説明

脊髄への転移の治療

放射線治療システム、好ましくは、間質腔を取り囲む組織に放射線を照射するための近接照射療法システムが提供される。そのシステムはさまざまな目的のために用いられてよいが、そのシステムは好ましくは脊髄への転移を治療するために用いられる。大まかに言って、そのシステム10は、近位の端部14、遠位の端部16、および近位の端部および遠位の端部の間に延在する内腔18を備えたカテーテル部材12と、患者の耐力部分の間質腔22に嵌るように適合されカテーテル部材の遠位の端部を取り除き可能に受容するための内部空間24を備えた構造上の支持部材20とを含んでいる。少なくともひとつの繋留要素46がカテーテル部材の遠位の端部に隣接して配置されていてよい。繋留要素は好ましくは構造上の支持部材の内部空間に嵌りカテーテル部材の遠位の端部を内部空間に繋留するように適合されている。そのシステムは間質腔を取り囲む組織に放射線を照射するためにカテーテル部材の内腔を通して構造上の支持部材の内部空間内に配置できる放射線の線源をさらに含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大まかに言って増殖性細胞の疾患の治療に用いるための装置に関し、より詳しく言うと体内の増殖性細胞の疾患を放射線の適用によって治療するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍はできるだけ多くの悪性腫瘍を除去するために切除術によって治療されることが多い。しかし、浸潤は手術によって治療することが困難または不可能なので、悪性腫瘍を取り囲む正常な組織への悪性腫瘍の浸潤によって切除術の治療的な有用性は制約される。放射線治療が切除術を補うために切除後に残留している腫瘍のへりを標的とすることによって最終的に残留している腫瘍の寸法を縮小することまたは安定化することを目標として用いられる。放射線治療、または放射線治療が後に行われる手術による切除は、脊髄への転移を治療するために広く用いられている。転移は腫瘍がその原発した部位から離れた位置で成長することであり、脊髄への転移はガン細胞が患者の脊柱内に蔓延することによって引き起こされる。
【0003】
放射線治療はいくつかの方法のうちのひとつによって施され、またはいくつかの方法を組み合わせて施され、それらいくつかの方法には外部からの放射線ビームの照射、定位的な放射線手術(stereotactic radiosurgery)、および、半永久的または一時的な間質近接照射療法(permanent or temporary interstitial brachytherapy)などがある。本明細書で用いられる用語「近接照射療法(brachytherapy)」は腫瘍またはその他の増殖性の組織の疾患の部位でまたは部位の近くで体内に植え込まれた空間的に限定された放射性物質を用いて行われる放射線治療を意味する。放射線の線源が近いために近接照射療法はより局部化された線量を標的の組織の領域に照射できる利益をもたらす。
【0004】
例えば、近接照射療法は放射線の線源を治療されるべき組織に直接植え込むことによって実施される。近接照射療法は(1)悪性腫瘍が原発腫瘍の部位のもともとの境界の2cm乃至3cm内で限定的に再成長を起こす場合、(2)放射線治療が悪性腫瘍の成長を抑制することが証明されている場合、および(3)放射線の線量と反応の関係が悪性腫瘍に対して存在し、通常の外部からの放射線ビームの照射で安全に照射できる線量が正常な組織の耐量によって制限されている場合に最も適している。近接照射療法では、放射線の線量は放射線療法の線源の直ぐ近くで最も高く、腫瘍への線量を高くすると同時に周囲の正常な組織への線量を節約している。間質近接照射療法はその他の腫瘍に比べて悪性の脳腫瘍または悪性の乳房腫瘍を治療するのに有用である。
【0005】
転移を治療するために放射線を照射するための装置が存在しているが、患者の脊柱内のようなヒトの体の耐力部分内の標的の組織に近接照射療法を施すために用いることができる装置が依然として必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
本発明は患者の体の耐力部分内の転移を治療するための近接照射療法システムを大まかに言って提供する。そのシステムは、内部空間を有し患者の体の耐力部分内の間質腔に嵌るように適合された構造上の支持部材と、近位の端部、遠位の端部、および近位の端部および遠位の端部の間に延在する少なくともひとつの内腔を備えたカテーテル部材とを含んでいる。構造上の支持部材は患者の骨の、より特定して言うと患者の脊柱の、切除された腔に嵌るように構成されていことが好ましい。少なくともひとつの繋留要素がカテーテル部材の遠位の端部に隣接して配置されていてかつ構造上の支持部材の内部空間に嵌ってカテーテル部材の遠位の端部を内部空間内に繋留するように適合されている。そのシステムは放射線を間質腔を取り囲む組織に照射するためにカテーテル部材の少なくともひとつの内腔を通し内部空間に配置できる放射線の線源をさらに含んでいてよい。
【0007】
近接照射療法システムは間質腔を取り囲む組織への放射線の分布を制御するように適合されていてよい。ある実施の形態では、シールドが放射線に敏感な組織を放射線の一部から遮蔽するために構造上の支持部および繋留要素の少なくも一方の一部に形成されている。代わりに、または、更に患者の脊柱またはその他の生命の維持に必要な器官および構造に隣接して配置されるように適合された構造上の支持部の一部が、患者の脊髄を放射線から遮蔽するように適合された放射線不透過性の材料から作られている。さらに別の実施の形態では、放射線の線源は間質腔を取り囲む放射線に敏感な組織がより少ない線量を照射されるように間質腔を取り囲む組織で非対称の放射線の線量を供給するように構成されている。別の様相では、繋留要素が外側の拡張可能な部材からなり、近接照射療法システムは外側の拡張可能な部材の中に配置できて放射線の線源を取り外し可能に受容する内側の拡張可能な部材を含んでいる。好ましくは、外側の拡張可能な部材は拡張したときに間質腔を取り囲む組織に実質的に隣接して配置されるように適合されていて、内側の拡張可能な部材は放射線の線源を外側の拡張可能な部材から予め決められた距離だけ離して配置して照射される放射線が外側の拡張可能な部材に隣接する組織に吸収される線量を最小にしている。別の実施の形態では、外側の拡張可能な部材および内側の拡張可能な部材の少なくとも一方は放射線不透過性の材料で部分的に被覆されていて放射線に敏感な組織を放射線の線源の一部から遮蔽している。代わりに、または、更に、放射線に敏感な組織を放射線の線源の一部から遮蔽するシールドが外側の拡張可能な部材と内側の拡張可能な部材との間に配置されていてもよい。
【0008】
本発明の別の実施の形態では、放射線を切除された椎体内の間質腔に照射するための近接照射療法システムが提供される。そのシステムは、切除された椎体の間質腔に嵌るように適合され内部空間を備えたケージ部材と、近位の端部、遠位の端部、および遠位の端部に隣接して配置され放射線の線源が配置された内側空間体積を画定する第1の拡張可能なバルーン部材とを含んでいる。第1の拡張可能なバルーン部材はケージ部材の内部空間内に配置されるように適合されている。
【0009】
本発明の別の様相では、脊髄への転移を治療するための方法が提供される。その方法は椎体を手術によって切除して間質腔を形成する過程と、放射線を照射するために間質近接照射療法装置を提供する過程と、間質近接照射療法装置を間質腔に手術の間に配置する過程と、制御された線量の放射線を間質近接照射療法装置を取り囲む組織に照射する過程と、間質近接照射療法装置を取り除く過程とを含んでいる。間質近接照射療法装置は、好ましくは、近位の端部、遠位の端部、および少なくともひとつの内腔を備えたカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位の端部に隣接して配置されカテーテル本体の遠位の端部を間質腔内に繋留するように適合された繋留部材と、放射線を間質腔を取り囲む組織に照射するためにカテーテル本体の少なくともひとつの内腔を通して間質腔に配置できる放射線の線源とを含んでいる。椎体を手術によって切除して間質腔を形成する過程は、間質腔に嵌るように適合された構造上の支持部材を提供する過程と、構造上の支持部材を間質腔に配置する過程とをさらに含んでいてよく、その場合には間質近接照射療法装置は構造上の支持部材の内部空間に配置される。放射線の線源は、好ましくは間質近接照射療法装置が構造上の支持部材の内部空間に配置された後に間質近接照射療法装置内に配置され、好ましくは間質近接照射療法装置が取り除かれる前に構造上の支持部材の内部空間から取り除かれる。
【0010】
本発明の上記の特徴、目的、および利点は、好ましい実施の形態の以下の詳細な説明から、とりわけ添付の図面を考慮することによって、当業者には明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、大まかに言って放射線治療システムを提供し、好ましくは間質腔を取り囲む組織および/または骨に放射線を照射するための近接照射療法システムを提供する。本発明のシステムはさまざまな目的に用いることができるが、本発明のシステムは好ましくは脊髄への転移を治療するために用いられる。大まかに言って、システム10(図1)は、近位の端部14、遠位の端部16、および近位の端部14と遠位の端部16との間に延在する内腔18(図3)を備えたカテーテル部材12と、患者の体の耐力部分の間質腔22に嵌るように適合されカテーテル部材12の遠位の端部16を取り除き可能に受容するための内部空間24を備えた構造上の支持部材20とを含んでいる。少なくともひとつの繋留部材46がカテーテル部材12の遠位の端部16に隣接して配置されていてよい。繋留部材46は好ましくは構造上の支持部材20の内部空間24に嵌りカテーテル部材12の遠位の端部16を内部空間24に繋留するように適合されている。システム10は間質腔22を取り囲む組織に放射線を照射するためにカテーテル本体12の内腔18を通して構造上の支持部材20の内部空間24に配置できる放射線の線源(図示されていない。)をさらに含んでいる。
【0012】
本発明のシステム10で用いられる構造上の支持部材20はさまざまな構成であってよいが、好ましくは切除された椎骨50に嵌るようにそして椎骨50の耐力部分を受容するように適合されたケージ類似の部材である。支持部材20はどのような形状および寸法でもよいが、カテーテル部材12の遠位の端部16を受容するために内部空間24がその中に形成されていなければならない。例示的な実施の形態では、構造上の支持部材20は脊柱融合ケージ(spinal fusion cage)である。図2は本発明のシステム10で用いるのに適した構造上の支持部材20の一例を示している。図示された支持部材はズルツァー・スパイン−テック(Zulzer Spine-Tech)によって製造されたビー・ピー・ケージ(BP(登録商標)Cage)であり、米国特許第5,015,247号、同第5,484,437号、および同第5,741,253号に記載されている。本発明のシステムで用いるのに適したその他の支持部材は、例えば、サージカル・ダイナミクス・インコーポレーテッド(Surgical Dynamics Inc.)によって製造されたレイ・ティー・エフ・シー(Ray TFC(登録商標))があり、米国特許第5,015,247号、同第5,484,437号、および同第5,741,253号に記載されていて、さらに、メドトロニック・ソファモー・ダネック(Medtronic Sofamor Danek)によって製造されたインフューズ骨移植片(Infuse(登録商標)Bone Graft)およびエル・ティー−ケージ(LT−CAGE(登録商標))がある。当業者はさまざまな構造上の支持部材が用いられることおよび支持部材が本明細書に例示または記載されていないさまざまな特徴を含んでいてよいことを正しく認識するであろう。
【0013】
図2に示されているように、ビー・ピー・ケージ20はほぼ長寸の円筒形の形状を有し内部空間24がその中に形成されている。ケージ20は上位面26、下位面28、上位面26および下位面28の間に延在する第1の側面30および第2の側面32、近位の端部34、および遠位の端部36を含んでいる。内部空間24を形成する内腔が長手方向の軸Lに沿ってケージ20の近位の端部34および遠位の端部36の間に延在している。ケージ20の近位の端部34はカテーテル12の遠位の端部16を受容するために開いている。遠位の端部36も開いているが、以下により詳しく記載されるようにカテーテル20を過剰に挿入することを防止するためおよび/または放射線に敏感な組織を放射線から遮蔽するために中実であってもよい。ケージ20は骨成長促進材料を受容するために第1の側面30および第2の側面32の各々を通って延在するひとつまたは複数の開口44をさらに含んでいる。開口44は以下により詳しく記載されるように間質腔を取り囲む組織に照射される放射線の向きを制御するために計画的に配置されてもよい。ケージ20は挿入器具(図示されていない。)と嵌め合わされるように適合されていてもよい。例えば、ケージ20の上位面26および下位面28には挿入器具を受容するためのひとつまたは複数の溝38および溝40が形成されていて、ねじ山42がケージ20の間質腔への挿入を容易にするためにケージ20を取り巻いて配置されている。使用時には、ケージ20は挿入器具によって掴まれてケージ20を間質腔へ螺合させるように回転させられる。当業者はさまざまな挿入器具および嵌め合わせ方法がケージを切除された腔内に配置するために用いられることを正しく認識するであろう。
【0014】
図1のシステム10で用いられるカテーテル部材12もさまざまな構成であってよいが、好ましくは切除された腔を取り囲む組織に放射線を照射するために用いられる近接照射療法装置である。当業者は実質的にどのような近接照射療法装置が本発明のシステム10で用いられてもよいことを正しく認識するであろう。非限定的な例として、本発明のシステムで用いるのに適した近接照射療法装置が本明細書で参照文献として引用される2002年7月2日に付与された米国特許第6,413,204号「増殖性の組織の疾患を治療するための間質近接照射療法の装置および方法(Interstitial Brachytherapy Apparatus and Method for the Treatment of Proliferative Tissue Diseases)」に開示されている。
【0015】
図3は本発明のシステム10で用いるためのカテーテル部材12の例示的な実施の形態を示している。図示されているように、カテーテル部材12は近位の端部14、遠位の端部16、および近位の端部12および遠位の端部16の間に延在する少なくともひとつの内腔18を含んでいる。遠位の端部16はカテーテル12の遠位の端部16をケージ部材20の内部空間24内に繋留するために配置された繋留要素46を含んでいる。カテーテル12の少なくともひとつの内腔18は繋留要素46を拡張するために繋留要素46と連通したポート48含んでいるのが好ましい。繋留要素46は実質的にとのような構成であってもよいが、好ましくは主としてカテーテル部材12の遠位の端部16のポート48の周囲で密閉されている図3に示すような拡張可能なバルーン部材である。使用時には、拡張可能な部材46はカテーテル12の遠位の端部16を支持部材20の内部空間24に挿入できるようにする萎んだ位置と空気または流体が内腔18およびカテーテル12のポート48を通して供給されて拡張可能な部材46を膨らましそれによってカテーテル部材12の遠位の端部16を支持部材20の内部空間24内に繋留する図示された膨らんだ位置との間を移動できる。繋留要素46はどのような形状および寸法でもよいが、好ましくは膨らんだときに繋留要素46が構造上の支持部材20の内部空間24に緊密に嵌ってカテーテル12の遠位の端部16をケージ20に対しておよび放射線を照射されるべき標的の組織に対して明確に位置決めするように適合されているように図3に示されているように膨らんだ位置での予め決められた形状を有する。繋留要素46の寸法は予め決められていてよいが、寸法は繋留要素46を所望のレベルに膨らますことによって治療の間に選択することができる。別の実施の形態(図示されていない。)では、繋留要素46は拡張可能なケージ部材であり、カテーテル12は拡張可能なケージ部材を縮小した位置および拡張した位置の間を移動させるための制御レバーまたはそれに類似した機構を必要に応じて含んでいてよい。当業者はさまざまな繋留部材が本発明で用いることができることを正しく認識するであろう。
【0016】
カテーテル12は第1の外側の拡張可能な部材46の中に配置された第2の内側の拡張可能な部材52を必要に応じてさらに含んでいてよい。内側の拡張可能な部材52も好ましくはバルーン部材で放射線の線源を受容できるものである。内側の拡張可能な部材52はどのような形状および寸法でもよいが、好ましくは外側の拡張可能な部材46に嵌るように適合されていて、膨らんだときに外側の拡張可能な部材46から予め決められた間隔だけ離れているように適合されている。使用時には、内側の拡張可能な部材52は内側の拡張可能な部材52がカテーテル16の遠位の端部に隣接して配置されている萎んだ位置と内側の拡張可能な部材52が外側の拡張可能な部材52内に外側の拡張可能な部材52から離れて配置されている膨らんだ位置との間を移動できる。図4Aに示された第2の内腔18b、および第2のポート54が、内側の拡張可能な部材52と連通するためにカテーテル12に設けられている。
【0017】
限定を意図することなく、外側の拡張可能な部材46および内側の拡張可能な部材52は生体適合性の放射線耐性ポリマーなどであるポリマーフィルムの壁から作られていてよい。適切なポリマーには、例えばシラスティックゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびPVC(ポリ塩化ビニル)などがある。
【0018】
本発明のシステム10は間質腔を取り囲む組織への放射線の分布を制御するように適合されている。間質腔を取り囲む組織への放射線の分布を制御することのひとつの利点は、健康な組織の壊死を引き起こすことがある放射線に敏感な組織への過剰な照射をせずに標的の治療領域内の組織へ最小の処方された線量が照射できることである。
【0019】
ある実施の形態では、構造上の支持部材20はケージ内の線源からの放射線を望まれる領域の組織のみに向けて通過させるように適合されている。例えば、システム10が脊髄への転移を治療するために用いられる場合、システム10は脊髄への向きの放射線をほとんど供給しないように構成されていてよい。非限定的な例として、支持部材20は放射線不透過性の材料から作られていて、放射線を通過させるためのひとつまたは複数の放射線透過性の領域を含んでいる。代わりに、支持部材20は放射線透過性の材料から作られていて、支持部材20のいくつかの部分が望まれる領域の組織を放射線から遮蔽するために放射線不透過性のシールドで被覆されていてもよい。支持部材20全体が必要な場合には放射線透過性であってもよい。好ましくは、支持部材20の遠位の端部36が放射線が患者の脊髄と接触するのを防止するために放射線不透過性である。別の実施の形態では、支持部材20は放射線不透過性材料から作られていて図2に示されている開口44と同様のひとつまたは複数の開口を含んでいて放射線が開口に隣接した位置にある領域の組織に照射されようにされている。
【0020】
別の実施の形態では、繋留要素46および/または内側の拡張可能な部材52は間質腔を取り囲む組織への放射線の分布を制御するように適合されている。例えば、内側の拡張可能な部材52は放射線の線源を受容し放射線の線源を外側の拡張可能な部材46から予め決められた間隔だけ離して配置して、外側の拡張可能な部材46に隣接する組織に照射される放射線が最小の線量で吸収されるようにされている。この構成は本明細書で参照文献として引用される2002年7月2日に付与された米国特許第6,413,204号「増殖性の組織の疾患を治療するための間質近接照射療法の装置および方法(Interstitial Brachytherapy Apparatus and Method for Treatment of Proliferative Tissue Diseases)」により詳しく記載されている。大まかに言って、内側の拡張可能な部材および外側の拡張可能な部材は標的の組織の全体を通して予め決められた範囲内の線量が吸収されるように構成された体積を有する。
【0021】
別の実施の形態では、繋留要素46および/または内側の拡張可能な部材52の少なくとも一方が放射線に敏感な組織を放射線の線源の一部から遮蔽するために放射線不透過性材料で部分的に被覆されている。非限定的な例として、図4Bは内側の拡張可能な部材52の表面の一部を被覆した放射線不透過性材料のコーティング62を示している。コーティング62は放射線に敏感な組織を遮蔽するように、および/または、本明細書で参照文献として引用される1999年12月16日に出願された米国特許出願第09/464,727号「非対称な放射線の線量を照射する装置および方法(Asymmetric Radiation Dosing Apparatus and Method)」に記載されているような非対称な等線量曲線を提供するように、計画的に配置されてもよい。
【0022】
拡張可能な部材の表面を被覆するのに適した放射線不透過性材料には、例えば、バリウム、タングステン、ビスマス、タンタル、およびスズなどがある。内側の拡張可能な部材52および外側の拡張可能な部材46を放射線不透過性材料で被覆する代わりに、放射線阻止または吸収シールド(図示されていない。)が望まれる等線量曲線を得るために繋留要素46および内側の拡張可能な部材52の間にまたは内側の拡張可能な部材52の中に配置されてもよい。当業者はその他の構成が望まれる等線量曲線および/または放射線に敏感な組織の遮蔽を得るために用いられてよいことを正しく認識するであろう。
【0023】
さらに別の実施の形態では、放射線の線源自体が間質腔を取り囲む所望の領域の組織に放射線を照射するように構成されている。非限定的な例として、図5はモールド成形されたハブ122の第1の近位のポート118および第2の近位のポート120から延在する第1の内腔および第2の内腔(図示されていない。)を含んでいるカテーテル110を有するシステム100を示している。第1の内腔は放射線の線源124を運ぶためのものであり、第2の内腔はカテーテル部材110の側壁を通って形成された膨張ポート126と連通している。カテーテル110の遠位の端部128は放射線の線源124から適切に離れた外側のポリマーフィルムバリアー132によって画定された外側の空間的な体積130を含んでいる。外側の体積130は膨張ポート126を取り囲んでいる。放射線の線源124はひとつまたは複数の固体の放射性粒子136が配置されたワイヤ134からなる。放射線の線源124は製造時にカテーテル110内に予め装填されていてよく、または、装置が切除された腫瘍によって以前に占められていた間質腔に植え込まれた後に装置内に装填されてよい。植え込み後に装填される場合、固体の放射性粒子136は例えばアフターローダー(図示されていない。)を用いて第1の内腔を通してワイヤ134に載せられて挿入される。放射線の線源124はカテーテル部材110の長手方向の軸に関して非対称な形状である。すなわち、放射線の線源124は長手方向の軸138に関して半径方向に変化する等線量曲面140を形成するように形が与えられている。より簡単には、図5の等線量曲面140は図5に示されているようにカテーテル部材110の上部側では底部側に比べて長手方向の軸138からの半径がより短い。非対称的な形状の等線量曲面140は湾曲したワイヤ134に複数の固体の放射性粒子136を間隔を置いて配置することによって生み出される。この構成は固体の放射性粒子136のあるものがその他の固体の放射性粒子136に比べてカテーテル部材110の長手方向の軸138からより離れて配置されているようにし、図示された非対称的な等線量曲面140を生み出す。図示された放射線の線源124を提供するひとつの方法はワイヤ134を形状記憶特性を有することが当業者に知られたニッケル・チタン合金のような中実または管状の形状記憶合金から作ることである。その場合、ワイヤ134は所望の形状に予備形成され、第1の内腔を通るように実質的に直線状の形状に圧縮され、ワイヤ134が第1の内腔で与えられる立体的な拘束から解放される内側の体積130内に配置されるとその所望の形状を回復する。その結果形成される非対称的な等線量曲面140は所望の線量の照射を得るために各々の異なる放射能を有する固体の放射性粒子136を用いてさらに調整されてよい。そのような構成は1999年12月16日に出願された米国特許第09/464,727号「非対称的な線量を照射する装置および方法(Asymmetric Radiation Dosing Apparatus and Method)」にも記載されている。
【0024】
使用時には、支持部材20は好ましくは患者の体の切除された腔内に、好ましくは図1に示すように切除された椎骨に形成された間質腔内に配置される。カテーテル部材12の遠位の端部16は次に繋留要素46を膨らますことによって支持部材20の内部空間24内に繋留される。繋留要素46は空気、または食塩水のようなその他の流体、または血管造影法で用いられる造影剤のような放射線吸収流体で膨らまされてよい。カテーテル12は放射線の線源を予め装填されていてよく、または、代わりに放射線の線源が内腔18を通してカテーテル12に挿入されてもよい。放射線の線源は処方された線量の放射線が照射されるまでカテーテル12の遠位の端部16に、好ましくは内側の拡張可能な部材52内に留まり、または、放射線の線源は処方された線量の放射が完了するまで毎日またはその他の予定された基準で予め決められた時間に亘って挿入されてもよい。放射線の線源は次に回収されカテーテル12が取り除かれる。放射線治療は近接照射療法装置12を取り除いたときに完了するか、または、近接照射療法は外部から放射線の線量をさらに照射することによって補足されてよい。
【0025】
本発明のシステムで用いるのに適した放射線の線源には固体および液体の両方がある。非限定的な例として、放射線の線源には、I−125、I−131、Yb−169、固体の線源としてのIr−192、固体の線源としてのI−125のような放射性核種、または光子、ベータ粒子、ガンマ放射線、またはその他の治療用の放射線を放射するその他の放射性核種などがある。放射性材料は(ひとつまたは複数の)放射性核種の任意の溶液から作られた流体であってもよく、例えば、I−125またはI−131の溶液から作られた流体であってよく、または、放射性の流体はAu−198、Y−90のような固体の放射性核種の小さい粒子を含んだ適切な流体のスラリーを用いて製造されてもよい。さらに、(ひとつまたは複数の)放射性核種がゲルに埋め込まれていてもよい。本発明で用いることができる放射性材料のひとつとして、アメリカ合衆国ジョージア州アルファレッタ(Alpharetta)のプロキシマ・セラピューティクス・インコーポレーテッド(Proxima Therapeutics, Inc.)から入手可能なナトリウム3−(125I)ヨード−4−ヒドロキシベンゼンスルホナート(125I−HBS)を含む滅菌された一度だけ使用する非発熱性の溶液であるIotrex(商標)がある。アメリカ合衆国ミネソタ州セントポール(St. Paul)のスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能なタイプの放射性の微小球が用いられてもよい。この放射線の線源は製造時にカテーテルに予め装填されるか装置が切除された腫瘍によって以前に占められていた腔に植え込まれた後にひとつまたは複数の固体の放射性の微小球を例えばアフターローダー(図示されていない。)を用いてカテーテルを通してワイヤに載せて挿入して装填されてよい。
【0026】
骨髄への転移およびその他の悪性腫瘍を治療するための本発明に基づく方法は、椎体を手術によって切除して間質腔を形成する過程で始まる。腫瘍を切除した後に、手術部位を閉じる前に、外科医は手術中に上述されたように少なくともひとつの繋留部材と共にカテーテル部材を備えた間質近接照射療法装置を切除された腔の間質腔に挿入する。次に放射線の線源が間質腔を取り囲む組織に制御された線量の放射線を照射するためにカテーテルの少なくともひとつの内腔を通して繋留要素の間質腔内に配置される。間質近接照射療法装置が次に取り除かれる。別の実施の形態では、椎体を手術によって切除して間質腔を形成する過程は、間質腔に嵌るように適合された構造上の支持部材を提供する過程と、構造上の支持部材を間質腔内に配置する過程とを含む。この実施の形態では、間質近接照射療法装置は構造上の支持部材の内部空間に配置されている。放射線の線源は好ましくは間質近接照射療法装置が構造上の支持部材の内部空間に配置された後に間質近接照射療法装置内に配置され、間質近接照射療法装置が取り除かれる前に構造上の支持部材の内部空間から取り除かれる。
【0027】
当業者は本発明の近接照射療法システムが実質的にどのような構成をも有することができること、本明細書に例示され記載された実施の形態が例示的な実施の形態であることのみを意図するものであり本発明を限定すると解釈されてはならないことを正しく認識するであろう。さらに、これまでの記載は本発明の原理を例示のみしたものであること、およびさまざまな変更が当業者には本発明の範囲および真髄を逸脱せずに行えることが理解されるであろう。本明細書で言及された全ての参照文献はその全体が積極的に引用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】切除された椎骨内で脊髄への転移を治療するための近接照射療法システムを例示した斜視図である。
【図2】本発明の近接照射療法システムで用いるための構造上の支持部材のある実施の形態を例示した斜視図である。
【図3】本発明の近接照射療法システムで用いるためのカテーテル部材のある実施の形態を例示した斜視図である。
【図4A】図3の線A−Aから見たカテーテル部材の断面図である。
【図4B】放射線に敏感な組織を遮蔽するための放射線不透過性のコーティングがその一部に配置された本発明の近接照射療法システムで用いるためのカテーテル部材の別の実施の形態を例示した図である。
【図5】体の組織に非対称的な放射線の線量を照射するための間質近接照射療法装置の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体の耐力部分内の転移を治療するための近接照射療法装置であって、
患者の体の耐力部分内の間質腔に嵌るように適合されていて、内部空間を備えた構造上の支持部材と、
近位の端部、遠位の端部、および少なくともひとつの内腔を備えたカテーテル部材と、
上記カテーテル部材の上記遠位の端部に隣接して配置されていて、上記構造上の支持部材の上記内部空間に嵌って上記カテーテル本体の上記遠位の端部を上記内部空間に繋留するように適合された少なくともひとつの繋留要素と、
上記間質腔を取り囲む組織に放射線を照射するために上記カテーテル部材の上記少なくともひとつの内腔を通して上記内部空間内に配置される放射線の線源と
を有する、近接照射療法装置。
【請求項2】
構造上の支持部材および繋留要素の少なくとも一方の一部に形成され放射線の一部から放射線に敏感な組織を遮蔽するように適合されたシールドをさらに有する、請求項1記載の近接照射療法装置。
【請求項3】
構造上の支持部材が患者の骨の切除された腔に嵌るように適合されている、請求項1記載の近接照射療法装置。
【請求項4】
構造上の支持部材が患者の椎骨の切除された腔に嵌るように適合されている、請求項1記載の近接照射療法装置。
【請求項5】
構造上の支持部材のうちの患者の椎骨に隣接して配置されるように適合された部分が患者の脊髄を放射線から遮蔽するように適合された放射線不透過性の材料から形成されている、請求項4記載の近接照射療法装置。
【請求項6】
放射線の線源が間質腔を取り囲む組織内に非対称的な線量の放射線を供給して上記間質腔を取り囲む放射線に敏感な組織により少ない線量が照射されるように構成されている、請求項1記載の近接照射療法装置。
【請求項7】
繋留要素が外側の拡張可能な部材からなり、
上記外側の拡張可能な部材の内側に配置可能で放射線の線源を取り外し可能に受容する内側の拡張可能な部材をさらに有する、請求項1記載の近接照射療法装置。
【請求項8】
外側の拡張可能な部材が拡張したときに間質腔を取り囲む組織に実質的に隣接して配置されるように適合されていて、
内側の拡張可能な部材が上記外側の拡張可能な部材に隣接する組織に照射される放射線が最小の線量で吸収されるように放射線の線源を上記外側の拡張可能な部材から予め決められた間隔だけ離れて配置する、請求項7記載の近接照射療法装置。
【請求項9】
外側の拡張可能な部材および内側の拡張可能な部材の少なくとも一方が、放射線に敏感な組織を放射線の線源の一部から遮蔽する放射線不透過性の材料で部分的に被覆されている、請求項7記載の近接照射療法装置。
【請求項10】
外側の拡張可能な部材と内側の拡張可能な部材との間に配置されていて放射線の線源の一部から放射線に敏感な組織を遮蔽するシールドをさらに有する、請求項7記載の近接照射療法装置。
【請求項11】
内側の拡張可能な部材が拡張可能なバルーンからなり、放射線の線源が流体の形態である、請求項7記載の近接照射療法装置。
【請求項12】
放射線の線源が少なくともひとつの長寸の部材に配置された少なくともひとつの固体の放射線の線源を含む、請求項1記載の近接照射療法装置。
【請求項13】
複数の固体の放射線の線源がひとつの長寸の部材に間隔を置いて配置されている、請求項12記載の近接照射療法装置。
【請求項14】
構造上の支持部材が、切除された椎体の間質腔に嵌るように適合され内部空間を備えたケージ部材からなり、
繋留要素がカテーテル部材の遠位の端部に隣接して配置され放射線の線源が配置される内側の空間的な体積を画定している第1の拡張可能なバルーン部材からなり、
第1の拡張可能なバルーン部材がケージ部材の内部空間内に配置されるように適合されている、請求項1記載の近接照射療法装置。
【請求項15】
ケージ部材および第1の拡張可能なバルーン部材の少なくとも一方の一部に形成され放射線の一部から放射線に敏感な組織を遮蔽するように適合されたシールドをさらに有する、請求項14記載の近接照射療法装置。
【請求項16】
ケージ部材のうち患者の椎骨に隣接して配置されるように適合された部分が上記患者の脊髄を放射線から遮蔽するように適合された放射線不透過性の材料から形成されている、請求項14記載の近接照射療法装置。
【請求項17】
放射線の線源が間質腔を取り囲む組織内に非対称的な線量の放射線を供給して上記間質腔を取り囲む放射線に敏感な組織により少ない線量が照射されるように構成されている、請求項14記載の近接照射療法装置。
【請求項18】
第1の拡張可能なバルーン部材の周りに配置されケージ部材の内部空間内にカテーテル部材を繋留する第2の拡張可能なバルーン部材をさらに有する、請求項14記載の近接照射療法装置。
【請求項19】
第2の拡張可能なバルーン部材が拡張したときに間質腔を取り囲む組織に実質的に隣接して配置されるように適合されていて、
第1の拡張可能なバルーン部材が上記第2の拡張可能なバルーン部材に隣接する組織に照射される放射線が最小の線量で吸収されるように放射線の線源を上記第2の拡張可能なバルーン部材から予め決められた間隔だけ離れて配置する、請求項18記載の近接照射療法装置。
【請求項20】
第2の拡張可能なバルーン部材および第1の拡張可能なバルーン部材の少なくとも一方が、放射線に敏感な組織を放射線の線源の一部から遮蔽する放射線不透過性の材料で部分的に被覆されている、請求項18記載の近接照射療法装置。
【請求項21】
第2の拡張可能なバルーン部材と第1の拡張可能なバルーン部材との間に配置されていて放射線の線源の一部から放射線に敏感な組織を遮蔽するシールドをさらに有する、請求項18記載の近接照射療法装置。
【請求項22】
放射線の線源が流体の形態である、請求項18記載の近接照射療法装置。
【請求項23】
放射線の線源が少なくともひとつの長寸の部材に配置された少なくともひとつの固体の放射線の線源を含む、請求項14記載の近接照射療法装置。
【請求項24】
複数の固体の放射線の線源がひとつの長寸の部材に間隔を置いて配置されている、請求項23記載の近接照射療法装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−502765(P2006−502765A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543790(P2004−543790)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/032686
【国際公開番号】WO2004/032755
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505131991)プロキシマ・セラピューティックス・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Proxima Therapeutics,Inc.
【住所又は居所原語表記】Suite 220,2555 Marconi Drive,Alpharetta,GA 30005−4143,United States of America
【Fターム(参考)】