説明

脈管内搬送システム

【課題】哺乳類の身体管腔内に管状管腔内人工器官を移植するための搬送カテーテルを提供する。
【解決手段】貫通して突出可能な長手方向の軸、基端、および末梢端を有する、長手の柔軟なカテーテル本体と、管腔内人工器官を半径方向に拡張させる環状バルーンとを備え、このバルーンは、カテーテル本体の長手方向の軸について同軸に配置される実質的に円筒状の、基端および末梢端を有する側壁と、この円筒状側璧の基端からカテーテル本体まで延びる基端壁と、この円筒状側壁の末梢端からカテーテル本体まで延びる末梢端壁とを有し、この基端壁および末梢端壁は、カテーテル本体の長手方向の軸に直交する軸から10度未満をなす角度で配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は一般に機械装置に関するものであり、より特定的には、脈管内ステントおよび血管内移植片のためのカテーテル搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ステントという語は一般に、血管またはこれ以外の身体の解剖学的通路に移植される、狭窄症、脈瘤、閉塞症などの治療を目的とした脈管内装置を記述するために使用される。典型的には、かかるステントは血管に移植されて血管の閉塞領域の拡張および開通性を維持し、もしくは、血管の弱化領域または脈瘤領域を橋渡しする。他方で、かかるステントの或る典型的な非脈管応用例は、胃腸器官系(例えば、食道)、胆嚢樹状構造の脈管(例えば、総胆管)、または性尿器官系の解剖学的通路(例えば、尿管、尿道、卵管など)に対する狭窄症または損傷の治療を目的とする。
【0003】
大半のステントは最初に、比較的小径の縮小構成に配列され、それにより、ステントは、所望の解剖学的通路への挿入および経管侵入を目的として、搬送カテーテル上にまたはその内部に搭載され得る。それ故、かかるステントはより大きな「有効」直径まで半径方向に拡張可能であり、この直径は、ステントが移植されるべき血管または他の解剖学的通路の直径に等しいか、またはそれよりわずかに大きい。かかる有効直径まで半径方向に拡張された場合、ステントは搬送カテーテルから解放状態になり、血管または他の解剖学的通路の包囲壁に埋め込まれるかこれに係合するのが典型的である。
【0004】
或るステントは管状スリーブで被覆され、この場合、それらは典型的には「ステントされた移植片」と言及される。
【0005】
一般に、ステントおよびステントされた移植片は2種に大分類され、各カテゴリーは、a)自己拡張型、およびb)圧力拡張可能型である。自己拡張型のものは、その第1の(半径方向に縮小した)直径からその第2の(有効)直径まで、ステントまたはステントされた移植片に対して外方向に向けられた力を及ぼすことなく自己拡張可能である弾性材または形状記憶材(例えば、スプリング・スティールまたはニチノール(nitinol − 登録商標))から形成されればよい。かかる自己拡張型ステントおよびステントされた移植片の具体例は、以下に列挙する特許に明示されている。すなわち、米国特許第4,655,771号(Wallstenら)、第4,954,126号(Wallsten)、第5,061,275号(Wallstenら)、第4,580,568号(Gianturco)、第4,830,003号(Wolfら)、第5,035,706号(Gianturcoら)、第5,330,400号(Song)、および第5,354,308号(Simonら)、ならびに外国特許公開第WO94\12136号、第WO92\06734号、および第EPA183372号である。圧力拡張可能型(すなわち、「受動拡張可能型」)のものは、可塑的に変形可能な材料(例えば、ステンレス鋼)から形成されればよく、この材料はまずその第1の(半径方向に縮小した)直径に形成され、外方向に向けられた圧力がステントまたはステントされた移植片に及ぼされる時までかかる第1の直径で安定し続け、結局は、ステントまたはステントされた移植片のその第2の(有効)直径までの半径方向への拡張およびその結果として生じる可塑的変形を引き起こす。かかる圧力拡張可能型ステントおよびステントされた移植片は次の特許に明示されている。すなわち、米国特許第5,135,536号(Hillstead)、第5,161,547号(Tower)、第5,292,331号(Roneau)第5,304,200号(Spaulding)、第4,733,665号(Palmaz)、第5,282,823号(Schwartzら)、第4,776,337号(Palmaz)、および第5,403,341号(solar)、ならびに外国特許公開第EPA480667号、および第WO95\08966号である。
【0006】
多くの応用例で、ステントまたはステントされた移植片の注意深い位置決めおよび堅固な移植は隠された医療上の問題の成果のある治療に対して極めて重大である。この点で、ステントまたはステントされた移植片の位置決めおよび移植を達成するのに利用される搬送カテーテルは、システム全体の重要局面である。ステントおよびステントされた移植片のための多様なタイプの搬送カテーテルが先に公知であり、以下に列挙する特許に記載されたものを含む。すなわち、米国特許第4,665,918号(Garza他)、第4,733,665(Palmaz)、第4,739,762号(Palmaz)、第4,762,125号(Leimanら)、第4,776,337号(Palmaz)、第4,838,269号(Robinsonら)、第4,994,071号(MacGregor)、第5,037,427号(Haradaら)、第5,089,005号(Harada)、第5,102,417号(Palmaz)、第5,108,416号(Ryanら)、第5,141,498号(Christian)、第5,181,920号(Muellerら)、第5,195,984号(Schatz)、第5,201,901号(Haradaら)、第5,269,763号(Soehmerら)、第5,275,622号(Lazarusら)、第5,290,295号(Queralsら)、第5,306,294号(Winston)、第5,318,588号(Horzewskiら)、第5,344,426号(Lauら)、第5,350,363号(Goodeら)、第5,360,401号(Turnland)、第5,391,172号(Williamsら)、第5,397,345号(Lazarus)、第5,405,380号(Gianottiら)、第5,443,452号(Hartら)、第5,453,090号(Martinezら)、第5,456,284号(Ryanら)、および第5,456,694号(Marinら)、ならびに外国特許公開第EP-0308-815-A2号、第EP-0335-341-A1号、第EP-364-787-A号、第EP-0442-657-A2号、第EP-482976-A号、第EP-0505-686-A1号、第EP-0611-556-A1号、第EP-0638-290-A1号、第WO94\15549号、第WO95\01761号、第GB2196-857-A号、第DE3042-229号、および第DE3737-121-A号である(上記の特許文献は段落[0007]で特許文献1〜64としてそれぞれ列挙する)。一般に、ステントまたはステントされた移植片の配置および移植のために使用されるべき搬送カテーテルについて望ましい属性は、以下の通りである。
【0007】
a)挿入期間中は最小直径を維持して、不必要な外傷および/または配置の困難さを回避する、
b)適切な位置に放射線不透過性マーキングを含み、搬送カテーテルの厳密な視覚化と位置決めを促進し、ステントまたはステントされた移植片が所望の位置に移植されるのを確実にする、
c)ステントまたはステントされた移植片の、その全有効直径までの、その拡張度または拡張の完全さの地域的変動または局地的変動が無い状態での、信頼できる再現可能な拡張、
d)ステントまたはステントされた移植片のカテーテル本体からの信頼できる再現可能な離脱または解放、
e)新規移植されたステントまたはステントされた移植片を遮ること無く、搬送カテーテルを引き出して除去する能力、
f)ステントされた移植片が身体管腔内で搬送およびに移植された後、ステントされた移植片の外部で生物学的液体(例えば、血液)の漏洩(すなわち、「内部漏洩」)を容易にチェックする能力。
【特許文献1】米国特許第4,655,771号明細書
【特許文献2】米国特許第4,954,126号明細書
【特許文献3】米国特許第5,061,275号明細書
【特許文献4】米国特許第4,580,568号明細書
【特許文献5】米国特許第4,830,003号明細書
【特許文献6】米国特許第5,035,706号明細書
【特許文献7】米国特許第5,330,400号明細書
【特許文献8】米国特許第5,354,308号明細書
【特許文献9】国際公開第WO94/12136号パンフレット
【特許文献10】国際公開第WO92/06734号パンフレット
【特許文献11】欧州特許出願公開第EPA183372号明細書
【特許文献12】米国特許第5,135,536号明細書
【特許文献13】米国特許第5,161,547号明細書
【特許文献14】米国特許第5,292,331号明細書
【特許文献15】米国特許第5,304,200号明細書
【特許文献16】米国特許第4,733,665号明細書
【特許文献17】米国特許第5,282,823号明細書
【特許文献18】米国特許第4,776,337号明細書
【特許文献19】米国特許第5,403,341号明細書
【特許文献20】欧州特許出願公開第EPA480667号明細書
【特許文献21】国際公開第WO95/08966号パンフレット
【特許文献22】米国特許第4,665,918号明細書
【特許文献23】米国特許第4,733,665号明細書
【特許文献24】米国特許第4,739,762号明細書
【特許文献25】米国特許第4,762,125号明細書
【特許文献26】米国特許第4,776,337号明細書
【特許文献27】米国特許第4,838,269号明細書
【特許文献28】米国特許第4,994,071号明細書
【特許文献29】米国特許第5,037,427号明細書
【特許文献30】米国特許第5,089,005号明細書
【特許文献31】米国特許第5,102,417号明細書
【特許文献32】米国特許第5,108,416号明細書
【特許文献33】米国特許第5,141,498号明細書
【特許文献34】米国特許第5,181,920号明細書
【特許文献35】米国特許第5,195,984号明細書
【特許文献36】米国特許第5,201,901号明細書
【特許文献37】米国特許第5,269,763号明細書
【特許文献38】米国特許第5,275,622号明細書
【特許文献39】米国特許第5,290,295号明細書
【特許文献40】米国特許第5,306,294号明細書
【特許文献41】米国特許第5,318,588号明細書
【特許文献42】米国特許第5,344,426号明細書
【特許文献43】米国特許第5,350,363号明細書
【特許文献44】米国特許第5,360,401号明細書
【特許文献45】米国特許第5,391,172号明細書
【特許文献46】米国特許第5,397,345号明細書
【特許文献47】米国特許第5,405,380号明細書
【特許文献48】米国特許第5,443,452号明細書
【特許文献49】米国特許第5,453,090号明細書
【特許文献50】米国特許第5,456,284号明細書
【特許文献51】米国特許第5,456,694号明細書
【特許文献52】欧州特許出願公開第EP-0308-815-A2号明細書
【特許文献53】欧州特許出願公開第EP-0335-341-A1号明細書
【特許文献54】欧州特許出願公開第EP-364-787-A号明細書
【特許文献55】欧州特許出願公開第EP-0442-657-A2号明細書
【特許文献56】欧州特許出願公開第EP-482976-A号明細書
【特許文献57】欧州特許出願公開第EP-0505-686-A1号明細書
【特許文献58】欧州特許出願公開第第EP-0611-556-A1号明細書
【特許文献59】欧州特許出願公開第第EP-0638-290-A1号明細書
【特許文献60】国際公開第WO94/15549号パンフレット。
【特許文献61】国際公開第WO95/01761号パンフレット。
【特許文献62】英国特許出願公開第GB2196-857-A号明細書
【特許文献63】独国特許出願公開第DE3042-229号号明細書
【特許文献64】独国特許出願公開第DE3737-121-A号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術で公知の搬送カテーテル・システムのいずれもが、あらゆるタイプのステントおよびステントされた移植片について明らかに最適ではなかった。従って、当該技術においては、少なくとも幾つかのタイプのステントおよびステントされた移植片について、改良型搬送カテーテルの設計および開発の必要が残存している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳類の身体管腔(例えば、動脈、静脈、胃腸器官系、胆嚢樹状構造の脈管、尿路、生殖器官系、もしくはこれ以外の内分泌脈管または外分泌脈管など)の内部に管状の管腔内人工器官(例えば、ステントまたはステントされた移植片)を移植するための方法およびシステムを提供する。本発明のシステムは、a)搬送カテーテル、b)挿入器組立体、およびc)拡張器を含む。
【0010】
本発明に従って、身体の脈管の内部に半径方向に拡張可能な管状の管腔内人工器官を導入および移植するために利用可能な、搬送カテーテルを提供する。搬送カテーテルは1個またはそれ以上の以下の要素を組み入れる。すなわち、
a)半径方向に拡張可能なバルーンの両端が搭載される別個の管状構成部材から形成されるカテーテルの一部であって、他の構成部材と関連するかかる部材の一方の運動(例えば、長手方向運動、回転運動など)によってバルーンが、その萎んだ状態にある時に、ピンと張った形状まで堅く締められる(例えば、長手方向に引っ張られる、回動的にねじられる)ようにし、それにより、搬送カテーテルの後の後退および除去に干渉し得る緩んだまたは突き出たバルーン材を除去または最小限に阻止するもの、および/または、
b)管状の管腔内人工器官を半径方向に拡張するために利用可能な非テーパ状または最小限にテーパ状のバルーンであって、バルーンは搬送カテーテルの本体上に搭載され、かつ、
i)搬送カテーテルの長手軸に関して同軸に配置される実質的に円筒状の側壁と、
ii)円筒状側壁の基端からカテーテル本体の外側表面まで延びる基端壁と、
iii)円筒状側壁の末梢端からカテーテル本体の外側表面まで延びる末梢端壁とを含み、基端壁と末梢端壁がカテーテル本体の長手軸に対して垂直状態から10度しか逸れていない角度(10度未満の角度)で配置されるもの、および/または、
c)カテーテルの末梢部およびその上に搭載される半径方向に縮小した管腔内人工器官の挿入を促進するための装填器組立体であって、かかる装填器組立体は管状鞘部材を含み、これはカテーテル本体上に搭載された半径方向に縮小した管腔内人工器官にわたって前進可能で、かつ、挿入器の基端に直接係合可能で、挿入器の管腔内へ半径方向に縮小した管腔内人工器官を導入する際の後の前進を促進することを目的としたもの、および/または、
d)カテーテルを通って長手方向に延びるX線写真接触媒体注入管腔と連通する、1個またはそれ以上のX線写真接触媒体流出開口であって、流出開口はカテーテル上で適所に位置決めされ、それにより、X写真接触媒体が管腔を通って流出開口から本体管腔へ注入され得るようにし、その場合、管腔内人工器官は管腔内人工器官の上流の位置で移植されており、不適切なまたは不完全な移植、および、管腔内人工器官の、それが移植された身体管腔に対する不適切または不完全な寄りかかりの故に、本体管腔を通って流れる内源性流体が管腔内人工器官付近にしみ出すまたは漏洩する内部漏洩が存在する場合は、X線写真接触媒体が管腔内人工器官の外側を移動するようにしたもの。
【0011】
更に本発明によれば、1個またはそれ以上の以下に列挙する要素を有する長手の管状挿入器鞘部材を含む挿入器組立体が提供される。すなわち、
a)挿入器鞘部材の材料により十分に包囲されまたは包まれる一方でX線写真手段により目視可能であるように、挿入器鞘部材の壁の内部で溶融しているか、そうでなければ壁の内部に埋め込まれている放射線不透過性材料のリングまたはセグメントを含む、埋設型放射線不透過マーカー、および/または、
b)挿入器鞘部材の管腔と整列する挿入器鞘部材上に搭載される弁組立体(例えば、「弁ヘッド」)であって、弁組立体は
i)挿入器管腔と長手方向に整列して位置決めされる止血弁(例えば、「ダック・ビル」チェック弁)であって、止血弁は自己封鎖通路が形成された柔軟な止血弁本体を含み、自己封鎖通路は閉鎖形状まで偏倚され、それにより、長手部材が挿入器管腔を通して挿入されていない場合は、血液は、止血弁を通る基端方向への逆流を実質的に阻止され、自己封鎖通路は第1および第2の外径の第1および第2の長手部材が通過するのを許容するように拡大可能であるもの、
ii)止血弁と長手方向に整列した第1の封鎖弁(例えば、縦断スリット開口部が形成されたエラストマー弁)であって、第1の封鎖弁は、第1の封鎖弁開口部が形成された柔軟な第1の封鎖弁本体を含み、第1の封鎖弁開口部は、第1の長手部材が貫通できるようにする第1の直径を最初に備えており、かつ、第1の封鎖弁本体と封鎖接触状態で第2の長手部材が貫通できるようにする第2の直径まで拡張可能であり、第2の長手部材がそこに挿入されている間は、血液が、第1の封鎖弁を通って基端方向へ逆流することを阻止されるようにしたもの、
iii)第1の封鎖弁および止血弁と長手方向に整列する第2の封鎖弁(例えば、環状開口部が形成されたエラストマー円盤状弁)であって、第2の封鎖弁は、第2の封鎖弁開口部が形成された柔軟な第2の封鎖弁本体を含み、第2の封鎖弁開口部は、第2の封鎖弁本体と封鎖接触した状態で第1の長手部材を貫通させられるようにする第1の直径を最初に備え、第1の長手部材が挿入されている場合は、血液が、第2の封鎖バルブを通って基端方向に逆流するのを阻止するようにし、かつ、第2の長手部材が貫通するのを可能にするように、少なくとも第2の直径拡張可能であるものを含む。
【0012】
挿入器鞘部材が挿入器鞘部材上に搭載される弁組立体を組み入れる実施態様においては、かかる弁組立体は挿入器鞘部材の基端上に位置決めされ得て、かつ、そこから意志的に取り外し可能となり得て、複数弁組立体の使用を必要せずに挿入器鞘部材の交換可能性を許容する。また、挿入器鞘部材の基端(弁組立体上に位置決めされる場合はその基端)はねじ山または他の係合部材が設けられて、装填器組立体がそこにポジティブに係合される(例えば、ロックされる)のを許容し、それにより、管腔内人工器官が搭載された搬送カテーテルの挿入器鞘部材の管腔内へのおよびそこを貫通する円滑な前進を促進する。
【0013】
更に本発明によれば、挿入器鞘部材の直径まで間質穿刺器官系(interstitial puncture tract)を拡張させるために、挿入器鞘部材の管腔を通して挿入可能な拡張器が提供され、拡張器は第1材料から形成される外側管と第1材料より柔軟な第2材料から形成される内側円筒状部材を備える。外側管状部材の末梢部は除去され、内側円筒状部材の隣接材料は高周波処理または機械加工処理によりテーパ状にされ、それにより、拡張器の末梢端で比較的柔軟な内側円筒状部材のテーパ状セグメントを露出させる一方で、拡張器の基部が比較的硬質の外側管状部材により覆われたままであることを可能にする。ガイドワイヤ管腔は内側円筒状部材を通って長手方向に延びて、拡張器が事前挿入されたガイドワイヤにわたって前進させられるのを許容する。
【0014】
この方法で構成された場合、血管のような曲がりくねった解剖学的構造を通ってそこを過度に損傷したり孔を開けたりすることなく前進させられるように、拡張器の末梢端は十分に柔軟であるが、解剖学的解決機能を実施するために、拡張器の基部は十分に剛性され、それにより、拡張器が中を前進させられる柔軟な解剖学的構造体(例えば、血管)は、拡張器の比較的剛性の基部がそこを通って前進するおかげで、互いに線形整列状態に付勢されまたその状態がもたらされる。この方法で、拡張器は、比較的曲がりくねった解剖学的通路(例えば、大腿動脈や腸骨動脈など)を通過しなければならないとしても、所望の位置(例えば、腹部大動脈の末梢部内など)までの挿入器の末梢端の前進をより容易にすることが可能である。
【0015】
本発明の方法論によれば、上述の拡張器は挿入器鞘部材の管腔を通して挿入可能であり、その結果、拡張器の柔軟なテーパ状の末梢部は挿入器鞘部材の末梢端からそこを越えて突出する。その後、挿入器鞘部材/拡張器の組み合わせは、間質性器官系を通して血管内へまたは他の身体管腔内へ挿入器可能であり、そのようにして、拡張器の比較的柔軟な末梢部および挿入器の末梢端が身体管腔内に配置される。その後、拡張器は引き出されて挿入器鞘部材から除去され、挿入器鞘部材の弁組立体(存在する場合は)は侵入器鞘部材の基端からの血液または他の体液の逆流または漏洩を阻止する。その後、搬送カテーテルの装填器組立体(存在する場合は)は、挿入器鞘部材の基端と係合可能となり、放射状に拡張可能な管腔内人工器官が搭載された搬送カテーテルは、バルーンおよび添付の管腔内人工器官が身体管腔内の所望の移植場所に配置されるまで挿入器鞘部材を通して前進させられる。その後、バルーンは膨張させられ、管腔内人工器官の半径方向拡張および移植を引き起こす。その後、バルーンは収縮され、カテーテル組立体は長手方向に入れ子にされまたは延ばされ(かかる能力が存在していれば)、収縮したバルーンをピンと張った形状まで引っ張り、搬送カテーテルおよび萎んだバルーンは、半径方向に拡張して移植された管腔内人工器官をもつれさせたりひっかけたりすること無く、引き出されて除去される。
【0016】
より特定すれば、本願発明は、以下の項目に関し得る。
(1)哺乳類の身体管腔内に管状管腔内人工器官を移植するための搬送カテーテルであって、この搬送カテーテルは、a)貫通して突出可能な長手方向の軸、基端、および末梢端を有する、長手の柔軟なカテーテル本体と、b)上記管腔内人工器官を半径方向に拡張させる環状バルーンであって、このバルーンは、i)上記カテーテル本体の長手方向の軸について同軸に配置される実質的に円筒状の側壁であって、この側壁は基端および末梢端を有する、側壁と、ii)上記円筒状側壁の基端からカテーテル本体まで延びる基端壁と、iii)上記円筒状側壁の末梢端からカテーテル本体まで延びる末梢端壁とを有し、iv)この基端壁およびこの末梢端壁は、カテーテル本体の長手方向の軸に直交する軸から10度未満をなす角度で配置される、バルーンとを備える。
(2)バルーンの上記基端壁および上記末梢端壁のうち少なくとも一方が、上記カテーテル本体の長手方向の軸に関して80度ないし90度の内角を形成する、項目(1)に記載の搬送カテーテル。
(3)上記バルーンの上記基端壁および上記末梢端壁のうち少なくとも一方が、上記カテーテル本体の長手方向の軸に関して85度ないし90度の内角を形成する、項目(1)に記載の搬送カテーテル。
(4)上記カテーテル本体は、基端、末梢端、およびそこを長手方向に貫通して延びる中空管腔を有する外側管と、基端および末梢端を有する長手の内側部材であって、この内側部材は上記外側管の管腔を長手方向に貫通して伸び、この内側部材の末梢部が上記外側管の末梢端から突出し、かつ、それを越えて伸びるようにした、内側部材とを備え、基端壁は上記外側管に装着され、上記末梢端壁は上記内側部材に装着され、この状態で、上記外側管と上記内側部材のうち少なくとも一方は他方に関して移動可能で、バルーンが収縮した時には、バルーンの引き締めを引き起こすようにした、項目(1)に記載の搬送カテーテル。
(5)基端、末梢端、およびそこを長手方向に貫通して延びる中空管腔を有する長手のプッシャ本体を更に備え、上記外側管はこのプッシャ本体の管腔を長手方向に貫通して延び、バルーンがプッシャ本体の末梢端から突出するようにした、項目(4)に記載の搬送カテーテル。
(6)上記プッシャ本体は、バルーンの基端と管腔内人工器官の基端を受容するための長手末梢部を含む、項目(5)に記載の搬送カテーテル。
(7)プッシャ本体に沿って滑動的に前進可能で、かつ、バルーンおよび管腔内人工器官を受容する装填器を更に備える、項目(5)に記載の搬送カテーテル。
(8)上記カテーテル本体に装着されて、本体管腔の所望領域内の管腔内人工器官の厳密な位置決めを促進する、少なくとも1個の放射線不透過マーカーを更に備える、項目(4)に記載の搬送カテーテル。
(9)バルーンの基端に隣接してカテーテル本体の外側管に装着される第1の放射線不透過マーカーと、バルーンの末梢端に隣接してカテーテル本体の内側部材に装着される第2の放射線不透過マーカーとを備え、上記第1および第2の放射線不透過マーカーは、バルーンに搭載された管腔内人工器官の両端のそれぞれのものに隣接して位置決めされ、本体管腔の所望領域内の管腔内人工器官の厳密な位置決めを促進するようにした、項目(8)に記載の搬送カテーテル。
(10)哺乳類の身体管腔内部に半径方向に拡張可能な管腔内人工器官を移植し、かつ、身体管腔を通って流れる内源性流体が、半径方向に拡張および移植された管腔内人工器官の外側で漏れる、内部漏洩を検査するためのシステムであって、該システムが、a)貫通して突出可能な長手方向の軸、基端、および末梢端を有する長手のカテーテルと、b)このカテーテルに固着される、半径方向に拡張可能な管腔内人工器官であって、この管腔内人工器官が上記カテーテルから解放されて半径方向に拡張され得る移植位置まで上記カテーテルが長手方向に前進させられるようにし、その結果、管腔内人工器官が身体管腔と接合接触状態にあり、かつ、除去カテーテルのそれに続く除去がそれと共に実質的に静止状態に留まる管腔内人工器官と、c)上記搬送カテーテルが上記移植位置にある場合は、上記管腔内人工器官の上流にある位置で上記搬送について形成される、少なくとも1個の放射線不透過コントラスト媒体流出開口と、d)カテーテルを長手方向に貫通して上記少なくとも1個の流出開口まで延びる、放射線不透過コントラスト媒体管腔であって、放射線不透過コントラスト媒体は、上記カテーテルが上記移植位置にある時と、上記環状管腔内人工器官の半径方向拡張および移植の後は、上記管腔を通して上記流出開口から外へ注入され、上記内部漏洩が存在しているかどうかをX線写真法的に判定するようにした、放射線不透過コントラスト媒体管腔とを備える、システム。
(11)搬送カテーテルは、管腔内人工器官が移植されるべき身体管腔へ逆行様式で前進させられるよう意図されており、上記少なくとも1個のX線写真コントラスト流出開口は、管腔内人工器官に対して末梢に在るカテーテル部分に配置され、X線写真コントラスト媒体が、半径方向に拡張し移植された管腔内人工器官の上流で該1個以上の流出開口から流出するようにした、項目(10)に記載のシステム。
(12)上記カテーテルは、上記身体管腔を通る内源性流体の流れと同一方向に前進させられることが意図され、上記少なくとも1個のX線写真コントラスト媒体流出開口は、管腔内人工器官の位置に近接する位置で該カテーテルに形成され、上記1個以上の流出開口から流出するX線写真コントラスト媒体が、半径方向に拡張し移植された管腔内人工器官の上流で導入されるようにする、項目(10)に記載のシステム。
(13)哺乳類の身体に挿入可能な管状カニューレであって、このカニューレは、基端、末梢端、およびそこを長手方向に貫通して延びる中空管腔を有する管状カニューレ本体と、管状カニューレが挿入された時には、哺乳類体内に在る位置でこの管状カニューレ本体内部に埋設される、放射線不透過マーカーとを備える、管状カニューレ。
(14)上記放射線不透過マーカーは、上記カニューレ本体の末梢端に隣接して配置され、カニューレ本体の末梢端の位置決めが身体内で放射線的に目視可能になるようにする、項目(13)に記載のカニューレ。
(15)上記放射線不透過マーカーは、放射線不透過材料から形成されるリングである、項目(13)に記載のカニューレ。
(16)上記放射線不透過マーカーは、a)上記カニューレの外側表面上に放射線不透過マーカーを最初に位置決めする工程と、b)上記放射線不透過マーカーに隣接する該カニューレ本体の一部が溶融状態になるのを引き起こし、融解カニューレ材が上記放射線不透過マーカーを流動可能に包囲するようにする工程と、c)内部埋設された該放射線不透過マーカーと共に融解カニューレ材が再固化できるようにする工程とを含む処理により、上記管状カニューレ本体内部に埋設される、項目(13)に記載のカニューレ。
(17)上記カニューレは外径の外側表面を有し、このマーカーは、上記カニューレの外径と同一である外径を有するリングであり、該工程aは、カニューレの外側表面の一部をその末梢端に隣接した位置で最初に除去し、このカニューレの低減した直径の領域を作る段と、カニューレの低減した直径の領域上で該リングを前進させる段とを含む、項目(16)に記載のカニューレ。
(18)上記工程cにおける上記カニューレの溶解は、カニューレに高周波エネルギーを印加することにより達成される、項目(13)に記載のカニューレ。
【発明の効果】
【0017】
本発明の搬送カテーテルは、端部の突出部分が最小であるような形状のバルーンを組み込み得るので、このバルーンは、半径方向に拡張可能な脈管内移植片などの管腔内人工器官の全長にわたって一貫した外向きの圧力を奏し、管腔内人工器官を標的部位に直接近接して配置することが可能である。
【0018】
本発明の更なる目的および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を読んで理解すれば、当業者には明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の上記特徴および他の特徴は、図面を参照すればより明白となる。
【0020】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
ここで図面を参照するが、図は本発明の好ましい実施態様を例示することのみを目的としており、例示の実施態様に限定する目的ではない。図1aは、本発明の管腔内搬送システムのカテーテル組立体10を斜視図に示す。本発明によると、搬送システムは管腔内人工器官12の所望の解剖学的通路への配置を促進するために使用される。カテーテル組立体10が利用されることが好ましい人工器官12は、PCT特許出願第WO95/08966号、発明の名称「管腔内移植片」、オーストラリア仮明細書第PN-6513号、発明の名称「管腔内移植片の位置決めとそのためのガイドワイヤおよびカテーテル使用」、1995年11月10日出願に十分に開示されている。以下により詳細に論じられるように、本発明の管腔内搬送システムは、大動脈瘤に橋渡しをするために(すなわち、そこを通る管状通路を造るために)管状管腔内移植片12の使用に関して特定の実用性を見いだす。しかし、本発明は多くの他の医療用応用例に利用可能であるばかりか、多種の脈管および非脈管体内管腔(例えば、静脈、動脈、食道、胆嚢樹状構造体の脈管、胃腸器官系、尿管、尿道、卵管、他の内分泌脈管または外分泌脈管など)における多様な種類の管腔内装置の有効設置の促進のために使用され得ることを当業者は認識するであろう。
【0021】
ここで図2を参照すると、移植片12が最初に位置決めされるカテーテル組立体10に加えて、本発明の管腔内搬送システムは挿入器組立体14を更に含む。挿入器組立体14はカテーテル組立体10の前進を容易にするために使用され、より特定的には、その上に位置決めされた移植片12を所望の管腔内場所まで前進させるのを容易にするために使用される。大動脈瘤に橋渡しするまたは再疎通させるように腹部大動脈に管腔内移植片が移植される本発明の応用例においては、挿入器組立体14は大腿動脈内へのおよび左右腸骨動脈と腎動脈との間に位置する大動脈中の場所へのカテーテル組立体10の導入を容易にするように使用される。大動脈瘤の発生が最もよく見られるのはこの特定の大動脈中の場所においてである。挿入器組立体14自体は2個の主要構成部品、すなわち、鞘組立体(図1bに示される)および最初は鞘組立体16ないに存する伸張拡張器18(図1cに示される)を備える。カテーテル組立体10と挿入器組立体14の構造的属性は(鞘組立体16と拡張器18を含めて)、以下の段落に別々に詳細に記載される。本発明の管腔内搬送システムを含む多様な構成部品の詳細な記載の後には、大動脈瘤の治療に関連して上記のものを用いた好ましい態様に関する説明が続く。
A. 挿入器組立体
先に示されたように、カテーテル組立体10と、より特定的には、その上に位置決めされた移植片12との所望の管腔内の場所への有効な設置は、図2に示される挿入器組立体14の使用により容易にされる。また先に示されたように、挿入器組立体14自体は、鞘組立体16および拡張器18を含み、それらの厳密な構造が、図1bないし図5b、図8、および図8aを特に参照してここに記載される。
【0022】
1. 鞘組立体
本発明の挿入器組立体14は、テーバ状末梢端22および基端24を有する伸張管状鞘部材20を含む鞘組立体16を備える。図2bに断面図で示される弁ヘッド26は鞘部材20の基端24に連結されている。
【0023】
ここで図1b、図8、および図8aを参照すると、鞘組立体16の鞘部材20はポリプロピレンから製造されるのが好ましく、平滑な管腔内表面30により規定される長手方向に伸張する管腔28を含む。前述のように、鞘部材20の末梢端22は、環状のテーパ状表面23を有するように形成されるのが好ましい。更に、図8に最も良く見られるように、環状の放射線不透過マーカー32が鞘部材20内にテーパ状末梢端22に隣接して埋め込まれている。マーカー32の好ましい組成は、90%のプラチナと10%のイリジウムである。
【0024】
図8aを参照すると、鞘部材20内部へのマーカー32の埋め込みは、鞘部材20の末梢部から最初に材料を除去することにより促進され、これが、鞘部材20の残余部分の直径よりも実質的に小さい外径を有する末梢セクションを規定し、それにより、階段状環状ショルダー36により分離される。低減された直径の末梢セクション34の形成に続いて、環状マーカー32はそこを越えて滑動自在に前進し、ショルダー36と接合接触する。マーカー32は、その内側表面が末梢セクション34の外側表面上に直接的に載置されるような寸法にされ、マーカー32の外側表面は鞘部材20の残余部分の外側表面に関して半径方向内向きに配置される。上述の態様で末梢セクション34にわたるマーカー32の前進に続いて、鞘部材20の末梢部は好適な取り付け具に挿入され、RF加熱処理が施されるが、これにより、マーカー32から遠方に伸張する材料は溶融され、その外側表面を被覆しかつそれを包む態様でマーカー32にわたり基端方向に流される。この溶融材料の一部はまた、鞘部材20のテーパ状末梢端22へと形成される。溶融材料は、RH加熱処理の開始より前に、鞘部材20の管腔28に流入することがその間に位置決めされたマンドレルにより阻止されている。有利なことに、鞘部材20の末梢部が冷却されて取り付け具から除去されてしまうと、マーカー32は図8に示される態様で鞘部材20内に完全に埋め込まれる(すなわち、包まれる)。上述のRF加熱処理のため以外に、鞘部材20の内部にマーカー32を包む工程を促進するように代替方法が採用され得ることを、当業者は認識するだろう。
【0025】
先に示したように、鞘部材20の基端24はそれ自体が鞘組立体16の弁ヘッド26に連結される。好ましい実施態様において、鞘部材20の基部は、その上に配置される補強スリーブ38を含み、同部材がそこに連結された場合に、鞘部材20が弁ヘッド26に関して曲がるのを防止する。スリーブ38は、粘着取り付け技術か収縮取り付け技術の使用のいずれかにより、鞘部材20の基部の外側表面に固着されるのが典型的である。更に、スリーブ38は鞘部材20と同じ材料、すなわち、ポリプロピレンから製造されるのが好ましい。
【0026】
図2bおよび図2cをここで参照すると、鞘組立体16の弁ヘッド26は、開いた基端42および末梢端44を含む中空の管状ハウジング40を備える。末梢端44は低減した直径により規定され、ハウジング40の末梢部46で外側にねじ山が作られている。低減した直径をそれ自体が含み、基部50で外側にねじ山が作られた管状スリーブ48はハウジング40の基端42に部分挿入され装着される。ハウジング40の内部と流体的連通状態にある通路54を規定する管状サイドアーム52は、ハウジング40の外側表面上に形成され、そこから角度を持って伸張する。
【0027】
ここで図2b、図2c、図5a、および図5bを参照すると、第2の封鎖弁または横断スリット弁56がハウジング40の内部の中に配置され、スリーブ48の末梢端に対して接合させられる。横断スリット弁56は一般に円筒形状を有し、勾配付き内側表面60を規定する環状基部58を含む。基部58に加えて、横断スリット弁56は、窪んだ半球状近位表面64を規定する、全般に半球状の中央部62を含む。この点で、基部58の勾配付き内側表面は中央部62の半球状基部表面64に遷移する。開口66は中央部62の頂端を貫通して延在する。
【0028】
横断スリット弁56は、その中央部62から末梢方向に延びる環状末梢部68を更に含む。4個の補強リブ70が、末梢部68の内側表面と中央部62の隆起した半球状末梢表面との間で半径方向に延びる。補強リブ70は互いに均等距離に間隔を設けて、すなわち、およそ90度の間隔をおいて位置決めされるのが好ましい。図5aと図5bで最良に見て取れるように、中央部62を貫通して延びる開口66は、一般にプラーナ形状または平坦形状を有する中央部62の末梢表面の円形構成領域72により周囲を巡らされている。開口に加えて、互いに垂直関係で領域72を直径方向に横断して延在する1対のスリット74が横断スリット弁56の中央部62内部に配置される。この点で、スリット74は開口66の軸で互いを2分し、それゆえ、中央部62内に4個の同一寸法のフラップ部を形成する。スリット74は、そしてそれ故フラップ部は、中央部62の円形構成領域72の内部に閉じこめられる(すなわち、それを越えて延在しない)。図5に最良に見られるように、スリット74は対向する複数対のリブ70のうちのそれぞれの間では線形に延在しないのが好ましいが、むしろ、図示のように、およそ45度だけリブ70からオフセットされるのが好ましい。
【0029】
好ましい実施態様において、横断スリット弁56はポリイソプレンから製造されるが、類似のバイオコンパティブル弾性材料が代替材料として使用されてもよい。更に、開口66の好ましい直径はおよそ0.033インチであり、円形領域72の好まし直径はおよそ0.200インチである。開口66および末梢表面領域72の上記の特定な寸法決めの重要性が、以下でより詳細に論じられる。
【0030】
図2bおよび図2cでわかるように、横断スリット弁56は、基部58が弁ヘッド26のスリーブ48の末梢端に対して接合されるように、ハウジング40の内部の中に配置される。より特定すると、基部58の勾配付き内側表面60は、その末梢端を規定するスリーブ48の環状傾斜フランジ部76の相補形勾配付き外側表面に対して堅固に据え付けられる。この点において、基部58の外側表面とフランジ部76の外側表面の間の係合は、スリーブ48と横断スリット弁56との間の流体密封シールの形成を容易にする。
【0031】
好ましい実施態様において、横断スリット弁56の中央部62および末梢部68は、ハウジング40の中空内部への横断スリット弁56の設置より前に、管状スペーサ部材78に挿入される。図2bで最もよくわかるように、スペーサ部材78の内側表面は均一ではないが、むしろ、横断スリット弁56の中央部62および末梢部68の各外側表面の間に規定される連続する環状ショルダー80を収容するように、階段形状を有する。この点において、横断スリット弁56がスペーサ部材に十分に挿入される場合、基部58はスペーサ部材78の基端に対して接合され、その場合、横断スリット弁56の末梢端はスペーサ部材78の末梢端と実質的に同一平面上にある。そのように、横断スリット弁56が上述の態様でスリーブ48と封鎖係合状態に置かれる場合は、基部58の周辺端縁およびスペーサ部材78の外側表面はハウジング40の内側表面と直接接触状態にある。
【0032】
横断スリット弁56に加えて、円形形状の第1の封鎖弁または円盤状弁82がまた、弁ヘッド26のハウジング40の中空内部の中に配置される。図4aおよび図4bで最良にわかるように、円盤状弁82は円形形状の主要本体部84を含み、これは、開口86が内部に配置されかつその中央を貫通して延在する。継続リム部88は主要本体部1994野周辺部付近に形成されかつそこから延在するが、環状フランジ部90は主要本体部84の末梢表面から延び、その直径はリム部88の直径よりも小さい。リム部88自体は、主要本体部84の基部表面に関しておよそ45度の角度で傾斜する勾配を付けた内側表面91を規定する。
【0033】
横断スリット弁56と同様、円盤状弁82はまたまたはポリイソプレンから製造されるのが好ましく、その場合、開口86はおよそ0.075インチの好ましい直径を有し、フランジ部90はおよそ0.366インチの好ましい内径を有する。弁ヘッド26において、円盤状弁82はハウジング40の内部の中に位置決めされ、そのリム部88はスペーサ部材78の末梢端に堅固に係合しかつそれに対して封鎖され、その場合、主要本体部84の基部表面は横断スリット弁56の末梢端(すなわち、末梢部68およびリブ70)と直接接触する。円盤状弁82が上述の態様で配向された場合、その開口86は横断スリット弁56の開口66と同軸に整列される。
【0034】
鞘組立体16の弁ヘッド26は止血弁92を含み、これはまた、ハウジング40の中空内部の中に配置され、かつ、ダック・ビル型弁であることが好ましい。図3aおよび図3bで最良にわかるように、止血弁92は横断スリット弁54に類似して構成され、止血弁92の基端を規定する環状基部1994を含む。基部1994は、対向する対の同一形状のフラップ98を規定する、低減された直径の中央部96に遷移する。管状円筒型形状の末梢部100は中央部96から末梢方向に伸張し、その外径は中央部96の外径よりもわずかに小さい。対向する対の線形整列されたリブ102は一体的に接続され、フラップ98の外側表面と末梢部100の内側表面との間で直交して延在する。更に、リブ102に対して全般に直交関係で配向される長手のスリット104は、フラップ98の各末梢端の間に延在する。
【0035】
先に記載された横断スリット弁56および円盤状弁82におけるように、止血弁92はポリイソプレンから製造されることが好ましい。止血弁92はハウジング40の内部の中に位置決めされ、その基部1994が円盤状弁82の主要本体部84の末梢表面に対して堅固に据え付けられるようにする。基部1994により規定された止血弁92の基端が主要本体部84の末梢表面に対して接合される場合、円盤状弁82のフランジ部90の外側表面は、止血弁92の基部1994の内側表面の周囲でそれと接触して延在する。円盤状弁82のフランジ部90と止血弁92の基部94の間の係合は、それらの間に流体密封シールを作りだす。止血弁92が上述の態様で円盤状弁82に対して据え付けられる場合、止血弁92の基部94、中央部96、および末梢部100の各外側表面はハウジング40の内側表面と直接接触状態にある。この点において、図2bで最良にわかるように、ハウジング40の内側表面は均一ではなく、むしろ、止血弁92の基部94、中央部96、および末梢部100の間に規定される継続する階段状環状ショルダーに相補形でかつそれを収容する、階段形状を有する。
【0036】
好ましい実施態様においては、鞘組立体16の弁ヘッド26が図2bに示される態様で組み立てられる場合、スリット104は、横断スリットの開口66および86ならびに円盤状弁56および82の同軸整列された軸により2分される。更には、横断スリット弁56、円盤状弁82、および止血弁92はスリーブ48とサイドアーム52の間でハウジング40の内部の中に位置決めされ、その場合、横断スリット弁56はハウジング40の基端42に最も近接して配置され、止血弁92はハウジング40の末梢端44に最も近接して配置され、円盤状弁82は横断スリット弁56と止血弁92の間に配置される。図2bで更にわかるように、横断スリット弁56の基部58および止血弁92の基部94ならびに円盤状弁82の周辺部は、スリーブ48とハウジング40の内側表面内部に規定される1対の継続ショルダーとの間で圧縮され、かつ、堅固に捕獲され、従って、横断スリット弁56、円盤状弁82、および止血弁92がそれらの間で移動したりシフトするのを防止する。
【0037】
鞘組立体16において、鞘部材20の基端24はハウジング40の末梢部46に装着され、鞘部材20の管腔28がハウジング40の内部と連通するようにする。好ましい実施態様においては、鞘部材20は弁ヘッド26から、特にそのハウジング40から選択的に取り外し可能であり、こうして鞘部材が、異なる形状を有するかまたは異なる材料から製造される代替の鞘部材と置換され得るようにする。ハウジング40のサイドアーム52はそこに挿入されてハウジングの内部と流体連通状態になる管状流体ライン106の設置を促進するために、それゆえ、鞘部材20の管腔28の設置を促進するために使用され得る。鞘組立体16において、挿入器組立体14が使用されてカテーテル組立体10の所望の解剖学的場所への前進を促進する場合、弁ヘッド26内部に配置される弁56、82、92の各々は特定の機能を供与する。横断スリット弁56、円盤状弁82、および止血弁92の厳密な機能性は以下により詳細に記載される。
【0038】
2. 拡張器
鞘組立体16に加えて、本発明の挿入器組立体14は、図1cに示される長手の管状拡張器18を含む。拡張器18は、テーパ状末梢端108、基端110、およびそこを貫通して長手方向に(すなわち軸方向に)延び、管腔表面114により規定されるガイドワイヤ管腔112を含む。図2aで最良にわかるように、拡張器18は相互に突出した管状物から製造されるのが好ましく、これは管腔112が軸方向に貫通して延びる内側層116および統合外側層118を含む。外側層118は、90%の高密度ポリエチレン(例えば、DowWDPE 樹脂 08054N、Dow Chemical Co.製、Midland, MI)および10%の低密度ポリエチレン(例えば、Dow LDPE 樹脂722M、Dow Chemical Co.製、Midland, MI)の混合物から製造されるのが好ましい。内側層116は、エチレン・ビニル・アセテート・コポリマー(例えば、EVAコポリマー LD 306.58、Exxon Chemical Company, Polymers Group)から製造されるのが好ましい。内側層116および外側層118の両方が、バリウム・サルフェート成分(およそ10%)を含み、両層を放射線不透過性にする。拡張器18の好ましい直径(すなわち、外側層118)は、およそ0.233インチである。上述の特徴と類似する特徴を保有する材料が代替例として使用されて内側層116および外側層118を製造してもよいことを当業者は認識するだろう。
【0039】
図1cおよび図2aに示されるように、末梢端108を規定する拡張器18の末梢部はテーパ状形状を有する。拡張器18のテーパ状末梢部は、内側層116の末梢部から外側層118のセクションを最初に除去することにより形成されるのが好ましい。かかる除去は研削処理の利用により容易にされるのが典型的であり、外側層118のセクションはおよそ3.0インチの好ましい長さを有し、内側層116から除去された状態の末梢端118まで延びる。内側層116からの外側層118の除去に続いて、内側層116の露出した末梢部(長さがおよそ3.0インチである)は、好適な取り付け具に挿入され、同部材にテーパ状形状を呈するようにするRF加熱処理を受けさせる。
【0040】
図2aで更にわかるように、RF加熱処理の開始により、拡張器18のテーパ状末梢部を通って延びる管腔112の直径はその残余部分のおよそ2分の1まで低減される。このように、拡張器18の管腔表面114はその全長にわたって均一ではなく、むしろ、管腔112の低減した直径セクションへ遷移する勾配を付けたショルダー115を規定する。管腔112の低減したセクションの好ましい直径はおよそ0.037インチであり、管腔112の残余部分の好ましい直径はおよそ0.070インチである。管腔112の末梢部は、成形取り付け具への挿入の前に、拡張器18の末梢部へマンドレルを挿入することにより、RF加熱処理期間中に完全に崩壊することを阻止される。テーパ状形状を有する拡張器18の末梢部の形成を促進するために代替の方法が採用され得ることが認識されるだろう。内側層116の突出部からなる拡張器18の比較的柔軟なテーパ状末梢部は、そこに過度の損傷または孔を生じさせることなく、曲がりくねった血管または他の解剖学的構造を通って前進させられるのに十分に柔軟である。外側層118が配置された拡張器18の基部は、比較的柔軟な解剖学的構造(例えば、血管)をその形状に一致させるのに十分なだけ硬質である。この態様で、拡張器18が包囲する挿入器鞘部材内部に位置決めされ、大腿血管および腸骨血管のような血管を通して前進させられる場合、拡張器の比較的硬質の基部により、かかる血管はより線形のすなわち曲がりくねりの少ない形状を呈し、それにより、挿入器鞘部材のその意図する位置(例えば、腹部大動脈の)への所望の前進を促進する。
【0041】
3. 挿入器組立体の組立
ここで図2を参照すると、本発明の脈管内搬送システムの挿入器組立体14は鞘組立体16を通して拡張器18を前進させることにより組み立てられ、その結果、拡張器18のテーパ状末梢部は鞘部材20の末梢端22から突出する。この点について、鞘部材20のテーパ状末梢部が拡張器18のテーパ状末梢部まで円滑に遷移を行うように、拡張器18が配向されるのが好ましい。
【0042】
認識されるだろうが、上述の態様で鞘組立体16内部に位置決めされた場合、拡張器18は弁ヘッド26を通って延び、より特定すると、その内部に配置される横断スリット弁56、円盤状弁82、および止血弁92を通って延びる。横断スリット弁56を通して伸張された場合、拡張器18はハウジング40の内部の中で横断スリット弁56により末梢方向に規定されたフラップ部を変位する。変位後のフラップ部により規定される開口の最大幅はわずかおよそ0.200インチ(スリット74の長さ)であるけれども、横断スリット弁56を製造するために使用される材料の弾性により、より大きい直径の拡張器18(0.233インチ)が開口を通って前進させられる。同様に、円盤状弁82を製造するために使用される材料の弾性により、拡張器18はその開口86(0.075インチの直径を有する)を通って前進させられる。止血弁92の弾性により、そのフラップ98は、拡張器18がその間のスリット104を通って前進させられている時には、互いから離れる外方向に移動させられる。止血弁92のフラップ98と末梢部100の間に延在するリブ102は正常に閉鎖した位置までフラップ98を偏倚させるのを助けるが、より特定すると、スリット104を偏倚させるのを助けるが、リブ102は止血弁92のフラップ98を通る拡張器18の伸張により容易につぶされる。
【0043】
認識されるように、横断スリット弁56により規定される開口の最大幅を超える拡張器18の直径および円盤状弁82の開口86の直径のせいで、拡張器18が鞘組立体16の弁ヘッド26を通って伸張されている時には、横断スリット弁56と円盤状弁82の両方が拡張器18に対する流体密封シールを形成する。流体密封シールは止血弁92と拡張器18の間には造られず、というのも、フラップ98が拡張器18の回りを完全には閉じないからである。
【0044】
4. 挿入器組立体を用いた好ましい方法
本発明の脈管内搬送システムの挿入器組立体14は、それを本来の場所にあるガイドワイヤにわたりかつそれに沿って前進させることにより使用されるのが典型的である。挿入器組立体14が一緒に使用されるガイドワイヤの好ましい直径は、およそ0.037インチである。認識されるだろうが、ガイドワイヤは、挿入器組立体14がそこ全体を前進させられる時には、拡張器18の管腔112を通過する。
挿入器組立体14が、より特定すると、拡張器18の末梢端108が所望の管腔内位置についたならば、拡張器18はガイドワイヤに沿って基部方向に後退させられ、鞘組立体16内から完全に除去される。拡張器18が鞘組立体16内から引き出されてしまうと、ガイドワイヤだけがそこを通って延びる。ガイドワイヤの直径(すなわち、0.037インチ)は横断スリット弁56の開口66の直径(すなわち、0.033インチ)を超過するので、横断スリット弁56はガイドワイヤの回りに流体密封シールを形成する。そのように、鞘組立体16の鞘部材20にその開放末梢端22を介して入る血液は、弁ヘッド26を通って基端方向に流れて弁ヘッド26のスリーブ48の開放基端から出るのを阻止される。
【0045】
大動脈瘤の治療のための本発明の搬送システムの挿入器組立体14を用いた好ましい態様に関するより詳細な議論が以下に明示される。
B. カテーテル組立体
前述の挿入器組立体14はカテーテル組立体10(図1aに示される)の、より特定すると、その上に位置決めされた移植片12の所望の管腔内場所への有効設置を促進するために使用される。カテーテル組立体10の厳密な構造は、図1a、図6ないし図7、図9および図9aを特に参照しながら記載される。
【0046】
1. プッシャ本体
ここで図1a、図6、および図9を参照すると、本発明のカテーテル組立体10は長手の管状プッシャ本体120を備え、これは末梢端122、基端124、およびそこを通って長手方向(すなわち、軸方向)に延びる管腔126を含む。図6で最もよくわかるが、プッシャ本体120の末梢端122はそのわずかに拡張した、すなわち、末広がりの末梢セクション128により規定される。この点については、末梢セクション128の外径はプッシャ本体120の残余部分の外径をわずかに超過し、それと同時に、末梢セクション128を通って延びる管腔126のセグメントの直径は、そこから基端方向に延びる管腔126の残余部分の直径よりもわずかに大きい。プッシャ本体120は90%ポリプロピレンから製造されるのが好ましいけれども(例えば、HimontCorporation から入手可能で、およそ0.902 g/cm3 の密度(ASTMD 792)と、5,050 psi の収率での引っ張り強度(ASTMD 638) と、12%の収率での金糸伸び (ASTMD 638) と、240 psi x 10-3 の曲げ係数(1%割線)(ASTMD790b) と、ロックウエル硬さ(Rスケール)91 (ASTMD 785a) と、摂氏23度で 0.8 ft-lbs/in のノッチ付きアイゾット衝撃強さ(ASTMD 2.56a) とがJ.T. Baker & Co. から出ている薬学等級のバリウム・サルフェート製品番号 1040 と組み合わせたPro-Fax PM ポリプロピレン等級 6532 など)、類似の特徴を保有する他の材料もカテーテル組立体10において使用され得る。
【0047】
2. 2重管カテーテル
ここで図1a、図6、図6a、および図9を参照すると、本発明のカテーテル組立体10は、2重管構造を有するのが好ましい長手のカテーテル130を更に含む。この点については、カテーテル130は長手の外側管132を備え、これが末梢端134、基端136、およびそれらを通って長手方向(すなわち、軸方向)に延びる中空管腔138を規定する。図6aで最もよくわかるように、環状放射線不透過マーカー140は、外側管132の外側表面にその末梢端134に比較的緊密に近接して装着される。好ましい実施態様においては、外側管132はステンレス鋼ブレードデッド・ナイロンから製造される(例えば、105Sackett Point Road, North Haven, CT. 06473 に居所を置く New England Eurathane, Inc. から入手できるAutochem Besnonylon 11 樹脂として市場に出ているもので、960 Indianapolis Road, P.O. 9040, Ft.Wayne, Indiana 46899 に居所を置く Ft. Wayne Metals Research Products, Corp. から入手できる.001 x .005 ステンレス鋼ワイヤ番号 304v とブレードされたもの)。
【0048】
外側管132に加えて、カテーテル130は、外側管132よりも直径が小さく、かつ、その管腔138を通って延びる長手の内側管142を備える。内側管142は末梢端144、基端146、およびそれらを通って長手方向(すなわち、軸方向)に延びる中空管腔148を規定する。内側管142はステンレス鋼ブレーデッド・ナイロン管材から製造されるのが好ましく、これは、外側管132が形成される材料として先に記載されたものと同一であってもよい。内側管142は、以下により詳細に論じられる理由により、滑動自在に末梢方向に拡張可能で、かつ外側管132に関して基端方向に後退可能である。
【0049】
図6bで最もよくわかるが、管状スリーブ150は、内側管142にその末梢端144に比較的緊密的に近接して配置および装着される。円筒形状の止め部材152も内側管142上に配置されかつそこに装着されるが、その基端はスリーブ150の末梢端に対して接合される。マーカー140と同一形状にされる環状の放射線不透過マーカー154は、スリーブ150の外側表面にその各対向端部のほぼ中間で装着される。スリーブ150と止め部材152の両方は、内側管142と同じ材料から製造されるのが好ましい。
【0050】
3. カテーテル・バルーン
ここで図6ないし図6c、および図7を参照すると、カテーテル組立体10は長手の膨張可能なカテーテル・バルーン156を更に備える。図6aで最もよくわかるが、バルーン156は末梢端158を含み、これは、スリーブ150に装着され、かつ、止め部材152の基端と直接接触する。そのように、スリーブ150に装着されるマーカー154は、バルーン156の内部の中に存する。末梢端158に加えて、バルーン156は基端160を規定し、これはカテーテル130の外側管132にマーカー140に関してわずかに基端方向に位置する点で装着される。そのように、マーカー154と同様に、マーカー140はバルーン156の内部の中に存する。マーカー140および154はバルーン156の基端160と末梢端158に比較的緊密に近接して、それぞれ、配置される。バルーン156の基端160は外側管132に装着され、かつ、バルーン156の末梢端158はスリーブ150に、したがって内側管142に装着されるので、外側管132にかんする末梢方向への内側管142の伸張はバルーン156の長手方向の伸びを促進し、この利点は以下により詳細に論じられる。
【0051】
カテーテル組立体10において、カテーテル130の内側管142は最初、外側管132に関して第1の後退した位置に配向される。内側管142は、図6、図6a、および図6bでは、その後退位置にあるのが描かれている。バルーン156は、内側管142がその後退配向にある場合のみ、膨張する。
【0052】
ここで図6bおよび図7を参照すると、カテーテル組立体10のバルーン156は、十分に膨張すると、全般に均一な円筒形状を有する。より特定すると、バルーン156は、膨張すると、全般に円形の断面形状を有する長手の主要本体部162を規定する。主要本体部162と末梢端158および基端160の間の遷移は、長手の徐々に傾斜する表面により規定されるのではなく、むしろ、図7で最も良くわかるように、その主要本体部162を規定するバルーン156の側壁に関して角度Aで傾斜する対向する1対の端部壁164により規定されるのが有利である。角度Aは10度を超えず、5度を超えないのが最も好ましい。
【0053】
バルーン156が十分に膨張すると、その端部壁164は図7に示される用に全体的に平坦な形状か、曲線形形状のいずれかを呈する。各端部壁164が平坦な場合は、そこから延びて(図7に示されるように)角度Aを同定するためのリーダー線が伸びて、端部壁164と同一平面の関係を有する。端部壁164が平坦と言うよりむしろ曲線形である場合は、リーダー線は端部壁164に関して正接線または翼形中心線として延びる。角度Aを同定するための他のリーダー線は、カテーテル130の長手方向軸に直交関係で延びる。
【0054】
好ましい実施態様においては、バルーン156の最大直径は、特にその主要本体部のものは、バルーンが十分に膨張した時には、21ミリメートルないし25ミリメートルの範囲にあり、約23ミリメートルであるのが好ましい。これに加えて、バルーン156の主要本体部162の長さは、60ミリメートルないし92ミリメートルの範囲にあるのが好ましい。バルーン156はまた、およそ0.001インチの壁厚を有するポリエステルから製造され、およそ2ATM の膨張圧に耐えるようにするのが好ましい。
【0055】
カテーテル組立体10の使用期間中は、バルーン156の収縮に続いて、内側管142はその第1の後退位置(図6bに示される)から第2の伸張位置(図6cに示される)まで移動させられる。内側管142がその後退位置からその伸張位置まで移動する場合、外側管132に関する内側管142の末梢方向への前進は、バルーン156の長手方向の伸びを促進する。正当に評価されるだろうが、減圧されると、バルーン156は、図6および図6aに示されるような、その初期の非膨張配向に戻らない。むしろ、減圧状態のバルーン156の主要本体部162の直径は、それが加圧された場合と著しく違わない。従って、バルーン156の崩壊とその主要本体部162の直径の実質的低減を促進するためには、バルーン156は内側管142を図6cに示される伸張位置まで前進させることにより、長手方向に伸ばされる。上述の態様のバルーン156の崩壊に付随する利点は、同様に、以下により詳細に論じられる。
【0056】
4. 管腔内移植片
ここで図1aおよび図6を参照すると、先に示されたように、本発明の脈管内搬送システムのカテーテル組立体10は、最初にその上に位置決めされる管腔内移植片12を含む。より特定すると、移植片12は最初に、カテーテル組立体10のバルーン156上に配置される。図6で最良にわかるように、移植片12の全長は収縮したバルーン156の全長よりも実質的に小さく、この場合、バルーン156の末梢端158および基端160は移植片12の対向端部のそれぞれのものから実質的に突出する。移植片12は、以下に記述される理由により、バルーン156の末梢端158と基端160の間で中心に位置決めされるのが好ましい。
【0057】
カテーテル組立体10の移植片12は、図6では、その最初の崩壊位置に示されている。崩壊した時には、崩壊移植片12の全長は止め部材152の直径と概ね均等な状態で、移植片12はバルーン156の周囲にきつく圧縮される。図6で更にわかるように、移植片12がその最初の崩壊配向にあって、バルーン156の周囲できつく圧縮された場合は、バルーン156の基端160と移植片12の基端の両方がプッシャ本体120のフレア状末梢セクション128内に受容される。以下により詳細に論じられるが、移植片12のプッシャ本体120内への部分的受容は、カテーテル組立体10が挿入器組立体14を通って滑動自在に前進するにつれて、バルーン156の末梢端158と基端160の中間で、移植片12をその所望の配向に維持する。
【0058】
以下にまたより詳細に論じられるように、移植片12が所望の管腔内場所の位置につくと、カテーテル組立体10のプッシャ本体120はカテーテル130に関して基端方向に後退させられ、従って、移植片12の基端およびバルーン156の基端160をプッシャ本体120の末梢セクション120内部から除去する。プッシャ本体120が移植片12およびバルーン156から引き出されてしまうと、図6bおよび図7に示される態様のバルーン156の次の膨張は、移植片12の第2の拡張配向への同時の半径方向拡張を促進する。移植片12が十分に半径方向に拡張してしまった後は、バルーン156は減圧され、次に、カテーテル130の基端方向への移動により移植片12内部から引き出される。しかしながら、拡張した移植片12内部からバルーン156を引き出す前に、バルーン156は前述の態様で伸ばされ、バルーン156がそこから引き出されている間は、それが意に反して移植片12に引っかかったり、移植片に干渉したりするのを阻止する。バルーン156の伸びによって、どのようにしてそれが移植片12へ意に反して干渉するのを阻止するかをについてのより詳細な議論が、同様に、以下に明示される。
【0059】
5. 装填器
ここで図1a、図6、および図10cを参照すると、本発明のカテーテル組立体10は、本発明の脈管内搬送システムの使用期間中はカテーテル組立体10の挿入器組立体14への有効接続を促進するように使用される剛性の装填器166を更に備える。装填器166は、図1aに示される態様でプッシャ本体120の長さに沿って滑動自在に位置決めされる長手の管168を備える。管168は基端と、その低減された直径の末梢セクション170により規定される末梢端とを含む。内部にねじ筋が津食らえたコネクタ・ナット172は、末梢セクション170に比較的緊密に近接して管168に装着される。装填器166、特に、その末梢セクション170は、鞘部材20およびプッシャ本体120を製造するために使用される材料よりも一層剛性の材料から製造されるのが好ましい。
【0060】
カテーテル組立体10において、装填器166は、その周囲に圧縮されたバルーン156と崩壊後の移植片12の両方が管168の管腔内に受容されるように、最初に配向される。そのようにして、装填器166がその所望の最初の位置にある場合は、カテーテル130の内側管142のみがその末梢端から突出する。以下により詳細に論じられるように、装填器166の末梢セクション170の鞘組立体内部からの除去に続いて、装填器166の末梢セクション170を鞘組立体16の弁ヘッド26に最初に挿入することにより、カテーテル組立体10は挿入器組立体14の鞘組立体16に協同して係合される。より特定すると、装填器166の末梢セクション170は弁ヘッド26のスリーブ48内へと伸張され、その場合、コネクタ・ナット172はスリーブ48の外側にねじを切られた基部50にねじ嵌合する。上述の態様で装填器166を弁ヘッド26に接続することに続いて、プッシャ本体120およびカテーテル130はそこを通って末梢方向に前進させられる。
【0061】
管168の末梢セクション170は、装填器166がコネクタ・ナット172を介して弁ヘッド26に装着された時には、末梢セクション170がスリーブ48の穿孔内に存在し、横断スリット弁56を通って伸張しないような寸法にされる。そのようにして、装填器166のどの部分も弁ヘッド26の弁56、82、および92のいずれかを通って延在することはない。しかしながら、装填器166の弁ヘッドへの接続に続いてカテーテル組立体10のプッシャ本体120が弁ヘッド26を通って末梢方向に前進させられた場合、円盤状弁82は、その開口86を通ってプッシャ本体が伸張させられた場合は、プッシャ本体120の周囲に流体密封シールを作り出す。この点において、プッシャ本体120の直径は開口86の直径(すなわち、0.075インチ)を超過するけれども、ディスク弁82を製造するために使用される材料の弾性によりプッシャ本体120を開口86を通って前進させ得るようにし、この場合、円盤状弁82はプッシャ本体120の外側表面の周囲を封鎖しない。以下でより詳細に論じられるように、弁ヘッド26を通って伸張された後は、崩壊した移植片12とプッシャ本体120のフレア状末梢セクション128が鞘部材20の末梢端22から突出するまで、プッシャ本体120は鞘部材20の管腔26を通って末梢方向に前進させられる。
【0062】
カテーテル組立体10における装填器166の包含により提供される追加的利点は、使用するにあたる精度を確保し、かつ、カテーテル組立体10を利用する手順の実施期間中の時間を節約させる挿入器組立体14に関連して、崩壊した移植片12が正確に事前位置決めされ得るようにすることである。それに加えて、カテーテル組立体10における装填器166の包含により、カテーテル組立体10は前述の挿入器組立体14とは別個に販売または梱包されることが可能となる。装填器166および弁ヘッド26の対応する受容部は、挿入器鞘部材20およびプッシャ本体120よりも剛性度の大きい材料から形成されるのが好ましく、それにより、装填器166は弁ヘッド26の界面部内でそれを撓めたり偏らせたりすること無しに正確に載置され、従って、装填器166および弁ヘッド26の互いに関する適切な位置決めおよび整合を確実にする。更に、装填器166のポジティブに係合する(例えば、挿入器組立体の弁ヘッド26に対するナット172のねじ止め可能な係合によりロックする)能力はまた、挿入器組立体14に関する装填器166の適切な整合および位置決めを促進および維持する。
【0063】
6. 基部コネクタ組立体
ここで図1a、図9、および図9aを参照すると、本発明のカテーテル組立体10は、図9で最も明瞭に描かれる基部コネクタ組立体174を更に含む。好ましい実施態様において、基部コネクタ組立体174は末梢プッシャ・コネクタ176を含む。プッシャ・コネクタ176は、Y字型コネクタであるのが好ましく、管腔が貫通して長手方向に延在する管状本体178を含む。1対のコネクタ・ナット180は、本体178の対向する基端および末梢端のそれぞれのものの上に配置される。それに加えて、本体178の管腔と連通する管状サイドアーム182は、本体178に一体的に接続され、そこから角度をなして延びる。
【0064】
図9で最もよくわかるように、カテーテル組立体10においては、プッシャ本体120の基端124は本体178の末梢端に、その上に配置されるコネクタ・ナット180を介して接続される。プッシャ本体120がプッシャ・コネクタ176に連結される場合、プッシャ本体120の管腔126は本体178の管腔と流体的に連通する。カテーテル130(外側管132および内側管142を含む)は、プッシャ・コネクタ176を通って伸び、本体178の基端上に配置されるコネクタ・ナット180から突出する。
【0065】
プッシャ・コネクタ176に加えて、基部コネクタ組立体174は中央バルーン・コネクタ184を備える。バルーン・コネクタ184は、基部セクション188と、基部セクション188に堅固に装着される末梢セクション190を有する主要本体186を備える。第1の穿孔192は基部セクション188を通って長手方向に伸びるが、第1の穿孔192と連通する台2の穿孔194は末梢セクション190を通って長手方向に延びる。基部セクション188の第1の穿孔192は、以下により詳細に論じられる理由のため、全般に四角形の断面形状を有する。末梢コネクタ・ナット196は末梢セクション190の末梢端上に配置されるが、基部コネクタ・ナット198は基部セクション188の基端上に配置される。バルーン・コネクタ184は、末梢セクション190の第2穿孔194と流体的に連通する管状サイドアーム200(図1aおよび図9に仮想線で示される)を更に含みことがある。継続フランジ202は末梢セクション190の外側表面の周囲に形成され、そこから半径方向外向きに延びるが、末梢コネクタ・ナットは、末梢セクション190の外側にねじが切られた末梢端上に十分に受容された時に、継続フランジ202に対して接合される。
【0066】
カテーテル組立体10においては、カテーテル130の外側嵌132は第2の穿孔194の末梢端に受容され、第2の穿孔194を規定する末梢セクション190の内側表面に堅固に装着される。図9でわかるように、外側管132は、主要本体186の末梢セクション190から半径方向外向きに延びるフランジ202付近まで延在する。カテーテル130の内側管142はバルーン・カテーテル184の主要本体186の残余部分を通って、特に、基部セクション188の第1の穿孔192および末梢セクション190の第2の穿孔194を通って、長手方向に伸びる。
【0067】
図9および図9aをここで参照すると、ポリカーボネートから製造されるのが好ましく、かつ、末梢端206および基端208を含む長手の管状鞘部材204は、カテーテル130の内側管142の基部の上に配置され、かつ、そこに堅固に装着される。鞘部材204の内側管142への装着は、粘着処理または熱接着処理の使用により促進されるのが好ましいが、代替の装着方法も採用され得る。鞘部材204は、その基端208が内側管142の基端146と実質的に同一平面になる態様で、内側管142上に位置決めされる。全般に角柱状の抗回転部材210は、鞘部材204の外側表面に、その末梢端206に比較的緊密に近接して位置決めされかつ堅固に装着される。抗回転部材は、粘着処理または熱接着処理により鞘部材204に装着されるのが好ましい。
【0068】
図9で更にわかるように、鞘部材204の末梢部とその上に配置された抗回転部材210の両方が、バルーン・コネクタ184の基部セクション188の第1の穿孔内部に通常は存する。抗回転部材210および第1の穿孔の相補形の四角い断面形状は、鞘部材204が、従って、カテーテル130の内側管147がバルーン・カテーテル184に関連して回転させられるのを阻止する。基部セクション188の第1の穿孔192内部で回転するのを阻止するけれども、抗回転部材210は、バルーン・カテーテル184に関して第1の穿孔192内部で末梢方向と基部方向の両方に滑動自在に移動できる。鞘部材204の残余部分(すなわち、その長さのおよそ3分の2)はバルーン・コネクタ184から基端方向に突出し、より特定すると、主要本体186の基部セクション188の基端上に配置される基部コネクタ・ナット198から基端方向に突出する。
【0069】
プッシャ176およびバルーン・コネクタ184に加えて、カテーテル組立体10の基部コネクタ組立体174は基部コントラスト・コネクタ212を含む。コントラスト・コネクタ212は、低減した直径末梢部218へ遷移する基部216を有する中空の管状本体214を含む。キャップ部材220は基部216の基端上に配置される。コントラスト・コネクタ212は、本体214の基部216から角度を成して伸び、その中空内部と流体的に連通する。かかるサイドアーム222の代替例として、基部コネクタ組立体の基端上にルーア(Luer)取り付け具またはコネクタがその中空内部と連通して、X線写真コントラスト媒体の注入を目的として設けられ得る。
【0070】
図9で更にわかるように、内側管142を包囲する鞘部材204の基部は、本体214の末梢部218内に受容され、その内側表面に堅固に装着される。この点について、鞘部材204の基端208は、基部216が末梢部218内に遷移する本体214の円錐台領域で終端する。コントラスト・コネクタ212への鞘部材204の装着は、コントラスト・コネクタ212への内側管142の堅固な装着も促進するが、これはコントラスト・コネクタが鞘部材204に固着されているおかげである。認識できるように、鞘部材204の基部がコントラスト・コネクタ212に堅固に装着されているせいで、鞘部材204は、主要本体186の相補形の第1の穿孔192への鞘部材204の末梢部上の抗回転部材210の受容により、バルーン・コネクタ184に関して回転するのを阻止される。
【0071】
スペーサ・クリップ224は、バルーン・コネクタ184の基部コネクタ・ナット198とコントラスト・コネクタ212の末梢部218の間に延在する鞘部材204の部分に装着される。スペーサ・クリップ224は、鞘部材204に解放自在に係合する全体に半円状本体部226を含む。1対のイヤー部228は、本体部226の一方端に形成され、かつ、そこから外方向に延びる。それに加えて、長手の係留部材230は、バルーン・コネクタ184の本体部226と基部セクション188の間に装着され、その間に延在する。図9の仮想線でわかるように、スペーサ・クリップ224は鞘部材204の露出部上に通常は位置決めされ、イヤー部228が本体214の末梢部218の末梢端に対して接合した状態で、本体部226の対向する末梢端がバルーン・コネクタ184の基部コネクタ・ナット198に対して接合されるようにする。鞘部材204に装着された場合、スペーサ・クリップ224は、以下により詳細に論じられる理由で、バルーン・コネクタ184に関してコントラスト・コネクタ212の長手方向の移動を阻止する。スペーサ・クリップ224は鞘部材204から解放可能であるが、これは、それのイアー部分を鞘部材から引っ張ることにより行われる。鞘部材204との係合が解除されると、取り外されたスペーサ・クリップ224は、カテーテル組立体10へのそこから延びる係留部材230を介する接続状態に維持される。
【0072】
先に説明されたように、バルーン156の基端160と移植片12の基端の両方がプッシャ本体120のフレア状末梢セクション128内に受容された状態で、移植片12のプッシャ本体120内への受容は、カテーテル組立体10が挿入器組立体14を通って滑動自在に前進させられるにつれて、バルーン156の末梢端158と基端160の中間で、移植片12をその所望の配向に維持する。この点について、カテーテル130に関するカテーテル組立体10のプッシャ本体120の基部方向への後退は、プッシャ本体120のフレア状末梢セクション128内部からの移植片12の基端およびバルーン156の基端160の除去を促進する。
【0073】
カテーテル組立体10において、カテーテル130に関するプッシャ本体120の基部方向への移動または後退は、基部コネクタ組立体174のプッシャ176およびバルーン・コネクタ184をきつく掌握し、続いてプッシャ・コネクタ176をバルーン・コネクタ184に向けて基端方向に引っ張ることにより、促進される。この点について、プッシャ本体120はプッシャ・コネクタ176に装着され、かつ、カテーテル130の外側管132はバルーン・コネクタ184に装着されるので、バルーン・コネクタ184に向けてプッシャ・コネクタ176を引っ張ることにより、カテーテル130(特に、その外側管132)に沿ってプッシャ・コネクタ176の基部方向への前進が容易になり、それにより、結果的には、カテーテル130に関するプッシャ本体120の同時の基部方向への後退を引き起こす。先に示されたように、カテーテル130に沿ったプッシャ本体120の基部方向への移動は、プッシャ本体120のフレア状末梢セクション128内部からの、移植片12の基端およびバルーン156の基端160の除去を促進する。
【0074】
上述のように、減圧された後で、カテーテル130の内側管142の末梢方向へのその外側管132に関連する前進により、バルーン156は長手方向に伸ばされるのが好ましい。より特定すると、内側管142は、その第1の後退位置(図6bに示される)からその第2の伸張位置(図6cに示される)まで移動させられる。バルーン156を伸張させるための、内側管142のその後退位置からその伸張位置までの移動は、基部コネクタ組立体174のバルーン184とコントラスト・コネクタ212をきつく掌握し、それに続いてコントラスト・コネクタ212をバルーン・コネクタ184に向けて末梢方向に押すことにより、促進される。この点について、外側管132はバルーン・コネクタ184に堅固に装着され、内側管142は鞘部材204を介してコントラスト・コネクタ212に堅固に固着されるので、バルーン・コネクタ184へのコントラスト・コネクタ212の移動の結果として、外側管132内部での末梢方向への内側管142の滑動的前進が引き起こされる。その結果、上述の態様での鞘部材20の露出部へのスペーサ・クリップ224の装着は、コントラスト・コネクタ212がバルーン・コネクタ184に向けて末梢方向に移動させられるのを阻止する。このように、スペーサ・クリップ224が鞘部材204上でその有効位置にある間は、内側管142がその第1の後退位置からその第2の伸張位置まで移動するのを阻止されていることから、バルーン156は長手方向に伸ばされ得ない。スペーサ・クリップ224が鞘部材204から取り外されると、バルーン184とコントラスト・コネクタ212はもはや互いに間隔を設けた関係に維持されず、結果として、コントラスト・コネクタ212はバルーン・コネクタ184に向けて末梢方向に押すことが可能となり、それにより、内側管142のその伸張位置への末梢方向への前進と、減圧されたバルーン156の結果として生じる伸びとを促進する。
C. 本発明の脈管内搬送システム使用の好ましい方法
本発明の脈管内搬送システムを含む多様な構成要素をこうして記載してきたが、ここで、大動脈瘤の治療に関連づけてこれを利用する具体的な方法が、図10aないし図10hを特に参照しながら、記載される。
【0075】
ここで図10aを参照すると、本発明の脈管内搬送システムは、大動脈瘤236を含む大腿大動脈に、さらに、大動脈234における或る場所にガイドワイヤ232を最初に前進させることにより使用される。先に示したように、大動脈瘤は左右腸骨動脈と腎動脈との間に位置するのが普通である。ガイドワイヤ232の大腿動脈への導入は従来技術の態様で促進され、その場合、ガイドワイヤ232はおよそ0.037インチの好ましい直径を有する。ガイドワイヤ232は、大動脈瘤236を含む大動脈234の領域を通って十分に伸張させられる。
【0076】
図10aで更にわかるように、大動脈瘤236を通るガイドワイヤ232の伸張に続いて、本発明の脈管内搬送システムの挿入器組立体14はガイドワイヤ232にわたり前進させられる。この点について、ガイドワイヤ232の露出した基端は拡張器18の末梢端108に、より特定すると、その管腔112に挿入される。挿入器組立体14において、拡張器18の基端110は鞘組立体16の弁ヘッド26から基端方向に突出し、この場合、挿入器組立体14のガイドワイヤ232に沿った前進は、拡張器18の基端110からガイドワイヤ232を突出させる結果となる。有利なことに、拡張器18の末梢部のテーパ形状は、大動脈瘤236の場所への挿入器組立体14の管腔内前進を支援する。
【0077】
ここで図10aおよび図10bを参照すると、挿入器組立体14は、鞘部材20の末梢端22が大動脈瘤236に隣接して(その内部にではなく)位置決めされる点まで大動脈234へと前進させられる。横断スリット弁56および円盤状弁82と拡張器18との間に造られる上述の流体密封シールのせいで、拡張器18が鞘組立体16の弁ヘッド26を通って伸張された時は、拡張器18と鞘部材20の末梢端22との間で挿入器組立体14へ浸潤する血液は、弁ヘッド26から流出するのを阻止される。認識されるだろうが、鞘部材20の末梢端22が大動脈234内部の上述の位置についた時は、挿入器組立体14の弁ヘッド26は外側に配置されたままである。有利なことに、鞘部材20内部でその末梢端22に隣接して埋設型放射線不透過マーカー32を包含することにより、末梢端22を大動脈瘤236に関して正確に位置決めするのが可能となる。
【0078】
鞘部材20の末梢端22が大動脈瘤236に隣接して位置決めされてしまうと、拡張器18は挿入器組立体14内部から基端方向に引き出され、この場合、鞘組立体16の鞘部材20とガイドワイヤ232のみが本来の場所に留まる。認識されるように、拡張器18は、拡張器18が鞘組立体16内部から引き出されるにつれて、ガイドワイヤ232に沿って基端方向に前進させられる。拡張器18が鞘組立体16内部から完全に除去されると、ガイドワイヤ232だけがそこを通って長手方向に延びる。鞘部材20の末梢端22に入り、かつ、その管腔28を通りガイドワイヤ232に沿って流れる血液は、横断スリット弁56とガイドワイヤ232の間に造られる上述の流体密封シールにより弁ヘッド26から漏れるのを阻止される。この点においては、先に示したように、ガイドワイヤ232の好ましい直径はおよそ0.037インチであるが、横断スリット弁56の開口66の好ましい直径はおよそ0.033インチであり、従って、ガイドワイヤ232の周囲の流体密封シールの形成を促進する。
【0079】
ここで図10cを参照すると、鞘組立体16内部から拡張器18を引き出した後、カテーテル組立体10は鞘組立体16に、特に、その弁ヘッド26に装填器166を介して有効に接続される。かかる協同係合は、ガイドワイヤ232の露出した基端をカテーテル130の内側管142の末梢端144に、より特定すると、その管腔148に最初に挿入することにより促進される。その後、装填器166の末梢セクション170は弁ヘッド26のスリーブ48に挿入され、コネクタ・ナット172はスリーブ48の外側にねじが切られた基部50にねじ止め係合される。スリーブ48の基部50へのコネクタ・ナット172の係合は、弁ヘッド26への装填器166の堅固な装着を促進する。内側にねじを切ったコネクタ・ナット172の使用(例えば、バイオネット接続の採用)以外に弁ヘッド26の装填器166への堅固な装着を促進するために、代替の方法が採用され得ることが、本明細書中で意図されている。
【0080】
先に説明されたように、カテーテル組立体10が上述の態様で鞘組立体16に最初に接続された場合、その周囲で崩壊したバルーン156と移植片12の両方が装填器166の管168内部に存する。この点について、カテーテル130の内側管142の比較的小さなセグメントだけが管168の末梢セクション170から末梢方向に突出する。装填器166がコネクタ・ナット172を介して弁ヘッド26に装着された場合、管168の末梢セクション170はスリーブ48の穿孔内部に存在し、横断スリット弁56を通って延在しない。
【0081】
ここで図10dおよび図10eを参照すると、上述の態様での装填器166の弁ヘッド26への接続に続いて、カテーテル組立体10はガイドワイヤ232に沿って弁ヘッド26および鞘部材20の管腔28を通って滑動的に前進させられる。より特定すると、カテーテル組立体10のプッシャ本体120およびカテーテル130は、鞘組立体16を通って、特に、弁ヘッド26およびその鞘部材20を通って末梢方向に前進させられる。鞘組立体16を通るカテーテル組立体10の末梢方向への前進は、プッシャ本体120のフレア状末梢セクション128が鞘部材20の末梢端22から突出するような時まで、継続される。
【0082】
先に説明されたように、カテーテル組立体10が鞘組立体16を通って最初に前進させられる時は、バルーン156の基端160および移植片12の基端の両方がプッシャ本体120のフレア状末梢セクション128内部に存在し、末梢セクション128の内側表面とカテーテル130の外側管132の外側表面との間で圧縮される。装填器166の鞘組立体への接続に続いて、プッシャ本体120が鞘組立体16を通して末梢方向に前進させられた時は、円盤状弁82は上述の態様でプッシャ本体120の周囲で流体密封シールを造る。従って、鞘部材の末梢端22とプッシャ本体120の外側表面の間で鞘部材20へ浸潤する血液は、鞘組立体16の弁ヘッド26から漏れるのを阻止される。
【0083】
図10eで更にわかるように、プッシャ本体120は、バルーン156の周囲で崩壊した移植片12が大動脈瘤236内部に中心で位置決めされるように、鞘部材20から末梢方向に前進させられる。移植片12は、その基端および末梢端が大動脈瘤236の対向境界部を越えて大動脈234の影響を受けない領域に突出する。移植片12がバルーン156上で中央に位置決めされるので、バルーン156の末梢端158および基端160(移植片12の両端のそれぞれから突出する)のそれぞれに隣接して配置される放射線不透過マーカー140および154は、大動脈瘤236に関して移植片12の厳密な位置決めを支援する。
【0084】
移植片12が大動脈瘤236に関して適切に位置決めされてしまうと、プッシャ本体120のフレア状末梢セクション128は、移植片12の基端およびバルーン156の基端160の周囲から基端方向に後退させられる。先に説明されたように、カテーテル130に関するプッシャ本体120のかかる基端方向への後退は、基部コネクタ組立体174のプッシャ176およびバルーン・コネクタ184をきつく掌握し、かつ、それに続いてバルーン・コネクタ184に向けて基端方向にプッシャ・コネクタ176を引っ張ることにより促進される。この点において、バルーン・コネクタ184方向へプッシャ・コネクタ176を引っ張ることにより、カテーテル130(特に、その外側管132)に沿ったプッシャ・コネクタ176の基端方向への移動が促進され、それにより、カテーテル130に関するプッシャ本体120の同時の基端方向後退を生じる結果となる。かかる基端方向への移動は、プッシャ本体120のフレア状末梢セクション128内部からの移植片12の基端およびバルーン156の基端160の除去を促進する。移植片12の基端とバルーン156の基端150の周囲からのプッシャ本体120の後退が自動イベントとして起こる態様で、カテーテル組立体10が構成され得る(例えば、同部材がバルーン156の膨張に機能的に連結される)ことが、本明細書中では意図されている。
【0085】
ここで図10fを参照すると、プッシャ本体120がカテーテル130に関して、より特定すると、バルーン156とその上に位置決めされた移植片12に関して基端方向に後退されられた後、バルーン156はバルーン・コネクタ184を介して、かつ、管腔138を通して膨張させられる。図10fでわかるように、バルーン156の膨張/加圧は、移植片12がその初期の崩壊配向からその第2の拡張配向まで同時に半径方向に拡張するのを促進する。移植片12が十分に膨張すると、その両端は大動脈234の影響を受けない領域の管腔表面に係合し、この状態で、移植片12は大動脈瘤236に効果的に「橋渡しをする」。バルーン156が十分に膨張した場合の形状のせいで、移植片12のその第2の拡張配向までの半径方向への拡大は均一である。この点について、バルーン156による移植片12の両端に付与される拡張力は、その残余部分に付与される拡張値からと均等である。移植片12への拡張力の均一な付与は、その両端が大動脈234の管腔表面にきつく係合するのを促進する。
【0086】
ここで図10gを参照すると、移植片12が上述の態様で半径方向に拡張された後で、バルーン156は減圧される。しかし、先に説明されたように、バルーン156が減圧された場合、バルーン材の剛性のために、図6および図6aに示されるようなその最初の非膨張配向に戻り得ない。むしろ、減圧されたバルーン156の主要本体部162の直径は、バルーン156が十分に膨張した時と実質的に同じままであればよく、またそうでなければ、搬送カテーテルの後の後退および除去を完了できる態様で突出し続ければよい。
【0087】
ここで図10gおよび図10hを参照すると、バルーン156の内部からの引き出し期間中に、減圧バルーン156が半径方向に拡張した移植片12に意に反して引っかかりまたはそれに干渉するのを阻止するために、バルーン156は、移植片12内部からカテーテル130を引き出す前に、前述の態様で長手方向に伸ばされる。先に説明されたように、減圧バルーン156のかかる伸張は、カテーテル130の内側管142をその外側管132に関して末梢方向に前進させることにより、達成される。内側管142のかかる移動は、基部コネクタ組立体174のバルーン184およびコントラスト・コネクタ212をきつく掌握し、続いて、バルーン・コネクタ184に向けて末梢方向にコントラスト・コネクタ212を押すことにより、促進される。先に説明されたように、スペーサ・クリップ224は基部コネクタ組立体174の鞘部材204の露出部から除去されて、コントラスト・コネクタ212がバルーン・コネクタ184に向けて押されるのを許容するようにしなければならない。バルーン156を操ってトート形状にするのを促進するために代替の方法が採用され得る(例えば、長手方向にバルーン156を伸ばすよりはむしろ、バルーン156をねじる)ことが意図されている。
【0088】
長手方向に伸ばされると、バルーン156は図10hに示される態様で実質的に崩壊する。バルーン156が崩壊すると、カテーテル組立体10はガイドワイヤ232に沿って移植片12内部から基端方向に引き出される。この点について、カテーテル組立体10、より特定すると、プッシャ本体120、カテーテル130、および収縮されたバルーン156は、鞘組立体16の鞘部材20の管腔28へ後退させられる。その結果、叙述の態様でのバルーン156の伸びは、カテーテル組立体10のそれに関する基端方向への後退期間中に、バルーン156が移植片12に干渉するのを阻止する。
【0089】
カテーテル組立体10が鞘部材20内に基端方向に後退してしまうと、鞘組立体16およびカテーテル組立体10は患者体内から引き出され、ガイドワイヤ232のみがその内部に留まる。本発明の脈管内搬送システムを用いた好ましい方法の第1のステップは、患者体内からガイドワイヤ232を除去する工程を含む。
【0090】
先に説明されたように、本発明の管腔内搬送システムの使用期間中は、弁ヘッド26の横断スリット56および円盤状弁82は拡張器18に対して、それが鞘組立体16を通って延びた時に、流体密封シールを作り、それにより、拡張器18と鞘部材20の末梢端22の間で挿入器組立体14内に浸潤する血液が弁ヘッド26から流出するのを阻止する。拡張器18が鞘組立体から完全に除去されてしまうと、ガイドワイヤ232だけが鞘組立体16を通って長手方向に延びるので、鞘部材20の末梢端22に入り、かつ、その管腔28を通りガイドワイヤ232に沿って流れる血液は、横断スリット弁56とガイドワイヤ232の間に造られた流体密封シールにより弁ヘッド26からもるのを阻止される。プッシャ本体120が、鞘組立体への装填器166の接続に続いて、鞘組立体166を通って末梢方向に前進させられると、円盤状弁82はプッシャ本体120の周囲で流体密封シールを作り、従って、鞘部材の末梢端22とプッシャ本体120の外側表面の間で鞘部材20内へ浸潤する血液が鞘組立体16の弁ヘッド26から漏れるのを阻止する。鞘組立体16を患者体内から後退させる前に、ガイドワイヤ232が患者体内から引き出される場合は、止血弁92が、鞘部材20の管腔28を通って流れる血液の、鞘組立体16の弁ヘッド26からの漏れを防止する。
D. 脈管内移植片の移植に続く「内部漏洩」のための検査の好ましい方法
本発明の搬送システムが血管内で脈管内移植片を移植するために利用された場合は(例えば、脈瘤に橋渡しをする目的で)、移植片の一方端(両端)が包囲する血管壁と所望の封鎖接触状態で載置されるのを確実にし、血液が移植片の外側表面と血管壁の内側表面の間の空間内へ漏れないようにするために、1個以上の試験基準を形成するのが望ましいことが多い。移植片の外側表面と血管壁の内側表面の間の空間内への血液のかかる漏れは、本明細書中では「内部漏洩」と称する。
【0091】
本発明のカテーテル組立体10は、上述の好ましい実施態様に従って構成された場合は、かかる「内部漏洩」が存在するかどうかをX線透視法的またはX線写真法的に判定するために、操作者がX線写真コントラスト媒体を容易に注入できるように装備さえる。この点について、1個以上の任意の側部開口143が内側カテーテル管142の側壁に、その末梢端144に近接して形成され得る。移植片12が半径方向に拡張され、かつ、その所望の移植場所に移植された後で、なおかつ、バルーン156がその収縮された状態に戻った後は、ガイドワイヤ232は引き出され、除去され、さらに、X線写真コントラスト媒体がガイドワイヤ管腔148を通して注入され得て、X線写真コントラスト媒体がガイドワイヤ管腔148の末梢端開口部および任意の側部開口149から流出するようにする。この態様で、X線写真コントラスト媒体のボーラスは先に移植された移植片12のすぐ上流で血流に導入され、その結果、内部漏洩が存在しなければ、X線写真コントラスト媒体は移植片12の管腔通路を通って完全に流れるが、1件以上の内部漏洩が存在する場合は、移植片12を包囲する空間内に(例えば、移植片が脈瘤治療のために移植された場合には大動脈の空洞内へ)浸潤または流入するのが観察される。
【0092】
当該技術で公知のものに勝る、本発明の脈管内搬送システムにより提供される利点は無数にある。例えば、本発明の搬送カテーテルはトート状態まで収縮されたバルーンを引くように長手方向に入れ子式にされ、または伸張され、管腔内人工器官が移植された後で、緩んだまたは突出したバルーン材が係合したり、あるいはカテーテルの後退および除去に干渉するのを防ぐ。また、本発明の搬送カテーテルは、半径方向に拡張可能な管腔内人工器官の全長にわたって実質的に一貫した外向きの圧力を及ぼす非テーパ状または最小限にテーパ状のバルーンを組み入れればよく、それにより、バルーンの突出したテーバ状部分を収容する追加空間を必要とせずとも、人工器官が脈管分岐(例えば、腹部大動脈の内部端部の腸骨分岐)に近接してまたはそこに直接隣接して移植され得るようにする。更には、本発明の搬送カテーテルは、半径方向に縮小した管腔内人工器官にわたり最初に滑動し、かつ、それを包囲するが、かかる装填器組立体は管状挿入器の基端と係合可能で、更に、そこに接続可能またはロック可能であることが好ましいが、カテーテルの末梢部(半径方向に縮小した管腔内人工器官およびその下にあるバルーンを含む)の、挿入器の管腔内への挿入および導入の容易さを促進する。また、本発明の挿入器組立体は、挿入器鞘部材の材料により十分に包まれかつ包囲される埋設型放射線不透過マーカーを組み入れることが可能であり、それにより、挿入器鞘部材の円滑かつ非外傷性外側表面を提供すると同時に、マーカーがX線写真手段により容易かつ明確に目視可能に留まるようにする。更に、挿入器は前述のように、新規な弁組立体を備え、これは、挿入器からの血液の逆流または漏れを阻止する一方で、変化する外径を有する多様な長手部材(すなわち、搬送カテーテル、拡張器など)がそこを通して挿入されるようにする。これに加えて、本発明の拡張器部材は特殊構造を備え、それにより、拡張器の末梢部が比較的柔軟な非外傷性材料から形成される一方で、拡張器の基部が比較的硬質の柔軟度の低い材料で被覆される。更に、本発明の上述の構造により、1個の最初に挿入された挿入器組立体が、複数の搬送カテーテルからの複数の管腔内人工器官の通過および移植のために使用できるようになり、それにより、不適切な装着した移植片の置換、または、管状移植片の個々のセグメントが「トロンボーン」技術として公知であるものを用いた重複する様式で配置および拡張されるもののような、モジュラー設計の移植片を使用する複数移植片セグメントの移植を促進する。
【0093】
先に示されたように、脈瘤の治療に際して使用するように記載されているが、本発明の脈管内搬送システムはまた、狭窄症および閉塞症を含む他の医療状態の治療のために、血管または他の身体の解剖学的通路における補綴内装置の移植に関連した有用性を見いだす。かかる補綴内装置は上述の移植片12のためのもの以外の装置を含んでもかまわないことが認識されるだろう。
【0094】
本発明の追加修正および追加改良も当業者には明白となるだろう。したがって、本明細書中に記述および例示された部品の特定の組み合わせは、本発明の一実施態様のみを表現することが意図されているのであって、本発明の精神および範囲に入る代替の装置の限定物として役立てる意図はない。
【0095】
(要約)
身体管腔(例えば、血管)内で半径方向に拡張可能な管腔内人工器官を搬送および移植するシステムを開示する。このシステムは、a)挿入器/拡張器組立体、およびb)搬送カテーテル/装填器組立体を備える。挿入器/拡張器組立体は、その基端上に搭載される弁組立体が設けられ得る長手の管状挿入器鞘部材を備える。地域化される違いが硬度である拡張器は、挿入器の管腔内に最初に配置可能で、体内でのその所望の位置までの挿入器の前進を促進させる。搬送カテーテル/装填器組立体は挿入器に装着可能で、人工器官が搭載された搬送カテーテルが挿入器を通って身体内の所望の位置まで前進できるようにする。その後、搬送カテーテル上に搭載された、半径方向に拡張可能な管腔内人工器官は、搬送カテーテル上に形成された拡張装置(例えば、バルーン)により配置および移植される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
哺乳類の身体管腔(例えば、動脈、静脈、胃腸器官系、胆嚢樹状構造の脈管、尿路、生殖器官系、もしくはこれ以外の内分泌脈管または外分泌脈管など)の内部に管状の管腔内人工器官(例えば、ステントまたはステントされた移植片)を移植するための方法およびシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1aは、本発明に従って構成された搬送システムのカテーテル組立体の正面斜視図である。図1bは、図2に示された挿入器組立体の鞘部材の正面斜視図である。図1cは、図2に示された挿入器組立体の拡張器の正面斜視図である。
【図2−1】図2は、本発明に従って構成された搬送システムの挿入器組立体の正面斜視図であり、図2aは、図2の2a−2a線に沿って破断された挿入器組立体の末梢部の断面図である。
【図2−2】図2bは、図1bに示された鞘組立体の弁ヘッドの断面図である。
【0098】
図2cは、図2bに示された弁ヘッドの展開図である。
【図3】図3aは、図2bおよび図2cに示された弁ヘッドに含まれる止血弁の断面図である。図3bは、図3aに示された止血弁の立面図である。
【図4】図4aは、図2bおよび図2cに示された弁ヘッドに含まれる円盤状弁の断面図である。図4bは、図4aに示された円盤状弁の側部立面図である。
【図5】図5aは、図2bおよび図2cに示された弁ヘッドに含まれる横断スリット弁の断面図である。図5bは、図5aに示された横断スリット弁の側部立面図である。
【図6−1】図6は、図1aに示された円で囲んだ領域6の拡大斜視図であり、虚脱配向にあるカテーテル組立体のバルーンおよび移植片を例示する。図6aは、カテーテル組立体の基部の正面斜視図であり、バルーンが装着された態様を例示する。
【図6−2】図6bは、バルーンが膨張した場合の第1の後退位置に配向されたカテーテル組立体の側部立面図である。図6cは、バルーンが萎んだ後の第2の伸張位置に配向されたカテーテル組立体の側部立面図である。
【図7】図7は、カテーテル組立体のバルーンの部分断面図である。
【図8】図8は、図1bの8−8線に沿って破断された断面図であり、鞘組立体の末梢部に埋め込まれたマーカーを例示する。図8aは、図8に示されたマーカーが鞘組立体の末梢部に埋め込まれた態様を例示する展開図である。
【図9】図9は、図1aに示されたカテーテル組立体の部分断面図であり、その末梢部に含まれる構成部品を例示する。図9aは、抗回転部材が図9に示されたカテーテル組立体の基部に統合された態様を例示する、正面斜視図である。
【図10−1】図10aないし図10dは、本発明の脈管内搬送システムを利用した具体例の手順で実施される一連の工程を例示する、断面図である。
【図10−2】図10eないし図10hは、本発明の脈管内搬送システムを利用した具体例の手順で実施される一連の工程を例示する、断面図である。
【符号の説明】
【0099】
10 カテーテル組立体
12 移植片
14 挿入器組立体
18 伸張拡張器
20 伸張管状鞘部材
22 テーパ状末梢端
28 管腔
30 管腔内表面
40 ハウジング
44 末梢端
46 末梢部
56 横断スリット弁
58 基部
70 補強リブ
80 環状ショルダー
82 円盤状弁
88 リム部
90 環状フランジ部
92 止血弁
94 基部
104 スリット
108 テーパ状末梢端
100、134、144、158 末梢部
112 管腔
115 ショルダー
130 カテーテル
156 バルーン
160、208 基端
174 基部コネクタ組立体
182 管状サイドアーム
224 スペーサ・クリップ
232 ガイドワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の身体管腔内に管状管腔内人工器官を移植するための搬送カテーテルであって、該搬送カテーテルが、
a)貫通して突出可能な長手方向の軸、基端、および末梢端を有する、長手の柔軟なカテーテル本体と、
b)該管腔内人工器官を半径方向に拡張させる環状バルーンであって、該バルーンは、
i)該カテーテル本体の長手方向の軸について同軸に配置される実質的に円筒状の側壁であって、該側壁は基端および末梢端を有する、側壁と、
ii)該円筒状側璧の基端からカテーテル本体まで延びる基端壁と、
iii)該円筒状側壁の末梢端からカテーテル本体まで延びる末梢端壁とを有し、
iv)該基端壁および該末梢端壁は、カテーテル本体の長手方向の軸に直交する軸から10度未満をなす角度で配置される、バルーンとを備える、搬送カテーテル。
【請求項2】
前記バルーンの該基端壁および該末梢端壁のうち少なくとも一方が、該カテーテル本体の長手方向の軸に関して80度ないし90度の内角を形成する、請求項1に記載の搬送カテーテル。
【請求項3】
前記バルーンの前記基端壁および前記末梢端壁のうち少なくとも一方が、前記カテーテル本体の長手方向の軸に関して85度ないし90度の内角を形成する、請求項1に記載の搬送カテーテル。
【請求項4】
前記カテーテル本体は、
基端、末梢端、およびそこを長手方向に貫通して延びる中空管腔を有する外側管と、
基端および末梢端を有する長手の内側部材であって、該内側部材は該外側管の管腔を長手方向に貫通して伸び、該内側部材の末梢部が該外側管の末梢端から突出し、かつ、それを越えて伸びるようにした、内側部材とを備え、
基端壁は該外側管に装着され、該末梢端壁は該内側部材に装着され、この状態で、該外側管と該内側部材のうち少なくとも一方は他方に関して移動可能で、バルーンが収縮した時には、バルーンの引き締めを引き起こすようにした、請求項1に記載の搬送カテーテル。
【請求項5】
基端、末梢端、およびそこを長手方向に貫通して延びる中空管腔を有する長手のプッシャ本体を更に備え、該外側管は該プッシャ本体の管腔を長手方向に貫通して延び、バルーンがプッシャ本体の末梢端から突出するようにした、請求項4に記載の搬送カテーテル。
【請求項6】
前記プッシャ本体は、バルーンの基端と管腔内人工器官の基端を受容するための長手末梢部を含む、請求項5に記載の搬送カテーテル。
【請求項7】
プッシャ本体に沿って滑動的に前進可能で、かつ、バルーンおよび管腔内人工器官を受容する装填器を更に備える、請求項5に記載の搬送カテーテル。
【請求項8】
前記カテーテル本体に装着されて、本体管腔の所望領域内の管腔内人工器官の厳密な位置決めを促進する、少なくとも1個の放射線不透過マーカーを更に備える、請求項4に記載の搬送カテーテル。
【請求項9】
バルーンの基端に隣接してカテーテル本体の外側管に装着される第1の放射線不透過マーカーと、
バルーンの末梢端に隣接してカテーテル本体の内側部材に装着される第2の放射線不透過マーカーとを備え、
前記第1および第2の放射線不透過マーカーは、バルーンに搭載された管腔内人工器官の両端のそれぞれのものに隣接して位置決めされ、本体管腔の所望領域内の管腔内人工器官の厳密な位置決めを促進するようにした、請求項8に記載の搬送カテーテル。
【請求項10】
哺乳類の身体管腔内部に半径方向に拡張可能な管腔内人工器官を移植し、かつ、身体管腔を通って流れる内源性流体が、半径方向に拡張および移植された管腔内人工器官の外側で漏れる、内部漏洩を検査するためのシステムであって、該システムが、
a)貫通して突出可能な長手方向の軸、基端、および末梢端を有する長手のカテーテルと、
b)該カテーテルに固着される、半径方向に拡張可能な管腔内人工器官であって、該管腔内人工器官が該カテーテルから解放されて半径方向に拡張され得る移植位置まで該カテーテルが長手方向に前進させられるようにし、その結果、管腔内人工器官が身体管腔と接合接触状態にあり、かつ、除去カテーテルのそれに続く除去がそれと共に実質的に静止状態に留まる管腔内人工器官と、
c)該搬送カテーテルが該移植位置にある場合は、該管腔内人工器官の上流にある位置で該搬送について形成される、少なくとも1個の放射線不透過コントラスト媒体流出開口と、
d)カテーテルを長手方向に貫通して該少なくとも1個の流出開口まで延びる、放射線不透過コントラスト媒体管腔であって、放射線不透過コントラスト媒体は、該カテーテルが該移植位置にある時と、該環状管腔内人工器官の半径方向拡張および移植の後は、該管腔を通して該流出開口から外へ注入され、該内部漏洩が存在しているかどうかをX線写真法的に判定するようにした、放射線不透過コントラスト媒体管腔とを備える、システム。
【請求項11】
搬送カテーテルは、管腔内人工器官が移植されるべき身体管腔へ逆行様式で前進させられるよう意図されており、該少なくとも1個のX線写真コントラスト流出開口は、管腔内人工器官に対して末梢に在るカテーテル部分に配置され、X線写真コントラスト媒体が、半径方向に拡張し移植された管腔内人工器官の上流で該1個以上の流出開口から流出するようにした、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記カテーテルは、前記身体管腔を通る内源性流体の流れと同一方向に前進させられることが意図され、該少なくとも1個のX線写真コントラスト媒体流出開口は、管腔内人工器官の位置に近接する位置で該カテーテルに形成され、該1個以上の流出開口から流出するX線写真コントラスト媒体が、半径方向に拡張し移植された管腔内人工器官の上流で導入されるようにする、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
哺乳類の身体に挿入可能な管状カニューレであって、該カニューレは、
基端、末梢端、およびそこを長手方向に貫通して延びる中空管腔を有する管状カニューレ本体と、
管状カニューレが挿入された時には、哺乳類体内に在る位置で該管状カニューレ本体内部に埋設される、放射線不透過マーカーとを備える、管状カニューレ。
【請求項14】
前記放射線不透過マーカーは、該カニューレ本体の末梢端に隣接して配置され、カニューレ本体の末梢端の位置決めが身体内で放射線的に目視可能になるようにする、請求項13に記載のカニューレ。
【請求項15】
前記放射線不透過マーカーは、放射線不透過材料から形成されるリングである、請求項13に記載のカニューレ。
【請求項16】
前記放射線不透過マーカーは、
a)前記カニューレの外側表面上に放射線不透過マーカーを最初に位置決めする工程と、
b)前記放射線不透過マーカーに隣接する該カニューレ本体の一部が溶融状態になるのを引き起こし、融解カニューレ材が該放射線不透過マーカーを流動可能に包囲するようにする工程と、
c)内部埋設された該放射線不透過マーカーと共に融解カニューレ材が再固化できるようにする工程とを含む処理により、該管状カニューレ本体内部に埋設される、請求項13に記載のカニューレ。
【請求項17】
前記カニューレは外径の外側表面を有し、該マーカーは、該カニューレの外径と同一である外径を有するリングであり、該工程aは、
カニューレの外側表面の一部をその末梢端に隣接した位置で最初に除去し、該カニューレの低減した直径の領域を作る段と、
カニューレの低減した直径の領域上で該リングを前進させる段とを含む、請求項16に記載のカニューレ。
【請求項18】
前記工程cにおける該カニューレの溶解は、カニューレに高周波エネルギーを印加することにより達成される、請求項13
に記載のカニューレ。
【請求項19】
哺乳類の身体管腔内に管状管腔内人工器官を移植するための図1に示される、搬送カテーテル。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【公開番号】特開2007−54646(P2007−54646A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287020(P2006−287020)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【分割の表示】特願平10−513682の分割
【原出願日】平成9年8月27日(1997.8.27)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(506354548)
【出願人】(506354504)
【Fターム(参考)】