説明

脂質膜による微粒子の被覆方法

【課題】本発明の目的は、微粒子に含有される薬物などを生体内で安定化させるための該微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】薬物と、カチオン脂質を含有するリポソームとの複合体を水中で形成させ、その複合体を極性有機溶媒含有水溶液(液A)に分散させる工程、
脂質を、該極性有機溶媒含有水溶液と同一もしくは異なった極性有機溶媒含有水溶液または極性有機溶媒(液B)に溶解させる工程、
液Aと液Bを混合して液Cとする工程、および
液C中の極性有機溶媒の割合を減少させる工程、
を含む、薬物とカチオン脂質とを含有する微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質膜による微粒子の被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子に薬物を内包させて薬物の効果を高める技術は公知であり、例えばリポソームや脂肪乳剤などが知られている。これらの臨床応用は主として注射により行われ、注射の中でもとりわけ血管内投与により行われる。血管内に投与された微粒子は血液成分と相互作用することが知られているが、相互作用により微粒子そのものまたは薬物が破壊(分解)されたり、微粒子がオプソニンを受けて、血中から除去されたりする(細網内皮系により異物として除去される)。これを克服するため、例えばリポソームのポリエチレングリコール修飾が研究されている(非特許文献1)。
【0003】
また、オリゴヌクレオチド、DNA、RNAなどの核酸を標的細胞に送達するため、カチオン脂質を含む脂質からなるリポソーム(以下、カチオン脂質リポソームという)やポリL-リジン、ポリアミドアミンなどの塩基性ポリマーと核酸との複合体がしばしば利用される。しかし、カチオン脂質リポソームと核酸との複合体は静脈内に投与した後、速やかに血中から肝臓や肺などに移行することが知られている(非特許文献2;非特許文献3)。一方、S. Liらはマウス血清とカチオン脂質リポソーム/DNA複合体を接触させることにより複合体の大きさの増大、凝集、リポソームの崩壊、DNAの放出および分解が起こることを報告している(非特許文献4;非特許文献5)。これらを解決する目的でカチオン脂質リポソームのポリエチレングリコール修飾が研究され、O. Meyerらはポリエチレングリコールホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含むカチオン脂質リポソームとオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の複合体を調製した(非特許文献6)。しかし、50%ヒト血漿水溶液と4時間接触させることで35%のODNが解離した。これを改良すべくD. StuartとT. Allenはカチオン脂質リポソームをクロロホルムに予め溶解し、次いでODNの水溶液とメタノールを加え混合後、遠心分離することでクロロホルム層にカチオン脂質リポソーム/ODNの複合体を移行させた。さらにこのクロロホルム層を取り出し、これにPEG脂質と中性の脂質と水を加えW/Oエマルジョンを形成させ、以後F. Szokaらの逆相蒸発法と同様に処理しODNをリポソーム内部に完全に内包しようと試みた(非特許文献7)。しかし、クロロホルムの使用は安全性の観点から近年は望ましくないとされている。さらにD. Mc Phailらはパルミトイルキトサンとコレステロールのベシクル懸濁液(キトサンベシクル)を卵黄ホスファチジルコリンとコレステロールの薄膜に添加してリポソーム中にキトサンベシクルを入れるベシクルインベシクル(vesicle in vesicle)を調製した(非特許文献8)。しかしながら、内包効率に関する記載は無く、調製法から推察すると数%程度の低い内包率と予測され実用化に当たっては問題となることが予想される。これらの観点からも、簡便かつ効率の良い微粒子の閉鎖小胞による内包化は医療への応用を考えた場合非常に有用である。
【0004】
また、医療上有用な多くのペプチド、蛋白質は生体において酵素などにより速やかに分解されたり頻回投与により抗体が生成し生体内から除去されたりして効力を発揮できない場合がある。そこで、これらペプチド、蛋白質の生体内での安定性を高める目的でリポソーム化が試みられている。リポソーム化の手段としては例えば、バングハム(Bangham)らのリポソーム調製法(非特許文献9)、エタノール注入法(非特許文献10)、フレンチプレス法(非特許文献11)、凍結融解法(非特許文献12)、逆相蒸発法(非特許文献13)、pH勾配法(特許文献1、特許文献2など)などが知られている。低分子化合物にはpH勾配法が優れており改良方法も編み出されている。しかしながら、ペプチド、蛋白質では必ずしも効率の良い内包化は達成されておらず、蛍光ラベル化インスリンでは5〜40%程度内包されたがインスリンは全く内包されなかった(非特許文献14)。ペプチド、蛋白質による治療効果を高めるためにはペプチド、蛋白質を閉鎖小胞内に効率良く内包させる方法を開発することが課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2572554号公報
【特許文献2】特許第2659136号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Stealth Liposomes, ed. by D. D. Lasic and F. Martin, CRC Press Inc., Florida, 93-102 (1995)
【非特許文献2】Biochim. Biophys. Acta, 1281, 139-149 (1996)
【非特許文献3】J. Controlled Release, 41, 121-130 (1996)
【非特許文献4】Gene Therapy, 5, 930-937 (1998)
【非特許文献5】Gene Therapy, 6, 585-594 (1999)
【非特許文献6】J. Biol. Chem., 273, 15621-15627 (1998)
【非特許文献7】Biochim. Biophys. Acta, 1463, 219-229 (2000)
【非特許文献8】Int. J. Pharmaceutics, 200, 73-86 (2000)
【非特許文献9】ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.), 13, 238 (1965)
【非特許文献10】ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J. Cell. Biol.), 66, 621 (1975)
【非特許文献11】フェブス・レター(FEBS Lett.), 99, 210 (1979)
【非特許文献12】アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch. Biochem. Biophys.), 212, 186 (1981)
【非特許文献13】プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユー・エス・エー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 75, 4194 (1978)
【非特許文献14】Int. J. Pharmaceutics, 179, 85-95 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、微粒子に含有される薬物などを生体内で安定化させるための脂質膜による該微粒子の安全、簡便かつ効率的な被覆方法を提供することにある。
該被覆方法を用いて、微粒子を脂質二重膜または多重膜からなる閉鎖小胞内に包むことにより、生体内、とりわけ血液内または消化管内の成分および細網内皮系などの影響、さらに保存中における微粒子同士または微粒子が分散している分散媒の影響を受けることを抑制することができる。
【0008】
本発明者らは、水溶性薬物とカチオン脂質からなる静電的相互作用による複合体がエタノール水溶液に溶解せず、一方リン脂質はエタノール含量の高いエタノール水溶液には溶けるが、エタノール含量の低いエタノール水溶液中では脂質膜形成によるリポソームとなることを見出した。さらに鋭意検討を加えた結果、水溶性薬物と脂質の複合体にポリエチレングリコール化脂質などの水溶性高分子誘導体を予め加えておき、エタノール含量の高いエタノール水溶液に分散させ、次いで本液にポリエチレングリコール化脂質とリン脂質を溶解させた後、徐々にエタノール含量を低下させることにより先の薬物と脂質の複合体をポリエチレングリコール化脂質とリン脂質による脂質膜で被覆させることができることを見出すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(19)に関する。
(1) 微粒子が分散し、かつ脂質が溶解した極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって、該微粒子を脂質膜で被覆することを特徴とする、脂質膜による微粒子の被覆方法。
(2) 極性有機溶媒含有水溶液に微粒子を分散させ(液A)、該極性有機溶媒含有水溶液と同一もしくは異なった極性有機溶媒含有水溶液または極性有機溶媒に脂質を溶解させ(液B)、液Aと液Bを混合し(液C)、次いで液C中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって(液D)、該微粒子を脂質膜で被覆することを特徴とする、脂質膜による微粒子の被覆方法。
(3) 液Bが脂質と一緒に水溶性高分子誘導体(I)を溶解させて得られる溶液である上記(2)に記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(4) 液Aおよび液B中の極性有機溶媒の濃度が30%以上である上記(2)または(3)に記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(5) 液Aおよび液B中の極性有機溶媒の濃度が60〜90%である上記(2)または(3)に記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(6) 液D中の極性有機溶媒の濃度が50%以下である上記(5)に記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(7) 微粒子が上記(3)に記載の水溶性高分子誘導体(I)と同一または異なった水溶性高分子誘導体を含有する微粒子である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(8) 微粒子が薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン中の微粒子、天然高分子、合成高分子、金属コロイド、カチオン脂質、アニオン脂質および微粒子製剤から選ばれる一つ以上を含有する微粒子である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(9) 微粒子が薬物を含有する微粒子である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(10) 微粒子が薬物と脂質集合体、リポソーム、エマルジョン中の微粒子、天然高分子、合成高分子、金属コロイド、カチオン脂質、アニオン脂質および微粒子製剤から選ばれる一つ以上との複合体である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(11) 微粒子が薬物とカチオン脂質との複合体である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(12) 微粒子が薬物とアニオン脂質との複合体である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(13) 微粒子が薬物とリン脂質を含有するリポソームとデキストラン硫酸ナトリウムとの複合体である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(14) 薬物がペプチド、蛋白質、核酸、低分子化合物、糖類および高分子化合物から選ばれる薬物である上記(8)〜(13)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(15) 極性有機溶媒がアルコール類、グリコール類およびポリアルキレングリコール類から選ばれる一つ以上である上記(1)〜(14)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(16) アルコール類がエタノールである上記(15)に記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(17) グリコール類がプロピレングリコールである上記(15)または(16)に記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(18) ポリアルキレングリコール類がポリエチレングリコールである上記(15)〜(17)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
(19) 水溶性高分子誘導体がポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル類、エチレングリコールプロピレングリコール共重合体およびグリセリンエステル類から選ばれる一つ以上である上記(3)〜(18)のいずれかに記載の脂質膜による微粒子の被覆方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、安全、簡便かつ効率の良い脂質膜による微粒子の被覆が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1図は腫瘍へのF-PSの移行量を示すものである。横軸は製剤投与後の時間(時間)を、縦軸は腫瘍内F-PS量を表す。
【図2】第2図は血漿中のFDの濃度を示すものである。横軸は製剤投与後の時間(時間)を、縦軸は血漿中のFDの濃度を表す。
【図3】第3図は血漿中のF-PSの濃度を示すものである。横軸は製剤投与後の時間(時間)を、縦軸は血漿中のF-PSの濃度を表す。
【図4】第4図は血漿中のF-PSの濃度を示すものである。横軸は製剤投与後の時間(時間)を、縦軸は血漿中のF-PSの濃度を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いられる極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類などがあげられる。
【0013】
本発明で用いられる微粒子を構成するものは特に限定されるものではなく、例えば、薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン中の微粒子、天然高分子、合成高分子、金属コロイド、カチオン脂質、アニオン脂質、微粒子製剤、水溶性高分子誘導体などがあげられる。これらは、単独で、またはこれらを2つ以上組み合わせた複合体、もしくはこれらと他の化合物とを組み合わせた複合体として用いられる。
【0014】
上記複合体として具体的には、薬物と脂質集合体、リポソーム、エマルジョン中の微粒子、天然高分子、合成高分子、金属コロイド、カチオン脂質、アニオン脂質および微粒子製剤から選ばれる一つ以上との複合体などがあげられ、さらに具体的には、静電的相互作用により形成される核酸とカチオン脂質との複合体;核酸とポリ-L-リジンなどの正電荷ポリマーとの複合体;等電点の高い塩基性蛋白質とホスファチジン酸などのアニオン脂質またはスチレンマレイン酸などの負電荷ポリマーとの複合体;酸性蛋白質とカチオン脂質やポリ-L-リジンなどの正電荷ポリマーとの複合体などがあげられる。
【0015】
薬物としては、酵素を含む蛋白質、ペプチド、遺伝子を含む核酸、低分子化合物、糖類、高分子化合物などの薬理学的活性を有する物質があげられ、酵素を含む蛋白質またはペプチドとしては、ブラジキニン、アンジオテンシン、オキシトシン、バソプレシン、アドレノコルチコトロピン(ACTH)、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、コレシストキニン、β-エンドルフィン、メラノサイト阻害因子、メラノサイト刺激ホルモン、ガストリンアンタゴニスト、ニューロテンション、ソマトスタチン、ブルシン、シクロスポリン、エンケファリン、トランスフェリン、RGD(Arg Gly Asp)ぺプチド、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン(LHRH)、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、ウリカーゼ、カルボキシペプチダーゼ、グルタミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)、ストレプトキナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、ムラミルジペプチド、サイモポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、トリプシンインヒビター、リゾチーム、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF)、内皮細胞成長因子(ECGF)、フィブロブラスト(繊維芽細胞)成長因子(FGF)、グリア細胞成長因子(GGF)、サイモシン、特異抗体(例えば、抗EGF受容体抗体などがあげられる)などがあげられ、遺伝子を含む核酸としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド、センスオリゴヌクレオチド、DNA、RNAなどの核酸類があげられ、低分子化合物としては、イプシロン-アミノカプロン酸、塩酸アルギニン、L-アスパラギン酸カリウム、トラネキサム酸、硫酸ブレオマイシン、硫酸ビンクリスチン、セファゾリンナトリウム、セファロチンナトリウム、シチコリン、シタラビン、硫酸ゲンタマイシン、塩酸バンコマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸アミカシンなどがあげられ、糖類としては、コンドロイチン硫酸ナトリウム、へパリンナトリウム、デキストランフルオレセインなどがあげられ、高分子化合物としては、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム、DIVEMA(ジビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体)、SMANCS(スチレン無水マレイン酸共重合体-ネオカルチノスタチン結合体)などがあげられる。
【0016】
脂質集合体としては、球状ミセル、球状逆ミセル、ソーセージ状ミセル、ソーセージ状逆ミセル、板状ミセル、板状逆ミセル、ヘキサゴナルI、ヘキサゴナルIIおよび脂質2分子以上からなる会合体などがあげられる。
【0017】
リポソームを構成する脂質としては、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロール、カチオン脂質などがあげられ、リン脂質が好ましく用いられる。これらの脂質は、ポリソルベート80、プルロニックF68、ソルビタンモノラルラート(例えばSpan 20)などの非イオン性界面活性剤、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、デキストランなどの多糖類もしくはその誘導体、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリオキシエチレン誘導体などにより改質されていてもよい。
【0018】
リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンなど)、ホスファチジルエタノールアミン(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンなど)、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ポリエチレングリコール化リン脂質、卵黄レシチン、大豆レシチン、水素添加リン脂質などの天然または合成のリン脂質などがあげられる。
【0019】
グリセロ糖脂質としては、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリドなどがあげられる。
また、スフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシドなどがあげられる。
カチオン脂質としては、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、N-(2,3-ジオレイルオキシプロパン-1-イル)-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、1,2-ジオレオイルオキシプロピル-3-ジエチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)、3β-[N-(N'N'-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)などがあげられる。
【0020】
リポソームにおいては、これら脂質は、単独で、または組み合わせて用いられる。組み合わせて用いる場合、例えば、水素添加大豆ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる少なくとも二成分以上からなる脂質、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる少なくとも二成分以上からなる脂質、卵黄ホスファチジルコリンとDOTAPからなる脂質、卵黄ホスファチジルコリン、DOTAPおよびポリエチレングリコール化リン脂質からなる脂質、卵黄ホスファチジルコリン、DOTAP、コレステロールおよびポリエチレングリコール化リン脂質からなる脂質などが脂質として用いられる。
【0021】
また、リポソーム調製時には、必要に応じて、脂質と共に、膜安定化剤としてコレステロールなどのステロール類など、抗酸化剤としてトコフェロールなど、荷電物質としてステアリルアミン、ジセチルホスフェート、ガングリオシドやDOTMA[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413-7417 (1987)]、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 6982-6986 (1989)]、DMRIEもしくはDORIE[Methods, 5, 67-75 (1993)]、DC-Chol[バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. Commun.), 179, 280-285 (1991)]などのカチオン脂質などを加えてもよい。
【0022】
エマルジョン中の微粒子は特に限定されるものではなく、具体的には脂肪乳剤、非イオン性界面活性剤と大豆油からなるエマルジョン、リピッドエマルジョン、リピッドナノスフェアーなどを含むあらゆるO/WエマルジョンやW/O/Wエマルジョン中の微粒子などがあげられる。
【0023】
天然高分子は特に限定されるものではなく、具体的にはアルブミン、デキストラン、キトサン、デオキシリボ核酸などがあげられる。
【0024】
合成高分子は特に限定されるものではなく、具体的にはポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド-アクリルピロリドン共重合体、PEG修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、PEG化ポリ乳酸、デキストラン硫酸またはその塩などがあげられる。
ここで、塩は、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩などを包含する。金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などがあげられ、アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩があげられ、有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジンなどの付加塩があげられ、アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンなどの付加塩などあげられる。
【0025】
金属コロイドとしては、金、銀、白金、銅、ロジウム、シリカ、カルシウム、アルミニウム、鉄、インジウム、カドミウム、バリウム、鉛などを含む金属コロイドがあげられる。
カチオン脂質としては、前記と同様のものがあげられる。
アニオン脂質としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールなどがあげられる。
微粒子製剤としては、マイクロスフェアー、マイクロカプセル、ナノクリスタル、リピッドナノパーティクルポリマーミセルなどがあげられる。
微粒子として、好ましくはリポソームに薬物を内包させたものがあげられる。
微粒子の大きさとしては、平均粒子径が数nm〜数十μmであるのが好ましく、さらに好ましくは10nm〜1000nmである。
【0026】
本発明で用いられる水溶性高分子誘導体は特に限定されるものではなく、PEG-PE、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン-N-(ポリエチレングリコール2000)(PEG-DSPE)などのポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、CREMOPHOR ELなどのポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 80)などのポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル類、エチレングリコールプロピレングリコール共重合体、グリセリンエステル類、ポリエチレンイミン誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリルアミド誘導体、デキストラン誘導体、ポリグリセリン誘導体、キトサン誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、ポリアスパラギン酸アミド誘導体、ポリ-L-リジン誘導体、マンナン誘導体、プルラン誘導体などがあげられる。
【0027】
本発明で脂質膜に用いられる脂質としては、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロール、合成脂質などが用いられ、特にリン脂質が好ましく用いられる。リン脂質、グリセロ糖脂質およびスフィンゴ糖脂質としては、前記と同様のものがあげられ、合成脂質としては、フッ素添加ホスファチジルコリン、フッ素添加界面活性剤、臭化ジアルキルアンモニウムなどがあげられる。
本発明で用いられる微粒子が分散し、かつ脂質が溶解した極性有機溶媒含有水溶液の調製方法としては、例えば極性有機溶媒含有水溶液に微粒子を分散させ(液A)、該極性有機溶媒含有水溶液と同一もしくは異なった極性有機溶媒含有水溶液または極性有機溶媒に脂質を溶解させ(液B)、次いで液Aと液Bを混合する方法があげられる。
【0028】
本発明の脂質膜による微粒子の被覆方法としては、具体的には例えば以下の方法があげられる。
(工程1)微粒子を極性有機溶媒含有水溶液、好ましくはエタノールなどのアルコール類を含有する水溶液に分散(懸濁)させる。
(工程2)該極性有機溶媒含有水溶液と同一もしくは異なった極性有機溶媒含有水溶液、好ましくは同一の極性有機溶媒含有水溶液または極性有機溶媒に溶解した脂質を工程1で得られる懸濁液に添加し、混合する。このとき、さらに水溶性高分子誘導体を添加してもよく、ここで添加する水溶性高分子誘導体の量は特に限定されるものではない。
(工程3)工程2で得られる混合液に少しずつ水を添加、透析または極性有機溶媒を留去し、混合液中の極性有機溶媒の割合を減少させ、溶解していた脂質、工程2で水溶性高分子誘導体を添加したときは脂質と水溶性高分子誘導体を微粒子表面に集合させ、微粒子表面で脂質膜を形成させ、微粒子を内包する閉鎖小胞を得る。
【0029】
本発明の方法で用いられる極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の割合は、微粒子が溶解せずに存在し、微粒子を被覆する脂質膜を構成する成分が溶解するという条件さえ満たしていれば特に限定するものではなく、用いる溶媒や微粒子、脂質の種類などにより異なるが、好ましくは30%以上、より好ましくは60〜90%である。また、例えば上記工程3中、減少させた後の混合液中の極性有機溶媒の割合は、溶解していた脂質、工程2で水溶性高分子誘導体を添加したときは脂質と水溶性高分子誘導体が微粒子表面に集合し、微粒子表面で脂質膜を形成しうる割合であれば特に限定するものではないが、好ましくは水溶液中の極性有機溶媒の濃度が50%以下である。
【0030】
本発明の方法で用いられる微粒子の、極性有機溶媒含有水溶液または本発明の方法を用いて得られる製剤に対する割合は、該微粒子を脂質膜で被覆できれば特に限定するものではないが、好ましくは1μg/mL〜1g/mL、さらに好ましくは0.1〜500mg/mLである。
【0031】
本発明の方法で用いられる脂質の、極性有機溶媒含有水溶液または本発明の方法を用いて得られる製剤に対する割合は、微粒子を被覆できれば特に限定するものではないが、好ましくは1μg/mL〜1g/mL、さらに好ましくは0.1〜400mg/mLである。
用いる微粒子の種類によらず基本的には前記と同様な方法で微粒子の脂質膜による被覆を行うことができる。
本発明で用いられる極性有機溶媒および脂質としては、市販品を用いることができる。
本発明で用いられる微粒子は、市販品として得られるか、公知の方法により製造することができる。
【0032】
例えば、微粒子を構成するリポソームの製造には、公知のリポソームの調製方法が適用できる。公知のリポソームの調製方法としては、例えばバンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[J. Mol. Biol., 13, 238 (1965)]、エタノール注入法[J. Cell. Biol., 66, 621 (1975)]、フレンチプレス法[FEBS Lett., 99, 210 (1979)]、凍結融解法[Arch. Biochem. Biophys., 212, 186 (1981)]、逆相蒸発法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 4194 (1978)]、pH勾配法(特許第2572554号公報、特許第2659136号公報など)などがあげられる。
また、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、多糖類またはその誘導体、ポリオキシエチレン誘導体などによるリポソーム表面改質も任意に行うことができ、これらの表面改質リポソームも本発明の微粒子として用いられる[Stealth Liposomes, ed. by D. D. Lasic and F. Martin, CRC Press Inc., Florida, 93-102 (1995)]。
微粒子を構成するリポソームの製造の際にリポソームを懸濁させる溶液としては、水以外に酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液などを用いてもよい。また、クエン酸、アスコルビン酸、システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの抗酸化剤をリポソーム懸濁液に添加してもよい。また、等張化剤として、例えば、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウムなどの添加も可能である。
【0033】
また、薬物と脂質とをエタノールなどの有機溶媒に溶解し、溶媒留去した後、生理食塩水などを添加、振とう撹拌し、リポソームを形成させることもできる。
リポソームに薬物を内包するか、リポソームと薬物との複合体を形成するときまたはその後で、水溶性高分子誘導体を添加してもよい。
リポソームの平均粒子径は特に限定するものではなく、所望により自由に選択できる。平均粒子径を調節する方法としては、エクストルージョン法や大きな多重膜リポソーム(MLV)を機械的に粉砕(マントンゴウリン、マイクロフルイダイザーなどを使用)する方法[R. H. Muller, S. Benita, B. Bohm編著, "Emulsion and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs", High-Pressure Homogenization Techniques for the Production of Liposome Dispersions: Potential and Limitations, M.Brandl, 267-294 (1998) (Scientific Publishers Stuttgart, Germany)]などがあげられる。
【0034】
また、微粒子を構成する薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン中の微粒子、天然高分子、合成高分子、金属コロイド、カチオン脂質、アニオン脂質、微粒子製剤および水溶性高分子誘導体から選ばれる2つ以上を組み合わせた複合体の形成方法は水中で薬物と脂質や高分子などとを混合するだけの方法でもよく、この際、必要であればさらに整粒工程や無菌化工程などを加えることもできる。また、複合体形成をアセトン、エーテルなど種々の溶媒中で行うことも可能である。
【0035】
本発明で用いる微粒子および/または得られる微粒子を被覆した脂質膜については、それらの表面を抗体などの蛋白質、糖類、糖脂質、アミノ酸、核酸や種々の低分子化合物、高分子化合物などにより修飾したり、単に微粒子および/または脂質膜にこれらの物質を添加して使用することも可能である。
例えば、ターゲッティングに応用するため、被覆した膜に対して、さらに蛋白質(抗体も含む)、ペプチド、脂肪酸類などによる脂質膜表面修飾を行うこともできる[Stealth Liposomes, ed. by D. D. Lasic and F. Martin, CRC Press Inc., Florida, 93-102, (1995)]。
【0036】
本発明の方法を用いて得られる脂質膜で被覆された微粒子は、そのままでも使用できるが、使用目的、保存条件などにより、マンニトール、ラクトース、トレハロース、マルトース、グリシンなどの賦形剤を加えて凍結乾燥することもできる。また、グリセリンなどの凍結保存剤を加えて凍結保存してもよい。また、適当な賦形剤と共に造粒、乾燥するなどしてカプセル剤、錠剤、顆粒剤などの経口用製剤に加工してもよい。
本発明の方法を用いて得られる脂質膜で被覆された微粒子は、水以外に酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液などを用いて懸濁させてもよい。また、クエン酸、アスコルビン酸、システイン、EDTAなどの抗酸化剤をリポソーム懸濁液に添加してもよい。また、等張化剤として、例えば、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウムなどの添加も可能である。
本発明の方法を用いて得られる製剤は、注射剤として用いるのが一般的であるが、経口剤、点鼻剤、点眼剤、経皮剤、坐剤、吸入剤などとして加工して使用することもできる。
本発明で得られる製剤は、例えば血液成分などの生体成分中、例えば血液中や消化管中での薬物の安定化、副作用の低減または腫瘍などの標的臓器への集積性の増大や経口や粘膜吸収の改善などを目的として使用できる。
以下に、本発明の実施例および比較例を示す。
【実施例】
【0037】
実施例1
10mgのデキストランフルオレセインアニオニック(FD)(Molecular Probes製)、60mgのDOTAP(Avanti製)および24mgのPEG-DSPE(Avanti製)に3mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、4mLのエタノールを加えた。次に、この懸濁液に、240mgの卵黄ホスファチジルコリン(EggPC)と50mgのPEG-DSPEをエタノール1mLに溶解した溶液を添加した。この懸濁液に蒸留水92mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤1)を得た。
動的光散乱(DLS)[A model ELS-800、Otsuka Electronics Ltd.(ELS-800、大塚電子)、以下同様]でリポソームの平均粒子径を測定したところ、134nmであった。
【0038】
実施例2
10mgのFD、60mgのDOTAPおよび24mgのPEG-DSPEに3mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、4mLのエタノールを加えた。次に、この懸濁液に、120mgのEggPCと25mgのPEG-DSPEをエタノール1mLに溶解した溶液を添加した。この懸濁液に蒸留水92mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤2)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、179nmであった。
【0039】
実施例3
10mgのFD、60mgのDOTAPおよび24mgのPEG-DSPEに3mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、4mLのエタノールを加えた。次に、この懸濁液に、60mgのEggPCと12.5mgのPEG-DSPEをエタノール1mLに溶解した溶液を添加した。この懸濁液に蒸留水92mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤3)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、184nmであった。
【0040】
実施例4
10mgのFDおよび60mgのDOTAPに3mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、4mLのエタノールを加えた。次に、この懸濁液に、240mgのEggPCと74mgのPEG-DSPEをエタノール1mLに溶解した溶液を添加した。この懸濁液に蒸留水92mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤4)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、131nmであった。
【0041】
実施例5
10mgのFDおよび60mgのDOTAPに3mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、4mLのエタノールを加えた。次に、この懸濁液に、240mgのEggPCをエタノール1mLに溶解した溶液を添加した。この懸濁液に蒸留水92mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤5)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、458nmであった。
【0042】
実施例6
2.5mgのインスリン-フルオレセインイソチオシアネート(FITC)ラベル体(F-Ins)(Sigma製)、30mgのDOTAPおよび12mgのPEG-DSPEに、1.49mLの蒸留水および0.01mLの1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、2mLのエタノールを加えた。次に、この懸濁液に、120mgのEggPCと25mgのPEG-DSPEをエタノール0.5mLに溶解した溶液を添加した。この懸濁液に蒸留水46mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤6)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、132nmであった。
【0043】
実施例7
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水が30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液0.5mLに、フルオレセインイソチオシアネート結合ホスホロチオエート(F-PS)(サイメディア製)を15mg/mLになるように蒸留水に溶解させた水溶液0.25mLを添加し、1mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、EggPC/PEG-DSPE/エタノールを120mg/25mg/mLになるように溶解した溶液0.25mLを添加した。この懸濁液に蒸留水23mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液を得た。120重量部のEggPCに対し50重量部のPEG-DSPEを少量のエタノール(リポソーム懸濁液の4容量%)に溶解した後、リポソーム懸濁液と混合し、70℃で2分間加温した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるよう調整して、リポソーム懸濁液(製剤7)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、111nmであった。
【0044】
実施例8
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水が30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液0.4mLに、F-PSを10mg/mLになるように蒸留水に溶解させた水溶液0.2mLを添加し、0.8mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、EggPC/PEG-DSPE/エタノールを240mg/50mg/mLになるように溶解した溶液0.2mLを添加した。この懸濁液に蒸留水18.4mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤8)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、112nmであった。
【0045】
実施例9
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水が30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液0.4mLに、F-PSを15mg/mLになるように蒸留水に溶解させた水溶液0.2mLを添加し、0.8mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、EggPC/PEG-DSPE/エタノールを240mg/50mg/mLになるように溶解した溶液0.2mLを添加した。この懸濁液に蒸留水18.4mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤9)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、137nmであった。
【0046】
実施例10
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水が30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液0.4mLに、F-PSを17.5mg/mLになるように蒸留水に溶解させた水溶液0.2mLを添加し、0.8mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、EggPC/PEG-DSPE/エタノールを240mg/50mg/mLになるように溶解した溶液0.2mLを添加した。この懸濁液に蒸留水18.4mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤10)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、132nmであった。
【0047】
実施例11
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水が30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液0.4mLに、F-PSを20mg/mLになるように蒸留水に溶解させた水溶液0.2mLを添加し、0.8mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、EggPC/PEG-DSPE/エタノールを240mg/50mg/mLになるように溶解した溶液0.2mLを添加した。この懸濁液に蒸留水18.4mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤11)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、164nmであった。
【0048】
実施例12
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水が30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液0.25mLに、F-PSを15mg/mLになるように蒸留水に溶解させた水溶液0.125mLを添加し、0.5mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、EggPC/PEG-DSPE/エタノールを240mg/100mg/mLになるように溶解した溶液0.125mLを添加した。この懸濁液に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤12)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、122nmであった。
【0049】
実施例13
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水が30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液0.25mLに、F-PSを15mg/mLになるように蒸留水に溶解させた水溶液0.125mLを添加し、0.5mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、EggPC/PEG-DSPE/エタノールを360mg/150mg/mLになるように溶解した溶液0.125mLを添加した。この懸濁液に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤13)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、165nmであった。
【0050】
実施例14
30mg/mLのDOTAPと12mg/mLのPEG-DSPEの懸濁液を、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、粒子径が80nm程度のリポソームの懸濁液を得た。スターラーで攪拌下、この懸濁液250μLに、125μLの15mg/mL F-PS水溶液を添加し、0.5mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、120mgのEggPCと25mgのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(日本油脂製)をエタノール1mLに溶解した溶液125μLを添加した。この懸濁液に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるように調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。40μLのPBSを添加して再懸濁し、さらにPBSで希釈してF-PS 3mg/mLのリポソーム懸濁液を得た。EggPC 120重量部に対して50重量部のPEG-DSPEの重量を少量(リポソーム懸濁液の約1/25容量)のエタノールに溶解した。リポソーム懸濁液とPEG-DSPEエタノール溶液をそれぞれ70℃で2分間加熱した。ついでPEG-DSPEエタノール溶液にリポソーム懸濁液を添加し、混合後70℃で2分間の加熱後、水冷した。得られたリポソーム懸濁液にPBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように希釈して、リポソーム懸濁液(製剤14)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、116nmであった。
【0051】
実施例15
30mg/mLのDOTAPと12mg/mLのPEG-DSPEの懸濁液を、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、粒子径が80nm程度のリポソームの懸濁液を得た。スターラーで攪拌下、この懸濁液500μLに、250μLの15mg/mL F-PS水溶液を添加し、1mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、120mgのEggPCと25mgのCREMOPHOR EL(シグマ製)をエタノール1mLに溶解した溶液250μLを添加した。この懸濁液に蒸留水23mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるように調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。40μLのPBSを添加して再懸濁し、さらにPBSで希釈してF-PS 3mg/mLのリポソーム懸濁液を得た。EggPC 120重量部に対して50重量部のPEG-DSPEを少量(リポソーム懸濁液の約1/25容量)のエタノールに溶解した。リポソーム懸濁液とPEG-DSPEエタノール溶液をそれぞれ70℃で2分間加熱した。ついでPEG-DSPEエタノール溶液にリポソーム懸濁液を添加し、混合後70℃で2分間の加熱後、水冷した。得られたリポソーム懸濁液にPBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように希釈してリポソーム懸濁液(製剤15)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、140nmであった。
【0052】
実施例16
30mg/mLのDOTAPと12mg/mLのPEG-DSPEの懸濁液を、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、粒子径が80nm程度のリポソームの懸濁液を得た。スターラーで攪拌下、この懸濁液250μLに、120μLの15mg/mL F-PS水溶液を添加し、0.5mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、25mgのTween80を120mg/mL EggPCエタノール溶液1mLに溶解した溶液125μLを添加した。この懸濁液に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるように調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。40μLのPBSを添加して再懸濁し、さらにPBSで希釈してF-PS 3mg/mLのリポソーム懸濁液を得た。EggPC 120重量部に対して50重量部のPEG-DSPEを少量(リポソーム懸濁液の約1/25容量)のエタノールに溶解した。リポソーム懸濁液とPEG-DSPEエタノール溶液をそれぞれ70℃で2分間加熱した。ついでPEG-DSPEエタノール溶液にリポソーム懸濁液を添加し、混合後70℃で2分間の加熱後、水冷した。得られたリポソーム懸濁液にPBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように希釈して、リポソーム懸濁液(製剤16)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、151nmであった。
【0053】
実施例17
30mg/mLのDOTAPと12mg/mLのPEG-DSPEの懸濁液を、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、粒子径が80nm程度のリポソームの懸濁液を得た。スターラーで攪拌下、この懸濁液250μLに、125μLの15mg/mL F-PS水溶液を添加し、0.5mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、120mgのEggPC、120mgのSpan 20(関東化学製)、50mgのPEG-DSPEをエタノール2mLに溶解した溶液125μLを添加した。この懸濁液に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるように調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。40μLのPBSを添加して再懸濁し、さらにPBSで希釈してF-PS 3mg/mLのリポソーム懸濁液を得た。EggPC 120重量部に対して50重量部のPEG-DSPEを少量(リポソーム懸濁液の約1/25容量)のエタノールに溶解した。リポソーム懸濁液とPEG-DSPEエタノール溶液をそれぞれ70℃で2分間加熱した。ついでPEG-DSPEエタノール溶液にリポソーム懸濁液を添加し、混合後70℃で2分間の加熱後、水冷した。得られたリポソームにPBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように希釈して、リポソーム懸濁液(製剤17)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、131nmであった。
【0054】
実施例18
30mg/mLのDOTAPと12mg/mLのPEG-DSPEの懸濁液を、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通し、粒子径が80nm程度のリポソームの懸濁液を得た。スターラーで攪拌下、この懸濁液500μLに、250μLの15mg/mL F-PS水溶液を添加し、1mLのエタノールを加えた。さらに、この懸濁液に、120mgのEggPCと12.5mgのCREMOPHOR EL(シグマ製)をエタノール1mLに溶解した溶液250μLを添加した。この懸濁液に蒸留水23mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるように調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。40μLのPBSを添加して再懸濁し、さらにPBSで希釈してF-PS 3mg/mLのリポソーム懸濁液を得た。EggPC 120重量部に対して50重量部のPEG-DSPEを少量(リポソーム懸濁液の約1/25容量)のエタノールに溶解した。リポソーム懸濁液とPEG-DSPEエタノール溶液をそれぞれ70℃で2分間加熱した。ついでPEG-DSPEエタノール溶液にリポソーム懸濁液を添加し、混合後70℃で2分間の加熱後、水冷した。得られたリポソームにPBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように希釈して、リポソーム懸濁液(製剤18)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、133nmであった。
【0055】
実施例19
589 mgの卵黄レシチン(キューピー製)に50 mmol/L リン酸二水素カリウム水溶液を11.8mL加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに30回通した。この懸濁液40μLと、1mg/mL G-CSF(協和発酵製、ナルトグラスチム、遺伝子組換ヒトG-CSF変異型)水溶液1mLおよび2mg/mLデキストラン硫酸ナトリウム(メルク製)水溶液1mLの混合液とを混合し、1mol/Lおよび0.1mol/Lの塩酸水溶液(関東化学製)を用いて混合液の液性をpH4に調整した。この混合液500μLにエタノール753μLを加え、50mg/mL卵黄レシチンエタノール溶液80μLを加えた。この懸濁液に蒸留水7mLを徐々に加え、エタノールの濃度が10%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、146,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。水を添加して総量が500μLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤19)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、316 nmであった。
【0056】
実施例20
588 mgの卵黄レシチンおよび205 mgのPEG-DSPEに適量のエタノールを室温で加えて溶解させた後、エタノールを留去し減圧乾燥した。これに50mmol/Lリン酸二水素カリウム水溶液を11.8mL加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに30回通した。この懸濁液40μLと、1mg/mLのG-CSF水溶液1mLおよび2mg/mLのデキストラン硫酸ナトリウム水溶液1mLの混合液とを混合し、1mol/Lおよび0.1mol/Lの塩酸水溶液を用いて混合液の液性をpH4に調整した。この混合液500μLにエタノール753μLを加え、さらに卵黄レシチンを50 mg/mL、PEG-DSPEを16.7 mg/mL含むエタノールを80μL加えた。この懸濁液に蒸留水7 mLを徐々に加え、エタノールの濃度が10 %以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、146,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。水を添加して総量が500μLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤20)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、316 nmであった。
【0057】
実施例21
598 mgの卵黄レシチンおよび68.8 mgのショ糖脂肪酸エステル(三菱化成製)に、適量のエタノールを室温で加えて溶解させた後、エタノールを留去し減圧乾燥した。これに50 mmol/L リン酸二水素カリウム水溶液を12.0 mL加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに30回通した。この懸濁液40μLと、1mg/mLのG-CSF水溶液1mLおよび2mg/mLのデキストラン硫酸ナトリウム水溶液1mLの混合液とを混合し、1mol/Lおよび0.1mol/Lの塩酸水溶液を用いて混合液の液性をpH4に調整した。この混合液500μLにエタノール753μLを加え、さらに卵黄レシチン50mg/mLおよびショ糖脂肪酸エステル4.5mg/mLを含むエタノールを80μL加えた。この懸濁液に蒸留水7mLを徐々に加え、エタノールの濃度が10%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、146,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。水を添加して総量が500μLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤21)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、242nmであった。
【0058】
実施例22
150mgの卵黄レシチンおよび60mgのPEG-DSPEに5mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.08μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液571μLと、G-CSFを1.4mg/mL含むリン酸二水素カリウム水溶液119μLおよび2mg/mLのデキストラン硫酸ナトリウム水溶液167μLの混合液とを混合し、1mol/Lおよび0.1mol/Lの塩酸水溶液を用いて混合液の液性をpH4に調整した。この混合液0.5mLにエタノール666μLを加え、さらに120mgの卵黄ホスファチジルコリン(EggPC、日本油脂製)と25mgのPEG-DSPEをエタノール1mLに溶解した溶液167μLを添加した。この懸濁液に蒸留水47mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、146,000×g、4℃)を行い、上清を除去した。蒸留水を添加して再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤22)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、126nmであった。
【0059】
実施例23
150mgの卵黄レシチンおよび60mgのPEG-DSPEに5mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.08μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.03μmのポリカーボネートメンブランフィルターに7回通した。この懸濁液286μLと、G-CSFを1.4mg/mL含むリン酸二水素カリウム水溶液119μLおよび2mg/mLのデキストラン硫酸ナトリウム水溶液167μLの混合液286μLとを混合し、1mol/Lおよび0.1mol/Lの塩酸水溶液を用いて混合液の液性をpH4に調整した。この混合液0.25mLにエタノール333μLを加え、さらに120mgの卵黄ホスファチジルコリンと25mgのPEG-DSPEをエタノール1mLに溶解した溶液84μLを添加した。この懸濁液に蒸留水23.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、146,000×g、4℃)を行い、上清を除去した。リン酸二水素カリウム水溶液を添加して再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤23)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、146 nmであった。
【0060】
実施例24
150mgの卵黄レシチンおよび60mgのPEG-DSPEに5mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.08μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液428μLと、G-CSFを1.4mg/mL含むリン酸二水素カリウム水溶液89μLおよび2mg/mLのデキストラン硫酸ナトリウム水溶液125μLの混合液とを混合し、1mol/Lおよび0.1mol/Lの塩酸水溶液を用いて混合液の液性をpH4に調整した。この混合液0.5mLにエタノール666μLを加え、さらに120mgの卵黄ホスファチジルコリンと25mgのPEG-DSPEをエタノール1mLに溶解した溶液167μLを添加した。この懸濁液に蒸留水47mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、146,000×g、4℃)を行い、上清を除去した。リン酸二水素カリウム水溶液を添加して再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤24)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、134nmであった。
【0061】
実施例25
150mgの卵黄レシチンおよび60mgのPEG-DSPEに5mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.08μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液500μLと、インターフェロンα-2b(Research Diagnostics製)を1,000,000 units/mL含むPBS溶液20μL、2mg/mLのデキストラン硫酸ナトリウム水溶液150μLおよび蒸留水80μLの混合液とを混合し、1mol/Lおよび0.1mol/Lの塩酸水溶液を用いて混合液の液性をpH4に調整した。この混合液0.5mLにエタノール666μLを加え、さらに120mgの卵黄ホスファチジルコリンと25 mgのPEG-DSPEをエタノール1mLに溶解した溶液167μLを添加した。この懸濁液に蒸留水47 mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5%以下になるよう調整した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、146,000×g、4℃)を行い、上清を除去した。リン酸二水素カリウム水溶液を添加して再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤25)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、164 nmであった。
【0062】
比較例1
215mgのEggPC、61mgのDOTAPおよび54mgのコレステロール(Chol)をクロロホルムに溶解させた後、溶媒を減圧下除去した。得られた薄膜に、FD水溶液(2mg/mL)を5mL添加した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。PBSを添加して、総脂質濃度が30mg/mLになるように調整してリポソーム懸濁液(製剤a)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、134nmであった。
【0063】
比較例2
215mgのEggPC、61mgのDOTAPおよび54mgのCholをクロロホルムに溶解させた後、溶媒を減圧下除去した。得られた薄膜に、FD水溶液(2mg/mL)を5mL添加した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。1471mg/mLの濃度のPEG-DSPEのエタノール溶液を0.05mL添加した後、70℃で5分間加熱し、リポソーム表面をPEGで被覆した。PBSを添加して、総脂質濃度が30mg/mLになるように調整してリポソーム懸濁液(製剤b)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、143nmであった。
【0064】
比較例3
300mgの水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、100mgのCholおよび100mgのPEG-DSPEをクロロホルムに溶解させた後、溶媒を減圧下除去した。得られた薄膜に、FD水溶液(18.8mg/mL)を8mL添加した。この懸濁液を70℃で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤c)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、149nmであった。
【0065】
比較例4
215mgのEggPC、61mgのDOTAPおよび54mgのCholをクロロホルムに溶解させた後、溶媒を減圧下除去した。得られた薄膜に、FD水溶液(2mg/mL)を5mL添加した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤d)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、141nmであった。
【0066】
比較例5
215mgのEggPC、61mgのDOTAPおよび54mgのCholをクロロホルムに溶解させた後、溶媒を減圧下除去した。得られた薄膜に、FD水溶液(2mg/mL)を5mL添加した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。1471mg/mLの濃度のPEG-DSPEのエタノール溶液を0.05mL添加した後、70℃で5分間加熱し、リポソーム表面をPEGで被覆した。得られたリポソーム懸濁液の超遠心(1時間、110,000×g、25℃)を行い、上清を除去した。PBSを添加して総脂質濃度が30mg/mLになるように再懸濁し、リポソーム懸濁液(製剤e)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、139nmであった。
【0067】
比較例6
F-PSをPBSに溶解させて、F-PS溶液(製剤f)を得た。
【0068】
比較例7
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水が30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。この懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した。この懸濁液0.5mLに、F-PSを15mg/mLになるように蒸留水に溶解させた水溶液0.25mLを添加し、総脂質濃度が28mg/mLであるリポソーム懸濁液(製剤g)を得た。
DLSでリポソームの平均粒子径を測定したところ、108nmであった。
次に、試験例により、本発明の効果について説明する。
【0069】
試験例1
実施例1〜5で調製した製剤1〜5および比較例1〜5で調製した製剤a〜eの超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行った。各製剤中のFDおよび超遠心分離後の上清中のFDを定量するために、蛍光マイクロプレートリーダーを使用して、励起波長485nm、蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。また、各製剤のリポソーム中のホスファチジルコリン(PC)を、リン脂質Cテストワコー(和光純薬製)による酵素法により定量した。総脂質濃度はPC濃度から仕込み比で換算した。FDのリポソームへの脂質当たりの封入効率および超遠心分離による内包率を、下記式(1)および(2)で算出した。
脂質当たりの封入効率(mgFD/mg総脂質)=(A1-C1)/B1 (1)
A1:各製剤中のFD量(mg/mL)
B1:各製剤中の総脂質量(mg/mL)
C1:上清中のFD量(mg/mL)
超遠心分離による内包率(%)=[(A1-C1)÷B1]/(D1÷E1)×100 (2)
A1:各製剤中のFD量(mg/mL)
B1:各製剤中の総脂質量(mg/mL)
C1:上清中のFD量(mg/mL)
D1:実施例1〜5または比較例1〜5での仕込みFD量(mg/mL)
E1:実施例1〜5または比較例1〜5での仕込み総脂質量(mg/mL)
結果を第1表および第2表に示す。
【表1】


【表2】

【0070】
第1表は、製剤1〜5のリポソームでは製剤aおよびcと同様に封入効率が高いことを示しているが、仕込みのFD量/総脂質量が考慮されていない。製剤1〜5およびa〜eを調製する際の仕込み量はそれぞれ異なっていて、特に製剤cでは脂質に対して多量のFDを用いて調製されているので、仕込み量を考慮すると、製剤1〜5およびaのリポソームは総脂質量に対してFD量が多いリポソームであると言える。
第2表で示す内包率は、第1表の結果を仕込みの際のFD量/総脂質量で割った値の百分率であり、仕込みの際のFD量/総脂質量が反映されている。第2表は、製剤1〜5およびaのリポソームではFDの内包率が高いのに対し、製剤b〜eのリポソームでは内包率が低いことを示している。これは製剤b〜eのリポソームでは内包されないFree(遊離) FDが多く存在し、調製過程や内包率の分析過程でFree FDが除去されていることを示す。この結果から、製剤b〜eでは仕込んだFDのうちリポソームに封入されたまたはリポソーム表面に穏やかに結合した(静電的に吸着した)FDが少なく、有効利用されるFDが少ないことが分かる。
【0071】
試験例2
実施例1〜5で調製した製剤1〜5および比較例1〜5で調製した製剤a〜eの各0.02mLにPBS 1.98mLを加えて混合し、試料液とした。混合直後、試料液0.5mLをゲルろ過(Sepharose CL-4B、φ10mm×20cm、移動相:PBS、試料添加量:2mL、フラクション採取量:約2mL)した。リポソーム画分とリポソームに内包されていない成分の画分を分離し、溶出液の蛍光強度を試験例1と同様にして測定した。ゲルろ過による内包率を、式(3)で算出した。
ゲルろ過による内包率(%)=[F1/(F1+G1)]×100 (3)
F1:リポソーム画分中のFD量(mg)
G1:リポソームに内包されていない成分の画分中のFD量(mg)
結果を第3表に示す。
【表3】

【0072】
ゲルろ過では、Free FDだけでなく、リポソーム表面に穏やかに結合した(静電的に吸着した)FDも除去される。また、製剤の安定性が悪い場合、内水相に存在するFDの一部が漏出してしまう。第3表は、製剤1〜5、cおよびeのリポソームの内包率が高いことを示している。これはFDがリポソームの内水相に多く存在していることを示している。しかしながら、第3表では仕込みの際のFD量/総脂質量は考慮されておらず、製剤cは脂質に対して多量のFDを用いて調製されているので、当然高い内包率となっている。一方、製剤a、bおよびdは低い値を示しており、FDがリポソーム内にしっかりと封入されておらず、安定性の悪い製剤であると言える。
第2表は製造性を示しており、第3表はリポソームの安定性を示している。第2表および第3表より、製剤aは、製造性はよいが十分に安定ではなく、逆に、製剤cおよびeは安定であるが製造性が悪く、さらに、製剤bおよびdは製造性、安定性ともに悪いことが明らかであり、一方、製剤1〜5は製造性、安定性ともによいことが明らかとなった。これは製剤1〜5ではFDがリポソーム内部にしっかりと内包されている、すなわちFD-カチオン脂質複合体が脂質で被覆できていることを示している。
【0073】
試験例3
実施例6で調製した製剤6の超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行った。製剤6中のF-Insおよび超遠心分離後の上清中のF-Insを定量するために、蛍光マイクロプレートリーダーを使用して、励起波長485nm、蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。また、製剤のリポソーム中のPCは、リン脂質Cテストワコー(和光純薬製)による酵素法により定量した。総脂質濃度はPC濃度から仕込み比で換算した。F-Insのリポソームへの脂質当たりの封入効率および超遠心分離による内包率を、式(4)および(5)で算出した。
脂質当たりの封入効率(mg F-Ins/mg総脂質)=(A2-C2)/B2 (4)
A2:製剤6中のF-Ins量(mg/mL)
B2:製剤6中の総脂質量(mg/mL)
C2:上清中のF-Ins量(mg/mL)
超遠心分離による内包率(%)=[(A2-C2)÷B2]/(D2÷E2)×100 (5)
A2:製剤6中のF-Ins量(mg/mL)
B2:製剤6中の総脂質量(mg/mL)
C2:上清中のF-Ins量(mg/mL)
D2:実施例6での仕込みF-Ins量(mg/mL)
E2:実施例6での仕込み総脂質量(mg/mL)
結果を第4表および第5表に示す。
【表4】


【表5】


第4表は、製剤6では、脂質当たりの仕込みF-Ins量が少ないにも関わらず、F-Insのリポソームの脂質当たりの封入効率が高いことを示している。
超遠心分離による内包率においては、リポソーム表面に穏やかに結合しているF-Insも内包したものとして測定されている。第5表は、製剤6のリポソームでは、製剤1〜5のリポソームの場合と同様に、内包率が高いことを示している。
【0074】
試験例4
実施例6で調製した製剤6(0.02mL)にPBS 1.98mLを加えて混合し、試料液とした。混合直後、試料液0.5mLをゲルろ過(Sepharose CL-4B、φ10mm×20cm、移動相:PBS、試料添加量:2mL、フラクション採取量:約2mL)した。リポソーム画分とリポソームに内包されていない成分の画分を分離し、溶出液の蛍光強度を試験例3と同様にして測定した。ゲルろ過による内包率を、式(6)で算出した。
ゲルろ過による内包率(%)=[F2/(F2+G2)]×100 (6)
F2:リポソーム画分中のF-Ins量(mg)
G2:リポソームに内包されていない成分の画分中のF-Ins量(mg)
結果を第6表に示す。
【表6】


ゲルろ過による内包率は、リポソーム表面に穏やかに結合しているF-Insが除去された後測定されている。第6表は、製剤6のリポソームでは、製剤1〜5の場合と同様に、内包率が高く、F-Insがリポソームの内水相に多く存在していることを示している。すなわち、製剤6は、F-Insがリポソーム内にしっかりと封入され、安定性のよい製剤であると言うことができ、F-Ins-脂質複合体が脂質で被覆できていることを示している。
【0075】
試験例5
実施例7〜13で調製した製剤7〜13の超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行った。各製剤中のF-PSおよび超遠心分離後の上清中のF-PSを定量するために、蛍光マイクロプレートリーダーを使用して、励起波長485nm、蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。また、各製剤のリポソーム中のPCは、リン脂質Cテストワコー(和光純薬製)による酵素法により定量した。総脂質濃度はPC濃度から仕込み比で換算した。F-PSのリポソームへの脂質当たりの封入効率および超遠心分離による内包率を、下記式(7)および(8)で算出した。
脂質当たりの封入効率(mgF-PS/mg総脂質)=(A3-C3)/B3 (7)
A3:各製剤中のF-PS量(mg/mL)
B3:各製剤中の総脂質量(mg/mL)
C3:上清中のF-PS量(mg/mL)
超遠心分離による内包率(%)=[(A3-C3)÷B3]/(D3÷E3)×100 (8)
A3:各製剤中のF-PS量(mg/mL)
B3:各製剤中の総脂質量(mg/mL)
C3:上清中のF-PS量(mg/mL)
D3:実施例7〜13での仕込みF-PS量(mg/mL)
E3:実施例7〜13での仕込み総脂質量(mg/mL)
結果を第7表および第8表に示す。
【表7】


【表8】


第7表は、製剤7〜13ではF-PSの脂質当たりの封入効率が高いことを示している。
超遠心分離による内包率においてはリポソーム表面に穏やかに結合しているF-PSも内包されたものとして測定されている。第8表は、製剤7〜13のリポソームがF-PSの内包率の高いリポソームであることを示している。
【0076】
試験例6
実施例7〜9、11および12で調製した製剤7〜9、11および12の各0.02mLにPBS 1.98mLを加えて混合し、試料液とした。混合直後、試料液0.5mLをゲルろ過(Sepharose CL-4B、φ10mm×20cm、移動相:PBS、試料添加量:2mL、フラクション採取量:約2mL)した。リポソーム画分とリポソームに内包されていない成分の画分を分離し、溶出液の蛍光強度を試験例5と同様にして測定した。ゲルろ過による内包率を、式(9)で算出した。
ゲルろ過による内包率(%)=[F3/(F3+G3)]×100 (9)
F3:リポソーム画分中のF-PS量(mg)
G3:リポソームに内包されていない成分の画分中のF-PS量(mg)
結果を第9表に示す。
【表9】


ゲルろ過による内包率は、リポソーム表面に穏やかに結合しているF-PSが除去された後測定されている。第9表は、製剤7〜9、11および12のリポソームでは、内包率が高く、F-PSがリポソームの内水相に多く存在していることを示している。すなわち、製剤7〜9、11および12は、F-PSがリポソーム内にしっかりと封入され、安定性のよい製剤であると言うことができ、F-PS-脂質複合体が脂質で被覆できていることを示している。
【0077】
試験例7
腫瘍移行性の比較を行った。ヒト腎臓癌細胞Caki-1株の2mm角腫瘍片をBALB/cAJcl-nu系の6週齢ヌードマウス(日本クレア)の右体側部皮下に移植し、移植後20日目に腫瘍体積が102〜349mm3に達したマウスを1群3匹になるように群分けし、実施例7で調製した製剤7および比較例6で調製した製剤fをF-PS 25mg/kgの容量で、注射筒(26G、1mLテルモ製)を用いてマウス尾静脈より投与した。経時的に腫瘍を摘出し、腫瘍をホモジナイズし、ホモジネート中の蛍光強度を試験例5と同様にして測定した。F-PSの腫瘍移行性は、各時点の腫瘍内F-PS量(μg/g)を算出して評価した。
結果を第1図に示す。
第1図は、製剤7を投与したマウスでは製剤fを投与したマウスに比べて腫瘍へのF-PSの移行量が増加していることを示している。
【0078】
試験例8
実施例1で調製した製剤1の電子顕微鏡による形態観察を行った。1%モリブデン酸アンモニウム水溶液(アンモニアを用いてpH 7.3に調製)に、製剤1を総脂質濃度が0.5mg/mLになるように添加した。これをコロジオン膜張付メッシュ(400メッシュ、日新EM)に滴下し、約1分後に余分な水分をろ紙で吸い取った後、乾燥させた。透過電子顕微鏡(H-7000型、日立)を用い、加速電圧75kVで観察した。
その結果、製剤1には、外側を囲む膜とは形状の異なるかたまりを内部にもつ粒子が多く存在していた。すなわち、この結果は、内部の粒子が脂質二重膜により覆われていることを示している。
【0079】
試験例9
実施例1で調製した製剤1並びに比較例1および2で調製した製剤aおよびbをウレタン麻酔下のCD(SD)IGS雄性ラット(体重200〜300g、1群2または3匹)に大腿静脈より投与した(投与量;総脂質10mg/kg相当)。ヘパリン処理したシリンジで経時的に頚静脈より血液を採取し、遠心分離(5分、10,000×g、4℃)後、血漿中のFDの蛍光強度を試験例1と同様に測定し、血漿中のFD濃度を算出した。
結果を第2図に示す。
第2図は、製剤1を投与したラットでは製剤aまたはbを投与したラットに比べて、FDの血漿中濃度推移が高いことを示している。すなわち、FD-脂質複合体が脂質で被覆されることにより血中滞留性が改善されたこと示している。
【0080】
試験例10
実施例7〜13で調製した製剤7〜13および比較例6で調製した製剤fをウレタン麻酔下のCD(SD)IGS雄性ラット(体重200〜300g、1群2匹)に大腿静脈より投与した(投与量;総脂質10mg/kg相当)。ヘパリン処理したシリンジで経時的に頚静脈より血液を採取し、遠心分離(5分、10,000×g、4℃)後、血漿中のF-PSの蛍光強度を試験例5と同様に測定し、血漿中のFD濃度を算出した。
結果を第3図に示す。
第3図は、製剤7〜13を投与したラットでは製剤fを投与したラットに比べて、いずれもFDの血漿中濃度推移が高いことを示している。
【0081】
試験例11
実施例7で調製した製剤7および比較例6〜7で調製した製剤f〜gをBALB/cA Jcl雄性マウス(体重20〜30g、1群2または3匹)に尾静脈より投与した(投与量;総脂質10mg/kg相当)。エーテル麻酔下、ヘパリン処理したシリンジで大腿静脈より血液を採取し、遠心分離(5分、10,000×g、4℃)後、血漿中のF-PSの蛍光強度を試験例5と同様にして測定し、血漿中のF-PS濃度を算出した。
結果を第4図に示す。
第4図は、製剤f〜gを投与したマウスではF-PSが投与後速やかに血漿中から消失したのに対して、製剤7を投与したマウスではF-PSの血漿中濃度推移が高いことを示している。
【0082】
試験例12
実施例13〜18で調製した製剤13〜18の超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行った。各製剤中のF-PSおよび超遠心分離後の上清中のF-PSを定量するために、蛍光マイクロプレートリーダーを使用して、励起波長485nm、蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。F-PSのリポソームへの超遠心分離による内包率を、下記式(10)で算出した。
超遠心分離による内包率(%)=[(A4-B4)]/B4×100 (10)
A4:各製剤中のF-PS量(mg/mL)
B4:上清中のF-PS量(mg/mL)
結果を第10表に示す。
【表10】

【0083】
試験例13
実施例7および14〜18で調製した製剤7および14〜18の各0.08mLにウシ胎児血清(FBS)7.92mLを加えて混合し、試料液とした。混合直後(0時間)と37℃で6〜168時間放置後にサンプリングし、各試料液0.5mLをゲルろ過(Sepharose CL-4B、φ10mm×20cm、移動相:PBS、試料添加量:2mL、フラクション採取量:約2mL)した。リポソーム画分とリポソームに内包されていない成分の画分を分離した。各フラクションのF-PSを定量するために、蛍光マイクロプレートリーダーを使用して、励起波長485nm、蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。リポソームからのF-PS漏出量を、式(11)で算出した。
F-PS漏出量(%)=[B5/(A5+B5)]×100 (11)
A5:リポソーム画分中のF-PS量(mg)
B5:リポソームに内包されていない成分のF-PS量(mg)
結果を第11表に示す。
【表11】


第11表は、製剤7および14〜18中のF-PSがリポソームから経時的に漏出することを示している。すなわち、本発明の方法を用いて微粒子を脂質膜で被覆することにより、体内のターゲット部位に集積した後に脂質膜に内包された薬物などの微粒子を経時的に漏出することで、経時的な薬効の発現が可能である。
【0084】
試験例14
実施例19〜21で調製した製剤19〜21のゲルろ過を行った。リポソーム懸濁液0.5 mLを試料液とし、ゲルろ過カラム(Sepharose CL-4B、φ10 mm×20 cm、移動相:PBS、試料添加量:0.5 mL、フラクション採取量:約1.5mL)に添加した。リポソーム画分と遊離G-CSF画分を分離し、それぞれ遠心エバポレーションにより濃縮した。濃縮したリポソーム画分には蒸留水を加え、全量を2mLとした。このリポソーム懸濁液200μLに10%のラウリル硫酸ナトリウムを含むpH7の50mmol/Lリン酸緩衝液を50μL、蒸留水を150μL加えて攪拌した。さらに2-プロパノール400μLを加えて攪拌し完全にリポソームを破壊した後、下記の移動相Iを800μL加えて混和した。遠心分離(10000×g、5分間)を行い、上清をHPLC分析した。濃縮した遊離G-CSF画分には、2%プルロニックF127(シグマ製)、0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%アセトニトリル水溶液を加え、全量を5mLとしHPLC分析した。
カラム:YMCpack ODS-AM、φ6.0 mm×15 cm
移動相:I 0.5%のTFAを含む50%アセトニトリル
II 0.5%のTFAを含む80%アセトニトリル
分析開始後のII液の割合を、0〜5分は0%、5〜35分で0%〜100%に直線的に増加、35〜45分は100%とした。
検出:280 nm
分析温度:30℃
流速:1 mL/分
注入量:200μL
各リポソームに内包されたG-CSFの内包率を、式(12)で算出した。
内包率(%)=A6/(A6+B6)×100 (12)
A6:リポソーム画分中のG-CSF量(μg)
B6:遊離G-CSF画分中のG-CSF量(μg)
結果を第12表に示す。
【表12】


第12表は、製剤19〜21はゲル濾過で分離される遊離のG-CSFを含まないものであることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明により、安全、簡便かつ効率の良い脂質膜による微粒子の被覆が可能となった。
【符号の説明】
【0086】
第1〜4図に用いた符号は、以下の意味を表す。
第1図
-●-:製剤7投与群
-○-:製剤f投与群
第2図
-●-:製剤1投与群
-◇-:製剤a投与群
-△-:製剤b投与群
第3図
-●-:製剤7投与群
-◇-:製剤8投与群
-◆-:製剤9投与群
-△-:製剤10投与群
-▲-:製剤11投与群
-□-:製剤12投与群
-■-:製剤13投与群
-+-:製剤f投与群
第4図
-●-:製剤7投与群
-+-:製剤f投与群
-◆-:製剤g投与群


【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸、酸性蛋白質及び酸性ペプチドからなる群より選ばれる1以上の薬物と、カチオン脂質を含有するリポソームとの複合体を水中で形成させ、その複合体を極性有機溶媒含有水溶液(液A)に分散させる工程、
脂質を、該極性有機溶媒含有水溶液と同一もしくは異なった極性有機溶媒含有水溶液または極性有機溶媒(液B)に溶解させる工程、
液Aと液Bを混合して液Cとする、ただし、液Cは該複合体が分散できる極性有機溶媒含有水溶液である工程、および
液C中の極性有機溶媒の割合を減少させる工程、
を含む、核酸、酸性蛋白質及び酸性ペプチドからなる群より選ばれる1以上の薬物と、カチオン脂質とを含有する微粒子の製造方法。
【請求項2】
液Cに、少しずつ水を添加するか、液Cを透析するか、又は液Cから極性有機溶媒を留去することより、液C中の極性有機溶媒の割合を減少させる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
液Bに、さらにポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールプロピレングリコール共重合体、及びグリセリンエステルからなる群より選ばれる1以上の水溶性高分子誘導体を溶解させる請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
微粒子が、さらにポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールプロピレングリコール共重合体、及びグリセリンエステルからなる群より選ばれる1以上の水溶性高分子誘導体を含有する微粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
脂質が、リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、及び合成脂質からなる群より選ばれる1以上の脂質である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
微粒子が、平均粒径10〜1000nmの微粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
極性有機溶媒が、アルコール、グリコールおよびポリアルキレングリコールから選ばれる1以上の溶媒である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
極性有機溶媒が、エタノールである請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
極性有機溶媒がエタノールであり、該微粒子が分散し、かつ脂質、ならびにポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールプロピレングリコール共重合体、及びグリセリンエステルからなる群より選ばれる1以上の水溶性高分子誘導体が溶解した極性有機溶媒含有水溶液中のエタノール濃度が60〜90%である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28649(P2013−28649A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247173(P2012−247173)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2010−240(P2010−240)の分割
【原出願日】平成13年10月4日(2001.10.4)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】