説明

脈絡膜新血管新生に対するワクチン療法

本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療または予防するための新規な薬剤および方法を提供する。本発明は、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、およびVEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチドのうちの少なくとも1種類ずつを含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するための薬学的組成物およびワクチンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2009年6月11日に出願された特願2009−140363の恩典を主張し、その内容はあらゆる目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)の治療および/または予防のための薬学的組成物およびワクチンに関する。本発明はまた、脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物およびワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
脈絡膜新血管新生(CNV)に起因する滲出性加齢性黄斑変性症(AMD)は、先進国における重篤な視力障害の主な原因の一つである。これまでに得られた証拠から、血管内皮増殖因子(VEGF)がCNVの発生に中心的な役割を果たすことが示唆されている。例えば、VEGFの産生を阻害する化合物またはVEGFのシグナル伝達経路を阻害する化合物によって、CNVが抑制されることが報告されている。さらに、抗VEGF抗体が、光線力学的療法を含む従来の治療法と比較してより高い治療有効性を示すことが報告されている。そのため近年では、抗VEGF剤はCNVに対する薬物療法の主な選択肢となっている。
【0004】
VEGFシグナル伝達は、2種類の受容体チロシンキナーゼ、すなわちVEGF受容体1(VEGFR−1)およびVEGF受容体2(VEGFR−2)によって媒介される。この2種類の受容体は、ヒトCNV膜または実験用マウスCNV膜上に発現する。しかしながら、CNVにおけるVEGFR−1シグナル伝達経路の役割については、依然として議論の余地がある。例えばある研究では、抗体の経口投与、遺伝子ノックダウン、またはsiRNAによるVEGFR−1シグナル伝達の阻害により、CNVが阻害されると報告している。別の研究では、眼内において、VEGF、またはVEGFR−2のリガンドである胎盤増殖因子1(PIGF1)によるVEGFR−1の活性化により、SPARCによるVEGFR−2の活性化を介してCNVが活性化されると報告している。一方でVEGFR−2については、VEGFR−2シグナル伝達の活性化によりCNV増殖が促進されるという知見が一般に受け入れられている。したがって、抗VEGFR−2剤またはVEGFR−2抗体の全身投与または局所投与、およびsiRNAの硝子体内投与など、VEGFR−2を標的とする抗血管新生アプローチによって、VEGFR−2シグナル伝達およびCNV増殖が阻害されると予測される。
【0005】
しかしながら、現在利用可能な抗VEGF剤に付随する問題は、4週間〜6週間間隔で繰り返し注射する必要があるという点である。さらに、眼内炎および網膜剥離などの重篤な合併症のリスクも高い。したがって、現在使用されている抗VEGF剤に取って代わる新規な治療法を確立することが望ましい。
【0006】
ヒトVEGF受容体2に由来するペプチドを用いたワクチンが、腫瘍組織において、VEGFR−2を発現する内皮細胞に対して強力な細胞障害性を及ぼす細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘導することが知られている(特許文献1)。ヒトVEGF受容体1に由来するペプチドを用いたワクチンもまた、VEGFR−1を発現する内皮細胞に対して強力な細胞障害性を及ぼすCTLを誘導することが知られている(特許文献2)。さらに、VEGF受容体2に由来するペプチドを用いたワクチンが、マウスにおいてCNV阻害効果を有することも確認されている(特許文献3)。しかしながら、他の組織と同様に、脈絡膜における新血管新生の機構には不明な点が多く、またヒト脈絡膜においてCNVを効果的に阻害するワクチンの存在は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2004/024766
【特許文献2】WO 2006/093030
【特許文献3】WO 2008/099908
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の状況を考慮して達成された。本発明が達成しようとする目的は、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するための新規な薬剤および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、VEGFR−1由来ペプチドを含む薬学的組成物/ワクチンを新生血管黄斑症患者に投与し、結果として、これが安全性の問題を示唆する問題を引き起こすことなくヒトCNVを効果的に阻害し得ることを発見し、それによって本発明を完了した。
【0010】
より具体的には、本発明は、少なくとも、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するための薬学的組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、少なくとも、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するためのワクチンを提供する。
【0012】
本発明はまた、少なくとも、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物を提供する。
【0013】
さらに本発明は、少なくとも、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチンを提供する。
【0014】
本発明は、少なくとも、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドを対象に投与する段階を含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するための方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、少なくとも、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドを対象に投与する段階を含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための方法を提供する。
【0016】
本発明はさらに、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するための薬学的組成物の製造における、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0017】
さらに本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するためのワクチンの製造における、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0018】
本発明はまた、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物の製造における、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0019】
加えて、本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチンの製造における、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0020】
本発明はさらに、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防する上で使用するための、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチドを提供する。
【0021】
あるいは、本発明はさらに、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療または予防するための薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドの有効成分と、薬学的または生理学的に許容される担体とを製剤化する段階を含む方法または工程を提供する。
【0022】
別の態様において、本発明はまた、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療または予防するための薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、有効成分を薬学的または生理学的に許容される担体と混合する段階を含み、該有効成分が、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドである方法または工程を提供する。
【0023】
あるいは、本発明の1つの態様では、ヒトCNVを治療または阻害するために、VEGFR−1由来ペプチドをVEGFR−2由来ペプチドと併用して投与してもよい。したがって本発明は、以下からなる群より選択されるペプチドのうちの少なくとも1種類ずつを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するための薬学的組成物を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0024】
本発明はまた、以下からなる群より選択されるペプチドのうちの少なくとも1種類ずつを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するためのワクチンを提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0025】
本発明はまた、以下からなる群より選択されるペプチドのうちの少なくとも1種類ずつを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0026】
さらに本発明は、以下からなる群より選択されるペプチドのうちの少なくとも1種類ずつを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチンを提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0027】
本発明は、以下からなる群より選択されるペプチドのうちの少なくとも1種類ずつを対象に投与する段階を含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するための方法を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0028】
本発明はまた、以下からなる群より選択されるペプチドのうちの少なくとも1種類ずつを対象に投与する段階を含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための方法を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0029】
本発明はさらに、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するための薬学的組成物の製造における、以下からなる群より選択されるペプチドの使用を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド。
【0030】
さらに本発明は、ワクチンの製造における、以下からなる群より選択されるペプチドの使用を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、
ならびに/あるいはヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するためのそれをコードするポリヌクレオチド。
【0031】
本発明はまた、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物の製造における、以下からなる群より選択されるペプチドの使用を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0032】
加えて、本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチンの製造における、以下からなる群より選択されるペプチドの使用を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0033】
加えて、本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療または予防する上で使用するための、以下からなる群より選択されるペプチドを提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0034】
加えて、本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害する上で使用するための、以下からなる群より選択されるペプチドを提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0035】
あるいは、本発明はさらに、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療または予防するための薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、有効成分としての、以下の中より選択される有効成分と共に、薬学的または生理学的に許容される担体を製剤化する段階を含む方法または工程を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0036】
あるいは、本発明はさらに、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチンを製造するための方法または工程であって、有効成分としての、以下の中より選択される有効成分と共に、薬学的または生理学的に許容される担体を製剤化する段階を含む方法または工程を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0037】
別の態様において、本発明はまた、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療または予防するための薬学的組成物を製造するための方法または工程であって、有効成分を薬学的または生理学的に許容される担体と混合する段階を含み、該有効成分が以下の中より選択される方法または工程を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0038】
別の態様において、本発明はまた、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチンを製造するための方法または工程であって、有効成分を薬学的または生理学的に許容される担体と混合する段階を含み、該有効成分が以下の中より選択される方法または工程を提供する;
(a)VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、および/またはそれをコードするポリヌクレオチド。
【0039】
より具体的には、本発明は以下の[1]〜[30]を提供する;
[1](a)VEGF受容体1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類、またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するための薬学的組成物、
[2]上記の(a)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、[1]の薬学的組成物:
(i)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;
(ii)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド、
[3]上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、[2]の薬学的組成物:
(1)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド、
[4](b)VEGF受容体2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類をさらに含む、[1]〜[3]のいずれか1つの薬学的組成物、
[5]上記の(b)のペプチドが以下の(i)および(ii)を含む、[4]の薬学的組成物:
(i)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド、
[6]上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、[5]の薬学的組成物:
(1)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド、
[7]脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)が、滲出性加齢性黄斑変性症、近視性黄斑変性症、網膜色素線条症、中心性滲出性網脈絡膜症、種々の網膜色素上皮症、脈絡膜萎縮症、コロイデレミア、および脈絡膜骨腫より選択される、[1]〜[6]のいずれか1つの薬学的組成物、
[8]HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に対して投与される、[1]〜[7]のいずれか1つの薬学的組成物、
[9](a)VEGF受容体1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類、またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するためのワクチン、
[10]上記の(a)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、[9]のワクチン:
(i)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド、
[11]上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、[10]のワクチン:
(1)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド、
[12](b)VEGF受容体2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類をさらに含む、[9]〜[11]のいずれか1つのワクチン、
[13]上記の(b)のペプチドが以下の(i)および(ii)を含む、[12]のワクチン:
(i)SEQ ID NO:5〜17のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド、
[14]上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、[13]のワクチン:
(1)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド、
[15]脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)が、滲出性加齢性黄斑変性症、近視性黄斑変性症、網膜色素線条症、中心性滲出性網脈絡膜症、種々の網膜色素上皮症、脈絡膜萎縮症、コロイデレミア、および脈絡膜骨腫より選択される、[9]〜[14]のいずれか1つのワクチン、
[16]HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に対して投与される、[9]〜[15]のいずれか1つのワクチン、
[17](a)VEGF受容体1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類、またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物、
[18]上記の(a)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、[17]の薬学的組成物:
(i)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド、
[19]上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、[18]の薬学的組成物:
(1)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド、
[20](b)VEGF受容体2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類をさらに含む、[17]〜[19]のいずれか1つの薬学的組成物、
[21]上記の(b)のペプチドが以下の(i)および(ii)を含む、[20]の薬学的組成物:
(i)SEQ ID NO:5〜17のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド、
[22]上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、[21]の薬学的組成物:
(1)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド、
[23]HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に対して投与される、[15]〜[19]のいずれか1つの薬学的組成物、
[24](a)VEGF受容体1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類、またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチン、
[25]上記の(a)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、[24]のワクチン:
(i)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド、
[26]上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、[25]のワクチン:
(1)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド、
[27](b)VEGF受容体2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類をさらに含む、[24]〜[26]のいずれか1つのワクチン、
[28]上記の(b)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、[27]のワクチン:
(i)SEQ ID NO:5〜17のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド、
[29]上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、[28]のワクチン:
(1)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド、
[30]HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に対して投与される、[24]〜[29]のいずれか1つのワクチン。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および予防するのに有効な薬学的組成物およびワクチンを提供し得る。さらに本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するのに有効な薬学的組成物およびワクチンを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1−1】図1は、VEGFR−1由来ペプチドおよびVEGFR−2由来ペプチドの投与を受けた加齢性黄斑変性症患者HLA−A0201−症例1の症状軽減を示す。(A)は投与開始前の断層画像を示し、(B)は投与開始前の眼底写真を示し、(C)は投与開始前の蛍光眼底写真を示す。(A)および(D)の矢印は色素上皮のラインを示し、(B)および(E)の矢印は色素上皮の剥離を示す。
【図1−2】図1は、VEGFR−1由来ペプチドおよびVEGFR−2由来ペプチドの投与を受けた加齢性黄斑変性症患者HLA−A0201−症例1の症状軽減を示す。(D)は投与開始後5ヵ月の断層画像を示し、(E)は投与開始後5ヵ月の眼底写真を示し、(F)は投与開始後5ヵ月の蛍光眼底写真を示す。(A)および(D)の矢印は色素上皮のラインを示し、(B)および(E)の矢印は色素上皮の剥離を示す。
【図2】図2は、VEGFR−1由来ペプチドおよびVEGFR−2由来ペプチドの投与を受けた加齢性黄斑変性症患者HLA−A0201−症例3の単独症例において行われた光干渉断層撮影法により得られた網膜断層画像を示す。(A)は投与開始前の断層画像を示し、(B)は投与開始後1ヵ月の断層画像を示す。矢印は浮腫を示し、破線矢印は、繊維化して機能低下した新生血管膜と思われるものを示す。
【図3】図3は、VEGFR−1由来ペプチドおよびVEGFR−2由来ペプチドの投与を受けた加齢性黄斑変性症患者HLA−A2402−症例1の症状軽減および視力の回復を示す。上部の写真は眼底写真を示し、下部の写真は網膜断層画像を示す。治療開始後に、網膜下出血(矢印)は消失し、視力は改善した(括弧内の値)。加えて、黄斑部の構造は同じ状態のままであった。
【図4−1】図4は、HLA−A0201−症例1のVEGFR1ペプチド特異的応答を示す。治療前(a)および1コース後(b)のPBMCを試験した。各図において、PBMCをVEGFR1−A2−770ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(左下パネル)およびVEGFR1ペプチド特異的スポット(右下パネル)の数をグラフ中に示す。対応のないスチューデントt検定を用いて、統計解析を行った(星印;P<0.05)。丸印は、スポットカウントが飽和していることを示す。
【図4−2】図4は、HLA−A0201−症例1のVEGFR1ペプチド特異的応答を示す。2コース後(c)および3コース後(d)のPBMCを試験した。各図において、PBMCをVEGFR1−A2−770ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(左下パネル)およびVEGFR1ペプチド特異的スポット(右下パネル)の数をグラフ中に示す。対応のないスチューデントt検定を用いて、統計解析を行った(星印;P<0.05)。丸印は、スポットカウントが飽和していることを示す。
【図4−3】図4は、HLA−A0201−症例1のVEGFR1ペプチド特異的応答を示す。4コース後(e)のPBMCを試験した。各図において、PBMCをVEGFR1−A2−770ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(左下パネル)およびVEGFR1ペプチド特異的スポット(右下パネル)の数をグラフ中に示す。対応のないスチューデントt検定を用いて、統計解析を行った(星印;P<0.05)。丸印は、スポットカウントが飽和していることを示す。
【図5−1】図5は、HLA−A0201−症例1のVEGFR2ペプチド特異的応答を示す。治療前(a)および1コース後(b)のPBMCを試験した。各図において、PBMCをVEGFR2−A2−773ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(左下パネル)およびVEGFR2ペプチド特異的スポット(右下パネル)の数をグラフ中に示す。
【図5−2】図5は、HLA−A0201−症例1のVEGFR2ペプチド特異的応答を示す。2コース後(c)および3コース後(d)のPBMCを試験した。各図において、PBMCをVEGFR2−A2−773ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダ―/スティミュレーター比。スポットカウント(左下パネル)およびVEGFR2ペプチド特異的スポット(右下パネル)の数をグラフ中に示す。
【図5−3】図5は、HLA−A0201−症例1のVEGFR2ペプチド特異的応答を示す。4コース後(e)のPBMCを試験した。各図において、PBMCをVEGFR2−A2−773ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(左下パネル)およびVEGFR2ペプチド特異的スポット(右下パネル)の数をグラフ中に示す。
【図6−1】図6は、HLA−A0201−症例3のVEGFR1ペプチド特異的応答を示す。1コース後(a)のPBMCの応答を代表的な結果として示す。各図において、PBMCをVEGFR1−A2−770ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(中段左パネル)およびVEGFR1ペプチド特異的スポット(中段右パネル)の数をグラフ中に示す。対応のないスチューデントt検定を用いて、統計解析を行った(星印;P<0.05)。HLA−A0201/VEGFR1 デキストラマーにより、VEGFR1ペプチド特異的T細胞受容体を検出した(下部パネル)。
【図6−2】図6は、HLA−A0201−症例3のVEGFR1ペプチド特異的応答を示す。3コース後(b)のPBMCの応答を代表的な結果として示す。各図において、PBMCをVEGFR1−A2−770ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(中段左パネル)およびVEGFR1ペプチド特異的スポット(中段右パネル)の数をグラフ中に示す。対応のないスチューデントt検定を用いて、統計解析を行った(星印;P<0.05)。HLA−A0201/VEGFR1 デキストラマーにより、VEGFR1ペプチド特異的T細胞受容体を検出した(下部パネル)。
【図6−3】図6は、HLA−A0201−症例3のVEGFR1ペプチド特異的応答を示す。4コース後(c)のPBMCの応答を代表的な結果として示す。各図において、PBMCをVEGFR1−A2−770ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(中段左パネル)およびVEGFR1ペプチド特異的スポット(中段右パネル)の数をグラフ中に示す。対応のないスチューデントt検定を用いて、統計解析を行った(星印;P<0.05)。HLA−A0201/VEGFR1 デキストラマーにより、VEGFR1ペプチド特異的T細胞受容体を検出した(下部パネル)。
【図6−4】図6は、HLA−A0201−症例3のVEGFR1ペプチド特異的応答を示す。5コース後(d)のPBMCの応答を代表的な結果として示す。各図において、PBMCをVEGFR1−A2−770ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。スポットカウント(中段左パネル)およびVEGFR1ペプチド特異的スポット(中段右パネル)の数をグラフ中に示す。対応のないスチューデントt検定を用いて、統計解析を行った(星印;P<0.05)。HLA−A0201/VEGFR1 デキストラマーにより、VEGFR1ペプチド特異的T細胞受容体を検出した(下部パネル)。
【図7−1】図7は、HLA−A0201−症例3のVEGFR2ペプチド特異的応答を示す。治療前(a)、1コース後(b)、および3コース後(c)のPBMCを試験した。各図において、VEGFR2−A2−773ペプチドをパルスしたTISIまたはHIV−EnvペプチドをパルスしたTISIに対するスポットカウント(左パネル)およびVEGFR2ペプチド特異的スポット(右パネル)の数をグラフ中に示す。
【図7−2】図7は、HLA−A0201−症例3のVEGFR2ペプチド特異的応答を示す。4コース後(d)および5コース後(e)のPBMCを試験した。各図において、VEGFR2−A2−773ペプチドをパルスしたTISIまたはHIV−EnvペプチドをパルスしたTISIに対するスポットカウント(左パネル)、およびVEGFR2ペプチド特異的スポット(右パネル)の数をグラフ中に示す。
【図8】図8は、HLA−A2402−症例1のVEGFR1ペプチド特異的応答を示す。2コース後(a)および6コース後(b)のPBMCの応答を代表的な結果として示す。各図において、PBMCをVEGFR1−A24−1084ペプチド(左上パネル)またはHIV−Envペプチド(右上パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。VEGFR1ペプチド特異的スポットの数をグラフ中に示す。対応のないスチューデントt検定を用いて、統計解析を行った(星印;P<0.05)。丸印は、スポットカウントが飽和していることを示す。
【図9】図9は、HLA−A2402−症例1のVEGFR2ペプチド特異的応答を示す。2コース後(a)および6コース後(b)のPBMCの応答を代表的な結果として示す。各図において、PBMCをVEGFR2−A24−169ペプチド(左パネル)またはHIV−Envペプチド(右パネル)により刺激したELISPOTプレートの写真を示す。R/S;レスポンダー/スティミュレーター比。VEGFR2ペプチド特異的スポットの数をグラフ中に示す。
【図10】図10は、治療後の対象の視力変化を示す。投与群の視力は、非投与群と比較して有意差を伴って改善した(p値=0.015)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
態様の説明
定義
本明細書で用いる「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、特に他に具体的に指示がない限り「少なくとも1つの」を意味する。
【0043】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、天然のアミノ酸ポリマーに加えて、1個または複数個のアミノ酸残基が修飾残基であり得るか、または対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体などの非天然の残基であり得るアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0044】
本明細書で用いる「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。アミノ酸は、L−アミノ酸またはD−アミノ酸のいずれかであってよい。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、および細胞内で翻訳後に修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造(水素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素)を有するが、1つまたは複数の修飾されたR基または修飾された骨格を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を指す。「アミノ酸模倣体」という語句は、一般的なアミノ酸とは異なる構造を有するが、同様の機能を有する化合物を指す。
【0045】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC−IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)の推奨する一般に公知の3文字表記または1文字表記により言及されてもよい。
【0046】
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、特に他に具体的に指示がない限り、一般に受け入れられている1文字コードにより言及される。
【0047】
本明細書で用いる「組成物」という用語は、特定量の特定成分を含む生成物、および特定量の特定成分の組み合わせから直接または間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。「薬学的組成物」に関するそのような用語は、有効成分、および担体を構成する任意の不活性成分を含む生成物、ならびに任意の2つもしくはそれ以上の成分の組み合わせ、複合体形成、もしくは凝集から、または1つもしくは複数の成分の解離から、または1つもしくは複数の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から直接または間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。したがって、本発明との関連において、「薬学的組成物」という語句は、本発明の化合物と薬学的または生理学的に許容される担体とを混合することにより作製される任意の組成物を包含する。本明細書で用いる「薬学的に許容される担体」または「生理学的に許容される担体」という語句は、有効成分をある器官または身体の一部から別の器官または身体の一部へ運搬または輸送することに関与する、液体もしくは固体増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料を含むがこれらに限定されない、薬学的または生理学的に許容される材料、組成物、物質、または媒体を意味する。
【0048】
特記しない限り、「細胞傷害性Tリンパ球」、「細胞傷害性T細胞」、および「CTL」という用語は本明細書において互換的に用いられ、特に他に具体的に指示がない限り、非自己細胞(例えば、ウイルス感染細胞)を認識し、そのような細胞の死滅を誘導することができるTリンパ球の亜群を指す。
【0049】
特記しない限り、「HLA−A24」という用語は、HLA−A2402などのサブタイプを含むHLA−A24型を指す。
【0050】
特記しない限り、本明細書で用いる「HLA−A2」という用語は、典型的には、HLA−A0201などのサブタイプを指す。
【0051】
特記しない限り、本明細書で用いる「キット」という用語は、試薬および他の材料の組み合わせに関して用いられる。「キット」という用語は、薬剤および/または材料の特定の組み合わせに限定されないことが意図される。
【0052】
本発明の方法および組成物が、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)の「治療」との関連において有用である範囲内で、治療が、対象における色素上皮の剥離の減少、色素上皮の剥離の改善、漏出の軽減、または歪みの改善などの臨床的利点をもたらす場合に、治療は「有効である」と見なされる。有効性は、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療するための任意の公知の方法と関連して判定される。
【0053】
特記しない限り、本明細書で用いる技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されている意味と同じ意味を有する。
【0054】
本発明は、VEGFR−1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド(以下、「VEGFR−1ペプチド」と称する)、および/またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するための薬学的組成物、ならびに脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物(以下、組成物を合わせて「本発明の薬学的組成物」と称する場合がある)に関する。さらに本発明は、VEGFR−1および/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するためのワクチン、ならびに脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチン(以下、ワクチンを合わせて「本発明のワクチン」と称する場合がある)に関する。上記の薬学的組成物およびワクチンは、例えば免疫刺激剤などの任意の他の物質を含み得る。好ましくは、他のタンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチドが含まれ得る。より好ましくは、VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド(以下、「VEGFR−2ペプチド」と称する)である。本発明は、VEGFR−1ペプチドを含む薬学的組成物/ワクチンが脈絡膜における新血管新生を阻害するのに有効であるという、本発明者らの知見に基づいている。
【0055】
VEGFR−1ペプチド
本発明の薬学的組成物およびワクチン中に含まれるVEGFR−1ペプチド(以下、「VEGFR−1ペプチド」を「本発明のペプチド」と称する場合がある)は、公知のVEGFR−1タンパク質のアミノ酸配列における任意の位置からペプチドを合成することによって得ることができる。本発明はVEGFR−2ペプチドを含むこともでき、これも同様に、公知のVEGFR−2のアミノ酸配列における任意の位置からペプチドを合成することによって得ることができる。ヒトVEGFR−1およびヒトVEGFR−2のアミノ酸配列は公知であり、当業者はインターネット上で利用可能なタンパク質配列データベース等からそれらを容易に得ることができる。ヒトVEGFR−1タンパク質のアミノ酸配列の例は、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列(GenBankアクセッション番号NM_002019のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列)である。ヒトVEGFR−2タンパク質のアミノ酸配列の例は、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列(GenBankアクセッション番号NM_002253のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列)である。
【0056】
ペプチド合成は、ペプチド化学において慣習的に用いられている方法に従って行うことができる。慣習的な合成法は、「Peptide Synthesis」, Interscience, New York, 1966;「The Proteins」, Vol. 2, Academic Press Inc., New York, 1976;「ペプチド合成」, 丸善, 1975;「ペプチド合成の基礎と実験」, 丸善, 1985;および「続・医薬品の開発」, 第14巻, ペプチド合成, 広川書店, 1991などの文献、ならびに国際公開WO 99/67288などの公報に記載されている。本発明のペプチドは、公知の遺伝子工学法によって合成してもよい。以下は、遺伝子工学的合成法の一例である。本発明のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクターを適切な宿主細胞に導入して、形質転換細胞を作製する。これらの形質転換細胞において産生されたペプチドを回収することにより、本発明のペプチドを得ることができる。本発明のペプチドはまず融合タンパク質として作製してもよく、次にこれを適切なプロテアーゼを用いて切断して、該ペプチドを得る。
【0057】
融合タンパク質を調製する方法では、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを、別のペプチドをコードするポリヌクレオチドとインフレームで連結してもよく、これを発現ベクターに挿入して、宿主内で発現させてもよい。当業者に公知の技法をこの目的のために用いることができる。本発明のペプチドと融合させるペプチドとしては、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988)6, 1204-1210)、6個のヒスチジン(His)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc−myc断片、VSV−GP断片、p18HIV断片、T7タグ、HSVタグ、Eタグ、SV40T抗原断片、lckタグ、α−チューブリン断片、Bタグ、およびプロテインC断片などの公知のペプチドを用いることができる。本発明のペプチドを、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、インフルエンザ凝集素(HA)、免疫グロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)等に連結して、融合タンパク質を作製することも可能である。このようにして作製された融合タンパク質を適切なプロテアーゼで処理した後、関心対象のペプチドを回収することにより、本発明のペプチドを得ることができる。ペプチドは、アフィニティークロマトグラフィーなど、当業者に公知の方法によって回収することができる。
【0058】
本発明のペプチドのアミノ酸配列として、例えば、HLA抗原に対する結合親和性を指標として用いて、VEGFR−1タンパク質の全アミノ酸配列またはVEGFR−2タンパク質の全アミノ酸配列から任意の配列を選択することができる。HLA抗原に対する結合親和性は、樹状細胞などの細胞表面上にHLA抗原を有する細胞を単離し、一般的に行われる方法を用いて該細胞に対するペプチドの結合を測定することにより、測定することができる。あるいは結合親和性は、Parker K. C., J. Immunol. 152, 1994に記載されているソフトウェアのような、インターネット上で現在利用可能なソフトウェアにより、インシリコで算出することもできる。日本人に適用する場合には、有効な結果を得るために、例えば、日本人集団において頻繁に発現していると言われるA−24型またはA−02型等をHLA抗原として用いることが好ましい。A−02型およびA−24型などのHLA抗原には、それぞれA−0201またはA−2402などのサブタイプが含まれる。HLA−A0201に対する高い結合親和性を有するVEGFR−1ペプチドの例には、SEQ ID NO:1〜3のアミノ酸配列を含むペプチドが含まれ、またHLA−A2402に対する高い結合親和性を有するVEGFR−1ペプチドの例には、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる(WO 2006/093030)。HLA−A0201に対する高い結合親和性を有するVEGFR−2ペプチドの例には、SEQ ID NO:11〜17のアミノ酸配列を含むペプチドが含まれ、またHLA−A2402に対する高い結合親和性を有するVEGFR−2ペプチドの例には、SEQ ID NO:5〜10のアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる(WO 2004/024766)。臨床診療では、HLA抗原の型を予め調べることにより、治療を必要とする患者が保有するHLA抗原に対して高い結合親和性を有するペプチドを適切に選択することができる。
【0059】
HLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドは、細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導する活性を有するペプチドとして有効である可能性が高い。それでもやはり、指標として高い結合親和性の存在を用いて選択された候補ペプチドが、実際にCTLを誘導する活性を有するか否かを調べることが望ましい。CTL誘導活性は、ヒトMHC抗原を含む抗原提示細胞(Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞など)、好ましくはヒト末梢血単核細胞に由来する樹状細胞を、候補ペプチドで刺激し;該細胞をCD8陽性細胞と混合し;次いで標的細胞に対する細胞傷害性を測定することにより、確認することができる。反応系として、ヒトHLA抗原を発現するように作製されたトランスジェニック動物(例えば、Hum. Immunol. 2000 Aug; 61(8):764-79 Related Articles, Books, Linkout Induction of CTL response by a minimal epitope vaccine in HLA A*0201/DR1 transgenic mice: dependence on HLA class II restricted T(H)response., Ben Mohamed L., Krishnan R., Longmate J., Auge C., Low L., Primus J., Diamond DJ.に記載されているもの)を用いることができる。細胞傷害性は、例えば51Cr等で放射標識された標的細胞から放出された放射能から算出することができる。あるいは、ペプチドを保有する抗原提示細胞の存在下でCTLによって産生および放出されたIFN−γを測定し、抗IFN−γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻止帯を可視化することによって、該活性を調べることもできる。
【0060】
本発明のペプチドの長さは、それらがCTL誘導活性を有する限り、特に限定されないが、好ましくは50アミノ酸またはそれ未満、より好ましくは30アミノ酸またはそれ未満、およびさらにより好ましくは15アミノ酸またはそれ未満である。例えば、インビボで抗原提示細胞上に提示される場合、様々なタンパク質は9merペプチド(ノナペプチド)まで分解され、その後提示される。したがって、本発明のペプチドは、望ましくは9mer(ノナペプチド)または10mer(デカペプチド)である。好ましいVEGFR−1ペプチドには、SEQ ID NO:1〜4のアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる(WO 2006/09030)。好ましいVEGFR−2ペプチドには、SEQ ID NO:5〜17のアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる(WO 2004/024766)。
【0061】
さらに、天然のVEGFR−1またはVEGFR−2の部分ペプチドのアミノ酸配列に対して、1個、2個、または数個のアミノ酸を置換、欠失、付加、および/または挿入することができる。本明細書において、「数個」とは、5個またはそれ未満、好ましくは3個またはそれ未満を意味する。アミノ酸残基を改変する場合には、アミノ酸側鎖の性質が維持されるアミノ酸で置換することが望ましい。アミノ酸側鎖の性質の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、およびV);親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、およびT);脂肪族側鎖を含むアミノ酸(G、A、V、L、I、およびP);ヒドロキシル基含有側鎖を含むアミノ酸(S、T、およびY);硫黄原子含有側鎖を含むアミノ酸(CおよびM);カルボン酸およびアミド含有側鎖を含むアミノ酸(D、N、E、およびQ);塩基性側鎖を含むアミノ酸(R、K、およびH);および芳香族基含有側鎖を含むアミノ酸(H、F、Y、およびW)である(括弧内ではアミノ酸はすべて1文字表記で示す)。これらの各群内のアミノ酸の置換を、一般的に保存的置換と称する。特定のアミノ酸配列に対して1個または複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、付加、および/または挿入されている、改変されたアミノ酸配列を含むペプチドは、その元のペプチドの生物活性を保持することが知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984)81, 5662-6;Zoller, M. J. and Smith, M., Nucleic Acids Res. (1982)10, 6487-500;Wang, A. et al., Science (1984)224: 1431-3;Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982)79: 6409-13)。そのような改変VEGFR−1ペプチドの好ましい例には、SEQ ID NO:1〜4のうちのいずれか1つのアミノ酸配列中に1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる。改変VEGFR−2ペプチドの好ましい例には、SEQ ID NO:5〜17のうちのいずれか1つのアミノ酸配列中に1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる。
【0062】
さらに、HLA抗原に結合することによって提示されるペプチドの配列の規則性は既知であるため(J. Immunol., 152:3913, 1994;Immunogenetics, 41:178, 1995;J. Immunol., 155:4307, 1994)、そのような規則性を有する配列を選択することができ、または上記のように、得られたペプチドに対してこの規則性に基づいた改変を実行することができる。例えば、HLA−24結合親和性が高いペプチドは、ペプチドのN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチドであることが知られている。したがって、HLA−24型HLA抗原を保有する対象に投与するための薬学的組成物またはワクチン中に含めるべきペプチドには、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンであり、かつ/またはC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンであるペプチドを選択することができる。あるいは、得られたペプチドのN末端から2番目のアミノ酸をフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンに改変することができ、またはC末端アミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンに改変することができる。そのようなVEGFR−1ペプチドの好ましい例には、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列内で、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンに改変され、かつ/またはC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンに改変されているペプチドが含まれる。
【0063】
さらに、そのようなVEGFR−2ペプチドの好ましい例には、SEQ ID NO:5〜10のうちのいずれか1つのアミノ酸配列内で、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンに改変され、かつ/またはC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンに改変されているペプチドが含まれる。一方、HLA−02結合親和性が高いペプチドは、ペプチドのN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチドであることが知られている。したがって、HLA−02型HLA抗原を保有する対象に投与するための薬学的組成物またはワクチン中に含めるべきペプチドとして、N末端から2番目のアミノ酸がロイシンもしくはメチオニンであり、かつ/またはC末端アミノ酸がバリンもしくはロイシンであるペプチドを選択することができる。あるいは、得られたペプチドのN末端から2番目のアミノ酸をロイシンまたはメチオニンに改変することができ、およびC末端アミノ酸をバリンまたはロイシンに改変することができる。そのようなVEGFR−2ペプチドの好ましい例には、SEQ ID NO:1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸配列内で、N末端から2番目のアミノ酸がロイシンもしくはメチオニンに改変され、かつ/またはC末端アミノ酸がバリンもしくはロイシンに改変されているペプチドが含まれる。HLA−02型のための改変VEGFR−2ペプチドの例は、SEQ ID NO:11〜17のアミノ酸配列を含むペプチドである。
【0064】
上記のように本発明のペプチドを得ることができるが、ペプチド配列が、異なる機能を有する内因性または外因性タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一である場合には、このペプチドが自己免疫疾患または特定の物質に対するアレルギー症状などの副作用を引き起こす可能性がある。したがって、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を行い、得られたペプチドの配列が他のタンパク質のアミノ酸配列と一致するかどうかを調べることが好ましい。該ペプチド配列が別のタンパク質のアミノ酸配列と一致する場合には、そのペプチド配列の選択を好ましくは回避すべきである。相同性検索から、アミノ酸が1個または2個異なるペプチドも存在しないことが示される場合には、HLA抗原に対する結合親和性および/またはCTL誘導活性を増大させるための上述のアミノ酸配列の改変は、そのような問題を引き起こさないと考えられる。
【0065】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、前述の本発明のペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。これらには、天然のVEGFR−1遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_002019(例えば、SEQ ID NO:18))または天然のVEGFR−2遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_002253(例えば、SEQ ID NO:20))由来のポリヌクレオチド、およびその保存的に改変されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。本明細書において、「保存的に改変されたヌクレオチド配列」という語句は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、多くの機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、あるコドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置において、コードされるポリペプチドを変化させることなく、該コドンを記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸の変異は、保存的改変変異の一種である「サイレント変異」である。ペプチドをコードする本明細書中のあらゆる核酸配列は、該核酸のあらゆる可能なサイレント変異をも表す。核酸中の各コドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一の分子を得ることができることを、当業者は認識するであろう。したがって、ペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、開示される各配列において非明示的に示されている。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNA、またはそれらの誘導体から構成され得る。当技術分野において周知であるように、DNA分子は天然の塩基A、T、C、およびGなどの塩基から構成され、RNAではTがUに置き換えられる。当業者は、ポリヌクレオチド中に非天然の塩基が含まれることも認識するであろう。
【0067】
本発明のポリヌクレオチドは、介在するアミノ酸配列を伴って、または伴わずに、本発明の複数のペプチドをコードしてもよい。例えば、介在アミノ酸配列は、ポリヌクレオチドまたは翻訳されたペプチドの切断部位(例えば、酵素認識配列)を提供し得る。さらに、ポリヌクレオチドは、本発明のペプチドをコードするコード配列に対する任意の付加的配列を含んでもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、ペプチドの発現に必要な調節配列を含む組換えポリヌクレオチドであってよく、またはマーカー遺伝子等を有する発現ベクター(プラスミド)であってもよい。一般に、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いる従来の組換え技法によりポリヌクレオチドを操作することによって、そのような組換えポリヌクレオチドを調製することができる。
【0068】
組換え技法および化学合成技法の両方を用いて、本発明のポリヌクレオチドを作製することができる。例えば、適切なベクターに挿入することによってポリヌクレオチドを作製してよく、これはコンピテントセルにトランスフェクトした場合に発現され得る。あるいは、PCR技法または適切な宿主内での発現を用いて、ポリヌクレオチドを増幅してもよい(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989を参照されたい)。あるいは、Beaucage SL & Iyer RP, Tetrahedron 1992, 48: 2223-311;Matthes et al., EMBO J 1984, 3: 801-5に記載されているような固相技法を用いて、ポリヌクレオチドを合成してもよい。
【0069】
VEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む薬学的組成物およびワクチン
本発明は、少なくともVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するための薬学的組成物を提供する。
【0070】
本発明における治療とは、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患に特有な症状を実際に発症している患者において、該症状を軽減することを指す。本発明において、軽減の程度は特に限定されず、程度がごくわずかであっても症状が軽減され得る限り、本発明の治療の意味に含まれる。本発明において、予防とは、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患に特有な症状の進行を予め抑制することを意味する。本発明において、進行の抑制の程度は何ら限定されず、程度がごくわずかであっても進行が抑制され得る限り、本発明の予防の意味に含まれる。脈絡膜における新血管新生に起因する疾患の症状には、視力低下が含まれる。この症状が軽減されたか否かの評価は、視力検査により判定することができる。さらに、蛍光眼底撮影法または光干渉断層撮影法を用いる検査により、脈絡膜新生血管の活性を評価することによって、症状の進行が抑制されたか否かを判定することができる。
【0071】
さらに本発明は、少なくともVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するためのワクチンを提供する。本発明において、ワクチンとは、生物に投与した場合に、該生物においてインビボで免疫応答を誘導することができる組成物を指す。本発明において、インビボで誘導される免疫応答とは、特に、VEGFR−1を発現する細胞を標的とするCTLの誘導を指す。脈絡膜における新血管新生に関与する血管内皮細胞は、細胞表面上にVEGFR−1を発現するため、このワクチンの投与によって誘導されるCTLの標的となり得る。すなわち、本発明のワクチンを投与することで、本発明のペプチドは抗原提示細胞のHLA抗原上に高密度で提示され、これによって、提示されたペプチドとHLA抗原との間に形成された複合体に対して特異的に反応するCTLが誘導され、脈絡膜における血管内皮細胞を攻撃する威力が増大する。あるいは、患者から樹状細胞を抽出し、それらを本発明のペプチドで刺激することにより、本発明のペプチドを自身の細胞表面上に有する抗原提示細胞が得られる。投与により該細胞を患者に戻すと、該患者においてCTLの誘導が起こり、脈絡膜における血管内皮細胞を攻撃する威力が増大し得る。
【0072】
本発明の薬学的組成物およびワクチンは、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患に対して有効である。本発明の薬学的組成物およびワクチンの標的疾患は、脈絡膜の新血管新生に起因する疾患である限り、限定されるものではない。好ましくは、疾患には、滲出性加齢性黄斑変性症、近視性黄斑変性症、網膜色素線条症、中心性滲出性網脈絡膜症、種々の網膜色素上皮症、脈絡膜萎縮症、コロイデレミア、および脈絡膜骨腫などの疾患に関連する新生血管黄斑症が含まれる。特に好ましい例は、滲出性加齢性黄斑変性症である。本発明の薬学的組成物およびワクチンは血管内皮細胞を選択的に攻撃するため、従来の治療法において問題であった、治療後の急激な視力低下および重篤な合併症の発症のリスクが低い。したがって、本発明の薬学的組成物は、症状が重篤な患者のみならず、視力が比較的良好な早期患者に対しても適用することができる。視力が比較的良好な早期の症例では、網膜損傷も軽度であるため、治療後の視力予後が進行症例での従来の治療よりもはるかに良好であると予測される。さらに、本発明の薬学的組成物およびワクチンは、従来の治療法に対して反応しない症例においても有効であることが確認され、そのような症例に対して適用することができる。
【0073】
本発明は、VEGFR−1ペプチドの投与により、脈絡膜における新血管新生が阻害されるという知見に基づいている。したがって本発明は、VEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドの少なくとも1種類ずつを含む、脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物を提供する。さらに、VEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む薬学的組成物を、ワクチンとして使用することができる。したがって本発明はまた、少なくともVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む、脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチンを提供する。阻害の程度は特に限定されず、程度がごくわずかであっても新血管新生が阻害され得る限り、阻害の意味に含まれる。
【0074】
本発明の薬学的組成物およびワクチンは、少なくともVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されず、例えば、複数の種類のVEGFR−1ペプチドおよび/または例えば免疫刺激剤などの任意の他の物質を含んでよい。好ましくは、他のタンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチドが含まれ得る。より好ましくは、VEGFR−2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド(以下、「VEGFR−2ペプチド」と称する)である。本発明の薬学的組成物およびワクチンは、ペプチドに加えて、医薬に通常用いられる担体、賦形剤等を適宜含んでもよい。例えば、本発明の薬学的組成物およびワクチンは、水または他の薬学的に許容される液体と共に調製された滅菌溶液または懸濁液の注射剤形で、非経口的に使用することができる。本発明の薬学的組成物およびワクチンは、薬学的に許容される担体または媒体、より具体的には、滅菌水もしくは生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、媒体、防腐剤、結合剤等と適切に組み合わせて、一般に認められている薬務に必要とされる単位剤形でそれらを混合することによって、製剤化することができる。これらの製剤中の有効成分の量は、指定された範囲内の適切な用量が得られるように含められる。
【0075】
本発明がワクチンである場合には、これは、細胞性免疫が効果的に確立されるようにアジュバントを含んでよく、また新生血管黄斑症のための他の有効成分等を含んでもよい。それらはまた、粒子状製剤になるように作製してもよい。アジュバントとしては、文献(Johnson AG., Clin. Microbiol. Rev., 7:277-289, 1994)に記載されるもの等が利用可能である。他の製剤は、リポソーム調製物、直径数マイクロメートルのビーズに結合させることにより作製された顆粒状の調製物、または脂質結合調製物であってよい。
【0076】
本発明の薬学的組成物およびワクチン中に含まれるVEGFR−1ペプチドの量は、薬学的に有効な量である限り、特に限定されない。例えば、各ペプチドの有効量は0.001 mg〜1000 mg、好ましくは0.001 mg〜1000 mg、およびより好ましくは0.1 mg〜10 mgであってよい。さらに、薬学的組成物およびワクチンがVEGFR−2ペプチドを含む場合には、VEGFR−1ペプチドとVEGFR−2ペプチドの混合比は、両ペプチドが薬学的に有効な量含まれる限り、特に限定されない。混合されるVEGFR−1ペプチドとVEGFR−2ペプチドの量は同じであってもよいし、または混合されるペプチドのいずれか一方の量がもう一方のペプチドより多くてもよい。VEGFR−2がほぼすべての血管内皮細胞の表面上に発現するのに対し、VEGFR−1は、血管内皮細胞の特定の一部の表面上においてのみ発現するため、混合されるVEGFR−2ペプチドの量はVEGFR−1ペプチドの量より多くてよい。
【0077】
本発明の別の態様において、本発明のペプチドはまた、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。塩の好ましい例には、アルカリ金属との塩、金属との塩、有機塩基との塩、有機酸との塩、および無機酸との塩が含まれる。
【0078】
本発明はまた、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するための薬学的組成物またはワクチンの製造における、VEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドの使用を含む。さらに本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物またはワクチンの製造における、VEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドの使用を含む。
【0079】
本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するために対象に投与すべきVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む。加えて、本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するために、VEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドと共に対象に投与すべきVEGFR−2ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む。さらに本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するために、VEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドと共に対象に投与すべきVEGFR−2ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む。加えて、本発明は、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するために、VEGFR−2ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドと共に対象に投与すべきVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0080】
新生血管黄斑症を治療または予防するためのキット、および脈絡膜における新血管新生を阻害するためのキット
本発明は、少なくともVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するためのキットを提供する。本発明はまた、少なくともVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む、脈絡膜における新血管新生を阻害するためのキットを提供する。
【0081】
本発明のキット中に含めるべきVEGFR−1ペプチドは、個々に単独で存在してもよいし、または薬学的に許容される担体もしくは媒体、またはより具体的には、滅菌水もしくは生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、媒体、防腐剤、結合剤等と適切に組み合わせることにより、製剤もしくはワクチンの形態で存在してもよい。それらをワクチンとなるように作製する場合には、細胞性免疫が効果的に確立されるようにアジュバントを含めてもよく、また新生血管黄斑症のための他の有効成分等を含めてもよい。好ましくは、VEGFR−2ペプチドを含めることができる。それらはまた、顆粒製剤になるように作製してもよい。アジュバントとしては、文献(Johnson AG., Clin. Microbiol. Rev., 7:277-289, 1994)に記載されるもの等が利用可能である。他の製剤は、リポソーム調製物、直径数マイクロメートルのビーズに結合させることにより作製された顆粒状の調製物、または脂質結合調製物であってよい。
【0082】
本発明のキットは、医薬を調製する人が適切に調整できるように、上記のもののような薬学的に許容される担体または媒体をさらに含んでもよい。
【0083】
新生血管黄斑症を治療または予防するための方法、および脈絡膜における新血管新生を阻害するための方法
本発明は、少なくともVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを対象に投与する段階を含む、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患を治療および/または予防するための方法をさらに提供する。さらに本発明は、少なくともVEGFR−1ペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを対象に投与する段階を含む、脈絡膜における新血管新生を阻害するための方法を提供する。
【0084】
VEGFR−1ペプチドは、水または他の薬学的に許容される液体と共に調製された滅菌溶液または懸濁液の注射剤形で、非経口的に対象に投与することができる。それらはまた、薬学的に許容される担体または媒体、より具体的には、滅菌水もしくは生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、媒体、防腐剤、結合剤等と適切に組み合わせて、一般に認められている薬務に必要とされる単位剤形でそれらを組み合わせることによって、製剤の形態で対象に投与してもよい。VEGFR−1ペプチドをワクチンとして投与する場合には、細胞性免疫が効果的に確立されるように、それらをアジュバントと共に投与してもよく、またそれらを新生血管黄斑症のための他の有効成分等と共に投与してもよい。アジュバントとしては、文献(Johnson AG., Clin. Microbiol. Rev., 7:277-289, 1994)に記載されるもの等が利用可能である。VEGFR−2ペプチドを共に投与してもよい。
【0085】
当業者は、本発明のペプチドの投与を必要としている患者(対象)の症状に応じて、VEGFR−1の投与方法、用量、および投与期間を適切に計画することができる。本発明の薬学的組成物もしくはワクチンとして、VEGFR−1ペプチドを対象に投与することができ、または各ペプチドを個々に含む薬学的組成物もしくはワクチンとして、それらを対象に投与してもよい。VEGFR−1ペプチドは、全身投与または局所投与のいずれかによって投与することができる。全身投与の例には、経口投与、皮内投与、皮下投与、および静脈内注射が含まれる。局所投与の例には、脈絡膜の近傍への投与が含まれる。
【0086】
VEGFR−1ペプチドの用量は、例えば0.001 mg〜1000 mg、好ましくは0.001 mg〜1000 mg、およびより好ましくは0.1 mg〜10 mgであってよいが、これらに限定されない。さらに、非限定的に、ワクチンは好ましくは数日または数ヵ月に1度、およびより好ましくは週に1度投与する。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されると解釈されるべきではない。
【0088】
実施例1
対象
HLA−A0201−症例1
対象として、光線力学的療法およびアバスチン投与による治療を受けた67歳男性の加齢性黄斑変性症患者を選択した。これは、従来の治療法により寛解に至らなかった症例である。HLA−A座位の検査により、該対象がHLA−A0201を保有することが確認された。
【0089】
HLA−A0201−症例3
対象として、テノン嚢下へのステロイド剤(トリアムシノロン)の注射、光線力学的療法、およびアバスチン投与による治療を受けた76歳男性の加齢性黄斑変性症患者を選択した。これは、従来の治療法により寛解に至らなかった症例である。HLA−A座位の検査により、該対象がHLA−A0201を保有することが確認された。
【0090】
HLA−A2402−症例1
対象として、67歳男性の加齢性黄斑変性症患者を選択した。これは、従来の治療法により寛解に至らなかった症例である。HLA−A座位の検査により、該対象がHLA−A2402を保有することが確認された。
【0091】
ペプチド
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(GMP)等級のHLA−A2402拘束性VEGFR1ペプチド(VEGFR1−A24−1084;SYGVLLWEI;SEQ ID NO:4)、HLA−A2402拘束性VEGFR2ペプチド(VEGFR2−A24−169;RFVPDGNRI;SEQ ID NO:8)、HLA−A0201拘束性VEGFR1ペプチド(VEGFR1−A2−770;TLFWLLLTL;SEQ ID NO:2)、およびHLA−A0201拘束性VEGFR2ペプチド(VEGFR2−A2−773;VIAMFFWLL;SEQ ID NO:12)、HLA−A2402拘束性HIV−Envタンパク質由来ペプチド(HIV−A24;RYLRDQQLL;SEQ ID NO:22)、ならびにHLA−A0201拘束性HIV−Envタンパク質由来ペプチド(HIV−A2;SLYNTYATL;SEQ ID NO:23)は、American Peptide Company Inc.(Sunnyvale, CA)が合成し、その品質を解析した。
【0092】
投与方法
GMP等級の合成ペプチドであるVEGFR−1ペプチド(TLFWLLLTL;SEQ ID NO:2)およびVEGFR−2ペプチド(VIAMFFWLL;SEQ ID NO:12)を東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターから入手した。VEGFR−1ペプチドおよびVEGFR−2ペプチドそれぞれ1ミリグラムを1 mLの不完全フロイントアジュバント(MONTANIDEISA51VG、SEPPIC, France)と混合し、それらを患者の腋窩に皮下投与した。投与は週に1度行った。
【0093】
PBMC
Ficoll−Plaque(Pharmacia)溶液により、末梢血単核細胞(PBMC)を患者(HLA−A2402陽性またはHLA−A0201陽性)から単離した。
【0094】
IFN−γ ELISPOTアッセイ
治療前および治療コースの毎終了時に、PBMCを採取し、直ちに凍結した。免疫モニタリングのため、各患者に由来するすべての凍結PBMCを同時に融解し、10 μg/mlの同族ペプチドおよび20 IU/mLのインターロイキン−2(Chiron、Emeryville, CA)で、5% CO条件にて37℃で2週間刺激した。Dynal CD4 positive isolation kit(Invitrogen、Carlsbad, CA)によりCD4細胞を枯渇させた後、細胞をインターフェロン−γ(IFN−γ)酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイに供した。IFN−γ ELISPOTアッセイは、製造業者の手順(BD Biosciences、San Jose, CA)に従って行った。簡潔に説明すると、HLA−A2402陽性Bリンパ芽球TISI細胞(IHWG Cell and Gene Bank、Seattle, WA)またはHLA−A0201陽性Bリンパ芽球T2細胞(ATCC、Tokyo, Japan)を20 μg/mlの同族ペプチドまたはHIV−Envペプチドと共に一晩インキュベートした。細胞上のHLAに結合しなかった残存ペプチドを洗浄した後、ペプチドをパルスした各細胞(2×10個細胞/ウェル)を用いて、96ウェルプレート(Millipore、Bedford, MA)上の調製済みのCD4細胞(1×10個細胞/ウェル)を5% CO条件にて37℃で一晩刺激した。ImmunoSpot S4解析装置およびImmunoSpot画像解析ソフトウェアバージョン5.0(Cellular Technology Ltd.、Cleveland, OH)で、プレートをスキャンし、解析した。同族ペプチドで刺激した場合のスポット数から、HIV−Envペプチドで刺激した場合のスポット数を減算することにより、同族ペプチド特異的スポット数を算出した。ELISPOTアッセイはすべて3連のウェルで実施した。過剰なスポットが検出された場合には、クラスター化のために正確なスポットカウントを算出することはできず、そのようなウェルは飽和していると定義した。
【0095】
フローサイトメトリー解析
ペプチド特異的T細胞受容体を検出するため、ELISPOTアッセイ用に調製した5×10個のCD4細胞をフィコエリトリン(PE)結合HLA−A2402/VEGFR1 デキストラマーまたはHLA−A0201/VEGFR1 デキストラマー(DAKO Japan、Tokyo, Japan)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合抗ヒトCD8 mAb(RPA−T8、BD Biosciences、San Jose, CA)、およびアロフィコシアニン(APC)結合抗ヒトCD3 mAb(UCHT1, BD Biosciences、San Jose, CA)で染色し、次にFACSCanto II(BD Biosciences、San Jose, CA)を用いて解析した。HLA−A2402/HIV−Env デキストラマーまたはHLA−A0201/HIV−Env デキストラマー(DAKO Japan、Tokyo, Japan)を陰性対照として使用した。7−ADD(Sigma−Aldrich Japan、Tokyo, Japan)による染色に基づいて、解析から死細胞を排除した。
【0096】
結果
HLA−A0201−症例1
光干渉断層撮影法、蛍光眼底画像法、および眼底撮影法を用いて、加齢性黄斑変性症の進行段階を解析した。VEGFR−1ペプチドおよびVEGFR−2ペプチドの投与開始前には、光干渉断層撮影法の断層画像において色素上皮の大きな剥離が観察された(図1A)。色素上皮の剥離は、眼底写真でも明らかに観察された(図1B)。さらに、蛍光眼底画像法の画像において大量の漏出が観察された(図1D)。
【0097】
VEGFR−1ペプチドおよびVEGFR−2ペプチドの投与開始から5ヵ月後、光干渉断層撮影法の断層画像において、色素上皮の剥離の有意な減少が認められた(図1D)。色素上皮の剥離の改善は、眼底写真でも認められた(図1E)。さらに、蛍光眼底写真において漏出の軽減が確認された(図1F)。歪みなどの自覚症状が大幅に改善したことも報告された。右目の視力はわずかに改善した(Rv=(0.9)――> Rv=(1.2))。これらの結果から、VEGFR−1ペプチドおよびVEGFR−2ペプチドの投与が加齢性黄斑変性症の改善効果をもたらすことが確認された。安全性の問題を示唆する問題は生じなかった。
【0098】
HLA−A0201−症例3
VEGFR−1ペプチドおよびVEGFR−2ペプチドの投与開始前には、光干渉断層撮影法の断層画像において、新生血管からの漏出および網膜における浮腫に起因する網膜の破壊が観察された(図2A)。VEGFR−1ペプチドおよびVEGFR−2ペプチドの投与開始から1ヵ月後、投与開始前と比較して、網膜の浮腫が軽減したことが明らかに認められた(図2B)。さらに、線維化して機能低下した新生血管膜と思われるものが観察された(図2B)。さらに、歪みなどの自覚症状が顕著に改善したことも報告された。これらの結果から、この症例においても同様に、VEGFR−1ペプチドおよびVEGFR−2ペプチドの投与が加齢性黄斑変性症の症状の改善効果をもたらすことが確認された。安全性の問題を示唆する問題は生じなかった。
【0099】
HLA−A2402−症例1
VEGFR−1ペプチドおよびVEGFR−2ペプチドの投与開始前には、眼底写真において明らかな網膜下出血が観察された(図3、左上パネル)。投与開始から3ヵ月後、網膜下出血は投与前と比較して明らかに緩和した(図3上部中央および右上パネル)。さらに、黄斑部の構造には影響がなく(図3、下部パネル)、視力は改善した。
【0100】
モニタリング解析
治療を受けた患者のモニタリングとして、IFN−γ ELISPOTアッセイおよび/またはフローサイトメトリー解析を行った。
【0101】
(表1)モニタリング解析の概要

NT:未検
【0102】
HLA−A0201−症例1
特に治療過程後に、IFN−γ ELISPOTアッセイにおいて、VEGFR1−A2−770ペプチドをパルスしたT2細胞で刺激した場合に、HIV−EnvペプチドをパルスしたT2細胞で刺激した場合と比較して有意により多数のスポットが観察された(表1および図4)。一方、VEGFR1−A2−770ペプチドおよびVEGFR2−A2−773ペプチドの両方の投与が患者において明らかな有効性を示したにも関わらず、VEGFR2−A2−773ペプチドによる刺激によって、特異的なIFN−γ産生は認められなかった(表1および図5)。結果として、これにより、VEGFR1−A2−770ペプチドが単独で機能して、本症例を改善することが示された。
【0103】
HLA−A0201−症例3
IFN−γ ELISPOTアッセイにおいて、VEGFR1−A2−770ペプチドをパルスしたT2細胞で刺激した場合に、HIV−EnvペプチドをパルスしたT2細胞で刺激した場合と比較して有意により多数のスポットが観察された(表1および図6)。一貫して、HLA−A0201/VEGFR1−A2−770 デキストラマー+ CD8+細胞の有意な集団が、フローサイトメトリー解析によって検出された(図6下部パネル)。一方、VEGFR1−A2−770ペプチドおよびVEGFR2−A2−773ペプチドの両方の投与が患者において明らかな有効性を示したにも関わらず、VEGFR2−A2−773ペプチドによる刺激によって、特異的なIFN−γ産生は認められなかった(表1および図7)。結果として、これにより、VEGFR1−A2−770ペプチドが単独で機能して、本症例を改善することが示された。
【0104】
HLA−A2402−症例1
特に治療コース後に、IFN−γ ELISPOTアッセイにおいて、VEGFR1−A24−1084ペプチドをパルスしたTISI細胞で刺激した場合に、HIV−EnvペプチドをパルスしたTISI細胞で刺激した場合と比較して有意により多数のスポットが観察された(表1および図8)。一方、VEGFR1−A24−1084ペプチドおよびVEGFR2−A24−169ペプチドの両方の投与が患者において明らかな有効性を示したにも関わらず、VEGFR2−A24−169ペプチドによる刺激によって、特異的なIFN−γ産生は認められなかった(表1および図9)。結果として、これにより、VEGFR1−A24−1084ペプチドが単独で機能して、本症例を改善することが示された。
【0105】
治療後の視力変化
投与群の視力は、有意差を伴って改善した(p=0.015)(図10)。
【0106】
産業上の利用可能性
本発明は、脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)の治療および/または予防のための薬学的組成物/ワクチンを提供する。従来、新生血管黄斑症の治療法として、レーザー療法、光線力学的療法、手術療法、薬物療法等が行われてきた。しかしながら、レーザー療法は中心視力を低下させる可能性がある。視力良好な症例において、光線力学的療法後に急激に視力低下をきたす例が存在する。手術療法では、外科的侵襲に伴う術後合併症のリスクがある。薬物療法では、眼内に注射するため、眼内炎および網膜剥離などの重篤な合併症のリスクがある。すなわち、従来の治療法は、治療に伴う有害作用および合併症のために、視力低下のリスクが高い。そのため、視力が比較的良好な早期症例を治療することは困難であった。投与した症例では安全性の問題が生じなかったため、本発明の薬学的組成物/ワクチンが、新生血管黄斑症のための低リスクでかつ安全性の高い治療薬および治療法を提供することが期待できる。さらに、本発明の薬学的組成物/ワクチンは、従来の治療法に反応しない症例に対しても有効であることが示されるため、それらは従来の治療法が効果を示さなかった症例に対する治療薬および治療法を提供することが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)VEGF受容体1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチドであるペプチドのうちの少なくとも1種類、またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するための薬学的組成物。
【請求項2】
上記の(a)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、請求項1記載の薬学的組成物:
(i)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;
(ii)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド。
【請求項3】
上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、請求項2記載の薬学的組成物:
(1)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド。
【請求項4】
(b)VEGF受容体2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチドであるペプチドのうちの少なくとも1種類をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
上記の(b)のペプチドが以下の(i)および(ii)を含む、請求項4記載の薬学的組成物:
(i)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド。
【請求項6】
上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、請求項5記載の薬学的組成物:
(1)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド。
【請求項7】
脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)が、滲出性加齢性黄斑変性症、近視性黄斑変性症、網膜色素線条症、中心性滲出性網脈絡膜症、種々の網膜色素上皮症、脈絡膜萎縮症、コロイデレミア、および脈絡膜骨腫より選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項8】
HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に対して投与される、請求項1〜7のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
(a)VEGF受容体1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類、またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)を治療および/または予防するためのワクチン。
【請求項10】
上記の(a)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、請求項9記載のワクチン:
(i)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド。
【請求項11】
上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、請求項10記載のワクチン:
(1)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド。
【請求項12】
(b)VEGF受容体2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類をさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項13】
上記の(b)のペプチドが以下の(i)および(ii)を含む、請求項12記載のワクチン:
(i)SEQ ID NO:5〜17のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド。
【請求項14】
上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、請求項13記載のワクチン:
(1)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド。
【請求項15】
脈絡膜における新血管新生に起因する疾患(新生血管黄斑症)が、滲出性加齢性黄斑変性症、近視性黄斑変性症、網膜色素線条症、中心性滲出性網脈絡膜症、種々の網膜色素上皮症、脈絡膜萎縮症、コロイデレミア、および脈絡膜骨腫より選択される、請求項9〜14のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項16】
HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に対して投与される、請求項9〜15のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項17】
(a)VEGF受容体1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類、またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するための薬学的組成物。
【請求項18】
上記の(a)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、請求項17記載の薬学的組成物:
(i)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド。
【請求項19】
上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、請求項18記載の薬学的組成物:
(1)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド。
【請求項20】
(b)VEGF受容体2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類をさらに含む、請求項17〜19のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項21】
上記の(b)のペプチドが以下の(i)および(ii)を含む、請求項20記載の薬学的組成物:
(i)SEQ ID NO:5〜17のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド。
【請求項22】
上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、請求項21記載の薬学的組成物:
(1)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド。
【請求項23】
HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に対して投与される、請求項15〜19のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項24】
(a)VEGF受容体1タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類、またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、ヒト脈絡膜における新血管新生を阻害するためのワクチン。
【請求項25】
上記の(a)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、請求項24記載のワクチン:
(i)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:1〜4からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド。
【請求項26】
上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、請求項25記載のワクチン:
(1)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:1〜3のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:4のアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド。
【請求項27】
(b)VEGF受容体2タンパク質に由来するアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有するペプチド、であるペプチドのうちの少なくとも1種類をさらに含む、請求項24〜26のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項28】
上記の(b)のペプチドが以下の(i)および(ii)のペプチドを含む、請求項27記載のワクチン:
(i)SEQ ID NO:5〜17のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド;および
(ii)SEQ ID NO:5〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つにおいて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのペプチド。
【請求項29】
上記の(ii)のペプチドが以下の(1)〜(6)のペプチドのうちのいずれか1つである、請求項28記載のワクチン:
(1)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであるペプチド;
(2)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(3)SEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンであり、かつSEQ ID NO:11〜17のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンであるペプチド;
(4)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであるペプチド;
(5)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド;および
(6)SEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンであり、かつSEQ ID NO:5〜10のいずれか1つのアミノ酸配列のC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンであるペプチド。
【請求項30】
HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に対して投与される、請求項24〜29のいずれか一項記載のワクチン。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−529423(P2012−529423A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552249(P2011−552249)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/JP2010/003871
【国際公開番号】WO2010/143435
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】