説明

脆性発泡体の製造方法および該製造方法より得られる脆性発泡体を基材とするフラワーアレンジメント用台座

【課題】フラワーアレンジメント用台座に好適に使用しうる脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体からなる脆性発泡体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 独立気泡率が40%以下である脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解して脆性発泡体とすることを特徴とする脆性発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解処理してなる脆性発泡体の製造方法、および該製造方法より得られた脆性発泡体を用いたフラワーアレンジメント用台座に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主としてフェノールフォーム、ポリウレタンフォームからなる脆性発泡体がフラワーアレンジメント用台座として用いられている。例えば、特許文献1には、連続気泡を有するフェノールフォームからなる生花用剣山が開示されている。
【0003】
このようなフェノールフォーム製の剣山は、軽量で加工や表現の自由度が高いことに加え、適度な脆性を有することで花を挿したときの感触がよく、また、挿した花の保持性が良好であるという特徴を有する。その製法としては、フェノール樹脂と硬化剤、発泡剤などとを一緒に混合加熱し、泡化反応と樹脂化反応を同時に行わせて得られる、一般的な方法が開示されている。しかしながら、フェノールフォームは熱硬化性樹脂であるため、再生(リサイクル)使用ができないという問題がある。さらに、フェノールフォーム製の台座は生分解性を持たないことから、廃棄の際、挿してある花と分別して処理する必要があるという課題を有しており、生分解性樹脂を基材に用いた台座が要望されるようになっている。
【0004】
このような状況のもと、例えば、特許文献2には酢酸セルロースを主成分とする連続気泡体からなるフラワーアレンジメント用台座が開示されている。連続気泡体の製法としては、発泡剤を使用したり、酢酸セルロースを溶剤に溶解したドープを乾式凝固或いは湿式凝固する方法が開示されている。しかしながら、実施例で開示されている連続気泡発泡体は製造に際し、多量の溶剤を必要とする上、気泡構造の調整が困難であるものと推測される。また、花を挿す際の感触をよくするために求められる適度な脆性を付与するために、生分解性のない無機化合物を多量に加える必要がある。
【0005】
また、特許文献3には、ポリカプロラクトン、酢酸セルロース、変性デンプン、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックを押出発泡して得られた連続気泡体を用いたフラワーアレンジメント用台座が開示されている。しかしながら、ここで得られる発泡体も、一般的な製法によって製造されており、また、得られた花を挿す際の感触をよくするために求められる適度な脆性を付与するために、生分解性のない無機化合物を多量に加える必要がある。また、この発泡体は押出発泡により直接連続気泡構造の発泡体として得られるものであることから、内部気泡構造を均一にしがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−75193号公報
【特許文献2】特開2000−333802号公報
【特許文献3】特開2000−217683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フラワーアレンジメント用台座に好適に使用しうる脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体からなる脆性発泡体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題に対して鋭意検討した結果、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解処理して得られた脆性発泡体が、優れた脆性および花挿し性を示すことを見出した。しかしながら、発泡体の製造においては、前記加水分解処理中の熱により処理される発泡体が膨張しやすく、その場合、発泡体内部に粗大な気泡ができたり、また、表面や内部に微小な割れが入る場合があることがわかった。そこで、連続気泡率の高い、すなわち独立気泡率の低い脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解することで、加水分解時の発泡体膨張を大幅に抑制でき、その結果、表面及び内部に微小な割れのない美麗な気泡構造を有する脆性発泡体が容易に得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の構成よりなる。
〔1〕 独立気泡率が40%以下である脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解して脆性発泡体とすることを特徴とする脆性発泡体の製造方法。
〔2〕 独立気泡率が20%以下である脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解して脆性発泡体とすることを特徴とする〔1〕記載の脆性発泡体の製造方法。
〔3〕 前記独立気泡率が40%以下である脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体が、独立気泡率70%以上、かつ見かけ密度が、0.014g/cm3以上0.038g/cm3以下である発泡体を加工処理して得られるものであることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の脆性発泡体の製造方法。
〔4〕 加工処理が機械的な圧縮であることを特徴とする〔3〕記載の脆性発泡体の製造方法。
〔5〕 加水分解が、温度60℃以上100℃以下かつ相対湿度60%以上で行われることを特徴とする〔1〕〜〔4〕何れかに記載の脆性発泡体の製造方法。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕何れかに記載の製造方法で得られる脆性発泡体を基材とするフラワーアレンジメント用台座。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、優れた脆性及び花挿し性を有した脆性発泡体を、膨張を抑えて製造することが出来る。そのため、表面及び内部まで美麗な気泡構造を有した脆性発泡体を提供することが出来る。
【0011】
そのため、本発明の製造方法によって得られた脆性発泡体は、例えば、フラワーアレンジメント用台座として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、連続気泡率が40%以下である脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解することを特徴とする脆性発泡体の製造方法である。
【0013】
脆性発泡体とは、荷重がかかった際に大きな弾性変形を示さずに破壊に至る、いわゆるもろい性質を有する発泡体をいい、ことに本発明においては、花の茎を挿した際、茎が折れることなく、セル壁の破壊を伴いながら差し込むことができる程度のもろさを有する発泡体をいう。
【0014】
本発明で使用する脂肪族ポリエステル系樹脂とは、脂肪族ポリエステルを主たる成分(50重量%以上)とするものをいい、例えば、ポリ乳酸を主たる成分とするポリ乳酸系樹脂、ポリ3−(ヒドロキシブチレート)、ポリ3−(ヒドロキシブチレートーコーバリレート)、ポリ3−(ヒドロキシブチレートーコーヘキサノエート)等を代表とするヒドロキシ酸重縮合物や、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の、主成分として脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物からなる樹脂などが例示でき、それらの群より選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上を混合して使用することもできる。
【0015】
また、本発明の効果を阻害しない範囲においては、脂肪族ポリエステル系樹脂に他の樹脂を添加して基材樹脂とする事ができる。基材樹脂中には脂肪族ポリエステル系樹脂が50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。前記他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、前記したもの以外のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース及びその誘導体等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、本発明の効果を得るには、脂肪族ポリエステル系樹脂として、ポリ乳酸系樹脂及びヒドロキシ酸重縮合物が好ましく、特にポリ乳酸系樹脂が環境に優しい点、加工が容易である点から好ましい。
【0017】
ポリ乳酸系樹脂を用いる場合、使用できる樹脂に特に限定はないが、乳酸成分の異性体比率が5%以上、好ましくは8%以上であるポリ乳酸を主成分としたものであることが好ましい。当該範囲であればポリ乳酸は本質的に非晶性であり、発泡性、成形性の点から低密度の発泡体を得やすい傾向があるため好ましい。
【0018】
本発明において使用する脂肪族ポリエステル系樹脂は、増粘処理しておくことが、発泡性、成形性の観点から好ましい。増粘処理としては、増粘処理により脂肪族ポリエステル系樹脂を発泡に適する粘度領域まで増粘させる方法が使用でき、従来公知の各種の方法、例えば、ポリイソシアネート化合物、過酸化物、酸無水物、エポキシ化合物、有機シラン化合物等、一般的な架橋剤を用いる方法、電子線を用いた架橋方法等が使用できるが、コストを含めた実施の容易さから架橋剤を用いる方法が好ましい。
【0019】
架橋剤の中でも、ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。その理由は、ポリイソシアネート化合物を用いれば、混練時の架橋増粘によるトルクアップが少なく、混練後に水分の存在下で加熱することで尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合などによる後増粘が可能だからである。ポリイソシアネート化合物の中でも、汎用性、取り扱い性、耐候性等の観点からトリレン、ジフェニルメタン骨格とするポリイソシアネート化合物、特にジフェニルメタンのポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0020】
前記架橋剤の添加量は、所望の溶融特性を得られるよう、架橋方法や架橋剤ごとに調整して決めることが出来る。その量は架橋剤の種類や官能基量によって異なるが、概ね脂肪族ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.1重量部以上6.0重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2重量部以上5.0重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以上4.0重量部以下である。
【0021】
加水分解を行う脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体(以下、処理前発泡体と呼ぶことがある)は、独立気泡率が40%以下、より好ましくは20%以下である。
【0022】
独立気泡率が40%以下の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解することで、膨張することなく、花挿し性が良好な脆性発泡体を得ることが出来る。なお、本発明において、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体の独立気泡率は、エアピクノメーターを用いて測定された発泡体体積を、別途、水を入れたメスシリンダーに発泡体を沈め、沈める前後のメスシリンダーの容量差である発泡体の水没体積で除したもの百分率にて表記したものである。
【0023】
処理前発泡体は、連続気泡率が40%以下であるようにできるのであれば、その製法には特に限定はなく、溶融樹脂に発泡剤を導入し押出発泡する、独立気泡率が高い発泡体を作製し、これを加工処理する、等の方法で得ることが出来る。
【0024】
連続気泡率の高い発泡体が、一般的には入手しやすいため後者の方法であることが好ましく、処理前発泡体は、独立気泡率70%以上、かつ見かけ密度が0.014g/cm3以上0.038g/cm3以下である発泡体(以下、原料発泡体と称する場合がある)を加工処理して得られるものであることがより好ましい。
【0025】
このような原料発泡体は、当該範囲の見かけ密度を有することで加工処理及び加水分解処理後に良好な花挿し性を有する、フラワーアレンジメント用台座として好適に用いられる脆性発泡体とすることができるため好ましい。また、比較的高い独立気泡率の原料発泡体は、粗大セルを含まない比較的均一なセル径分布を有する構造であるため、本発明の製造方法によって脆性発泡体としたときに、表面及び内部まで美麗な気泡構造を有した脆性発泡体としやすい傾向がある。
【0026】
原料発泡体を処理前発泡体とする加工処理の具体的方法としては、比較的高い独立気泡率を有する発泡体の独立気泡率を低下させることが出来るのであれば特段の限定はない。例えば、原料発泡体をプレスにて、20〜75%の圧縮率で圧縮する方法、互いに相対して回転している一対のロール間で、原料発泡体を20〜50%の圧縮率で圧縮する方法、互いに相対して回転しており、かつベルト間の距離が進行方向に向いて一定であるかもしくは序々に短くなるように設置された一対のベルトコンベアの間で原料発泡体を20〜75%の圧縮率で圧縮する方法などの機械的な圧縮による方法;針状突起物により原料発泡体に多数の穿孔を行う方法、高い圧力下に置かれた水等の液体を微小な穴から噴出させ、その力により発泡体に多数の穿孔を行う方法などの穿孔による方法等があげられる。これらのうち、処理の容易性や加工処理後の発泡体表面の外観が良好である点、コスト面の優位性から、機械的な圧縮による方法が好ましい。
【0027】
加工処理が機械的な圧縮である場合、効果的に独立気泡率を低下させることができることから、加工処理は0℃以上基材樹脂のガラス転移温度(Tg)以下の温度で行われることが好ましく、10℃以上35℃以下の範囲で行われることがより好ましい。
【0028】
このようにして得られた処理前発泡体は、好ましくは60℃以上100℃以下、かつ相対湿度が好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上の条件のもとで加水分解して脆性発泡体とする。
【0029】
前記した範囲の温度及び湿度条件で加水分解を行うことにより、高い生産性で、かつ良好な花挿し性を示す脆性発泡体を得ることができる傾向がある。また、加水分解の時間は、処理前発泡体を構成する基材樹脂の種類にもよるが、一般に3時間以上48時間以下であることが好ましい。
【0030】
加水分解温度が60℃より低いと、満足な特性を示す脆性発泡体を得るのに処理時間が長くなる傾向がある。加水分解温度が100℃を超えると、用いる処理前発泡体を構成する基材樹脂の種類にもよるが、基材樹脂が軟化することに伴う収縮が起こる場合がある。
【0031】
また、加水分解時の湿度が60%より低いと、満足な特性を示す脆性発泡体を得るのに処理時間が長くなる傾向がある。さらに、加水分解時に、加水分解時間を短縮する目的で、微量のアルカリ成分を含んだアルカリ蒸気により加水分解を行ってもよい。
【0032】
以上の加水分解を行う具体的な手段について、前記加水分解の条件を充足していれば特段の限定はないが、処理前発泡体を内部に入れておくことができるチャンバー、チャンバー内を所定の温度に一定に保つことができる加温機構、水蒸気またはアルカリ蒸気によりチャンバー内を所定の相対湿度に保つことができる加湿機構を具備した、いわゆる恒温恒湿機を用いることが好ましい。加水分解を行う際、処理前発泡体の大きさや形状については、特段の限定はない。
【0033】
加工処理を機械的な圧縮によりおこなう場合、一時的な体積の低下を伴うことになるが、この体積低下は加水分解時にその一部は回復する傾向があり、脆性発泡体は原料発泡体の体積の概ね70%以上100%以下となる。その理由の詳細は明らかでないが、圧縮により基材樹脂に溜め込まれた歪が、加水分解時に高温下にさらされることにより回復するためではないかと考えられる。具体的に、たとえば圧縮処理により圧縮率50%で圧縮された処理前発泡体は、加水分解処理によりおおむね元の70〜90%程度の体積まで回復する。この回復現象は、内部の粗大気泡の発生、表面および内部の微小割れなどの不具合を伴わない。したがってこの点で独立気泡率の高い発泡体を加水分解した際に起こる膨張とは明確に区別される。
【0034】
即ち本発明においては、脆性発泡体における内部の粗大気泡の発生、表面および内部の微小割れの発生を容易に防止できるという効果を奏する。この効果は、高い独立気泡率の発泡体を用いて加水分解処理を行った場合と対比することでより明確に説明することができる。
【0035】
高い独立気泡率の発泡体を用いて加水分解を行った場合、加水分解処理における高温高湿条件に置かれた発泡体は、短時間のうちに膨張する傾向を示す。このような現象を経た発泡体は、全体が膨張するのみならず、内部の気泡構造に不具合を生じやすい。具体的には、発泡体内部に粗大な気泡が発生したり、微小な割れが発生したりといった現象が見られる。このようなことが起こる理由の詳細は明らかではないが、高い温度の元で膨張した気泡内部の気体が外部に逃散できないために気泡自体を膨張させ、その際、気泡が発生した内部応力に耐えられず破壊に至る場合があることが粗大気泡や、表面および内部の微小割れにつながるものと考えられる。他方、独立気泡率が40%以下の処理前発泡体は対照的に、膨張した気体は容易に発泡体外部に逃散できるため、前記の不具合を生じにくいものと考えられる。
【0036】
以上に述べた本発明の方法により得られた脆性発泡体は、そのまま、もしくは、切削、打ち抜きなどの方法により所望の形状に加工され、フラワーアレンジメント用台座として好適に用いられる。
【0037】
以下、さらに本発明で用いる、加工処理に供される脂肪族ポリエステル系樹脂からなる原料発泡体について説明する。
【0038】
本発明で使用する原料発泡体の製造方法については特に限定がなく、公知の製造方法がいずれも好ましく用いられる。具体的に、脂肪族ポリエステル系樹脂を基材樹脂とする発泡体は、たとえば以下のような方法により得ることができる。
(1)脂肪族ポリエステル系樹脂を発泡粒子とし、該発泡粒子を型内発泡成形して発泡体を得る、ビーズ法型内発泡成形法。
(2)脂肪族ポリエステル系樹脂を発泡剤とともに押出機中にて溶融混練し、板状に押出発泡して発泡体を得る、押出発泡法。
【0039】
これらのうち、厚みの厚い発泡体を容易に得られる点、低密度で均一微細なセル構造の発泡体を容易に得られる点から、(1)のビーズ法型内発泡成形法により製造されることが好ましい。
【0040】
(1)のビーズ法型内発泡成形法においては、脂肪族ポリエステル系樹脂を発泡粒子とし、該発泡粒子を型内発泡成形して発泡体を得るが、前記の発泡粒子は、
(a)粒子形状の脂肪族ポリエステル系樹脂に発泡剤を含浸させ、発泡性脂肪族ポリエステル系樹脂粒子とし、該発泡性脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を加熱発泡させ発泡粒子とする方法、
(b)耐圧容器内で粒子形状の脂肪族ポリエステル系樹脂に発泡剤を含浸させ、低圧雰囲気下に放出することにより発泡粒子とする方法、
(c)脂肪族ポリエステル系樹脂を発泡剤とともに押出機中にて溶融混練し、押し出しながら、発泡させつつ或いは発泡完了後に発泡粒子形状に切断する方法、
(d)脂肪族ポリエステル系樹脂を発泡剤とともに押出機中で溶融混練し、発泡させずに押し出しながら粒子形状に切断して、発泡性脂肪族ポリエステル系樹脂粒子とし、該発泡性脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を加熱発泡させ、発泡粒子とする方法、
等の方法によって容易に得ることができる。
【0041】
発泡粒子を製造する際に使用する発泡剤に特に限定はなく、従来公知のものが使用できる。うち、(c)、(d)の発泡粒子の製造法においては、一般に化学発泡剤として知られているものも使用することができるが、低い密度の発泡体が容易に得られるという点から、本発明で用いる発泡剤としては、一般に物理発泡剤と呼ばれているものを使用することが好ましい。なお、気泡調整剤としての少量の化学発泡剤を、物理発泡剤とともに使用する方法が一般に知られており、本発明でも好ましく用いられる。
【0042】
基材樹脂中には、例えば、黒、灰色、茶色、青色、緑色等の着色顔料又は染料を添加してもよい。着色した基材樹脂を用いれば着色された発泡体を得ることができる。着色剤としては、有機系、無機系の顔料、染料などが挙げられる。このような顔料及び染料としては、従来公知のものを用いることができる。
【0043】
着色顔料又は染料の添加量は着色の色によっても異なるが、通常、基材樹脂100重量部に対して、0.001重量部以上5重量部以下が好ましく、0.02重量部以上3重量部以下とすることがより好ましい。
【0044】
また、気泡調整剤として、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ほう酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の無機物を基材樹脂中に添加することができる。また、基材樹脂中には、本発明の効果を損なわない程度であれば、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、充填剤、防曇剤、抗菌剤、潤滑剤など、その他の添加剤を添加しても良い。
【0045】
着色顔料、染料、気泡調整剤又はその他の添加剤は単体で、若しくはマスターバッチとして基材樹脂に添加される。添加剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、通常は分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作り、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を具体的な実施例により詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
〈独立気泡率の測定〉
エアピクノメーター(東京サイエンス製空気比較式比重計1000型)を用いて発泡体体積を測定し、発泡体の水没体積を、水を入れたメスシリンダーに発泡体を沈め、沈める前後のメスシリンダーの容量差とし、下記式(2)に従って独立気泡率を算出した。
発泡体の独立気泡率(%)=〔エアピクノメーターを用いて測定した発泡体体積(cm3)/発泡体の水没体積(cm3)〕×100 (2)
【0048】
〈縦方向膨張率、横方向膨張率、厚み方向膨張率〉
脆性発泡体と原料発泡体の、縦、横、厚み方向の寸法比を評価した。
【0049】
〈体積膨張率〉
縦方向膨張率×横方向膨張率×厚み方向膨張率を体積膨張率とした。
【0050】
〈脆性発泡体内部の気泡の様子〉
以下の評価基準で評価した。
○:内部の気泡均一で、かつ表面、内部とも割れが見られない。
△:内部に若干の粗大気泡が存在するが、表面や内部に割れは認められない。
×:内部に粗大気泡が存在する。もしくは表面や内部に微小な割れが認められる。
【0051】
〈花挿し性の評価〉
得られた脆性発泡体にカーネーションの生花を挿したときの花挿し性を以下の評価基準で評価した。
○:花挿し時の抵抗感が適度で、かつ手を離した際の保持性が良好である。
×:花挿し時に大きな抵抗感を感じる。または花の保持性が悪い。
【0052】
(実施例1)
D体比率10%、MFR値3.7g/10分のポリ乳酸樹脂100重量部とポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン(株)製、MR−200)2.0重量部を、二軸押出機(東芝機械製、TEM35B)を用いて、シリンダー温度185℃で溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφ(約1.5mg)のビーズ状のポリ乳酸系樹脂粒子を得た。
【0053】
得られたポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対して、水100重量部、発泡剤として脱臭ブタン(ノルマルブタン/イソブタン重量比=7/3)12重量部、食塩10重量部、分散助剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル0.3重量部をオートクレーブに仕込み、84℃で90分間保持した。十分に冷却後取出し、乾燥して、ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の発泡剤含浸率は5.5%であった。
【0054】
該ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を予備発泡機(ダイセン工業製、BHP−300)に投入し、90℃の蒸気に40〜60秒間保持してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を風乾した後、篩を使用し融着粒子を分別した。分取されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は0.025g/cm3であった。
【0055】
発泡成形機(ダイセン工業製、KR−57)に300×450×20mmの金型を設置し、上記で得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を圧縮率0%で充填し、蒸気圧0.1MPaの蒸気で10〜20秒処理し型内成形を実施し、見かけ密度0.025g/cm3のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。この成形体から20×20×厚み(20mm)のサンプルを切り出し、独立気泡率を測定したところ、82%であった。
【0056】
次に、同様の条件で得られた発泡成形体を縦100×横100×厚み20mmに切削し、室温下(25℃)、プレス機で厚み方向の圧縮率50%までプレスして処理前発泡体を得た。厚みは10mm、独立気泡率は4%となった。このとき、プレス機は藤設備工業製、37tゴム圧縮成形機を用い、プレス速度は300mm/分であった。
【0057】
さらに得られた処理前発泡体を、温度80℃、相対湿度95%にした恒温恒湿機(いすず製作所製プログラム温湿度調節器、HPAV−120−40型)に15時間静置し加水分解処理を行い、脆性発泡体を得た。このとき、厚み方向には回復が起こり、厚みは17mmまで回復した。この脆性発泡体の、加工処理前発泡体に対する各方向の膨張率を測定し、体積膨張率を算出した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
(実施例2)
実施例1において、加工処理時の圧縮率を25%としたほかは実施例1と同様にして脆性発泡体を得、処理前発泡体に対する各方向の膨張率、体積膨張率、脆性発泡体内部気泡の様子、花挿し性を評価した。結果を表1に示す。なお、このときのプレス後発泡体の厚みは15mm、独立気泡率は37%となった。また、加水分解処理後の脆性発泡体の厚みは18mmであった。
【0060】
(実施例3)
実施例1において、加工処理時の圧縮率を70%としたほかは実施例1と同様にして脆性発泡体を得、処理前発泡体に対する各方向の膨張率、体積膨張率、脆性発泡体内部気泡の様子、花挿し性を評価した。結果を表1に示す。なお、このときのプレス後発泡体の厚みは7mm、独立気泡率は0%となった。また、加水分解処理後の脆性発泡体の厚みは15mmであった。
【0061】
(実施例4)
実施例1において得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体をプレス機でプレスする代わりに、室温下(25℃)で互いに相対している一対の金属ロール間を通して処理前発泡体を得たほかは実施例1と同様にして脆性発泡体を得、処理前発泡体に対する各方向の膨張率、体積膨張率、脆性発泡体内部気泡の様子、花挿し性を評価した。結果を表1に示す。このとき、ロール機は安田精機製作所製ミキシングロール機を用い、ロール回転速度は10.2rpm、金属ロール間の間隔は15mmであった。なお、このときのプレス後発泡体の厚みは15mm、独立気泡率は19%となった。また、加水分解処理後の脆性発泡体の厚みは17mmであった。
【0062】
(実施例5)
実施例1において、蒸気圧0.1MPaの蒸気の代わりに蒸気圧0.40MPaの蒸気で型内成形を実施したことに加え、プレス機でのプレスを行わなかったほかは実施例1と同様にして脆性発泡体を得、処理前発泡体に対する各方向の膨張率、体積膨張率、脆性発泡体内部気泡の様子、花挿し性を評価した。結果を表1に示す。なお、加水分解処理前の発泡成形体の厚みは20mm、独立気泡率は33%であった。
【0063】
(比較例1)
実施例1において、プレス機でのプレスを行わなかったほかは実施例1と同様にして脆性発泡体を得、処理前発泡体に対する各方向の膨張率、体積膨張率、脆性発泡体内部気泡の様子、花挿し性を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
実施例1において、圧縮率を15%としたほかは実施例1と同様にして脆性発泡体を得、処理前発泡体に対する各方向の膨張率、体積膨張率、脆性発泡体内部気泡の様子、花挿し性を評価した。結果を表1に示す。なお、このときのプレス後発泡体の厚みは17mm、独立気泡率は52%となった。また、加水分解処理後の脆性発泡体の厚みは22mmであった。
【0065】
(比較例3)
実施例1において、圧縮率を10%としたほかは実施例1と同様にして脆性発泡体を得、処理前発泡体に対する各方向の膨張率、体積膨張率、脆性発泡体内部気泡の様子、花挿し性を評価した。結果を表1に示す。なお、このときのプレス後発泡体の厚みは18mm、独立気泡率は65%となった。また、加水分解処理後の脆性発泡体の厚みは24mmであった。
【0066】
表1に示した結果から、実施例で用いられた、独立気泡率の低い発泡体を加水分解処理して脆性発泡体を得る場合、比較的低い体積膨張率を示していることから、発泡体の膨張が効果的に抑制されていることが分かる。また、該脆性発泡体は粗大気泡や微小な割れのない、美麗な気泡構造を有する発泡体となっていることが分かる。さらに、これらの発泡体は良好な花挿し性を示し、フラワーアレンジメント台座として好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明で得られる脆性発泡体は、美麗な内部気泡構造を有し、フラワーアレンジメント用台座として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立気泡率が40%以下である脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解して脆性発泡体とすることを特徴とする脆性発泡体の製造方法。
【請求項2】
独立気泡率が20%以下である脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加水分解して脆性発泡体とすることを特徴とする請求項1記載の脆性発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記独立気泡率が40%以下である脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体が、独立気泡率70%以上、かつ見かけ密度が、0.014g/cm3以上0.038g/cm3以下である発泡体を加工処理して得られるものであることを特徴とする請求項1または2記載の脆性発泡体の製造方法。
【請求項4】
加工処理が機械的な圧縮であることを特徴とする請求項3記載の脆性発泡体の製造方法。
【請求項5】
加水分解が、温度60℃以上100℃以下かつ相対湿度60%以上で行われることを特徴とする請求項1〜4何れか一項に記載の脆性発泡体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5何れか一項に記載の製造方法で得られる脆性発泡体を基材とするフラワーアレンジメント用台座。

【公開番号】特開2010−254785(P2010−254785A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105344(P2009−105344)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】