説明

脈検出装置及び超音波診断装置

【課題】 超音波送信用の圧電素子と超音波受信用の圧電素子とを精度良く配置することで、品質のばらつきが生じにくい脈検出装置を提供する。また、脈検出装置において脈の検出感度を向上させる。
【解決手段】 入力された駆動電圧信号に従って励振して超音波を発生し、該超音波を生体内に送信する送信用圧電素子41と、生体内に送信された超音波が生体の血流によって反射した反射波を受信して電圧信号に変換する受信用圧電素子42と、を基板43の電極47a、47bで固定する。また、処理演算部は、送信用圧電素子41が発生した超音波の周波数と、受信用圧電素子42が受信した反射波の周波数と、を比較して脈を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を検出素子として用いた脈検出装置及び圧電素子を使用した超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の脈には病気の診断に適用できる重要な情報が含まれている。そこで、近年、患者の腕に携帯型脈検出装置を装着させて、この携帯型脈検出装置から送信された患者の脈検出データを病院が受信し、患者の状態を把握するシステムが病院等の医療施設において検討されている。脈検出装置の小型化・軽量化のために圧電素子を用いることは有効であり、上述したシステムに適用することもふまえて、圧電素子を使用した脈検出装置の開発が進められている。また同様に超音波を用いて生体や物体の情報を得る超音波診断装置はよく知られている。この超音波診断装置は、被験者や診断物の診断部位へ超音波を照射(送信)し、診断部位で反射されてきた反射波を検知し、この検知結果に基づいて診断部位についての情報を取得する。
【0003】
圧電素子を使用した従来の脈検出装置100を図32に示す。図示するように、脈検出装置100は、2つの圧電素子110,120を樹脂(またはゲル)130の中に埋め込み固定したものである。ここで、各圧電素子110,120の厚み方向の両面には、金属性の電極が形成される(図示省略)。また、圧電素子110の両電極には、駆動電圧印加用のプローブ(端子、引き出し線等)が接続され、圧電素子120の両面の電極には電圧信号出力用のプローブ(端子、引き出し線等)が接続される(図示省略)。
【0004】
また、例えば、超音波による脈波検出装置では、被験者の橈骨動脈に向けて超音波を送信し、反射波の振幅や周波数の変化から、脈波波形や脈拍数を取得する。
【0005】
そして、病院の診察時に、この脈検出装置100を使用して患者の脈を検出している。詳細には、圧電素子110の両電極に駆動用の電圧を印加すると、圧電素子110が励振して超音波を発生し、超音波は樹脂130を介して生体内に送信される。生体内に送信された超音波は生体の血流によって反射し、反射した超音波が樹脂130を介して圧電素子120によって受信される。この時、圧電素子110が送信した超音波と、圧電素子120が受信した超音波には、血流のドップラ効果によって周波数変化が生じる。また、血流の速度は脈と同期して変化するため、この超音波の周波数変化によって生体の脈が検出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、圧電素子を利用した前述の脈検出装置においては、超音波の受信感度を良くするために、超音波送信用の圧電素子110と、超音波受信用の圧電素子120と、を精度良く配置する必要がある。
【0007】
しかしながら、上述した脈検出装置100は、2つの圧電素子110,120を所定位置に配置した後、樹脂130を流し込んで製造していたため、樹脂を流し込む際にこれら圧電素子の配置位置及び配置角度がずれる可能性があり、精度良く圧電素子を配置することが難しいという問題があった。
【0008】
そのため、従来の脈検出装置100には、品質のばらつきが生じる可能性があった。
【0009】
そこで、本発明は、超音波送信用の圧電素子と超音波受信用の圧電素子とを精度良く配置することで、品質のばらつきが生じにくい脈検出装置、及びその製造方法を提供することを目的とする。また、脈検出装置において脈の検出感度を向上させることも目的とする。
【0010】
また一般に、圧電素子を利用した脈検出装置では、超音波の受信感度を良くするために、超音波送信用の圧電素子と超音波受信用の圧電素子を精度良く配置する必要がある。また、該超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子に直接受信されると、ノイズの原因となり、また本来脈を測定するために必要である血流への送信波及び受信波の強度が減少してしまうため、結果として脈の検出感度が低下してしまう。そのため、脈検出感度を向上させるためには、該超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子に直接受信されにくい構造にする必要がある。さらに樹脂130が厚いほど、生体内の血流へ送信される超音波の強度が低下する。
【0011】
しかしながら、上述した脈検出装置100は、2つの圧電素子110,120を所定位置に配置した後、樹脂130を流し込んで製造していたため、以下のような問題点があった。
(1) 樹脂を流し込む際にこれら圧電素子の配置位置及び配置角度がずれる可能性があり、精度良く圧電素子を配置することが難しく、品質のばらつきが生じる可能性がある。
(2) 超音波が樹脂を通して受信用圧電素子に直接受信されやすい構造であるため脈検出感度に限界があった。
(3) 樹脂130の厚さを薄く製造することが難しいため、脈検出感度に限界があった。
【0012】
そこで、本発明は、超音波送信用の圧電素子と超音波受信用の圧電素子とを精度良く配置することで、品質のばらつきが生じにくい脈検出装置、及び感度の向上を図った構造の脈検出装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、超音波診断装置も、上記に述べた脈検出装置と同様の問題点があった。そこで、本発明は、超音波送信用の圧電素子と超音波受信用の圧電素子とを精度良く配置することで、品質のばらつきが生じにくい超音波診断装置、及び感度の向上を図った構造及びその製造方法の超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明による脈検出装置は、送信用圧電素子(入力された駆動信号に応じて生体内に超音波を送信する圧電素子)と受信用圧電素子(超音波が生体の血流によって反射した反射波を受信する圧電素子)の少なくとも一方が、圧電素子に駆動信号を印加する給電部により基板上に固定されている構成とした。この構成によれば、送信用圧電素子と受信用圧電素子の少なくとも一方は基板上に載置固定されるため、これら圧電素子を精度良く設計通りに配置することができる。
【0015】
したがって、本発明の構成によれば、品質にばらつきが生じにくい脈検出装置を提供することができる。また、圧電素子と基板は基板全面では無く給電部で固定されているため、基板に超音波が伝搬しにくく、ノイズを低減させることが可能で、また感度を向上させることができる。
【0016】
さらに、前記基板と前記圧電素子間に空隙を形成した。このような構成によれば、送信用圧電素子から基板に超音波が伝わりにくくなり、該超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性が低くなるため、ノイズを低減させることが可能で、また感度を向上させることができる。
【0017】
さらに、給電部が圧電素子に対して突出した構造や、圧電素子が給電部に対して突出した構造、あるいは多孔質体の基板を用いることで、さらに該超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性が低い構造となるため、ノイズを低減させることが可能で、また感度を向上させることができる。
【0018】
また、基板の一部に溝を設け、この溝を挟んで送信用圧電素子と受信用圧電素子とを配置する構成とした。この構成によれば、送信用圧電素子で発生した超音波は、基板上の送信用圧電素子と受信用圧電素子との間の溝で反射、減衰するため、該超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性がさらに低くなる。このため、脈検出装置の感度を向上させることができる。
【0019】
あるいは、基板を分割し、分割した一方の基板に送信用圧電素子を配置し、他方の基板に受信用圧電素子を配置してもよい。この場合、送信用圧電素子で発生した超音波は、受信用圧電素子にさらに直接伝わりにくくなる。したがって、脈検出装置の感度を向上させることができる。
【0020】
また、前記基板の前記圧電素子設置面に樹脂層を備えることで、効果的に超音波が生体内に送信される構成とした。また、基板上に圧電素子が配置されているため、樹脂層を一定の厚さで容易に配置することが可能となる。また前記樹脂層が送信用圧電素子と受信用圧電素子間で分割されている構成とし、送信用圧電素子で発生した超音波が、前記樹脂層を介して受信用圧電素子に直接伝わりにくい構造とした。
【0021】
また、支持基板を備えることによって、外部からの衝撃に対する脈検出装置の強度、及び取り扱い性が向上する。
【0022】
また、検出部によって検出された脈を表示する表示部を備える構成としてもよい。手首に当該脈検出装置を装着するためのベルトを備える構成とすることによって、生体が脈検出装置を容易に携帯することができる。
【0023】
上記課題を解決するため、本発明による脈検出装置は、送信用の圧電素子と受信用の圧電素子が一面上に固定載置され、他面が生体に接する送受信基板と、この送受信基板を支えるとともに送信用圧電素子及び受信用圧電素子に接しない支持部を備えている。このような構成によれば、送信用圧電素子及び受信用圧電素子の双方は、送受信基板上に載置固定されるため、これら圧電素子を精度良く設計通りに配置することができる。また、送信用圧電素子が発生した超音波は、送受信基板を介して生体内に送信され、また、生体の血流による反射波も、送受信基板を介して生体から受信用圧電素子に伝達するので、機能上問題は生じない。
【0024】
また、送信用の圧電素子の振動は、樹脂中の場合全ての方向に振動してしまうが、送信用の圧電素子の裏面側は空間であるため、無駄なく基板側のみに振動が伝わる。したがって、本発明の構成によれば、品質にばらつきが生じにくい脈検出装置を提供することができ、また、脈の検出感度を向上させることができる。
【0025】
さらに、送受信基板の音響インピーダンスを、各圧電素子の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスとの間の値とすることとした。このように、送受信基板の音響インピーダンスを設定することによって、送信用の圧電素子が発生した超音波を、送受信基板と生体との界面で反射させずに効率良く生体に送信することができ、生体の脈による反射波を界面で反射させずに感度良く受信用の圧電素子で受信することができる。
【0026】
さらに、送受信基板の厚みを、送信用の圧電素子が発生する超音波の波長の約4分の1にすることによって、基板と生体との界面において超音波の反射を低減させることができ、生体内に超音波を効率良く送信することとなり、受信用の圧電素子により反射波を感度良く受信することができる。
【0027】
さらに、生体と接する面に樹脂層を備える構成とした。樹脂層を設けることにより、生体に接する面の特性をその用途に応じて最適に調整することが可能になる。例えば、樹脂層にシリコン系樹脂を用いることで、送受信基板と生体との密着性が向上する。したがって、送受信基板と生体との界面において、空気の混入が減少するため超音波の振動の減衰が少なくなり、効率良く超音波を伝搬することができる。また、シリコン系樹脂は、生体との適合性が良く、生体の皮膚に密着させても影響が少ない。
【0028】
また、送受信基板を分割し、分割した一方の送受信基板に送信用の圧電素子を配置し、他方の送受信基板に受信用の圧電素子を配置してもよい。この場合、送信用圧電素子で発生した超音波は、受信用の圧電素子に直接伝わらない。したがって、ノイズを低減させることができ、脈検出装置の信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、送受信基板の他面をその一面に対して斜めに形成した。例えば、送受信基板の他面と一面とを平行な面ではなく、すなわち、テーパ形状にした。これにより、生体の血流のドップラ効果が大きくなり、送信用圧電素子で発生する超音波と、受信用圧電素子で受信される反射波と、の周波数変化が大きくなる。したがって、脈検出装置における脈の検出強度が向上する。
【0030】
また、送受信基板上に位置する送信用圧電素子及び受信用圧電素子を支持する支持部によって、外部からの衝撃に対する脈検出装置の強度が向上し耐久性が向上する。
【0031】
また、検出部によって検出された脈を表示する表示部を備える構成としてもよい。また、手首に当該脈検出装置を装着するためのベルトを備える構成とすることによって、生体が脈検出装置を容易に携帯することができる。
【0032】
更に、上記課題を解決するため、本発明による超音波診断装置は、入力された駆動信号に応じて生体内に超音波を送信する圧電素子(以下送信用圧電素子)と、超音波が診断部位によって反射した反射波を受信する圧電素子(以下受信用圧電素子)と、前記圧電素子が一方の表面に設けられた基板と、前記反射波とから診断部位に関する検出する検出部と、前記圧電素子に前記駆動信号を印加する給電部を前記基板上と、を備え、前記基板と前記圧電素子が前記給電部で固定されている構成とした。
【0033】
この構成によれば、送信用圧電素子及び受信用圧電素子の双方は、基板上に載置固定されるため、これら圧電素子を精度良く設計通りに配置することができる。
【0034】
したがって、本発明の構成によれば、品質にばらつきが生じにくい脈波検出装置を提供することができる。また、圧電素子と基板は基板全面では無く給電部で固定されているため、基板に超音波が伝搬しにくく、ノイズを低減させることが可能で、また感度を向上させることができる。
【0035】
さらに、前記基板と前記圧電素子間に空隙を有する構成とした。この構成によれば、送信用圧電素子から基板に超音波が伝わりにくくなり、該超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性が低くなるため、ノイズを低減させることが可能で、また感度を向上させることができる。
【0036】
前記給電部が前記圧電素子に対して突出した構造や、前記圧電素子が前記給電部に対した構造、あるいは多孔質体の基板を用いることで、さらに前記超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性が低い構造となるため、ノイズを低減させることが可能で、また感度を向上させることができる。
【0037】
また、基板の一部に溝を設け、この溝を挟んで送信用圧電素子と受信用圧電素子とを配置する構成とした。この構成によれば、送信用圧電素子で発生した超音波は、基板上の送信用圧電素子と受信用圧電素子との間の溝で反射、減衰するため、該超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性がさらに低くなる。このため、検出感度を向上させることができる。
【0038】
あるいは、基板を分割し、分割した一方の基板に送信用圧電素子を配置し、他方の基板に受信用圧電素子を配置してもよい。この場合、送信用圧電素子で発生した超音波は、受信用圧電素子にさらに直接伝わりにくくなる。したがって、検出感度を向上させることができる。
【0039】
また、前記基板の前記圧電素子設置面に樹脂層を備えることで、効果的に超音波が生体内に送信される構成とした。また、基板上に圧電素子が配置されているため、樹脂層を一定の厚さで容易に配置することが可能となる。また前記樹脂層が送信用圧電素子と受信用圧電素子間で分割されている構成とし、送信用圧電素子で発生した超音波が、前記樹脂層を介して受信用圧電素子に直接伝わりにくい構造とした。
【0040】
また、支持体を備えることによって、外部からの衝撃に対する脈波検出装置の強度、及び取り扱い性が向上する。
【0041】
また、空隙の厚さを超音波の波長λ以上とすることで、上記減衰性を向上させ、送信用圧電素子で発生した超音波は、受信用圧電素子に直接伝わりにくくなり、検出感度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0042】
以上のように、本発明の脈検出装置によれば、基板上に送信用圧電素子と受信用圧電素子とを設計通りに精度良く配置することができるため、品質にばらつきが生じにくい脈検出装置を提供することができ、また、脈の検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用した脈波検出装置の構成を示す外観図である。
【図2】本発明の脈波検出装置を生体(腕)に装着した状態を示す外観図である。
【図3】処理部の内部構成と、測定部との接続状態を示すブロック図である。
【図4】本発明による脈波検出装置の測定部の構成を示す図である。
【図5】測定部の上面図である。
【図6】測定部が生体に当接された状態を示す図である。
【図7】基板に樹脂層を設けた測定部の構成を示す側面図である。
【図8】基板に溝を形成し、溝に圧電素子を埋め込んだ構成を示す図である。
【図9】基板と圧電素子をバンプで接合した構成を示す図である。
【図10】溝によって空隙が形成された基板を有する測定部の構成を示す図である。
【図11】突起部が形成された基板を有する測定部の構成を示す図である。
【図12】表面処理された基板を有する測定部の構成を示す図である。
【図13】溝によって空隙が形成された圧電素子を有する測定部の構成を示す図である。
【図14】溝が形成された基板を有する測定部の構成を示す図である。
【図15】分割された基板、及び支持部を有する測定部の構成を示す図である。
【図16】分割された基板、及び支持部を有する測定部の構成を示す図である。
【図17】分割された基板、及び支持部を有する測定部の構成を示す図である。
【図18】測定部4の一実施例を示す図である。
【図19】測定部4の一実施例を示す図である。
【図20】測定部4の一実施例を示す図である。
【図21】測定部4の一実施例を示す図である。
【図22】支持部81の一実施例を示す図である。
【図23】支持部81の一実施例を示す図である。
【図24】支持部81の一実施例を示す図である。
【図25】支持部81の一実施例を示す図である。
【図26】支持部81の一実施例を示す図である。
【図27】測定部4の一実施例を示す図である。
【図28】測定部4の一実施例を示す図である。
【図29】測定部4の一実施例を示す図である。
【図30】測定部4の一実施例を示す図である。
【図31】測定部が生体に当接された状態を示す図である。
【図32】従来の圧電素子を使用した超音波診断装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の脈検出装置の構成は、入力された駆動信号に応じて生体内に超音波を送信する圧電素子と、超音波が生体の血流によって反射した反射波を受信する圧電素子と、これらの圧電素子が一方の表面に設けられた基板と、反射波から脈を検出する検出部と、圧電素子に駆動信号を印加するために基板上に設けられた給電部とを備え、基板と圧電素子が給電部で固定されている構成とした。この構成によれば、送信用圧電素子及び受信用圧電素子の双方は、基板上に載置固定されるため、これら圧電素子を精度良く設計通りに配置することができる。
【0045】
また、駆動信号を入力するために必要な給電部のみで固定されているため、送信用圧電素子からの振動が基板全体に伝搬しにくく、そのため、超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性が低くなるため、ノイズを減少させ、脈検出感度を向上させることができる。
【0046】
さらに、基板と圧電素子との間に空隙を設けることにより、超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性がさらに低くなるため、感度を向上させることができる。
【0047】
また、給電部が圧電素子に対して突出した構造や、圧電素子が給電部に対して突出した構造、あるいは多孔質体の基板を用いることにより、超音波が基板内を伝わって受信用圧電素子により直接受信される可能性が低い構造となるため、感度を向上させることができる。
【0048】
また、基板を支持する支持基板を備えることにより、強度、取り扱い性を向上させることができる。詳細は以下の実施例において述べる。
【0049】
また、本発明による脈検出装置は、入力された駆動電気的信号に応じて生体内に超音波を送信する圧電素子、または、超音波が生体の血流によって反射した反射波を受信する圧電素子が、支持部上または基板上の一方の表面に設けられているとともに、圧電素子を中心にして生体側とは反対側に空間が形成された構成である。
このような構成の脈検出装置によれば、圧電素子が支持部または基板上に載置固定されるため、これら圧電素子を精度良く設計通りに配置することができる。したがって、本発明の構成によれば、品質にばらつきが生じにくく、また、脈の検出感度を向上させることができる。
【0050】
さらに、基板の音響インピーダンスを圧電素子の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスとの間の値に設定した。また、基板の厚みを圧電素子が発生する超音波の波長の約4分の1とした。また、生体に接する面に樹脂層を備えることとした。詳細は以下の実施例において述べる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
図1〜図6を参照して本発明の実施例1による脈検出装置を詳細に説明する。先ず、脈検出装置1の外観について図1〜図2を参照して説明する。
【0053】
図1は、本発明を適用した脈検出装置1の外観上の構成を示す側面図であり、図2は、図1に示した脈検出装置1を生体2(腕)に装着した状態を示す図である。
【0054】
図1に示すように、脈検出装置1は処理部3、測定部4、バンド5、及び、止め金具6によって概略構成されており、図2に示すように、脈検出装置1は、生体2に装着することにより常時携帯可能である。ここで、処理部3及び測定部4は、バンド5に取り付けられており、バンド5及び止め金具6によって生体2(図中の破線部)に装着される。この時、測定部4は生体2の橈骨(とうこつ)動脈あるいは尺骨動脈付近(図示省略)に当接される。また、図示しないが、処理部3と測定部4は導線により接続されており、この導線を介して処理部3から駆動用電圧信号が測定部4に入力され、測定部4で測定された電圧信号が処理部3に入力される。
【0055】
次に、図3を参照して脈検出装置1の処理部3について説明する。図3は、処理部3の内部構成と、処理部3と測定部4の接続状態を示すブロック図である。図3に示すように、処理部3は、処理演算部31、駆動回路32、及び表示部33によって概略構成されている。
【0056】
処理演算部31は、内部に備えた記憶領域(図示省略)に記憶されている処理プログラムを実行することによって、脈の検出に関する各種処理を実行し、その処理結果を表示部33に表示する。
【0057】
処理演算部31は、脈測定時に、駆動回路32から測定部4の送信用圧電素子41(詳細は後述)に特定の駆動用電圧信号を出力させる。
【0058】
また、処理演算部31は、送信用圧電素子41から発せられた超音波の周波数と、受信用圧電素子42で受信され血流のドップラ効果により変化した超音波の周波数と、を比較して脈を検出する。
【0059】
駆動回路32は、処理演算部31の指示に従って、特定の駆動用電圧信号を測定部4の送信用圧電素子41に出力する。
【0060】
表示部33は、液晶表示画面等によって構成されており、処理演算部31から入力される脈検出結果等を表示する。
【0061】
次に、図4、図5を参照して、脈検出装置1の測定部4について説明する。図4は、測定部4の構成を示す概要図であり、図5は、測定部4の上面から見た図である。
【0062】
図4に示すように、測定部4は、送信用圧電素子41、受信用圧電素子42、基板43によって概略構成されている。ここで、送信用圧電素子41と受信用圧電素子42の厚み方向の両面には、それぞれ電極45a、45bと電極46a、46bが形成されている。また、基板43の一面43aには、電極47a、47b、上面用電極60a、60bが形成されており、電極45a、46aと上面用電極60a、60bは配線61で電気的に接続されている。基板43の材質としては、超音波を伝えにくい材質が適しているが、本実施例ではガラスを用いた。ここで、電極45a,45b,46a,46b,47a,47b,48a,48b, 60a,60bは、Au,Pt等の金属膜であり、蒸着等の方法によって形成される。また、配線61はAu線などのワイヤボンディングによって形成される。
【0063】
そして、図5に示すように、基板43の一面43a上に送信用圧電素子41が電極47aと固定部62で重なるように載置固定され、受信用圧電素子42が電極47bと固定部62で重なるように載置固定されている。
【0064】
尚、送信用圧電素子41と受信用圧電素子42に、同一の圧電素子を使用してもよい。また、これら圧電素子41,42の形状については任意であり、送信用と受信用に形状の異なる圧電素子を使用してもよい、さらに送信用圧電素子及び受信用圧電素子は、それぞれ複数個設置しても良い。
【0065】
本実施例では、送信用圧電素子、受信用圧電素子として厚さ0.2mm(共振周波数9.6MHz)、外形2×4mmのPZTを、基板43は厚さ0.5mm、外形10ラ11mmのガラス基板を使用した。
【0066】
また、送信用圧電素子41は、その両電極45a,45bが電極47a、60aを介して処理部3の駆動回路32と導線によって接続されている。そして、送信用圧電素子41の両電極45a,45bに駆動回路32から特定の駆動用電圧信号が印加されると、送信用圧電素子41は励振して特定周波数の超音波を発生し、生体内(図6の2参照)に送信する。本実施の形態では9.6MHzで励振させた。受信用圧電素子42は、その両電極46a,46bが電極47b、60bを介して処理部3の処理演算部31と導線によって接続されている。受信用圧電素子42は生体から超音波を受信すると、この超音波を電圧信号に変換し、処理部3の処理演算部31に出力する。
【0067】
次に、図3及び図6を参照して、脈検出装置1における処理部3及び測定部4の動作について説明する。図6は本実施例による脈検出装置の測定部4と生体2との配置関係を示しており、電極45a、45b、46a、46b、60a、60b、配線61は省略されている。
【0068】
先ず、生体に脈検出装置1を装着すると、図6に示すように、測定部4が生体2(の橈骨(とうこつ)動脈あるいは尺骨動脈付近)に当接される。そして、脈の検出時に、図3に示す処理演算部31は、駆動回路32から送信用圧電素子41の両電極45a,45b(図5参照)に特定の駆動用電圧信号を出力させる。
【0069】
送信用圧電素子41は両電極45a,45bに入力された駆動用電圧信号に応じて励振して超音波を発生し、該超音波を生体2(図6参照)内に送信する。生体2内に送信された超音波は血流2aにより反射され、測定部4の受信用圧電素子42により受信される。受信用圧電素子42は、受信した超音波を電圧信号に変換して、両電極46,46(図5参照)から処理演算部31に出力する。
【0070】
次に、処理演算部31は、送信用圧電素子41から送信された超音波の周波数と、受信用圧電素子42で受信され血流のドップラ効果により変化した超音波の周波数と、を比較して生体の脈を検出する。そして、処理演算部31は、脈の検出結果を表示部33に表示する。
【0071】
このようにして、脈検出装置1は、生体の脈を測定・表示する。
【0072】
次に本実施例による脈検出装置の測定部4の製造方法について説明する。送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42は、アルミ、Auなどの金属を真空蒸着することで電極45a、45b、46a、46bを形成し、外形をダイシングなどにより切断する。基板43は、アルミ、Auなどの金属を真空蒸着により電極を43a上に形成し、エッチングなどの薄膜プロセスにより、電極47a、47b、60a、60bを一面43a上に形成する。
【0073】
電極45b、45bと電極47a、47bとを固定部62において導電性の接着剤などで固定することにより、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42を基板43に固定する。
【0074】
さらに、電極47a、60aは図示しない配線により、図3の処理部3の駆動回路32に接続され、電極47b、60bは処理回路31に接続される。
【0075】
以上のようにして、本実施例においては、基板43上に送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42を配置した。
【0076】
したがって、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42を基板43上に精度良く配置することができるため、測定部4の品質が安定し、品質のばらつきがない脈検出装置1を提供することができ、また、図5の固定部62でのみ基板43に固定されているため、超音波が基板43に直接伝搬しにくくなり、ノイズが減少するため脈の検出感度を向上させることができる。本実施の形態の場合では、送信用圧電素子、受信用圧電素子のサイズが2×4mm、基板サイズが10×11mmに対して固定部62の面積は0.5mm×0.5mmとした。
【0077】
送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42を、全面で導電性接着剤などにより基板43に固定した場合では、送信用圧電素子41に±5V、9.5MHzのバースト信号(5波分のサイン波)を入力したところ、脈を測定していない状態(非測定状態)で、受信用圧電素子42によって入力の0.8%の振幅のバースト信号が受信されていたが、本実施の形態のように、固定部62のみで固定したところ、受信用圧電素子によって検出されたバースト信号の振幅は入力の0.02%にまで減少した。
【0078】
さらに本実施の形態の測定4を用いて、シリコンオイル中に設置したCu板への超音波の反射強度(送信用圧電素子41から送信された超音波がCu板に反射して受信用圧電素子42によって検出される割合)を測定したところ、全面で基板43に固定した場合では0.2%だったが、本実施の形態のように、固定部62のみで固定したところ、0.6%になり、反射強度が3倍程度になり、結果として脈検出感度も向上した。
【0079】
また、従来のように樹脂に埋め込み固定しないため、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42の両面に容易に電極を形成することができ、各圧電素子から容易に電極を引き出すことができる。
【0080】
また、本実施例の脈検出装置は、通常、脈拍を測定・表示するが、脈波も測定できる。
【0081】
また、本実施例のように、脈検出装置1において処理部3と測定部4とを離れた構造にするのではなく、1つのモジュールとして構成してもよい。これによって、脈検出装置1の部品点数が少なくなり製造コストを抑えることができる。さらに、処理部3と測定部4の間の配線を簡略化することができる。
【0082】
また、処理部3内に通信部等を設けて、脈測定結果を病院内の管理システムに送信する構成にしてもよく、これにより、脈検出装置1を装着した患者の状態を常時把握することができる。
【0083】
なお、本実施例の詳細な部分については、上記実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施の形態では圧電素子の励振周波数を9.6MHzとしたが、共振周波数5MHz程度の圧電素子を利用して、励振周波数を5MHz程度としても特に問題はない。
【0084】
(実施例2)
本発明による脈検出装置の実施例2を図1、図7を用いて説明する。図7は本実施例の脈検出装置に関わる測定部4の側面図であり、電極45a、45b、60a、60b、46a、46b、47a、47b、配線部61は省略する。処理部、バンド及び止め具、圧電素子、基板の材質、形状は実施例1と同様のものを使用した。
【0085】
図7は、基板43の一面43aに樹脂層49を設けた測定部4の構成を示す図である。図7に示すように、基板43の一面43aに樹脂層49が形成されている。ここで、樹脂層49はエポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂からなり、送信用圧電素子41、受信用圧電素子42の保護と、電極45a、45b、60a、60b、46a、46b、47a、47b、配線部61の絶縁の効果および、生体と各圧電素子41,42との間で効率良く超音波を伝搬させる効果がある。
【0086】
生体と各圧電素子41,42との間で効率良く超音波を伝搬するためには、樹脂層49の音響インピーダンスを、生体の音響インピーダンスZlと圧電素子の音響インピーダンスZcとの間の値にする必要がある。音響インピーダンスとは音波の伝搬のしやすさを示す値であり、その値はヤング率や密度によって変化する。
【0087】
そして、図7に示す構成を有する測定部4において、基板43の理想的な音響インピーダンスZmは、
Zm=(Zc×Zl)1/2 式(1)によって示すことができる。そして、式(1)に、公知であるZl=1.5M(N・sec/m3 )、Zc(PZTを使用)=30M(N・sec/m3 )を代入すると、Zm=約6.7M(N・sec/m3 )となる。
【0088】
この計算値を基に、本実施の形態では、基板43に、音響インピーダンスが約3M(N・sec/m3 )であるエポキシ系の樹脂を使用している。
【0089】
また、樹脂層49の基板厚さ方向の厚さは、薄いほど良く、本実施の形態のような構成では、100μm下が適当である。スピンコートあるいは、バーコートにより樹脂49を基板43上に塗布し、熱あるいは紫外線で樹脂49を硬化させることにより、一定の厚さで均一に樹脂層49を配置することができる。
【0090】
なお、基板43の一面43aにエポキシ系樹脂の樹脂層を形成し、更にその上にシリコン系樹脂の樹脂層を形成して2層の樹脂層にしてもよく、これにより、超音波の反射、減衰を防ぐことができる。
【0091】
樹脂層49にシリコン系樹脂を用いた場合、シリコン系樹脂は軟質であるため樹脂層49によって基板43と生体との密着性が向上する。したがって、生体と基板43との間に存在する空気層を低減させることができ、この空気層による超音波の振動の減衰を抑えることができる。また、シリコン系樹脂は、生体との適合性がよく、皮膚に密着させても影響が少ない。
【0092】
(実施例3)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例3を図8に基づいて説明する。図8は本発明の脈検出装置に関わる測定部4の側面図であり、配線部61、電極60a、60bは省略されている。処理部、バンド及び止め具、圧電素子、基板の材質、形状は実施例1と同様のものを使用した。本実施例の脈検出装置は、基板43上に溝を形成し、この溝に電極47a、47bを形成し、送信用圧電素子41、受信用圧電素子42をこの溝の中に配置し、基板43上に樹脂層49を取り付けたものである。このように溝に圧電素子を埋め込むことで、圧電素子による凹凸が形成されず、さらに均一に樹脂層49を形成できる。
【0093】
(実施例4)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例4を図9に基づいて説明する。図9は本発明の脈検出装置に関わる測定部4の側面図であり、処理部、バンド及び止め具、圧電素子、基板の材質、形状は実施例1と同様のものを使用し、電極60a、60b、配線部61は省略する。本実施例では、電極47a、47bにはんだ等のバンプ71が形成されている。送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42はバンプ71によって電極47aおよび電極47bに固定され、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42と電極47a及び電極47bの間に空隙70が形成される。
【0094】
本実施の形態では、バンプ71は半田によって形成し、バンプ71の高さは10μmした。
【0095】
空気層は極めて超音波の減衰率が高い。そのため、空気層である空隙70が存在することによって、超音波が基板43内を伝わって受信用圧電素子42で直接受信される可能性が低くなり、脈測定のノイズを防止することができる。
【0096】
本実施例では、送信用圧電素子41と、受信用圧電素子42の両方にバンプを形成したが、どちらか一方でも同様の効果を得ることができる。また、実施例2と同様に樹脂層を設けても良い。
【0097】
(実施例5)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例5を図10に基づき説明する。図10は本実施例の脈検出装置に関わる測定部4の側面図である。処理部、バンド、止め具、圧電素子、基板の材質は実施の形態1と同様のものを使用した。電極60a、60b、配線部61は省略する。本実施例の脈検出装置は基板43と送信用圧電素子41と受信用圧電素子42の間に空隙70が設けられた構成である。基板43上に空隙70が形成され、この空隙70を挟んで送信用圧電素子41と電極47a及び、受信用圧電素子42と電極47bが配置されている。
【0098】
空気層は超音波に対する減衰率がきわめて高いため、空隙70によって、超音波が基板43内を伝わって受信用圧電素子42によって直接受信される可能性が低くなり、脈測定のノイズを防止することができる。更に、検出感度を向上させることもできる。
【0099】
また、超音波の距離伝搬特性は、波の腹にあたる波長λの1/4の奇数倍が良好であり、中でも1/4程度が適している。一方、気体、液体、固体中では距離が離れるほど、超音波は減衰することが知られている。本実施の形態では、空隙70の厚さ(深さ)としては、超音波の波長λ以上で超音波は十分に減衰し、良好な特性が得られた。例えば、9.5MHzの超音波を使用する場合、空隙70の厚さ(深さ)は0.2mm以上が適している。
【0100】
本実施例の場合、送信用圧電素子41に±5V、9.5MHzのバースト信号(5波分のサイン波)を入力したところ、非測定時では0.02%の信号が送信用圧電素子41から受信用圧電素子42に伝搬し、また、シリコンオイル中に設置したCu板への超音波の反射強度(送信用圧電素子41から送信された超音波がCu板に反射して受信用圧電素子42によって検出される割合)を測定したところ、0.7%となり、さらに反射強度が向上した。
【0101】
なお、本実施例では空隙70は基板43をダイシングすることにより形成したが、他の加工方法を利用してもよく、また空隙70の深さは0.2mm程度とした。また、実施例2と同様に樹脂層を設けても良い。
【0102】
(実施例6)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例6を図11に基づき説明する。図11は本実施例の脈検出装置に関わる測定部4の側面図であり、電極47a、47b、電極60a、60b、配線部61は省略している。処理部、バンド、止め具、圧電素子、基板の材質は実施例1と同様のものを使用した。
【0103】
本実施例による脈検出装置は、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42に対して基板43上に突起部72が設けられている。送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42は突起部72でのみ固定されるため、送信用圧電素子41により発せられた超音波が直接受信用圧電素子42に伝わりにくくなるため、脈測定のノイズを防止することができる。
【0104】
本実施例では、突起部72として、銅などの金属を基板43上にメッキすることで形成したが、ダイシングなどで基板43上に突起部72を形成しても良い。また、実施例2と同様に樹脂層を設けても良い。
【0105】
(実施例7)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例7を図12に基づき説明する。図12は本実施例の脈検出装置に関わる測定部4の側面図であり、電極60a、60b、配線部61は省略する。バンド、止め具、処理部、圧電素子、基板の材質は実施例1と同様のものを使用した。
【0106】
本実施例による脈検出装置は、基板43の一面43aに研削加工などによりある一定の粗さで表面処理が施されている。基板43の一面43aに図示しない電極を設け、さらに研削加工などにより、ある粗さで表面処理を施し、この一面43a上に送信用圧電素子41、受信用圧電素子42を導電性接着剤などにより固定した。これにより、送信用圧電素子41、受信用圧電素子42は電極45b、電極46bを介して基板43とごく限られた面積で接触することになり、送信用圧電素子41により発せられた超音波が直接受信用圧電素子42に伝わりにくくなるため、脈測定のノイズを防止することができる。更に、検出感度を向上させることもできる。
【0107】
(実施例8)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例を図13に基づいて説明する。図13は本発明による実施例8の脈検出装置に関わる測定部4の側面図であり、電極60a、60b、配線部61は省略されている。バンド、処理部、止め具、基板の材質、形状は実施例1と同様のものを使用した。
【0108】
本実施例による脈検出装置は、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42の電極45b、電極46b側に溝を形成し、電極47a、電極47bと空隙70を介して固定されている。空隙70は送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42の電極45b、電極46b側にダイシングにより溝を形成することで作成した。
【0109】
空気層は超音波に対する減衰率が極めて高く、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42は空隙70を介して固定されるため、空隙70で超音波が減衰し、送信用圧電素子41により発せられた超音波が直接受信用圧電素子42に伝わりにくくなるため、脈測定のノイズを防止することができる。また、実施例2と同様に樹脂層を設けても良い。
【0110】
また、実施の形態2と同様に樹脂層を設けても良い。また、送信用圧電素子41,受信用圧電素子42のうち、空隙70に対応する部分のみ圧電素子厚み方向に分極処理を施してもよく、この場合、上記効果をさらに向上させることができる。
【0111】
(実施例9)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例9を図14に基づき説明する。図14は測定部4の側面図であり、電極60a、60b、配線部61は省略されている。圧電素子、基板の材質、形状は実施例1と同様のものを使用した。
【0112】
本実施例による脈検出装置は、基板43上に溝50aが形成され、この溝50aを介して送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42の電極45b、電極46bと電極47a、電極47bを固定した構成である。したがって、脈の検出の際に、送信用圧電素子41により発せられた超音波は、基板43の溝部50aによって反射、減衰するため、超音波が送受信基板50内を伝わって受信用圧電素子42によって直接受信される可能性が低くなり、脈測定のノイズを防止することができる。
【0113】
本実施例では、溝部50aはダイシングにより基板43に加工された。また、実施例2と同様に樹脂層を設けても良い。
【0114】
(実施例10)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例10を図15に基づいて説明する。図15は本実施例の脈検出装置に関わる測定部4の概略構成を示す斜視図である。バンド、止め具、処理部、圧電素子は実施例1と同様のものを使用した。
【0115】
本実施例による脈検出装置においては、基板43が送信用圧電素子41側及と受信用圧電素子42側とで分割され、さらに基板43の他面に支持体81が取り付けられた構成である。図15のように、支持体81は凹型をしており、基板43と支持体81には空隙80が形成されている。基板43を図15の様に分割しても、基板43を容易に精度良く設置することができる。また、超音波の送信、受信強度も向上させることが可能となる。
【0116】
なお、支持体81の凹部82の開口部分の面積(図22のL×M)が送信用圧電素子41,受信用圧電素子の面積より小さい場合、支持体81の側壁部83を超音波が伝わってしまう。そのため、凹部82の面積は送信用圧電素子41,受信用圧電素子42の合計面積より大きいことが望ましい。
【0117】
送信用圧電素子41に±5V、9.5MHzのバースト信号(5波分のサイン波)を入力したところ、本実施例の場合、受信用圧電素子によって検出されたバースト信号の振幅は入力の0.01%にまで減少した。さらに本実施例による測定部4を用いて、シリコンオイル中に設置したCu板への超音波の反射強度(送信用圧電素子41から送信された超音波がCu板に反射して受信用圧電素子42によって検出される割合)を測定したところ、1.0%に向上した。
【0118】
送信用圧電素子41上から発信した超音波が基板43に伝わっても、基板43と支持体81との間には空隙80があるため、超音波は減衰し、支持体81には伝搬しない。そのため、送信用圧電素子41により発せられた超音波が直接受信用圧電素子42に伝わりにくくなるため、脈測定のノイズを防止することができる。更に、検出感度を向上させることもできる。
【0119】
本実施例では、支持体81としては、アクリルを使用したが、超音波が減衰しやすい、多孔質体などで形成すると、さらに送信用圧電素子41により発せられた超音波が直接受信用圧電素子42に伝わりにくくなるため、脈測定のノイズを防止することができる。また、実施例2と同様に樹脂層を設けても良い。
【0120】
(実施例11)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例11を図16に基づいて説明する。図16は本実施例の脈検出装置に関わる測定部4の概略構成を示す斜視図である。バンド、処理部、止め具、圧電素子、基板の材質は実施例1と同様のものを使用した。
【0121】
本実施例による脈検出装置の測定部において、基板43は送信用圧電素子41側及と受信用圧電素子42側とで分割され、さらに基板43の他面に支柱83を介して支持体89を取り付けられた構成である。基板43を図16の様に分割しても、基板43を容易に精度良く設置することができ、さらに超音波の送信、受信強度を向上させることができる。
【0122】
図16のように、支持体89は支柱83を介して基板43に取り付けられている。送信用圧電素子41上から発信した超音波が、基板43に伝わっても、基板43と支持体89との間には空隙80があるため、超音波は減衰し、支持体89には伝搬しない。そのため送信用圧電素子41により発せられた超音波が直接受信用圧電素子42に伝わりにくくなるため、脈測定のノイズを防止することができる。更に、検出感度を向上させることもできる。
【0123】
本実施例では、支持体89にアクリルを使用したが、超音波が減衰しやすい、多孔質体などで形成すると、さらに送信用圧電素子41により発せられた超音波が直接受信用圧電素子42に伝わりにくくなるため、脈測定のノイズを防止することができる。また、実施例2と同様に樹脂層を設けても良い。
【0124】
(実施例12)
本発明による脈検出装置1の測定部4の実施例12を図17に基づいて説明する。図17は本実施例の脈検出装置に関わる測定部4の側面図である。バンド、処理部、止め具、圧電素子、基板の材質は実施例1と同様のものを使用した。電極45a、45b、46a、46b、60a、60b、配線部61は省略してある。
【0125】
本実施例による脈検出装置の測定部において、基板43は送信用圧電素子41側及と受信用圧電素子42側とで分割され、基板43の他面に支持体89が取り付けられ、さらに樹脂層49が送信用圧電素子41側と受信用圧電素子42側に分割して設けられた構成である。基板43上に樹脂層を分割して設けることで、送信用圧電素子41から樹脂層49を介して生体内に伝搬せずに受信用送信圧電素子42で受信される超音波を減少させ、脈検出感度を向上させる効果がある。支持体81には、セラミックなどの多孔質体のほか、ゴムなど超音波を減衰させやすい材質を用いることで、送信用圧電素子41から支持体81を伝搬して受信用圧電素子42へ超音波が伝搬することを防ぐことができる。
【0126】
(実施例13)
以下に、図面を参照して本発明による脈検出装置の実施例について詳細に説明する。
【0127】
本発明による脈検出装置1の外観上の構成を示す側面図を図1に示す。また、図1に示した脈検出装置1を生体2(腕)に装着した状態を図2に示す。
【0128】
図1に示すように、脈検出装置1は、処理部3、測定部4、バンド5、及び止め金具6によって概略構成されている。図2に示すように、脈検出装置1は生体2に装着することにより常時携帯可能である。処理部3及び測定部4はバンド5に取り付けられており、バンド5及び止め金具6によって生体2(図1中の破線部)に装着される。この時、測定部4は生体2の橈骨(とうこつ)動脈あるいは尺骨動脈付近(図示省略)に当接される。また、図示しないが、処理部3と測定部4は導線により接続されており、この導線を介して処理部3から駆動用電圧信号が測定部4に入力され、測定部4で測定された電圧信号が処理部3に入力される。
【0129】
脈検出装置1の処理部3の内部構成と、処理部3と測定部4の接続状態を示すブロック図を図3に示す。図示するように、処理部3は、処理演算部31、駆動回路32、及び表示部33によって概略構成されている。
【0130】
処理演算部31は、内部に備えた記憶領域(図示省略)に記憶されている処理プログラムを実行することによって、脈の検出に関する各種処理を実行し、その処理結果を表示部33に表示する。また、処理演算部31は、脈測定時に駆動回路32から測定部4の送信用圧電素子41(詳細は後述)に特定の駆動用電圧信号を出力させる。また、処理演算部31は、送信用圧電素子41から発せられた超音波の周波数と、受信用圧電素子42で受信され血流のドップラ効果により変化した超音波の周波数を比較して脈を検出する。
【0131】
駆動回路32は、処理演算部31の指示に従って、特定の駆動用電圧信号を測定部4の送信用圧電素子41に出力する。
【0132】
表示部33は、液晶表示画面等によって構成されており、処理演算部31から入力される脈検出結果等を表示する。
【0133】
次に、脈検出装置1の測定部4の断面図を図18に示す。送信用圧電素子41と受信用圧電素子42は送受信基板44に接合され、送受信基板44は支持部81によって保持されている。このような構成にすることにより、各圧電素子の片面には空間80ができ、送信用圧電素子41と受信用圧電素子42は超音波が送受信する方向のみに伝達可能になる。
【0134】
送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42と送受信基板44の接合には、各種接着剤を用いる方法と拡散結合や共晶結合を利用した方法がある。拡散接合とは2つの金属が互いに接した状態で加圧加熱されることによって、金属原子の熱拡散を相互金属間で発生させて接合させる方法である。共晶結合とは、2つの金属が互いに接した状態で加圧加熱することによって、互いの金属を溶融し、その後冷却することによって、合金を相互金属間に生成することによって接合させる方法である。送受信基板44と、送信用圧電素子41もしくは受信用圧電素子42とを接合する際に拡散結合及び共晶結合を使用する利点は、接合界面に接着層が形成されず、接合界面における超音波の振動の減衰を低減させることができることである。また、これら圧電素子41,42の形状については任意であり、送信用と受信用に形状の異なる圧電素子を使用してもよい。
【0135】
また、送信用圧電素子41は、処理部3の駆動回路32と導線によって電気的に接続されている。そして、送信用圧電素子41に駆動回路32から特定の駆動用電圧信号が印加されると、送信用圧電素子41は励振して特定周波数の超音波を発生し、生体内(図31の2)に送信する。
【0136】
受信用圧電素子42は、処理部3の処理演算部31と導線によって電気的に接続されている。受信用圧電素子42は、生体から超音波を受信すると、この超音波を電圧信号に変換し、処理部3の処理演算部31に出力する。
【0137】
送受信基板44は、その一面43a上に、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42を配置し、他面43bは生体に接するガラス基板等である。
【0138】
ここで、送受信基板44を介して生体と各圧電素子41,42との間で効率良く超音波を伝搬するためには、送受信基板44の音響インピーダンスを、生体の音響インピーダンスZlと圧電素子の音響インピーダンスZcとの間の値にする必要がある。音響インピーダンスとは音波の伝搬のしやすさを示す値であり、その値はヤング率や密度によって変化する。
【0139】
そして、図18に示す構成を有する測定部4において、送受信基板44の理想的な音響インピーダンスZmは、 Zm=(Zc×Zl)1/2 式(1)によって示すことができる。
【0140】
そして、上記の式(1)に公知であるZl=1.5M(N・sec/m3 )、PZTを使用した場合のZc=30M(N・sec/m3 )を代入すると、Zmは約6.7M(N・sec/m3 )となる。
【0141】
この計算値を基に、本実施の形態では、送受信基板44に、音響インピーダンスが約10M(N・sec/m3 )であるガラス基板を使用している。
【0142】
また、超音波の伝搬に関して送受信基板44の厚さも重要な要素である。送受信基板44の厚さが不適当な場合には、上述の音響インピーダンスと同様に、送受信基板44において超音波の反射が起こってしまい、効率良く超音波が伝搬しない。そこで、送受信基板44の厚さは、送受信基板44が伝搬する超音波の周波数で波長の1/4程度にするのが好ましい。具体的には、超音波の周波数が9MHz(通常2.3〜10MHzの超音波を使用する)で、送受信基板(ガラス基板)における音速が約5000m/secの場合、送受信基板44の厚さは140μm程度にする。
【0143】
また、送受信基板44の圧電素子が形成された面の反対側の面、すなわち、生体に接する面には樹脂層48が形成されている。ここで、樹脂層48はエポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂からなり、これら使用する樹脂の種類によって、送受信基板44における生体との接触面(他面43b)の性質が異なる。
【0144】
例えば、樹脂層48にエポキシ系樹脂を使用した場合、エポキシ系樹脂の音響インピーダンスは、送受信基板44の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスとの間の値であるため、生体と送受信基板44の界面で起こる超音波の反射を更に低減させることができる。したがって、生体と送受信基板44との間で効率良く超音波を伝搬させることができる。ここで、樹脂層48の理想的な音響インピーダンスは、前述の式(1)と同様の式によって算出される。
【0145】
また、樹脂層48にシリコン系樹脂を用いた場合には、シリコン系樹脂は軟質であるため、樹脂層48によって送受信基板44と生体との密着性が向上する。したがって、生体と送受信基板44との間に存在する空気層を低減させることができ、この空気層による超音波の振動の減衰を抑えることができる。また、シリコン系樹脂は、生体との適合性がよく、皮膚に密着させても影響が少ない。
【0146】
なお、送受信基板44の他面にエポキシ系樹脂の樹脂層を形成し、更にその上にシリコン系樹脂の樹脂層を形成して2層の樹脂層にしてもよく、これにより、超音波の反射、減衰を防ぐことができる。
【0147】
次に、図3及び図31を参照して、脈検出装置1における処理部3及び測定部4の動作について説明する。
【0148】
先ず、生体に脈検出装置1を装着すると、図31に示すように、測定部4が生体2(の橈骨(とうこつ)動脈あるいは尺骨動脈付近)に当接される。そして、脈の検出時に、図3に示す処理演算部31は、駆動回路32から送信用圧電素子41に特定の駆動用電圧信号を出力させる。
【0149】
送信用圧電素子41は、入力された駆動用電圧信号に基づいて励振して超音波を発生し、送受信基板44を介して生体2内に送信する。生体2内に送信された超音波は血流2aにより反射され、測定部4の受信用圧電素子42により受信される。受信用圧電素子42は、受信した超音波を電圧信号に変換して、処理演算部31に出力する。
【0150】
次に、処理演算部31は、送信用圧電素子41から送信された超音波の周波数と、受信用圧電素子42で受信され血流のドップラ効果により変化した超音波の周波数を比較して生体の脈を検出する。そして、処理演算部31は、脈の検出結果を表示部33に表示する。このようにして、脈検出装置1は、生体の脈を測定・表示する。
【0151】
したがって、送信用圧電素子41及び受信用圧電素子42を送受信基板44上に精度良く配置することができるため、測定部4の品質が安定し、品質のばらつきがない脈検出装置1を提供することができ、また、脈の検出感度を向上させることができる。
【0152】
また、脈検出装置1に支持部を備えていることによって、脈検出装置1の強度が向上し、脈検出装置1の耐久性が向上する。
【0153】
また、本実施例の脈検出装置1は、通常、脈拍を測定・表示するが、脈波も測定できる。
【0154】
なお、本発明の脈検出装置の詳細な部分については、上記実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施例では送受信基板44上に送信用圧電素子41と受信用圧電素子42を金属間結合によって接合させたが、水素結合によって接合させてもよい。ここで、水素結合とは、イオン源を用いて水をイオン化して水酸化物イオンOH- を生成し、この水酸化物イオンOH- を送受信基板44上に照射した後、送受信基板44と各圧電素子41,42を圧接して接合させる方法である。また、送受信基板44上に親水基を形成して、この親水基による水素結合で、送受信基板と各圧電素子41,42を接合してもよい。
【0155】
また、本実施例のように、脈検出装置1の処理部3と測定部4とを離れた構造にするのではなく、1つのモジュールとして構成してもよい。これにより、脈検出装置1の部品点数が少なくなり製造コストを抑えることができる。さらに、処理部3と測定部4の間の配線を簡略化することができる。
【0156】
また、処理部3内に通信部等を設けて、脈測定結果を病院内の管理システムに送信する構成にしてもよく、これにより、脈検出装置1を装着した患者の状態を常時把握することができる。
【0157】
(実施例14)
また、図18に示した測定部4の構成の変形例について、図19〜図21を参照して説明する。尚、以下の説明において、図18に示した測定部4と同一構成部位については、同一の符号を付しており、ここでは説明を省略する。
【0158】
図19は、送受信基板44上に形成された溝部43cを挟んで、送信用圧電素子41と受信用圧電素子42を配置した測定部4の構成を示す図である。
【0159】
図19に示すように、送受信基板44上に溝43cが形成され、この溝部43cを挟んで送信用圧電素子41と、受信用圧電素子42とが配置されている。
【0160】
したがって、脈の検出の際に送信用圧電素子41により発せられた超音波は、送受信基板44の溝部43cによって反射、減衰することとなるため、超音波が送受信基板44内を伝わって受信用圧電素子42によって直接受信される可能性が低くなり、脈測定のノイズを防止することができる。更に、検出感度を向上させることもできる。
【0161】
なお、溝部43cの形状については任意であり、例えば、溝部43cの断面形状が逆三角形であってもよい。
【0162】
(実施例15)
図20は、分割された送受信基板44,45に、送信用圧電素子41と受信用圧電素子42をそれぞれ配置した測定部4の構成を示す図である。図20に示すように、測定部4は、送受信基板44(図18)を2つの送受信基板44,45に分割して、送信用基板44に送信用圧電素子41を配置し、受信用基板45に受信用圧電素子42を配置した。
【0163】
したがって、脈検出の際に送信用圧電素子41により発せられた超音波が直接受信用圧電素子42に直接伝わることはないため、脈測定のノイズを防止することができる。
【0164】
(実施例16)
図21は、分割された送信用基板44と受信用基板45にそれぞれテーパ形状を有する測定部4の構成を示す図である。図21に示すように、測定部4は、送受信基板44(図18)を2つの送受信用基板44,45に分割して、送信用基板44の一面44a上に送信用圧電素子41を配置し、受信用基板45の一面45a上に受信用圧電素子42を配置した。そして、送受信基板44の他面44b及び送受信基板45の他面45bをテーパ形状にした。ここで、これらテーパ形状は、生体の血流方向に沿って形成され、且つ各送受信基板44,45の内側の厚みより外側の厚みの方が大きくなるように形成される。これにより、送信用圧電素子41から発せられた超音波を生体の血流付近にフォーカスしやすくなり、生体の血流によって反射された超音波を受信用圧電素子42によって効率良く受信することができる。
【0165】
また、支持部81の構造についても、図18〜21で図示したような凹形状なもの(図22)だけでなく、図23に示すケース形状を用いてもよい。図23のようなものにすることで、より耐久度の高い脈検出装置ができる。
【0166】
また、図24に示すように、支持部81を櫛歯状にすることで、基板を保持する面積を小さくなり、超音波が送信側から受信側によりもれなくなり、ノイズがより小さくなり、より高性能な脈検出装置ができる。図25に示すように、櫛歯形状の先端を鋭角にすると、よりノイズが小さな脈検出装置となる。
【0167】
支持部81の材料には、金属材料・有機材料・無機材料の何れか、もしくは、それらの複合材料を用いる。支持部にセラミックスを用いるとセラミックスは堅いので、脈検出装置の強度が上がる。支持部にプラチックを用いると大量生産に向いており、コストが低くなる。特にプラスチックを用いる場合は射出成型などにより形状にこだわることなく、コストが低くなる。支持部81に金属を用いると精密に支持部を加工できる。したがって、図26に示すような支持部にプラスチック46bと金属46aを使用すると、コストも安く、ノイズが小さい脈検出装置ができる。また、セラミックスやスポンジなどの多孔質体を用いると、超音波が伝わらないので、ノイズが減少し、性能が良くなる。
【0168】
(実施例17)
本発明の超音波診断装置の一実施例としての脈波検出装置1の1実施の形態について、図27を用いて説明する。図27は本実施の形態の脈波検出装置に関わる測定部4の側面図であり、電極60a、60b、配線部61は省略する。バンド、止め具、処理部、圧電素子、基板の材質は実施の形態1と同様のものを使用した。
【0169】
図27は、電極47a、47bと送信用圧電素子41,受信用圧電素子42の間に超音波減衰層73として導電性ゴムを配置した図である。
【0170】
本発明の超音波診断装置は、使用する超音波として1MHz〜10MHz程度の周波数を利用するが、一般的にゴムなどの弾性材料は、前記周波数帯域では、減衰率が高く、超音波減衰性の材料として利用することができる。そのため、本実施の形態のように、電極47a、47bと送信用圧電素子41,受信用圧電素子42の間に導電性ゴムを配置することで、送信用圧電素子41,受信用圧電素子42へ所望の電気的信号を印加することができるとともに、超音波が基板43内を伝わって受信用圧電素子42によって直接受信される可能性を低くすることが可能となる。そのため結果として、生体内へ送信される超音波の強度が向上するため、検出感度を向上させることができる。
【0171】
なお、超音波73は、図27に示すように、送信用圧電素子41と受信用圧電素子42の間で分割されている必要がある。分割されていない場合、超音波減衰層73を介して超音波が送信用圧電素子41から受信用圧電素子42に伝播しやすくなるため、結果として検出感度の低下につながる。
【0172】
(実施例18)
本発明の超音波診断装置の一実施例としての脈波検出装置1の1実施の形態について、図28を用いて説明する。図28は本実施の形態の脈波検出装置に関わる測定部4の側面図である。バンド、処理部、止め具、圧電素子、基板の材質は実施の形態1と同様のものを使用した。電極45a、45b、46a、46b、60a、60b、配線部61は省略する。
【0173】
図28は送信用圧電素子41,受信用圧電素子42を分割した基板43上に配置し、基板を超音波減衰層75を介して支持体81に固定した構成を示す図である。
【0174】
超音波減衰層75の材質としては、実施の形態3でも説明したとおり、タングステン粉末を含有するエポキシ樹脂や、多孔性材料よりなる多孔質材、さらに後述する導電性、絶縁性のゴムなどが適している。
【0175】
(実施例19)
本発明の超音波診断装置の一実施例としての脈波検出装置1の1実施の形態について、図29を用いて説明する。図29は本実施の形態の脈波検出装置に関わる測定部4の側面図である。バンド、処理部、止め具、圧電素子、基板の材質は実施の形態1と同様のものを使用した。電極45a、45b、46a、46b、60a、60b、配線部61は省略する。
【0176】
図29は支持体81と基板43とを超音波減衰層75を介して固定した構成を示す図である。図29のような構造とすることで、さらに超音波が直接受信用圧電素子42により受信される可能性が低くなり、結果として検出感度を向上させることが可能となる。
【0177】
(実施例20)
本発明の超音波診断装置の一実施例としての脈波検出装置1の1実施の形態について、図30を用いて説明する。図30は本実施の形態の脈波検出装置に関わる測定部4の側面図である。バンド、処理部、止め具、圧電素子、基板の材質は実施の形態1と同様のものを使用した。電極45a、45b、46a、46b、60a、60b、配線部61は省略する。
【0178】
図30は、基板43を分割し、凹部82を有する支持体81を設けた測定部4において、分割された基板43の間に減衰層95を設けた構成を示す説明図である。
【0179】
脈の測定時などにおいて、皮膚に測定部4を接触させた場合、汗、埃などの異物が分割した基板43の間に混入しやすくなる。この際、汗、埃などの異物が基板43の一面43aの裏面43bに回り込むと、異物を通して送信用圧電素子41から発生した超音波が受信用圧電素子42に直接伝搬しやすくなるため、結果として、検出感度の低下につながる。
【0180】
そのため、本実施の形態のように、分割した基板43の間に減衰層95を設けると異物が混入しにくくなるため、検出感度を低下させることがなくなる。
【0181】
減衰層95の材質としては、アクリル、エポキシ系の樹脂だと、逆にこの樹脂を通して超音波が伝搬してしまうため、シリコンゴムなど、超音波が伝搬しにくい材質であることが望ましい。
【0182】
なお、本発明の実施例1乃至16に示す脈検出装置は、超音波診断装置にも同様に使用することができる。また、実施例17乃至20に示す超音波診断装置は、脈検出装置にも同様に使用することができる。
【0183】
また、基板或いは送信用圧電素子、受信用圧電素子に突起部を設けることで、基板へ超音波が伝搬しにくくなり、脈検出のノイズを減少させ、また生体への超音波の送信、生体からの超音波の受信強度を向上させることが可能となり、脈検出の感度を向上させる効果がある。
【0184】
また、脈検出装置の基板に備えた樹脂層によって、基板における生体との接触面の特性を、その用途に応じて最適に調整することができ、また樹脂層を最適な厚さで均一に形成することが可能であるため、さらに脈検出感度を向上させることができる。
【0185】
また、基板に設けられた溝を介して送信用圧電素子と受信用圧電素子が設けられることにより、送信用圧電素子で発せられた超音波を受信用圧電素子が直接受信しないため、ノイズを低減させることができ、脈検出装置の信頼性を向上させることができる。
【0186】
さらに、基板上に位置する送信用圧電素子及び受信用圧電素子を支持する支持基板を設けることにより、外部からの衝撃に対する強度が向上し、また、超音波の漏洩を防ぐことができる。
【0187】
以上のように、本発明の脈検出装置によれば、送受信基板上に送信用圧電素子と受信用圧電素子とを設計通りに精度良く配置することができるため、品質にばらつきが生じにくい脈検出装置を提供することができ、また、脈の検出感度を向上させることができる。
【0188】
さらに、送受信基板の音響インピーダンス、または送受信基板の厚みを制御することによって、送受信基板と生体との界面における超音波の反射を低減させることができ、効率良く超音波を伝搬することができる。
【0189】
また、超音波の伝達方向を一方向にできる構成としたため、効率よく超音波が伝搬することができる。
【0190】
また、脈検出装置の送受信基板に備えた樹脂層によって、送受信基板における生体との接触面の特性を、その用途に応じて最適に調整することができる。
【0191】
また、他面に設けられた樹脂層にシリコン系樹脂を用いることによって、送受信基板と生体との密着性が向上するため、送受信基板と生体との界面における空気層が減少し、超音波の振動の減衰を抑えることができる。
【0192】
また、送受信基板に設けられた溝を介して送信用圧電素子と受信用圧電素子が設けられることにより、送信用圧電素子で発せられた超音波を受信用圧電素子が直接受信しないため、ノイズを低減させることができ、脈検出装置の信頼性を向上させることができる。
【0193】
また、送受信基板の他面がその一面に対して斜めに形成されている。すなわち、送受信基板の他面と一面とを平行な面ではなく、テーパ形状にしたことによって、血流のドップラ効果が大きくなり、脈の検出感度を向上させることができる。
【0194】
さらに、送受信基板上に位置する送信用圧電素子及び受信用圧電素子を支持する支持基板を設けることにより、外部からの衝撃に対する強度が向上し、また、超音波を防ぐことができる。
【0195】
また、脈検出装置に備えた表示部によって、生体が脈検出結果を把握することができる。
【0196】
また、脈検出装置を装着するためのベルトを備えることによって、脈検出装置を容易に携帯することができる。
【0197】
また、送信用圧電素子または受信用圧電素子と、送受信基板とを、金属間結合によって接合する構成により、接合界面において超音波の減衰が少なく、効率良く超音波を伝搬させることができる。
【0198】
以上のように、本発明の超音波診断装置によれば、基板と圧電素子を給電部のみで固定したり、基板或いは送信用圧電素子、受信用圧電素子に突起部を設けて空隙を形成し、該空隙を超音波減衰層としたり、多孔質体などの超音波減衰層を設けることで、基板を通して、送信用圧電素子から受信用圧電素子に超音波が伝播しにくい構成とすることで、診断部位へ効率よく超音波を送信させることが可能となり、検出感度を向上させることができるという効果がある。また、基板上に圧電素子を配置する構造であるため、圧電素子を精度良く設置することが可能となるため、品質のばらつきが生じにくい。また、基板を支持する支持体を設けることにより、外部からの衝撃に対する強度、取り扱い性を向上させることができる。また支持体と基板の間にも超音波減衰層を設けることで、診断部位へ効率的に超音波を送信させることが可能となり、検出感度を向上させる効果もある。
【0199】
また、基板を分割して支持体に固定するなどすることで、さらに診断部位へ効率的に超音波を送信させることが可能となり、検出感度を向上させる効果がある。
【0200】
また、分割した基板の間に、ゴムなどの超音波減衰性を有する部材を設けることで、汗などの異物が混入して、基板の裏面に回り込んでノイズの原因となることを防ぐことが可能となるため、検出の安定性を向上させる効果がある。
【0201】
さらに、基板上に送信用圧電素子と受信用圧電素子とを設計通りに精度良く配置することができるため、品質にばらつきが生じにくい超音波診断装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0202】
1 脈波検出装置
2 生体
2a 血流
3 処理部
31 処理演算部
32 駆動回路
33 表示部
4 測定部
5 バンド
6 止め金具
41 送信用圧電素子
42 受信用圧電素子
45a、45b、46a、46b 電極
44、45 送受信基板
44a 一面
44b 一面
45d 一面
43 基板
43a 一面
43c 溝
47a、47b 電極
50a 溝部
49 樹脂層
61 配線
60a、60b 電極
62 固定部
70 空隙
71 バンプ
72 突起部
80 空隙
81 支持体
81a 支持体
81b 支持体
82 凹部
83 支柱
89 支持体
95 減衰層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された駆動信号に応じて生体内に超音波を送信する送信用の圧電素子と、
前記超音波が生体の血流によって反射した反射波を受信する受信用の圧電素子と、
前記送信用の圧電素子と前記受信用の圧電素子とが設けられた基板と、
前記送信用圧電素子が送信した超音波と前記反射波に基づいて脈を検出する検出部と、
前記基板を支持するものであり、前記基板が有する面のうち、生体に対向する面に対して裏面に設けられた支持部と、
前記基板が有する面の少なくとも一部が離間している離間部と、
前記支持部と前記基板により構成された空隙部とを備え、
前記送信用の圧電素子と前記受信用の圧電素子とは、前記離間部を挟んで前記基板に配置され、
前記空隙部は、前記基板の裏面に備えられ、前記離間部に対向する位置に備えられることを特徴とする脈波検出装置。
【請求項2】
前記送信用の圧電素子と前記受信用の圧電素子とがそれぞれ別個の基板に固定搭載されるとともに、前記各基板が同一の前記支持部上に構成されることを特徴とする請求項1に記載の脈波検出装置。
【請求項3】
前記支持部が箱型であることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項4】
前記支持部が櫛歯形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項5】
前記支持部がセラミックスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項6】
前記支持部がプラスチックであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項7】
前記支持部が金属であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項8】
前記支持部がプラスチックと金属からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項9】
前記空隙部の超音波の送受信方向の深さが、前記超音波の波長λ以上である請求項1に記載の脈波検出装置。
【請求項10】
前記空隙部の面積が、前記送信用の圧電素子と前記受信用の圧電素子との超音波送受信面の面積よりも大きい請求項1から9のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項11】
前記送信用の圧電素子と前記受信用の圧電素子とは、前記空隙部に設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項12】
前記基板が超音波を減衰する材質であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項13】
前記超音波を減衰する材質が多孔質体であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項14】
前記超音波を減衰する材質が導電性を有するゴムである請求項12に記載の脈波検出装置。
【請求項15】
前記基板に樹脂層を備えることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項16】
前記樹脂層が前記送信用の圧電素子と前記受信用の圧電素子間で分割されていることを特徴とする請求項15に記載の脈波検出装置。
【請求項17】
前記基板の音響インピーダンスが前記受信用の圧電素子または前記送信用圧電素子の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスの間であることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項18】
前記基板の厚みは、前記送信用の圧電素子が発生する超音波の波長の約4分の1であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の脈波検出装置。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の脈波検出装置を備える、超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−78827(P2011−78827A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283438(P2010−283438)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【分割の表示】特願2001−30996(P2001−30996)の分割
【原出願日】平成13年2月7日(2001.2.7)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】