説明

脈波信号処理装置、脈波測定装置およびプログラム

【課題】うっ血時における脈波の測定精度を向上させうる技術を提供する。
【解決手段】生体の脈波を測定する測定部位における電気インピーダンスを示す第1測定信号と、前記測定部位に照射された光が当該測定部位を透過又は反射した光の受光量を示す第2測定信号と、装着される前記生体の部位又は前記測定部位における動きに応じた物理量を示す第3測定信号とを取得し、第1測定信号又は第3測定信号に基づいて前記測定部位がうっ血状態であるか否かを検出し、うっ血状態である場合には、前記第1測定信号と前記第2測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力し、うっ血状態でない場合に、前記第1測定信号と前記第3測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波信号処理装置、脈波測定装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、脈波を測定する手首などの測定部位に光を照射し、測定部位で反射された光を受光して得られる脈波を表す脈波信号を出力する脈波センサユニットと、測定部位における体動を検出する加速度センサーとを有し、脈波センサユニットから出力される脈波信号と加速度センサーで検出される加速度信号とを適応フィルタに入力し、脈波信号に含まれる静脈血に起因するノイズ成分を除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-298606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、測定部位がうっ血している状態では測定部位における静脈血が増加するため、測定部位を上下に動かすなどの体動により血液が移動し、うっ血していない場合よりも測定部位の血液量が大きく変化する。そのため、うっ血している状態では、脈波信号は、体動によるノイズより測定部位における血液移動によるノイズの影響を受ける。加速度センサーでは血液量の変化を検出することはできないため、うっ血時に加速度信号を用いても静脈血によるノイズ成分を除去することができない。
本発明は、うっ血時における脈波の測定精度を向上させうる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る脈波信号処理装置は、生体の脈波を測定する測定部位における電気インピーダンスを示す第1測定信号を取得する第1取得手段と、前記測定部位に照射された光が当該測定部位を透過又は反射した光の受光量を示す第2測定信号を取得する第2取得手段と、装着される前記生体の部位又は前記測定部位における動きに応じた物理量を示す第3測定信号を取得する第3取得手段と、前記第1測定信号又は前記第3測定信号に基づいて前記測定部位がうっ血状態であるか否かを検出する検出手段と、前記検出手段によってうっ血状態であることが検出された場合に、前記第1測定信号と前記第2測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力し、前記検出手段によってうっ血状態でないことが検出された場合に、前記第2測定信号と前記第3測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。この構成によれば、うっ血時における脈波の測定精度を向上させることができる。
【0006】
また、本発明に係る脈波信号処理装置は、上記脈波信号処理装置において、前記検出手段は、前記第1測定信号が予め定められた閾値以下である場合に前記測定部位がうっ血状態であると検出することとしてもよい。この構成によれば、測定部位がうっ血状態か否かをより正確に検出することができる。
【0007】
また、本発明に係る脈波信号処理装置は、上記脈波信号処理装置において、前記閾値は、前記生体に応じて定められた値であることとしてもよい。この構成によれば、測定対象となる生体に応じたうっ血状態の検出を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る脈波測定装置は、脈波を測定する生体の測定部位に装着され、当該測定部位に光を照射し、照射した光が当該測定部位を透過又は反射した光の受光量を示す第1測定信号を出力する受発光手段と、前記測定部位における電気インピーダンスを示す第2測定信号を出力するインピーダンス出力手段と、装着される生体の部位又は前記測定部位における動きに応じた物理量を示す第3測定信号を出力する物理量出力手段と、前記受発光手段から出力された前記第1測定信号と、前記インピーダンス出力手段から出力された前記第2測定信号と、前記物理量出力手段から出力された前記第3測定信号とを取得する上記いずれかの脈波信号処理装置とを備えることを特徴とする。この構成によれば、うっ血時における脈波の測定精度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを生体の脈波を測定する測定部位における電気インピーダンスを示す第1測定信号を取得する第1取得手段、前記測定部位に照射された光が当該測定部位を透過又は反射した光の受光量を示す第2測定信号を取得する第2取得手段、装着される前記生体の部位又は前記測定部位における動きに応じた物理量を示す第3測定信号を取得する第3取得手段、前記第1測定信号又は前記第3測定信号に基づいて前記測定部位がうっ血状態であるか否かを検出する検出手段、前記検出手段によってうっ血状態であることが検出された場合に、前記第1測定信号と前記第2測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力し、前記検出手段によってうっ血状態でないことが検出された場合に、前記第2測定信号と前記第3測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力する出力手段、として機能させる。この構成によれば、汎用のコンピュータにより、本発明に係る脈波信号処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る脈波測定装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における制御部の機能ブロックと一部の構成を表す図である。
【図3】第1実施形態に係る脈波測定装置の動作フロー図である。
【図4】第2実施形態に係る脈波測定装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】第2実施形態における制御部の機能ブロックと一部の構成を表す図である。
【図6】変形例(1)における測定部位の姿勢を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る脈波測定装置1の構成例を表す図である。脈波測定装置1は、制御部11、脈波センサー12、加速度センサー13、インピーダンスセンサー14、信号処理部15、A/D(Analog-Digital)変換部16、計時部17、操作部18、及び表示部19を有する。本実施形態において、脈波測定装置1は生体の手首や上腕などに装着され、装着された生体の部位が脈波の測定部位となる。
【0012】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)とメモリ(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有し、ROMに記憶されている制御プログラムをCPUが実行することにより制御部11と接続されている各部を制御する。具体的には、制御部11は、後述するインピーダンスセンサー14の測定結果に基づいて測定部位がうっ血状態か否かを検出し、検出結果に応じた脈波信号を出力する。なお、制御部11の機能の詳細については後述する。
【0013】
脈波センサー12は、制御部11の制御の下、測定部位に光を照射して測定部位を透過又は反射した光を受光する受発光部121と駆動部122とを有する(図2参照)。受発光部121は、例えば緑色光の波長の光を発するLED(Light Emitting Diod)などの発光素子と、緑色光の波長の光を受光するフォトダイオードなどの受光素子を有する。駆動部122は、制御部11の制御の下、発光強度と発光タイミングを制御する制御信号がアナログ制御回路(不図示)から供給されると、この制御信号の振幅に応じた大きさの電流を発光素子に供給する。脈波センサー12は、駆動部122の駆動に応じて受発光部121の発光素子を発光させ、受光素子で受光された受光量に応じた測定信号(以下、脈波測定信号という)を出力する。測定部位における血管は、心拍と同周期で膨張と収縮を繰り返しており、血管の膨張と収縮の周期と同じ周期で発光素子から発せられた光の吸収量が増減し、その増減に合わせて反射光の強度が変化する。そのため、脈波測定信号には拍動を表す成分が含まれている。
【0014】
加速度センサー13は、例えば3軸の加速度センサーで構成されており、制御部11の制御の下、測定部位や測定部位以外の他の部位が動かされることで加速度センサー13に加わる力によって生じる各軸方向の加速度を検出し、各軸方向の加速度を示す加速度信号を出力する。つまり、加速度センサー13で検出される加速度は測定部位における姿勢や動きなどの体動を表わす物理量として検出される。
【0015】
インピーダンスセンサー14は、通電用の電極(図示略)と測定用の電極(図示略)とを有する。通電用の電極と測定用の電極は、測定部位と接触するように一定距離だけ離れた位置に設けられている。インピーダンスセンサー14は、制御部11の制御の下、電流供給回路(図示略)により通電用の電極に数十KHzの交流を流し、測定用の電極における電圧値に基づいて測定部位におけるインピーダンスの測定信号を出力する。インピーダンスは、測定部位における血液量が増加すると電流が流れやすくなるため低下し、測定部位における血液量が減少すると電流が流れにくくなるため上昇する傾向を有し、測定部位における血液量の変化を表す。なお、上記受発光部121、加速度センサー13、インピーダンスセンサー14は、本発明に係る受発光手段、物理量出力手段、インピーダンス出力手段として各々機能し、上記脈波測定信号、インピーダンスの測定信号、及び加速度信号は、本発明の第1測定信号、第2測定信号、第3測定信号に対応する。
【0016】
信号処理部15は、増幅回路151とイコライザー152を有する(図2参照)。増幅回路151は、脈波センサー12から出力される脈波測定信号を増幅してA/D変換部16へ出力する。イコライザー152は、インピーダンスセンサー14から出力されるインピーダンスの測定信号の波形を整形してしてA/D変換部16へ出力する。波形の整形は、例えばインピーダンスの測定信号の波形において振幅が一定以上の波形部分を一定値以下にするなど波形の歪みを整形する処理である。なお、本実施形態では、イコライザー152においてインピーダンスの測定信号の波形を整形する処理を行うが、イコライザー152を設けず、インピーダンスの測定信号がA/D変換部16に入力されるように構成してもよい。
【0017】
A/D変換部16は、第1取得手段、第2取得手段、第3取得手段として機能する。A/D変換部16は、増幅回路151から出力された脈波測定信号を取得し、予め定められたサンプリング周波数で脈波測定信号を量子化するA/D変換回路と、イコライザー152から出力されたインピーダンスの測定信号を取得し、予め定められたサンプリング周波数でインピーダンスの測定信号を量子化するA/D変換回路と、加速度センサー13から出力される加速度信号を取得し、予め定められたサンプリング周波数で加速度信号を量子化するA/D変換回路とを有する。A/D変換部16は、各A/D変換回路において量子化された脈波の測定データとインピーダンスの測定データ(以下、インピーダンスデータという)と加速度データとを制御部11に出力する。
【0018】
計時部17は、制御部11の制御の下、図示しないクロック供給部のクロック信号をカウントして時刻を計時する。操作部18は、操作スイッチなどの操作子を有し、利用者によって操作子が操作された内容を示す操作信号を制御部11へ送出する。表示部19は、ディスプレイを有し、制御部11の制御の下、計時部17で計時された時刻の情報や脈波を測定するためのメニュー画面、測定結果などの各種画像を表示する。
【0019】
次に、制御部11の機能について説明する。図2は、制御部11におけるうっ血の検出と脈波を示す情報の出力の処理を実現する機能ブロック図と他の一部の構成とを表す図である。図2に示すように、制御部11は、検出部111(検出手段)と脈波出力部112(出力手段)とを有する。検出部111は、A/D変換部16から出力されたインピーダンスデータに基づいて測定部位がうっ血状態であるか否かを検出する。上記したように、測定部位における血液量が増加すると電流が流れやすくなり、インピーダンスが小さくなることから、測定部位の静脈血量が増加するうっ血状態ではインピーダンスは小さくなる。従って、インピーダンスデータの値が低下している場合にはうっ血している可能性が高いといえる。本実施形態では、検出部111は、インピーダンスデータの値が予め定められた閾値以下となっている場合に測定部位がうっ血状態であることを検出する。
【0020】
脈波出力部112は、適応フィルタ処理部112aと解析部112bとを有する。適応フィルタ部112aは、測定部位がうっ血状態でない場合には、体動によるノイズを表す加速度データに基づいて、体動によるノイズ成分の波形(以下、体動ノイズ波形という)を生成し、脈波の測定データの波形信号から体動ノイズ波形信号を減算した結果を脈波信号として解析部112bへ出力する。具体的には、各軸(xyz)方向の加速度の成分を含む加速度信号をA/D変換した各加速度データ(ax,ay,az)から合成加速度a=(ax2+ay2+az21/2を求め、合成加速度aにフィルタ係数列wを畳み込み、畳み込み演算結果を体動ノイズ波形信号とする。適応フィルタ処理部112aは、測定データの波形信号から体動ノイズ波形信号を減算した結果を脈波信号とし、体動ノイズ成分を含まない脈波信号となるようにフィルタ係数列wを更新する。
【0021】
また、測定部位がうっ血状態の場合には、適応フィルタ処理部112aは、静脈血量の変化を表すインピーダンスデータに基づいて、血液移動によるノイズ成分の波形(以下、血液ノイズ波形という)を生成し、脈波の測定データの波形信号から血液ノイズ波形信号を減算した結果を脈波信号として解析部112bへ出力する。具体的には、インピーダンスデータにフィルタ係数列vを畳み込んだ演算結果を血液ノイズ波形信号とし、脈波の測定データの波形信号から血液ノイズ波形信号を減算した結果を脈波信号として解析部112bへ出力する。また、適応フィルタ処理部112aは、血液移動によるノイズ成分を含まない脈波信号となるようにフィルタ係数列vを更新する。なお、上記フィルタ係数列w、vの更新は、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムなどの周知の適応アルゴリズムを用いてもよい。
【0022】
脈波測定信号には、脈動を表すAC成分(Alternating Current)と基線ゆらぎを表すDC成分(Direct Current)とが含まれている。AC成分は、計測部位の動脈血によって反射された光量の変化、つまり動脈における心拍動を表しており経時的に変化する。DC成分は、計測部位の動脈及び静脈以外の生体組織と静脈血によって反射された光量を表しており静脈血量に応じて変化する。つまり、インピーダンスは、DC成分の変化を表している。うっ血状態の場合に、測定部位を動かすと静脈血量が変化するため、脈波測定信号は、体動によるノイズよりも静脈血量の変化によるノイズの影響が大きくなる。そのため、うっ血状態の場合には、体動を表す加速度信号ではなく、インピーダンスの測定信号を用いて脈波測定信号から静脈血によるノイズを除去する。一方、うっ血状態でない場合には、測定部位を動かしても静脈血量はうっ血状態の場合よりも変化が小さいため、脈波測定信号は静脈血量の変化によるノイズより体動によるノイズの影響が大きい。従って、うっ血していない状態では、加速度信号を用いて脈波測定信号から体動によるノイズを除去する。
【0023】
解析部112bは、脈波信号の波形におけるピークの時間間隔を脈拍間隔とし、脈拍信号の波形において所定時間毎のピークの出現頻度を脈拍数として、脈拍間隔及び脈拍数を示す情報を表示部19に出力する。
【0024】
(動作例)
以下、本実施形態に係る脈波測定装置1の動作例を説明する。図3は、脈波測定装置1の動作フローを示す図である。脈波測定装置1の制御部11は、操作部18を介して脈波を測定する操作を受付けると(ステップS10:YES)、脈波センサー12において測定部位に光を照射し、測定部位を透過又は反射された光を受光して受光量に応じた測定信号の出力を開始させ、加速度センサー13において測定部位における加速度を検出して加速度信号の出力を開始させるとともに、インピーダンスセンサー14において測定部位に交流を流して測定部位におけるインピーダンス測定信号の出力を開始させる(ステップS11)。なお、制御部11は、操作部18を介して脈波を測定する操作を受付けなければ(ステップS10:NO)、操作がなされるまで待機する。
【0025】
制御部11は、信号処理部15において、脈波センサー12から出力される脈波の測定信号を増幅し、インピーダンスセンサー14から出力されるインピーダンスの測定信号を波形整形すると共に、増幅した脈波の測定信号と波形整形したインピーダンスの測定信号と加速度センサー13から出力される加速度信号とをA/D変換部16において各々量子化してRAMに時系列に記憶する(ステップS12)。そして、制御部11は、RAMに順次記憶されるインピーダンスデータの値が予め定められた閾値以下であるか否か判断する(ステップS13)。制御部11は、インピーダンスデータの値が予め定められた閾値以下であると判断した場合(ステップS13:YES)、測定部位がうっ血状態であることを検出する(ステップS14)。
【0026】
制御部11は、インピーダンスデータの値が閾値以下となっている時間における脈波の測定データとインピーダンスデータとをRAMから読み出す。そして、血液量の変化によるノイズ成分を含まない脈波信号となるようにフィルタ係数列vを更新し、インピーダンスデータにフィルタ係数列vを畳み込んだ演算結果を血液ノイズ波形信号とし、脈波の測定データの波形信号から血液ノイズ波形信号を減算した結果を脈波信号とする。制御部11は、脈波信号の波形におけるピークの時間間隔を脈拍間隔とし、脈波信号の波形において所定時間毎のピークの出現頻度を脈拍数として検出し、検出した脈拍間隔と脈拍数とを示す画像を脈波を示す情報として表示部19に出力する(ステップS15)。
【0027】
また、ステップS13においてインピーダンスデータの値が予め定められた閾値より大きい場合(ステップS13:NO)、制御部11は、うっ血状態ではないことを検出し(ステップS16)、うっ血状態ではないと検出した時間における加速度データと脈波の測定データとをRAMから読み出す。そして、体動によるノイズ成分を含まない脈波信号となるようにフィルタ係数列wを更新し、加速度データに基づく合成加速度aにフィルタ係数列wを畳み込んだ演算結果を体動ノイズ波形とし、脈波の測定データの波形信号から体動ノイズ波形信号を減算した結果を脈波信号とする。制御部11は、脈波信号の波形におけるピークの時間間隔を脈拍間隔とし、脈波信号の波形において所定時間毎のピークの出現頻度を脈拍数として検出し、検出した脈拍間隔と脈拍数とを示す画像を脈波を示す情報として表示部19に出力する(ステップS17)
【0028】
上述した実施形態では、測定部位における血液量の変化を表すインピーダンスを用いることで測定部位がうっ血状態か否か検出することができる。また、うっ血状態の場合には、静脈血量の変化を表すインピーダンスの測定信号を用いて脈波信号を出力するので、脈波測定信号に含まれる静脈血によるノイズ成分が除去され、うっ血時に加速度信号を用いて脈波信号を出力する場合と比べて脈波の測定精度を向上させることができる。
【0029】
(第2実施形態)
以下に、本発明の第2実施形態に係る脈波測定装置2を説明する。脈波測定装置2は、第1実施形態に係る脈波測定装置1と多くの点で共通しているため、以下に脈波測定装置2が脈波測定装置1と異なる点を中心に説明する。また、脈波測定装置2の構成部のうち脈波測定装置1の構成部と共通する構成部に関しては、同じ符号を付す。
【0030】
脈波測定装置1においては、装置の構成部の全てが同じ筐体内に配置され、測定対象者の身体に装着される構成が採用されている。すなわち、脈波センサー等による測定と、測定データの解析による脈拍情報の出力とがともに、測定対象者に装着される同じ装置内において行われる。
【0031】
これに対し、脈波測定装置2は、脈波センサー等による測定に関与する構成部が配置された装着装置と、測定データの解析および出力に関与する構成部が配置された解析装置とを備え、測定対象者には装着装置のみが装着される構成が採用されている。そのため、脈波測定装置2による場合、測定対象者にとっては装着する装置が計量かつ小型となり、また継続運転に必要な電力量も少なくなるため電池交換を要する頻度も低く、好適である。
【0032】
図4は脈波測定装置2の構成例を表す図であり、図5は脈波測定装置2の制御部11におけるうっ血の検出と脈波を示す情報の出力の処理を実現する機能ブロック図と他の一部の構成とを表す図である。これらの図に示されるように、脈波測定装置2は、装着装置2Aと解析装置2Bとを有している。
【0033】
装着装置2Aは、脈波測定装置1が備える構成部と共通の構成部として、脈波センサー12、加速度センサー13、インピーダンスセンサー14、信号処理部15、A/D変換部16、および計時部17を有している。また、装着装置2Aは、測定対象者が装着装置2Aの電源のON/OFF等の操作を行うための操作部18Aを備えている。
【0034】
すなわち、装着装置2Aは、測定データの解析を行う制御部11と、解析結果として得られる脈拍情報の出力を行う表示部19とを有していない。それに代えて、装着装置2Aは、A/D変換部16により生成される脈波測定データ、インピーダンスデータ、および加速度データを記憶する記憶部20と、記憶部20に記憶したそれらのデータを解析装置2Bに送信する送信部21とを備えている。
【0035】
解析装置2Bは、脈波測定装置1が備える構成部と共通の構成部として、制御部11、および表示部19を有している。また、解析装置2Bは、測定対象者もしくは医療従事者などの使用者が解析装置2Bに対し処理の開始・停止等の様々な指示を行うための操作部18Bを備えている。
【0036】
解析装置2Bは脈波センサー12等を有しておらず、装着装置2Aにおいて生成される脈波測定データ、インピーダンスデータ、および加速度データを取得して、それらのデータを解析し、脈拍情報の生成および出力を行う。そのため、解析装置2Bは装着装置2Aから送信されてくるデータを受信する受信部22を備えている。
【0037】
上述した構成を備える脈波測定装置2の動作は、脈波測定データ、インピーダンスデータ、および加速度データが装着装置2Aから解析装置2Bに送信されるステップが加わる点を除き、脈波測定装置1の動作と概ね同様である。
【0038】
具体的には、装着装置2AはステップS12(図3)において生成した脈波測定データ、インピーダンス測定データ、および加速度データを記憶部20に記憶する。その後、装着装置2Aは記憶部20に記憶されている脈波測定データ、インピーダンス測定データ、および加速度データを解析装置2Bに送信する。
【0039】
なお、記憶部20にそれらの測定データを蓄積する期間は任意である。装着装置2Aと解析装置2Bが通信可能であれば記憶部20に測定データの記憶が行われた後、速やかに解析装置2Bに対しそれらの測定データの送信が行われる構成が採用されてもよいし、例えば1ヶ月程の比較的長期間に渡りそれらの測定データを記憶部20に記憶させておき、例えば測定対象者が医療機関を訪れた際などに、医療機関に配置されている解析装置2Bに対し装着装置2Aに蓄積されている測定データが一度に送信される構成が採用されてもよい。
【0040】
解析装置2Bは、装着装置2Aから受信した測定データを用いて、ステップS13(図3)以降の処理を行う。その結果、解析装置2Bの表示部19に、うっ血状態の有無検出による精度の高い脈拍情報が表示される。
【0041】
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のように変形させて実施してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0042】
(1)上述した実施形態では、うっ血状態か否かの検出をインピーダンスセンサー14の測定結果に基づいて行う例を説明したが、例えば、加速度センサー13の出力結果を用いるなど、インピーダンスセンサー14以外の測定結果に基づいてうっ血状態であるか否かを検出するようにしてもよい。加速度センサー13の出力結果を用いる場合、測定部位の姿勢がうっ血しやすい姿勢であるか否かを加速度センサー13により検出し、うっ血しやすい姿勢を一定時間以上継続して行っている場合に測定部位がうっ血状態であることを検出するようにしてもよい。つまり、例えば、図6(a)に示すように、測定対象者Aが矢印P方向を向いている場合において測定部位a(手首)を水平にしている姿勢は、測定部位がうっ血しにくい姿勢とし、図6(b)に示すように測定部位aを重力方向に傾けた姿勢は、測定部位がうっ血しやすい姿勢とする。そして、加速度センサー13の検出軸であるx軸、y軸、z軸と手首の幅方向、指先方向、手首の厚み方向とが各々対応するように加速度センサー13を脈波測定装置1の筐体内に配置する。制御部11は、加速度センサー13から出力されるy軸方向の加速度成分が重力加速度Gに相当する値となる場合にうっ血しやすい姿勢、つまりうっ血状態であると検出する。
【0043】
(2)上述した実施形態では、インピーダンスデータがある閾値以下である場合にうっ血状態であると検出する例を説明したが、脈波の測定対象者ごとに閾値を調整するように構成してもよい。この場合には、脈波を測定する前に測定部位がうっ血していない状態とうっ血状態のインピーダンスを測定対象者ごとにあらかじめ測定し、うっ血状態における測定結果を閾値として設定するように構成してもよい。
【0044】
(3)上述した実施形態では、脈波センサー12における受発光部121は、緑色光の波長の光を発する発光素子と発光素子が発した光を受光する受光素子とで構成される例を説明したが、発光素子が発する光は、赤色光、赤外光、近赤外光などでもよい。
【0045】
(4)上述した実施形態では、加速度センサー13は3軸の加速度センサーで構成される例を説明したが、2軸の加速度センサーやジャイロセンサーを用いるようにしてもよい。
【0046】
(5)上述した実施形態では、脈波測定装置1には、脈波センサー12、加速度センサー13、インピーダンスセンサー14が設けられている例を説明したが、脈波センサー12、加速度センサー13、インピーダンスセンサー14を含むセンサー部と、信号処理部15、A/D変換部16、制御部11を少なくとも含む脈波信号処理装置とで構成してもよい。この場合には、センサー部を測定部位に装着し、脈波信号処理装置は、センサー部から有線又は無線通信により脈波の測定信号、加速度信号、インピーダンスの測定信号を取得して実施形態と同様に脈波信号を出力する処理を行うように構成してもよい。
【0047】
(6)上述した実施形態では、適応フィルタ処理により脈波信号を出力する例を説明したが、独立成分分析法を用いて脈波信号を出力するように構成してもよい。
【0048】
(7)上述した第2実施形態においては、脈波測定装置2の備える主な構成部のうち測定データを用いたうっ血状態の検出および脈拍情報の生成・出力に関する構成部を解析装置として分離し、それ以外を装着装置に配置して測定対象者に装着させる構成が採用されているが、本発明に係る脈波測定装置のいずれの構成部をいずれの筐体内に配置するかは任意に変更可能である。例えば、装着装置には脈波センサー、加速度センサー、インピーダンスセンサー、計時部を配置し、信号処理部、A/D変換部は解析装置に配置する、といった構成が採用されてもよい。
【0049】
(8)上述した実施形態の説明においては、脈波測定装置1および脈波測定装置2が、図1および図3に示した機能構成をハードウェア的に実現した専用装置であるか、測定データを取得可能な汎用のコンピュータに対し本発明の実施形態に係るプログラムに従った処理を実行させることにより実現されるか、については特に言及しなかった。本発明はその点に関し限定されない。すなわち、脈波センサー12、加速度センサー13およびインピーダンスセンサー14により測定され生成された測定信号を取得し、取得したそれらの測定信号を用いて、コンピュータに、信号処理部15、A/D変換部16、検出部111、脈波出力部112、表示部19が行う処理の少なくとも一部を実行させるプログラムもまた、本発明の技術的思想の範囲内である。
【符号の説明】
【0050】
1,2・・・脈波測定装置、2A・・・装着装置、2B・・・解析装置、12・・・脈波センサー、13・・・加速度センサー、14・・・インピーダンスセンサー、15・・・信号処理部、16・・・A/D変換部、17・・・計時部、18・・・操作部、19・・・表示部、20・・・記憶部、21・・・送信部、22・・・受信部、111・・・検出部、112・・・脈波出力部、112a・・・適応フィルタ処理部、112b・・・解析部、121・・・受発光部、122・・・駆動部、151・・・増幅回路、152・・・イコライザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の脈波を測定する測定部位における電気インピーダンスを示す第1測定信号を取得する第1取得手段と、
前記測定部位に照射された光が当該測定部位を透過又は反射した光の受光量を示す第2測定信号を取得する第2取得手段と、
装着される前記生体の部位又は前記測定部位における動きに応じた物理量を示す第3測定信号を取得する第3取得手段と、
前記第1測定信号又は前記第3測定信号に基づいて前記測定部位がうっ血状態であるか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段によってうっ血状態であることが検出された場合に、前記第1測定信号と前記第2測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力し、前記検出手段によってうっ血状態でないことが検出された場合に、前記第2測定信号と前記第3測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする脈波信号処理装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記第1測定信号が予め定められた閾値以下である場合に前記測定部位がうっ血状態であると検出することを特徴とする請求項1に記載の脈波信号処理装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記生体に応じて定められた値であることを特徴とする請求項2に記載の脈波信号処理装置。
【請求項4】
脈波を測定する生体の測定部位に装着され、当該測定部位に光を照射し、照射した光が当該測定部位を透過又は反射した光の受光量を示す第1測定信号を出力する受発光手段と、
前記測定部位における電気インピーダンスを示す第2測定信号を出力するインピーダンス出力手段と、
装着される生体の部位又は前記測定部位における動きに応じた物理量を示す第3測定信号を出力する物理量出力手段と、
前記受発光手段から出力された前記第1測定信号と、前記インピーダンス出力手段から出力された前記第2測定信号と、前記物理量出力手段から出力された前記第3測定信号とを取得する前記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の脈波信号処理装置と
を備えることを特徴とする脈波測定装置。
【請求項5】
コンピュータを
生体の脈波を測定する測定部位における電気インピーダンスを示す第1測定信号を取得する第1取得手段、
前記測定部位に照射された光が当該測定部位を透過又は反射した光の受光量を示す第2測定信号を取得する第2取得手段、
装着される前記生体の部位又は前記測定部位における動きに応じた物理量を示す第3測定信号を取得する第3取得手段、
前記第1測定信号又は前記第3測定信号に基づいて前記測定部位がうっ血状態であるか否かを検出する検出手段、
前記検出手段によってうっ血状態であることが検出された場合に、前記第1測定信号と前記第2測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力し、前記検出手段によってうっ血状態でないことが検出された場合に、前記第2測定信号と前記第3測定信号とを用いて前記生体の脈波を示す情報を出力する出力手段、
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−102915(P2013−102915A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248288(P2011−248288)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】