説明

脚受け部材

【課題】床面にたわみや凹みが生じないように家具の荷重を適切に分散でき、かつ、ねじで固定しなくても地震等の振動による家具及び脚受け部材の移動を防止できると共に、振動を良好に吸収することができる脚受け部材を提供する。
【解決手段】脚受け部材5は、アジャスタ脚の底部が嵌められる円形凹部21aが上面の両端側に設けられた板状剛性部材21と、板状剛性部材21の下面に貼り合わされた板状弾性部材22と、板状弾性部材22の下面の床面Xに接する面に貼り合わされたシート状滑り止め部材23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に載置される脚付き家具の複数の脚を受ける脚受け部材に関し、家具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
床面に収納棚や机等の脚付き家具を設置する場合、該脚から床面に加わる家具の荷重の分散つまり床面の負担軽減による該床面のたわみや凹みの防止、及び地震等の振動に起因する該家具の移動防止を目的として脚受け部材を介設することがあり、例えば特許文献1には、テーブル等の家具の脚を受ける脚受け部材(該文献1におけるベース体)として、上面に脚の底部が嵌る凹部が設けられ、床面にねじで固定されるものが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、家具(該文献における収納ボックス)の下面4隅に設けられた4つの脚を受ける脚受け部材として、前後2つの脚に渡る長さとされて、上面に脚の底部が嵌められる凹部が各脚毎に設けられたものが開示されている。そして、この文献2には、家具の設置に際し、設置面と脚受け部材との間にシート状の滑り止め材を介設することが開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、脚付き家具の設置を想定したものではないが、家具と床面との間に介設される弾性体でなる転倒防止用免震部材が開示されている。また、この文献3には、該弾性体の底面にシート状のすべり止め材を貼り付けてもよい旨記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−76433号公報
【特許文献2】実登3019415号公報
【特許文献3】特開平9−144809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の脚受け部材は、各脚毎に設けられているので、床面に対する接地面積が少なく、家具の荷重を広範囲に分散させることができない。また、この脚受け部材はタッピンねじで固定されていることから木材と考えられるが、その場合、振動を十分に吸収できず、該振動がそのまま家具に伝達されてしまう。さらに、床面にねじ孔傷を生じさせるだけでなく、床面がねじの効かない素材であったり、ねじ孔をあけることが許されないような場合には適用することができない。
【0007】
これに対し、特許文献2では、脚受け部材の設置に際してねじを用いないので上記文献1に記載の脚受け部材のような問題は生じないが、以下のような問題が生じる。
【0008】
すなわち、特許文献2においては脚受け部材の材質について言及されていないが、例えば、硬く剛性の高いものであると、地震等の振動を十分に吸収できないだけでなく、例えば、図13に示すように脚101,101が載置される脚受け部材102の設置面xに不陸があると、脚受け部材102と設置面xとが一部しか接触しないので、この接触部位に家具の荷重が矢印ア、アで示すように集中することとなる。しかも、滑り止めシート103,103に荷重が局所的にしか作用しないので、滑り止め機能が適切に発揮されず、この結果、地震等の振動により脚受け部材102上に載置された家具が該部材102と共に滑って移動する虞がある。また、例えば、設置面xの不陸の膨らみが仮想線イで示すように、脚受け部材102の端部に位置する場合には、矢印ウで示す箇所に荷重が集中して凹みが生じる虞がある。
【0009】
他方、脚受け部材の材質として、上記特許文献3に記載の転倒防止用免震部材のように柔軟性を有する剛性の低いものを用いることが考えられる。その場合、地震等の振動を吸収しやすくなるが、脚受け部材112が図14に仮想線エで示すようにたわみ変形し(説明のため強調している)、この結果、収納棚から脚101,101を介して入力される荷重が脚受け部材112全体に均等に分散されずに矢印オ、オで示すように設置面xの一部に集中し、前述の問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、床面にたわみや凹みが生じないように家具の荷重を適切に分散でき、かつ、ねじで固定しなくても地震等の振動による家具及び脚受け部材の移動を防止できると共に、該振動を良好に吸収することができる脚受け部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
まず、請求項1に記載の発明は、床面に載置される脚付き家具の複数の脚を受ける脚受け部材であって、上面に上記脚の底部が嵌められる凹部が各脚毎に設けられた板状剛性部材と、該板状剛性部材の下面に貼り合わされた板状弾性部材と、該板状弾性部材の下面の床面に接する面に貼り合わされたシート状滑り止め部材とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、板状剛性部材と板状弾性部材、及び板状剛性部材とシート状滑り止め部材との貼り合わせには両面粘着テープが用いられていることを特徴とする。
【0014】
そして、請求項3に記載の発明は、上記請求項1または請求項2に記載の発明において、シート状滑り止め部材はシリコンゴム材で形成されていることを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明は、上記請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、板状剛性部材の凹部の底面に家具の脚が対接する粘着材が備えられていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、上記請求項4に記載の発明において、粘着材は両面粘着テープであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について説明する。
【0018】
まず、請求項1に記載の発明によれば、上面に上記脚の底部が嵌められる凹部が各脚毎に設けられた板状剛性部材と、該板状剛性材の下面に貼り合わされた板状弾性部材と、該板状弾性部材の下面の床面に接する面に貼り合わされたシート状滑り止め部材とからなるから、板状剛性部材の剛性により脚受け部材のたわみが防止されると共に、床面に不陸がある場合でも、板状弾性部材がこの不陸に沿って変形することにより、シート状滑り止め部材が床面に隙間なく密着することとなる。したがって、脚受け部材を床面にねじ止めしなくても、該脚受け部材が地震等の振動により滑ってずれたりすることがなく、床面にねじ止めする必要がなくなる。また、その結果、床面に傷がつくこともない。
【0019】
また、脚受け部材の板状剛性部材は板状弾性部材を介してほぼ全面的に床面に接するので、家具の荷重が床面の広い範囲に良好に分散され、床面にたわみや凹みが生じるのが防止される。また、板状弾性部材により地震等の振動を良好に吸収することができる。
【0020】
ところで、板状剛性部材と板状弾性部材、及び板状弾性部材とシート状滑り止め部材との貼り合わせに例えば接着剤を用いると、硬化時間がかかって生産性が上がらないだけでなく、これらの間に形成された硬化層により振動の吸収性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0021】
しかし、請求項2に記載の発明によれば、板状剛性部材と板状弾性部材、及び板状弾性部材と滑り止めシートとの貼り合わせにはこれら被貼り合わせ物を即座に結合可能な両面粘着テープが用いられるから、接着剤を用いる場合よりも脚受け部材の生産性が向上すると共に、硬化層が形成されないので、振動の吸収性に悪影響を及ぼす虞がない。
【0022】
そして、請求項3に記載の発明によれば、シリコンゴム材は汚れが付着しにくい性質を有するので、例えば、家具の移設等により脚受け部材を一旦取り外した場合でも、ほとんど汚れが付着しておらず、そのまま再利用することができる。また、再利用する場合においても十分な滑り止め効果を得ることができる。
【0023】
ここで、例えば、複数の側板と、互いに隣接する各一対の側板間に架設された複数の棚板とを有する収納棚等の家具の現場への設置作業について見てみると、例えば、各側板や各棚板は解体された状態で現場に搬入され、まず、各側板の立設作業から開始されるが、この側板の立設作業は、例えば、(1)床面に脚受け部材を配設し、(2)脚受け部材の上方に側板を持ち上げながら移動させ、(3)この持ち上げた状態で脚の底部と脚受け部材の凹部とを位置合せし、(4)この位置合せした状態で側板を降ろして脚受け部材の凹部に脚の底部を嵌め込むという多くの手順を踏むこととなるが、特に上記(3)、(4)の作業は重量物である側板を持ち上げながら微調整が必要となる繊細な作業であり、作業性が非常に悪い。しかも、各側板毎にこの作業を繰り返さなければならない。なお、上記作業性の悪さは、組立て済の家具を設置する場合にもいえることであり、その場合、例えば底板等により作業性が一層悪化することとなる。
【0024】
しかしながら、請求項4に記載の発明によれば、板状剛性部材の凹部の底面に粘着材が備えられているから、予め家具の脚に脚受け部材を貼り付けておけば、設置位置に移動させて載置するだけでよくなり、現場での作業性が飛躍的に向上する。
【0025】
また、請求項5に記載の発明によれば、粘着材は両面粘着テープであるから、第2発明同様、両者が即座に結合され、例えば硬化に時間のかかる接着剤を用いる場合よりも、現場の施工性が向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
すなわち、図1及び図2に示すように、本発明に係る収納棚1は、上方に突出する複数の側板2…2と、互いに隣接する各一対の側板2,2間に架設された複数の棚板3…3とを有し、多数の収納空間が形成されている。また、収納棚1は、該棚1の設置高さを調整するための複数のアジャスタ脚4…4を有し、床面Xに複数の脚受け部材5…5を介して設置されている。そして、この収納棚1の上部と天井面Yとの間に、補強板6を介して、上下方向への突っ張り力を生じさせる付勢部材と上記補強板6の下面に設けられた係合穴に係合可能な係合ピンとを有する複数の転倒防止装置7…7が装着されている。
【0028】
アジャスタ脚4は、図3に示すように、各側板2…2の底部に設けられた垂直穴2a…2aに圧入されて内面に雌ねじ部を有するナット状の筒状部材11と、該筒状部材11の雌ねじ部に螺合されたねじ軸12と、該ねじ軸12の下部に組み付けられた台座13と、該ねじ軸12に螺合されたロックナット14とを有する。
【0029】
ねじ軸12には、上から順に、雄ねじ部12a、雄ねじ部12aの径より大径でナット形状の操作部12b、雄ねじ部12aの径より小径の中径部12c、該中径部12cより少径の小径部12d、該小径部12dより大径の抜け止め部12eが形成されている。中径部12cの周面には一部平面部12fが設けられている。
【0030】
台座13は、ねじ軸12の中径部12cとほぼ同形状の開口15aが上面に設けられたカバー15と、ドーナッツ状の弾性体でなる底部16とを有し、カバー15の開口15aが上記ねじ軸12の中径部12cに嵌められていると共に、底部16が上記小径部12dに嵌められている。これによれば、ねじ軸12の操作部12bを操作してねじ軸12を回転させると、台座13のカバー15が一緒に回転するが、底部16は後述する脚受け部材5との抵抗により回転することがない。
【0031】
ここで、カバー15の開口15aは、ねじ軸12の中径部12cより若干大きくされ、遊びが設けられている。これによれば、床面Xの傾きにより脚受け部材5…5が水平でないような場合でも、アジャスタ脚4の台座13が床面Xに沿って傾き、底部16の下面が以下説明する脚受け部材5…5の円形凹部21a,21aの底面に良好に密着することとなる。
【0032】
なお、各側板2の底部とロックナット14との間には、該ロックナット14が収納棚1の重量により側板2の底部にめり込むのを防止することを目的として、該ロックナット14の径より大径の平ワッシャ17が介設されている。
【0033】
次に、脚受け部材5について説明する。この脚受け部材5は、図4〜図6に示すように、上記アジャスタ脚4,4の台座13,13の底部16,16が嵌められる円形凹部21a,21aが上面の両端側に設けられた板状剛性部材21と、該板状剛性部材21の下面に貼り合わされた板状弾性部材22と、該板状弾性部材22の下面の床面Xに接する面に貼り合わされたシート状滑り止め部材23とを有する。
【0034】
板状剛性部材21は長さ約30cm、幅約4cm、厚さ15mmの木材である。また、凹部21aは、平面視円形で、その半径はアジャスタ脚4の台座13の底部16の半径よりも1mm大きくされている。また、凹部21aの深さは、図3に示すように、上記アジャスタ脚5の台座13のカバー15の下端と該板状剛性部材21の上面とが当接しないように、これらの間に隙間αが生じる深さに設定されている。具体的には、この例においては、凹部21aの深さは1mmで、隙間αは1mmとされている。
【0035】
板状弾性部材22は、厚さ1.6mmのウレタン発泡材であり、地震発生時の振動吸収や、シート状滑り止め部材23の床面Xへの密着性確保等を目的として設けられている。
【0036】
シート状滑り止め部材23は、厚さ0.23mmのシリコンゴムで形成されており、床面Xに対する滑り止めを目的として設けられている。また、シリコンゴムであるので、汚れが付着しにくい性質を有する。
【0037】
ここで、板状剛性部材21と板状弾性部材22との貼り合せ、及び板状弾性部材22とシート状滑り止め部材23との貼り合せには、例えばビニル重合体、ゴム系、重縮合、重付加物、無機、または天然物等でなる接着剤や、基材の両面にゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系、またはシリコン系粘着剤の塗布された両面粘着テープを用いることができる。なお、本実施の形態においては、板状剛性部材21と板状弾性部材22との貼り合わせには基材の両面にアクリル系粘着剤の塗布された両面粘着テープ24を用い、板状弾性部材22とシール状滑り止め部材23との貼り合わせには基材の両面にゴム系粘着剤の塗布された両面粘着テープ25を用いている。これは、両面粘着テープの場合、被貼り合せ物を即座に結合可能であるため、接着剤を用いる場合よりも脚受け部材5の生産性が向上すると共に、硬化層が形成されないので、振動の吸収性に悪影響を及ぼすことがないからである。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態に係る脚受け部材5は、上面にアジャスタ脚4,4の台座13,13の底部16,16が嵌められる凹部21a,21aが各アジャスタ脚4,4毎に設けられた板状剛性部材21と、該板状剛性材21の下面に貼り合わされた板状弾性部材22と、該板状弾性部材22の下面の床面Xに接する面に貼り合わされたシート状滑り止め部材23とからなるから、板状剛性部材21の剛性により脚受け部材5のたわみが防止されると共に、床面Xに不陸がある場合でも、板状弾性部材22がこの不陸に沿って変形することにより、シート状滑り止め部材23が床面Xに隙間なく密着することとなる。したがって、脚受け部材5を床面Xにねじ止めしなくても、該脚受け部材5が地震等の振動により滑ってずれたりすることがなく、また、床面Xにねじ止めする必要がなくなる。また、その結果、床面Xに傷がつくこともない。
【0039】
また、脚受け部材5の板状剛性部材21は板状弾性部材22を介してほぼ全面的に床面Xに接するので、収容棚1の荷重が床面Xの広い範囲に良好に分散され、床面Xにたわみや凹みが生じるのが防止される。また、板状弾性部材22により地震等の振動を良好に吸収することができる。
【0040】
そして、シート状滑り止め部材23は汚れが付着しにくいシリコンゴムで形成されているから、例えば、家具の移設等により脚受け部材5を一旦取り外した場合でも、該シート状滑り止め部材23に汚れがあまり付着しておらず、そのまま再利用することができる。また、再利用する場合においても十分な滑り止め効果を得ることができる。
【0041】
ここで、収納棚1の設置手順の一例について説明する。なお、現場には、収納棚1は、側板2…2、棚板3…3、アジャスタ脚4…4、脚受け部材5…5に解体された状態で搬入される。
【0042】
まず、各側板2…2の上端部に転倒防止装置7…7をねじ止めする。
【0043】
次いで、各側板2…2の底部にアジャスタ脚3…3を取り付ける。詳しくは、側板2の底面から台座13の底部16の底面までの距離が所定長となるように、ねじ軸12を筒状部材11にねじ込む、なお、このとき、ロックナット14は、台座13側におろしておく。
【0044】
次いで、天井面Yに補強板6を取り付けて補強する。なお、天井面Yが十分な強度を有する場合は、補強板6を省略してもよい。この取り付けには両面粘着テープを用いれば、ねじや釘を用いた場合のように天井面Yに傷が残ることがなく、また、天井面Yがねじや釘の効かない素材であったり、ねじや釘の利用が許されないような場合にも取付が可能となる。
【0045】
次いで、各側板2…2を1つづつ予定位置に設置するわけであるが、従来の設置方法によれば、例えば、(1)床面Xに脚受け部材5を配設し、(2)脚受け部材5の上方に側板2を持ち上げながら移動させ、(3)この持ち上げた状態で各アジャスタ脚4,4の台座13,13の底部16,16と脚受け部材5の凹部21a,21aとを位置合せし、(4)この位置合せした状態で側板2を降ろして脚受け部材5の凹部21a,21aにアジャスタ脚4の台座13,13の底部16,16を嵌め込み、(5)アジャスタ脚4により側板2の高さ調整及び垂直調整等を行う等の多くの手順を踏むこととなるが、特に上記(3)、(4)の作業は重量物である側板2を持ち上げながら微調整が必要となる繊細な作業であり、作業性が非常に悪い。しかも、各側板2…2毎にこの作業を繰り返さなければならない。
【0046】
そこで、本実施の形態においては、図7に示すように、各側板2…2の設置前に、それぞれ、脚受け部材5をアジャスタ脚4,4に予め貼り付けるようにしている。詳しくは、各アジャスタ脚4,4の台座13,13の底部16,16に脚受け部材5の板状剛性部材21の凹部21a,21aを嵌め込んで粘着材26,26により貼り付けるようにしている。これによれば、設置に際しては、上記(1)〜(4)の作業に代えて、脚受け部材5をアジャスタ脚4,4に貼り付けた状態の側板2を設置予定位置に移動させるだけでよくなり、現場での作業性が飛躍的に向上する。
【0047】
ここで、上記粘着材26としては、上記板状剛性部材21と板状弾性部材22との貼り合せ、及び板状弾性部材22とシート状滑り止め部材23との貼り合せの場合同様、上記様々な接着剤や両面粘着テープを用いることができるが、本実施の形態においては、基材にアクリル系粘着剤の塗布された両面粘着テープを用いている。これによれば、アジャスタ脚4の台座13,13の底部16,16に脚受け部材5を即座に貼り付け可能であり、接着剤を用いる場合よりも脚受け部材5の生産性が向上すると共に、硬化層が形成されないので、振動の吸収性に悪影響を及ぼすことがない。なお、この粘着材26としての両面粘着テープは脚受け部材5の製造時に貼り付けておいてもよいし、現場で貼り付けてもよい。なお、アジャスタ脚4…4の台座13…13の底部16…16下面に予め貼り付けておいてもよい。
【0048】
そして、上記のように、脚受け部材5がアジャスタ脚4,4の台座13,13の底部16,16に貼り付けられた側板2を設置予定位置に立設する。なお、この立設は、補強板6の下面に設けられた係合穴に転倒防止装置7の係合ピンを差し込んで係合させた状態で行う。
【0049】
次いで、前後の各アジャスタ脚4,4について、ねじ軸12の操作部12bをスパナ等を用いて回転させて、転倒防止装置7の上面が補強板6の下面に当接するように側板2の高さを調節すると共に、該側板2の垂直調整を行った後、ロックナット14を締め、残りの側板2…2について、上記作業を繰り返す。なお、上記操作部12bの操作に際しては、前後2つのアジャスタ脚4,4の台座13,13の底部16,16が脚受け部材5の凹部21a,21aにそれぞれ嵌っているので、操作部12bの操作中に脚受け部材5が連れ回りしたり、該底部16,16が凹部21a,21aからはみ出すことがない。
【0050】
そして、全ての側板2…2の設置が完了したら、次いで、各棚板3…3を取り付けた後、再度、各アジャスタ脚4…4について、ねじ軸12の操作部12bをスパナ等を用いて回転させて、各側板2…2の垂直調整及び各棚板3…3の水平調整を行う。
【0051】
そして、最後に、各転倒防止装置7…7のロック解除を行って、転倒防止装置7…7を収納棚1と天井面Yとの間で突っ張るようにして、収納棚1の設置作業を完了する。
【0052】
なお、本発明に係る脚受け部材は前述したもの(以下、基本例という)に限定されるものではなく、様々な態様で実現可能であり、以下、他の例として2例説明する。
【0053】
まず、第1の他の例に係る脚受け部材30は、図8〜図9に示すように(平面図は図4とほぼ同一であり、図4を参照されたい)、第2の板状剛性部材31として、基本例の木材に代えて厚さ3mmのステンレス材を用いたものである。この厚さは、基本例の15mm厚の木材と同程度の剛性を確保することができる厚さである。板状剛性部材31の上面には、基本例同様、深さ1mmの円形凹部31a,31aが設けられている。なお、板状弾性部材32,シート状滑り止めシート33、及び両面粘着テープ34,35は基本例の板状弾性部材22,シート状滑り止めシート23、及び両面粘着テープ24,25と同一のものであり、説明は省略する。
【0054】
この第1の他の例に係る脚受け部材30によれば、板状剛性部材を、木材を用いた場合よりも薄くしつつ、上記基本例で説明したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
次に、第2の他の例に係る脚受け部材40について説明すると、図10、図11、図12に示すように、板状剛性部材41は、厚さ3mmのステンレス材でなる本体プレート51と、該本体プレート51の上面に貼り合わされ、平面視円形の貫通孔52a,52aが形成された厚さ1mmのステンレス材でなる補助プレート52,52とからなり、円形凹部は上記補助プレート52の貫通孔52a,52aと本体プレート51の上面とで構成されている。板状剛性部材41の本体プレート51と補助プレート52,52との貼り合わせには、上記様々な接着剤や両面粘着テープを用いることができるが、本例においては両面粘着テープを用いている。なお、板状弾性部材42,シート状滑り止めシート43、及び両面粘着テープ44,45は基本例の板状弾性部材22,シート状滑り止めシート23、及び両面粘着テープ24,25と同一のものであり、説明は省略する。
【0056】
この第2の他の例に係る脚受け部材40によれば、基本例及び第1の他の例で説明した作用効果に加えて、例えば収納棚のサイズ変更等に伴ってアジャスタ脚4,4の前後間隔を変更しなければならない場合等に、本体プレート51への補助プレート52,52の貼り付け位置を変更するだけで、容易に対応することができる。すなわち、アジャスタ脚の前後間隔に合せて複数種類の板状剛性部材を用意する必要がない。
【0057】
なお、上記実施の形態においては、各部材の厚み等について具体的数値を挙げて説明したが、各数値は一例であり、脚受け部材上に載置される家具の寸法、重量に応じて適宜設定すればよい。
【0058】
また、上記実施の形態においては、2つの脚を受ける脚受け部材について説明したが、3脚以上の脚を受ける脚受け部材についても適用可能である。また、平面視の形状は、各例で説明した長方形状に限定されるものではなく、家具の荷重が適切に分散できる形状であればかまわない。
【0059】
そして、上記実施の形態においては、脚受け部材に載置される家具の脚はアジャスタ脚であるが、本発明はアジャスタ機構を有さない一般的な固定長脚にも適用可能である。
【0060】
さらに、本実施の形態においては、収納棚の側板の上端部と天井面との間に転倒防止装置が設けられているが、転倒防止装置が設けられない場合についても、本発明の作用効果は奏される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、床面に載置される脚付き家具の複数の脚を受ける脚受け部材に広く好ましく適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る脚受け部材が適用された収納棚の正面図である。
【図2】同収納棚の側面図である。
【図3】収納棚のアジャスタ脚付近の拡大図である。
【図4】脚受け部材の平面図である。
【図5】同脚受け部材の側面図である。
【図6】図5のA−A線による断面図である。
【図7】円形凹部に両面粘着テープを貼り付けた状態の図6相当の脚受け部材の断面図である。
【図8】第1の他の例に係る脚受け部材の側面図である。
【図9】図8のB−B線による断面図である。
【図10】第2の他の例に係る脚受け部材の平面図である。
【図11】同脚受け部材の側面図である。
【図12】図11のC−C線による断面図である。
【図13】従来の脚受け部材の問題点の説明図である。
【図14】従来の他の脚受け部材の問題点の説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 収納棚(脚付き家具)
4 アジャスタ脚(脚)
16 アジャスタ脚の台座の底部
5,30,40 脚受け部材
21,31,41 板状剛性部材
21a,31a,41a 凹部
22,32,42 板状弾性部材
23,33,43 シート状滑り止め部材
24,34,44 両面粘着テープ
25,35,45 両面粘着テープ
26 粘着材(両面粘着テープ)
X 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置される脚付き家具の複数の脚を受ける脚受け部材であって、上面に上記脚の底部が嵌められる凹部が各脚毎に設けられた板状剛性部材と、該板状剛性部材の下面に貼り合わされた板状弾性部材と、該板状弾性部材の下面の床面に接する面に貼り合わされたシート状滑り止め部材とを有することを特徴とする脚受け部材。
【請求項2】
板状剛性部材と板状弾性部材、及び板状剛性部材とシート状滑り止め部材との貼り合わせに両面粘着テープが用いられていることを特徴とする請求項1に記載の脚受け部材。
【請求項3】
シート状滑り止め部材はシリコンゴムで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脚受け部材。
【請求項4】
板状剛性部材の凹部の底面に家具の脚が対接する粘着材が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の脚受け部材。
【請求項5】
粘着材は両面粘着テープであることを特徴とする請求項4に記載の脚受け部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−158473(P2006−158473A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350708(P2004−350708)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】