説明

脂質関連障害の治療用の組成物および方法

本発明は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法を提供し、この方法は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、異常脂質血症(dyslipidemia)およびアテローム性硬化症などの脂質関連障害の治療に関し、より詳細には、紅潮の副作用が低減した、脂質関連障害の治療用の組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アテローム性硬化症は、脂肪物質、コレステロールおよび他の物質の堆積が、動脈の内壁に蓄積するプロセスである。この蓄積物はプラークと呼ばれる。破裂したプラークは、心臓への血流を阻害し得る(心臓発作)か、または脳への血流を阻害(脳卒中)し得る血餅の形成を引き起こす。心臓発作は、アメリカ合衆国の男性および女性の両方において第1の死因であり、脳卒中は第3の死因である[例えば、非特許文献1を参照されたい]。異常に高レベルの循環脂質は、アテローム性硬化症の発症における主要な素因である。高レベルの低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、高レベルのトリグリセリドまたは低レベルの高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールは、独立して、アテローム性硬化症および関連する病理学の危険因子である。
【0003】
ナイアシン(ニコチン酸、ピリジン−3−カルボン酸、ビタミンB3)は、健康、成長および生殖のためにヒトの身体に必要な水溶性ビタミンである。ナイアシンはまた、最も古くから用いられてきた脂質関連障害の治療用の薬物の1つである。これは、実質上全ての上記に列挙した脂質パラメータに好ましく影響するという点で、価値のある薬物である[非特許文献2]。アテローム性硬化症性の心血管疾患の治療または予防におけるナイアシンの有益性は、6つの主な臨床試験に記載されている[非特許文献3]。ナイアシンのアナログまたは誘導体の構造および合成は、非特許文献4に論じられている。
【0004】
残念ながら、血清脂質レベルを変えるのに必要なナイアシンの用量は極めて多量であり得、これらの用量では、有害な副作用がしばしば伴う。副作用には、胃腸障害、肝毒性、ならびにグルコース代謝および尿酸レベルの乱れが挙げられ得る。しかしながら、ナイアシン療法の最も頻繁かつ際だった副作用は、しばしば皮膚のかゆみ、刺痛および温感を伴う激しい紅潮である。紅潮反応は一般に無害であるが、患者のコンプライアンスを顕著に低減するのに十分不快である。しばしば、30〜40%の患者は、治療開始後数日以内に、ナイアシン治療を受けるのをやめてしまう。
【0005】
治療効力を維持しながら、皮膚紅潮反応を最小化するナイアシンアナログ、投与剤形および治療プロトコールを開発するための努力がなされてきた。しかしながら、今日まで、これらの努力の結果、皮膚紅潮反応を部分的にのみ低減する化合物または方法が得られたにすぎない。さらに、これらの化合物または方法は、他の副作用を生じ得る。例えば、アスピリンなどの化合物は、紅潮を低減することを意図してナイアシンの投与の前に投与され得る。しかしながら、アスピリンは、せいぜい、何人かの患者において紅潮の部分的な低減をもたらすにすぎず、また、アスピリンの胃腸副作用により、その使用は限定される。さらに、ナイアシンの延長または遅延放出処方物が開発され、紅潮の発生率がより低いと報じられている。しかしながら、これらの延長または遅延放出処方物は、紅潮より重篤な副作用である肝毒性をもたらすことが示されている。
【非特許文献1】Nature Medicine,Special Focus on Atherosclerosis,(2002)8:1209−1262
【非特許文献2】Goodman and Gilman’s Pharmacological Basis of Therapeutics,editors Harmon JG and Limbird LE,Chapter 36,Mahley RW and Bersot TP(2001)pages 971−1002
【非特許文献3】Guyton JR、Am J Cardiol(1998)82:18U−23U
【非特許文献4】the Merck Index,An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals,Tenth Edition(1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ナイアシン治療で見られるようなレベルの紅潮を引き起こすことのない抗脂質性の化合物を同定する化合物および方法が必要とされている。本発明は、この必要性を満たし、かつ、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本出願人は、ナイアシン受容体調節因子が細胞内のMAPキナーゼ経路を活性化する能力は、調節因子がインビボで紅潮を引き起こすかどうかの予測因子であることを本明細書に開示する。詳細には、本出願人は、ナイアシンよりも少ない程度で分裂促進因子により活性化されたタンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ)を活性化するナイアシン受容体調節因子が、インビボでナイアシンよりも少ない紅潮を引き起こすことを開示する。インビボ紅潮アッセイは手間がかかり、時間がかかり、かつ高価であるので、MAPキナーゼアッセイなどの有効なインビトロ細胞ベースアッセイを用いてそれらの紅潮能力の調節因子をスクリーニングする能力は、非常に有利である。
【0008】
第1の局面では、本発明は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法を提供する。1つの実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである。他の実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、抗脂肪分解性化合物である。さらなる実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して有意な紅潮効果を有しない。1つの実施態様では、当該当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、ナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差である。他の実施態様では、抗体ベースアッセイが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。さらなる実施態様では、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。
【0009】
第2の局面では、本発明は、ナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法を提供する。1つの実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである。他の実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、抗脂肪分解性化合物である。さらなる実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシンと比較して有意な紅潮効果を有しない。1つの実施態様では、当該当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、ナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差である。他の実施態様では、抗体ベースアッセイが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。さらに実施態様では、ELISAが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。
【0010】
第3の局面では、本発明は、ナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって:a)ナイアシン受容体調節因子を同定すること、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法を提供する。1つの実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである。他の実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、抗脂肪分解性化合物である。さらなる実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシンと比較して有意な紅潮効果を有しない。1つの実施態様では、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、ナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差である。他の実施態様では、抗体ベースアッセイが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。さらなる実施態様では、ELISAが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。
【0011】
第4の局面では、本発明は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子であって、当該調節因子が、第1の局面の方法に従って、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することを示す調節因子であると同定される、調節因子を提供する。1つの実施態様では、当該調節因子は、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである。他の実施態様では、当該調節因子は、抗脂肪分解性化合物である。さらなる実施態様では、当該調節因子は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して有意な紅潮効果を有しない。
【0012】
第5の局面では、本発明は、組成物の製造方法であって、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定すること、次いで、当該調節因子を担体と混合することを含み、当該調節因子が、第1の局面の方法により同定される、方法を提供する。
【0013】
第6の局面では、本発明は、第4の局面の調節因子を含むか、第4の局面の調節因子から実質的になるか、または第4の局面の調節因子からなる医薬組成物を提供する。
【0014】
第7の局面では、本発明は、被験体において脂質関連障害を予防または治療する方法であって、当該被験体に、有効な脂質改変量の、第1の局面の方法により同定される、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む、方法を提供する。1つの実施態様では、当該脂質関連障害は、異常脂質血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、アテローム性硬化症、メタボリック・シンドローム、心疾患、卒中または末梢血管疾患である。他の実施態様では、当該脂質関連障害は、異常脂質血症である。さらなる実施態様では、当該脂質関連障害はアテローム性硬化症である。1つの実施態様では、第7の局面の方法は、前記被験体に、有効量の肥満または糖尿病の治療に使用される薬剤を、有効量の、第1の局面の方法により同定される、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子と組み合わせて投与することをさらに含む。1つの実施態様では、被験体は哺乳動物であり、他の実施態様では、被験体はヒトである。
【0015】
第8の局面では、本発明は、治療を必要とする被験体においてLDLレベルを低減する方法であって、当該被験体に、有効量の第4の局面の調節因子を投与することを含む、方法を提供する。
【0016】
第9の局面では、本発明は、治療を必要とする被験体においてトリグリセリドレベルを低減する方法であって、当該被験体に、有効量の第4の局面の調節因子を投与することを含む、方法を提供する。
【0017】
第10の局面では、本発明は、治療を必要とする被験体においてHDLレベルを増加させる方法であって、当該被験体に、有効量の第4の局面の調節因子を投与することを含む、方法を提供する。
【0018】
第11の局面では、本発明は、脂質改変剤として用いるための第4の局面の調節因子を含む医薬の製造方法を提供する。さらに、第11の局面では、本発明は、脂質関連障害の治療に用いるための第4の局面の調節因子を含む医薬の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(詳細な説明)
本出願人は、ナイアシン受容体調節因子が細胞内でMAPキナーゼ経路を活性化する能力は、調節因子がインビボで紅潮を誘発する能力に相関することを見出した。本明細書中に示すように、ナイアシンはヒトナイアシン受容体に結合し、これらの細胞内でMAPキナーゼを活性化する(実施例1および図1を参照されたい)。MAPキナーゼ活性化は、2つのタイプの抗体ベースアッセイ、ELISAおよびWesternブロットアッセイで示された。本明細書中に開示されるように、インビボで紅潮を引き起こすことが知られているナイアシン受容体調節因子は、インビボで紅潮を引き起こさなかった調節因子と比較して、より高いレベルのMAPキナーゼ活性化を有することが示された(実施例2ならびに図3および4を参照されたい)。従って、本出願人は、インビボで紅潮を引き起こす能力が未知のナイアシン受容体調節因子を選択し、これらの調節因子が、ヒトまたはマウスナイアシン受容体を発現する細胞においてMAPキナーゼを活性化する能力を試験した(実施例3を参照されたい)。図5は、代表的な調節因子である化合物11を示すが、これは、cAMPアッセイに基づいて選択された。次いで、この調節因子を、MAPキナーゼELISAアッセイで試験し、ナイアシンと比較してMAPキナーゼ活性化のレベルが低いことを示した(上部パネルを参照されたい)。次いで、化合物11がインビボで紅潮を引き起こす能力を試験した。図5に示すように、右下パネルでは、化合物11は、マウスにおいてインビボでいかなる有意な紅潮も引き起こさなかった。さらに、本明細書中に開示されるように、化合物11は抗脂肪分解性(左下パネルを参照されたい)である。本出願人はまたMAPキナーゼアッセイにおいてナイアシンのように挙動するナイアシンアナログは、本発明の方法においてナイアシンの代わりに用いられ得ることを本明細書に開示する。そのような化合物である化合物12を、図6に示す。
【0020】
ナイアシンは何年にもわたって脂質関連障害の療法に用いられてきたが、それを介してナイアシンが作用する受容体は、最近まで知られていなかった。最初に、ナイアシンは特異的GPCRを介して作用することが提唱された(Lorenzen A,et al.(2001)Molecular Pharmacology 59:349−357)。結局、HM74aと呼ばれる公知のオーファンGPCRが、ニコチン酸受容体であると同定された(例えば、米国特許出願第10/314,048号を参照されたい)。ヒトナイアシン受容体のヌクレオチド配列は、GenBank受託番号NM_177551および本明細書に配列番号1として見出され得る。
【0021】
一般に、リガンドがその受容体に結合するとき(しばしば、受容体の活性化と呼ばれる)、細胞内領域と細胞内G−タンパク質との間の結合を促進する受容体のコンフォメーションの変化が存在する。他のGタンパク質が存在するが、現在、Gq、Gs、Gi、GzおよびGoが、同定されているGタンパク質である。乱交雑のGタンパク質も存在し、これらは、いくつかの分類のGPCRを、Gα15またはGα16などのホスホリパーゼC経路に結合させる[Offermanns & Simon,J Biol Chem(1995)270:15175−80]か、または多数の異なるGPCRを、同じ経路に結合するよう設計されたキメラGタンパク質[Milligan & Rees,Trends in Pharmaceutical Sciences(1999)20:118−24]であるようである。G−タンパク質に結合したリガンド活性化GPCRは、シグナル伝達と呼ばれるシグナリングカスケードプロセスを開始する。正常な条件下では、シグナル伝達は、最終的に、細胞の活性化または細胞の阻害をもたらす。
【0022】
ナイアシン受容体は、GiGタンパク質に結合することが知られているので、ナイアシン受容体の拮抗は、細胞内cAMPのレベルの低減をもたらす。脂質細胞では、cAMPの低減は、ホルモン感受性リパーゼ活性の低減および遊離脂肪酸放出の低減をもたらす。遊離脂肪酸の低減の結果は2倍である。まず、これは、最終的にLDL−コレステロールを低減し、HDL−コレステロールレベルを上昇させるが、これらは独立して、アテローム性硬化症および関連障害の危険因子である。次に、これはインスリン抵抗性または2型糖尿病を有する個体においてインスリン感受性の増加をもたらす。残念ながら、ナイアシンの治療薬としての使用は、紅潮などの多くの関連する有害な副作用により、部分的に限定される。
【0023】
本出願人は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する化合物を、当該化合物のMAPキナーゼ活性を決定することによって同定する方法であって、当該化合物により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することが、当該化合物がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することを示す方法を、本明細書中に開示する。例えば、本出願人は、化合物のMAPキナーゼ活性を決定することにより、当該化合物が、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するかどうかを予測する方法であって、当該化合物により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該化合物がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法を開示する。
【0024】
本発明は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法を提供する。1つの実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである。他の実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、抗脂肪分解性化合物である。さらなる実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して有意な紅潮効果を有しない。1つの実施態様では、当該当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、ナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差である。他の実施態様では、抗体ベースアッセイが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。さらなる実施態様では、ELISAが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。
【0025】
本発明はまた、ナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法を提供する。1つの実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである。他の実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、抗脂肪分解性化合物である。さらなる実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシンと比較して有意な紅潮効果を有しない。1つの実施態様では、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、ナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差である。他の実施態様では、抗体ベースアッセイが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。さらなる実施態様では、ELISAが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。
【0026】
本出願人は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する化合物を同定する方法であって:a)ナイアシン受容体調節因子を同定すること、およびb)当該化合物のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該化合物により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該化合物がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法を、本明細書に開示する。例えば、本出願人は、化合物が、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するかどうかを予測する方法であって、a)ナイアシン受容体調節因子を同定すること、およびb)当該化合物のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該化合物により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該化合物がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法を開示する。本出願人は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を、a)ナイアシン受容体調節因子を同定すること、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することにより同定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法を開示する。
【0027】
本発明は、さらに、ナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって、a)ナイアシン受容体調節因子を同定すること、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法を提供する。1つの実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである。他の実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、抗脂肪分解性化合物である。さらなる実施態様では、当該ナイアシン受容体調節因子は、ナイアシンと比較して有意な紅潮効果を有しない。1つの実施態様では、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、ナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差である。他の実施態様では、抗体ベースアッセイが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。さらなる実施態様では、ELISAが、当該MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられる。
【0028】
本明細書で用いるように、用語「紅潮」は、検出可能な皮膚血管拡張反応を意味する。例えば、紅潮は、ナイアシンまたはナイアシンアナログなどのナイアシン受容体アゴニストの投与により引き起こされ得る。ナイアシンが誘発する紅潮は、プロスタグランジンD2(PGD)などのプロスタグランジンにより媒介されると考えられている。紅潮反応は、皮膚の発赤により特徴付けられ、他の症候、例えば、皮膚のかゆみ、刺痛、温感または頭痛も含み得る。紅潮反応は、皮膚上のどこでも、例えば、顔、首または体躯上で起こり得、1箇所または1箇所以上で起こり得る。ヒトにおいて、紅潮反応は、数分〜数時間にわたって続き得る。一般に、ヒトでは、十分な用量のナイアシンまたはナイアシンアナログの経口投与により引き起こされた紅潮反応は、20分〜8時間以上続き得る。マウスまたはラットでは、紅潮反応は、通常、ナイアシンの投与(注射による)約3分後に最大値に達し、約30分後に顕著に低減する。
【0029】
検出可能な紅潮反応を生じるのに必要とされるナイアシンまたはナイアシンアナログの量は、いくつかの変数、例えば、化合物の処方および個々の被験体に依存する。特に、検出可能な紅潮反応を生じるのに必要とされるナイアシンまたはナイアシンアナログの量は、例えば、個体の体重、個体の遺伝的体質または一般的な健康に依存し得る。ヒトにおいて紅潮反応を引き起こし得るナイアシンまたはナイアシンアナログの量は、アテローム性硬化症関連血清脂質の量を低減するのに必要とされる量よりも低く、例えば、1日当たり少なくとも175mg、1日当たり少なくとも200mg、1日当たり少なくとも250mg、1日当たり少なくとも500mg、1日当たり少なくとも750mg、1日当たり少なくとも1g、1日当たり少なくとも1.5g、1日当たり少なくとも2g、1日当たり少なくとも2.5g、1日当たり少なくとも3g、1日当たり少なくとも3.5g、1日当たり少なくとも4g、1日当たり少なくとも4.5g、1日当たり少なくとも5g、1日当たり少なくとも5.5g、1日当たり少なくとも6g、1日当たり少なくとも6.5g、1日当たり少なくとも7g、1日当たり少なくとも7.5g、1日当たり少なくとも8g以上を含み得る。例えば、1日当たり500mg〜2g以上のナイアシンは、ほとんどのヒトにおいて紅潮反応を引き起こし得る。
【0030】
本明細書で用いる「ナイアシン」は、以下の化学物質形態を有するニコチン酸を意味する:
【0031】
【化1】

用語ナイアシンはまた、ナイアシンの遊離酸形態と同じ特性を有する、ナイアシンの医薬上許容され得る塩および溶媒和物を含む。当業者に理解されるように、ナイアシンは、その薬理学的特性が改変されるように、他の化合物とともに製剤化され得る。例えば、ナイアシンは、ナイアシンに添加した他の化合物に依存して、即時放出(IR)剤形として、あるいは延長または遅延放出(SR)剤形として製剤化され得る。
【0032】
延長または遅延放出処方物は、錠剤またはカプセルから活性成分をゆっくり放出するように設計され、従来のまたは即時の投与形態に関連する代表的な投薬頻度と比較して、投薬頻度を低減することが可能になる。遅い薬物放出は、薬物の血中レベルを低減および延長するように設計されるので、従来の延長または即時放出のナイアシン製剤に関連する紅潮の副作用を最小限にするか低減する。しかしながら、脂質関連障害を有する患者における研究により、いくつかの延長または遅延放出製剤は、即時放出ナイアシンと同程度の有利な脂質変化効果を有さず、実際には、即時放出製剤と比較してより悪い副作用プロファイルを有することが示されている。例えば、延長または遅延放出ナイアシン処方物は、Henken et al.:Am JMed,91:1991(1991)およびDalton et al.:Am JMed,93:102(1992)に記載のように、より高い発生率の肝臓毒性を引き起こすことが知られている。Nicobid(登録商標)カプセル(Rhone−Poulenc Rorer)、Enduracin(登録商標)(Innovite Corporation)、ならびに米国特許第5,126,145号および同第5,268,181(2つの異なるタイプのヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび疎水性成分を含む遅延放出ナイアシン処方物を記載する)に記載された処方物などのナイアシンの延長または遅延放出処方物が開発されている。
【0033】
本明細書で用いるように、「ナイアシンアナログ」は、ナイアシンと同様のMAPキナーゼプロファイルおよび紅潮効果を有する、ナイアシンと構造的または機能的に関連する化合物を意味する。ナイアシンアナログの例は、化合物12(図6を参照されたい)である。この化合物は、ナイアシンに構造的に関連するが、テトラゾール基を含むことによりナイアシンと異なる。さらに、この化合物は、ナイアシン受容体に結合するので、ナイアシンと機能的に関連する。さらに、この化合物は、ナイアシンと同様のMAPキナーゼプロファイル(図6を参照されたい)および紅潮効果を有する。従って、この化合物は、ナイアシンの代わりに、参照として本発明の方法において用いられ得る。他のこのようなナイアシンアナログは、当業者に明らかとなろう。
【0034】
いくつかのナイアシンの構造的アナログが当該分野で公知である。いくつかの実施態様では、ナイアシンの構造的アナログは、少なくとも1つのカルボキシル、テトラゾリルなどの酸性官能基を含む。いくつかの実施態様では、ナイアシンの構造的アナログは、ピリジニル、ピラゾリル、イソオキサゾリルなどに存在する窒素などの、少なくとも1つの窒素環原子を含む。いくつかの実施態様では、ナイアシンの構造的アナログは、少なくとも1つの酸性官能基および少なくとも1つの窒素環原子を含む。これらの基は、インビボで変換されて(例えば、血中で加水分解されることにより)酸性官能基または環窒素を生じるプロドラッグ基を含む。詳細な議論は、T.Higuchi and V.Stella,“Prodrugs as Novel Delivery Systems,” Vol.14 of the A.C.S.Symposium Seriesおよび“Bioreversible Carriers in Drug Design,”ed.Edward B.Roche,American Drug Association and Pergamon Press,1987(これらは両方とも参照として本明細書中に援用される)に提供される。
【0035】
ナイアシンアナログはナイアシンに機能的に関連し得、例えば、ナイアシンアナログは、特異的にナイアシン受容体に結合する、またはナイアシン受容体での結合に応答して細胞内シグナルを開始するなどのナイアシンの機能を有し得る。例えば、ナイアシンアナログは、ナイアシン受容体アゴニストであり得る。
【0036】
ナイアシンのいくつかのアナログまたは誘導体は当該分野で公知であり、例えば、Merck Index,An Encyclopedia of Chemical Substances,Drugs,and Biologicals,Tenth Edition(1983)に見出され得る。ナイアシンについて上記したように、ナイアシンアナログは、異なる方法で製剤化されて、それらの薬理学的特性を改変され得る。
【0037】
「ナイアシン受容体調節因子」は、例えば、ナイアシン受容体に結合したときに細胞内応答を調節または変化するリガンドまたは化合物である材料である。細胞内応答は、例えば、膜へのGTP結合の変化またはcAMPなどの第2のメッセンジャーのレベルの調節であり得る。
【0038】
「アゴニスト」は、例えば、受容体に結合したときに細胞内応答を活性化するリガンドまたは化合物である材料である。細胞内応答は、例えば、膜へのGTP結合の増強またはcAMPなどの第2のメッセンジャーのレベルの調節であり得る。いくつかの実施態様では、アゴニストは、受容体に結合したときに細胞内応答を活性化することが以前に知られていなかった材料である(例えば、膜へのGTPγS結合を増強するか、または細胞内cAMPレベルを低下させる)。
【0039】
「部分アゴニスト」は、例えば、受容体に結合したときに、細胞内応答を、全アゴニストよりも程度または範囲が低くではあるが活性化するリガンドまたは化合物である材料である。
【0040】
本明細書で用いるように、「ナイアシン受容体部分アゴニスト」は、ナイアシン受容体に結合したときに細胞内応答を活性化するが、ナイアシン受容体において、全アゴニストであるナイアシンよりも程度または範囲が低い材料である。技術的には、部分アゴニストとの用語は、相対的な用語であるが、これは、部分アゴニストが、全アゴニストに対して部分応答を生じるからである。新規化合物は、時間と共に発見されるので、全アゴニストは変化し得、以前の全アゴニストが部分アゴニストになり得る。明確性のため、本明細書で用いるナイアシン受容体部分アゴニストは、全アゴニストとしてのナイアシンに対するものである。ナイアシン受容体部分アゴニストは、ナイアシンと比較して検出可能なより低い程度の細胞内応答の活性化を有する(すなわち、ナイアシン受容体部分アゴニストは、最大応答未満の応答を誘発する)。従って、ナイアシン受容体部分アゴニストは、ナイアシンよりも効力が低い。例えば、ナイアシン受容体部分アゴニストは、ナイアシンと比較して90%以下の効力、ナイアシンと比較して85%以下の効力、ナイアシンと比較して80%以下の効力、ナイアシンと比較して75%以下の効力、ナイアシンと比較して70%以下の効力、ナイアシンと比較して65%以下の効力、ナイアシンと比較して60%以下の効力、ナイアシンと比較して55%以下の効力、ナイアシンと比較して50%以下の効力、ナイアシンと比較して45%以下の効力、ナイアシンと比較して40%以下の効力、ナイアシンと比較して35%以下の効力、ナイアシンと比較して30%以下の効力、ナイアシンと比較して25%以下の効力、ナイアシンと比較して20%以下の効力、ナイアシンと比較して15%以下の効力、またはナイアシンと比較して10%の効力を有する。例えば、ナイアシン受容体部分アゴニストは、ナイアシンと比較して10%〜90%の効力、ナイアシンと比較して20%〜80%の効力、ナイアシンと比較して30%〜70%の効力、ナイアシンと比較して40%〜60%の効力、またはナイアシンと比較して45%〜55%の効力を有し得る。測定した応答の大きさである効力は、定義された応答を誘発するのに要する化合物の量である効力により異なる。従って、ナイアシン受容体部分アゴニストは、アゴニスト、アンタゴニストまたは逆アゴニストと比較してより強いか、弱いか、または等しくあり得る。
【0041】
ナイアシン受容体部分アゴニストは、当該分野で周知のアッセイを用いて決定され得る。例えば、ナイアシン受容体部分アゴニストは、cAMPアッセイを用いて決定され得る。
【0042】
ナイアシン受容体に関しては、いくつかのナイアシン受容体配列が当該分野で公知である。例えば、ヒトナイアシン受容体ヌクレオチド配列は、GenBank 受託番号NM_177551として見出すことができ、本明細書に配列番号1として列挙されている。また、ナイアシン受容体への限られた改変は、ナイアシン受容体がナイアシンに結合する能力を損なうことなくなされ得ることが理解される。例えば、ナイアシン受容体は、他のナイアシン受容体ポリペプチド、例えば、ヒトナイアシン受容体ポリペプチド(配列番号2)の種ホモログを含むことが意図される。ヒトナイアシン受容体の種ホモログの配列は、データベース中に存在し、例えば、ナイアシン受容体のラットホモログは、GenBankの受託番号BAC58009に見出し得る。さらに、ナイアシン受容体は、全ナイアシン受容体ポリペプチドのナイアシン受容体機能を実質的に保持するナイアシン受容体のスプライス変異体およびアレル変異体を含む。
【0043】
さらに、ナイアシン受容体は、変異受容体が野生型ナイアシン受容体ポリペプチドのナイアシン受容体機能を実質的に保持する限り、野生型受容体と比較してアミノ酸変化、例えば、保存アミノ酸変化を含み得る。保存および非保存アミノ酸の変化、ギャップおよびアミノ酸配列への挿入は、デフォルトセッティングを用いるBasic Local Alignment Search Tool(「BLAST」)などの利用可能なアルゴリズムおよびプログラムを用いて参照配列と比較され得る(例えば、Karlin and Altschul,Proc Natl Acad Sci USA(1990)87:2264−8;Altschul et al.,J MoI Biol(1990)215:403−410;Altschul et al.,Nature Genetics(1993)3:266−72;およびAltschul et al.,Nucleic Acids Res(1997)25:3389−3402を参照されたい)。
【0044】
ナイアシン受容体は、ナイアシンに特異的に結合する。特異的に結合するとの用語は、ポリペプチドが、非関連ポリペプチドへの親和性よりもある程度高い標的ポリペプチドへの親和性を意味することを意図する。受容体結合を検出または測定するいくつかの方法が当該分野で周知であり、例えば、放射性リガンド結合アッセイ、またはFLIPRアッセイなどの読み出し機能を用いるアッセイが挙げられる。
【0045】
実質的に全ポリペプチドのナイアシン受容体機能を保持するナイアシン受容体のフラグメントは、全ポリペプチドの代わりに用いられ得ることが理解される。例えば、ナイアシン受容体のリガンド結合ドメインは、部分アゴニストのナイアシン受容体への結合を決定するために、全ポリペプチドの代わりに用いられ得る。
【0046】
「低減した」は、ある程度の量または特定の活性の低減を意味し、用語「低減した(decreased)」、「低減すること(diminishing)」、「低減すること(lowering)」および「低減すること(lessening)」と同義に用いられる。紅潮の量に関しては、低減した紅潮効果は、例えば、紅潮の重篤度の低減および/または他に起こる紅潮現象よりもより少ない紅潮(紅潮の発生率の低減)であり得る。例えば、紅潮の重篤度および/または紅潮の発生率は、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%、低減され得る。さらに、紅潮は、100%低減、すなわち、除去され得、その結果、有意な紅潮は検出可能でなくなる。1つの実施態様では、紅潮の強度は、少なくとも約80%低減される。他の実施態様では、紅潮の低減は、紅潮の完全な低減、すなわち除去である。
【0047】
いくつかの方法が、紅潮を検出および定量するのに用いられ得る。例えば、紅潮は、視覚的に検出および定量され得る。紅潮を検出および定量する1つの方法は、例えば、Pirimed PimII Laser Doplerを用いるLaser Dopplerによる方法である。さらに、紅潮および刺痛または温感などの紅潮に関連し得る症候の重篤度を評価するために、被験体の研究を行い得る。紅潮を検出および定量するための他の方法は、血または尿などの被験体由来の生物学的サンプル中のプロスタグランジンD(PGD)またはプロスタグランジンF(PGF)のレベルを測定することを含むことができる。さらに、例えば、PGD−Mのレベル、PGDの主要な尿代謝物は、被験体の尿から測定され得る。プロスタグランジンレベルを測定するためのアッセイは、市販で入手可能であり、例えば、PGDの酵素免疫アッセイは、Cayman Chemical(Ann Arbor,MI)から入手可能である。
【0048】
1つの実施態様では、本発明の方法では、化合物または調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、ナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差である。図4に示すように、ナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差のMAPキナーゼ活性の低減は、右の矢印により示される全ての公知の非紅潮化合物を同定した。当業者に理解されるように、異なるカットオフ値は、当業者の必要に応じて選択され得る。例えば、当業者が、あらゆる非紅潮化合物を捕捉することを確認したい場合、いくつかのものはインビボで試験した場合に最終的に低減した紅潮効果を有しないであろうとの考えのもとでより多くの化合物を同定する立場で、誤りを選択し得る。この場合、当業者は、ナイアシンまたはナイアシンアナログからの2標準偏差を超えて、例えば、1.5標準偏差超のナイアシンまたはナイアシンアナログに、カットオフを設定し得るであろう。逆に、当業者が紅潮活性を有するいかなる化合物も避けたい場合は、カットオフはナイアシンまたはナイアシンアナログからの2標準偏差未満、例えば、例えば、ナイアシンまたはナイアシンアナログの2.5標準偏差未満に設定されるであろう。本発明の異なる実施態様では、調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、ナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルの少なくとも1、1.2、1.4、1.6、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8または5.0標準偏差未満である。カットオフ値はまた、範囲として表すこともでき、例えば、調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減は、例えば、ナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルの1と少なくとも4との間、2と少なくとも3との間、または2.5と少なくとも3との間の標準偏差未満であり得る。
【0049】
MAPキナーゼ活性を決定するための任意のアッセイが、本発明の方法において用いられ得る。例えば、MAPキナーゼの基質であるミレイン(mylein)などの塩基性タンパク質を用いるアッセイなどの基質活性アッセイを、本発明の方法において用いられ得る。1つの実施態様では、MAPキナーゼ活性を決定するのに、抗体ベースアッセイが用いられ得る。このようなアッセイは当該分野で周知であり、例えば、Westernブロット、ELISA、免疫沈降、蛍光分極アッセイ(FPA)、Biacoreアッセイなどが挙げられ得る。1つの実施態様では、MAPキナーゼ活性を決定するのに用いられるアッセイは、ELISAである。1つの実施態様では、本発明の方法においてMAPキナーゼ活性を決定するのに用いられるアッセイは、ヒトナイアシン受容体を用いる。
【0050】
本発明はまた、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子であって、当該調節因子が、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含む方法であって、ナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性が低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法に従って、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子であると同定される、調節因子を提供する。例えば、本発明は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子であって、当該調節因子が、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、ナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性が低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法に従って、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子であると同定される、調節因子を提供する。さらに、本発明は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子であって、当該調節因子が、a)ナイアシン受容体調節因子を同定すること、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法に従って、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子であると同定される、調節因子を開示する。
【0051】
1つの実施態様では、当該調節因子は、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである。他の実施態様では、当該調節因子は、抗脂肪分解性化合物である。さらなる実施態様では、当該調節因子は、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して有意な紅潮効果を有しない。
【0052】
本発明は、組成物の製造方法であって、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定すること、および次いで、当該調節因子を担体と混合することを含む方法をさらに提供するが、ここで、当該調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含む方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法に従って、同定される。さらに、本発明は、組成物の製造方法であって、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定すること、および、次いで、当該調節因子を担体と混合することを含む方法を開示するが、ここで、当該調節因子は、a)ナイアシン受容体調節因子を同定すること、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含む方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することが、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することを示す方法に従って、同定される。
【0053】
本発明はまた、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を含むか、当該調節因子から実質的になるか、または当該調節因子からなる医薬組成物を提供するが、ここで、当該調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法により、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子であると同定される。本発明はまた、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を含むか、当該調節因子から実質的になるか、または当該調節因子からなる医薬組成物を開示するが、当該調節因子は、a)ナイアシン受容体調節因子を同定する、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法により、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子であると同定される。
【0054】
本明細書で用いる「組成物」は、少なくとも1つの成分を含む材料を意味する。医薬組成物は、組成物の1つの例である。医薬組成物は、少なくとも1つの活性成分を含む組成物を意味し、ここで、当該組成物は、被験体(例えば、ヒト)における特定の有効な結果の研究に従う。当業者は、活性成分が、当業者の必要性に基づいて望まれる有効な結果を有するかどうかを決定するのに適した技術を理解し評価するであろう。
【0055】
本明細書に記載された組成物は、医薬上または生理学的に許容され得る担体を含み得る。適切な医薬上許容され得る担体は、当業者が入手可能である;例えば、Remington:The Science and Practice or Pharmacy,20th Edition,2000,Lippincott,Williams & Wilkons,(Gennaro et al.,eds.)を参照されたい。本発明の化合物は、予防または治療に用いるため、未加工のまたは純粋な化学物質として投与されるのに代替で使用され得るが、医薬処方物または組成物として化合物または活性成分を提供することもまた望ましくあり得る。
【0056】
従って、本発明は、本発明の化合物あるいはその医薬上許容され得る塩または誘導体を、1つ以上のその医薬上許容され得る担体および/または予防の成分と共に含む医薬処方物をさらに提供する。担体は、処方物の他の成分と適合性であるという意味で「許容され得」、レシピエントに過度に有害ではない。
【0057】
医薬処方物には、経口投与、経直腸投与、経鼻投与、局所(経頬および舌下が挙げられる)投与、経膣投与または非経口(筋肉内、皮下および静脈内が挙げられる)投与に適切なもの、あるいは吸入または送気による投与に適切な剤形のものが挙げられる。
【0058】
本発明の化合物は、従来のアジュバント、担体または希釈剤と共に、医薬処方物およびその単位用量の剤形にされ得、当該剤形においては、錠剤または充填したカプセルなどの固体として用いられ得るか、あるいは、溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル、ゲルなどの液体または当該液体を充填したカプセルとして用いることができ、全て、経口用途、直腸投与のための坐剤の剤形、局所用途のための液体、ゲル、ローションまたは軟膏の剤形、あるいは非経口(皮下を含む)用途のための無菌の注射可能な溶液の剤形に用いられ得る。このような医薬組成物およびその単位投与剤形は、従来の成分を、従来の割合で、追加の活性化合物または主剤と共にまたはこれらを非含有で含むことができ、このような単位投与剤形は、用いられる意図される毎日の投与範囲に適合する、任意の適切な有効量の活性成分を含み得る。
【0059】
本発明の化合物から医薬組成物を製造するには、医薬上許容され得る担体は、固体または液体のいずれでもあり得る。固体剤形の処方物には、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェ、坐剤および分散可能な顆粒が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材料としても作用し得る1つ以上の物質であり得る。粉末においては、担体は、微細に分割された活性成分を有する混合物中の微細に分割された固体であり得る。錠剤においては、活性成分は、適切な割合の必要な結合能を有する担体と混合し、所望の形状およびサイズに圧縮することが可能である。
【0060】
粉末および錠剤は、種々の百分率の量の活性化合物を含むことが可能である。粉末または錠剤中の代表的な量は、0.5〜約90%の活性化合物を含むことが可能である;しかしながら、当業者は、この範囲外の量がいつ必要とされるかを知るであろう。粉末および錠剤に適した担体は、カルボン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。用語「製剤」は、活性化合物と、担体としてカプセルを提供するカプセル化材料との処方物(ここで、担体を有するかまたは有しない活性成分は、担体に包囲されるので、担体と関連する)を含むことを意図する。同様に、カシェおよびロゼンジも含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェおよびロゼンジは、経口投与に適した固体製剤として用いられ得る。
【0061】
坐剤を製造するには、まず、脂肪酸グリセリドの混合物またはカカオバターなどの低融点ワックスが溶融され得、そして、撹拌などにより、活性成分が、その中に均一に分散され得る。次いで、溶融した均一の混合物は、簡便な大きさの型に注ぎ、冷却することによって固化され得る。経膣投与に適した処方物は、活性成分に加えて適切な当該分野で公知の担体などをさらに含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレーとして提供され得る。
【0062】
液体剤形の製剤には、溶液、懸濁液およびエマルジョン、例えば、水溶液または水−プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射液製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として処方され得る。注射可能な製剤、例えば、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液は、当該分野で用いられる適切な分散剤または湿潤剤に従って製剤化され得る。無菌の注射可能な製剤はまた、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の無菌で注射可能な溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール溶液であり得る。許容され得るビヒクルおよび溶媒のなかでも、用いられ得るのは、水、リンガー溶液および等張性の塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の硬化油が、溶媒または懸濁媒体として通常用いられる。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドなどの任意のブランドの硬化油を用いられ得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射可能な製剤における使用を見出される。
【0063】
従って、本発明の組成物は、非経口投与(すなわち、注射、例えば、ボーラス注射または連続灌流による)用に製剤化され得、アンプル、予め充填したシリンジ、少量灌流または複数回投与容器中の単位投与剤形で、さらなる追加の保存剤と共に提供され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの剤形をとり得、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの調合剤を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、無菌のパイロジェン非含有水)を用いて構成するための、無菌の固体または溶液からの凍結乾燥物の無菌単離により得られる粉末剤形であり得る。
【0064】
経口用途に適した水溶液は、活性成分を水に溶解し、所望であれば適切な着色剤、香料、安定化剤および濃厚化剤を添加することにより調製され得る。経口用途に適した水性懸濁液は、微細に分割された活性成分を、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの粘性の材料、あるいは他の周知の懸濁剤と共に水に分散させることにより、調製され得る。また、使用の直前に経口投与のために液体剤形の製剤に変換されることを意図した固体剤形の製剤も含まれる。このような液体剤形には、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香料、安定化剤、緩衝液、人工および天然甘味料、分散剤、濃厚化剤、可溶化剤などを含み得る。
【0065】
皮膚への局所投与のために、本発明の組成物は、軟膏、クリームまたはローション、あるいは経皮パッチとして製剤化することができる、。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性基剤に適切な濃厚化剤および/またはゲル化剤を添加することにより製剤化され得る。ローションは、水性または油性基剤を用いて製剤化され得、一般に、1つ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、濃厚化剤または着色剤を含み得る。
【0066】
口腔内の局所投与に適した処方物には、味付けした基剤(通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカント)中に活性剤を含む、ロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含む、トローチ;および適切な液体担体中に活性成分を含む、マウスウォッシュが挙げられる。
【0067】
溶液または懸濁液は、通常、例えば、ドロッパー、ピペットまたはスプレーを用いることにより鼻腔に直接適用され得る。処方物は、単回または複数回投与剤形で提供され得る。ドロッパーまたはピペットの後者の場合、これは、適切な所定の容積の溶液または懸濁液を個別に投与することにより達成され得る。スプレーの場合、これは例えば、計量噴霧スプレーポンプにより達成され得る。気道への投与はまた、活性成分が適切な推進剤と共に圧縮容器に入れられたエアロゾル処方物によっても達成され得る。医薬組成物が、エアロゾル、例えば、経鼻エアロゾルまたは吸入として投与される場合、投与は、例えば、スプレー、ネブライザー、ポンプネブライザー、吸入装置、計量インヘラーまたは乾燥粉末インヘラーを用いて行われ得る。本発明の組成物のエアロゾルとしての投与のための医薬剤形は、当業者に周知のプロセスにより製造され得る。それらの調製物、例えば、本発明の化合物の水、水/アルコール混合物または適切な生理食塩水溶液中の溶液または分散物には、通常の添加剤、例えば、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増加させるための吸収促進剤、可溶化剤、分散剤など、ならびに、適切であれば、通常の推進剤(例えば、二酸化炭素、CFC(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンまたはジクロロテトラフルオロエタンが挙げられる));などが用いられ得る。エアロゾルは、レシチンなどの界面活性剤を簡便に含み得る。薬物の用量は、計量バルブを備えることにより制御され得る。
【0068】
鼻内処方物を含む気道への投与を意図した処方物では、化合物は、一般に、例えば、10ミクロン以下の規模の小さい粒径を有するであろう。このような粒径は、当該分野で公知の手段、例えば、微粒子化により得られ得る。所望であれば、活性成分の遅延放出を与えるのに適した処方物を用い得る。
【0069】
あるいは、活性成分は、乾燥粉末、例えば、化合物の、適切な粉末基剤(例えば、乳糖、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体、およびポリビニルピロリドン(PVP)中の粉末混合物の剤形で提供され得る。簡便には、粉末担体は、鼻腔中のゲルの剤形であり得る。粉末組成物は、単位投与剤形で(例えば、ゼラチン、または粉末がインヘラーによりそこから投与され得るブリスターパックのカプセルまたはカートリッジなどで)提供され得る。
【0070】
上記処方物に加えて、化合物はまた、デポー処方物としても製剤化され得る。このような長期作用処方物は、移植(例えば、皮下または筋肉内移植)または筋肉内注射により投与され得る。従って、例えば、化合物は、適切なポリマーまたは疎水性材料(例えば、許容され得る油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、あるいは易可溶性誘導体、例えば、易可溶性塩を用いて製剤化され得、さらに、組成物は、ポンプなどの制御放出系により送達され得る。
【0071】
さらに、組成物は、治療剤を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの制御放出系を用いて送達され得る。種々の遅延放出材料が確立されており、かつ、当業者に周知である。制御放出カプセルは、それらの化学物質の性質に依存して、化合物を数週間から100日を超えるまで放出し得る。化学物質の性質および治療剤の生物学的安定性に依存して、調節因子を安定化するための追加のストラテジーを用いられ得る。
【0072】
被験体への適切な投与の経路には、当該分野で公知の方法を用いる、経口、局所、経鼻、経直腸、経粘膜または経腸投与、非経口送達(筋肉内、皮下、延髄内注射、ならびにくも膜下腔内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻内、肺内(吸入)または眼内注射が挙げられる)が挙げられる。投与の他の経路は、エアロゾルおよびデポー処方物である。1つの実施態様では、投与の経路は経口である。
【0073】
本発明は、被験体において脂質関連障害を予防または治療する方法であって、当該被験体に、有効な脂質改変量の、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む方法を提供するが、当該ナイアシン受容体調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含む方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法により、同定される。例えば、本発明は、被験体において脂質関連障害を予防または治療する方法であって、当該被験体に、有効な脂質改変量の、ナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む方法を提供するが、当該ナイアシン受容体調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含む方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法により、同定される。本発明はまた、被験体において脂質関連障害を予防または治療する方法であって、当該被験体に、有効な脂質改変量の、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む、方法を開示するが、当該ナイアシン受容体調節因子は、a)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法により、同定される。
【0074】
1つの実施態様では、当該脂質関連障害は、異常脂質血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、アテローム性硬化症、メタボリック・シンドローム、心疾患、卒中または末梢血管疾患である。他の実施態様では、当該脂質関連障害は、異常脂質血症である。さらなる実施態様では、当該脂質関連障害は、アテローム性硬化症である。
【0075】
本明細書で用いる、障害に関する用語「治療する」は、特定の障害に関連する1つ以上の症候の重篤度を低減することを意味する。従って、障害を治療するとは、障害に関連する全ての症候の重篤度を低減することを必ずしも意味せず、また、障害に関連する1つ以上の症候の重篤度を完全に低減することを必ずしも意味しない。同様に、用語「予防する」は、特定の障害に関連する1つ以上の症候の発生または発症を予防することを意味するが、障害の完全な予防を必ずしも意味しない。本発明の方法は、ナイアシン応答性障害(例えば、本明細書中に記載の脂質関連障害が挙げられる)を治療するのに用いられ得る。
【0076】
本明細書で用いる「被験体」は、哺乳動物を含めたあらゆる動物を意味し、例えば、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類(例えば、ヒト)が挙げられる。1つの実施態様では、被験体は、哺乳動物である。他の実施態様では、被験体は、ヒトである。
【0077】
本明細書で用いる、ナイアシン受容体調節因子の量に関する用語「有効な脂質改変量」は、被験体において、アテローム性硬化症関連血清脂質の量を検出可能に変化させる、例えば、LDL−コレステロール、VLDL−コレステロール、血清リポタンパク質(a)(Lp(a))またはトリグリセリドの量を減少させるか、あるいはHDL−コレステロールを増加させるのに十分な調節因子の量を意味する。例えば、有効な脂質改変量のナイアシン調節因子は、HDL−コレステロールの量を増加させるか、またはLDL−コレステロールの量を低減し得る。さらに、例えば、有効な脂質改変量のナイアシン調節因子は、HDL−コレステロールの量を増加させ、かつLDL−コレステロールの量を低減され得る。血中のこれらの脂質の量を測定するための標準的な研究室でのアッセイは、当該分野で周知である。
【0078】
コレステロールは、VLDL−コレステロール、LDL−コレステロールおよび高密度リポタンパク質−コレステロール(HDL−コレステロール)などのリポタンパク質複合体により、血中で輸送される。LDLは、血中で、コレステロールを、血管壁の内皮下腔に運ぶ。血管壁の内皮下腔でのLDL−コレステロールの過酸化は、アテローム性硬化症プラーク形成をもたらすと考えられている。一方、HDL−コレステロールは、プラーク形成に抗い、心血管疾患およびアテローム性動脈硬化の症候の発生を遅延または予防すると考えられている。今日まで、HDL−コレステロール、HDL−コレステロールおよびHDL−コレステロールなどのHDL−コレステロールのいくつかのサブタイプが同定されている。
【0079】
HDLがアテローム性硬化症の進展に対して保護し得るメカニズムがいくつか存在する。インビトロでの研究により、HDLは、細胞からコレステロールを除去され得ることが示された[Picardo et al.,(1986)Arteriosclerosis,6,434−441]。この性質のデータは、HDLの1つの抗アテローム形成性は、それが過剰な遊離のコレステロールの組織を枯渇させ、最終的にこのコレステロールを肝臓に送達する能力に起因し得ることを示した[Glomset,(1968)J.Lipid Res.,9,155−167]。このことは、HDLからのコレステロールの肝臓への効率的な移動を示す実験により支持された[Glass et al.,(1983)J.Biol.Chem.,258 7161− 7167;McKinnon et al,(1986)J.Biol.Chem.,26,2548−2552]。さらに、HDLは、トリグリセリド富化リポタンパク質の迅速な代謝に必要なアポタンパク質のための循環におけるリザーバとして働き得る(Grow and Fried,(1978)J.Biol.Chem.,253,1834−1841;Lagocki and Scanu,(1980)J.Biol.Chem.,255,3701−3706;Schaefer et al.,J.Lipid Res.,(1982)23,1259−1273]。
【0080】
一般に、総コレステロール/HDL−コレステロール(すなわち、TC/HDL)比は、個体にアテローム性硬化症、メタボリック・シンドローム、心疾患または卒中などの状態が起こり得るリスクについての有用な予測因子を表し得る。血漿脂質レベルの現在の分類を、表Bに示すが、これらの分類は、より新しいリスクデータの分析とともに変化される:
【0081】
【化2】

従って、推奨される総コレステロール/HDL−C(すなわち、TC/HDL)比は、3.5以下の比が理想的であり、4.5を超える比は「リスク有」と考えられることを示す。TC/HDL比を決定することの価値は、個体が「正常な」LDLおよび総コレステロールを示すが低いHDL−コレステロールを有する状況において明確である。個体は、LDLおよび総コレステロールに基づいては治療を受けることが適さない場合があり得るが、HDL−コレステロールレベルを考慮する場合、より正確なリスク評価が得られ得る。従って、個体のHDL−コレステロールレベルが、比が4.5を超えるようなものである場合、治療または予防の介入を保証され得る。
【0082】
LDL−コレステロールレベルについては、米国心臓学会は、100mg/dL未満のLDL−コレステロールレベルが最適であり、100〜129mg/dLは最適に近く、130〜159mg/dLはボーダーラインの高さであり、160〜189mg/dLは高いと考えており、190mg/dLは非常に高レベルのLDL−コレステロールであると考えられる。トリグリセリドレベルについては、米国心臓学会は、150mg/L未満が正常であり、150〜199mg/dLはボーダーラインの高さであり、200〜499mg/dLは高いと考えており、500mg/dLは非常に高レベルのトリグリセリドであると考えられる。
【0083】
アテローム性硬化症関連血清脂質の量を変動させるために必要とされるナイアシン調節因子の量は、化合物の処方物および個体に応じて変動するであろう。特に、アテローム性硬化症関連血清脂質の量を変動させるために必要とされるナイアシン調節因子の量は、例えば、個体の体重、個体の遺伝的性質または個体の一般的な健康状態に依存し得る。アテローム性硬化症関連血清脂質の量を変動させ得るナイアシン調節因子の量には、例えば、1日当たり少なくとも500mg、1日当たり少なくとも750mg、1日当たり少なくとも1g、1日当たり少なくとも1.5g、1日当たり少なくとも2g、1日当たり少なくとも2.5g、1日当たり少なくとも3g、1日当たり少なくとも3.5g、1日当たり少なくとも4g、1日当たり少なくとも4.5g、1日当たり少なくとも5g、1日当たり少なくとも5.5g、1日当たり少なくとも6g、1日当たり少なくとも6.5g、1日当たり少なくとも7g、1日当たり少なくとも7.5g、1日当たり少なくとも8g、それ以上が挙げられる。1つの実施態様では、ナイアシン調節因子の当該脂質改変量は、1日当たり少なくとも500mgである。他の実施態様では、ナイアシン調節因子の当該脂質改変量は、1日当たり1〜3グラムである。
【0084】
本明細書で用いる用語「脂質関連障害」は、被験体における、アテローム性硬化症関連血清脂質、例えば、LDL−コレステロール、VLDL−コレステロール、HDL−コレステロール、Lp(a)またはトリグリセリドの非最適レベルに関連するいずれかの障害を意味する。従って、脂質関連障害は、例えば、上昇したレベルのLDL−コレステロール、低減したレベルのHDL−コレステロール、またはアテローム性硬化症関連血清脂質の非最適レベルにより少なくとも部分的に引き起こされる障害、例えば、アテローム性硬化症、メタボリック・シンドローム、心臓麻痺(心筋梗塞)または卒中であり得る。アテローム性硬化症関連血清脂質の最適レベルは、上記で論じられ、これらの脂質の最適な比より低い非最適レベルは、脂質関連障害であると考えられる。
【0085】
アテローム性硬化症とは、大動脈および中型動脈の壁の最内層上における、コレステロールおよび脂質を含むアテローム性プラークの堆積により特徴付けられる、血管疾患の剤形を意味する。アテローム性硬化症は、医学の関連分野で診療している医師により認識および理解される血管の疾患および症状を包含する。アテローム性動脈硬化・心血管疾患(再血管形成手順後の再狭窄を含む)、冠状動脈心疾患、脳血管疾患(多発性梗塞痴呆を含む)および末梢血管疾患(勃起不全を含む)は全てアテローム性硬化症の臨床的徴候であるので、アテローム性硬化症との用語に包含される。
【0086】
異常脂質血症は、HDL(低)、LDL(高)、VLDL(高)、トリグリセリド(高)、リポタンパク質(a)(高)、遊離脂肪酸(高)および他の血清脂質などの血清脂質またはその組み合わせの異常な濃度についての一般的な用語である。例えば、異常脂質血症を有する個体は、最適なレベルと比較して高レベルの総コレステロールを有し得る(高コレステロール血症)。さらに、例えば、異常脂質血症を有する個体は、高レベルの低密度リポタンパク質(LDL)またはトリグリセリド(高トリグリセリド血症)などの血清脂質を有し得る。さらに、例えば、異常脂質血症を有する個体は、低レベルの高密度リポタンパク質(HDL)などの血清脂質を有し得る。異常脂質血症を有する個体は、総コレステロール、LDL、トリグリセリドまたはHDLなどの1つ以上の血清脂質のレベルの変化を有し得る。
【0087】
高脂血症は、コレステロール、トリグリセリドおよびリポタンパク質などの血漿中の脂質のいずれかまたは全ての上昇した濃度についての一般的な用語であり、脂質関連障害である。高脂血症は、後天性または先天性であり得る。高脂血症の特異的形態には、例えば、高コレステロール血症、家族性βリポタンパク質代謝異常、糖尿病性異常脂質血症、ネフローゼ異常脂質血症および家族性混合性高脂血症が挙げられ得る。高コレステロール血症は、血清低密度リポタンパク質コレステロールおよび血清総コレステロールの上昇により特徴付けられる。家族性βリポタンパク質代謝異常はまた、III型高脂血症としても知られ、血清中での超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDLコレステロール)粒子(β−VLDLとも呼ばれる)の蓄積により特徴付けられる。正常なアポリポタンパク質E3の異常なアイソフォームアポリポタンパク質E2での置換もまた、この症状に関連する。糖尿病性異常脂質血症は、VLDL−コレステロールの過産生、異常なVLDLトリグリセリド脂質分解、低減したLDL−コレステロール受容体活性、そして時々III型高脂血症などの複数のリポタンパク質異常により特徴付けられる。ネフローゼ異常脂質血症は、治療するのが難しく、しばしば、高コレステロール血症および高トリグリセリド血症を含む。家族性混合性高脂血症は、高脂血症の複数のフェノタイプ、すなわち、IIa型、IIb型、IV型、V型またはアポβリポタンパク質血症により特徴付けられる。
【0088】
アテローム性硬化症関連血清脂質の非最適レベルにより少なくとも部分的に引き起こされる障害は、脂質関連障害の定義に含まれる。当該障害には、例えば、冠状動脈疾患(CAD)または冠状動脈心疾患、うっ血性心不全、狭心症、動脈瘤、虚血性心疾患、心筋梗塞および卒中が挙げられる。脂質関連障害には、冠状動脈心疾患などの心疾患を挙げることができるが、これらは、血液を心臓に供給する小血管が狭くなることを含む障害であり、心臓が血液を効率的に送り出すその能力を失った場合は、うっ血性心不全である。脂質関連障害には、血管の部分的または完全な封鎖によって低減した組織または器官への血流により引き起こされる障害が挙げられ得る。このような障害には、例えば、狭心症、虚血性心疾患、心筋梗塞および卒中が挙げられる。脂質関連障害には、弱くなった血管により引き起こされる障害、例えば、アテローム性硬化症によってしばしば引き起こされる血管中の弱くなった領域である動脈瘤が挙げられ得る。
【0089】
心疾患には、心不全、冠状動脈不全、冠状動脈疾患および高い血圧(高血圧)が挙げられるが、これらに限定されない。末梢血管疾患は、心臓および脳の外側の血管の疾患を意味する。器官の末梢血管疾患は、炎症および組織損傷などの血管における構造変化により引き起こされる。末梢動脈疾患は1つの例である。末梢動脈疾患(PAD)は、冠状動脈疾患および頚動脈疾患に類似する症状である。PADでは、脂肪堆積物が動脈壁に沿って蓄積し、血液循環、主に脚につながる動脈に影響を与える。その早期の段階では、一般的な症候は、活動中の脚および臀部の痙攣または疲労である。このような痙攣は、ヒトが安静にすると治まる。これを「間欠性跛行」と呼ぶ。PADを有するヒトは、血餅のリスクにより、卒中および心臓麻痺で死亡するリスクがより高い。
【0090】
メタボリック・シンドロームはまた、シンドロームXとも呼ばれ、1人のヒトにおける代謝危険因子の群により特徴付けられる。これらには、中心性肥満(腹内または腹周囲の過剰な脂肪組織)、アテローム生成性異常脂質血症(血清脂質障害−主に高トリグリセリドおよび低HDLコレステロール)、上昇した血圧(130/85 mmHg以上)、インスリン抵抗性またはグルコース不耐性、プロトロンビン状態(例、血中の高フィブリノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤阻害剤)および炎症誘発性状態(例、血中の上昇した高感受性C反応性タンパク質)が挙げられる。
【0091】
本発明の方法および組成物は、被験体において脂質関連障害を予防または治療するのに用いられ得る。脂質関連障害の予防に用いられる場合、被験体は最適レベルの脂質を有し得るが、他の理由、例えば、脂質関連障害の家族歴により、脂質関連障害のリスクを有し得る。本発明の方法および組成物は、任意の年齢の被験体、例えば、脂質関連障害を発症する危険因子である肥満または糖尿病を有する小児または成人における脂質関連障害の予防において、予防的に用いられ得る。
【0092】
本発明は、治療を必要とする被験体においてLDLレベルを低減する方法であって、当該被験体に、有効量のナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む方法を提供するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含む方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することが、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することを示す方法により、同定される。本発明は、治療を必要とする被験体においてLDLレベルを低減する方法であって、当該被験体に、有効量の、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む方法を開示するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子は、a)ナイアシン受容体調節因子を同定する、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することが、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することを示す方法により、同定される。
【0093】
本発明はまた、治療を必要とする被験体においてトリグリセリドレベルを低減する方法であって、当該被験体に、有効量の、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む方法を提供し、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することが、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することを示す方法により、同定される。本発明はまた、治療を必要とする被験体においてトリグリセリドレベルを低減する方法であって、当該被験体に、有効量の、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む方法を開示するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子は、a)ナイアシン受容体調節因子を同定する、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することが、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することを示す方法により、同定される。
【0094】
本発明はまた、治療を必要とする被験体においてHDLレベルを増加する方法であって、当該被験体に、有効量のナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む方法を提供するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含む方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することが、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することを示す方法により、同定される。本発明はまた、治療を必要とする被験体においてHDLレベルを増加する方法であって、当該被験体に、有効量のナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む方法を開示するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子は、a)ナイアシン受容体調節因子を同定する、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することが、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することを示す方法により、同定される。
【0095】
本発明は、脂質改変剤として用いるための、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を含む医薬の製造方法を提供するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法に従って、同定される。本発明は、脂質改変剤として用いるための、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を含む医薬の製造方法を開示するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子は、a)ナイアシン受容体調節因子を同定する、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法に従って、同定される。
【0096】
本発明は、脂質関連障害の治療に用いるための、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を含む医薬の製造方法を提供するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法に従って、同定される。本発明はまた、脂質関連障害の治療に用いるための、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を含む医薬の製造方法を開示するが、当該ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子は、a)ナイアシン受容体調節因子を同定する、およびb)当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定する方法であって、当該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、当該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される方法に従って、同定される。
【0097】
本発明はまた、ナイアシン受容体調節因子化合物に加えて、他の治療化合物を含む組み合わせ療法を開示する。他の治療化合物には、例えば、被験体において、さらに紅潮を低下するのに用いられ得る化合物、またはアテローム性硬化症関連血清脂質の量をさらに低下するのに用いられ得る化合物が挙げられ得る。
【0098】
ナイアシン受容体調節因子と組み合わせられ得る治療用化合物には、例えば、プロスタグランジン合成(PGD合成など)を低減する化合物が挙げられ得る。このような化合物には、例えば、特異的PGDアンタゴニスト、より一般的な剤(非ステロイド抗炎症薬(NSAID)など)が挙げられ得る。NSAIDの例には、以下のものが挙げられる:アスピリン、サリチル酸塩、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ケトプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジン、スリンダク、フルルビプロフェン、エトドラク、ジクロフェナク、ケトロラク、トルメチン、ナブメトン、スプロフェン、ベノキサプロフェン、カルプロフェン、アクロフェナク、フェンクロフェナク、ゾメピラク、メクロフェナマート、メファナミド酸、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾンおよびピロキシカム。さらに、COX−1阻害剤との組み合わせに、治療用化合物は、セレコキシブまたはロフェコシブなどの選択的COX−2阻害剤と組み合わせられ得る。
【0099】
ナイアシン受容体調節因子と組み合わせられ得る治療用化合物には、例えば、被験体においてアテローム性硬化症関連血清脂質の量を低減する化合物が挙げられ得る。このような化合物には、例えば、α−グルコシダーゼ阻害剤、アルドース還元酵素阻害剤、ビグアナイド、HMG−CoA還元酵素阻害剤、スクアレン合成阻害剤、フィブラート、LDL異化促進剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、インスリン分泌促進剤およびチアゾリジンジオンが挙げられる。
【0100】
α−グルコシダーゼ阻害剤は、膵臓および小腸でα−アミラーゼ、マルターゼ、α−デキストリナーゼ、スクラーゼなどの消化酵素を競合的に阻害する薬物の分類に属する。α−グルコシダーゼ阻害剤による可逆的な阻害は、デンプンおよび糖の消化を遅らせることによって、血糖値を遅延、低下または低減する。α−グルコシダーゼ阻害剤のいくつかの例示的な例には、アカルボース、N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)バリオラミン(ジェネリック名;ボグリボース)、ミグリトールおよび当該分野で公知のα−グルコシダーゼ阻害剤が挙げられる。
【0101】
アルドース還元酵素阻害剤は、ポリオール経路の第1段階の速度制限酵素を阻害する薬物である。アルドース還元酵素阻害剤の例には、トルレスタット;エパレスタット;3,4−ジヒドロ−2,8−ジイソプロピル−3−チオキソ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−4−酢酸;2,7−ジフルオロスピロ(9H−フルオレン−9,4’−イミダゾリジン)−2’,5’−ジオン(ジェネリック名:イミレスタット);3−[(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)メチル]−7−クロロ−3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−1(2H)−キナゾリン酢酸(ジェネリック名:ゼナレスタット);6−フルオロ−2,3−ジヒドロ−2’,5’−ジオキソ−スピロ[4H−1−ベンゾピラン−4,4’−イミダゾリジン]−2−カルボキサミド(SNK−860);ゾポレスタット;ソルビニル;および1−[(3−ブロモ−2−ベンゾフラニル)スルホニル]−2,4−イミダゾリジンジオン(M−16209)、および当該分野で公知のアルドース還元酵素阻害剤が挙げられる。
【0102】
ビグアナイドは、嫌気性糖分解を刺激し、末梢組織においてインスリンへの感受性を増加させ、小腸からのグルコース吸収を阻害し、肝臓での糖新生を抑制し、かつ、脂肪酸酸化を阻害する薬物の分類である。ビグアナイドの例には、フェンホルミン、メトホルミン、ブホルミンおよび当該分野で公知のビグアナイドが挙げられる。
【0103】
スタチン化合物は、ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG−CoA)還元酵素を阻害することにより血中コレステロールレベルを低下させる薬物の分類である。HMG−CoA還元酵素は、コレステロール生合成における速度制限酵素である。この還元酵素を阻害するスタチンは、LDL受容体の活性をアップレギュレートすることにより血清LDL濃度を低下させ、血液からLDLを浄化するのに関与する。スタチン化合物の例には、ロスバスタチン、プラバスタチンおよびそのナトリウム塩、シンバスタチン、ロバスタチン、アトロバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチンおよび当該分野で公知のHMG−CoA還元酵素阻害剤が挙げられる。
【0104】
スクアレン合成阻害剤は、スクアレンの合成を阻害することにより血中コレステロールレベルを低下させる薬物の分類に属する。スクアレン合成阻害剤の例には、(S)−α−[ビス[2,2−ジメチル−l−オキソプロポキシ)メトキシ]ホスフィニル]−3−フェノキシベンゼンブタンスルホン酸モノカリウム塩(BMS−188494)および当該分野で公知のスクアレン合成阻害剤が挙げられる。
【0105】
フィブレート化合物は、肝臓でのトリグリセリド合成および分泌を阻害し、かつリポタンパク質リパーゼを活性化することにより血中コレステロールレベルを低下させる薬物の分類に属する。フィブレートは、ペルオキシソーム増殖因子で活性化された受容体を活性化し、かつ、リポタンパク質リパーゼの発現を誘発することが知られている。フィブレート化合物の例には、ベザフィブレート、ベクロブレート、ビニフィブレート、シプロフィブレート、クリノフィブレート、クロフィブレート、クロフィブリン酸、エトフィブレート、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル、ニコフィブレート、ピリフィブレート、ロニフィブレート、シムフィブレート、テオフィブレートおよび当該分野で公知のフィブレートが挙げられる。
【0106】
LDL(低密度リポタンパク質)異化促進剤は、LDL受容体の数を増加させることにより血中コレステロールレベルを低下させる薬物の分類に属し、例えば、当該分野で公知のLDL異化促進剤が挙げられる。
【0107】
アンギオテンシン変換酵素(ACE)は、アンギオテンシン変換酵素を阻害することにより血糖値を部分的に低下させ、かつ血圧を低下させる薬物の分類に属する。アンギオテンシン変換酵素阻害剤の例には、カプトプリル、エナラプリル、アラセプリル、デラプリル;ラミプリル、イシノプリル、イミダプリル、ベナゼプリル、セロナプリル、シラザプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、および当該分野で公知のアンギオテンシン変換酵素阻害剤が挙げられる。
【0108】
本発明は、被験体において脂質関連障害を予防または治療する方法であって、当該被験体に、有効な脂質改変量のナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含み、当該被験体に、有効量の肥満または糖尿病の治療に使用される剤を、有効量のナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子と組み合わせて投与することをさらに含む方法を提供するが、当該調節因子は、当該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含む方法により同定される。
【0109】
リパーゼ阻害剤には、例えば、オルリスタット(ゼニカル(商標))などの抗肥満化合物が挙げられる。オルリスタットは、脂肪吸収を直接的に阻害するが、高い頻度で、下痢および鼓腸などの不快な胃腸の副作用を生じる傾向がある。
【0110】
他の分類の抗肥満薬物には、セロトニンおよび/またはノルアドレナリン放出剤または再取り込み阻害剤が挙げられる。例えば、シブトラミン(メリディア(商標))は、混合型5−HT/ノルアドレナリン再取り込み阻害剤である。シブトラミンの主な副作用は、幾人かの患者における血圧および心拍数の上昇であり得る。セロトニン放出剤/再取り込み阻害剤であるフェンフルラミン(ポンディミン(商標))およびデキサフェンフルラミン(レダックス(商標))は、長期間(6ヶ月を超える)にわたって食物取り込みおよび体重を減少させることが報告されてきた。しかしながら、いずれの製品も、それらの使用に関連した心臓弁異常が予備試験の証拠で報告された後、使用が廃止された。
【0111】
インスリン分泌促進剤は、膵β細胞からのインスリンの分泌を促進する特性を有する薬物の分類に属する。インスリン分泌促進剤の例には、スルホニルウレア(SU)が挙げられる。スルホニルウレア(SU)は、細胞膜中のSU受容体を介してインスリン分泌のシグナルを伝達することにより、膵β細胞からのインスリンの分泌を促進する薬物である。スルホニルウレアの例には、トルブタミド;クロロプロパミド;トラザミド;アセトヘキサミド;4−クロロ−N−[(l−ピロリジニルアミノ)カルボニル]−ベンゼンスルホンアミド(ジェネリック名:グリコピラミド)またはそのアンモニウム塩;グリベンクラミド(グリブリド);グリクラジド;1−ブチル−3−メタニリルウレア;カルブタミド;グリボヌクリド;グリピジド;グリキドン;グリソクセピド;グリブチアゾール;グリブゾール;グリヘキサミド;グリミジン;グリピナミド;フェンブタミド;トルシクラミド、グリメピリドおよび当該分野で公知の他のインスリン分泌促進剤が挙げられる。他のインスリン分泌促進剤には、N−[[4−(l−メチルエチル)シクロヘキシル]カルボニル]−D−フェニルアラニン(ナテグリニド);(2S)−2−ベンジル−3−(cis−ヘキサヒドロ−2−イソインドリニルカルボニル)プロピオン酸カルシウム 二水和物(ミチグリニド、KAD−1229);および当該分野で公知の他のインスリン分泌促進剤が挙げられる。
【0112】
チアゾリジンジオンは、より一般的にはTZDとして知られている薬物の分類に属する。チアゾリジンジオンの例には、ロシグリタゾン、ピオグリタゾンおよび当該分野で公知のチアゾリジンジオンが挙げられる。
【0113】
さらに、ナイアシン受容体調節因子は、例えば、ナイアシン応答性障害を予防または治療するために、被験体に投与され得る。ナイアシン応答性障害は、受容体調節因子により予防または治療され得る障害または疾患である。ナイアシン応答性障害には、例えば、本明細書中に記載された脂質関連障害が挙げられ得る。例えば、脂質関連障害には、少量の高密度リポタンパク質(HDL)−コレステロール、上昇した量の低密度リポタンパク質(LDL)−コレステロール、上昇した量のトリグリセリド、またはアテローム性硬化症、心疾患または卒中などの、非最適レベルのアテローム性硬化症関連血清脂質により少なくとも部分的に引き起こされる障害が挙げられ得る。
【0114】
ナイアシン応答性障害の他の例は、月経困難症または月経痛である。ある報告では、月経痛の痙攣に罹患している80名の女性の群に、月経開始の7〜10日前から、重度の痙攣の間は2〜3時間おきに、100mgのナイアシンを1日2回補給した[Hudgins,(1952)Am Pract Dig Treat 3:892−893;Hudgins(1954)West J Surg Obstet Gynecol 62:610−611]。約90%の被験体は、有意な緩和を経験した。重度の痙攣の間に必要とされる投与(2〜3時間おきに100mg)は、幾人かの女性においては紅潮を引き起こすのに十分に高い。この場合、本発明の方法および組成物は、紅潮の副作用なくナイアシン応答性障害を治療するのに用いられ得る。
【0115】
本発明は、脂質関連障害を予防または治療するため、消費者に用いられるキットを開示する。キットは、本発明の医薬組成物および脂質関連障害を予防または治療するための医薬組成物の使用方法を記載した指示書を含み得る。例えば、キットは、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子の少なくとも1つの投与単位を含み得る。さらに、キットは、本発明の組成物と組み合わせて用いられる他の治療剤を含み得る。
【0116】
本発明の組成物は、広範な経口、局所または非経口投与剤形で投与され得る。当該投与剤形は、活性成分として、本発明の化合物または本発明の化合物の医薬上許容され得る塩を含み得ることが当業者に明らかである。
【0117】
予防または治療に用いるため必要とされる活性成分、あるいはその活性塩または誘導体の投与は、選択された特定の塩によってのみならず、投与経路、治療される症状の性質ならびに個体の年齢および状態によっても変動するであろうし、最終的には担当の内科医または臨床医の判断によるであろう。一般に、当業者は、モデル系、代表的には動物モデルで得られたインビボでのデータを、ヒトなどの他のモデルにどのように外挿するのかを理解する。いくつかの状況では、これらの外挿は、哺乳動物、好ましくはヒトなどの他のモデルと比較した動物モデルの体重に基づくだけであり得るが、しかしながら、より頻繁には、これらの外挿は、単に体重に基づくだけでなく、種々の要因を含める。代表的な要因には、個体の種別、年齢、体重、性別、食事および医学的症状、疾患の重篤度、投与経路、用いる特定の化合物の活性、効力、薬物動態学的および毒性学的プロファイルなどの薬理学的考慮、薬物送達システムが用いられるかどうか、急性または慢性の疾患症状が治療されているかどうか、あるいは予防が行われているかどうか、あるいは組み合わせ療法が用いられているかどうかが挙げられる。疾患状態を本発明の化合物および/または組成物で予防または治療するための投与計画は、上記の種々の要因に従って選択される。従って、用いる実際の投与計画は、広範に変動し得るので、好ましい投与計画から逸脱し得、当業者は、これらの代表的な範囲の外の投与および投与計画は、試験され得、かつ、適切であれば、本発明の方法に用いられ得ることを理解するであろう。
【0118】
所望の用量は、適切な間隔、例えば、1日当たり2回、3回、4回以上の小用量で、単回用量または分割用量で簡便に提供され得る。小用量自体は、例えば、多くの不連続なしっかり決まっていない間隔での用量にさらに分割され得る。毎日の用量は、特に比較的大量が投与される場合、適切と考えられるならば、いくつか、例えば、2、3または4回の部分用量に分割され得る。適切な場合、個体の挙動に依存して、示された毎日の用量から上方または下方に逸脱することが必要となる場合があり得る。
【0119】
キットは、本発明の医薬組成物を含むための容器を含むことができ、かつ、仕切り付きボトルまたは仕切り付きホイル袋などの仕切り付き容器を含み得る。容器は、医薬上許容され得る材料から作製される、任意の通常の形状または当該分野で公知の形態、例えば、紙箱または段ボール箱、ガラスまたはプラスチックのボトルまたはジャー、再密封可能な(例えば、異なる容器に移すための錠剤の「詰め替え」を保持するための)袋、または治療計画に従って個々の用量を包装の外部に押し出すブリスターパックであり得る。用いられる容器は、関与する正確な投与剤形に依存し得、例えば、通常の段ボール箱は、液体懸濁液を保持するのには通常用いられないであろう。1つ以上の容器を単回パッケージに用いて、単回投与剤形が販売され得ることが実現可能である。例えば、錠剤は、ボトルに入れられ、次いで箱に入れられ得る。
【0120】
このようなキットの例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは、包装産業で周知であり、医薬の単位投与剤形(錠剤、カプセルなど)の包装に広範に用いられている。ブリスターパックは、一般に、好ましくは透明なプラスチック材料の箔で被覆された比較的硬い材料のシートからなる。包装プロセスの間、プラスチック箔に凹部が形成される。凹部は、パックされる個々の錠剤またはカプセルのサイズまたは形状を有するか、またはパックされる複数の錠剤および/またはカプセルに適合したサイズまたは形状を有し得る。次に、錠剤またはカプセルを凹部に配置し、比較的硬い材料のシートを、プラスチック箔の表面で、箔に対して(これは、凹部が形成された方向とは逆の方向である)に密封する。結果として、錠剤またはカプセルは、プラスチック箔とシートとの間の凹部に、所望に応じて個別に密封されるかまたは集合的に密封される。一般に、シートの強度は、手で凹部に圧力を加えることにより、シートの凹部の箇所に開口部が形成されて、錠剤またはカプセルをブリスターパックから取り出され得る程度の強度である。次いで、錠剤またはカプセルは、当該開口部から取り出され得る。
【0121】
書面による記憶補助を設けることが好ましくあり得、ここで、当該書面による記憶補助は、医師、薬剤師または被験体のための情報および/または指示を含むタイプのもの、例えば、錠剤またはカプセルに続く数字の形態であって、当該数字が、そのように特定された錠剤またはカプセルを服用すべきである投与計画の日に対応するようなものであるか、または、同様のタイプの情報を含むカードである。そのような記憶補助の他の例は、「最初の週、月曜日、火曜日」...など...「次の週、月曜日、火曜日」などのようにカードに印刷されたカレンダーである。他の記憶補助のバリエーションは、容易に理解されるであろう。
【0122】
キットの他の特異的な実施態様は、毎日の用量を一度に分配するように設計されたディスペンサーである。ディスペンサーは、投与計画へのコンプライアンスをさらに容易にするため、記憶補助を備え得る。このような記憶補助の例は、分配された毎日の用量の数を示す機械的カウンターである。このような記憶補助の他の例は、液晶読み出し部と一体化した電池式マイクロチップメモリ、または最後の毎日用量が服用された日付を読み上げるかまたは次の用量をいつ服用すべきかを思い出させる可聴式リマインダーシグナルである。
【0123】
本発明の1つの局面は、療法によるヒトまたは動物の身体の治療の方法に用いるための、本明細書中に記載されたようなナイアシン受容体調節因子に関する。
【0124】
本発明の他の局面は、療法によるヒトまたは動物の治療の、脂質関連障害の治療方法に用いるための、本明細書中に記載されたようなナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子に関する。本発明の他の局面は、脂質関連障害の治療方法であって、当該状態に罹患している被験体に、治療上有効量の本明細書中に記載されたようなナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を、好ましくは医薬組成物の剤形で投与することを含む、方法に関する。
【0125】
本発明の1つの局面は、脂質関連障害の治療方法であって、当該状態に罹患している被験体に、治療上有効量の本明細書中に記載されたようなナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を、好ましくは医薬組成物の剤形で投与することを含む、方法に関する。本発明の他の局面は、療法によるヒトまたは動物の身体の治療の、脂質関連障害の治療方法に用いるための、本明細書中に記載されたようなナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子に関する。
【0126】
本願に示した化合物は、市販で入手可能であるか、または、van Herk et al.,J.Med Chem.46:3945−3951(2003)またはPCT/US2004/038920に記載されるような当該分野で公知の方法を用いて合成され得る。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は、例示の目的で提供され、限定を意味するものではない。当業者は、本明細書中の開示に基づき同等のアッセイを設計し得るであろうし、そして、その全ては、本発明の部分を形成する。
【0128】
(実施例1)
MAPキナーゼの誘導を決定するための抗体ベースアッセイ
この実施例は、ナイアシン(図1参照)またはナイアシンおよびナイアシン受容体調節因子化合物8(図2参照)により誘発されるMAPキナーゼ活性を決定するのに用いられ得るELISAおよびWesternブロットアッセイを示す。
【0129】
MAPキナーゼELISA:
Biosource(ホスホERKl/2 pTl 85pYl 87 ELISA、カタログ番号KHO−0091)のキットを、以下のプロトコールに従って使用した。
【0130】
細胞を化合物で刺激する前に、細胞を一晩、血清欠乏させた。
【0131】
1.化合物の調製および細胞の処理:
A.化合物をDMSOに溶解した。高いDMSO濃度は細胞にストレスを与えてMAPKを活性化するので、DMSOは1%を超えてはならない。PMA(100ng/ml)をポジティブコントロールとして用いた。
【0132】
B.細胞ディッシュをインキュベーターから取り出し、揺動機に入れて穏やかに揺動するよう設定した(設定速度4)。化合物を慎重に添加し、細胞をインキュベーターに戻して5分間インキュベートした。化合物を添加するため、4.5分で、培地をディッシュから吸引した。次いで、2mlの冷PBSを添加し、穏やかに攪拌することにより、過剰の培地を除去した。PBSを吸引し、1mlのPBSを添加した(コンフルエント6cmディッシュにつき1ml)。
【0133】
2.細胞回収および抽出:氷上で
A.細胞を、ラバーポリスマンでディッシュから掻き出し、マイクロ遠心分離管に移し、次いで、3000rpm、4℃で5分間遠心分離した。
【0134】
B.PBSを吸引し、細胞ペレットを、細胞抽出緩衝液(0.1%のSDS)(コンフルエントな6cmディッシュにつき250〜300μl)中、氷上で、10分間隔で激しく撹拌しながら30分間溶解させた。
【0135】
C.次いで、混合物を、最大速度(16,000×G)で15分、4℃にわたって遠心分離した。
【0136】
D.澄明になった溶解物を新たなマイクロ遠心分離管に移し、タンパク質濃度を測定した。タンパク質を測定するために、サンプルを細胞抽出緩衝液で1mg/mlの濃度まで希釈し、次いで5分間沸騰させた。冷却後、これらを最大速度で5分間、室温で遠心分離した。溶解物を標準希釈剤緩衝液で1:10に希釈して濃度を0.1mg/ml(0.01%のSDS最終)にし、100μlをサンプルウェル(10μg/ウェル)に2回充填した。溶解物は、−80℃で保存され得る。
【0137】
3.剤の調製および保存:
A.ホスホERK1/2標準の再構成および希釈:
1.ホスホERK1/2標準を、1.2ml標準希釈緩衝液で再構成し、穏やかに混合し、10分間静置して、完全な再構成を確認した。このストックは100U/mlである。
【0138】
2.125μlの標準希釈剤緩衝液を、マスタープレート(ELISAプレートではない)のウェルB−Hに重複して添加した。250μlの100U/mlストックをウェルAに添加した。
【0139】
3.順次希釈(1:2)を、ウェルA中の125μlの100U/mlをウェルBに移し、混合し、ウェルBの125μlをウェルCに移し、ウェルGまで同様に続けることによって行った。ウェルHは希釈しない(0U/ml)。
【0140】
B.αウサギIgG HRPの保存および最終希釈:
1.αウサギIgG HRP濃縮物を室温に戻し、穏やかに混合した。次いで、アッセイで使用される各8ウェルストリップについて10μlの濃縮物混合物を1mlのHRP希釈剤と混合した。
【0141】
C.洗浄緩衝液の希釈:
1.25×の洗浄緩衝液濃縮物を室温に戻し、混合して完全な再構成を確認した。洗浄緩衝液濃縮物を、脱イオン水(40mlの25×/960mlのHO)で希釈した。
【0142】
4.アッセイ方法:
手順および計算:
標準およびサンプルの適用:
A.すべての試剤を室温におき、使用の前に混合した。
【0143】
B.マイクロタイタープレートを、箔袋を開封する前に室温におく。アッセイに必要な8ウェルストリップの数を決定し、袋を密封して4℃に戻した。
【0144】
C.100μlの標準(3A2中で調製した)を、2回添加した(2つの8ウェルストリップ)。
【0145】
D.2つのウェルを、色素原ブランク用に空にした。
【0146】
E.100μlのサンプルをサンプルウェルに2回添加した。
【0147】
F.プレートをプレートカバーで覆い、プレートの側面を穏やかに叩いて混合した。
【0148】
G.プレートを室温で2時間インキュベートした。(プレートは一晩4℃でインキュベートしてもよい)。
【0149】
洗浄
A.ウェルからの液体を、アスピレーターで吸引した。
【0150】
B.ウェルを、200μlの希釈した洗浄緩衝液で満たした。30分のインキュベーション後、液体を吸引した。これを4回繰り返した。
【0151】
抗体の検出
A.100μlのαホスホERKl/2溶液を、色素原ブランクを除いて各ウェルにピペットで入れた。カバーを取り替え、穏やかに叩いて混合した。
【0152】
B.インキュベーションを、1時間、室温にて行った。
【0153】
洗浄
A.ウェルを、上記のように4回洗浄した。
【0154】
αウサギIgG HRP。
【0155】
A.100μlのαウサギIgG HRP作動溶液を、色素原ブランク以外の各ウェルに添加した。カバーを交換し、穏やかに叩いて混合した。
【0156】
B.インキュベーションを、30分、室温にて行った。
【0157】
洗浄
A.ウェルを、上記のように4回洗浄した。
【0158】
色素原
A.100μlの安定化色素原を、各ウェルに添加した。
【0159】
B.インキュベーションを、20分、室温にて、暗所で行った(ホイルまたは金属は用いないこと)。
【0160】
停止溶液
A.100μlの停止溶液を、各ウェルに添加し、穏やかに叩いてプレートを混合した。
【0161】
プレートの読み取り
A.プレートを、吸光度450nmで読み取った。
【0162】
細胞抽出緩衝液:
10mM Tris pH 7.4 5ml(1M)
100mM NaCl 10ml(5M)
1mM EDTA pH 8.0 1ml(0.5M)
20mM Na4P 100ml(100mM)
1% TX−100 5ml(100%)
10%グリセロール 50ml(100%)
0.1% SDS 5ml(10%)
0.5% デオキシコール酸 2.5g
最終体積500ml
新鮮な
2mM Na3VO4 1ml(100mM)
1mM PMSF 250ul(200mM)
25ug/mlロイペプチン 125ul(10ug/ul)
25ug/ml アプロチニン 125ul(10ug/ml)
最終体積50ml
を添加する。
【0163】
MAPキナーゼWesternブロット:
1.サンプル調製物:
A.以下の工程を、氷上で行った。培地を吸引して細胞を除去し、細胞をPBSですすいだ。
【0164】
B.細胞を、適切な体積の1% NP−40リシス緩衝液(体積は、ディッシュのサイズ、細胞密度などに依存する)中で採取した。代表的には、500μlを、コンフルエント6cmディッシュに用いた。
【0165】
C.溶解物を、マイクロ遠心分離管に移した。管を激しく撹拌し、氷上で30分インキュベートした。遠心分離は最大速度で、4℃にて10分行った。
【0166】
2.タンパク質アッセイ:
A.ストックタンパク質標準BSAを、水中で1.41μg/μlで調製した。
【0167】
B.14.2μlのストック標準を、485.8μlの水に添加して40μg/mlとした。
【0168】
C.200μlの40μg/m標準を、ウェル9Aおよび9Bに添加した。
【0169】
D.100μlの水を、1〜8、列AおよびBに添加した。
【0170】
E.連続希釈を、100μlの40μg/mlを20μg/mlのウェルに添加し、混合し、0.31μg/mlのウェルに到達するまで、100μlを次のウェルに移すことにより行った。0.31ug/mlウェルからの最後の100μlを捨てた。
【0171】
F.99μlの水を、未知と指定されたウェルに添加した。
【0172】
G.1μlの未知のサンプルを、ウェルに3回添加した。
【0173】
H.25μlの5× Bradford染色剤を、標準および未知のサンプルに添加した。
【0174】
I.インキュベーションを、室温で少なくとも5分行った。
【0175】
J.吸光度は595λで読み取った。
【0176】
3.サンプル希釈および添加用調製物:
A.サンプルを、1μg/μlの最終濃度まで、水またはリシス緩衝液で希釈した。
【0177】
B.5× Laemmliサンプル緩衝液を添加し、サンプルを攪拌し、5分間沸騰させた。
【0178】
4.NOVEXゲルの設定:
A.ゲル底部の白色の粘着剤剥離紙を剥がした。
【0179】
B.コームを静かに引き抜いた。
【0180】
C.ゲルを水ですすぎ、ゲルボックスに入れた。
【0181】
D.内部レザバーをランニング緩衝液で満たし、外部レザバーを、ゲル開口部(白色剥離紙があったところ)の上まで満たした。
【0182】
E.ウェルをシリンジで流した。
【0183】
5.充填サンプル:
A.サンプルを、隣接するウェルにこぼさないように注意深く添加した。
【0184】
B.標準マーカーを充填し、空のウェルに1×サンプル緩衝液を添加した。
【0185】
6.ゲルの作動:
A.ゲルを150Vで1.5時間作動させた。
【0186】
7.ニトロセルロースへの移動(孔径0.2μm):
A.1×トランスファー緩衝液を調製した。
【0187】
B.ゲル、スポンジ、Whatman紙およびニトロセルロース膜をトランスファー緩衝液に浸漬した。
【0188】
C.以下の順番で層形成した:陽電極、スポンジ、膜、ゲル、スポンジ、陰電極。
【0189】
D.外部および内部チャンバーにトランスファー緩衝液を充填した。
【0190】
E.移動を25 Vで1.5時間行った。
【0191】
8.膜のブロッキング:
A.移動装置を破壊した。
【0192】
B.ニトロセルロース膜をBLOCKOに置き、一晩、4℃で、揺動機にてインキュベートした。
【0193】
9.一次抗体:
A.膜を、揺動機上で、1回×10分、TBS/ツイーンで洗浄した。
【0194】
B.一次抗体を、BLOCKOで希釈した。
【0195】
C.インキュベーションを、揺動機上で、2時間、室温にて行った。
【0196】
10.二次抗体:
A.膜を、揺動機上で、2回×15分、TBS/ツイーンで洗浄した。
【0197】
B.二次抗体を、TBS/ツイーンで希釈した。
【0198】
C.インキュベーションを、揺動機上で、1時間、室温にて行った。
【0199】
11.検出:
A.膜を、揺動機上で、3回×15分、TBS/ツイーンで洗浄した。
【0200】
B.膜を、水で1回すすいだ。
【0201】
C.化学発光検出剤を添加し(膜当たり10mlのECL剤+5μlのH(30%))、2分間揺動した。
【0202】
D.膜を、プラスチックシートの保護材上に置き、過剰な検出剤および泡を絞り出した。
【0203】
E.膜を、フィルムに露光した。
【0204】
1% NP−40リシス緩衝液:
1% NP−40
20mM Tris pH8.0
100mM NaCl
1mM EDTA
1mM PMSF
200μMNaVO
10U/ml アプロチニン
10μg/ml ロイペプチン。
【0205】
5× Laemmli サンプル緩衝液:
300mM Tris pH 6.8
25% グリセロール
10% SDS
0.05% ブロモフェノールブルー
ストック2−βMEの最終体積120ul/ml。
【0206】
SDS−PAGE 泳動緩衝液:
14.4gのグリシン
3.03gのトリス塩基
1gまたは5ml(20%)のSDS
水を加えて1リットルにする。
【0207】
10×トランスファー緩衝液:
0.2M トリス塩基
1.92M グリシン。
【0208】
1×トランスファー緩衝液:
100ml 10×のトランスファー緩衝液
200mlのMeOH
700mlの水。
【0209】
10×TBS:
60.5gのトリス塩基
87.5gのNaCl
水を加えて1リットルにする。
【0210】
TBS/ツイーン:
100mlの10×TBS
900mlの水
500ulのツイーン20(100%)。
【0211】
BLOCKO:
TBS/ツイーン中4%BSA。
【0212】
(実施例2)
MAPキナーゼ活性と、ナイアシン受容体調節因子のインビボでの紅潮効果との相関性
本実施例は、インビボでの既知の紅潮効果を有する化合物が、インビボで有意な紅潮を引き起こさないことが知られていた化合物よりも高レベルのMAPキナーゼ活性を有したことを示す(図3および4を参照されたい)。図3において、化合物1はナイアシンであることに留意されたい。
【0213】
図3中の表については、インビボでの紅潮およびcAMPを、実質的に以下のように測定した。MAPキナーゼは、実施例1のELISAプロトコールを用いて測定した。
レーザードップラーを用いる、マウスにおける紅潮:
雄性C57B16マウス(約25g)を、l0mg/ml/kgのネムブタールナトリウム(Abbott labs)で麻酔した。10分後、動物をレーザー下に置き、耳を後ろに折り曲げて腹側を曝露した。レーザーを耳の中心に位置決めし、強度8.4〜9.0V(これは、一般に耳の約4.5cm上である)に焦点を当てた。ベースラインの読み取り値を3分間記録した。データ取得を、15×15画像フォーマット、自動インターバル、60画像および20秒の遅延時間で、中間の解像度で開始した。10個目の画像の後、試験化合物を、注射により腹腔に投与した。画像1〜10を動物のベースラインと考え、データを、ベースライン平均強度の平均値に正規化した。用いたレーザードップラーは、Pirimed PimIIであった。
【0214】
環状AMPアッセイ
Perkin Elmer(カタログ番号SMP004B)の、96ウェルのアデニリルシクラーゼ活性化キットを用いた。CHO細胞用の細胞培養培地は、10%の仔ウシ血清、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび400μg/mlのG418を含むF−12 Kaighn変性細胞培養培地であった。
【0215】
試剤調製物
○50/50アッセイ緩衝液を作製した(刺激緩衝液/PBS;刺激緩衝液は、Flashプレートキットに含まれることに留意されたい)。
【0216】
○PBS中2%DMSOを作製した。
【0217】
○10000pmol/ml(10μM)cAMP標準ストック溶液を、cAMP粉末1ボトルを1mLの刺激緩衝液に溶解することにより作製した。以下の表に記載した順次希釈を行い、8つの標準濃度を得た:
【0218】
【化3】

○20μMのフォルスコリンを、10mMのストック(冷凍保存)を1:500で刺激緩衝液に希釈することにより作製した。
【0219】
○40μMのナイアシンを、2%のDMSO/PBS中で調製した。
【0220】
連続的な5×希釈化合物(96ウェルプレート中)の調製
○5μlの20mM化合物を、カラム番号2において100%DMSO中に入れ、1つのプレートは、最大8化合物を有し得る。
【0221】
○245μlのPBSを、化合物を含むカラム番号2のウェルに添加し、ピペット操作で上下させることにより混合した。200μlの2%DMSO/PBSを、カラム(番号3〜番号11)に添加した。
【0222】
○カラム番号2からの50μlをカラム番号3に移し、上記のように混合し、カラム番号11まで順次希釈を繰り返した(希釈毎にピペットチップを交換した)。ここで、カラム番号2〜番号11は、2%のDMSO中、400μM〜204.8pMにわたる化合物を有した(100μM〜51.2pMの最終アッセイ濃度の4倍である)。
【0223】
細胞の採取
○培養培地を、T−185細胞培養フラスコから吸引した。細胞を、10mLのPBSで1回洗浄し、フラスコ1つ当たり5mLの温(37℃)細胞解離溶液を添加した。細胞を剥離した後、5mLの温(37℃)50/50緩衝液をフラスコに添加し、細胞をフラスコから50mLのコニカルチューブに移した。
【0224】
○細胞を、1100rpmで、室温にて6分遠心分離した。上清を吸引し、細胞を50/50のアッセイ緩衝液に再懸濁した。細胞をカウントし、温(37℃)50/50のアッセイ緩衝液で1×10細胞/mlの密度に希釈した。
【0225】
試剤の添加
○200μlの2% DMSO/PBSを、カラム番号1の最初の4列に添加し、200μlの40μMナイアシンをカラム番号1の最後の4列に添加し、cAMP標準を、化合物プレート上のカラム番号12に添加した。
【0226】
○25μLを、化合物プレートから、3つの別々のアッセイプレートの全てのウェルに移動した。
【0227】
○50μlの50/50(刺激/PBS)を、アッセイプレートのカラム番号12に添加した。
【0228】
○50μlの細胞を、カラム番号1〜カラム番号11に添加し、最終密度は50,000細胞/ウェルであった。
【0229】
○25μlの20μMフォルスコリンを、ナイアシン受容体を発現する細胞を含む全てのウェルに添加し(5μMの最終濃度)、カラム番号1以外(カラム1は、ネガティブコントロール受容体を発現する細胞を含むからである)の全てのウェル、列E〜Hに、25μlの刺激緩衝液を添加した。
【0230】
○プレートを、振盪器に1時間、室温で入れ、上部プレートを、ホイルで覆った。
【0231】
○50μlの[125I]−cAMPを11mlまで希釈し、検出緩衝液(キット中)、および100μlの希釈されたトレーサーを各ウェルに添加した。
【0232】
○プレートをプラスチックカバーで覆い、室温で2時間振盪器に入れた。
【0233】
○プレートを、125I FlashPlateProtocolを用いてWallacMicrobetaカウンター1450中でカウントし、125Iを検出した。
【0234】
(実施例3)
MAPキナーゼアッセイの予測能力
この実施例は、cAMPアッセイに基づいて選択された化合物が、それがインビボで紅潮を引き起こす能力についての知識なしに、ナイアシンと比較したMAPキナーゼを誘発する能力を試験されたことを示す。化合物(化合物11)は、ナイアシンと比較してMAPキナーゼを誘発する能力が低減されたことが見出されたので、実施例2に記載のレーザードップラーアッセイを用いて、マウスのインビボでの紅潮活性を試験した。本発明の方法により予測されるように、化合物はインビボで紅潮を引き起こさなかった。従って、MAPキナーゼアッセイは、インビボで試験したときに、化合物が紅潮を引き起こすかどうか予測し得た。さらに、化合物が遊離脂肪酸(FFA)を低減する能力を試験した。
【0235】
本実施例では、実施例1に記載されたMAPキナーゼELISAを用いて、MAPキナーゼ活性を測定した。ヒトナイアシン受容体(図5、左上パネルを参照されたい)またはマウスナイアシン受容体(右上パネルを参照されたい)のいずれかを発現するCHO細胞を用いるELISAアッセイを用いた。マウスにおけるレーザードップラー紅潮アッセイの結果を、図5の右下パネルに示す。遊離脂肪酸放出アッセイを、以下に記載するように行った。
【0236】
FFAアッセイ
マウスに、ビヒクルまたは種々の用量の化合物11を与えた。10分後、マウスを安楽死させ、血液を採取した。血液サンプルを加工し、非エステル化脂肪酸(NEFA)アッセイ(Waco Chemicals USA,Richmond,VAのNEFA−C アッセイキット)を用いて、遊離脂肪酸の放出を試験した。NEFAアッセイを、製造者が推奨するプロトコールに従って行った。ビヒクルサンプルについて測定した遊離脂肪酸の濃度は、化合物11よりも高かったが、これは、化合物11での処理が、遊離脂肪酸の放出の低減を引き起こしたことを示す。従って、化合物11は、抗脂肪分解性化合物であると考えられ得る。
【0237】
(実施例4)
化合物12、ナイアシンアナログ
本実施例は、例えば、本発明の方法においてナイアシンの代わりに用いられ得るナイアシンアナログ(化合物12)の例を示す。
本実施例では、化合物12のMAPキナーゼ活性を、実施例1に記載されたMAPキナーゼELISAを用いて測定した。ヒトナイアシン受容体(図6、左パネルを参照のこと)またはマウスナイアシン受容体(右パネルを参照のこと)のいずれかを発現したCHO細胞を用いるELISAアッセイを用いた。図6に示すように、化合物12は、MAPキナーゼ活性化アッセイにおいてナイアシンのプロファイルと密接に適合する。
【0238】
(実施例5)
ラットにおける遊離脂肪酸レベルおよびヒト脂肪細胞における脂質分解の測定
本実施例は、遊離脂肪酸レベルを、ラットにおいて測定され得ることを示す。本実施例はまた、ヒト脂肪細胞において遊離脂肪酸レベルを測定され得ることも示す。
【0239】
ラットアッセイ
カテーテルを、雄性Sprague Dawleyラットの頚静脈に外科手術で移植する。ラットを2、3日、移植手術から回復させ、次いで、次の日、ラットを絶食させ、約16時間後、ビヒクルまたはナイアシン[NA]のいずれかを、15mg/kg、30mg/kgまたは45mg/kg体重で腹腔内(IP)注射する。ナイアシンアナログは、同様の様式で試験され得る。血液を種々の時点で採取し(約200ml)、血漿を、遠心分離後に取り出す。次いで、血漿FFAを、製造者の仕様に従って、NEFA Cキット(Wako Chemicals USA,Inc)により測定する。
【0240】
ヒト脂肪細胞脂肪分解アッセイ:
脂肪細胞を、ZenBio(Research Triangle,North Carolina)から入手し、脂肪分解アッセイを、製造者のプロトコールに従って行う。細胞内cAMPレベルの上昇およびホルモン感受性リパーゼによる脂肪分解の同時の活性化を、イソプロテレノールを実験的に決定された濃度および回数で用いることにより達成する。脂肪分解を、目的の化合物(例えば、ナイアシンまたはナイアシンアナログ)の存在下または非存在下で、所望の時間にわたって継続させる。少なくとも5つの化合物濃度を試験して非線形回帰分析およびEC50値の決定を可能にする。グリセロール産生の百分率を、比色法により測定し、標準(ZenBio)と比較する。
【0241】
(実施例6)
マウスアテローム性硬化症モデル
アジポネクチン遺伝子をノックアウトすることにより作製したアジポネクチン欠損マウスは、アテローム性硬化症にかかりやすく、かつインスリン抵抗性であることが示されている。マウスはまた、虚血性心疾患に適したモデルである[Matsuda,M et al.J Biol Chem(2002)July,およびそこに開示された参考文献(それらの開示は、その全体が参照として本明細書に援用される)]。
アジポネクチンノックアウトマウスを、22℃および相対湿度50%の標準的な実験室的条件下で収納する(かご当たり7〜9匹のマウス)。マウスに微細浸透圧ポンプにより投与し、イソフルラン麻酔を挿入して、本発明の化合物、生理食塩水、または無関係の化合物を、マウスに皮下的に(s.c)与える。新生内膜の肥厚化および虚血性心疾患を、異なる時間間隔で犠牲にしたマウスの異なる群について決定する。群間の有意な差異(本発明の化合物を生理食塩水処置群と比較する)を、Student t−検定を用いて評価する。
【0242】
上記アテローム性硬化症のマウスモデルを例示のために提供するが、限定するものではない。さらなる例として、アポリポタンパク質E−欠損マウスもはまた、アテローム性硬化症にかかりやすいことが示されている[Plump AS et al.,Cell(1992)71:343−353;その開示の全体は、参照として本明細書に援用される]。
用いられ得る他のモデルは、C57BL/6 Jマウスにおける食餌誘発性のアテローム性硬化症であり、食餌誘発性のアテローム性動脈硬化の病変形成にかかりやすいことが知られている近交系株である。このモデルは、当業者に周知である[Kamada N et al.,J Atheroscler Thromb(2001)8:1−6;Garber DW et al.,J Lipid Res(2001)42:545−52;Smith JD et al.,JMemMed(1997)242:99−109;それぞれの開示の全体は、参照として本明細書に援用される]。
【0243】
(実施例7)
HDL−コレステロールおよびアテローム性硬化症のインビボブタモデル
脂質関連障害の予防または治療における本発明の化合物の医薬としての有用性を、例えば、化合物が、インビボブタモデルにおいてHDL−コレステロールに対する総コレステロールの比を低下する活性、HDL−コレステロールを上昇させる活性またはアテローム性硬化症から保護する活性により示す。ブタを動物モデルとして使用するが、これは、ブタはほとんどの他の動物モデルよりも密接にヒトの生理学、特に脂質代謝を反映するからである。限定を意図しない例示のインビボブタモデルを、本明細書に示す。
【0244】
ヨークシャーアルビノブタ(体重25.5±4kg)に、2%のコレステロールおよび20%の牛脂を補充した標準の食餌から構成される飽和脂肪酸富化およびコレステロール富化した(SFA−CHO)食餌を50日間与える(体重35kgのブタ1匹当たり1kgの食餌)[Royo T et al.,European Journal of Clinical Investigation(2000)30:843−52;その開示の全体は、参照として本明細書に援用される]。不飽和脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比を、正常なブタ食餌の0.6から、SFA−CHO食餌の1.12まで変化させる。動物を2つの群に分け、1つの群(n=8)にはSFA−CHO食餌を与えてプラシーボで処置し、他方の群(n=8)にはSFA−CHO食餌を与えて調節因子(3.0mgkg−1)で処置する。コントロール動物に、50日間、標準の食餌を与える。血液サンプルを、ベースライン(動物の入手2日後)で回収し、50日後、食餌を開始する。血中脂質を分析する。動物を犠牲にし、死体解剖する。
【0245】
あるいは、上記分析は、それぞれ異なる用量の目的化合物で処置された複数の群で行う。用量には、例えば:0.1mgkg−1、0.3mgkg−1、1.0mgkg−1、3.0mgkg−1、10mgkg−1、30mgkg−1および100mgkg−1が挙げられる。あるいは、上記分析は、複数の時点、例えば、10週、20週、30週、40週および50週で行う。
【0246】
HDL−コレステロール
血液を、クエン酸三ナトリウム中で回収する(3.8%、1:10)。遠心分離(1200g、15分)後に血漿を得、すぐに加工する。総コレステロール、HDL−コレステロールLおよびDL−コレステロールを、自動分析器Kodak Ektachem DTシステム(Eastman Kodak Company,Rochester,NY,USA)を用いて測定する。範囲を超えるパラメータ値を有するサンプルを、製造者により供給される溶液で希釈し、次いで再分析する。総コレステロール/HDL−コレステロール比を決定する。群間のHDL−コレステロールレベルを比較する。群間の総コレステロール/HDL−コレステロール比を比較する。
【0247】
目的化合物の投与におけるHDL−コレステロールの上昇または総コレステロール/HDL−コレステロール比の低減を、上記の有用性を有する化合物の指標と考える。
【0248】
アテローム性硬化症
胸部および腹部大動脈を無傷で取り出し、腹側面に沿って長手方向に開き、組織学的検査および脂質組成物および合成の研究のために、胸部および腹部大動脈内の標準的な部位を切り取った後、中性緩衝化ホルマリン中で固定する。固定後、大動脈全体をSudan IVで染色し、平らにピンで留め、コンピュータ画像分析システム(Image Pro Plus;Media Cybernetics,Silver Spring,MD)に接続したTVカメラを用いてデジタル画像を得、アテローム性動脈硬化病変に関与する大動脈表面の割合を決定する[Gerrity RG et al,Diabetes(2001)50:1654−65;Cornhill JF et al,Arteriosclerosis,Thrombosis,and Vascular Biology(1985)5:415−26;その開示の全体は、参照として本明細書に援用される]。アテローム性動脈硬化病変に関与する大動脈表面の割合を、群間で比較する。
【0249】
目的化合物の投与におけるアテローム性動脈硬化病変に関与する大動脈表面の割合の低減を、上記の有用性を有する化合物の指標とする。
【0250】
血漿遊離脂肪酸
当業者の誰もが、上記インビボブタモデルは、限定されることなく、化合物が血漿遊離脂肪酸を低減する活性を調べるため容易に改変されることを容易に理解するであろう。
【0251】
(実施例8)
GPCR活性化の決定のためのアッセイ
ヒトGPCR活性化の評価のために種々のアプローチが利用可能である。以下は例示である;当業者は、当業者の必要性に優先して有益であるこれらの技術を決定する能力を保証されている。
【0252】
1.膜結合アッセイ:[35S]GTPγSアッセイ
Gタンパク質結合受容体がその活性化状態にある場合、リガンド結合または構成的活性化の結果のいずれかとして、受容体はGタンパク質に結合し、GDPの放出および引き続くGTPのGタンパク質への結合を刺激する。Gタンパク質受容体複合体のαサブユニットはGTPアーゼとして作用し、GTPからGDPへと緩やかに加水分解するが、この時点で、受容体は正常に不活性化する。活性化した受容体は、GDPをGTPに変換し続ける。非加水分解性GTPアナログである[35S]GTPγSは、[35S]GTPγSの活性化した受容体を発現する膜への増強した結合を示すのに用いられ得る。活性化を測定するために[35S]GTPγS結合を用いることの利点は:(a)これは全てのGタンパク質結合受容体に広く適用可能である;(b)これは膜表面の近傍にあるので、細胞内カスケードに影響を与える分子をつかむ可能性が少なくなる。
【0253】
アッセイは、Gタンパク質結合受容体が、関連する受容体を発現する膜への[35S]GTPγS結合を刺激する能力を利用する。従って、アッセイは、内因性のGPCRおよび非内因性の構造的に活性化されたGPCRに対する候補化合物をスクリーニングするための直接的な同定方法において用いられ得る。アッセイは総括的であり、全てのGタンパク質結合受容体における薬物発見への用途を有する。
【0254】
35S]GTPγSアッセイを、20mMのHEPES、1mMと約20mMとの間のMgCl(20mMが好ましいが、この量は、結果の最適化のため調整され得る)(pH 7.4)、約0.3と約1.2nMとの間の[35S]GTPySの結合緩衝液(1.2が好ましいが、この量は、最適化のため調整され得る)および12.5〜75μgの膜タンパク質(例、GPR35を発現する293細胞;この量は、最適化のため調整され得る)ならびに10μMのGDP(この量は、最適化のため調整され得る)中で1時間インキュベートする。次いで、小麦胚芽アグルチニンビーズ(25μl;Amersham)を添加し、混合物をさらに30分、室温でインキュベートする。次いで、管を1500×gで5分、室温で遠心分離し、次いでシンチレーションカウンター中でカウントする。
【0255】
2.アデニリルシクラーゼ
Flashプレート(商標)アデニリルシクラーゼキット(New England Nuclear;カタログ番号SMP004A)は、細胞ベースアッセイ用に設計されているが、粗製血漿膜での使用のために改変され得る。Flashプレートウェルは、シンチラントコーティングを含むことができ、これはまた、特異的抗体認識cAMPを含み得る。ウェル内で産生したcAMPは、放射性活性cAMPトレーサーのcAMP抗体への結合のための直接的な競合により定量され得る。以下は、受容体を発現する全細胞におけるcAMPレベルの変化を測定するための簡単なプロトコールとして役に立つ。
【0256】
一過性の形質移入の約24時間後に、形質移入細胞を採取する。培地を慎重に吸引除去して捨てる。10mlのPBSを、それぞれの細胞のディッシュに穏やかに添加し、次いで、慎重に吸引する。1mlのSigma細胞解離緩衝液および3mlのPBSを、それぞれのプレートに添加する。細胞をピペットでプレートから除き、細胞懸濁液を、50ml円錐遠心分離管に回収する。次いで、細胞を、室温にて、1,100rpmで5分間遠心分離する。細胞ペレットを、適切な体積のPBS(約3ml/プレート)中に慎重に再懸濁する。次いで、細胞を血球計数器を用いて計数し、追加のPBSを添加して、適切な数の細胞を(約50μl/ウェルの最終体積で)得る。
【0257】
cAMP標準および検出緩衝液(1μCiのトレーサー[125]IcAMP(50μl)を11mlの検出緩衝液に含む)を調製し、製造者の指示に従って維持する。アッセイ緩衝液をスクリーニング用に新たに調製し、これは50μlの刺激緩衝液、3μlの候補化合物(12μMの最終アッセイ濃度)および50μlの細胞を含む。アッセイ緩衝液を、使用するまで氷上に保存する。アッセイは、好ましくは、例えば、96ウェルプレート中で行い、50μlのcAMP標準を適切なウェルに添加し、次いで、50μlのPBSAをウェルH11およびH12に添加することにより開始する。50μlの刺激緩衝液を、全てのウェルに添加する。DMSO(または選択された候補化合物)を、3μlの化合物溶液を分配され得るピン工具を用いて、12μMの候補化合物の最終アッセイ濃度および100μlの総アッセイ体積で適切なウェルに添加する。次いで、細胞をウェルに添加し、室温で60分インキュベートする。次いで、トレーサーcAMPを含む100μlの検出混合物を、ウェルに添加する。次いで、プレートをさらに2時間インキュベートし、次いで、WallacMicroBetaシンチレーションカウンターでカウントする。次いで、cAMP/ウェルの値を標準cAMP曲線から外挿し、これをそれぞれのアッセイプレートに入れる。
【0258】
3.Gi結合した標的GPCRのための細胞ベースcAMP
TSHRは、活性化によりcAMPの蓄積を引き起こす、GPCRに結合したGsである。TSHRは、アミノ酸残基623(すなわち、アラニン残基からイソロイシン残基への変化)を変異させることにより、構造的に活性化され得る。Giが結合した受容体は、アデニリルシクラーゼを阻害することが予測されるので、cAMP産生のレベルを減少させ、このことがcAMPレベルの評価を難しいものにしている。Giが結合した受容体の活性化の指標としての、cAMPの産生における減少を測定するための有効な技術は、非内因性の構造的に活性化したTSHR(TSHR−A623I)(または内因性の構造的に活性Gsが結合した受容体)を「シグナルエンハンサー」としてGiが結合した標的GPCRと共に同時形質移入して、cAMPのベースラインレベルを確立することにより、達成され得る。Gi結合受容体の内因性または非内因性バージョンの創製の際、次いで、標的GPCRを、シグナルエンハンサーと共に同時形質移入するが、スクリーニングに用いられ得るのは、この材料である。いくつかの実施態様では、このアプローチは、好ましくは、Gi結合受容体に対する候補化合物を直接同定するのに用いられる。Gi結合GPCRについて、このアプローチを用いる場合には、標的GPCRの逆アゴニストは、cAMPシグナルを増加させ、アゴニストはcAMPシグナルを減少させることが留意される。
【0259】
第1日目に、2×10個の293細胞/ウェルを平板培養する。第2日目に、2つの反応管を調製する(それぞれの管の後に示す割合は、1プレート当たりである):管Aを、合計4μgのDNA(例、pCMVベクター;変異THSR(TSHR−A623I)を有するpCMVベクター;TSHR−A623IおよびGPCR等)に対して、2μg DNAへの哺乳動物細胞へのそれぞれの受容体形質移入体を1.2mlの血清非含有DMEM(Irvine Scientific,Irvine,CA)に混合することにより、調製する;管Bを、120μlのlipofectamine(Gibco BRL)を1.2mlの血清非含有DMEMに混合することにより、調製する。次いで、管AおよびBを、反転(数回)により混合し、次いで、室温で30〜45分間インキュベーションする。混合物は、「形質移入混合物」と呼ばれる。平板培養した293細胞を1×PBSで洗浄し、次いで、10mlの血清非含有DMEMを添加する。次いで、2.4mlの形質移入混合物を細胞に添加し、次いで、37℃/5%COで4時間インキュベーションする。次いで、形質移入混合物を吸引により除去し、次いで、25mlのDMEM/10%仔ウシ血清を添加する。次いで、細胞を37℃/5%COでインキュベートする。24時間のインキュベーション後、細胞を採取し、分析に用いる。
【0260】
Flashプレート(商標)アデニリルシクラーゼキット(New England Nuclear;カタログ番号SMP004A)は、細胞ベースアッセイ用に設計されているが、当業者の必要に応じて粗製血漿膜での使用のために改変され得る。Flashプレートウェルは、シンチラントコーティングを含むことができ、これはまた、特異的抗体認識cAMPを含む。ウェル内で産生したcAMPは、放射性活性cAMPトレーサーのcAMP抗体への結合のための直接的な競合により定量され得る。以下は、目的の受容体を発現する全細胞におけるcAMPレベルの変化を測定するための簡単なプロトコールとして役に立つ。
【0261】
一過性の形質移入の約24時間後、形質移入細胞を採取する。培地を慎重に吸引除去して捨てる。10mlのPBSを、それぞれの細胞のディッシュに穏やかに添加し、次いで、慎重に吸引する。1mlのSigma細胞解離緩衝液および3mlのPBSを、それぞれのプレートに添加する。細胞をピペットでプレートから除き、細胞懸濁液を、50ml円錐遠心分離管に回収する。次いで、細胞を、室温にて、1,100rpmで5分間遠心分離する。細胞ペレットを、適切な体積のPBS(約3ml/プレート)中に慎重に再懸濁する。次いで、細胞を血球計数器を用いて計数し、追加のPBSを添加して、適切な数の細胞を(約50μl/ウェルの最終体積で)得る。
【0262】
cAMP標準および検出緩衝液(1μCiのトレーサー[125]IcAMP(50μl)を1mlの検出緩衝液に含む)を調製し、製造者の指示に従って維持する。アッセイ緩衝液をスクリーニング用に新たに調製し、これは50μlの刺激緩衝液、3μlの候補化合物(12μMの最終アッセイ濃度)および50μlの細胞を含む。アッセイ緩衝液を、使用するまで氷上に保存する。アッセイは、50μlのcAMP標準を適切なウェルに添加し、次いで、50μlのPBSAをウェルH11およびH12に添加することにより開始することができる。50μlの刺激緩衝液を、全てのウェルに添加する。選択した化合物(例、TSH)を、3μlの化合物溶液を分配し得るピン工具を用いて、12μMの候補化合物の最終アッセイ濃度および100μlの総アッセイ体積で適切なウェルに添加する。次いで、細胞をウェルに添加し、室温で60分インキュベートする。次いで、トレーサーcAMPを含む検出混合物100μlを、ウェルに添加する。次いで、プレートをさらに2時間インキュベートし、次いで、WallacMicroBetaシンチレーションカウンターでカウントする。次いで、cAMP/ウェルの値を標準cAMP曲線から外挿し、これをそれぞれのアッセイプレートに入れる。
【0263】
4.レポーターベースアッセイ
a.CRE−LUCレポーターアッセイ(Gs関連受容体)
293または293T細胞を、ウェル当たり密度が2×10細胞の96ウェルプレート上で平板培養し、次の日、製造者の指示に従ってLipofectamine試剤(BRL)を用いて形質移入する。DNA/脂質混合物を、それぞれ、6ウェル形質移入のために、以下のように調製する:100μlのDMEM中の260ngのプラスミドDNAを、100μlのDMEM中の2μlの脂質(260ngのプラスミドDNAは、200ngの8×CRE−Lucレポータープラスミド、50ngの内因性の受容体または非内因性の受容体を含むpCMVあるいはpCMV単独、および10ngのGPRS発現プラスミド(pcDNA3中GPRS(Invitrogen)からなる)中で穏やかに混合する。8×CRE−LuCレポータープラスミドを、以下のように調製する:ベクターSRIF−β−galは、ラットソマトスタチンプロモーター(−71/+51)を、BglV−HindIII部位で、pβgal−BasicVector(Clontech)中でクローニングすることにより得る。cAMP応答エレメントの8つのコピーを、アデノウイルステンプレートAdpCF126CCRE8(Suzuki et al.,Hum Gene Ther 7:1883−1893(1996)を参照されたい;その開示の全体は、本明細書中で参照として援用される)からPCRにより得、Kpn−BglV部位においてSRIF−β−galベクターにクローン化して、8×CRE−β−galレポーターベクターを得る。8×CRE−β−galレポーターベクター中のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を、HindIII−BamHI部位で、pGL3−basicベクター(Promega)から得たルシフェラーゼ遺伝子と置き換えることにより、8×CRE−Lucレポータープラスミドを産生する。室温でのインキュベーションの30分後、DNA/脂質混合物を、400μlのDMEMで希釈し、100μlの希釈混合物を、各ウェルに添加する。4時間細胞培養インキュベーター中でインキュベートした後に、10%FCSを有する100μlのDMEMを各ウェルに添加し、翌日、形質移入細胞を、10%FCSを有する200μl/ウェルのDMEMで変化させる。8時間後、ウェルを、PBSで1回洗浄した後、フェノールレッドを用いることなく100μl/ウェルのDMEMに変えた。次の日、LucLite(商標)レポーター遺伝子アッセイキット(Packard)を製造者の指示に従って用いてルシフェラーゼ活性を測定し、1450MicroBeta(商標)シンチレーションおよび蛍光カウンター(Wallac)上で読み取った。
【0264】
b.AP1レポーターアッセイ(Gq関連受容体)
Gq刺激を検出するための方法は、Gq依存性ホスホリパーゼCが、それらのプロモーター中にAP1因子を含む遺伝子の活性化を引き起こす既知の特性に依存する。Pathdetect(商標)AP−1 cis−Reporting System(Stratagene、カタログ番号219073)を、カルシウムリン酸沈殿物の成分が410ngのpAP1−Luc、80ngのpCMV−受容体発現プラスミドおよび20ngのCMV−SEAPであること以外はCREBレポーターアッセイに関して上述したプロトコールに従って用いられ得る。
【0265】
c.SRF−LUCレポーターアッセイ(Gq関連受容体)
Gq刺激を検出するための1つの方法は、Gq依存性ホスホリパーゼCが、プロモーター中に血清応答因子を含む遺伝子の活性化を引き起こす既知の特性に依存する。Pathdetect(商標)SRF−Luc−Reporting System(Stratagene)は、Gq結合活性、例えば、COS7細胞のアッセイに用いられ得る。細胞を、系のプラスミド成分、および製造者の指示に従って哺乳動物形質移入(商標)キット(Stratagene,カタログ番号200285)を用いて内因性または非内因性のGPCRをコードする、指示された発現プラスミドを用いて形質移入した。簡便には、410ngのSRF−Luc、80ngのpCMV−受容体発現プラスミドおよび20ngのCMV−SEAP(分泌したアルカリホスファターゼ発現プラスミド;アルカリホスファターゼ活性を、形質移入細胞の培地中で測定して、サンプル間の形質移入効力における変化を制御する)を、製造者の指示に従って、カルシウムリン酸沈殿中で合わせる。沈殿の半分を、96ウェルプレート中の3つのウェルに均等に分配し、血清非含有培地中の細胞上で24時間保持する。最後の5時間、細胞を、例えば、1μMの候補化合物でインキュベートする。次いで、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を、Luclite(商標)キット(Packard,Cat.No.6016911)および“Trilux 1450Microbeta”液体シンチレーションおよび蛍光カウンター(Wallac)を製造者の指示に従って用いることによってアッセイする。データは、GraphPad Prism(商標)2.0a(GraphPad Software Inc.)を用いて分析され得る。
【0266】
d.細胞内IP3蓄積アッセイ(Gq関連受容体)
第1日目に、目的の(内因性または非内因性の)受容体を含む細胞を、通常1×10細胞/ウェル(この数は最適化され得る)の24ウェルプレート上で平板培養され得る。第2日目に、まず0.25μgのDNAを50μlの血清非含有DMEM/ウェルに混合し、2μlのリポフェクタミンを50μlの血清非含有DMEM/ウェルに混合することにより、細胞を形質移入され得る。溶液を穏やかに混合し、室温で15〜30分インキュベートする。細胞を0.5mlのPBSで洗浄し、400μlの血清非含有培地を形質移入培地に混合し、細胞に添加する。次いで、細胞を37℃/5%COで3〜4時間インキュベートし、次いで、形質移入培地を除去し、1ml/ウェルの通常の生育培地で置き換える。第3日目に、細胞をH−ミオイノシトールで標識する。簡便には、培地を除去し、細胞を0.5mlのPBSで洗浄する。次いで、0.5mlのイノシトール非含有/血清非含有培地(GIBCO BRL)に、1ウェル当たり0.25μCiのH−ミオイノシトール/ウェルを添加し、細胞を、37℃/5%COで一晩16〜18時間にわたってインキュベートする。第4日目に、細胞を0.5mlのPBSで洗浄し、セロトニン受容体を含むコントロール構築物を用いる場合、0.45mlのアッセイ培地(イノシトール非含有/血清非含有培地、10μMのパージリン、10mMの塩化リチウムまたは0.4mlのアッセイ培地および50μlの10×ケタンセリン(ket)を、10μMの最終濃度まで添加する。次いで、細胞を37℃で30分間インキュベートする。次いで、細胞を0.5mlのPBSで洗浄し、200μlの新鮮な氷冷停止溶液(1MのKOH;18mMのホウ酸Na;3.8mMのEDTA)をウェルに添加する。溶液を氷上で5〜10分または細胞が溶解するまで維持し、次いで、200μlの新鮮な氷冷中和溶液(7.5%のHCL)で中和する。次いで、溶解物を1.5mlエッペンドルフ管に移動し、1mlのクロロホルム/メタノール(1:2)を管に添加する。溶液を15秒間攪拌し、上部相をBiorad AGl−X8(商標)アニオン交換樹脂(100〜200メッシュ)に付与する。最初に、樹脂を1:1.25 W/Vで水で洗浄し、0.9mlの上部相をカラムに装填する。カラムを10mlの5mMミオイノシトールおよび10mlの5mM Naホウ酸/60mM Naギ酸で洗浄する。イノシトールトリスリン酸を、2mlの0.1Mギ酸/1Mギ酸アンモニウムを有する10mlのシンチレーションカクテルを含むシンチレーションバイアルに溶出させる。カラムを、10mlの0.1Mギ酸/3Mギ酸アンモニウムで洗浄し、蒸留HOで2回すすぐことにより再生し、水中に4℃で保存する。
【0267】
e.細胞内カルシウム濃度の測定のための蛍光画像形成プレートリーダー(FLIPR)アッセイ
標的受容体(実験的)および対応するクローナル株から安定に形質移入したpCMV(ネガティブコントロール)細胞を、ポリ−D−リジンで前処理した96ウェルプレート(Becton−Dickinson、番号356640)を、次の日のアッセイのために、5.5×10細胞/ウェルで、完全培養培地(10%のFBS、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウムを有するDMEM)と共に播種する。ナイアシン受容体はGiに結合しているので、ナイアシン受容体を含む細胞は、さらにGα15、Gα16またはキメラGq/Giαサブユニットを含み得る。Fluo4−AM(Molecular Probe,#F14202)インキュベーション緩衝液ストックを調製するために、1mgのFluo4−AMを、467μlのDMSOおよび467μlのプルオロニック酸(Molecular Probe,#P3000)に溶解して、−20℃で1ヶ月保存が可能な1mMストック溶液を得る。Fluo4−AMは、蛍光カルシウム指示染料である。
【0268】
候補化合物を、洗浄緩衝液(pH 7.4の1× HBSS/2.5mMプロベニシド/20mM HEPES)中で製造する。
【0269】
アッセイのとき、培養培地をウェルから除去し、細胞に100μlの4μM Fluo4−AM/2.5mMプロベニシド(Sigma,#P8761)/20mMHEPES/完全培地をpH 7.4で添加する。37℃/5%COでのインキュベーションを60分進行させる。
【0270】
1時間のインキュベーション後、Fluo4−AMインキュベーション緩衝液を除去し、細胞を100μl洗浄緩衝液で2回洗浄する。それぞれのウェルに100μlの緩衝液を残す。プレートを、37℃/5%COで60分にわたってインキュベーターに戻す。
【0271】
FLIPR(Fluorometric Imaging Plate Reader;Molecular Device)を、30秒の時点で50μlの候補化合物を添加し、かつ追加の150秒にわたって候補化合物により生じる細胞内カルシウム濃度([Ca2+])の一過性の変化を記録するようにプログラムする。総蛍光変化計数を用い、FLIPRソフトウェアを用いてアゴニスト活性を決定する。装置のソフトウェアにより、蛍光の読み取りが正規化されて、0点における等価な最初の読み取り値が提供される。
【0272】
上記は、安定に形質移入された細胞を用いるアゴニスト活性のFLIPRアッセイを提供するが、当業者は、アンタゴニスト活性を特徴付けするためにアッセイを容易に改変され得るであろう。あるいは、当該当業者は、一過性の形質移入細胞を用い得ることを容易に理解するであろう。
【0273】
(実施例9)
受容体結合アッセイ
記載された本明細書中に記載された方法に加えて、候補化合物を評価する他の手段は、ナイアシン受容体への結合親和性を決定することによる。この型のアッセイは、一般に、ナイアシン受容体への放射標識リガンドを必要とする。
【0274】
放射標識ナイアシンなどの放射標識化合物は、化合物を同定/評価するためのスクリーニングアッセイにおいて用いられ得る。一般的な用語では、新規に合成されるまたは同定される化合物(すなわち、候補化合物)は、放射標識ナイアシンのナイアシン受容体への結合を低減する能力を評価され得る。従って、ナイアシン受容体への結合について放射標識ナイアシンと競合する能力は、候補化合物のナイアシン受容体への結合親和性に直接的に相関する。
【0275】
ナイアシン受容体について受容体結合を決定するためのアッセイプロトコール:
A.ナイアシン受容体の調製
例えば、HEK293細胞(ヒト腎臓、ATCC)は、本明細書中に記載されたナイアシン受容体と共に、一過性でまたは安定に形質移入され得る。例えば、293細胞は、10μgのヒトナイアシン受容体および60μlのリポフェクタミン(15cmディッシュ当たり)と共に一過性の形質移入がなされ得、培地を変えてディッシュ内で24時間(75%コンフルエンシー)生育させ得る。細胞を、10ml/ディッシュのHepes−EDTA緩衝液(20mM Hepes+10mM EDTA、pH 7.4)を用いて除去する。次いで、細胞をBeckman Coulter 遠心分離器で20分、17,000rpm(JA−25.50回転子)で遠心分離する。次いで、ペレットを20mMのHepes+1mMのEDTA(pH 7.4)に再懸濁し、50mlのDounceホモジナイザーでホモジナイズして、再び遠心分離する。上清を除去した後、ペレットを結合アッセイに用いるまで−80℃で保存する。アッセイへの使用時、膜を氷上で20分冷凍し、次いで、10mLのインキュベーション緩衝液(20mMのHepes、1mMのMgCl、100mMのNaCl、pH7.4)を添加する。次いで、膜を攪拌して粗製膜ペレットを懸濁し、Brinkmann PT−3100 Polytronホモジナイザーで15秒間、設定6でホモジナイズする。膜タンパク質の濃度を、BRL Bradfordタンパク質アッセイを用いて決定する。
【0276】
B.結合アッセイ
総結合については、総体積が50μlの適切に希釈された膜(50mM Tris HCl(pH 7.4)、10mMMgClおよび1mM EDTA;5〜50μgタンパク質を含むアッセイ緩衝液で希釈)を、96ウェルポリプロピレンマイクロタイタープレートに添加し、次いで100μlのアッセイ緩衝液および50μlの放射標識ナイアシンを添加する。非特異的結合については、100μlの代わりに50μlのアッセイ緩衝液を添加し、かつ、追加の50μlの10μM冷ナイアシン受容体を、50μlの放射標識ナイアシンを添加する前に添加する。次いで、プレートを室温で60〜120分インキュベートする。アッセイプレートをBrandell 96ウェルプレート回収器を備えたMicroPlate Devices GF/C Unifilter濾過プレートを通して濾過し、次いで冷却した50mMのTris HCl(pH7.4、0.9%のNaCl含有)で洗浄することにより結合反応を終結させる。次いで、濾過プレートの底部を密封し、50μlのOptiPhase Supermixを各ウェルに添加し、プレートの頂部を密封し、プレートをTriluxMicroBetaシンチレーションカウンターで計数する。化合物競合の研究のため、100μlのアッセイ緩衝液を添加する代わりに、100μlの適切に希釈された候補化合物を適切なウェルに添加し、次いで、50μlの放射標識ナイアシンを添加する。
【0277】
C.算出
候補化合物を、最初に1および0.1μMで、次いで、放射標識ナイアシン結合(すなわち、IC50)の約50%の阻害を起こすように選ばれた濃度範囲で、アッセイする。候補化合物(B)の非存在下での特異的結合は、総結合(B)から非特異的結合(NSB)を差し引いた差異であり、かつ、同様に特異的な結合(候補化合物の存在下で)(B)は、置換結合(B)から非特異的結合(NSB)を差し引いた差異である。阻害応答曲線(%B/B対候補化合物の濃度のロジット−ログプロット)からIC50を決定する。
【0278】
を、ChengおよびPrustoffの変換により算出する:
=IC50/(1+[L]/K
(式中、[L]は、アッセイに用いた放射標識ナイアシンの濃度であり、Kは、同様の結合条件で独立して決定される放射標識ナイアシンの解離定数である)。
【0279】
本出願人は、本発明の実施態様のいずれかからいずれかの1つまたはそれ以上の化合物を除外する権利を留保する。本出願人はまた、例えば、ナイアシン、ナイアシンアナログまたはナイアシン受容体アゴニスト、いずれかのナイアシン受容体部分アゴニスト、あるいはいずれかの組み合わせ療法のいずれかの処方物または量を除外する権利を留保する。
【0280】
本出願の全体にわたって、種々の刊行物、特許および公開特許出願が引用されている。本出願で参照されるこれらの刊行物、特許および公開特許出願の開示は、それらの全体が、本明細書中で本開示に参考として援用される。刊行物、特許または公開特許出願の本出願人による本明細書での引用は、本出願人が当該刊行物、特許または公開特許出願を先行技術であると認めるものではない。
【0281】
当業者の範囲内での開示された発明の改変および拡張は、上記開示および以下の特許請求の範囲内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0282】
【図1】ヒトナイアシン受容体を発現するCHO細胞においてナイアシンが誘発するMAPキナーゼ活性化を、ELISAおよびWesternブロットにより示す。
【図2】ナイアシンおよび化合物8によりヒトナイアシン受容体を発現するCHO細胞におけるMAPキナーゼ活性化を、ELISAを用いて示す。
【図3】以下のアッセイを用いて、ナイアシン(化合物1)と、いくつかのナイアシン受容体調節因子とを比較した表を示す:マウスにおけるインビボでの紅潮、ヒトナイアシン受容体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるcAMPアッセイ、およびELISAによる、ヒトナイアシン受容体を発現するCHO細胞におけるMAPキナーゼ活性化。最後のカラムは、MAPキナーゼEC50のcAMP IC50に対する比を示す。
【図4】ヒトナイアシン受容体を発現するCHO細胞における、いくつかのナイアシン受容体調節因子のMAPキナーゼ活性化のグラフを示す。大きな矢印は、マウスにおいて紅潮を示した化合物を示し、小さな矢印は、マウスにおいて紅潮を示さなかった化合物を示す。水平方向の点線は、ナイアシンから2標準偏差低いことを示す。
【図5】ヒト(左上パネル)上のMAPキナーゼの低い活性化のために選択された化合物11およびCHO細胞において発現するマウス(右上パネル)ナイアシン受容体のナイアシン受容体調節因子を示す。化合物は、ナイアシン(右下パネル)と比較して有意な紅潮を有しなかったこと、およびマウスにおいて遊離脂肪酸レベルが低減したこと(左下パネル)が後に示された。
【図6】ナイアシンアナログ化合物である化合物12が、MAPキナーゼアッセイにおいてCHO細胞に発言されるヒトナイアシン受容体(右のパネル)およびマウスナイアシン受容体に対しナイアシンのように挙動することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって、該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンまたはナイアシンアナログにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、該調節因子がナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法。
【請求項2】
ナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって、該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定することを含み、該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法。
【請求項3】
ナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定する方法であって:
a)ナイアシン受容体調節因子を同定すること、および
b)該調節因子のMAPキナーゼ活性を決定すること
を含み、
該調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性がナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性と比較して低減することにより、該調節因子がナイアシンと比較して低減した紅潮効果を有することが示される、方法。
【請求項4】
前記調節因子により誘発されるMAPキナーゼ活性の低減が、ナイアシンにより誘発されるMAPキナーゼ活性のレベルから少なくとも2標準偏差である、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記MAPキナーゼ活性を決定するのに抗体ベースアッセイが用いられる、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記MAPキナーゼ活性を決定するのにELISAが用いられる、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項7】
ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子であって、該調節因子が、請求項1に記載の方法により、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有する調節因子であるとして同定される、ナイアシン受容体調節因子。
【請求項8】
前記調節因子が、ナイアシン受容体アゴニストまたは部分アゴニストである、請求項1、2、3または7に記載の調節因子。
【請求項9】
前記調節因子が、抗脂肪分解性化合物である、請求項1、2、3または7に記載の調節因子。
【請求項10】
前記調節因子が、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して有意な紅潮効果を有しない、請求項1、2、3または7に記載の調節因子。
【請求項11】
組成物の製造方法であって、
ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を同定すること、および
次いで、該調節因子を担体と混合すること
を含み、該調節因子が、請求項1に記載の方法により同定される、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の調節因子を含むか、請求項7に記載の調節因子から実質的になるかまたは請求項7に記載の調節因子からなる、医薬組成物。
【請求項13】
被験体において脂質関連障害を予防または治療する方法であって、
該被験体に、有効な脂質改変量の、請求項1に記載の方法により同定される、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子を投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記脂質関連障害が、異常脂質血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、アテローム性硬化症、メタボリック・シンドローム、心疾患、卒中または末梢血管疾患である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記脂質関連障害が、異常脂質血症である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記脂質関連障害が、アテローム性硬化症である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体に、有効量の肥満または糖尿病の治療に使用される薬剤を、有効量の、請求項1に記載の方法により同定される、ナイアシンまたはナイアシンアナログと比較して低減した紅潮効果を有するナイアシン受容体調節因子と組み合わせて投与することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体が、哺乳動物である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記被験体が、ヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
治療を必要とする被験体においてLDLレベルを低減する方法であって、該被験体に、有効量の請求項7に記載の調節因子を投与することを含む、方法。
【請求項21】
治療を必要とする被験体においてトリグリセリドレベルを低減する方法であって、該被験体に、有効量の請求項7に記載の調節因子を投与することを含む、方法。
【請求項22】
治療を必要とする被験体においてHDLレベルを増加させる方法であって、該被験体に、有効量の請求項7に記載の調節因子を投与することを含む、方法。
【請求項23】
脂質改変剤として用いるための請求項7に記載の調節因子を含む医薬の製造方法。
【請求項24】
脂質関連障害の治療に用いるための請求項7に記載の調節因子を含む医薬の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−538277(P2008−538277A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556286(P2007−556286)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/005450
【国際公開番号】WO2006/089009
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(500478097)アリーナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (97)
【Fターム(参考)】