説明

脚部構造

【課題】長さ調整が可能であって、がたつきが発生しにくい脚部構造を提供する。
【解決手段】脚部構造10は、上端部を支点として撓み変形可能な複数の係止片23を有するスリーブ20A,20Bと、スリーブ20A,20Bに挿入される支柱11と、係止片23の周囲に嵌め込まれる固定リング50と、固定リング50にねじ込まれることによって固定リング50を上方に移動させ、係止片23と支柱11とを締め付けるナット60とを備えている。スリーブ20A,20Bには爪27が設けられている。ナット60には、爪27と係合するフランジ部61が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポータブルトイレや浴槽台等の介護用品等に好適に用いることができ、長さ調整が可能な脚部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブルトイレや浴槽台等のように、本体を支持する脚部構造を有する介護用品が知られている。この種の介護用品では、利用者の体格に合わせて本体の高さが容易に調整可能であることが好ましい。従来から、介護用品の脚部構造として、長さ調整が可能な脚部構造が用いられている。
【0003】
特許文献1には、長さ調整が可能なポータブルトイレの脚部構造が記載されている。この脚部構造は、上部支柱と、上部支柱にスライド自在に挿入されたベース支柱とを備えている。上部支柱およびベース支柱には、上下に並ぶ複数の孔が形成されている。長さ調整の際には、上部支柱のいずれかの孔とベース支柱のいずれかの孔とが重なるようにベース支柱の挿入量を適宜調整し、棒状のロック爪を両孔に突き刺すように挿入する。これにより、脚部構造の長さが設定される。次に、締め付けリングを用いて上部支柱とベース支柱とを固定する。上部支柱の下端部の外周面には雄ねじ部が形成され、締め付けリングの内周面には、上記雄ねじ部と係合する雌ねじ部が形成されている。締め付けリングを上部支柱の下端部にねじ込むことにより、上部支柱とベース支柱とが締め付けられ、互いに固定される。
【0004】
特許文献2にも、長さ調整が可能なポータブルトイレの支持脚が記載されている。この支持脚は、便器本体の四隅に形成された円孔に挿入されている。支持脚の外周面には、互いに交差する複数の縦溝および横溝が形成されている。円孔の内周面には、横溝に噛合する板状突起が形成されている。ポータブルトイレの高さは、円孔に対する支持脚の挿入量を調整することによって調整される。ポータブルトイレの高さを調整する際には、支持脚を反時計回りに回転させ、板状突起を横溝から縦溝内に移動させる。次に、板状突起が所望の横溝の位置に来るまで、支持脚を長さ方向に摺動させる。次に、支持脚を時計回り方向に回転させ、板状突起を横溝に噛合させる。横溝内に位置している板状突起は縦方向の移動が規制されるので、ポータブルトイレの高さが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−240166号公報
【特許文献2】特開2003−24243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
介護用品等の脚部構造では、利用者である高齢者等が不安を極力感じないように、がたつきができるだけ少ないことが望まれる。ところが、特許文献1に記載された脚部構造では、長期間の使用によって締め付けリングが徐々に緩んでしまったり、あるいは、締め付けリングに逆方向の回転力が偶発的に加わること等により、締め付けリングが外れてしまう可能性がある。その結果、上部支柱とベース支柱との間にがたつきが発生するおそれがある。
【0007】
特許文献2に記載された支持脚では、支持脚に反時計回り方向の回転力が加わると、板状突起が横溝から縦溝内に移動してしまう場合がある。その場合、支持脚の縦方向の位置ずれが規制されない状態、すなわち実質的に支持脚が円孔から外れた状態となってしまう。その結果、支持脚と便器本体との間にがたつきが発生するおそれがある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長さ調整が可能であって、がたつきが発生しにくい脚部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る脚部構造は、少なくとも一端側に開口部が形成されたスリーブ本体と、それぞれ前記スリーブ本体の一端側から軸方向に延びると共に周方向に互いに離間するように配置され、根元部を支点として撓み変形可能な複数の係止片と、を有するスリーブと、挿入量の変更が可能なように前記スリーブに挿入された支柱と、前記係止片の径方向の外側に装着され、前記支柱の外周面との間に前記係止片を挟み込む内面を有し、前記スリーブ本体側に動かされることによって、前記係止片を径方向の内方に撓み変形させて前記係止片と前記支柱とを締め付ける締め付け部材と、を備え、前記スリーブ本体の一端側には、前記係止片よりも径方向の外方に位置する係止爪が設けられ、前記締め付け部材の外面には、前記係止爪と係合する係合部が形成されているものである。
【0010】
前記脚部構造によれば、前記締め付け部材を前記係止片の外側に装着し、前記スリーブ本体側に動かすと、スリーブの係止片が径方向の内方に撓み、支柱と締め付け部材との間に挟み込まれる。これにより、スリーブと支柱とは、締め付け部材によって固定される。スリーブに設けられた係止爪と締め付け部材に設けられた係合部とが係合することにより、締め付け部材がスリーブ本体側と反対の側に移動することは規制される。そのため、締め付け部材が緩んでしまうことが抑制され、また、締め付け部材が緩んだとしても外れてしまうことは防止される。したがって、スリーブと支柱との間のがたつきを抑えることができる。
【0011】
前記締め付け部材は、雄ねじ部が形成された外周面を有する筒状部材と、前記筒状部材の雄ねじ部と係合する雌ねじ部が形成された内周面と、前記係合部が形成された外周面とを有するナットと、を備え、前記ナットを前記筒状部材にねじ込むことによって前記筒状部材が前記スリーブ本体側に移動し、前記係止片と前記支柱とが前記筒状部材を介して前記ナットに締め付けられるように構成されていてもよい。
【0012】
このことにより、ナットを筒状部材にねじ込むことにより、係止片および支柱は筒状部材を介してナットに締め付けられ、固定される。
【0013】
前記係止片の外周面に雄ねじ部が形成され、前記締め付け部材は、前記係止片の雄ねじ部と係合する雌ねじ部が形成された内周面と、前記係合部が形成された外周面とを有するナットによって構成されていてもよい。
【0014】
このことにより、ナットを係止片にねじ込むことにより、係止片および支柱はナットによって締め付けられ、固定される。
【0015】
前記係止片には、径方向の外方に突出し、前記締め付け部材と係合する凸部が設けられていてもよい。
【0016】
このことにより、締め付け部材はスリーブに対し、前記係止爪と前記係合部との係合だけでなく、上記凸部によっても係合することになる。そのため、締め付け部材の緩みまたは脱落は、より一層抑制される。
【0017】
前記係止爪は、径方向の内方に突出する第1の凸部を有し、前記第1の凸部の内側面は、前記スリーブ本体側へ行くほど径方向の内方に向かうように傾斜していることが好ましい。
【0018】
このことにより、締め付け部材をスリーブ本体側に動かしたときに、第1の凸部の内側面に作用する力の一部は、係止爪を径方向の外方に押し広げる力に変換される。そのため、締め付け部材をスリーブ本体側に動かしたときに、係合部を係止爪のスリーブ本体側に容易に導くことができ、係止爪と係合部とを容易に係合させることができる。
【0019】
前記係止爪は、径方向の内方に突出する第1の凸部を有し、前記締め付け部材の係合部は、径方向の外方に突出すると共に前記第1の凸部よりも前記スリーブ本体側に位置し、前記第1の凸部と係合する第2の凸部によって形成され、前記第2の凸部の外側面は、前記スリーブ本体側へ行くほど径方向の内方に向かうように傾斜していることが好ましい。
【0020】
このことにより、締め付け部材をスリーブ本体側に動かしたときに、係止爪は第2の凸部から径方向の外向きの力を受け、外向きに押し広げられやすくなる。そのため、締め付け部材をスリーブ本体側に動かしたときに、第2の凸部を第1の凸部のスリーブ本体側に容易に導くことができ、第1の凸部と第2の凸部とを容易に係合させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、長さ調整が可能であって、がたつきが発生しにくい脚部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】脚部構造を備えたポータブルトイレの斜視図である。
【図2】脚部構造の分解斜視図である。
【図3】脚部構造の正面図である。
【図4】脚部構造の側面図である。
【図5】一方のスリーブ部品の正面図である。
【図6】一方のスリーブ部品の背面図である。
【図7】他方のスリーブ部品の正面図である。
【図8】脚部構造の縦断面図であり、図3のA−A線断面図である。
【図9】脚部構造の他の縦断面図である。
【図10】固定リングの正面図である。
【図11】固定リングの平面図である。
【図12】図10のB−B線断面図である。
【図13】ナットの正面図である。
【図14】ナットの縦断面図である。
【図15】脚部構造の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態に係る脚部構造10は、介護用品の一例としてのポータブルトイレ1に設けられたものである。ただし、脚部構造10の適用対象はポータブルトイレ1に限らず、浴槽台等の他の介護用品であってもよい。また、脚部構造10は、介護用品以外の物に適用することも可能である。
【0024】
ポータブルトイレ1は、便座5が形成された便器本体2と、背もたれ4と、肘掛け3と、便器本体2の下部に設けられた脚部構造10とを備えている。脚部構造10は、便器本体2の四隅に設けられている。便器本体2の下面の四隅には孔(図示せず)が形成されている。これらの孔には、後述する脚部構造10のスリーブ20(図3参照)が挿入されている。脚部構造10のスリーブ20は、上記孔内に固定されている。
【0025】
図2は脚部構造10の分解斜視図、図3は同正面図、図4は同側面図である。図2〜図4に示すように、脚部構造10は、スリーブ部品20Aおよび20Bが組み合わされてなるスリーブ20と、スリーブ20に挿入される支柱11と、スリーブ20と支柱11とを固定するための固定リング50およびナット60と、スリーブ20の上側の開口部に嵌め込まれる端末栓70とを備えている。脚部構造10は、スリーブ20に対する支柱11の挿入量を調整することにより、長さの調整が可能に構成されている。固定リング50およびナット60は、スリーブ20と支柱11とを締め付けることによって、それらスリーブ20および支柱11を固定するものである。
【0026】
本実施形態に係る脚部構造10では、支柱11がスリーブ20の下側に配置されているが、それらの上下位置は逆であってもよい。すなわち、支柱11がスリーブ20の下側に配置されていてもよい。
【0027】
支柱11は、円盤状の台座12と、台座12から上方に延びる支柱本体13とを有している。台座12および支柱本体13は、ポリプロピレン(PP)によって一体成形されている。ただし、台座12と支柱本体13とは別体に形成され、互いに組み立てられていてもよい。支柱11の材料は合成樹脂に限らず、金属等の他の材料であってもよい。支柱本体13は、中空円筒状に形成されている。ただし、支柱本体13は中実状であってもよい。支柱本体13の外周面には、螺旋状の溝からなる雄ねじ部14が形成されている。台座12の下部には、ゴム製のカバー15が取り付けられている。カバー15により、脚部構造10の滑りが防止される。
【0028】
スリーブ20は、一対のスリーブ部品20Aおよび20Bによって構成されている。スリーブ部品20Aおよび20Bが互いに組み立てられることによって、略円筒状のスリーブ20が形成される。スリーブ部品20Aおよび20Bは、スリーブ20の長手方向に沿った断面(鉛直面)にて分割された2つの部品である。ただし、スリーブ20は、スリーブ20の長手方向に沿った断面にて分割された3つ以上の部品によって形成されていてもよい。スリーブ部品20Aおよび20Bは、固定リング50によって互いに固定される。
【0029】
図5はスリーブ部品20Aの正面図であり、スリーブ部品20Aの内側の構造を表している。図6はスリーブ部品20Aの背面図であり、スリーブ部品20Aの外側の構造を表している。図7はスリーブ部品20Bの正面図であり、スリーブ部品20Bの内側の構造を表している。
【0030】
図5に示すように、スリーブ部品20Aには、表側に突出する凸部31と、裏側に凹んだ凹部32とが形成されている。図7に示すように、スリーブ部品20Bにも、表側に突出する凸部31と、裏側に凹んだ凹部32とが形成されている。スリーブ部品20Aとスリーブ部品20Bとを重ね合わせたときに、スリーブ部品20Aの凸部31はスリーブ部品20Bの凹部32に嵌り込み、スリーブ部品20Bの凸部31はスリーブ部品20Aの凹部32に嵌り込む。これら凸部31および凹部32によって、スリーブ部品20Aとスリーブ部品20Bとの位置合わせが容易となっている。ただし、これら凸部31および凹部32は必ずしも必要ではない。スリーブ部品20Aとスリーブ部品20Bとは、凸部31および凹部32の位置が異なる以外は同一の構成を有している。
【0031】
図8は脚部構造10の縦断面図であり、図3のA−A線断面図である。図9は、脚部構造10の他の縦断面図である。図9に示す断面は、図8に示す断面に対し、支柱11の中心回りに45度異なった位置の断面である。
【0032】
図8および図9に示すように、スリーブ20は、下端に開口部21が形成されたスリーブ本体22と、スリーブ本体22から下方に延びる複数の係止片23とを有している。スリーブ本体22の下端部には、径方向の外方に突出するフランジ部25が形成されている。係止片23はフランジ部25から下方に延びている。係止片23は、互いに隙間24(図2参照)を介して周回状に配置されている。ここでは、4つの係止片23が等間隔に並んでいる。ただし、係止片23の個数は2つ以上であれば足り、必ずしも4つに限定される訳ではない。スリーブ部品20Aおよび20Bはポリプロピレン(PP)等の合成樹脂からなっており、射出成形等によって一体成形されている。係止片23は、根元部である上端部を支点として、径方向の内方に撓み変形可能である。係止片23の下側部分の外周面は、下方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。係止片23の下端部には、径方向の外方に突出する凸部29が形成されている。凸部29の外側面は、下方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。
【0033】
スリーブ20の内周面には、螺旋状の溝からなる雌ねじ部26が形成されている。図5および図7に示すように、スリーブ部品20Aおよび20Bのスリーブ本体22および係止片23の内周面に、雌ねじ部26が形成されている。図8に示すように、スリーブ20の雌ねじ部26は、支柱11の雄ねじ部14と係合する。支柱11をスリーブ20に対して回転させると、支柱11の挿入量が変更される。ここでは、平面視にて支柱11を時計回り方向に回転させると、支柱11の挿入量が少なくなり、脚部構造10の長さは長くなる。平面視にて支柱11を反時計回り方向に回転させると、支柱11の挿入量が多くなり、脚部構造10の長さは短くなる。
【0034】
スリーブ本体22の下端部には、爪27が形成されている。爪27の個数は特に限定されないが、ここでは2つの爪27が設けられている。2つの爪27は、スリーブ20の中心を挟んで反対側に配置されている。言い換えると、2つの爪27は、スリーブ20の中心回りに180°異なる位置に配置されている。各爪27の横断面形状は円弧状に形成されている。各爪27は、爪27A(図5参照)と爪27B(図7参照)とで形成されている。爪27Aはスリーブ部品20Aに形成され、爪27Bはスリーブ部品20Bに形成されている。スリーブ部品20Aとスリーブ部品20Bとが組み合わせられると、爪27Aと爪27Bとが周方向に重なり、爪27を形成する。ただし、必ずしも各爪27が2つの爪27Aおよび27Bによって形成されている必要はない。爪27は一体物であってもよい。例えば、スリーブ部品20Aおよび20Bに、それぞれ1つの爪27が形成されていてもよい。
【0035】
爪27は、スリーブ本体22のフランジ部25から下方に延びている。爪27の長さは、係止片23の長さよりも短い。爪27は、係止片23よりも径方向の外方に設けられている。爪27の先端には、径方向の内方に突出する凸部28が設けられている。凸部28の内側面は、スリーブ本体22側に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。言い換えると、凸部28の内側面は、下方に向かって開いたテーパー面となっている。係止片23と同様、爪27はスリーブ本体22に一体的に形成されている。爪27は、根元部である上端部を支点として撓み変形可能である。
【0036】
図10は固定リング50の正面図、図11は固定リング50の平面図である。図12は、図10のB−B線断面図である。固定リング50は略円筒状に形成されている。固定リング50の外周面には、雄ねじ部51が形成されている。固定リング50の上端部には、径方向の外方に突出するフランジ部52が形成されている。
【0037】
図12に示すように、固定リング50の内周面には、軸方向に延びる凸部53が形成されている。ここでは、凸部53は2本のリブ53a,53bによって構成されている。ただし、凸部53は1本のリブによって構成されていてもよい。リブ53aとリブ53bとは、周方向に隣り合っている。図11に示すように、リブ53aのリブ53b側と逆側の端部と、リブ53bのリブ53a側と逆側の端部との間の距離は、凸部53の横幅Wとなる。凸部53の横幅Wは、スリーブ20の係止片23の隙間24の間隔以下となっている。言い換えると、凸部53は係止片23の隙間24に挿入可能な大きさに形成されている。ここでは、凸部53の横幅Wは、隙間24の間隔とほぼ等しくなっている。前述の通り、スリーブ20には、4つの係止片23が等間隔に配置されている。スリーブ20には、4つの隙間24が形成されている。固定リング50には、スリーブ20の4つの隙間24に対応するように、4つの凸部53が周方向に等間隔に形成されている。
【0038】
図12に示すように、固定リング50の下側部分の内周面54は、下方に行くほど内径が小さくなるように形成されている。言い換えると、内周面54は、下方に行くほど内方に向かうように傾斜したテーパー面となっている。固定リング50の下端部の内径D2は、上端部の内径D1よりも小さくなっている。固定リング50の上端部の内径D1は、撓み変形していないときのスリーブ20の係止片23の外径と略同一である。固定リング50の下端部の内径D2は、撓み変形していないときのスリーブ20の係止片23の外径よりも小さくなっている。固定リング50は、例えばABS等の合成樹脂によって一体成形されている。
【0039】
図13はナット60の正面図、図14はナットの縦断面図である。ナット60は略円筒状に形成されている。ナット60は、フランジ部61と、ナット本体部62と、台座部63とからなっている。フランジ部61は、ナット60の上端部に設けられている。フランジ部61は、径方向の外方に突出している。フランジ部61の外側面61aは、上方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。フランジ部61とナット本体部62との間には、径方向の内方に凹んだ凹部64が形成されている。図14に示すように、ナット本体部62の内周面には、雌ねじ部65が形成されている。台座部63はナット本体部62の下側に設けられている。台座部63の内径、外径は、ナット本体部62の内径、外径よりもそれぞれ大きくなっている。ナット60は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂によって一体成形されている。
【0040】
次に、脚部構造10の組立方法について説明する。まず、スリーブ部品20Aとスリーブ部品20Bとを重ね合わせ、スリーブ20を形成する。
【0041】
次に、スリーブ20の係止片23の周囲に固定リング50を嵌め込む。具体的には、固定リング50の凸部53をスリーブ20の係止片23間の隙間24に挿入し、固定リング50をスリーブ本体22側に向かってスライドさせる。前述したように、係止片23の下側部分の外周面は、下方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。係止片23の凸部29の外側面は、下方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。そのため、固定リング50を係止片23の周囲に容易に嵌め込むことができる。固定リング50の下端部の内径D2は係止片23の外径よりも小さいため、固定リング50をスリーブ本体22側に向かってスライドさせると、係止片23は径方向の内方に撓み変形する。固定リング50は、係止片23の復元力によって、係止片23に係止される。
【0042】
次に、ナット60を固定リング50に取り付ける。前述したように、固定リング50の外周面には雄ねじ部51が形成され、ナット60の内周面には雌ねじ部65が形成されている。雄ねじ部51と雌ねじ部65とを係合させ、ナット60を固定リング50に対して所定方向(例えば、平面視において反時計回り方向)に回転させることにより、固定リング50の周囲にナット60を取り付けることができる。この際、固定リング50を介して係止片23が内方に大きく撓んでしまわない程度に、ナット60を固定リング50に対してゆるく締め付ける。ナット60の回転に伴い、ナット60の上端のフランジ部61は、徐々に上方に移動する。やがてフランジ部61はスリーブ20の爪27の凸部28を乗り越え、凸部28の上方に移動する。フランジ部61の外側面61aは上方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜し、凸部28の内側面は上方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。そのため、外側面61aと内側面とが接触した際に、フランジ部61は爪27を径方向の外方に押し広げる。したがって、ナット60を固定リング50に取り付けた際に、フランジ部61は凸部28を容易に乗り越えることができる。フランジ部61が凸部28の上方に移動すると、フランジ部61と凸部28とが係合する。これにより、ナット60の下方への移動が規制され、また、ナット60の脱落が防止される。
【0043】
次に、上述のようにして組み立てたスリーブ20、固定リング50、およびナット60に、支柱11を挿入する。具体的には、支柱11の上端部をナット60、スリーブ20の係止片23の順に挿入し、支柱11の雄ねじ部14とスリーブ20の雌ねじ部26とを係合させ、支柱11をスリーブ20に対して回転させる。支柱11の回転に伴って、スリーブ20に対する支柱11の挿入量が大きくなり、脚部構造10の長さは短くなる。脚部構造10の長さが所望の長さになると、支柱11の回転を止める。
【0044】
次に、ナット60を締め付けることにより、スリーブ20と支柱11とを固定する。ナット60を回転させると、固定リング50が上方に移動する。固定リング50の下側部分の内周面54は、下方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。固定リング50が上昇するほど、係止片23の撓み量が多くなり、係止片23は支柱11の外周面に強く押し当てられる。係止片23と支柱11とは、より強く密着することになる。このように、ナット60を締め付けると、スリーブ20と支柱11とは固定リング50によって強く固定されることになる。
【0045】
以上のようにして、脚部構造10は所望の長さに調整される。スリーブ20と支柱11とは堅牢に固定されるので、がたつきは発生しにくい。
【0046】
脚部構造10の長さを変更する場合には、ナット60を逆回転させ、固定リング50を若干下方に移動させる。この際、係止片23は、自らの弾性力によって復元し、径方向の外方に移動する。これにより、スリーブ20と支柱11との密着状態が解除され、支柱11をスリーブ20に対して回転させることが可能となる。次に、支柱11をスリーブ20に対して回転させることにより、脚部構造10の長さを所望の長さに調整する。脚部構造10の長さが所望の長さになると、ナット60を締め付け、スリーブ20と支柱11とを固定する。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る脚部構造10によれば、スリーブ20の爪27の凸部28とナット60のフランジ部61とが係合し、ナット60の下方への移動が規制される。そのため、ナット60が緩んでしまうことが抑えられ、ひいては固定リング50の緩みが抑制される。また、仮にナット60が緩んだとしても、ナット60が外れてしまうことは防止される。したがって、スリーブ20と支柱11との間のがたつきを抑えることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、スリーブ20の爪27と係合するナット60の係合部は、フランジ部61によって形成されていた。しかし、爪27と係合する係合部は、フランジ部61に限られない。また、フランジ部61は必ずしも必要ではない。例えば、爪27の凸部28とナット60の凹部64との係合によって、ナット60の下方への移動が規制されていてもよい。爪27の凸部28と係合する係合部は、ナット60の径方向の外方に突出する凸部(本実施形態のフランジ部61等)に限らず、ナット60の径方向の内方に凹んだ凹部等であってもよい。また、爪27に凹部が形成され、ナット60の係合部は当該凹部と係合する凸部であってもよい。スリーブ20の爪27とナット60の係合部との係合構造は、本実施形態の係合構造に限定される訳ではない。
【0049】
本実施形態では、スリーブ20と支柱11とを締め付けるための締め付け部材は、固定リング50およびナット60によって構成されている。ナット60を固定リング50に対し所定方向に回転させると、固定リング50が係止片23の根元側に移動すると共に、ナット60が固定リング50にねじ込まれる。これにより、係止片23が径方向の内方に撓み、係止片23と支柱11とが固定リング50によって堅牢に締め付けられる。
【0050】
係止片23の下端部には、径方向の外方に突出する凸部29が形成されている。凸部29は、ナット60の下端面と係合する。そのため、ナット60は、フランジ部61と爪27の凸部28との係合だけでなく、凸部29によってもスリーブ20と係合することになる。したがって、ナット60の緩みおよび脱落を一層防止することができる。
【0051】
爪27の凸部28の内側面は、上方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。また、ナット60のフランジ部61の外側面61aは、上方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。ナット60を上方に移動させると、凸部28はフランジ部61から上向きの力を受けるが、内側面は上方斜め内向きに傾斜しているので、上記力の一部は爪27を外方に押し広げる力に変換される。また、フランジ部61の外側面61aは上方斜め内向きに傾斜しているので、ナット60の上方への移動に伴って、フランジ部61は凸部28に対して径方向の外向きの力を与えることになる。そのため、ナット60の上方への移動に伴い、爪27は径方向の外方に容易に押し広げられる。このようにフランジ部61は凸部28の上方に容易に移動することができるので、フランジ部61と凸部28とを容易に係合させることができる。
【0052】
<第2実施形態>
図15に示すように、第2実施形態に係る脚部構造10は、締め付け部材をナット60のみで構成したものである。
【0053】
第2実施形態に係る脚部構造10では、係止片23の外面にも雄ねじ部26Bが形成されている。ナット60の内周面には、雄ねじ部26Bと係合する雌ねじ部65が形成されている。第1実施形態では、固定リング50の内周面に、係止片23と係合する凸部53が設けられていた(図2参照)。これに対し本実施形態では、係止片23と係合する凸部53は設けられていない。
【0054】
本実施形態においても、スリーブ本体22の下端部には、下方に延びる一対の爪27が設けられている。爪27は、スリーブ20の中心を挟んで反対側に配置されている。第1実施形態では、各爪27は2つの爪27Aおよび27Bに分割されていたが、本実施形態では各爪27は一体的に形成されている。スリーブ部品20Aおよび20Bのそれぞれに、1つの爪27が設けられている。なお、図15では、スリーブ部品20Bの爪27は図示されているが、スリーブ部品20Aの爪27は係止片23の裏側に位置しているため、図示されていない。
【0055】
本実施形態では、係止片23はナット60によって直接締め付けられる。ナット60の雌ねじ部65と係止片23の雄ねじ部26Bとを係合させ、ナット60を回転させると、ナット60は徐々に上昇する。図示は省略するが、ナット60の内周面は、下方に行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している。ナット60が上昇するほど、係止片23は径方向の内方に撓み、係止片23は支柱11により強く密着する。本実施形態においても、ナット60を締め付けることにより、スリーブ20と支柱11とを堅牢に固定することができる。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0056】
本実施形態においても、スリーブ20の爪27の凸部28とナット60のフランジ部61とが係合し、ナット60の下方への移動が規制される。そのため、ナット60の緩みおよび脱落を防止することができ、スリーブ20と支柱11との間のがたつきを抑えることができる。
【0057】
<変形例>
本発明は前記実施形態に限らず、他に種々の形態にて実施することができる。以下、いくつかの変形例について簡単に説明する。
【0058】
締め付け部材は、必ずしも略円筒状に形成されていなくてもよい。例えば、締め付け部材は、略C字状に形成されていてもよい。例えば、締め付け部材は、変形可能なCリングであってもよい。締め付け部材を合成樹脂製のCリングで構成してもよい。略C字状の締め付け部材を側方から係止片23に取り付けることにより、係止片23および支柱11を締め付けることができる。
【0059】
固定リング50の凸部53は、軸方向に延びるリブでなくてもよい。例えば、凸部53は、半球状に形成されていてもよい。
【0060】
係止片23は、必ずしもスリーブ20の下端部に設けられていなくてもよい。係止片23は、スリーブ20の中途部に設けられていてもよい。
【0061】
係止片23の凸部29の外側面は、必ずしも傾斜していなくてもよい。凸部29の外側面は、鉛直面であってもよい。また、凸部29は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
【0062】
爪27の凸部28の内側面、およびナット60のフランジ部61の外側面61aは、必ずしも傾斜していなくてもよい。凸部28の内側面およびフランジ部61の外側面61aは、鉛直面であってもよい。ナット60の凹部64は必ずしも必要ではない。また、前述の通り、爪27の凸部28とナット60の凹部64との係合によって、ナット60の下方への移動を規制することとし、フランジ部61を省略することも可能である。この場合、爪27の凸部28の内側面およびナット60の上端部の外側面は鉛直面であってもよいが、凸部28と凹部64との係合を容易にするため、爪27の凸部28の内側面およびナット60の上端部の外側面を傾斜させてもよい。
【0063】
スリーブ20は、必ずしも複数のスリーブ部品20Aおよび20Bによって構成されている必要はない。スリーブ20は単一物であってもよい。
【0064】
スリーブ20と支柱11とは、互いにねじ込まれるものでなくてもよい。例えば、スリーブ20と支柱11とは、軸方向にスライド可能であってもよい。スリーブ20と支柱11との高さ調整のための機構は、特に限定される訳ではない。
【符号の説明】
【0065】
10 脚部構造
11 支柱
20 スリーブ
20A,20B スリーブ部品
22 スリーブ本体
23 係止片
27 爪(係止爪)
28 凸部(第1の凸部)
50 固定リング(筒状部材)
53 凸部
60 ナット
61 フランジ部(係合部、第2の凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端側に開口部が形成されたスリーブ本体と、それぞれ前記スリーブ本体の一端側から軸方向に延びると共に周方向に互いに離間するように配置され、根元部を支点として撓み変形可能な複数の係止片と、を有するスリーブと、
挿入量の変更が可能なように前記スリーブに挿入された支柱と、
前記係止片の径方向の外側に装着され、前記支柱の外周面との間に前記係止片を挟み込む内面を有し、前記スリーブ本体側に動かされることによって、前記係止片を径方向の内方に撓み変形させて前記係止片と前記支柱とを締め付ける締め付け部材と、を備え、
前記スリーブ本体の一端側には、前記係止片よりも径方向の外方に位置する係止爪が設けられ、
前記締め付け部材の外面には、前記係止爪と係合する係合部が形成されている、脚部構造。
【請求項2】
前記締め付け部材は、
雄ねじ部が形成された外周面を有する筒状部材と、
前記筒状部材の雄ねじ部と係合する雌ねじ部が形成された内周面と、前記係合部が形成された外周面とを有するナットと、を備え、
前記ナットを前記筒状部材にねじ込むことによって前記筒状部材が前記スリーブ本体側に移動し、前記係止片と前記支柱とが前記筒状部材を介して前記ナットに締め付けられるように構成されている、請求項1に記載の脚部構造。
【請求項3】
前記係止片の外周面に雄ねじ部が形成され、
前記締め付け部材は、前記係止片の雄ねじ部と係合する雌ねじ部が形成された内周面と、前記係合部が形成された外周面とを有するナットによって構成されている、請求項1に記載の脚部構造。
【請求項4】
前記係止片には、径方向の外方に突出し、前記締め付け部材と係合する凸部が設けられている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の脚部構造。
【請求項5】
前記係止爪は、径方向の内方に突出する第1の凸部を有し、
前記第1の凸部の内側面は、前記スリーブ本体側へ行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している、請求項1〜4のいずれか一つに記載の脚部構造。
【請求項6】
前記係止爪は、径方向の内方に突出する第1の凸部を有し、
前記締め付け部材の係合部は、径方向の外方に突出すると共に前記第1の凸部よりも前記スリーブ本体側に位置し、前記第1の凸部と係合する第2の凸部によって形成され、
前記第2の凸部の外側面は、前記スリーブ本体側へ行くほど径方向の内方に向かうように傾斜している、請求項1〜4のいずれか一つに記載の脚部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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