説明

脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた研削方法

【課題】 粘着テープを脆性ウェハの素子回路表面に貼着して固定支持することによりウェハ裏面の研削を行う工程で、該脆性ウェハが薄膜化されても加工可能な脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いたサファイアウェハの裏面の研削方法を提供する。
【解決手段】 基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有する脆性ウェハ加工用粘着テープであって、該粘着テープにおける該粘着剤層のシリコンウェハのミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜29.8N/25mmで、かつ該粘着剤層の表面の純水との接触角が85°以上であって、該粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下である脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた研削方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイアウェハなどの脆性ウェハの研削時に使用される脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた研削方法に関する。さらに詳しくは、発光ダイオード製造の際にサファイアウェハなどの脆性ウェハの裏面研削工程において、該ウェハ表面を保護するために用いられる脆性ウェハ加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな光源として発光ダイオード(以下、「LED」ともいう。)の需要が急増している。LEDは低消費電力・長寿命・小型である事から、白熱灯、蛍光灯に置き換わる照明源として、また高輝度化・発光効率向上により携帯電話・液晶テレビのバックライトをはじめとする数多くの電子機器への利用等その用途は広がっている。
LEDを形成するウェハとしては、主にサファイアなどの脆性ウェハが用いられている。LED製造工程においては、例えば、サファイアウェハ上に窒化ガリウム(以下、GaN)などの発光層をエピタキシャル成長させて形成し、該基板の裏面を研磨して薄膜ウェハを得た後に、LEDチップに個片化して実装するプロセス等が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
シリコンウェハなどを用いた従来の半導体素子製造工程においては、ウェハの素子形成面側に表面保護用のウェハ加工用粘着テープを貼合し、テープごとチャックテーブルに真空吸着を行いダイヤモンドホイール等の砥石によりウェハ裏面を研削し目的の厚さまで研削・薄膜化する手法が採用されている。この方法に用いられるテープとしては、基材樹脂フィルム層と粘着剤層から構成され、基材樹脂フィルム層としてエチレン酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう。)やポリエチレン(以下PEともいう。)などのポリオレフィン系樹脂、粘着剤層としてアクリル系樹脂が多く用いられている。
【0004】
これに対して、サファイアウェハは、一般的な半導体デバイスに用いられるシリコンウェハと比較して非常に硬い脆性材料であり、難研削材といわれている。このため、厚さ300μm以上のサファイアウェハを、研削加工のみで厚さ100μm以下とするには、多大な時間を要するため、サファイアウェハ独特の研削方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、サファイア基板と該基板上に形成されるGaNの熱膨張係数の違いから、LED用のサファイアウェハは非常に反り易いという特徴がある。さらに、薄膜に研削することでサファイアの剛性が低下して反りが非常に大きくなると、工程内でのハンドリング性が悪化するだけでなく、最悪の場合にはウェハの破損に到る場合もある。
シリコンウェハ研削用のウェハ加工用粘着テープは、ある程度の柔軟性を持っているため、裏面研削時の衝撃を吸収できる。しかし、サファイアウェハは上記のごとく非常に硬いため研削時には大きな応力が発生する。従来のシリコンウェハ研削用のウェハ加工用粘着テープでサファイアウェハを研削した場合、応力によりテープ自体が大きく変形することによりサファイアウェハがそれに追従して変形し、サファイアウェハはその脆さのために割れやクラックが発生する。
【0006】
また、シリコンウェハの裏面研削用に使用される一般的なウェハ加工用粘着テープを用いて、現在主流である4インチ径のサファイアウェハを研削したときの反り量は30mm以上となる。一方、同様にして4インチ径のシリコンウェハを削った場合の反り量は1mm以下、現在主流となっている8インチ径のウェハでも反り量は10mm以下であり、サファイアウェハがいかに反りやすいかがわかる。
さらに、研削中のウェハはテープ面を下にしてチャックテーブルに真空吸着されてウェハ裏面が研削される。薄膜研削されたウェハの反りが大きくウェハ加工用粘着テープの粘着力が小さい場合には、ウェハの外周部から該粘着テープが剥れやすくなり、ウェハ裏面研削時に使用される切削水の浸入によって、サファイアウェハの表面汚染及び割れが発生することがある。
上記の理由により、従来のシリコンウェハ用の表面保護テープを、サファイアウェハなどの脆性ウェハ加工用粘着テープとして使用するのは困難である。そこで、サファイアウェハをワックスで固定し加工する方法(例えば、非特許文献1参照)や固定治具を用いる方法(特許文献3参照)が提案されている。
【0007】
ワックスでウェハ表面を固定する工程では、まずサブストレートにワックスでサファイアウェハを固定して研削や研磨等の加工を行う。これらの工程終了後、該ウェハに加熱工程等を施すことによりサブストレートからウェハを剥離し、更に有機溶剤等を用いて別途ワックスを洗浄した後、リングフレームへの貼り付けを経てダイシングなどの次工程へと運ばれる。
しかし、上記のワックスによりウェハをサブストレートに固定する方法では、ウェハやサブストレートに付着したワックスを洗浄しなければならないため、工程が煩雑になる。また溶剤を用いてウェハを洗浄した場合には、ワックスがウェハに残存することにより不良が発生し、溶剤自体が環境に悪影響を与える場合がある。
【0008】
これに対して、特許文献4には、サファイアウェハ基板上に形成された半導体層の表面に保護テープを貼着する工程を有するサファイアウェハの研削方法が記載されている。しかし、同文献ではどのようなテープを用いたらよいのか、その技術的手段については具体的に記載されていない。また、基材フィルムの引張り弾性率が特定の値以上の半導体ウェハ表面保護用粘着テープが提案されている(例えば、特許文献5、6参照)。これらのテープをシリコンウェハなどに用いる場合は、基材フィルムの剛性が高いため、薄膜研削後のウェハの反りを改善することが可能である。しかし、これらの文献に記載された粘着テープを、シリコンウェハに比べて非常に脆いサファイアウェハに用いても、うまく研削できず、薄膜に研削できた場合でも、研削中に割れることが多かった。
【0009】
なお、サファイアウェハの反りを抑える方法として、固定治具を用いる方法が提案されている(特許文献7)。これは、環状フレームにテープごとサファイアウェハを固定し研削時に半径方向に張力を印加しつつ加工を行う方法である。この方法では環状フレームによる矯正と張力により反りを抑えることができるが、どのようなテープが適用できるのか、その技術的手段については具体的に記載されていない。このため、環状フレームを用いた加工で薄膜研削時にも対応可能なテープが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007―266589号公報
【特許文献2】特開2003−245847号公報
【特許文献3】特開2007−48920号公報
【特許文献4】特開2010−46744号公報
【特許文献5】特開2010−34379号公報
【特許文献6】特開2007−221054号公報
【特許文献7】特開2011−40631号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】梶山啓一,「LED用基板薄化加工の完全自動化」,SEMICONDUCTOR International日本版,2009.11,14〜18頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、サファイアウェハなどの脆性ウェハの裏面を研削する工程において、粘着テープを脆性ウェハの素子回路表面(発光層表面を含む)に貼着し、かつ環状フレーム上にも貼着して固定支持することによりウェハ裏面の研削を行う工程で、該脆性ウェハが薄膜化されても加工可能な粘着テープ及び、それを用いたサファイアウェハの裏面の研削方法を提供することを課題とする。
より具体的には、脆性ウェハが薄膜化されても、脆性ウェハの割れやクラック、及び脆性ウェハ外周部の粘着テープの剥がれがなく、研削できる脆性ウェハ加工用粘着テープ及び研削方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層が形成された脆性ウェハ加工用粘着テープにおいて、該粘着テープの放射線硬化前の粘着力および粘着剤層表面の純水との接触角、さらに放射線硬化前の該粘着テープの圧縮変位量が上記課題を達成するために重要であることを見出し、これらを特定の範囲にすることで、上記課題を解決できることを見出した。本発明はその知見に基づきなされたものである。
すなわち、本発明の上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有する脆性ウェハ加工用粘着テープであって、該粘着テープにおける該粘着剤層のシリコンウェハのミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜29.8N/25mmで、かつ該粘着剤層の表面の純水との接触角が85°以上であって、該粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(2)前記粘着剤層中の前記射線硬化性を構成する粘着剤が、ポリマーの側鎖の炭素数が4以上である(メタ)アクリル系粘着剤であることを特徴とする(1)に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(3)前記粘着剤層中の前記射線硬化性を構成する粘着剤が、(メタ)アクリル系粘着剤であって、かつ前記粘着剤層中の全ベース樹脂中に占める(メタ)アクリル系粘着剤の含有割合が、80〜100質量%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(4)前記粘着テープにおける前記粘着剤層の厚さが、20〜70μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(5)前記粘着テープにおける前記基材樹脂フィルムの厚さが、25〜150μmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(6)前記脆性ウェハが、サファイア、炭化ケイ素、窒化ガリウム又は砒化ガリウムであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(7)開口部を有する環状フレームにウェハ加工用粘着テープを貼着して該開口部を塞ぐとともに、該ウェハ加工用粘着テープ上に脆性ウェハ上に形成された素子回路表面を貼着し固定支持する工程と、
該ウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルム層をチャックテーブルに固定し、該ウェハを貼着させて該ウェハ加工用粘着テープを保持する工程と、
該ウェハ加工用粘着テープが貼着された面とは反対側の該ウェハの裏面を研削する工程からなる脆性ウェハの研削方法であって、
該ウェハ加工用粘着テープが前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープであることを特徴とすることを特徴とする脆性ウェハの研削方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、サファイアウェハなどの脆性ウェハの裏面を研削する工程において、該ウェハ表面と環状フレームに脆性ウェハ加工用粘着テープを貼着することにより素子回路表面もしくは発光層表面を保護するとともに、該ウェハの裏面の研削を実用上十分な厚さまで行うことができ、該ウェハが薄膜化されてもウェハの反りを抑制できる脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた脆性ウェハの裏面の研削方法を提供することができる。
これに加えて、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープによって、脆性ウェハ加工用粘着テープを剥離した後もサファイアなどの脆性ウェハ表面に対する汚染を低減することができ、別途洗浄工程を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して本発明の好ましい脆性ウェハ加工用粘着テープについて説明する。
図1は本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープ10の好ましい一実施形態を示す概略断面図であり、基材樹脂フィルム1と、基材樹脂フィルム1上に放射線硬化性の粘着剤層2が形成されている。
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープ10は、サファイアウェハなどの脆性ウェハの加工に用いられる。
【0017】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、脆性ウェハ上に形成された素子回路表面(発光層表面も含む)に貼着される。本発明において、脆性ウェハとは、モース硬度が9以上のものをいい、例えば、サファイア、炭化ケイ素、窒化ガリウム及び砒化ガリウムなどを挙げることができる。
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、特に好ましくは、サファイアウェハの研削に使用することができる。以下、代表的な脆性ウェハであるサファイアウェハの加工工程をもって説明するが、他の脆性ウェハの研削も同様の方法で行うことができる。
【0018】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の粘着力は、シリコンウェハのミラー面に対する粘着力が2.0〜29.8N/25mmである。粘着力が小さすぎると、サファイアウェハを研削、薄化した場合に生じる反りによりウェハのエッジ部から粘着テープが剥れ、その部分のウェハにエッジクラックが生じやすくなる。一方、粘着剤層の放射線硬化前の粘着力が大きすぎる場合には、粘着剤が発光層や回路面に悪影響を及ぼしたり、放射線硬化後にも粘着剤が残ったりする恐れがある。該粘着剤層の放射線硬化前の粘着力は、好ましくは2.5〜29.8N/25mm、より好ましくは2.5〜20N/25mm、さらに好ましくは2.5〜10N/25mmである。ここで、シリコンウェハのミラー面とは、例えば、JIS H 0614に記載された試験のうち、鏡面側の規格を満足するようなポリッシュにより研磨された面をいう。
脆性ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の粘着力は、JIS H 0614により、製造されたシリコンミラー面に対して、実施例に記載したように、JIS B 7721に準拠して、引張試験機で粘着力を測定することで求めることができる。
より具体的には、例えば、脆性ウェハ加工用粘着テープから、幅25mm×長さ150mmの試験片を3点採取し、その試験片を厚さ400μmのシリコンミラー面に2kgのゴムローラを3往復かけ圧着し、1時間放置後、JIS B 7721に準拠して、引張試験機を使用し、90°引きはがし法にて、測定温度23℃、測定湿度(相対湿度)50%で、かつ引張速さ50mm/minの条件で測定することで求められる。
【0019】
裏面研削時には、サファイアウェハにはその硬さのため、所望の厚さに研削するためには、通常のシリコンウェハの研削時よりも大きな力が加えられる。このため、本発明においては、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの弾性率を大きくするために、脆性ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の圧縮変位量は150μm以下であり、120μm以下とすることが好ましい。脆性ウェハ加工用粘着テープの圧縮変位量が大きすぎると、裏面研削時の応力によりウェハ加工用粘着テープが変形し、ウェハが割れやすくなる。一方、ウェハ表面には素子回路により凹凸が形成されていることが多く、脆性ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の圧縮変位量が小さすぎると、この凹凸に追従することが困難となり、ウェハ割れが発生し易くなる。そのため、圧縮変位量の下限は20μm以上とすることが望ましい。
【0020】
ここで、本発明における圧縮変位量は、以下の方法で求めた値である。
サファイアウェハに好ましい本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルム層と、粘着剤層を突き合わせて、5枚積層したものを試験片とする。この試験片中の粘着剤層を上にして、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加する。応力付与前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50N圧縮応力付加時の変位量を圧縮変位量の測定値とする。
すなわち、本発明における圧縮変位量は、平行板治具に本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープを5枚積層したものを挟み込み、反りのない状態から圧子により応力を印加した場合の試験片の変位量を示すものである。よって、この圧縮変位量は、基材樹脂フィルムや脆性ウェハ加工用粘着テープについて引張り試験を行って得られる引張弾性率とは技術的意味が異なるものである。
【0021】
さらに、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤層表面の耐水性も重要となる。
粘着剤層表面の耐水性が低い場合は、ウェハ研削加工中に切削水が浸入し、粘着テープがウェハエッジ部より剥離しやすくなることからエッジチッピングが誘発される。サファイアのような脆性材料では、このようなエッジチッピングの生じた箇所から結晶方向にそって割れが発生しやすい。したがって、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤層表面の耐水性が高いことが望ましく、本発明においては、粘着剤層表面の純水との接触角は85°以上である。また、粘着剤の材料特性の観点から、純水との接触角の上限は、150°以下が好ましい。粘着剤層表面の純水との接触角は、特に好ましくは、85〜120°である。なお、接触角の測定環境は、室温(25±5℃、好ましくは25℃)、相対湿度50±10%、好ましくは相対湿度50%である。
本発明においては、上記の粘着力、純水との接触角および圧縮変位量を特定の範囲とすることで、本発明の効果が得られる。
【0022】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおいて、粘着剤の粘着力や粘着テープの圧縮変位量を制御する方法は、とくに限定されない。一般的には、粘着剤の粘着力を上げる手段として、粘着剤樹脂組成物中に含有される硬化剤の配合量を減らして架橋度を下げるか、ベース樹脂成分の分子量を下げる方法が適用される。しかし、粘着力が大きすぎると、粘着剤層の弾性率が低くなりすぎて、粘着テープの圧縮変位量が大きくなる。つまり、粘着力と弾性率はトレードオフの関係になる。
【0023】
そこで、本発明の脆性脆性ウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤の粘着力を前記のような好適な範囲に制御するために、粘着剤を構成するポリマーの分子構造自体、すなわち、後述の高分子鎖を構築するモノマー〔好ましくは、各種(メタ)アクリル酸およびそのエステル類〕を変更すること、具体的には、ポリマーの側鎖長を炭素数で4以上〔例えば、アルキル(メタ)アクリレートの場合は、アルコール部の炭素数が4以上であり、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する基をアルコール部に有する場合は、このアルコール部の炭素数は除く〕とすることにより、粘着力と弾性率を両立させ、さらには、粘着剤表面の耐水性を十分な範囲としている。もちろん、脆性ウェハ加工用粘着テープにおける放射線硬化前の粘着剤の粘着力、圧縮変位量、および粘着剤層の純水との接触角を好適な範囲に制御できれば、硬化剤やオリゴマー、モノマーなどの他の添加剤を用いてもよい。
【0024】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの粘着剤層の厚さは、20〜70μmであることが好ましい。サファイアウェハ表面にはGaNなどの発光層の素子回路が形成されており、凹凸が存在していることが多い。このため、粘着剤層の厚さが薄すぎると、この凹凸に追従することが困難になり、ウェハ割れや裏面に研削痕(ディンプル)が残り易くなることがある。逆に、粘着剤層の厚さが厚すぎると、研削時の応力に対して粘着剤が変形し、ウェハが変形して割れることがある。
【0025】
また、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルムの厚さは25〜150μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。基材樹脂フィルムの厚さが薄すぎると、特にサファイアウェハ加工用粘着テープとしては、その剛性が不足し、ウェハの反りを抑制することが困難になる。一方、基材樹脂フィルムの厚さが厚すぎると、特にサファイアウェハ加工用粘着テープとしては、その可撓性が低くなる。これにより、サファイアウェハ加工用粘着テープをウェハに貼合する場合やウェハから剥離する際の作業性が著しく悪化することがある。
【0026】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおいて、放射線硬化性の粘着剤層に用いられる粘着剤は、上記の粘着力と上記の純水との接触角および上記の圧縮変位量を達成できるものであればよく、その種類や構成は限定されない。放射線硬化性の粘着剤層は、単一の粘着剤から構成されるものでも、複数種類の粘着剤が積層されてなるものもよい。
【0027】
一般に、粘着剤は樹脂組成物であるが、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける放射線硬化性の粘着剤層を構成する粘着剤としては、樹脂組成物のベース樹脂として主鎖の繰り返し単位に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造〔−C(=O)CH=CH又は−C(=O)C(CH)=CH〕を有する残基が結合した重合体(a)を主成分とするものが好ましい。ここで、「重合体(a)を主成分とする」とは、全ベース樹脂中の重合体(a)の含有割合が80〜100質量%であることをいう。
なお、本発明においては、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」と「メタクリル」の両者を含むものとする。
【0028】
上記重合体(a)はどのようにして製造されたものでもよい。例えば、上記重合体(a)としては、主鎖の繰り返し単位に官能基〔後の反応で、加えられた化合物と反応させるための官能基で好ましくは側鎖に有す。このような官能基としては、後述の単量体(a1−2)が有する官能基で挙げた基が好ましい。〕を有する重合体〔(好ましくは(メタ)アクリル系共重合体〕(a1)と、該官能基と反応し得る官能基(好ましい官能基は後に挙げた基が挙げられる)及び放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造を有する化合物(a2)とを反応させて得たものを挙げることができる。また、主鎖の繰り返し単位に対して、側鎖に放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する炭素−炭素二重結合と官能基とを有する(メタ)アクリル系共重合体(a1’)と、この共重合体(a1’)の官能基と反応し得る官能基をもつ化合物(a2’)とを反応させて重合体(a)を得ることもできる。
前記の主鎖の繰り返し単位に、前記の官能基を有する重合体(a1)は、例えば、前記官能基(以下の単量体(a1−2)が有する官能基)を有さないアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルなどの単量体(a1−1)と、前記官能基を有する単量体(a1−2)とを共重合させて得ることができる。
【0029】
上記単量体(a1−1)で挙げたアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルは、好ましくはエステルのアルコール部の炭素数が4以上のものが好ましく、炭素数4〜18のものがより好ましく、炭素数4〜12のものがさらに好ましい。また、このようなアルコール部のアルキル基は置換基を有してもよいが、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ポリオキシアルキレンを含む基等の水溶性基が置換すると耐水性が大きく変動することから、無置換のアルキル基が好ましい。このようなアルコール部のアルキル基としては、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、n−オクチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0030】
単量体(a1−1)としては、例えば、アルキルエステルのアルコール部のアルキルの炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−デシルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートを挙げることができる。
また、アルキルエステルのアルコール部のアルキルの炭素数が4未満の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートを挙げることができる。
【0031】
単量体(a1−1)として、アルキルエステルにおけるアルコール部のアルキルの炭素数が大きな(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用するほどガラス転移温度(Tg)は低くなる傾向にある。したがって、単量体(a1−1)のアルキルエステルのアルコール部のアルキルの炭素数を適宜選択することにより、所望のガラス転移温度を有する重合体(a)を得ることができる。
また、ガラス転移温度の以外にも、他の成分との相溶性や粘着剤としての各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を(a1−1)に加えて重合体(a)を得てもよい。これらの低分子化合物の配合量は、単量体(a1−1)の5質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
単量体(a1−2)が有する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。単量体(a1−−2)の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類(例えば、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシル−プロピルアクリレート、2−ヒドロキシル−1−メチルプロピルアクリレート等)、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類(例えば、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシル−プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシル−1−メチルプロピルメタアクリレート等)、グリコールモノアクリレート類(例えば、1,3−グリコールモノアクリレート、1,4−グリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート等)、グリコールモノメタクリレート類(例えば、1,3−グリコールモノメタクリレート、1,4−グリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート等)、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート類(例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−アクリロイルオキシブチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−メタクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−メタクリロイルオキシブチルイソシアネート等)、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシル基および放射線硬化性の炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0033】
前記放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造を有し、かつ前記重合体(a1)が有する官能基〔前記単量体(a1−2)が有する官能基〕と反応しうる官能基を有する化合物(a2)の官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がカルボキシル基や環状酸無水基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基が水酸基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がアミノ基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がエポキシ基である場合には、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、環状酸無水基、アミノ基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がイソシアネート基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などを挙げることができる。
これらの具体例としては、単量体(a1−2)の具体例で列挙したもののうち、無水フタル酸以外のものと同様のものを列挙することができる。
【0034】
上記重合体(a1)と上記化合物(a2)の反応において、未反応の官能基を残すことにより、酸価または水酸基価などを好ましくは、後述の通りの範囲に適宜設定することができる。
重合体(a1)は、単量体(a1−1)と単量体(a1−2)とを各種の溶剤中で溶液重合することにより得ることができる。溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができる。一般に(メタ)アクリル系重合体の良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤を使用することが好ましい。例えば、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。重合開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を用いることができる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節することにより、所望の分子量の重合体(a1)を得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、重合体(a1)の合成は、溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0035】
重合体(a)は、前記重合体(a1)の反応液に、前記化合物(a2)を加えることによって合成することができる。
重合体(a)中における前記化合物(a2)の占める割合は、10〜50モル%が好ましく、15〜40モル%がより好ましい。
また、重合体(a)中には、(メタ)アクリル酸から得られる繰り返し単位を有することが好ましく、重合体(a)中に占める(メタ)アクリル酸から得られる繰り返し単位の比率は0.1モル%〜5モル%が好ましい。
【0036】
本発明の粘着剤層を構成する粘着剤には、上記の重合体(a)のほかに、さらに上記の重合体(a)とは異なる構造のベース樹脂を含ませることができる。ベース樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成単量体単位の1つとして含む(メタ)アクリル系共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリル系共重合体には、その他の官能基を有する単量体をさらに共重合させたものを挙げることができる。構成単量体単位として使用される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
これらにおいても、エステルのアルコール部の炭素数は4以上が好ましい。
【0037】
なお、ウレタン(メタ)アクリレート系重合体(オリゴマーもしくはポリマー)は、前述の純水との接触角を下げるものが多く、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成単量体単位の1つとして含む(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。また、前述のように、全ベース樹脂中の重合体(a)の含有割合は、80〜100質量%が好ましく、85〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましく、95〜100質量%が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0038】
このような粘着剤層を構成する樹脂組成物については、放射線硬化前のDSC測定によるガラス転移温度が−40〜−10℃であることが好ましい。なお、ここでいうDSC測定によるガラス転移温度とは、昇温速度0.1℃/分でDSC(示差走査熱量計)により測定されたガラス転移温度をいう。
【0039】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤には、従来の光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を単独で、又は併用することができる。これらのうち少なくとも1種類を、粘着剤層を構成する粘着剤に添加することにより、効率よく放射線照射による硬化反応を進行させることができる。
なお、ここで言う放射線とは、紫外線のような光線、または電子線のような電離性放射線のことをさす。光重合開始剤の含有量は特に制限するものではないが、好ましくは前記の全ベース樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
【0040】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープ(好ましくはサファイアウェハ加工用粘着テープ)の粘着剤を構成する粘着剤には、硬化剤(架橋剤)を用いることにより、前記のベース樹脂を架橋することが好ましい。硬化剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。硬化剤の含有量は、所望の粘着力に応じて調整すれば良く、上記のベース樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5質量部、特に好ましくは0.1〜2質量部である。
【0041】
さらに、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤の粘着力、粘着テープの圧縮変位量および粘着層の純水との接触角は、適宜オリゴマーや単量体を加えることによって調整することもできる。
【0042】
本発明の脆性ウェハ裏面の研削方法は、脆性ウェハ上に形成された素子回路表面(発光層表面も含む)と環状フレームに、上記の脆性ウェハ加工用粘着テープの粘着剤層を貼着する工程と、該環状フレームに貼着した粘着テープの基材樹脂フィルム層をチャックテーブルに固定することにより保持する工程と、前記粘着テープが貼着された面とは反対側の前記脆性ウェハの裏面を研削する工程とを具備することが好ましい。この方法により、脆性ウェハ上に形成された素子回路表面や発光層を保護するとともに、該ウェハの裏面研削を実用上十分な厚さまで行うことができ、該ウェハが薄膜化されてもウェハの反り、割れやクラックを抑制することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<脆性ウェハ加工用粘着テープの作製>
(実施例1)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(aA)の調製
2−エチルヘキシルアクリレート(69mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(29mol%)、メタクリル酸(2mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)を得た。
【0044】
得られた重合体(a)の質量平均分子量と二重結合当量については、次の方法により測定、算出した。
(i)質量平均分子量
重合体(a)について、下記条件により、GPC(ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で質量平均分子量を測定した。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000(商品名、東ソー社製)
流量:0.6ml/min
濃度:0.3質量%
注入量:20μl
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
(ii)二重結合当量
ヨウ素価測定法により、重合体(a)1g中の炭素−炭素二重結合当量(ミリ当量)を算出した。
重合体(a)の質量平均分子量は80万、また二重結合当量は0.9meq/gであった。
【0045】
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1A)を調製した。
【0046】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1A)を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0047】
(実施例2)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
ブチルアクリレート(69mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(30mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)を得た。
実施例1と同様の方法により測定、算出した重合体(a)の質量平均分子量は、33万、二重結合当量は1.5meq/gであった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2.9質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1B)を調製した。
【0048】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
上記の樹脂組成物(1B)を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりウェハ加工用粘着テープを得た。
【0049】
(実施例3)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.2質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1C)を調製した。
【0050】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤層に上記の樹脂組成物(1C)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0051】
(実施例4)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.7質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を調製した。
【0052】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1D)を乾燥後の厚さが20μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0053】
(実施例5)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
実施例4で調整した粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を使用した。
【0054】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムを用いたこと、および上記の樹脂組成物(1D)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0055】
(実施例6)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
実施例4で調整した粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を使用した。
【0056】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤層に上記の樹脂組成物(1D)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0057】
(実施例7)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
実施例4で調整した粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を使用した。
【0058】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムを用いたこと、および上記の樹脂組成物(1D)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0059】
(実施例8)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)1.3質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1E)を調製した。
【0060】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1E)を乾燥後の厚さが20μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0061】
(実施例9)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
メチルメタクリレート(10mol%)、2−エチルヘキシルアクリレート(69mol%)、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(20mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルメタアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)を得た。
実施例1と同様の方法により測定、算出した重合体(a)の質量平均分子量は、20万、二重結合当量は0.59meq/gであった。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.3質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1F)を調製した。
【0062】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1F)を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0063】
(実施例10)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例9で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
実施例9で調整した粘着剤を構成する樹脂組成物(1F)を使用した。
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1F)を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0064】
(比較例1)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例1で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2.2質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2A)を調製した。
【0065】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤層に樹脂組成物(2A)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0066】
(比較例2)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
実施例4で調整した粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を使用した。
【0067】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1D)を乾燥後の厚さが80μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0068】
(比較例3)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
実施例4で調整した粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を使用した。
【0069】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが165μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1D)を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0070】
(比較例4)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2で調製した重合体(a)を使用した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.1質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2B)を調製した。
【0071】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤層に上記の樹脂組成物(2B)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0072】
(比較例5)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(b)の調製
ブチルアクリレート(81mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(18mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(b)を得た。
実施例1と同様の方法により測定、算出した重合体(b)の質量平均分子量は、34万、二重結合当量は0.9meq/gであった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(b)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2C)を調製した。
【0073】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤層に上記の樹脂組成物(2C)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0074】
(比較例6)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(b)の調製
エチルアクリレート(45mol%)、ブチルアクリレート(35mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(19mol%)、メタクリル酸(1.5mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(b)を得た。
実施例1と同様の方法により測定、算出した重合体(b)の質量平均分子量は、66万、二重結合当量は0.6meq/gであった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(b)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)1.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2D)を調製した。
【0075】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(2D)を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0076】
<ウェハ加工用粘着テープの評価>
実施例1〜10、比較例1〜6の脆性ウェハ加工用粘着テープについて以下の評価を行い、その性能を評価した。その結果を下記表1および表2に示す。
【0077】
1.粘着力
実施例及び比較例の各ウェハ加工用粘着テープから幅25mm×長さ150mmの試験片を3点採取し、その試験片を厚さ400μmのシリコンミラー面に2kgのゴムローラを3往復かけ圧着した。シリコンミラー面はJIS H 0614により、製造されたものである。1時間放置後、JIS B 7721に準拠して、引張試験機で粘着力を測定した。
測定は、90°引きはがし法により、引張速度が50mm/min、測定温度は23℃、測定湿度(相対湿度)は50%の条件で求めた。粘着力が2.0〜29.8N/25mmのものを合格とし、2.0N/25mm未満のもの及び29.8N/25mmを越えるものを不合格とした。
【0078】
2.粘着剤層表面の純水との接触角
実施例及び比較例の各ウェハ加工用粘着テープのセパレータを剥離し、粘着剤層表面へ純水を滴下した。滴下直後の接触角を接触角計(協和界面科学製:CONTACT−ANGLE METER MODEL:CA−S)で測定し、85°以上を合格、85°未満を不合格とした。
【0079】
3.圧縮変位量
実施例及び比較例の各ウェハ加工用粘着テープを200mm×200mm程度の大きさに5枚切断し、基材樹脂フィルムと粘着剤層との間で積層した。その積層されたものを25mm×55mmに切断し、これを試験片とした。この試験片の粘着剤層を上にして、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加した。応力付与前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50N圧縮応力付加時の変位量を測定値とした。
圧縮変位量が150μm以下のものを合格、それ以外のものを不合格とした。
【0080】
4.ウェハ外周部のテープ剥れ
直径4インチのサファイアウェハ表面に、実施例及び比較例の各ウェハ加工用粘着テープを貼合し、バックグラインド装置(商品名:DFG8540、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハの厚さが100μmとなるまでウェハ裏面を研削した。なお、100μmまで研削できない場合は、研削可能な仕上げ厚さでの反りとした。研削後のテープが貼合されたウェハ外周部を目視にて観察し、研削前と比較してテープが剥れていないものを○、一部でもテープが浮き上がっているものを×とした。
【0081】
5.研削可能な仕上げ厚さ
直径4インチのサファイアウェハ表面に、実施例及び比較例の各ウェハ加工用粘着テープを貼合し、バックグラインド装置(商品名:DFG8540、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハ裏面を研削した。ウェハ裏面の研削厚さを変えて研削を行い、研削終了後のウェハを観察し、割れやクラックがない最低厚さを、研削可能な仕上げ厚さとした。80〜90μmを◎、91〜120μmを○、121〜164μmを△、165μm以上を×とした。
ウェハ外周部のテープ剥れ、及び研削可能な仕上げ厚さのいずれもが◎又は○のランクものを合格、それ以外のランクのものを不合格とした。
【0082】
なお、下記表1、2において、重合体の側鎖炭素数は、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する基をアルコール部に有する以外のアルコール部の炭素数を示し、複数のアルコール部を有する場合は個々の炭素数を示し、かつ括弧内にはこれらをモル換算した全体の平均の炭素数を示した。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
上記表1及び表2からわかるように、本発明のウェハ加工用粘着テープを用いた場合、サファイアウェハの反りと研削後の仕上げ厚さの評価において合格レベルの優れた特性が得られた。特に、粘着力、接触角の何れも規定範囲内であり、圧縮変位量が120μm以下である実施例1、2、5〜8は、研削可能な仕上げ厚さの何れも◎であった。
これに対し、比較例1では粘着力が低くウェハ外周部でテープが剥れためウェハエッジ部が浮いたことでエッジ割れが生じた。また、比較例2、3では変位量が150μmを上回り研削可能な仕上げ厚さが厚くなった。比較例4では粘着力が大きすぎて脆性ウェハ加工用粘着テープに紫外線を照射し、該粘着テープを剥離しようとすると、粘着剤層が紫外線硬化時に硬化収縮し、サファイアウェハが割れたため、研削可能な仕上げ厚さは不合格となった。比較例5、6は剤層表面の純水接触角が低く、耐水性が不足したために、研削可能な仕上げ厚さが十分に得られず、総合的な評価は合格レベルに到達しなかった。
【0086】
なお、開口部を有する環状フレームに、実施例1〜10の各脆性ウェハ加工用粘着テープを貼着してこの開口部を塞ぐとともに、脆性ウェハ加工用粘着テープ上に直径4インチのサファイアウェハ上に形成された素子回路表面を貼着して固定支持し、脆性ウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルム層をチャックテーブルに固定し、このサファイアウェハを貼着させて脆性ウェハ加工用粘着テープを保持した後、脆性ウェハ加工用粘着テープが貼着された面とは反対側のサファイアウェハの裏面を、バックグラインド装置(商品名:DGP8760、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハの研削厚みを変更して研削した。この結果、実施例1〜10の各脆性ウェハ加工用粘着テープはいずれも上記で評価した性能を反映し、割れやクラックがない最低厚さが80〜120μmであることを確認した。
【符号の説明】
【0087】
1 基材樹脂フィルム
2 放射線硬化性の粘着剤層
10 脆性ウェハ加工用粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有する脆性ウェハ加工用粘着テープであって、該粘着テープにおける該粘着剤層のシリコンウェハのミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜29.8N/25mmで、かつ該粘着剤層の表面の純水との接触角が85°以上であって、該粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層中の前記射線硬化性を構成する粘着剤が、ポリマーの側鎖の炭素数が4以上である(メタ)アクリル系粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層中の前記射線硬化性を構成する粘着剤が、(メタ)アクリル系粘着剤であって、かつ前記粘着剤層中の全ベース樹脂中に占める(メタ)アクリル系粘着剤の含有割合が、80〜100質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着テープにおける前記粘着剤層の厚さが、20〜70μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着テープにおける前記基材樹脂フィルムの厚さが、25〜150μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項6】
前記脆性ウェハが、サファイア、炭化ケイ素、窒化ガリウム又は砒化ガリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項7】
開口部を有する環状フレームにウェハ加工用粘着テープを貼着して該開口部を塞ぐとともに、該ウェハ加工用粘着テープ上に脆性ウェハ上に形成された素子回路表面を貼着し固定支持する工程と、
該ウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルム層をチャックテーブルに固定し、該ウェハを貼着させて該ウェハ加工用粘着テープを保持する工程と、
該ウェハ加工用粘着テープが貼着された面とは反対側の該ウェハの裏面を研削する工程からなる脆性ウェハの研削方法であって、
該ウェハ加工用粘着テープが請求項1〜6のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープであることを特徴とすることを特徴とする脆性ウェハの研削方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−72036(P2013−72036A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213345(P2011−213345)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】