説明

脊柱管狭窄症治療剤

【構成】本発明は、一酸化窒素合成酵素阻害剤を有効成分として含有する脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤に関する。より好ましくは、一般式(I)
【化1】


(式中、すべての記号は明細書中と同じ意味を表わす。)
で表わされる縮合ピペリジン化合物、その非毒性塩、またはその水和物を有効成分とする脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤に関する。
【効果】ラット馬尾神経圧迫歩行障害モデルにおいて一酸化窒素合成酵素阻害剤は有効性を示した。すなわち、一酸化窒素合成酵素阻害剤は脊柱管狭窄症治療効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、脊柱管狭窄症の治療剤に関する。
【0002】
さらに詳しくは、一酸化窒素合成酵素(NOSと略記する。)阻害剤を有効成分として含有する脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤に関する。
【0003】
【発明の背景】
頚椎から仙椎に至るそれぞれの椎体と、棘突起で囲まれた内部スペースを脊柱管という。脊柱管狭窄症は、脊柱管を構成する脊椎や黄色靱帯の肥大変性や、椎間板の突出等で脊柱管が狭められ、中に納められている神経根や馬尾などの神経組織が圧迫を受けて各種症状を呈する状態である。脊柱管狭窄症は、脊柱管の狭小部位によって、広範脊柱管狭窄症、胸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症等に分類される。その症状としては、神経圧迫による腰痛や下肢の痛み、しびれ等がある。特に馬尾神経が傷害されると、歩行中に腰痛、下肢の痛み、しびれ、脱力感がひどくなり、この症状を間欠跛行という。
【0004】
一方、免疫担当細胞の一つであるマクロファージが多量の硝酸塩を産生するという発見から、一酸化窒素(NO)が生体内で生成されるということが発見された[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 7738-7742 (1985) ; J. Immunol., 138, 550-565 (1987)]。また、循環器系分野では血管内皮細胞から放出される弛緩作用を有する物質が発見され、血管内皮由来弛緩因子(EDRF)と名付けられた。さらに、このEDRFの本体がNOであることがわかった[Nature, 327, 524-526 (1987)]。
【0005】
このように生体内で産生されることが明らかになったNOは、L−アルギニンを基質として一酸化窒素合成酵素(NOS)により以下の経路によって生成される。
【0006】
【化4】

【0007】
NOSには少なくとも非誘導型(血管内皮型および神経型)および誘導型のアイソザイムが存在する。血管内皮型NOSは、主に血管内皮細胞に存在し、細胞内カルシウム濃度により活性が制御されている。神経型NOSは、中枢神経細胞、末梢神経細胞、または膵島β細胞、消化管神経、副腎髄質、腎臓緻密斑等に存在し、血管内皮型NOSと同様に細胞内カルシウム濃度により活性が制御されている。
【0008】
血管内皮型NOSおよび神経型NOS(constitutive NOS、c-NOSと省略される)は細胞内に恒常的に存在し、生理的変化による酵素量の変化はほとんど見られない。誘導型NOS(inducible NOS、i-NOSと省略される)は、肝実質細胞、好中球、マクロファージ、平滑筋、線維芽細胞、腎メサンギウム細胞、消化管上皮、膵島β細胞、血管平滑筋細胞またはグリア細胞等に存在する。これは通常細胞内で認められず、エンドトキシンや各種サイトカイン等による刺激により誘導される。
【0009】
NOSにより生成されるNOの作用は多彩であり、例えば、血管弛緩作用、血小板凝集抑制作用、粘着抑制、白血球粘着・遊走抑制、交感神経活動抑制、エンドトキシンショック、エンドトキシン・サイトカインによる低血圧、神経細胞間の情報伝達物質としての作用、虚血性脳細胞障害、抗腫瘍、殺菌作用、自己免疫疾患、インスリン依存性糖尿病、関節炎、移植後組織障害、拒絶反応等が挙げられる。
【0010】
生体内でのNOの生理活性を解析する上で、NOS阻害剤は有用であり、またショックや虚血性疾患等の治療薬として用いられる可能性があることより、近年種々のNOS阻害剤の開発が進められている。
【0011】
【従来の技術】
式(I)で示される化合物は、NOS阻害剤として報告されている(特許文献1参照。)。
【0012】
【特許文献1】
欧州特許第870763号明細書
【0013】
【発明の解決しようとする課題】
脊柱管狭窄症の治療法は、重症の場合、手術的治療が選択されるが、薬物療法や、腹筋、背筋などを強化する体操療法、ホットパックなどの温熱療法、除痛効果を目的とした鍼治療、コルセット等を装着する装具療法などの保存的治療が基本である。しかし、脊柱管狭窄症の多彩な症状を満足に改善する治療方法はない。
【0014】
【課題を解決するための手段】
間欠跛行等の脊柱管狭窄症の症状の発現機序として、神経の機械的圧迫だけでなく、神経組織内での血流障害による低酸素状態の関与が考えられている。すなわち神経組織内での浮腫、代謝障害などの相乗効果によって症状を発現することが考えられる。現時点で脊柱管狭窄症治療薬として認められているのは、神経組織内での循環改善を目的とした経口プロスタグランジンE1誘導体製剤のみである。そこで、本発明者らは神経に直接作用し神経細胞死、神経炎症等を改善する薬剤が脊柱管狭窄症の治療剤になりうるのではないかと考えた。
【0015】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、NOS阻害剤が、脊柱管狭窄症の症状を改善することを見出し本発明を完成した。NOS阻害剤が脊柱管狭窄症に有効であることはこれまでに報告されておらず、本発明者らは脊柱管狭窄症のモデルとして知られている馬尾神経圧迫歩行障害モデル(J.Neurosci.Methods 104(2)191-198,2002)を用いてNOS阻害剤が脊柱管狭窄症において有効であることを初めて確認した。
【0016】
【発明の開示】
本発明は、一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤を有効成分とする脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤に関する。
【0017】
本発明に用いられるNOS阻害剤としては、一酸化窒素合成酵素阻害剤であれば何でもよく、好ましくは誘導型および神経型一酸化窒素合成酵素の阻害作用を有する全ての物質が含まれる。また、現在までに知られているNOS阻害剤だけでなく今後見出されるNOS阻害剤をすべて包含する。さらに、NOの合成を阻害する作用を有する化合物であれば何でもよく、例えば、間接的にNOSを阻害するコファクター(Cofactor)競合阻害剤等も含まれる。NOS阻害剤としては、Nω−モノメチル−L−アルギニン(L−NMMA;WO91/04024号)、Nω−ニトロ−L−アルギニン(L−NNA)、Nω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME)、Nω−アミノ−L−アルギニン(L−NAA)、Nω−シクロプロピル−L−アルギニン(L−CPA)、Nω−アリル−L−アルギニン(L−ALA)、Nω−ニトロ−L−アルギニン−p−ニトロアニリド、Nω,Nω−ジメチルアルギニン、2−イミノビオチン、S−メチル−L−チオシトルリン、S−エチル−L−チオシトルリン、L−チオシトルリン、L−ホモチオシトルリン、2−イミノピペリジン、2−イミノホモピペリジン、S−メチルイソチオウレア、S−エチルイソチオウレア(EIT)、S−イソプロピルイソチオウレア、S,S’−(1,3−フェニレンビス(1,2−エタンジイル))ビスイソチオウレア、2−アミノチアゾリン、2−アミノチアゾ−ル、N−(3−(アミノメチル)ベンジル)−アセタミジン、Nδ−(4,5−ジヒドロチアゾール−2−イル)オルニチン、Nω−イミノエチル−オルニチン(L−NIO)、L−N−(1−イミノエチル)−リシン、2−アミノ−5,6−ジヒドロ−6−メチル−4H−1,3−チアジン(AMT)、(+)−トランス−3−イミノ−5−メチル−7−クロロ−2−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン(ONO−1714;EP870763号)、N−[3−(アミノメチル)ベンジル]アセトアミジン(1400W;WO96/19440号)、2−フルオロ−N−[3−(アミノメチル)フェニル]アセトアミジン(WO96/19440号)、アミノグアニジン(ピマゲジン;EP448228号)、A−2492、CR−3294、S−[2−(1−イミノエチルアミノ)エチル]−L−ホモシステイン(GW−273629;WO98/30537号)、PPA−250、7−ニトロインダゾール(7−NI)、6−ニトロインダゾール、インダゾール、1−(2−トリフルオロメチルフェニル)イミダゾール(TRIM)、2−(2−フルオロビフェニル−4−イル)プロピオン酸 4−ニトロオキシブチルエステル(ニトロフルルビプロフェン(nitroflurbiprofen)、HCT−1026;EP670825号)、N−[4−[4−[6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2(S)−イルカルボニル]ピペラジン−1−イル]−チオフェン−2−カルボキサミジン(BN−80933;WO98/42696号)、A−84643、5−(7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(HMN−1180)、(4aS,8aR)−4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−4H−3,1−ベンゾチアジン−2−アミン(L−770425;WO96/14842号)、N−[4−[2−(ベンジルアミノカルボニル)エチル]フェニル]チオフェン−2−カルボキサミジン(ARL−16556;WO95/05363号)、N−[4−[2−(3−クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン−2−カルボキサミジン(ARL−17477;WO95/05363号)、N−(1−イミノエチル)−N−(1H−テトラゾ−ル−5−イル)−L−リジンアミド(SC−51;WO96/15120号)、SD−3651、GW−289013、BN−52296、ANG−500、Nδ−(1−イミノエチル)−α−メチルオルニチン(WO95/11014号)、2−[4−[2−(7−メチルイミダゾ−[1,2−a]ピリジン−2−イル)エチル]フェニルアミノ]−2−チアゾリン(WO96/30350号)、2−イミノ−4,6−ジメチルピペリジン(WO96/35677号)、(4S,4aS,7aS)−4−メチルパーヒドロ−1−ピリジン−2−イミン(WO96/14844号)、6−[4−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]ピリジン−2−イルアミン(WO97/36871号)、1−アミノ−3−(2−フルオロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(WO97/38977号)、5−クロロ−3−(モルホリン−4−イルメチル)ベンゾキサゾール−2−(3H)−オン、その非毒性塩、またはその水和物等が挙げられる。さらに、EP870763号、WO95/11014号、WO96/15120号、WO96/35677号、WO95/11231号、WO96/3315号、WO95/24382号、WO96/14844号、WO96/14842号、WO96/18616号、WO96/18617号、EP448228号、WO96/30350号、WO96/06076号、WO97/36871号、WO95/05363号、WO97/38977号、WO01/46170号、WO01/46171号、WO02/20511号、WO98/42696号、WO91/04024号、WO98/30537号、WO96/19440号、EP670825号、WO98/42696号、WO98/58934号、特開平10−265450号の特許出願に記載されたNOS阻害作用を有する化合物等も有用であり、これら化合物の本発明用途への適用も、本発明に含まれる。また、コファクター(Cofactor)競合阻害剤である、ジフェニレンヨードニウム(DPI)、ジ−2−チエニルヨードニウム(DTI)、カルシニューリン、N−(4−アミノブチル)−5−クロロ−2−ナフタレンスルホンアミド、トリフルオペラジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン等も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
好ましいNOS阻害剤としては、一般式(I)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、−R−は結合位置の炭素原子と一緒になってピペリジン環のdまたはeに縮合しているか、または4位にスピロ結合している3または4員炭素環を表わし、
はC1〜6アルキルを表わし、
はC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニルまたはハロゲン原子を表わし、
は水素原子、アミノ−C1〜4アルキル、アミノ−C1〜4アルキルで置換されていてもよい炭素環−C1〜4アルキルを表わし、
iは0または1〜3の整数を表わし、
nは0または1〜3の整数を表わす。
ただし、複数のRまたはRは互いに同じでも異なっていてもよい。)
で表わされる縮合ピペリジン化合物、その非毒性塩、またはその水和物が挙げられる。
【0021】
より好ましいNOS阻害剤としては、一般式(IA)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中の記号は前記と同じ意味を表わす。)
で表わされる縮合ピペリジン化合物、その非毒性塩、またはその水和物が挙げられる。
【0024】
特に好ましいNOS阻害剤としては、式(Ia)
【0025】
【化7】

【0026】
で表わされる縮合ピペリジン化合物、その非毒性塩、またはその水和物が挙げられる。
【0027】
塩は、毒性のない、水溶性のものが好ましい。適当な塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる化合物は、以下の酸付加塩の形で投与しても良い。酸付加塩は、毒性のない水溶性のものが好ましい。適当な酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩、または酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩のような有機酸塩が挙げられる。好ましくは塩酸塩である。
【0029】
本発明化合物またはその塩は、公知の方法により、水和物に変換してもよい。
【0030】
【本発明に用いられる化合物の製造方法】
一般式(I)、(IA)および式(Ia)で表わされる化合物、その非毒性塩、またはその水和物は、EP870763号に記載されている方法により製造することができる。さらに、本発明に用いられる化合物は、WO95/11014号、WO96/15120号、WO96/35677号、WO95/11231号、WO96/3315号、WO95/24382号、WO96/14844号、WO96/14842号、WO96/18616号、WO96/18617号、EP448228号、WO96/30350号、WO96/06076号、WO97/36871号、WO95/05363号、WO97/38977号、WO01/46170号、WO01/46171号、WO02/20511号、WO98/42696号、WO91/04024号、WO98/30537号、WO96/19440号、EP670825号、WO98/42696号、WO98/58934号、特開平10−265450号に記載されている方法により製造することができる。
【0031】
【本発明に用いられる化合物の薬理活性】
本発明に用いられる化合物は、後述するように、脊柱管狭窄症のモデルとして知られている馬尾神経圧迫歩行障害モデルにおいて有効であった。このことから、一酸化窒素合成阻害活性を有する化合物は、脊柱管狭窄症に有効であると考えられる。
【0032】
【毒性】
本発明に用いられる化合物の毒性は十分に低いものであり、医薬品として使用するために十分安全であることが確認された。例えば、マウスを用いた静脈内投与では、式(Ia)で示される化合物の最大耐用量(Maximum Tolerated Dose)は、30mg/kgであった。
【0033】
【医薬品への適用】
本発明に用いられる化合物またはそれらの非毒性塩は、
1)該化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)該化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、
および/または
3)該化合物の副作用の軽減
のために他の薬剤と組み合わせて、併用剤として投与してもよい。
【0034】
本発明に用いられる化合物と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明に用いられる化合物を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明に用いられる化合物を後に投与してもかまわず、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0035】
上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明に用いられる化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0036】
本発明に用いられる化合物の脊柱管狭窄症に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、プロスタグランジン類、プロスタグランジン誘導体製剤、非ステロイド系抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug:NSAID)、ビタミン剤、筋弛緩剤、抗うつ剤、Poly ADP-ribose polymerase(PARP)阻害剤、FK-506、興奮性アミノ酸受容体拮抗剤(NMDA受容体拮抗剤、AMPA受容体拮抗剤など)、ラジカルスカベンジャー、アストロサイト機能改善剤、IL-8受容体拮抗剤等が挙げられる。
【0037】
プロスタグランジン類(以下、PGと略記する。)としては、PG受容体アゴニスト、PG受容体アンタゴニスト等が挙げられる。 PG受容体としては、PGE受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)、PGD受容体(DP、CRTH2)、PGF受容体(FP)、PGI受容体(IP)、TX受容体(TP)等が挙げられる。また、プロスタグランジン誘導体製剤としては、リマプロスト、ベラプロスト等が挙げられる。
【0038】
非ステロイド系抗炎症薬としては、例えば、サザピリン、サリチル酸ナトリウム、アスピリン、アスピリン・ダイアルミネート配合、ジフルニサル、インドメタシン、スプロフェン、ウフェナマート、ジメチルイソプロピルアズレン、ブフェキサマク、フェルビナク、ジクロフェナク、トルメチンナトリウム、クリノリル、フェンブフェン、ナプメトン、プログルメタシン、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、マレイン酸プログルメタシン、アンフェナクナトリウム、モフェゾラク、エトドラク、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、ケトプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、チアプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、メフェナム酸、メフェナム酸アルミニウム、トルフェナム酸、フロクタフェニン、ケトフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、ピロキシカム、テノキシカム、アンピロキシカム、ナパゲルン軟膏、エピリゾール、塩酸チアラミド、塩酸チノリジン、エモルファゾン、スルピリン、ミグレニン、サリドン、セデスG、アミピロ−N、ソルボン、ピリン系感冒薬、アセトアミノフェン、フェナセチン、メシル酸ジメトチアジン、シメトリド配合剤、非ピリン系感冒薬等が挙げられる。
【0039】
筋弛緩薬としては、例えば、塩酸トリペリゾン、クロルゾキサゾン、クロルメザノン、メトカルバモール、フェンプロバメート、メシル酸プリジノール、カルバミン酸クロフェネシン、バクロフェン、塩酸エペリゾン、アフロクァロン、塩酸チザニジン、塩化アルクロニウム、塩化スキサメトニウム、塩化ツボクラリン、ダントロレンナトリウム、臭化パンクロニウム、臭化ベクロニウム等が挙げられる。
【0040】
三環系抗うつ剤としては、塩酸イミプラミン、塩酸デシプラミン、塩酸クロミプラミン、マレイン酸トリミプラミン、塩酸アミトリプチリン、塩酸ノルトリプチリン、塩酸ロフェプラミン、アモキサピン、塩酸ドスレピン等が挙げられる。
【0041】
四環式抗うつ薬としては、マプロチリン、ミアンセリンなどが挙げられる。
【0042】
本発明に用いられる化合物と他の薬剤の重量比は特に限定されない。
【0043】
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。
【0044】
また、本発明に用いられる化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0045】
本発明に用いられるNOS阻害化合物、その非毒性塩またはその水和物は、脊柱管狭窄症の治療および/または予防に有用である。
【0046】
本発明に用いられる化合物、または本発明に用いられる化合物と他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0047】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、1回につき、0.1ngから100mgの範囲で、1日1回から数回経口投与されるか、または成人一人あたり、1回につき、0.1ngから100mgの範囲で、1日1回から数回非経口投与(好ましくは、静脈内投与)されるか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0048】
もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0049】
本発明に用いられる化合物、または本発明に用いられる化合物と他の薬剤の併用剤を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤および、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤、吸入剤等として用いられる。
【0050】
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。また錠剤には舌下錠、口腔内貼付錠、口腔内速崩壊錠などが含まれる。
【0051】
このような内服用固形剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0052】
舌下錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L-ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、膨潤剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム等)、膨潤補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。口腔内貼付錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L-ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、付着剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム等)、付着補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0053】
口腔内速崩壊錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質をそのまま、あるいは原末もしくは造粒原末粒子に適当なコーティング剤(エチルセルロース、ヒドキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル酸メタクリル酸コポリマー等)、可塑剤(ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル等)を用いて被覆を施した活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L-ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、分散補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0054】
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤・乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0055】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、点眼剤、および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により製造、調製される。
【0056】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に研和、または溶融させて製造、調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、
高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0057】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて製造、調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0058】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融または乳化させて製造、調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(プロピレングリコール、、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0059】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0060】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0061】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて製造、調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0062】
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第 2,868,691 号および同第3,095,355 号に詳しく記載されている。また、エアゾル剤としても構わない。
【0063】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造、調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0064】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤又は吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させて使用する形態であってもよい。
【0065】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。
【0066】
例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0067】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(デンプン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0068】
吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(アトマイザー、ネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0069】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ラット馬尾神経圧迫歩行障害モデルを用いた本発明化合物の改善効果
<モデル作製方法>
ラット馬尾神経圧迫歩行障害モデルは、竹信らの方法(J.Neurosci.Methods 104(2)191-198,2002)らにより作製した。すなわち、ラットをペントバルビタールナトリウムにより麻酔し、背部を除毛後、腹臥位に固定した。グルコン酸クロルヘキシジン(5%ヒビテン液;住友製薬)による背部の消毒後、腰部を正中に沿って切開し、脊椎を露出させた。第5腰椎棘突起の切除後、ミニドリルにてあけた椎弓上の小穴より、第4腰椎および第6腰椎脊柱管内に1×4×1.25 mm(高さ×長さ×幅)のシリコンラバーを挿入した。感染症の回避を目的として、ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム明治;明治製菓)を開創部に滴下および大腿部に筋注した。開創部の筋肉および皮膚を手術糸で縫合し、ヨードチンキを縫合部に塗布した。シャム群の動物も上記の方法に従って作製したが、シリコンラバーの挿入は行わなかった。
<歩行能力試験>
歩行能力試験は、トレッドミルを用いて評価した。ラットを走行ベルト上に置き、グリッドに通電(0.04 mA〜4 mA)させた条件下で3分間以上環境に順応させた後、速度10 m/minから歩行を開始させ、その後3分ごとに5 m/minずつ速度を上昇させた。歩行を停止し、走行ベルトの手前に装備された電気刺激用グリッドに乗り移ったラットには、電気刺激(0.04 mA〜4 mA)を加えた。動物が歩行を開始してから、歩行不可能、すなわち刺激(音、接触、電気)を与えて歩行を促しても歩行しなくなるまでの距離を、機器に内蔵された距離計で測定した。手術前に歩行機能試験を1日1回、3日間連続で実施して歩行トレーニングを行なった。 術後、誘導型NOS阻害剤である(+)−トランス−3−イミノ−5−メチル−7−クロロ−2−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン・一塩酸塩(化合物A:式(Ia)の化合物)またはN−[3−(アミノメチル)ベンジル]アセトアミジン(化合物B)、神経型NOS阻害剤である2−フルオロ−N−[3−(アミノメチル)フェニル]アセトアミジン・2臭化水素酸塩(化合物C)を投与した。また、陰性対照として生理食塩水または蒸留水を投与した。結果は陰性対照に対してダネット多重比較(Dunnett's multiple comparison)にて検定した(*p<0.05)。
<実験結果>
馬尾神経圧迫歩行障害モデルは脊柱管狭窄症のモデルとして報告されている。本発明に用いられる化合物(化合物A、BまたはC)は、馬尾神経圧迫歩行障害ラットの歩行障害を改善した。すなわち、本発明に用いられる一酸化窒素合成酵素阻害作用を有する化合物は脊柱管狭窄症に有効であることが示唆された。結果を図1および2に示す。
【製剤例】
製剤例1:錠剤の製造
以下の化合物を常法により混合し、打錠して一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤100錠を得た。
・(+)−トランス−3−イミノ−5−メチル−7−クロロ−2−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン・一塩酸塩……………………………………………………1g
・繊維素グリコール酸カルシウム(崩壊剤)…………………………200mg
・ステアリン酸マグネシウム (潤滑剤)…………………………100mg
・微結晶セルロース………………………………………………………18.7g
製剤例2:注射剤の製造
(+)−トランス−3−イミノ−5−メチル−7−クロロ−2−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン・一塩酸塩(100mg)を蒸留水(100ml)に溶解し、50mlのアンプルに10mlづつ注入し、常法により凍結乾燥し、有効成分を10mg含有するアンプル10本を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ラット馬尾神経圧迫歩行障害モデルにおける化合物A投与による症状改善を表わす。
【図2】 ラット馬尾神経圧迫歩行障害モデルにおける化合物BおよびC投与による症状改善を表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素合成酵素阻害剤を有効成分とする脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤。
【請求項2】
一酸化窒素合成酵素阻害剤が、誘導型一酸化窒素合成酵素阻害作用を有する化合物である請求項1記載の脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤。
【請求項3】
一酸化窒素合成酵素阻害剤が、神経型一酸化窒素合成酵素阻害作用を有する化合物である請求項1記載の脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤。
【請求項4】
一酸化窒素合成酵素阻害剤が、Nω−モノメチル−L−アルギニン、Nω−ニトロ−L−アルギニン、Nω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル、Nω−アミノ−L−アルギニン、Nω−シクロプロピル−L−アルギニン、Nω−アリル−L−アルギニン、Nω−ニトロ−L−アルギニン−p−ニトロアニリド、Nω,Nω−ジメチルアルギニン、2−イミノビオチン、S−メチル−L−チオシトルリン、S−エチル−L−チオシトルリン、L−チオシトルリン、L−ホモチオシトルリン、2−イミノピペリジン、2−イミノホモピペリジン、S−メチルイソチオウレア、S−エチルイソチオウレア、S−イソプロピルイソチオウレア、S,S’−(1,3−フェニレンビス(1,2−エタンジイル))ビスイソチオウレア、2−アミノチアゾリン、2−アミノチアゾ−ル、N−(3−(アミノメチル)ベンジル)−アセタミジン、Nδ−(4,5−ジヒドロチアゾール−2−イル)オルニチン、Nω−イミノエチル−オルニチン、L−N−(1−イミノエチル)−リシン、2−アミノ−5,6−ジヒドロ−6−メチル−4H−1,3−チアジン、(+)−トランス−3−イミノ−5−メチル−7−クロロ−2−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン、N−[3−(アミノメチル)ベンジル]アセトアミジン、2−フルオロ−N−[3−(アミノメチル)フェニル]アセトアミジン、アミノグアニジン、A−2492、CR−3294、S−[2−(1−イミノエチルアミノ)エチル]−L−ホモシステイン、PPA−250、7−ニトロインダゾール、6−ニトロインダゾール、インダゾール、1−(2−トリフルオロメチルフェニル)イミダゾール、2−(2−フルオロビフェニル−4−イル)プロピオン酸 4−ニトロオキシブチルエステル、N−[4−[4−[6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2(S)−イルカルボニル]ピペラジン−1−イル]−チオフェン−2−カルボキサミジン、A−84643、5−(7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン、(4aS,8aR)−4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−4H−3,1−ベンゾチアジン−2−アミン、N−[4−[2−(ベンジルアミノカルボニル)エチル]フェニル]チオフェン−2−カルボキサミジン、N−[4−[2−(3−クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン−2−カルボキサミジン、N−(1−イミノエチル)−N−(1H−テトラゾ−ル−5−イル)−L−リジンアミド、SD−3651、GW−289013、BN−52296、ANG−500、Nδ−(1−イミノエチル)−α−メチルオルニチン、2−[4−[2−(7−メチルイミダゾ−[1,2−a]ピリジン−2−イル)エチル]フェニルアミノ]−2−チアゾリン、2−イミノ−4,6−ジメチルピペリジン、(4S,4aS,7aS)−4−メチルパーヒドロ−1−ピリジン−2−イミン、6−[4−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]ピリジン−2−イルアミン、1−アミノ−3−(2−フルオロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン、5−クロロ−3−(モルホリン−4−イルメチル)ベンゾキサゾール−2−(3H)−オン、ジフェニレンヨードニウム、ジ−2−チエニルヨードニウム、カルシニューリン、N−(4−アミノブチル)−5−クロロ−2−ナフタレンスルホンアミド、トリフルオペラジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、それらの非毒性塩、またはそれらの水和物である請求項1記載の脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤。
【請求項5】
一酸化窒素合成酵素阻害剤が、一般式(I)
【化1】

(式中、−R−は結合位置の炭素原子と一緒になってピペリジン環のdまたはeに縮合しているか、または4位にスピロ結合している3または4員炭素環を表わし、
はC1〜6アルキルを表わし、
はC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニルまたはハロゲン原子を表わし、
は水素原子、アミノ−C1〜4アルキル、アミノ−C1〜4アルキルで置換されていてもよい炭素環−C1〜4アルキルを表わし、
iは0または1〜3の整数を表わし、
nは0または1〜3の整数を表わす。
ただし、複数のRまたはRは互いに同じでも異なっていてもよい。)
で表わされる縮合ピペリジン化合物、その非毒性塩、またはその水和物である請求項1記載の脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤。
【請求項6】
一酸化窒素合成酵素阻害剤が、一般式(IA)
【化2】

(式中の記号は請求項1記載と同じ意味を表わす。)
で表わされる縮合ピペリジン化合物、その非毒性塩、またはその水和物である請求項1記載の脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤。
【請求項7】
一酸化窒素合成酵素阻害剤が、式(Ia)
【化3】

で表わされる縮合ピペリジン化合物、その非毒性塩、またはその水和物である請求項1記載の脊柱管狭窄症の治療および/または予防剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−96665(P2006−96665A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−314084(P2002−314084)
【出願日】平成14年10月29日(2002.10.29)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】