説明

脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた脆性ウェハの加工方法

【課題】 脆性ウェハの裏面を研削、加工工程において、ウェハ表面に貼合することで発光層や回路面を保護し、ウェハの裏面を所定の仕上げ厚さまで問題なく研削でき、ブレーキングによるチップ分割時のチップ飛びが防止された脆ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた脆性ウェハの加工方法を提供する。
【解決手段】 基材樹脂フィルム上に、該基材樹脂フィルムから順に、少なくとも一層の放射線硬化型粘着剤から構成される層及び少なくとも一層の感圧型粘着剤から構成される層からなる粘着剤層を有し、該粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する粘着力が2.0〜15N/25mmであり、かつ放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であって、該基材樹脂フィルムの厚さが25〜150μmである脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた脆性ウェハの加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイアウェハなどの脆性ウェハの研削時に使用される脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた脆性ウェハの加工方法に関する。さらに詳しくは、発光ダイオード製造の際にサファイアウェハなどの脆性ウェハの裏面研削工程において、該ウェハ表面を保護するために用いられる脆性ウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた脆性ウェハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな光源として発光ダイオード(以下、「LED」ともいう。)の需要が急増している。LEDは低消費電力・長寿命・小型である事から、白熱灯、蛍光灯に置き換わる照明源として、また高輝度化・発光効率向上により携帯電話・液晶テレビのバックライトをはじめとする数多くの電子機器への利用等その用途は広がっている。
LEDを形成するウェハとしては、主にサファイアなどの脆性ウェハが用いられている。LED製造工程においては、例えば、サファイアウェハ上に窒化ガリウム(以下、GaN)などの発光層をエピタキシャル成長させて形成し、該基板の裏面を研磨して薄膜ウェハを得た後に、LEDチップに個片化して実装するプロセス等が採用されている。
【0003】
このような製造工程においてサファイアウェハを薄化する方法としては、サファイアウェハの裏面を研削した後、さらに研磨する方法が一般的である。このような方法では、裏面を研削する際にサファイアウェハ表面を保護するために、ワックスで固定する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、まずサブストレートにワックスでサファイアウェハを固定して研削や研磨等の加工工程を行う。そして、これらの加工工程終了後、該ウェハに加熱等の工程を施すことによりワックスを溶融させてウェハを剥離し、更に有機溶剤等を用いてワックスを洗浄除去した後、環状フレームへの貼り付けを経てダイシングなどの次工程へと運ばれる。
しかし、このようなワックスを用いた固定方法では、ウェハやサブストレートに付着したワックスを洗浄除去しなければならないために、工程が煩雑になる。また、溶剤を用いてウェハを洗浄した場合には、除去しきれなかった残存ワックスがデバイスに悪影響をもたらし、不良が発生したり、大量の溶剤を必要とするために廃液が環境に悪影響を与えたりという問題がある。このため、ワックスを使用せずにウェハ研削を行うことができる方法が望まれている。
【0005】
これに対して、特許文献1には、サファイアウェハ基板上に形成された半導体層の表面に保護テープを貼着する工程を有するサファイアウェハの研削方法が記載されている。しかし、LEDの基板として使用されるサファイアウェハは、GaAs基板と同様に脆性材料として知られ、一般的な半導体デバイスに用いられるシリコンウェハに比べて非常に脆い。このため、裏面研削時の応力でテープが変形した場合、応力によりテープ自体が大きく変形することによりサファイアウェハがそれに追従して変形し割れやクラックが発生することもあり、研削の難易度が高い。
さらに、研削中のウェハはテープ面を下にしてチャックテーブルに真空吸着されてウェハ裏面が研削される。薄膜研削されたウェハの反りが大きくウェハ加工用粘着テープの粘着力が小さい場合には、ウェハの外周部から該粘着テープが剥れやすくなり、ウェハ裏面研削時に使用される切削水の浸入によって、サファイアウェハの表面汚染及び割れが発生することがある。
【0006】
サファイアウェハの反りを抑える方法として、固定治具を用いる方法が提案されている(特許文献2参照)。これは、環状フレームにテープごとサファイアウェハを固定し研削時に半径方向に張力を印加しつつ加工を行う方法である。この方法では環状フレームによる矯正と張力により反りを抑えることができる。
【0007】
一般的にサファイアウェハを所定の厚さに研削後、ダイシングテープに転写され、ブレードやレーザー等でスクライブラインを形成した後でブレーキングによりスクライブラインを起点としてチップに分割される。研削する工程とチップを分割する工程に使用される粘着テープは要求される特性が異なるため、各工程に対応した粘着テープを貼りかえる必要があり一貫で処理可能な粘着テープが望まれていた。
また、ブレーキングによるLEDチップへの個片化の際に粘着テープの粘着剤が柔らかい場合は分割ができず、粘着力が低い場合はチップ飛びが発生する。このため、従来のシリコンウェハ用の表面保護テープを単純に併用することは適当でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−46744号公報
【特許文献2】特開2011−40631号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】梶山啓一,「LED用基板薄化加工の完全自動化」,SEMICONDUCTOR International日本版,2009年11月,14〜18頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、脆性ウェハ、特にサファイアウェハの裏面を研削する工程において、該ウェハ表面に貼合することにより発光層や回路面を保護するとともに、該ウェハの裏面を所定の仕上げ厚さまで問題なく研削することを可能とし、ブレーキングによるチップ分割まで一貫して処理することができるウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた脆性ウェハの加工方法を提供することを課題とする。
より具体的には、脆性ウェハが薄膜化されても、脆性ウェハの割れやクラック、脆性ウェハ外周部の粘着テープの剥がれがなく、しかもブレーキング時のチップ飛びがなく、脆性ウェハを加工できるウェハ加工用粘着テープ及びそれを用いた脆性ウェハの加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、基材樹脂フィルム上のウェハ加工用粘着テープの粘着層を、少なくとも二層とし、この二層を基材樹脂フィルムから順に、放射線硬化型粘着剤層及び感圧型粘着剤層の構成とすること、これに加えて、放射線硬化前の該粘着テープにおける粘着力、圧縮変位量及び基材樹脂フィルムの厚みが重要であり、これらを特定の範囲内にすることで、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づきなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明の上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)基材樹脂フィルム上に、該基材樹脂フィルムから順に、少なくとも一層の放射線硬化型粘着剤から構成される層及び少なくとも一層の感圧型粘着剤から構成される層からなる粘着剤層を有し、該粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する粘着力が、2.0〜15N/25mmであり、かつ放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であって、該基材樹脂フィルムの厚さが25〜150μmであることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(2)前記粘着剤層において、前記放射線硬化型粘着剤から構成される層の厚さが10〜60μmであり、前記感圧型粘着剤から構成される層の厚さが1〜10μmであり、かつ該粘着剤層の全体の厚さが20〜70μmであることを特徴とする(1)に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(3)少なくとも、脆性ウェハ加工用粘着テープを環状フレーム上に貼着するとともに脆性ウェハの素子回路表面に貼合して支持する工程、該脆性ウェハ加工用粘着テープが貼着された面とは反対側の該脆性ウェハを研削する工程、及びブレーキングにより個々のチップに分割される工程からなる脆性ウェハの加工方法であって、該脆性ウェハ加工用粘着テープが(1)又は(2)に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープであることを特徴とする脆性ウェハの加工方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、脆性ウェハ、特にサファイアウェハの裏面を研削する工程において、該ウェハ表面に貼合して発光層や回路面を保護するとともに環状フレームに貼合することで実用上十分な厚さまで反りを抑制し裏面研削を行うことが可能であり、テープを張り替えることなくブレーキングによるチップ分割まで一貫処理することが可能である。また、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープによれば、脆性ウェハ加工用粘着テープを剥離した後のウェハ表面の汚染を防止することができ、別途洗浄工程を必要としないことから、製造工程が簡略化され、洗浄液等の廃液による環境への負荷も低減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの一実施形態を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの好ましい実施形態について説明する。
図1は本発明のウェハ加工用粘着テープの好ましい一実施形態を示す概略断面図である。本発明のウェハ加工用粘着テープ3は、基材樹脂フィルム1と、粘着剤層2からなり、この粘着剤層2は、放射線硬化型粘着剤層21と、その上に塗工された感圧型粘着剤層22からなる。
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、サファイアウェハをはじめとする脆性ウェハの加工に用いられる。以下、脆性ウェハの一例として、サファイアウェハの加工工程をもって説明する。脆性ウェハの材料としては、サファイア以外に、GaAs、GaN、InPなどが挙げられる。
【0016】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、前記のとおり、基材樹脂フィルム上に、基材樹脂フィルムから順に、少なくとも一層の放射線硬化型粘着剤層と少なくとも一層の感圧型粘着剤層からなる粘着剤層を有するものである。
本発明において、脆性ウェハ加工用粘着テープ上に上記の二層の粘着剤層が積層された状態でのシリコンウェハのミラー面に対する放射線硬化前の粘着力は、2.0〜15N/25mmである。
上記粘着力が2.0N/25mmより小さすぎると、サファイアウェハを薄膜まで研削した場合の反りにより、ウェハのエッジ部から粘着テープが剥れ、その部分にウェハのエッジクラックを引き起こす原因となることがあり、またブレーキングによるチップ分割時にチップ飛びを生じることがある。反対に、上記粘着力が15N/25mmより大きすぎる場合には粘着剤が発光層や回路面に悪影響を及ぼしたり、キャリアテープ等への転写が行えないことがある。
【0017】
脆性ウェハ加工用粘着テープの粘着力は、JIS H 0614により、製造されたシリコンミラー面に対して、実施例に記載したように、JIS B 7721に準拠して、引張試験機で粘着力を測定することで求めることができる。
より具体的には、例えば、脆性ウェハ加工用粘着テープから、幅25mm×長さ150mmの試験片を3点採取し、その試験片を厚さ400μm以上(好ましくは400μm)のシリコンミラー面に2kgのゴムローラを3往復かけ圧着し、1時間放置後、JIS B 7721に準拠して、引張試験機を使用し、180°引きはがし法にて、測定温度23℃、測定湿度(相対湿度)50%で、かつ引張速さ300mm/minの条件で測定することで求められる。
【0018】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、サファイアウェハをはじめとする脆性ウェハ表面に貼合されるものである。裏面研削時には、サファイアウェハにはその硬さのため、通常のシリコンウェハの研削時よりも大きな力が加えられる。本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の圧縮変位量は150μm以下である。この圧縮変位量は120μm以下がより好ましい。圧縮変位量が150μmより大きすぎると、裏面加工時の応力により、脆性ウェハ加工用粘着テープの特に粘着剤層が変形し、ウェハ割れの原因となることがある。
なお、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、ウェハ表面に追従して密着する必要があるため、圧縮変位量は、20μm以上が好ましい。
ここで、本発明における圧縮変位量は、以下の方法で求めた値である。
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルム層と、粘着剤層を突き合わせて5枚積層する。この積層された脆性ウェハ加工用粘着テープを、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加する。応力付与前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50N圧縮応力付加時の変位量を圧縮変位量の測定値とする。
【0019】
次に、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおいて、粘着剤層全体の厚さは、20〜70μmであることが好ましい。サファイアウェハ表面にはGaNなどの発光層が形成されており、凹凸が存在している。このため粘着剤層の厚さが薄すぎると、この凹凸に追従することが困難になり、ウェハ割れや裏面に研削痕(ディンプル)が残り易くなる。粘着剤層の厚さが厚すぎると、研削時の応力に対して粘着剤が変形し、ウェハが変形して割れることがある。
なお、粘着剤層の厚さにおいて、粘着剤層を構成する放射線硬化型粘着剤層を10〜60μm、感圧型粘着剤層の厚さを1〜10μmとすることが望ましい。放射線照射による硬化が起こらない感圧型粘着剤層が10μmより厚くなると、放射線照射後のブレーキング時に感圧型粘着剤層が衝撃を吸収してしまいチップ分割がされない箇所が発生してしまうことがあるからである。
【0020】
また、基材樹脂フィルムの厚さは25〜150μmであり、50〜150μmであることが好ましい。基材樹脂フィルムの厚さが25μmより薄すぎると、脆性ウェハ加工用粘着テープとしての剛性が不足し、ウェハの反りを抑制することが困難になることがある。一方、基材樹脂フィルムの厚さが150μmより厚すぎると、脆性ウェハ加工用粘着テープの可撓性が低くなることがある。
これらのことから、上記の範囲でない場合、ウェハ加工用粘着テープをウェハに貼合する場合や、ウェハから剥離する際の作業性が著しく悪化することがある。
【0021】
(粘着剤層)
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤層は、前記のとおり、少なくとも一層の放射線硬化型粘着剤層と少なくとも一層の感圧型粘着剤層からなるものであるが、最外層が感圧型粘着剤層であればよく、用いられる粘着剤の種類や構成は、上記の粘着力や圧縮変位量を有するものであれば特に限定されない。
【0022】
(放射線硬化型粘着剤層)
前記粘着剤層を構成する放射線硬化型の粘着剤層は、単一の粘着剤で構成されたものでも、複層の粘着剤層で積層されたものもよい。
一般に、粘着剤は樹脂組成物であるが、放射線硬化型粘着剤層を構成する樹脂組成物のベース樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主鎖の繰り返し単位とし、この主鎖に放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造〔−C(=O)CH=CH又は−C(=O)C(CH)=CH〕を有する残基が結合した重合体(a)を主成分とすることが好ましい。重合体(a)を主成分とするとは、放射線硬化型粘着剤層を構成する樹脂組成物の全ベース樹脂中の含有割合が80〜100質量%のものをいう。
なお、本発明においては、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」と「メタクリル」の両者を含むものとする。
【0023】
前記重合体(a)は、どのようにして製造されたものでもよい。例えば、前記重合体(a)としては、官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体(a1)と、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する炭素−炭素二重結合を有するとともに上記共重合体(a1)の官能基と反応し得る官能基を有する化合物(a2)とを反応させて得たものを挙げることができる。あるいは、主鎖の繰り返し単位に対して、側鎖に放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する炭素−炭素二重結合と官能基とを有する(メタ)アクリル系共重合体(a1’)と、この共重合体(a1’)の官能基と反応し得る官能基をもつ化合物(a2’)とを反応させて重合体(a)を得ることもできる。
前記の主鎖の繰り返し単位に、前記の官能基を有する(メタ)アクリル系重合体(a1)は、例えば、前記官能基(以下の単量体(a1−2)が有する官能基)を有さないアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルなどの単量体(a1−1)と、前記官能基を有する単量体(a1−2)とを共重合させて得ることができる。
【0024】
単量体(a1−1)としては、例えば、アルキルエステルのアルコール部の炭素数が6〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−デシルアクリレート、またはこれらに対応するメタクリレート)を挙げることができる。また、単量体(a1−1)としては、例えば、アルキルエステルのアルコール部の炭素数が5以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、n−ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはこれらに対応するメタクリレート)を挙げることができる。
【0025】
単量体(a1−1)として、アルキルエステルのアルコール部の炭素数が大きな(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用するほどガラス転移温度(Tg)は低くなる傾向にある。従って、単量体(a1−1)のアルキルエステルのアルキル基の炭素数を適宜選択することにより、所望のガラス転移温度を有する重合体(a)を得ることができる。
また、ガラス転移温度の他、他の成分との相溶性や各種性能を上げる目的で、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を(a1−1)とともに使用し、共重合体(a)を得ることができる。これらの低分子化合物の配合量は、単量体(a1−1)の5質量%以下とすることが好ましい。
【0026】
単量体(a1−2)が有する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。単量体(a1−2)の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート類などを列挙することができる。
【0027】
前記放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造を有し、かつ前記重合体(a1)が有する官能基〔前記単量体(a1−2)が有する官能基〕と反応しうる官能基を有する化合物(a2)の官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がカルボキシル基や環状酸無水基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基が水酸基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がアミノ基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がエポキシ基である場合には、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、環状酸無水基、アミノ基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がイソシアネート基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などを挙げることができる。
これらの具体例としては、単量体(a1−2)の具体例で列挙したもののうち、無水フタル酸以外のものと同様のものを列挙することができる。
【0028】
上記重合体(a1)と上記化合物(a2)の反応において、未反応の官能基を残すことにより、酸価または水酸基価などを適宜設定することができる。
重合体(a1)は、単量体(a1−1)と単量体(a1−2)とを、各種の溶剤中で溶液重合することにより得ることができる。溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができる。一般に、(メタ)アクリル系重合体の良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤を使用することが好ましい。例えば、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。重合開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を用いることができる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節することにより、所望の分子量の重合体(a1)を得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、重合体(a1)の合成は、溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0029】
重合体(a)は、前記重合体(a1)の反応液に、前記化合物(a2)を加えることによって合成することができる。
重合体(a)中における前記化合物(a2)の占める割合は、10〜50モル%が好ましく、15〜40モル%がより好ましい。
また、重合体(a)中には、(メタ)アクリル酸から得られる繰り返し単位を有することが好ましく、重合体(a)中に占める(メタ)アクリル酸から得られる繰り返し単位の比率は0.1モル%〜5モル%が好ましい。
【0030】
本発明のウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤層の、放射線硬化型粘着剤層を構成する樹脂組成物のベース樹脂は、前記のとおり、(メタ)アクリル系単量体を主鎖の繰り返し単位とし、かつ、この主鎖に放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造を有する残基が結合した重合体(a)を主成分とすることが好ましいが、該重合体(a)以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、従来使用されてきた各種の成分を配合してもよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成単量体単位の1つとして含む(メタ)アクリル系共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリル系共重合体には、その他の官能基を有する単量体をさらに共重合させたものを挙げることができる。構成単量体単位として使用される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリレートル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0031】
また、前記粘着剤層を構成する樹脂組成物の放射線硬化前におけるDSC測定によるガラス転移温度は、−40〜−10℃であることが好ましい。DSC測定によるガラス転移温度とは、昇温速度0.1℃/分でDSC(示差走査熱量計)により測定されたものをいう。
【0032】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤層のうち、放射線硬化型粘着剤層を構成する樹脂組成物には、従来の光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を単独で、又は併用することができる。これらのうち少なくとも1種類を、粘着剤を構成する樹脂組成物に添加することにより、効率よく放射線照射による硬化反応を進行させることができる。なお、ここで言う放射線とは、紫外線のような光線、または電子線のような電離性放射線のことをさす。光重合開始剤の含有量は特に制限するものではないが、好ましくは前記の放射線硬化型粘着剤層中の全ベース樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
【0033】
(感圧型粘着剤層)
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤層は、少なくとも前記の放射線硬化型粘着剤層が一層と、最外層として感圧型粘着剤層を有するものであるが、感圧型粘着剤としては(メタ)アクリル系、シリコーン系、ゴム系、ポリビニルエーテル系等の各種粘着剤を用いることができる。なかでも、発光層や素子回路を有するウェハや基材フィルムへの密着性などの点から、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0034】
上記(メタ)アクリル系粘着剤は、ベース樹脂として(メタ)アクリル系共重合体を有し、(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の単量体(b1)と、後述する硬化剤と反応しうる官能基を有する単量体(b2)を共重合してなる。
【0035】
単量体(b1)としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0036】
単量体(b2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
(メタ)アクリル系共重合体は、上記単量体(b1)と(b2)を溶液重合法、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの重合方法により得られるものであってもよい。
【0038】
本発明のウェハ加工用粘着テープの粘着剤を構成する感圧型粘着剤層において、ベースとなる樹脂組成物は、前記のベース樹脂に加えて、硬化剤(架橋剤)を含有し、ベース樹脂を架橋するものとすることが好ましい。硬化剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。
硬化剤の含有量は、所望の粘着力に応じて調整すれば良く、上記のベース樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5質量部、特に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
なお、このような感圧型粘着剤の粘着力は、適宜オリゴマーや単量体を加えることにより調整することができる。
【0039】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤層は、前記のとおり、基板樹脂フィルム上に少なくとも一層の放射線硬化型粘着剤層と、最外層に感圧型粘着剤層を有するものである。従って、粘着剤層は少なくとも2層であるが、3層以上であってもよい。粘着剤層が3層以上である場合には、粘着剤層は、最外層が感圧型着剤層であって、これ以外の粘着剤層(中間層)の少なくとも一層が放射線硬化型粘着剤層であれば、残りの中間層の積層順序や構成は特に制限されない。
【0040】
本発明の脆性ウェハの加工方法は、少なくとも、ウェハ加工用粘着テープを環状フレーム上に貼着するとともに脆性ウェハの素子回路表面(発光層表面も含む)に貼合して支持する工程、該脆性ウェハ加工用粘着テープが貼着された面とは反対側の該脆性ウェハを研削する工程、及びブレーキングにより個々のチップに分割される工程からなる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
<ウェハ加工用粘着テープの作製>
〔実施例1〕
1.放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A1)の調製
(1)(メタ)アクリル系単量体を主鎖の繰り返し単位とし、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用する(メ)タクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)の調製
ブチルアクリレート(69mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(30mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)を得た。
【0043】
(i)質量平均分子量
重合体(a)について、下記条件のGPC(ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で質量平均分子量を測定した。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000(商品名、東ソー社製)
流量:0.6ml/min
濃度:0.3質量%
注入量:20μl
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
【0044】
(ii)二重結合当量
ヨウ素価測定法により、重合体(a)1g中の炭素−炭素二重結合当量(ミリ当量)を算出した。
得られた重合体(a)の質量平均分子量は80万、また二重結合当量は0.8(meq/g)であった。
【0045】
(2)放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A1)の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.5質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2.5質量部を配合して、放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A1)を調製した。
【0046】
2.感圧型粘着剤を構成する樹脂組成物(B1)の調製
(b1)として2−エチルヘキシルアクリレート(93質量%)、(b2)として硬化剤と反応する官能基がカルボキシル基であるアクリル酸(7質量%)を使用し、得られた共重合体100質量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学(株)製,テトラッドC)0.25質量部を配合して、感圧型粘着剤層を構成する樹脂組成物(B1)を調製した。
【0047】
3.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(A1)を乾燥後の厚さが40μmとなるように塗工後、さらにその上に、上記の樹脂組成(B1)を乾燥後の厚さが10μmとなるように塗工、適宜養生して、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0048】
〔実施例2〕
1.放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A2)の調製
(1)(メタ)アクリル系単量体を主鎖の繰り返し単位とし、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用する(メ)タクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)の調製
実施例1と同様にして、質量平均分子量が80万、二重結合当量が1.2(meq/g)となるように、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸からなるアクリル系共重合体を調製し、その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)を得た。
(2)放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A2)の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を1.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(A2)を調製した。
【0049】
2.感圧型粘着剤を構成する樹脂組成物は、実施例1で調製した樹脂組成(B1)を使用した。
3.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(A2)を乾燥後の厚さが40μmとなるように塗工後、さらに樹脂組成(B1)を乾燥後の厚さが10μmとなるように塗工、適宜養生して、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0050】
〔実施例3〕
基材樹脂フィルムを、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)とした以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0051】
〔実施例4〕
基材樹脂フィルムを、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)とした以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0052】
〔実施例5〕
基材樹脂フィルムを、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)とした以外は実施例2と同様の操作を行った。
【0053】
〔実施例6〕
基材樹脂フィルムを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に変更し、放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A2)を、乾燥後の厚さが60μmとなるように塗工した以外は、実施例4と同様の操作を行った。
【0054】
〔実施例7〕
放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A2)を、乾燥後の厚さが10μmとなるように塗工した以外は、実施例6と同様の操作を行った。
【0055】
〔実施例8〕
放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A2)を、乾燥後の厚さが40μmとなるように塗工し、かつ感圧型粘着剤を構成する樹脂組成(B1)を、乾燥後の厚さが1μmとなるように塗工した以外は、実施例6と同様の操作を行った。
【0056】
〔実施例9〕
1.放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物としては、実施例2〜9と同様に、(A2)を使用した。
2.感圧型粘着剤を構成する樹脂組成物(B2)の調製
(b1)としてブチルアクリレート(78質量%)、(b2)として硬化剤と反応する官能基がカルボキシル基であるアクリル酸(22質量%)を使用し、これらの共重合体100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学(株)製,テトラッドC)0.2質量部を配合して、粘着剤層を構成する樹脂組成物(B2)を調製した。
【0057】
3.ウェハ加工用粘着テープの作製
放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A2)を、乾燥後の厚さが40μmとなるように塗工し、かつ感圧型粘着剤を構成する樹脂組成に上記樹脂組成物(B2)を使用した以外は、実施例7と同様の操作を行った。
【0058】
〔比較例1〕
放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物(A2)を(A1)に変更し、かつ感圧型粘着剤を構成する樹脂組成(B1)を、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗工した以外は、実施例6と同様の操作を行った。
【0059】
〔比較例2〕
基材樹脂フィルムとして、厚さ20μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を適用した以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0060】
〔比較例3〕
基材樹脂フィルムとして、厚さ165μmのポリオレフィンを適用した以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0061】
〔比較例4〕
1.放射線硬化型粘着剤を構成する樹脂組成物は、実施例2〜9と同様に、樹脂組成物(A2)を使用した。
2.感圧型粘着剤を構成する樹脂組成物(B3)の調製
(b1)として2−エチルヘキシルアクリレート(93質量%)、(b2)として硬化剤と反応する官能基がカルボキシル基であるアクリル酸(7質量%)を使用し、これらの共重合体100質量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学(株)製,テトラッドC)0.35質量部を配合して、粘着剤層を構成する樹脂組成物(B3)を調製した。
【0062】
3.ウェハ加工用粘着テープの作製
感圧型粘着剤を構成する樹脂組成として上記で調製した樹脂組成物(B3)を使用した以外は、実施例9と同様の操作を行った。
【0063】
〔比較例5〕
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(A2)を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工、適宜養生して、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0064】
<ウェハ加工用粘着テープの評価>
1.粘着力
実施例1〜9及び比較例1〜5の各ウェハ加工用粘着テープから、幅25mm×長さ150mmの試験片を3点採取し、それらの試験片をシリコンウェハのミラー面に2kgのゴムローラを3往復かけ圧着した。1時間放置後、JIS B 7721に準拠した引張試験を行って紫外線硬化前の粘着力を測定した。
測定は、180°引きはがし法により、引張速さ300mm/min、測定温度23℃、測定湿度(相対湿度)50%の条件で行った。粘着力が2.0〜15N/25mmのものを合格とし、2.0N/25mm未満のもの及び15N/25mmを越えるものを不合格とした。
【0065】
2.圧縮変位量
実施例1〜9及び比較例1〜5の各ウェハ加工用粘着テープを200mm×200mm程度の大きさに5枚切断し、基材樹脂フィルムと粘着剤層との間で積層した。その積層されたものを25mm×55mmに切断し、これを試験片とした。この試験片を、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加した。応力印加前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50N圧縮応力印加時の変位量を測定値とした。
圧縮変位量が150μm以下のものを合格、150μmを越えるものを不合格とした。
【0066】
3.ウェハ外周部のテープ剥れ
直径4インチのサファイアウェハ表面、及び環状フレームにウェハ加工用粘着テープを貼合し、バックグラインド装置(商品名:DFG8540、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハの厚さが100μmとなるまでウェハ裏面を研削した。なお、100μmまで研削できない場合は、研削可能な仕上げ厚さでの反りとした。研削後のテープが貼合されたウェハ外周部を目視にて観察し、研削前と比較してテープが剥れていないものを○、一部でもテープが浮き上がっているものを×とした。
【0067】
4.研削可能な仕上げ厚さ
直径4インチのサファイアウェハ表面、及び環状フレームに実施例1〜9及び比較例1〜5の各ウェハ加工用粘着テープを貼合し、バックグラインド装置(商品名:DFG8540、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハ裏面を研削した。ウェハ裏面の研削厚さを変えて研削を行い、研削終了後のウェハを観察し、割れやクラックがない最低厚さを、研削可能な仕上げ厚さとした。80〜90μmを◎、91〜120μmを○、121〜164μmを△、165μm以上を×とした。
【0068】
5.チップ分割
直径4インチのサファイアウェハ表面、及び環状フレームに実施例1〜9及び比較例1〜5の各ウェハ加工用粘着テープを貼合し、バックグラインド装置(商品名:DFG8540、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハの厚さが100μmとなるまでウェハ裏面を研削した。なお、100μmまで研削できない場合は、研削可能な仕上げ厚さまでの反りとした。次にブレードダイシング、レーザーダイシング、プラズマダイシング等公知の方法で分割溝を作成した後、高圧水銀灯(80W/cm)下に10秒間曝した。その後、ブレーキングを行い個々のチップに分割を行った。ブレーキング時にチップ飛びのない物を◎、問題とならない程度のチップ飛びがあったものを○、チップ分割が部分的にできなかったものを△、チップ飛びが頻繁にあったものを×、とした。
これらの方法により評価したウェハ外周部のテープ剥れ、研削可能な仕上げ厚さ、及びチップ分割性のいずれもが、○又は◎のランクのものを合格とし、これ以外のランクのものを不合格とした。
【0069】
これらの結果をまとめて、下記表1、2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1、2に示されるように、粘着剤層が、放射線硬化型粘着剤層と感圧型粘着剤層を順に塗工してなり、粘着テープにおける粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が、2.0〜15N/25mmで、かつ粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下である実施例1〜9のウェハ加工用粘着テープを用いてサファイアウェハの加工を行った場合、ウェハの反りやチップ分割(ブレーキング)時のチップ飛びがほとんど見られず、さらに研削可能な仕上げ厚さも非常に薄くできることが確認された。
【0073】
これに対し、粘着剤層が、放射線硬化型粘着剤層と感圧型粘着剤層を順に塗工してなる場合でも、粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μmを越える比較例1では、研削可能な仕上げ厚さが厚くなった。これは、裏面研削時の応力により、ウェハ加工用粘着テープの粘着剤層が変形し、ウェハ割れが生じやすくなったためと考えられる。また、比較例1では、チップ分割時に分割が出来ていない部分が見られた。これは、最外層である感圧型粘着剤層の厚さが20μmであり、粘着剤層がブレーキング時の衝撃を吸収するためである。
【0074】
さらに、粘着剤層が、放射線硬化型粘着剤層と感圧型粘着剤層を順に塗工してなる場合でも、基材樹脂フィルムの厚さを25μm未満としたウェハ加工用粘着テープ(比較例2)では、薄く研削する前に割れてしまった。これは、基材樹脂フィルムの厚さが薄すぎたために、加工時の応力を緩和できなかったためと考えられる。また、基材樹脂フィルムの厚さが165μmであるウェハ加工用粘着テープ(比較例3)では、基材樹脂フィルムが厚すぎることでチップ分割ができない部分が見られた。
そして、粘着テープにおける放射線硬化前の粘着力が2.0N/25mm未満の場合(比較例4)には、粘着力が不十分なためテープが剥れ、研削時にクラックが生じ、研削可能な仕上げ厚さが十分ではなく、また、放射線硬化後の粘着力が不十分なため、チップ分割時のチップ飛びも多く見られた。
【0075】
粘着剤層が、最外層に感圧型粘着剤層を有しない場合(比較例5)には、放射線硬化後の粘着力が小さいため、ブレーキングによるチップ分割時にチップ飛びが多く見られた。
【符号の説明】
【0076】
1 基材樹脂フィルム
2 粘着剤層
21 感圧型粘着剤層
22 放射線硬化型粘着剤層
3 脆性ウェハ加工用粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂フィルム上に、該基材樹脂フィルムから順に、少なくとも一層の放射線硬化型粘着剤から構成される層及び少なくとも一層の感圧型粘着剤から構成される層からなる粘着剤層を有し、該粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する粘着力が、2.0〜15N/25mmであり、かつ放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であって、該基材樹脂フィルムの厚さが25〜150μmであることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層において、前記放射線硬化型粘着剤から構成される層の厚さが10〜60μmであり、前記感圧型粘着剤から構成される層の厚さが1〜10μmであり、かつ該粘着剤層の全体の厚さが20〜70μmであることを特徴とする請求項1に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項3】
少なくとも、脆性ウェハ加工用粘着テープを環状フレーム上に貼着するとともに脆性ウェハの素子回路表面に貼合して支持する工程、該脆性ウェハ加工用粘着テープが貼着された面とは反対側の該脆性ウェハを研削する工程、及びブレーキングにより個々のチップに分割される工程からなる脆性ウェハの加工方法であって、該脆性ウェハ加工用粘着テープが請求項1又は2に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープであることを特徴とする脆性ウェハの加工方法。

【図1】
image rotate