法を提供することである。
【0057】
本発明のさらに別の目的は、少なくとも一種類のHDLの誘導体である粒子を含む組成物を患者に投与することにより、脂質蓄積に関連する疾患を治療するための新規の方法を提供することである。
【0058】
本発明の別の目的は、脂質蓄積と関連する疾患を治療するための新規の方法であって、スタチン、コレステロール又は脂質取込みの阻害薬、ナイアシン、フィブリン酸誘導体、胆汁酸結合樹脂又はそれらの組合せの治療的投与とともに、少なくとも一種類のHDLの誘導体である粒子を含む組成物を患者に投与することにより、脂質蓄積と関連する疾患を治療するための新規の方法を提供することである。
【0059】
本発明のさらに別の目的は、患者における細胞のコレステロール流出を増強するための新規の方法であって、少なくとも一種類のHDLの誘導体である粒子を含む組成物の投与を含む方法を提供することである。
【0060】
本発明のさらに別の目的は、少なくとも一種類のHDLの誘導体である粒子を含む組成物を患者に投与することにより、アテローム硬化症を治療するための新規の方法を提供することである。
【0061】
本発明の別の目的は、コレステロール及び脂質を減少させて少なくとも一種類のHDLの誘導体を含む粒子を作製することを目的として、生体液の処理に有用なキットを提供することである。
【0062】
本発明のこれらの及びその他の目的、特徴及び利点は、以下の開示される実施の形態及び特許請求の範囲の詳細な説明の検討後に明らかになるであろう。
【0063】
[発明の詳細な説明]
本発明は、主として患者の血漿から得られるHDL粒子から脂質を除去し、それにより脂質含量の低下した、特にコレステロール含量の低下した改変HDL粒子を作製するに有用な系、装置及び方法に関する。本発明の方法は、LDL粒子に実質的に影響を及ぼすことなくこれらのHDL粒子を作製する。
【0064】
本発明はさらに、アルファ高密度リポタンパク質及びプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一の状態を有していた生体液が、脂質除去剤に曝露された後に、該第一の状態に比べてプレベータ高密度リポタンパク質の濃度が増大した第二の状態を有する生体液となる事を特徴とする、改変されたタンパク質分布を含む生体液を提供する。本発明は、総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の第一の濃度を有する液体を改変することにより製造され、該改変は総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の濃度を増大させることを特徴とする、患者のABCA1経路を増強し得る生体液を提供する。
【0065】
本発明は、細胞のコレステロール流出を増強し、疾患、特に動脈硬化症、アテローム硬化症、心臓血管性及びその他の脂質関連疾患を治療するために患者に投与され得る新規に生成されるHDL粒子の誘導体を提供する。
【0066】
定義
「液体」という用語は、脂質又は脂質含有粒子を含有する動物又はヒトからの液体、脂質を含有する培養組織及び細胞からの液体、並びに脂質含有細胞と混合された液体と定義
される。本発明の目的のために、液体中の脂質の量の低減は、血漿及び血漿中に含有される粒子、例えばHDL粒子(これに限定されない)中の脂質を低減することを含む。液体としては、生体液(例えば血液、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液、腹水、胸水、囲心腔液、生殖器系の種々の液体(例えば精液、射精液、濾胞液及び羊水(これらに限定されない))、細胞培養試薬(例えば通常の血清、ウシ胎仔血清あるいは任意の動物又はヒト由来の血清)、並びに免疫学的試薬(例えば培養組織及び細胞からの抗体及びサイトカインの種々の調製物)、脂質含有細胞と混合される液体及び脂質含有生物を含有する液体(例えば脂質含有生物を含有する生理食塩溶液)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法で処理される好ましい液体は、血漿である。
【0067】
「脂質」という用語は、ヒト又は動物において生じる脂肪又は脂肪様物質のグループのうちの任意の1又は複数と定義される。脂肪又は脂肪様物質は、水中でのそれらの不溶性及び有機溶媒中の可溶性により特徴付けられる。「脂質」という用語は当業者に既知であり、例としては、複合脂質、単純脂質、トリグリセリド類、脂肪酸、グリセロリン脂質(リン脂質)、真性脂肪(例えば脂肪酸のエステル類)、グリセロール、セレブロシド類、蝋、並びにステロール類(例えばコレステロール及びエルゴステロール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
「抽出溶媒」という用語は、液体から、又は液体内の粒子から脂質を抽出するために用いられる1又は複数の溶媒と定義される。この溶媒は液体に進入し、他の下位の系(subsystem)により除去されるまで液体中に留まる。適切な抽出溶媒としては、脂質を抽出又は溶解する溶媒、例えばフェノール類、炭化水素類、アミン類、エーテル類、エステル類、アルコール類、ハロ炭化水素類、ハロカーボン類及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい抽出溶媒は、エーテル類、エステル類、アルコール類、ハロ炭化水素類又はハロカーボン類であり、これらの例としては、ジイソプロピルエーテル(DIPE)(これはイソプロピルピルエーテルとも呼ばれる)、ジエチルエーテル(DEE)(これはエチルエーテルとも呼ばれる)、低級アルコール類(例えばブタノール、特にn−ブタノール)、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、イソフルオラン、セボフルラン(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(フルオロメトキシ)プロパン−d3)、ペルフルオロシクロヘキサン類、トリフルオロエタン、シクロフルオロヘキサノール及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
「患者」という用語は、本発明の方法で処理される液体の供給源であり得るか、又はHDL粒子の誘導体の又は脂質含量の低下した血漿のレシピエントであり得る動物又はヒトを指す。
【0070】
「HDL粒子」という用語は、種々の方法、例えば電荷、密度、サイズ及び免疫親和性を測定する方法、例えば電気泳動移動度、超遠心分離、免疫反応性及び当業者に既知のその他の方法(これらに限定されない)に基づいて定義されるいくつかの型の粒子を含む。このようなHDL粒子としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。VLDL、αHDL、プレβHDL(例えばプレβHDL、プレβHDL及びプレβHDL)、βHDL、HDL(例えばHDL2a及びHDL2b)、HDL、VHDL、LpA−I、LpA−II、LpA−I/LpA−II、(Barrans et al., Biochemica Biophysica Acta 1300; 73-85, 1996参照)。したがって本発明の方法の実施により、改変HDL粒子が作製される。これらのHDL粒子の改変誘導体は、例えば以下の代謝及び/又は物理化学的特性(Barrans et al., Biochemica Biophysica Acta 1300; 73-85, 1996参照)のうちの1又は複数の変更を含む多くの方法で改変することができる。分子量(kDa)、電荷、直径、形状、密度、水和密度、浮力特性、コレステロール含量、遊離コレステロール含量、エステル化コレステロール含量、遊離コレステロール対リン脂質のモル比、免疫親和性、酵素又はタンパク質(Apo A−1、Apo A−2、Apo D
、Apo E、Apo J、Apo A−IV、コレステロールエステル運搬タンパク質(CETP)、レシチン:コレステロールアセチルトランスフェラーゼ(LCAT))のうちの1又は複数の含量、活性又はらせん構造、コレステロール結合に関する能力及び/又は速度、コレステロール運搬に関する能力及び/又は速度(これらに限定されない)。
【0071】
方法
本発明の方法は、脂質含量の低下したHDL粒子を作製するための技法を用いる。これらのHDL粒子は、液体、例えば血漿から得られる。第一の方法は、血漿からLDLを除去した後に、血漿を処理して脂質を減少させ、脂質含量の低下したHDL粒子を作製することを含む。第二の方法は、溶媒への曝露前に血漿からLDLを除去しないが、様々な溶媒系を用いることで、LDLに実質的に影響を及ぼすことなく、HDL粒子からの脂質の選択的除去が可能になる。2つの方法に関与する種々の工程は、おおよそ以下に記載される。以下のこれらの全般的な説明は、用いられる溶媒、混合方法、混合時間及び状況により温度のような変数を含む、本発明の方法の種々の実施形態の説明である。
【0072】
本発明はさらに、アルファ高密度リポタンパク質及びプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一の状態を有する液体中のタンパク質分布を改変する方法であって、上記第一の状態から、第一の状態に比べてプレベータ高密度リポタンパク質の濃度が増大した第二の状態にタンパク質分布を改変する、脂質除去剤に上記液体を曝露する工程、及び上記脂質除去剤を該生体液から除去する工程、を含む方法を提供する。
【0073】
本発明は、総タンパク質に対してある濃度のプレベータ高密度リポタンパク質を有する第一のタンパク質分布を示す患者のABCA1経路を増強する方法であって、液体を脂質除去剤に曝露することにより該第一のタンパク質分布を含有する液体を改変する工程(ここで、該改変は総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の濃度を増大させる)、及び該液体を患者に導入する工程を含む方法も提供する。
【0074】
上述のように、本発明の方法及び系は、多数の構成からなるものであり得る。以下に記述されるのは、上記の目的及び利点を達成できる多数の実施形態を創造するために組合され得る多数の構成要素である。これらの実施形態は本発明を教示するために記載されるが、本発明の範囲を限定することを意味しない。むしろ各実施形態は、上記の目的を成し遂げるために用いることができる多数の潜在的な構成要素の1つにすぎない。
【0075】
LDLの除去及びHDL粒子からの脂質の除去
本発明の一実施形態では、図1に示されるように、HDL及びLDL粒子は処理前に分離される。図1は、LDLの除去及びHDL粒子からの脂質の除去に用いられるプロセスのフローチャートである。
【0076】
LDLの除去及びHDL粒子からの脂質の除去に用いられる方法の工程100においては、血漿が血液から分離される。好ましい実施形態では、これは濾過により達成される。別の好ましい実施形態では、血漿及び血液構成成分は遠心分離により分離される。血液は状況に応じて、抗凝血剤、例えばクエン酸ナトリウムと混合され、重力の約2,000倍の力で遠心分離することができる。次に赤血球は血漿から吸引される。工程102では、細胞は患者に戻される。本発明のこの特定の実施形態では、LDLは工程104で血漿から分離される。これは、アフィニティーカラム、超遠心分離又は当業者に既知の任意のその他の方法の使用により達成される。例示的な方法は超遠心分離の使用であり、この場合、血漿は超遠心分離器に通されて、その結果LDL及びHDL粒子は分離される。超遠心分離器は、密度勾配超遠心分離(遠心力によりリポタンパク質の軽い部分を重い部分から分離する高性能かつ高精度な方法)を用いる。LDLは、工程106で廃棄される。
【0077】
工程108では、脂質を除去するために、溶媒が、HDLをなお含有する血漿に添加される。溶媒の種類、比率及び濃度は変えることができる。血漿及び溶媒は、混合するための、撹拌するための、又はさもなければ血漿を溶媒と接触させるための、少なくとも1つの装置中に導入される。血漿は、連続法又はバッチ法を用いて運搬され得る。さらに種々の検出手段が、圧力、温度、流量、溶媒レベル等をモニターするために包含され得る(以下でさらに詳細に考察される)。
【0078】
工程110では、系にエネルギーが導入される。用いられる種々の形態のエネルギーは、混合の方法、時間及び速度(これらの変数は以下でさらに詳細に考察される)を含む。残留する大半の溶媒を除去するため、工程112で遠心分離が用いられる。残りの可溶性溶媒は、工程114で除去される。これは、下記のように、木炭吸着、蒸発又はHFCパーベーパレーションにより達成される。任意の工程116では、ガスクロマトグラフィー(GC)又は任意のその他の同様の手段により、該混合物が残留溶媒について検査される。状況により、この工程は統計学的妥当性により排除される。工程118では、脂質含量の低下した血漿が、患者に戻される。少なくとも部分的又は実質的に低下した脂質レベルを有するこの血漿(これは最初に分離された)は次に、適切に処理され、引き続いて患者に再導入される。
【0079】
HDLからの脂質の選択的除去及び改変HDL分子の形成
図2は、本発明の別の好ましい実施形態の工程を描いたフローチャートを示す。工程200では、濾過、遠心分離、又は当業者に既知の任意のその他の手段により、血漿が血液から分離される。好ましい実施形態では、血液は超遠心分離器に通されて、血液は血球と血漿とに分離される。工程202では、細胞が患者に戻される。脂質を抽出するために、工程204では、分離された血漿に溶媒が添加される。溶媒系は、HDL粒子のみが処理されてそれらの脂質レベルが低下し、LDLは少なくとも実質的に無傷のままであるよう、最適に設計される。溶媒系には、用いられる溶媒、混合方法、時間及び温度といったような変数を計算に入れることが含まれる。溶媒の種類、比率及び濃度は、この工程で変更し得る。血漿及び溶媒は、血漿を溶媒と混合、撹拌、又はそうでなければ接触させるための、少なくとも1つの装置中に導入される。血漿は、連続法又はバッチ法を用いて運搬され得る。さらに種々の検出手段が、圧力、温度、流量、溶媒レベル等をモニターするために包含され得る(以下でさらに詳細に考察される)。
【0080】
工程206では、エネルギーが、多様な混合の方法、時間及び速度の形で、系に導入される。遠心分離により、工程208で大半の溶媒が除去される。工程210では、残りの可溶性溶媒が、木炭吸着、蒸発又はHFCパーベーパレーションにより除去される。工程212では、GC又は同様の手段を用いて、状況に応じて該混合物が残留溶媒に関して検査される。残留溶媒に関する検査は、統計学的妥当性に基づいて任意に排除される。工程214では、処理された血漿(好ましくは脂質含量の低下した改変HDL粒子を含有しているもの)(これは最初に分離されたものである)は、適切に処理され、引き続いて患者に再導入される。
【0081】
当業者は、図1及び2に示された方法は該方法の主要な工程のみを示し、かつ系の主要な要素を参照しているが、これらの方法は他の要素、例えば適正な血液容積を維持するための血液ポンプ、血圧計、血液凝固防止剤注入装置、血中の空気泡を排除するための点滴小室、並びに、身体の外側に置かれて、血液に関する適切な温度を維持するための加熱器又は冷却器を含有してもよい、と理解するであろう。
【0082】
本発明の方法を用いるに際して考慮されるべき変数
本発明は、LDLに実質的に影響を及ぼさずに、HDL粒子から脂質を除去するよう設計された、多数の最適化された溶媒系のうちの1つを用いる。第一の実施形態では、LD
Lが血漿から除去された後、溶媒(単数又は複数)で血漿を処理して、血漿タンパク質の組成を保持しながら、脂質含量の低下したHDL粒子を作製する。第二の実施形態では、LDL粒子に実質的に影響を及ぼさずに、HDL粒子から脂質を選択的に除去するよう、注意が払われる。これらの変数としては、溶媒の選択、混合方法、時間及び温度が挙げられる。
【0083】
血漿分離法
典型的な血漿の分離法は、当業者に周知であり、好ましくは濾過、遠心分離及び吸引が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
LDL抽出
LDL抽出方法は、当業者に周知である。本発明の目的にふさわしいものには、2つの好ましい方法、即ちアフィニティーカラム及び超遠心分離の使用があるが、これらに限定されない。超遠心分離器は、密度勾配超遠心分離(遠心力によりリポタンパク質の軽い部分を重い部分から分離する高性能及び高精度な方法)を用いる。
【0085】
脂質除去プロセスに用いられる溶媒
液体及びHDL粒子からの脂質の除去を目的として、多数の有機溶媒が、その溶媒が脂質を可溶化するに有効であるという条件で、本発明の方法に用いられ得る。適切な溶媒は、芳香族、脂肪族又は脂環式炭化水素類、エーテル類、フェノール類、エステル類、アルコール類、ハロ炭化水素類及びハロカーボン類の混合物を含む。好ましい溶媒は、エーテル類、例えばジイソプロピルエーテル(DIPE)である。非対称エーテル類及びハロゲン化エーテル類が用いられ得る。少なくとも1つの構成成分として、特に好ましいのは、C〜C含有エーテル類であり、例えばジエチルエーテル及びプロピルエーテル(例えばDIPE(これに限定されない))が挙げられるが、これらに限定されない。エーテル類の組合せ、例えばDIPE及びジエチルエーテルも、本発明において有用である。エーテル類及びアルコール類の組合せ、例えばDIPE及びブタノールも、本発明において有用である。フルオロエーテル類及びアルコール類の組合せ、例えばセボフルランとブタノール、特にセボフルランとn−ブタノールも、本発明において好ましい。
【0086】
炭化水素類は、それらが液体状態にあるとき、低極性の化合物、例えば液体中の脂質を溶解する。したがって炭化水素類は、任意の実質的に水非混和性の炭化水素であって、約37℃で液体であるものを含む。適切な炭化水素類としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。C〜C20脂肪族炭化水素類(例えば石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン)、ハロ脂肪族炭化水素類(例えばクロロホルム、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン及び四塩化炭素)、チオ脂肪族炭化水素類、ペルフルオロカーボン類(例えばペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン及びペルフルオロジメチルシクロヘキサン)、フルオロエーテル類(例えばセボフルラン)(その各々は直鎖状、分枝鎖又は環状、飽和又は不飽和であり得る)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン)、アルキルアレン類(例えばトルエン、ハロアレン類、ハロアルキルアレン類及びチオアレン類)。その他の適切な溶媒としては、以下のものも挙げられ得る。飽和又は不飽和複素環式化合物(例えばピリジンの水不溶性誘導体、及びその脂肪族、チオ又はハロ誘導体)、並びに臭化ペルフルオロオクチル。別の適切な溶媒は、ペルフルオロデカリンである。
【0087】
用いられ得る適切なエステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピオン酸エチルが挙げられるが、これらに限定されない。用いられ得る適切なケトン類の例としてはメチルエチルケトンが挙げられるが、これに限定されない。
【0088】
用いられ得る適切な界面活性剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩(リン脂質を含む)、カルボキシル酸塩及びスルホコハク酸塩。本発明に有用ないくつかの陰イオン性両親媒性物質としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デシル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ビス−(2−エチルヘキシル)ナトリウム(AOT)、硫酸コレステロール及びラウリン酸ナトリウム。
【0089】
単独で用いられる場合、本発明に用いるに好ましいアルコール類としては、血漿又はその他の生体液と容易に感知できるほどには混ざり合わないアルコール類が挙げられる。アルコール類が別の溶媒、例えばエーテル、炭化水素、アミン又はそれらの組合せと組合せて用いられる場合、C〜C含有アルコール類が用いられ得る。別の溶媒と組合せて用いるために好ましいアルコール類としては、低級アルコール、例えばC〜C含有アルコール類が挙げられる。したがって本発明の範囲内に入る好ましいアルコール類は、好ましくはブタノール類、ペンタノール類、ヘキサノール類、ヘプタノール類及びオクタノール類、並びにそれらの「イソ」形態(iso form)である。特に好ましいのは、n−ブタノールとも呼ばれるブタノール類(1−ブタノール及び2−ブタノール)である。上記のように、最も好ましいアルコールは、Cアルコールであるブタノールである。特定のアルコールの選択は、用いられる第二の溶媒に依存する。好ましい実施形態では、低級アルコール類は低級エーテル類と併用される。
【0090】
エーテル類(単独で、又は他の溶媒、好ましくはアルコール類と組合せて用いられる)は、本発明の方法に用いるための別の好ましい溶媒である。特に好ましいのは、C〜Cエーテル類であり、例としてはエチルエーテル、ジエチルエーテル及びプロピルエーテル(例えばジイソプロピルエーテル(DIPE)(これに限定されない))が挙げられるが、これらに限定されない。エーテル類の組合せ、例えばジイソプロピルエーテルとジエチルエーテルの組合せも、本発明において有用である。脂質を除去するための第一の溶媒としてエーテル類及びアルコール類が組み合わせで用いられる場合、アルコール及びエーテルの任意の組合せが、その組合せが脂質を部分的に又は完全に除去するために有効であるという条件で、用いられ得る。液体から脂質を除去するための溶媒としてアルコール類及びエーテル類が組合わされる場合、この溶媒中のアルコール対エーテルの許容可能な比率は、約0.01部〜99.99部のアルコール対約99.99部〜0.01部のエーテル、例えば約1部〜25部のアルコールと約75部〜99部のエーテルの比率、約3部〜10部のアルコールと約90部〜97部のエーテルの比率、好ましくは5部のアルコールと95部のエーテルの比率である。アルコール及びエーテルの特に好ましい組合せは、ブタノールとジイソプロピルエーテルの組合せである。
【0091】
要するに、特に好ましい溶媒としては、100部のジイソプロピルエーテル、95部のジイソプロピルエーテル/5部のn−ブタノールの組合せ、並びに95部のセボフルラン/5部のn−ブタノールの組合せが挙げられる。セボフルラン及びn−ブタノールの許容可能な範囲としてはまた、約0.01部〜99.99部のセボフルラン/約99.99部〜0.01部のn−ブタノール、0.1部〜99.9部のセボフルラン/約99.9部〜0.1部のn−ブタノール、1.0部〜99.0部のセボフルラン/約99.0部〜1.0部のn−ブタノール、10.0部〜90.0部のセボフルラン/約90.0部〜10.0部のn−ブタノール、15.0部〜85.0部のセボフルラン/約85.0部〜15.0部のn−ブタノールが挙げられる。好ましい組合せとしては、約95部のセボフルラン/約5.0部のn−ブタノール、約90部のセボフルラン/約10部のn−ブタノール、約85部のセボフルラン/約15部のn−ブタノール、並びに、特に、97.5部のセボフルラン/2.5部のn−ブタノールが挙げられる。
【0092】
溶媒対血漿の許容可能な比率としては、溶媒と血漿の任意の組合せが挙げられる。最も
好ましい比率は、2部の血漿対1部の溶媒、1部の血漿対1部の溶媒、並びに1部の血漿対2部の溶媒である。例えば95部のセボフルラン対5部のn−ブタノールを含む溶媒を用いる場合、2部の溶媒/1部の血漿を用いるのが好ましい。
【0093】
さらに、n−ブタノールを含有する溶媒を用いる場合、本発明は、最終的な溶媒/血漿混合物中に少なくとも3%のn−ブタノールを生じる溶媒対血漿の比率も用ることができる。最終的な溶媒/血漿混合物中のn−ブタノールの特に好ましい最終濃度は、3.33%である。
【0094】
液体及びHDL粒子からの脂質の除去プロセス
液体及びHDL粒子中の脂質を減少させるために本発明の方法に用いられるプロセスは、エネルギーの導入に直接関連する。用いられる手法は、血漿タンパク質の破壊を伴わずに、あるいはLDL粒子に実質的に影響を及ぼさずに、HDL粒子が処理されてそれらの脂質レベルが減少するように設計されなければならない。下記の方法を用いて、上記のような本発明の好ましい実施形態の両方の工程を達成し得る、ということに留意すべきである。
【0095】
混合方法
血漿及び溶媒は、生体液を溶媒と混合し、撹拌し、又はそうでなければ溶媒と接触させる少なくとも1つの混合方法に付される。本発明において用いられる混合方法は、直列固定ミキサー、回転フラスコ、ボルテックスミキサー(vortexer)、遠心分離器、超音波処理フラスコ、高剪断管、ホモジナイザー、ブレンダー、中空糸接触器、遠心分離ポンプ、振盪台、渦巻き工程、撹拌工程、密閉容器の転倒回転、又はその他の適切な装置、あるいはこれらの装置又は方法の任意の組合せ(これらに限定されない)のうちの1つであり得る。
【0096】
混合継続時間
溶媒と液体の適切な混合のために必要とされる時間は、用いられる混合方法に関連する。液体は、有機相と水性相との間の密接な接触を可能にし、かつ溶媒が脂質を少なくとも部分的に又は完全に可溶化するのに十分な時間に亘って、混合される。もうひとつ考慮されるのは温度である。血液試料の汚染又は劣化を助長しないように、混合時間と温度との間のバランスを設定しなければならない。時間及び温度の系は、血液試料が依然として生存能力を持ち、劣化しないように、理想的なバランスを保たれる。
【0097】
典型的には混合は、用いられる混合方法に応じて、約1秒間〜約24時間、おそらくは約1秒間〜約2時間、おそらくは約1秒間〜約10分間、あるいはおそらくは約30秒間〜約1時間行う。種々の方法と関連した混合を継続する時間の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。1)約1秒間〜約24時間、穏やかに撹拌かつ転倒回転する、2)約1秒間〜約30分間、激しく撹拌かつボルテックスミキサーで撹拌する(vortexing)、3)約1秒間〜約2時間、回転撹拌する(swirling)、あるいは4)約1秒間〜約10分間、ホモジナイズする。
【0098】
温度
上記のように、温度も重要な考慮事項である。温度は通常は、血漿を変性させないよう、37℃未満に設定される。状況により、低い温度も用いられ得る。この系における温度調節を達成するための種々の方法が存在する。
【0099】
溶媒抽出方法
大半の残留溶媒の除去
本発明の好ましい実施形態では、大半の残留溶媒は遠心分離により除去される。
【0100】
残りの可溶性溶媒の除去
溶媒を分離する別の好ましい方法は、木炭、好ましくは活性炭の使用によるものである。この木炭は、任意にカラム中に含入される。あるいは木炭は、スラリー形状であってもよい。種々の生体適合形状の木炭が、これらのカラム中に用いられ得る。
【0101】
HFCパーベーパレーション
中空糸接触器(HFC)は、異なるHFC、圧力及び流量を用いて、水及び血漿中の溶媒(例えばジイソプロピルエーテル及びジエチルエーテル)の総濃度を首尾よく低減させることができる。HFCは、用いられるHFCの型によって、中空糸により形成される透過膜の、約4,200平方センチメーター〜約18,000平方センチメーターの総表面積を有し得る。さらにガス流量は、この実験では、約2リットル/分〜約10リットル/分で変更され、血漿流量は約10mL/分〜約60mL/分で変更された。この方式での操作は、溶媒の初期濃度を、約14分〜30分以内に、約28,000ppm〜9,000ppmから約1327ppm〜約0.99ppmに低下させ得る。
【0102】
本発明の溶媒除去系の一実施形態では、残留する可溶性溶媒を含有する溶媒処理された血漿は、典型的には先ず、循環ループ、例えば再循環容器、液体運搬手段、例えば管、弁、ポンプ及び溶媒抽出装置、例えばHFC中に導入される。この循環ループでは、HFCは、再循環溶媒抽出装置として機能する。血漿/溶媒は、HFCの中空糸を通して循環され、それにより、抽出に用いた溶媒を、HFCの透過側(shell)を通って循環するガス又は第二の抽出溶媒と接触させる。第一の抽出溶媒として揮発性溶媒が用いられる場合、脱脂された血漿から第一の抽出溶媒を抽出できる任意のガス、例えば窒素及び空気(これらに限定されない)が用いられ得る。
【0103】
本発明の特定の実施形態
上記の構成要素は、本発明の実施を可能にするために複数の異なる実施形態に組み込むことができる。ある種の特定の実施形態が、本発明を実施するために明示されたアプローチを特に強調するために、本明細書中で記載される。以下に列挙される実施形態は、本発明の全ての変法を表すわけではなく、本発明を例示するために、ある場合には、本発明を実施するための好ましいアプローチを表すよう意図される。
【0104】
図19〜21を参照すると、本発明を実施することができる異なる系を描いた複数の実施形態が示されている。各実施形態は、見込まれるコスト及び用法から、種々の利点及び欠点を有し、どの実施形態についても、他の実施形態と比べて特に好ましい、ということはない、と理解されるべきである。図19は、HDL改変システム1900の要素を明示する、基本構成要素の流れ図を示す。液体投入部は1905で提供され、管を介して混合装置1920に連結される。溶媒投入部は1910で提供され、これも管を介して混合装置1920に連結される。好ましくは弁1915は、液体投入部1905からの液体及び溶媒投入部1910からの溶媒の流れを制御するために用いられる。液体投入部1905は好ましくは、HDL粒子を含む任意の液体、例えば上記のようなLDL粒子を有するか又はLDL粒子を欠く血漿を含有する、と理解されるべきである。溶媒投入部1910は、単一溶媒、溶媒の混合物、又は溶媒投入部1910で混合される複数の異なる溶媒を含むことができる、とさらに理解されるべきである。単一溶媒容器として描かれているが、溶媒投入部1910は複数の別個の溶媒容器を含むことができる。用いられる、好ましい溶媒の種類は、上記されている。
【0105】
ミキサー1920は、液体投入部1905からの液体及び溶媒投入部1910からの溶媒を混合して、液体−溶媒混合物を生成する。好ましくはミキサー1920は、振盪器容器を用いて、複数のバッチ、例えば1、2、3又はそれ以上のバッチで、投入した液体と
投入した溶媒とを混ぜ合わせる方法を用いることができる。ミキサーの一例は、Barnstead Lablineオービタル振盪台である。一旦生成されれば、液体−溶媒混合物は、管を通して、少なくとも1つの弁により制御されて、分離器1925に送達される。好ましい実施形態では、分離器1925は、漏斗形容器(funnel shaped bag)中での重力分離により大量の溶媒分離を実施し得る。
【0106】
分離器1925中で、液体−溶媒混合物は第一層及び第二層に分離する。第一層は、溶媒と、HDL粒子から除去された脂質との混合物を含む。第二層は、残りの溶媒と、改変HDL粒子と、投入した液体のその他の要素の混合物を含む。第一層及び第二層の組成は投入された液体の性質に基づいて異なる、と当業者は理解するであろう。一旦第一及び第二層が分離器1925中で分離すると、第二層は管を通して溶媒抽出装置1940に運搬される。好ましくは圧力センサー1930及び弁は、液体の流れの中に配置されて、溶媒抽出装置1940への第二層の流れを制御する。
【0107】
投入容器1905、1910からの液体の流れを可能にするための弁の開閉は、好ましくは液体投入容器1905、1910及び分離器1925の重量決定から得られる質量平衡計算を用いて時間を調整される。例えば、分離器1925と廃液容器1935との間、及び分離器1925と溶媒抽出装置1940との間の弁は、上記のように、投入された質量(液体及び溶媒)が分離器中の質量と実質的に平衡し、且つ第一及び第二層間の分離を可能にするに十分な時間が経過した後に開く。どのような溶媒を用いるかによって、したがってどの層が分離器1925の底に沈殿するかに応じて、分離器1925と廃液容器1935との間の弁が開放されるか、あるいは分離器1925と溶媒抽出装置1940との間の弁が開放される。当業者は、開放のタイミングは、どれだけ多くの液体が第一及び第二相中に存在するかに依存することを理解し、さらに、第一層の全て及び多少の第二層を除去するのにちょうど十分な長さの時間、分離器1925と廃液容器1935との間の弁を開けたままにしておいて、それにより溶媒抽出装置1940に送られる液体からできるだけ多くの溶媒が除去されていることを保証するのが好ましいことを理解するであろう。
【0108】
好ましくはグルコース投入部1955及び生理食塩水投入部1960は、分離器1925から溶媒抽出装置1940につながる流路と流体接続されている。複数の弁も、好ましくはグルコース投入部1955及び生理食塩水投入部1960から、分離器1925から溶媒抽出装置1940への流路になっている管までの間の、流動液中に組入れられる。系の操作前に溶媒抽出装置1940をプライミングするために、グルコース及び生理食塩水が本発明に組入れられる。このようなプライミングが必要でない場合、グルコース及び生理食塩水投入は必要でない。さらにまた、グルコース及び生理食塩水の投入は、溶媒抽出装置1940がそれを要する場合には、他のプライミング剤(primer)と置き換えられ得ることを、当業者は理解するであろう。
【0109】
溶媒抽出装置1940は好ましくは、溶媒投入部1910に用いられる特定の溶媒を除去するよう意図された木炭カラムである。例示的な溶媒抽出装置1940は、Asahi
Hemosorber木炭カラムである。ポンプ1950は、分離器1925から、溶媒抽出装置1940を通して、生成物容器1945に第二層を移動するのに用いられる。ポンプは好ましくは、蠕動ポンプ、例えばMasterflexモデル77201−62である。
【0110】
第一層は、管及び少なくとも1つの弁により分離器1925と流体接続される廃液容器1935に向けられる。さらに他の廃液は、生成される場合、溶媒抽出装置1940と生成物容器1945とを連結する流路から廃液容器1935に送達される。
【0111】
好ましくは本発明の一実施形態は、実用的であれば常に、複数の構成部分の各々を通し
て液体を移動するために、重力を用いる。例えば好ましくは、1905に投入された血漿及び1910に投入された溶媒をミキサー1920中に排液するために重力を用いる。ミキサー1920が振盪器容器を含み、且つ分離器1925が漏斗容器を含む場合、液体は振盪器容器から漏斗容器に、次いで、適切な場合には重力を用いて廃液容器1935に移動される。
【0112】
図19に示されていないさらなる工程において、生成物容器1945中の生成した液体は、溶媒検出系又は脂質除去剤検出系に通され、任意の溶媒又は他の望ましくない構成成分が、生成した液体中に存在するか否かが決定される。一実施形態では、生成した液体は、溶媒投入部で導入される溶媒、例えばn−ブタノール又はジイソプロピルエーテルの濃度を決定し得るセンサーに通される。これは、生成した液体が患者の血流に戻されること、及びこの操作を安全に実行するためには溶媒濃度が予定のレベルを下回らねばならないことから、重要な測定である。センサーは、このような濃度情報を、生成した液体又はヘッドスペース中の空気のサンプルを離れた装置に物理的に運搬することなく、実時間ベースで提供できることが好ましい。
【0113】
一実施形態では、分子インプリントポリマー法を用いて、表面音波センサーを作動させる。表面音波センサーは、その表面と周囲環境との何らかの相互作用により、入力を受信し、センサー基板の圧電性により生成される電気的応答を生じる。相互作用を可能にするために、分子インプリントポリマー法が用いられる。分子インプリントポリマーは、複雑な生体試料中の標的分子、例えば薬剤、毒素又は環境汚染物質を認識するようプログラムされたプラスチックである。分子インプリントポリマー法は、認識されるべき標的分子、即ち標的の溶媒と同様の構造を示す標的鋳型分子の存在下で、過剰量の架橋モノマーと1又は複数の機能性モノマーとを重合させることにより可能である。
【0114】
表面音波センサーを作動させるための分子インプリントポリマー法の使用は、標的化溶媒の濃度に対して特異化され、且つ他の考え得る妨害物からこのような標的の溶媒を弁別し得るため、他の技術的アプローチに比して好ましい。その結果、標的の溶媒と同様の構造及び/又は特性を有し得る許容可能な妨害物の存在は、存在するそれぞれの溶媒濃度をセンサーが精確に報告するのを妨げない。
【0115】
あるいは、投入溶媒がある種の溶媒、例えばn−ブタノールを含む場合、電気化学的酸化を用いて、溶媒濃度を測定し得る。電気化学的測定は、いくつかの利点を有する。それらは、簡単で、感受性で、迅速であり、且つ広いダイナミックレンジを有する。計測は簡単で、湿度の影響を受けない。一実施形態では、標的溶媒、例えばn−ブタノールは、サイクリックボルタンメトリーを用いてプラチナ電極上で酸化される。この技法は、正逆両方向の作動電極で、予定走査速度で、電流を監視しながら、適用電圧を変更することを基礎にする。1回の全サイクル、部分サイクル又は一連のサイクルが実施され得る。プラチナは好ましい電極物質であるが、他の電極、例えば金、銀、イリジウム又は黒鉛が用いられ得る。サイクリック・ボルタンメトリー法が用いられるが、他のパルス技法、例えば示差パルスボルタンメトリー又は矩形波ボルタンメトリーは、測定の速度及び感度を増大する。代替物であるTaguchiセンサーは、湿潤条件では有効に作動しないため、好ましくない。
【0116】
本発明は、生成した液体又は生成した液体より上のヘッドスペースを自動的にサンプリングし、測定し、検出し、分析する任意の及び全ての形態を明白に網羅する。例えばこのような自動検出は、生成物容器中の空気を自動的にサンプリングし、脱脂法で用いられる特定の溶媒に関して最適化されたGC装置にそれを送り、既知のGC技法を用いて溶媒の存在に関して試料を分析するミニガスクロマトグラフィー(GC)測定装置を組み込むことにより達成され得る。
【0117】
図19に戻って参照すると、本明細書中に記載されたような装置構成要素のいずれにも用いられる適切な物質としては、体内液との接触を含む医学用途に関して認可された、U.S. PV1又はISO 10993基準に従った生物適合性の物質が挙げられる。さらに該物質は、例えば少なくとも一度の使用中に、本発明に用いられる溶媒への曝露により実質的に分解されるべきでない。該物質は一般的には、放射線又は酸化エチレン(EtO)滅菌により、滅菌されるべきである。このような適切な物質は、慣用的手順(process)、例えば押出し、射出成形等(これらに限定されない)を用いて、目的物に成形され得るべきである。これらの要件を満たす物質としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フルオロエラストマー、例えばVITON(DuPont Dow Elastomers L.L.C.から入手可能)、熱可塑性エラストマー、例えばSANTOPRENE(Monsantoから入手可能)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンエーテル(PFE)、ペルフルオロアルコキシコポリマー(PFA)(TEFLON
PFAとしてE.I. du Pont de Nemours and Companyから入手可能)及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
各実施形態に用いられる弁は、ピンチ、グローブ、ボール、ゲート又はその他の慣用的な弁から成るが、これらに限定されない。弁は、好ましくは閉鎖弁、例えばAcro Associatesのモデル955弁である。しかしながら本発明は、特定の様式を有する弁に限定されない。さらに下記の各系の構成要素は、物理的に結合されるか、又は可動性か固定性のパイプで構成され得る導管、管類、若しくは当業者に既知のその他のこのような道具を用いて結合され得る。
【0119】
図20を参照すると、本発明の特定の構成2000が示されている。好ましい構成2000は、揮発性液体、例えば溶媒を安全に含有し得る密閉ハウジング2005を含む。好ましい実施形態では、密閉ハウジング2005は、操作の際に脱脂プロセスを観察するための透明ドアを有するドア2015、可動性基盤2025、制御表示装置2020、透明蓋2010、並びにフィルター及び空気循環系(不図示)で構成される。制御表示装置2020のインターフェース・スクリーンは好ましくは、系をセットアップさせ、溶媒抽出装置をプライミングするためにドア2015が開いている場合は作動可能であるが、ドア2015が閉鎖され、好ましくはロックされるまでは、系に投入された液体を脱脂させない。ハウジング2005を開けずにトレイを容易に取り出させる方式で、密閉ハウジングの基部での任意の液体漏出、溢出又はその他の流出を遮断し得る廃液又は溢出トレーを有するのも好ましい。
【0120】
図21を参照すると、HDL改変システム2100の基本構成要素の配置が示されている。液体投入部は2105で提供され、管を介して混合装置2120に連結される。溶媒投入部は2110で提供され、これも管を介して混合装置2120に連結される。好ましくは弁は、液体投入部2105からの液体及び溶媒投入部2110からの溶媒の流れを制御するのに用いられる。液体投入部2105は好ましくは、HDL粒子を含む任意の液体、例えば上記のようなLDL粒子を有するか又はLDL粒子を欠く血漿を含有することが理解されるべきである。溶媒投入部2110は、単一溶媒、溶媒の混合物、又は溶媒投入部2110において混合される複数の異なる溶媒を含み得ることがさらに理解されるべきである。単一の溶媒容器として描かれているが、溶媒投入部2110は複数の別個の溶媒容器を含み得る。用いられる好ましい溶媒の種類は、上記されている。
【0121】
ミキサー2120は、液体投入部2105からの液体及び溶媒投入部2110からの溶媒を混合して、液体−溶媒混合物を生成する。好ましくはミキサー2120は、複数のバッチ、例えば1、2、3又はそれ以上のバッチで、投入した液体と投入した溶媒とを、振
盪器を用いて容器内で混合する方法を用いることができる。一旦生成されれば、液体−溶媒混合物は、管を通して、少なくとも1つの弁により制御されて、分離器2125に送達される。好ましい実施形態では、分離器2125は、漏斗形容器中での重力分離により大量の溶媒分離を実施し得る。
【0122】
分離器2125中で、液体−溶媒混合物は第一層及び第二層に分離する。第一層は、溶媒と、HDL粒子から除去された脂質との混合物を含む。第二層は、残りの溶媒と、改変HDL粒子と、投入した液体のその他の要素の混合物を含む。第一層及び第二層の組成は投入した液体の性質に基づいて異なる、と当業者は理解するであろう。一旦第一及び第二層が分離器2125中で分離すると、第二層は管を通して溶媒抽出装置2140に運搬される。好ましくは圧力センサー及び弁は、流動液中に配置されて、溶媒抽出装置2140への第二層の流れを制御する。
【0123】
好ましくはグルコース投入部2130及び生理食塩水投入部2150は、分離器2125から溶媒抽出装置2140につながる流路と流体接続されている。複数の弁も、好ましくはグルコース投入部2130及び生理食塩水投入部2150から、分離器2125から溶媒抽出装置2140への流路となっている管までの間の、流動液中に組入れられる。系の操作前に溶媒抽出装置2140をプライミングするために、グルコース及び生理食塩水が本発明に組入れられる。このようなプライミングが必要でない場合、グルコース及び生理食塩水の投入は必要でない。また、グルコース及び生理食塩水投入は、溶媒抽出装置2140がそれを要する場合には、他のプライミング剤と置き換えられ得ることを、当業者は理解するであろう。
【0124】
溶媒抽出装置2140は好ましくは、溶媒投入部2110に用いられる特定の溶媒を除去するよう意図された木炭カラムである。例示的な溶媒抽出装置2140は、Asahi
Hemosorber木炭カラムである。ポンプ2135は、分離器2125から、溶媒抽出装置2140を通して、生成物容器2115に第二層を移動するのに用いられる。ポンプは好ましくは、蠕動ポンプ、例えばMasterflexモデル77201−62である。
【0125】
第一層は、管及び少なくとも1つの弁により分離器2125と流体接続される廃液容器2155に送達される。さらに他の廃液は、生成される場合、溶媒抽出装置2140及び生成物容器2115を連結する流路から廃液容器2155に送達される。
【0126】
好ましくは本発明の一実施形態は、実用的であれば常に、複数の構成要素の各々を通して液体を移動させるために、重力を用いる。例えば好ましくは、2105に投入した血漿及び2110に投入した溶媒をミキサー2120中に排液するために重力を用いる。ミキサー2120が振盪器容器を含み、且つ分離器2125が漏斗容器を含む場合、液体は振盪器容器から漏斗容器に、次いで、適切な場合には、重力を用いて、廃液容器2155に移動される。
【0127】
一般に、本発明は好ましくは、全ての投入物、例えば投入する血漿及び投入する溶媒、使い捨て要素、例えば混合容器、分離器容器、廃液容器、溶媒抽出装置及び溶媒検出装置並びに生成物容器が、技術者により容易に利用可能な位置にあり、且つ容易に取り外され、取り替えられ得る構成を含む。
【0128】
本発明の上記の実施形態の操作を可能にするためには、本発明を実施するために必要とされる各構成要素を含むキットの形態で包装された構成要素のセットを、このような実施形態のユーザーに供給するのが好ましい。このようなキットは、好ましくは、投入する液体を入れる容器(即ち高密度リポタンパク質源を入れる容器)、脂質除去剤供給用の容器
(即ち溶媒容器)、ミキサーの使い捨て構成要素、例えばバッグ(bag)又はその他の容器、分離器の使い捨て構成要素、例えばバッグ又はその他の容器、溶媒抽出装置(即ち木炭カラム)の使い捨て構成要素、生成物容器、廃液容器の使い捨て構成要素、例えばバッグ又はその他の容器、溶媒検出装置、並びに投入容器からの投入する液体(高密度リポタンパク質)の及び溶媒容器からの脂質除去剤(溶媒)のミキサーへの流れを制御するための、脂質除去剤、脂質及び粒子誘導体の混合物の分離器への流れを制御するための、脂質及び脂質除去剤の廃液容器への流れを制御するための、残存する脂質除去剤、残存する脂質及び粒子誘導体の抽出装置への流れを制御するための、及び粒子誘導体の生成物容器への流れを制御するための、複数の管及び複数の弁を含む。
【0129】
一実施形態では、キットは、ミキサーの使い捨て構成要素、例えばバッグ又はその他の容器、分離器の使い捨て構成要素、例えばバッグ又はその他の容器、廃液容器の使い捨て部分、例えばバッグ又はその他の容器、並びに投入容器からの投入する液体(高密度リポタンパク質)の及び溶媒容器からの脂質除去剤(溶媒)のミキサーへの流れを制御するための、脂質除去剤、脂質及び粒子誘導体の混合物の分離器への流れを制御するための、脂質及び脂質除去剤の廃液容器への流れを制御するための、残存する脂質除去剤、残存する脂質及び粒子誘導体の抽出装置への流れを制御するための、及び粒子誘導体の生成物容器への流れを制御するための、複数の管及び複数の弁を有するプラスチック容器を含む。溶媒抽出装置(即ち木炭カラム)の使い捨て構成要素、投入する液体、投入する溶媒及び溶媒抽出装置は、別々に提供される。
【0130】
投与スケジュール
本発明の改変HDL粒子は、細胞のコレステロール流出を促進するに有効な任意のスケジュールに従って投与され得る。
【0131】
一実施形態では、血液は、約1リットルの血漿を生成するのに十分な容積で患者から採取される。当業者に一般的に既知の方法、例えばプラズマフェレーシスを用いて血液は血漿と赤血球に分離され、赤血球は適切な貯蔵溶液中に保存されるか、又はプラズマフェレーシスの間に患者に戻される。赤血球は、好ましくは、プラズマフェレーシスの間に患者に戻される。生理食塩水も、量を補充するために患者に任意に投与される。LDLに実質的に影響を及ぼさずに脂質含量の低下したHDL粒子を作製するために、1リットルの血漿が本発明の方法のいずれかで処理される。その結果生じる、実質的にLDL含量への影響がない一方で、脂質が低減したHDL粒子を含有する処理血漿は、任意に、赤血球がプラズマフェレーシスの間にすでに戻されていない場合には、患者の赤血球と混合され、患者に投与される。一投与経路は、血管系、好ましくは静脈内によるものである。この処置レジメンは、約5〜6週間、毎週反復される。増強されたコレステロール流出が、処置後の患者に観察される。
【0132】
別の実施形態では、血液は、約1リットルの血漿を精製するのに十分な容積で患者から採取される。当業者に一般的に既知の方法、例えばプラズマフェレーシスを用いて血液は血漿と赤血球に分離され、赤血球は適切な貯蔵溶液中に保存されるか、又はプラズマフェレーシスの間に患者に戻される。LDLの構成成分を除去するために1リットルの血漿を処理した後、血漿をさらに処理する。1リットルの血漿を本発明の方法で処理して、脂質含量の低下したHDL粒子を作製する。その結果生じる脂質含量の低下したHDL粒子を含有する処理血漿は、任意に、赤血球がプラズマフェレーシスの間にすでに戻されていない場合には、患者の赤血球と混合され、患者に投与される。一投与経路は、血管系、好ましくは静脈内によるものである。この処置レジメンは、約5〜6週間、毎週反復される。
【0133】
他の容積の血漿が本発明の方法により処理され、さまざまな投与スケジュールで患者に投与されることが理解されるべきである。バッチプロセスに関しては、100ml〜3,
500mlの容積の血漿が本発明により処理され得る。処理頻度は、処理されるべき容積及び患者の症状の重症度によって、数回/週ないし1回/月又はそれ未満の間で変更し得る。
【0134】
本発明の別のアプローチでは、所望の容積の患者の血液を取り出した後、血液は血漿と赤血球に分離され、血漿は脂質レベルを低下させるよう処理され、脂質含量の低下したHDL粒子が血漿から単離されて、許容可能なビヒクル中で患者に投与される。
【0135】
さらに別の実施形態では、異種血漿を得ることが可能であり、本発明の方法で処理され、脂質含量の低下したHDL粒子を含有する処理された血漿が、血漿を供給した者ではない患者に投与される。さらなる一実施形態では、異種血漿を得ることが可能であり、本発明の方法で処理され、脂質含量の低下したHDL粒子が処理された血漿から分離される。これらの脂質含量の低下したHDL粒子は、許容可能なビヒクル中で、血漿を供給した者ではない患者に投与され得る。
【0136】
さらなる実施形態では、所望の容積の患者の血液を取り出した後、患者は、新しい血液を産生し、血液を取り出す前の血漿HDLレベルと実質的に同様の内因性の血漿HDLレベルを獲得するという見地から、1〜4日間、回復させられる。採取した血液は血漿及び赤血球に分離され、血漿は脂質レベルを低下させるよう処理される。脂質含量の低下したHDL粒子が血漿から単離され、患者に投与される。あるいは脂質含量の低下したHDL粒子を血漿から単離することなく、処理された血漿を患者に投与する。
【0137】
別の実施形態では、血漿は、脂質レベルを低減するよう本発明の方法で処理される。次にアフィニティークロマトグラフィー等の技法を用いて、Apo A−1タンパク質がこの処理された血漿から精製される。その結果生じる精製された改変Apo A−1タンパク質は、適切なビヒクル中で、脂質含量の低下した改変HDL粒子とともに患者に投与される。これらの脂質含量の低下した改変HDL粒子は、適切なビヒクル中、又は処理された血漿中に包含される、単離されたHDL粒子として提供され得る。
【0138】
他の療法での投与
本発明の改変HDL粒子は、1又は複数の付加的な治療アプローチと併用して投与され得る。本発明の改変HDL粒子は、運動並びに脂肪及びコレステロール摂取の食事制限と組み合せて投与され得る。
【0139】
本発明の改変HDL粒子は、コレステロール低減、LDLレベル低減、及びHDLレベル増強のための薬剤の投与と併用して投与され得る。これらの薬剤、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害薬又はスタチンは、当業者に一般に既知の投薬量及び投与スケジュールに従って投与され得る。スタチンとしては、セリバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン及びロバスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば1日1回摂取される10mg、20mg、40mg又は80mgのスタチンの投薬量が一般に用いられる。本発明の改変HDL粒子の投与は、患者におけるスタチン療法の必要性を排除し、又はスタチンの必要投薬量を低減し得る。
【0140】
別の態様では、本発明の改変HDL粒子は、脂肪及びコレステロールの吸収を低減するよう意図された薬剤の投与とともに用いられる。このような薬剤、例えばエゼチミブ、及び臨床的に適切な投薬量は、当業者に既知である。
【0141】
さらに別の態様では、本発明の改変HDL粒子は、1又は複数の薬剤、例えばフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル)、ニコチン酸(ナイアシン)及び胆汁酸結合樹脂(コレスチラミン、コレスチポール)の投与とともに用いられ、臨床的に適切な投薬量は当業者
に既知である。
【0142】
さらに別の態様では、本発明の改変HDL粒子は、当業者に既知の抗炎症薬、例えばアスピリンの投与とともに用いられる。抗炎症薬の臨床的に適切な投薬量は、当業者に既知である。炎症はアテローム硬化症及びその他の血管障害の原因であると考えられるため、抗炎症薬は、血管障害を有する患者にしばしば処方される。
【0143】
本発明の改変HDL粒子は、スタチンのような薬剤の投与並びに脂肪及びコレステロールの吸収を低減するよう設計された薬剤とともに用いられる。3つの療法のこの組合せは、細胞からのコレステロール流出を増強するに有効であり、より低い投薬量のスタチンの投与を可能にする。本発明の改変HDL粒子は、上記の治療アプローチのいずれかと併用されうる。
【0144】
以下の実施例は本発明をさらに説明するために役立つが、同時に、いかなる点でも本発明を限定するものではない。それどころか、本明細書中の説明を読めば、本発明の精神を逸脱しない限り、種々の実施形態、修正及びその等価物を用い得ることが当業者に示唆され得る、と理解されるべきであることは明らかである。
【実施例1】
【0145】
標準的な血漿中の総コレステロール、アポリポタンパク質A1(Apo A−1)、アポリポタンパク質B(Apo B)及びリン脂質の分離及び特徴づけ
総コレステロール、アポリポタンパク質A1(Apo A−1)、アポリポタンパク質B(Apo B)及びリン脂質に関して、血漿のプール25mlを特徴付けた。プールされた血漿の1mlアリコートをSephacryl S−300 26/60(FPLC)カラム上に載せた。1mMのEDTAを含有するリン酸緩衝生理食塩水の溶出緩衝液をカラムに加え、2ml/分で溶出した。血漿試料添加の41分後から開始して、43秒ごとに、約96個の画分を回収した。総コレステロール、Apo A−1、Apo B及びリン脂質に関して、各画分を特徴付けした。
【0146】
Apo B含有粒子は、画分10〜40で溶出された超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)及び低密度リポタンパク質(LDL)から構成された。Apo A−1含有粒子は、残りの画分で溶出された高密度リポタンパク質(HDL)から構成された。結果を図3に示す。総血漿コレステロールの分析は、HDL粒子からのLDL粒子の明らかな分離を示した。対応する画分中のApo A−1及びApo Bの分布は、これらの粒子の分離を確証した。
【実施例2】
【0147】
DIPEを用いた、コレステロールの減少した、又はコレステロール及びリン脂質の減少したApo A−1結合HDL粒子の選択的な作製
この選択的な血漿の処理方法は、1:1比のDIPE:血漿を用いる。試料を15分間ボルテックスにかけ、次に重力により分離させた。このプロセス後に、活性炭を用いて残留しているDIPEを除去し、いくつかの異なる血液学的パラメーターを測定した。
【0148】
次に脱脂試料をカラムに加え、実施例1で説明したように処理した。この方法は、約10%の総コレステロール、12%のApo B、17%のApo A−1及び約11%のリン脂質を除去した。
【0149】
脱脂試料の溶出液と標準的な非脱脂血漿の溶出液との比較を、図4及び5に示す。結果は、Apo A−1結合HDL粒子の右へのシフトを示すが、これは、コレステロールと結合しない(図4)並びにリン脂質と結合しない(図5)小型の粒子を示す。したがって
この脱脂方法は、コレステロール及びリン脂質含量が低いあるいは実質的にそれらを欠く、したがってコレステロール及びリン脂質と結合する新規の能力を有する、Apo A−1と結合したHDL粒子を作製した。脂質は、この方法を用いてLDL粒子(Apo B)からわずかに除去されただけであった(図6)。
【0150】
要するに、2種類のHDL粒子が観察された。Apo A−1及びリン脂質を含有するが、コレステロールを含有しないHDL粒子には広範囲にわたるサイズが存在した。Apo A−1を含有するがリン脂質及びコレステロールを含有しない相対的に狭いサイズ範囲のHDLが観察された。
【実施例3】
【0151】
セボフルラン:n−ブタノール混合物を用いた、コレステロールの減少した又はコレステロール及びリン脂質の減少したApo A−1結合HDL粒子の選択的な作製
95%セボフルラン及び5%n−ブタノールの濃度で、溶媒としてセボフルラン及びn−ブタノールの混合物を用いた。該混合物を、2:1の溶媒対血漿比で血漿に添加した。試料を15分間ボルテックスし、次に遠心分離した。活性炭を添加して、残留溶媒を除去した。その結果生じた溶媒を含まない試料を、実施例1に記載したようにFPLCカラムにかけた。コレステロール、リン脂質及びApo A−1の減少パーセンテージに関するデータを定量的測定値から得たが、FPLC溶出プロフィールからは得られなかった。
【0152】
この方法は、総コレステロールを9%、リン脂質を9%減少させた。約14%の減少がApo A−1で観察された。図7は、この方法が、このような処理を施されなかった血漿と比較した場合、コレステロールと結合しない低重量のApo A−結合HDL粒子を生じさせたことを示す。しかしながら、これらのApo A−1結合HDL粒子は、リン脂質と結合した(図8)。図9に示したように、Apo B結合LDL粒子に及ぼす作用はほとんど認められなかった。要するに、このプロセスは、Apo A−1及びリン脂質を含有するが、コレステロールをほとんど又は全く含有しない改変されたHDL粒子を生じた。
【実施例4】
【0153】
標準的な血漿中の、及びDIPE又はセボフルラン:n−ブタノールで処理した血漿中の臨床パラメーターの分析
標準的な非処理血漿、及び100%DIPE又はセボフルラン:n−ブタノールで処理した血漿における、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリ性ホスファターゼ(AP)、ビリルビン−T、ナトリウム、カリウム、リン、アルブミン、グロブリンとアルブミン/グロブリン(A/G)比を分析した。結果を図10に示す。
【0154】
DIPEによる処理は、前記パラメーターをいかなる臨床的に有意な程度にも変更しなかった。セボフルラン:n−ブタノールによる処理は、パラメーターをいかなる臨床的に有意な程度にも変更しなかった。したがってこれらの処理は、非HDL血漿構成成分に実質的に影響を及ぼさない。
【実施例5】
【0155】
HDLからのコレステロールの除去に対する種々の溶媒の有効性、及びLDLに対する影響の要約
図11〜図15は、種々のパラメーターに関する、それぞれ、処理なし、DIPE(100%)、セボフルラン:n−ブタノール(95:5)、セボフルラン:n−ブタノール(72:25)及びDIPE:n−ブタノール(95:5)で処理した血漿のSuperose FPLCプロファイルを示す。総コレステロール、リン脂質、Apo B、Apo A−1及びApo A−2を示す。Apo A−1及びApo A−2(各図の右側のピー
ク)と結合した領域においては溶媒処理後にコレステロールは減少したが、一方、LDLと結合したApo B(中央のピーク)は実質的に変化しないままである、ということをデータは示す。しかしながら、75:25の比のDIPE:n−ブタノール溶媒による激しい処理(図14)は、非処理の血漿(図11)と比較して、総コレステロール及びリン脂質を劇的に減少させた。
【実施例6】
【0156】
種々の溶媒で処理した血漿のコレステロール流出試験
上記の溶媒条件の全てを用いて、処理された血漿の、ABCA1経路並びにCOS及びFu5AH細胞を用いて測定したSRB1経路によるコレステロール流出に対する影響を試験した。用いた方法は、Rothblatt及びその同僚(de la Llera Moya et al., Arteriosclerosis. & Thrombosis 14: 1056-1065, 1994)により記載されたものであった。
【0157】
用いた方法を、次の段落に大まかに記載する。組織培養細胞系は、細胞を血清又は単離されたリポタンパク質に曝露した際の細胞コレステロールの流出に対するスカベンジャーレセプターBI(SR−BI)又はATP結合カセットトランスポーター1(ABCA1)の寄与を定量するよう設計した。一般的なアプローチは、単離されたアクセプターもしくは全血清への放射能標識細胞コレステロールの放出を測定することである。この流出過程に対するSR−BI又はABCA1の寄与を、当該特定のレセプターを欠く細胞から得られた放出と、同時に行われる、該レセプターを発現する細胞培養で観察されたものとを比較することにより決定する。したがって、細胞のコレステロール流出に対するABCA1の寄与を定量するために、形質転換マウスのマクロファージ細胞を増殖させて単一層とし、H−コレステロールで予備標識する。ABCA1レセプターをアップレギュレーションすることが示されているcAMPで一組の単一層を処理し、一方、同型の一組の単一層を非処理のままにして、ABCA1を欠く対照として役立てる。試験される血清を適切な濃度に希釈し、ABCA1陽性及び陰性の単一層とともにインキュベートする。1〜12時間の範囲の適切なインキュベーション時間後に、放射能標識コレステロールの放出を測定する。ABCA1陰性培養において得られた流出を、ABCA1陽性培養から得られたものから差し引くことにより、流出に対するABCA1の寄与を決定する。
【0158】
コレステロール流出に対するSRBIの寄与を決定するための一般的な検定は、上記と同一のアプローチを用いる。コレステロールのドナーとして機能する細胞株を、それらがSRBIを欠くか又は高レベルのレセプターを発現するよう、処理する。現在用いられる一般的なプロトコールでは、COS−7細胞をSR−BIで一時的にトランスフェクトする。これらの細胞を3H−コレステロールで予備標識して、次に適切な期間、試験血清に曝露する。この期間後、培地を取り出し、放出された放射能標識細胞コレステロールの量の決定を行なう。対照SR−BI陰性細胞からのコレステロールの流出を、SR−BI発現細胞で観察されたものから差し引く。この計算により得られた差は、コレステロール流出に対するSR−BIの寄与を反映する。SR−BI媒介性の流出を決定するのに用いられ得る別の細胞系は、Fu5AHラット肝細胞腫細胞である。これらの細胞は、極めて高レベルのSR−BIを発現し、Fu5AHからの放射能標識コレステロールの流出は、流出過程に対するSR−BIの寄与の非常に信頼できる測定値である。
【0159】
結果を図16に示す。種々の溶媒で処理した血漿が、同一プールの出発血漿から採取した非処理又は擬似処理血漿より20〜25倍以上効率的にコレステロールの流出を刺激した、ということを示す。この作用は、動脈壁からのコレステロール放出を代表すると考えられる代謝経路を有する、ABCA1細胞において観察されたが、肝臓におけるSRB1経路を発現すると考えられるCOS+又はFU5AH細胞においては観察されなかった。異なる個体から得た3つの異なる血漿試料のセボフルラン:n−ブタノールについてのさらなる試験は、同様の結果を生じた(図16、一連のヒストグラム)。改変されたHDL
粒子を作製することにより、したがって本発明は、SRB1及びABCA1経路の有効性に対して陽性に作用する。本発明は、上記の脱脂プロセスによりHDL粒子中のリン脂質対Apo A−1の相対比を改変することによるSRB1及びABCA1経路の改変も含む。
【実施例7】
【0160】
Apo A−1結合プレB−2HDL及びプレB−1HDL粒子のレベルに対する溶媒処理の分析
Apo A−1を含有するHDLの亜種に及ぼすセボフルラン:n−ブタノール及びDIPE:n−ブタノール(95:5)の個々の作用を、3〜16%のネイティブPAGEゲル並びにその後のイムノブロッティング及び画像分析を用いて検査した。用いた技法は、Asztalos et al., Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology; 15: 1419-1423, 1995及びAsztalos et al., Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology; 17: 1885-1893, 1997に記載されている。
【0161】
図17及び図18の左側は各々、標準的な脂血症血漿中のApo A−1を含有するHDLの亜種、即ちプレβ−2、プレβ−1、α及びプレα粒子を示し、一方、各図の右パネルは、セボフルラン:n−ブタノール及びDIPE:n−ブタノール(95:5)で処理した標準的な血漿を示す。
【0162】
図17は、セボフルラン:n−ブタノールで処理した血漿が、Apo A−1含有プレβ−2、プレβ−1HDL亜種の増加、並びにαHDL亜種の減少を示した、ということを実証する。DIPE:n−ブタノールによる処理後に、同様のパターンを観察した(図18)。これらの結果は、血漿のこれらの溶媒処理がApo A−1含有プレβ−2、プレβ−1HDL亜種を増加させ、それによりそれらが新規のコレステロールを受容する可能性を増強し、且つ細胞コレステロール流出を促す、ということを実証する。
【0163】
図17及び図18の左パネルにおいて示される非処理の標準的な血漿と、コレステロールレベルがわずかに増加している別の非処理血漿試料との同様の比較は類似のパターンを生じ(データは不図示)、免疫反応性HDL種のほとんどが、プレβ−2及びプレβ−1HDL粒子と結合して相対的に小密度を有するαHDL形態で出現する。これらの結果から、方法論的な内部対照が提供される。
【実施例8】
【0164】
高コレステロール及び冠動脈疾患を有する患者へのHDLの誘導体の投与
51歳男性患者は急性冠動脈症候群を示し、血管造影法によりアテローム硬化症を有することが決定される。一単位の血液を、毎週患者から採取する。血漿を回収し、本発明の方法で処理して、コレステロール含量の低下した粒子であるHDLの誘導体を作製し、一方、赤血球は患者に戻す。処理された血漿中のコレステロール含量の低下したこれらのHDL粒子を、5〜10週間、1週間間隔で患者に血管内投与する。治療完了後の別の血管造影試験は、最初の血管造影試験と比較して、冠状血管中のより少ない量のアテローム原性プラークを示す。
【実施例9】
【0165】
高コレステロール及び冠動脈疾患を有する患者へのアトルバスタチン及びエゼチミブを伴うHDLの誘導体の投与
58歳女性は急性冠動脈症候群を示し、血管造影法によりアテローム硬化症を有することが決定される。一単位の血液を、毎週患者から採取する。血漿を回収し、本発明の方法で処理して、コレステロール含量の低下した粒子であるHDLの誘導体を生成し、一方、赤血球を患者に戻す。処理された血漿中の、コレステロール含量の低下したこれらのHD
L粒子を、5〜10週間、1週間間隔で患者に血管内投与する。患者は、80mgのアトルバスタチンを毎日、10mgのエゼチミブとともに予め投与されていた。これらの薬剤を、コレステロール含量の低下したHDL粒子の毎週投与とともに、毎日継続する。治療完了後の別の血管造影試験は、最初の血管造影試験と比較して、冠状血管中のより少ない量のアテローム原性プラークを示す。
【実施例10】
【0166】
コレステロール上昇及び冠動脈疾患を有する肥満患者へのシムバスタチン及びエゼチミブを併用したHDLの誘導体の投与
48歳肥満女性患者はLDL及びコレステロールのレベル上昇を示し、血管造影法試験結果は、3つの冠動脈におけるアテローム硬化症を示す。一単位の血液を、毎週患者から採取する。血漿を回収し、本発明の方法で処理して、コレステロール含量の低下した粒子であるHDLの誘導体を作製し、一方、赤血球を患者に戻す。コレステロール含量の低下したこれらのHDL粒子を処理された血漿と混合し、5〜10週間、1週間間隔で患者に血管内投与する。患者は、80mgのシムバスタチンを毎日、10mgのエゼチミブとともに予め投与されていた。これらの薬剤を、コレステロール含量の低下したHDL粒子の毎週投与とともに、毎日継続する。患者は中等度の運動スケジュールを課される。
【0167】
新たな血液検査により、血中コレステロールの減少、LDLの減少及び血中HDLの増加が示される。患者は、5ヶ月間に15ポンド痩せた。新たに行う血管造影法では、最初の血管造影法と比較して、冠状血管中のより少ない量のアテローム原性プラークが示される。
【実施例11】
【0168】
高コレステロール及び冠動脈疾患を有する糖尿病患者へのHDLの誘導体の投与
44歳糖尿病女性患者はLDL及びコレステロールのレベル上昇を示し、血管造影法試験の結果は、2つの冠動脈におけるアテローム硬化症を示す。一単位の血液を、毎週患者から採取する。血漿を回収し、本発明の方法で処理して、コレステロール含量の低下した粒子であるHDLの誘導体を作製し、一方、赤血球を患者に戻す。コレステロール含量の低下したこれらのHDL粒子を処理された血漿と混合し、5〜10週間、1週間間隔で患者に血管内投与する。患者は、予めインスリン注射を毎日受けていた。これらの注射を、コレステロール含量の低下したHDL粒子の毎週投与とともに、毎日継続する。
【0169】
新たな血液試験により、血中コレステロールの減少、LDLの減少及び血中HDLの増加が示される。新たに行う血管造影法により、最初の血管造影法と比較して、冠状血管中のより少ない量のアテローム原性プラークが示される。
【実施例12】
【0170】
高コレステロール及び間欠性跛行を引き起こす末梢血管障害を有する患者へのHDLの誘導体の投与
66歳男性患者は、LDL及びコレステロールのレベル上昇を示し、右下肢の痛みを報告する。血管造影試験は右膝窩及び後脛骨動脈におけるアテローム硬化症を示し、間欠性跛行と診断された。一単位の血液を、毎週患者から採取する。血漿を回収し、本発明の方法で処理して、コレステロール含量の低下した粒子であるHDLの誘導体を作製し、一方、赤血球を患者に戻す。コレステロール含量の低下したこれらのHDL粒子を処理された血漿と混合し、5〜10週間、1週間間隔で患者に血管内投与する。
【0171】
新たな血液試験は、血中コレステロールの減少、LDLの減少及び血中HDLの増加を示す。新たな血管造影法は、最初の血管造影法と比較して、右膝窩及び後脛骨動脈中のより少ない量のアテローム原性プラークを示す。患者は、右下肢からの痛みのレベルの軽減
を報告した。
【0172】
上記の特許、文献及び要約は全て、それらの全体が参照により本明細書中で援用される。本明細書中で用いた用語及び表現は、説明のための用語として用いるもので、本発明を限定するものではなく、このような用語及び表現の使用においては、示され、且つ説明された特徴の任意の等価物又はその部分を除外するものではない。上記は本発明の好ましい実施態様に関するに過ぎず、特許請求の範囲に明示されたような本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、多数の修正又は変更がなされ得る、と理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】LDLの抽出工程及びその後の改変HDL粒子の作製を描いたフローチャートである。
【図2】改変HDL粒子の選択的な作製の工程を描いたフローチャートである。
【図3】標準的な血漿のプールからの血漿サンプルのFPLCプロファイルを図示したものである。総コレステロール(TC)を実線で表す。リン脂質(PPL)は破線である。アポリポタンパク質A1(Apo A−1)は記号を伴う破線である。アポリポタンパク質B(Apo B)は三角形を伴う線で表す。各FPLC画分中のこれらの化合物の量(mg/dl)を示す。
【図4】HDLから脂質を除去するために100%ジイソプロピルエーテル(DIPE)の溶媒で処理した、標準的な血漿のプールの一部分のFPLCプロファイルを図示したものである。図3からの標準的なサンプル中の総コレステロール(TC)を、ここでは三角形を伴う破線として表す。DIPEで処理した標準的な血漿中のTCを実線として示す。図3からの標準的なサンプル中のApo A−1を、ここでは四角形記号を伴う実線として表す。DIPEで処理した標準的な血漿中のApo A−1を、ドット記号を伴う破線として示す。
【図5】HDLから脂質を除去するために100%DIPEの溶媒で処理した、標準的な血漿のプールの一部分のFPLCプロファイルを図示したものである。図3からの標準的な血漿サンプル中のApo A−1を、ここでは四角形を伴う実線として表す。DIPEで処理した標準的な血漿サンプル中のApo A−1を、ドット記号を伴う破線として示す。図3からの標準的な血漿サンプル中のリン脂質(PPL)を、ここでは破線で表す。DIPEで処理した標準的な血漿中のPPLを実線として示す。
【図6】HDLから脂質を除去するために100%DIPEの溶媒で処理した、標準的な血漿のプールの一部分のFPLCプロファイルを図示したものである。標準的な血漿サンプル中のApo Bを、ドット記号を伴う線で表す。DIPEで処理した標準的な血漿中のApo Bを、三角形を伴う破線として示す。図3からの標準的なサンプル中のリン脂質(PPL)を実線で表す。DIPEで処理した標準的な血漿中のPPLを破線として示す。
【図7】95:5の比のセボフルラン対n−ブタノールで処理した、標準的な血漿のプールの一部分のFPLCプロファイルを図示したものである。図3からの標準的な血漿サンプル中の総コレステロール(TC)を、ここでは破線で表す。セボフルラン:n−ブタノールで処理した標準的な血漿中のTCは、実線として示す。図3からの標準的な血漿サンプル中のApo A−1は、四角形を伴う実線として表す。セボフルラン:n−ブタノールで処理した標準的な血漿中のApo A−1を、ドット記号を伴う破線として示す。
【図8】95:5の比のセボフルラン対n−ブタノール溶媒で処理した、標準的な血漿のプールの一部分のFPLCプロファイルを図示したものである。図3からの標準的なサンプル中のApo A−1を、四角形を有する実線として表す。セボフルラン:n−ブタノールに曝露した標準的な血漿中のApo A−1を、ドット記号を伴う破線として示す。図3からの標準的サンプル中のリン脂質(PPL)を、ここでは破線で表す。セボフルラン:n−ブタノールで処理した標準的な血漿中のPPLを実線として示す。
【図9】95:5の比のセボフルラン対n−ブタノールで処理した、標準的な血漿のプールの一部分のFPLCプロファイルを図示したものである。図3からの標準的なサンプル中のApo Bを、ドット記号を伴う線として表す。セボフルラン:n−ブタノールで処理した標準的な血漿中のApo Bを、三角形を伴う破線として示す。図3からの標準サンプル中のリン脂質(PPL)を、ここでは実線で表す。セボフルラン:n−ブタノールで処理した標準的な血漿中のPPLを破線として示す。
【図10】アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリ性ホスファターゼ(AP)、ビリルビン−T、ナトリウム、カリウム、リン、アルブミン、グロブリン及びアルブミン/グロブリン(A/G)比に対する、DIPE又はセボフルラン:ブタノールによる血漿サンプルの処理の影響を表す図である。これらは標準的な非処理血漿、並びにDIPEにより又はセボフルラン:n−ブタノールにより処理した血漿において分析した。
【図11】図12〜15における処理との比較のための対照となる、標準的な血漿サンプルのSuperose FPLCプロファイルを表す図である。標準的な血漿サンプル中の総コレステロール(TC)を、ここでは実線で表す。リン脂質(PPL)を、丸を伴う実線で表す。Apo Bを、白四角を伴う線で表す。Apo A−1を、白三角形記号を伴う実線として表す。Apo A−2を、星印を伴う破線として示す。
【図12】対照の血漿サンプル(図11)の一部分における、DIPE(100%)処理の影響を示す、Superose FPLCプロフィールを図示したものである。総コレステロール(TC)を、ここでは実線で表す。リン脂質(PPL)を、黒丸を伴う実線で表す。Apo Bを、黒四角を伴う線で表す。Apo A−1を、黒三角形記号を伴う実線として表す。Apo A−2を、黒四角中の星印を伴う破線として示す。
【図13】対照の血漿サンプル(図11)の一部分における、95:5の比のセボフルラン対n−ブタノール処理の影響を示す、Superose FPLCプロフィールを図示したものである。総コレステロール(TC)を、ここでは実線で表す。リン脂質(PPL)を、黒丸を伴う実線で表す。Apo Bを、黒四角を伴う線で表す。Apo A−1を、黒三角形記号を伴う実線として表す。Apo A−2を、黒四角中の星印を伴う破線として示す。
【図14】対照の血漿サンプル(図11)の一部分における、72:25の比のDIPE対n−ブタノール処理の影響を示す、Superose FPLCプロファイルを図示したものである。総コレステロール(TC)を、ここでは実線で表す。リン脂質(PPL)を、黒丸を伴う実線で表す。Apo Bを、黒四角を伴う線で表す。Apo A−1を、黒三角形記号を伴う実線として表す。Apo A−2を、黒四角中の星印を伴う破線として示す。
【図15】対照の血漿サンプル(図11)における、95:5の比のDIPE対n−ブタノール処理の影響を示す、Superose FPLCプロファイルを図示したものである。総コレステロール(TC)を、ここでは実線で表す。リン脂質(PPL)を、黒丸を伴う実線で表す。Apo Bを、黒四角を伴う線で表す。Apo A−1を、黒三角形記号を伴う実線として表す。Apo A−2を、黒四角中の星印を伴う破線として示す。
【図16】種々の溶媒による血漿の処理が、処理された血漿の、代謝経路ABCA1並びに細胞株COS+及びFU5AHにおいて発現する代謝経路SRB1によるコレステロール流出を促進する能力に与える影響を、非処理又は擬似処理試料と比較して実証する。
【図17】標準的な脂血症血漿のサンプル(左パネル)及びセボフルラン:n−ブタノール(95:5)で処理したこの血漿の一部分(右パネル)の、3〜16%ネイティブPAGE、イムノブロット及び画像分析により決定された、Apo A−1を含有するHDLの亜種を表す。左パネルは、主としてアルファHDLを含む分布を有する、種々のHDL種のタンパク質の分布を示し、右パネルは、主にプレβHDLを含む分布を有する、改変されたHDLのタンパク質の分布を示す。
【図18】標準的な脂血症血漿のサンプル(左パネル)及びDIPE:n−ブタノール(95:5)で処理したこの血漿の一部分(右パネル)の、3〜16%ネイティブPAGE、イムノブロット及び画像分析により決定された、Apo A−1を含有するHDLの亜種を表す。左パネルは、主としてアルファHDLを含む分布を有する、種々のHDL種のタンパク質の分布を示し、右パネルは、主にプレβHDLを含む分布を有する、改変HDLのタンパク質の分布を示す。
【図19】本明細書中に開示された新規の脱脂方法を達成するために本発明において用いられる、複数の構成要素を表す図である。
【図20】本明細書中に開示された新規の脱脂方法を達成するために本発明で用いられる、複数の構成要素の配置の一実施形態である。
【図21】本明細書中に開示された新規の脱脂方法を達成するために本発明で用いられる、複数の構成要素の配置の別の実施形態である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポリポタンパク質A−1及びリン脂質を含む少なくとも一種類の高密度リポタンパク質の粒子誘導体であって、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物を脂質除去剤に曝露することにより生成され、該曝露は該低密度リポタンパク質を実質的に改変しないことを特徴とする、粒子誘導体。
【請求項2】
前記曝露が、
a.前記脂質除去剤を前記高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物と混合し、粒子誘導体、脂質、脂質除去剤及び低密度リポタンパク質の混合物を作製する工程、
b.脂質除去剤及び脂質を、前記粒子誘導体、脂質、脂質除去剤及び低密度リポタンパク質の混合物から分離する工程、及び
c.粒子誘導体及び低密度リポタンパク質を回収する工程
を含む曝露方法により達成される、請求項1記載の粒子誘導体。
【請求項3】
a.採血のための機器に患者を接続する工程、
b.患者から血球を含有する血液を採取する工程、
c.血球を該血液から分離し、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物を含有する画分を生じさせる工程、及び
d.脂質除去剤を該画分と混合する工程
をさらに含む、請求項2記載の粒子誘導体。
【請求項4】
アポリポタンパク質A−1及びリン脂質を含む少なくとも一種類の高密度リポタンパク質の粒子誘導体であって、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物から低密度リポタンパク質を最初に除去し、次いで、脂質除去剤に該混合物を曝露することにより生成される、粒子誘導体。
【請求項5】
前記曝露が、
a.前記高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物から低密度リポタンパク質を分離する工程、
b.脂質除去剤を高密度リポタンパク質と混合し、粒子誘導体、脂質及び脂質除去剤の混合物を作製する工程、
c.粒子誘導体、脂質及び脂質除去剤の混合物から脂質除去剤及び脂質を分離する工程、及び
d.粒子誘導体を回収する工程
を含む曝露方法により達成される、請求項4記載の粒子誘導体。
【請求項6】
a.採血のための機器に患者を接続する工程、
b.患者から血球を含有する血液を採取する工程、及び
c.血球を該血液から分離し、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物を含有する画分を生じさせる工程
をさらに含む、請求項5記載の粒子誘導体。
【請求項7】
タンパク質外皮及びコレステロールを実質的に欠く脂質二分子膜を含む、プレベータ形態の高密度リポタンパク質の粒子誘導体であって、円盤状の形状を有し、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物から低密度リポタンパク質を最初に除去し、次いで、該混合物を脂質除去剤に曝露することにより生成される、粒子誘導体。
【請求項8】
前記曝露が、
a.前記脂質除去剤を高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物と混合し、粒子誘導体、脂質、脂質除去剤及び低密度リポタンパク質の混合物を作製する工程、
b.脂質除去剤及び脂質を、前記粒子誘導体、脂質、脂質除去剤及び低密度リポタンパク質の混合物から分離する工程、及び
c.粒子誘導体及び低密度リポタンパク質を回収する工程
を含む曝露方法により達成される、請求項7記載の粒子誘導体。
【請求項9】
a.採血のための機器に患者を接続する工程、
b.患者から血球を含有する血液を採取する工程、
c.血球を該血液から分離し、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物を含有する画分を生じさせる工程、及び
d.脂質除去剤を該画分と混合する工程
をさらに含む、請求項8記載の粒子誘導体。
【請求項10】
タンパク質外皮及びコレステロールを実質的に欠く脂質二分子膜を含む、プレベータ形態の高密度リポタンパク質の粒子誘導体であって、円盤状の形状を有し、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物を脂質除去剤に曝露することにより生成され、該曝露は該低密度リポタンパク質を実質的に改変しないことを特徴とする、粒子誘導体。
【請求項11】
少なくとも一種類の高密度リポタンパク質の、タンパク質外皮及び脂質二分子膜を含む粒子誘導体の製造方法であって、
a.採血のための機器に患者を接続する工程、
b.患者から血球を含有する血液を採取する工程、
c.血球を該血液から分離し、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質を含有する血液画分を生じさせる工程、
d.低密度リポタンパク質を該血液画分から分離する工程、
e.高密度リポタンパク質の脂質二分子膜に結合した脂質を除去する脂質除去剤と該血液画分とを混合し、脂質、脂質除去剤及び粒子誘導体の混合物を生じさせる工程、
f.脂質及び脂質除去剤から粒子誘導体を分離する工程、及び
g.該粒子誘導体を患者に送達する工程
を含む方法。
【請求項12】
少なくとも一種類の高密度リポタンパク質の、タンパク質外皮及び脂質二分子膜を含む粒子誘導体の製造方法であって、
a.採血のための機器に患者を接続する工程、
b.患者から血球を含有する血液を採取する工程、
c.血球を該血液から分離し、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質を含有する血液画分を生じさせる工程、
d.低密度リポタンパク質を実質的に改変することなく、高密度リポタンパク質の脂質二分子膜に結合した脂質を除去する脂質除去剤と、該血液画分を混合し、脂質、脂質除去剤、粒子誘導体及び低密度リポタンパク質の混合物を生じさせる工程、
e.粒子誘導体及び低密度リポタンパク質を脂質及び脂質除去剤から分離する工程、及び
f.該粒子誘導体及び低密度リポタンパク質を患者に送達する工程
を含む方法。
【請求項13】
工程c〜eが被験者から離れた部位で行われる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
患者の血漿、血清又はその他の適切な血液画分中に含まれる、少なくとも一種類の高密
度リポタンパク質を改変する方法であって、
a.患者から高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質を含有する血液画分を得る工程、
b.該血液画分から低密度リポタンパク質を分離する工程、
c.高密度リポタンパク質から脂質を除去する脂質除去剤と該血液画分とを混合し、脂質、脂質除去剤、及び改変された高密度リポタンパク質の混合物を生じさせる工程、
d.改変された高密度リポタンパク質を脂質及び脂質除去剤から分離する工程、及び
e.改変された高密度リポタンパク質を患者に送達する工程
を含む方法。
【請求項15】
患者の血漿、血清又はその他の適切な血液画分中に含まれる、少なくとも一種類の高密度リポタンパク質を改変する方法であって、
a.患者から高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質を含有する血液画分を得る工程、
b.低密度リポタンパク質を実質的に改変することなく、高密度リポタンパク質に結合した脂質を除去する脂質除去剤と、該血液画分を混合し、脂質、該脂質除去剤、改変された高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質の混合物を生じさせる工程、
c.改変された高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質を脂質及び脂質除去剤から分離する工程、及び
d.改変された高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質を患者に送達する工程
を含む方法。
【請求項16】
アルファ高密度リポタンパク質及びプレベータ高密度リポタンパク質を有する第一の状態にある、液体中のタンパク質分布を改変する方法であって、
脂質除去剤に該液体を曝露する工程であって、該曝露は、タンパク質分布を、第一の状態から第一の状態に比べてプレベータ高密度リポタンパク質の濃度が増大した第二の状態へと改変することを特徴とする、工程、及び
脂質除去剤を生体液から除去する工程
を含む方法。
【請求項17】
総タンパク質に対してある濃度のプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一のタンパク質分布を有する患者のABCA1経路を増強する方法であって、脂質除去剤に曝露することにより第一のタンパク質分布を含有する液体を改変して総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の濃度を増大させ、該液体を患者に導入することを含む、方法。
【請求項18】
プレベータ高密度リポタンパク質より多くのアルファ高密度リポタンパク質を含有する第一の状態にある、液体中のタンパク質分布を改変する方法であって、
a.脂質除去剤に該液体を曝露する工程であって、該曝露は、タンパク質分布を、第一の状態からアルファ高密度リポタンパク質より多くのプレベータ高密度リポタンパク質を有する第二の状態へと改変することを特徴とする、工程、及び
b.脂質除去剤を生体液から除去する工程
を含む方法。
【請求項19】
血液循環に障害がある患者の血液流動性を変更する方法であって、該患者の血漿、血清又はその他の適切な血液画分を請求項14又は15記載の方法で処理したことを特徴とする、方法。
【請求項20】
患者におけるアテローム硬化症を軽減する方法であって、患者からの血漿、血清又はそ
の他の適切な血液画分を請求項14又は15記載の方法で処理することを特徴とする、方法。
【請求項21】
a.高密度リポタンパク質供給容器、
b.脂質除去剤供給容器、
c.固定ミキサー、ボルテックスミキサー又は遠心器のうちの少なくとも1つを含むミキサー、
d.吸着剤、分離器、遠心器又は木炭カラムのうちの少なくとも1つを含む分離器、
e.高密度リポタンパク質の粒子誘導体を保存するための生成物容器、
f.高密度リポタンパク質供給容器からの高密度リポタンパク質及び脂質除去剤供給容器からの脂質除去剤の、ミキサーへの流量を制御すること、脂質除去剤、脂質及び誘導体の混合物の分離器への流量を制御すること、及び該粒子誘導体の生成物容器への流量を制御すること、を目的とした複数の管及び複数の弁
を備える、請求項1〜18記載の方法のいずれかを実施するためのキット。
【請求項22】
a.高密度リポタンパク質供給容器、
b.脂質除去剤供給容器、
c.固定ミキサー、ボルテックスミキサー又は遠心器のうちの少なくとも1つを含むミキサー、
d.吸着剤、分離器、遠心器又は木炭カラムのうちの少なくとも1つを含む分離器、
e.改変された高密度リポタンパク質を保存するための生成物容器、
f.高密度リポタンパク質供給容器からの高密度リポタンパク質及び脂質除去剤供給容器からの脂質除去剤の、ミキサーへの流量を制御すること、脂質除去剤、脂質及び改変された高密度リポタンパク質の混合物の、分離器への流量を制御すること、及び改変された高密度リポタンパク質の生成物容器への流量を制御すること、を目的とした複数の管及び複数の弁
を備える、請求項1〜18記載の方法のいずれかを実施するためのキット。
【請求項23】
改変されたHDL粒子を患者に投与することを含む、細胞のコレステロール流出を増強させる方法。
【請求項24】
スタチン、コレステロール取込み阻害剤、フィブリン酸誘導体、ニコチン酸、胆汁酸結合樹脂又はそれらの組合せを投与することをさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
相対的に正常な量のApo A−1及びリン脂質、及び実質的に減少したコレステロールを有する改変されたHDL粒子を含む粒子。
【請求項26】
相対的に正常な量のApo A−1、及び実質的に減少したコレステロール及びリン脂質を有する改変されたHDL粒子を含む粒子。
【請求項27】
前記脂質除去剤はエーテル、又はアルコールとエーテルの組合せである、請求項1〜21いずれか一項記載の方法又はキット。
【請求項28】
前記脂質除去剤は、エーテル、ジイソプロピルエーテル、セボフルラン、エーテルとアルコールの組合せ、又はセボフルランとアルコールの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項1〜21いずれか一項記載の方法又はキット。
【請求項29】
前記エーテルはジイソプロピルエーテルである、請求項28記載の方法又はキット。
【請求項30】
前記アルコールはn−ブタノールである、請求項29記載の方法又はキット。
【請求項31】
前記脂質除去剤はセボフルランとn−ブタノールの混合物である、請求項1〜21いずれか一項記載の方法又はキット。
【請求項32】
前記粒子誘導体は前記高密度リポタンパク質よりコレステロール含有量が低いことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の粒子誘導体。
【請求項33】
前記粒子誘導体は、天然型のプレベータ高密度リポタンパク質、プレベータ高密度リポタンパク質又はプレベータ高密度リポタンパク質のうちの少なくとも1つと実質的に同等の物理的、化学的又は生物学的特性を有する、前記請求項のいずれかに記載の粒子誘導体。
【請求項34】
総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の第一の濃度を有する液体を改変して総タンパク質に対するプレベータ高密度リポタンパク質の濃度を増大させることにより製造される、患者のABCA1経路を増強し得る生体液。
【請求項35】
アルファ高密度リポタンパク質及びプレベータ高密度リポタンパク質を含有する第一の状態を有していた生体液を、脂質除去剤に曝露することにより、第一の状態に比べてプレベータ高密度リポタンパク質の濃度が増大した第二の状態を有することとなった、改変されたタンパク質分布を含む生体液。
【請求項36】
比較的正常な量のApo A−1及びリン脂質、及び実質的に減少したコレステロールを有する改変されたHDL粒子を含む粒子誘導体の、細胞のコレステロール流出を増大させることを目的として患者に投与するための薬剤の調製における使用。
【請求項37】
前記患者はアテローム硬化症を有する、請求項36記載の使用。
【請求項38】
細胞のコレステロール流出を増大させることを目的として患者に投与するための薬剤の調製における、前記請求項のいずれかに記載の粒子誘導体の使用。
【請求項39】
スタチン、コレステロール取込み阻害剤、フィブリン酸誘導体、ニコチン酸、胆汁酸結合樹脂又はそれらの組合せの投与をさらに含む、請求項38記載の使用。
【請求項40】
細胞のコレステロール流出を増大させることを目的として患者に投与するための薬剤の調製における、請求項34又は35記載の生体液の使用。
【請求項41】
前記患者はアテローム硬化症を有する、請求項40記載の使用。
【請求項42】
前記生体液は血漿である、前記請求項のいずれかに記載の生体液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2007−527387(P2007−527387A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518606(P2006−518606)
【出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/006988
【国際公開番号】WO2005/011620
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505469539)リピッド サイエンシーズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】