説明

脱カフェインされた生コーヒー豆抽出物の製造方法

【課題】クロロゲン酸類組成に著しい変化のない、また色相の良い、選択的にカフェインが除去された生コーヒー豆抽出物の提供すること。
【解決手段】固形分中にクロロゲン酸類を25〜60質量%含有するカフェイン含有生コーヒー豆抽出物を、有機溶媒と水の質量比が8/2〜5/5の混合溶液に溶解させ、活性炭及び/又は活性白土もしくは酸性白土と接触させる、脱カフェインされた生コーヒー豆抽出物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフェイン含有生コーヒー豆から選択的にカフェインを除去することにより、脱カフェインされた生コーヒー豆抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、食品中に含まれる種々の成分の生理作用に関心が高まっており、厚生労働省もそのような生理学的機能や生物学的活動に関与する成分を含有する食品に対して特定保健用食品として許可を与えることとしている。これらの食品は、飲料、ヨーグルト、スープ、味噌汁、ハンバーグなどの惣菜、錠菓・錠剤などの形態で商品化されており、一日1〜2回の摂取が奨められている。
【0003】
生理活性機能を有する素材として、様々な素材が提案されているが、抗酸化作用、血圧降下作用、肝機能改善作用等の生理活性機能を有するものとしてポリフェノール類がある(特許文献1、2)。特に血圧降下作用が注目されており、この作用を有するポリフェノールを配合した商品が特定保健用食品として許可されている。中でも、クロロゲン酸類の血圧降下作用が高く、減塩醤油に配合するという技術がある(特許文献3)。
【0004】
クロロゲン酸類を多く含むものとしてコーヒー豆が挙げられるが、これには、同時にカフェインが5〜25質量%程度含まれ、通常の抽出方法ではカフェインのみ分離することができない。カフェインは中枢神経興奮作用を示すことから、眠気抑制に使用されている反面、過剰摂取による神経過敏、吐き気、不眠などの有害作用を引き起こす原因にもなるといわれている。このため、カフェイン含有組成物から、カフェインのみを選択的に除去する方法が検討されてきた。例えば、コーヒーの脱カフェイン方法として、120〜250気圧下において、コーヒーを活性炭等のカフェイン吸着剤と接触させる方法(特許文献4)や、カフェインを含有する水溶液を活性白土又は酸性白土と接触させることにより選択的にカフェインを除去する方法(特許文献5)が提案されている。
【0005】
しかしながら、前者は超臨界抽出技術に関するものであり、プロセス上の設備負荷が過大で工業レベルでの実施において簡易性に欠ける。また、この方法はカフェインのみを選択的に除去するのではなく、有効成分であるクロロゲン酸類の組成も変化させてしまうという問題がある。一方、後者の方法は、活性白土又は酸性白土を使用するだけで選択的にカフェインを除去できるが、色相が悪化する場合があるなどの問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-84565号公報
【特許文献2】特開2003−128560号公報
【特許文献3】特開2004−194515号公報
【特許文献4】特開昭53−18772号公報
【特許文献5】特開平6−142405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、カフェイン含有生コーヒー豆抽出物中のカフェインを、クロロゲン酸類の組成を著しく変化させることなく、選択的に除去し、かつ色相及び風味の良好なコーヒー豆抽出物を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、生コーヒー豆抽出物を、特定の割合の水と有機溶媒の混合溶液中に溶解させた状態で、活性炭及び/又は活性白土もしくは酸性白土と接触させることにより、クロロゲン酸類の組成を著しく変化させることなく、しかも色相を悪化させずに、生コーヒー豆抽出物から選択的にカフェインを除去することができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、固形分中にクロロゲン酸類を25〜60質量%含有するカフェイン含有生コーヒー豆抽出物を、有機溶媒と水の質量比が8/2〜5/5の混合溶液に溶解させ、活性炭及び/又は活性白土もしくは酸性白土と接触させる、脱カフェインされた生コーヒー豆抽出物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、クロロゲン酸類の組成に著しい変化のない、また色相及び風味の良い、選択的にカフェインが除去された生コーヒー豆抽出物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明方法に用いられる生コーヒー豆抽出物は、クロロゲン酸類を1種以上含有するものである。クロロゲン酸類としては、カフェオイルキナ酸類、フェルロイルキナ酸、ジカフェオイルキナ酸が挙げられ、その他にカフェ酸、フェルラ酸等が含まれていても良い。このうち、クロロゲン酸類は生コーヒー豆中に多く含まれ、安定かつ持続的な血圧降下作用を有することから特に好ましい。また、クロロゲン酸類は生コーヒー豆抽出物中10質量%以上含むことが、その後の精製工程等の負荷の点から好ましい。
【0012】
クロロゲン酸類には、異性体、類縁体が存在し、純粋な異性体、類縁体又はそれらの混合物が含まれる。本発明において、クロロゲン酸類には、具体的に、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸(クロロゲン酸)、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、4,5−ジカフェオイルキナ酸、3−フェルリルキナ酸、4−フェルリルキナ酸、5−フェルリルキナ酸及び3−フェルリル−4−カフェオイルキナ酸等が含まれることが好ましい。
【0013】
抽出に使用される生コーヒー豆は、アラビカ種、例えばモカ、コロンビア、及びブラジル、ロブスタ種では例えばジャワロブスタ、AP−1及びベトナムロブスタ又はそれらの雑種等から得られる生コーヒー豆が挙げられる。
生コーヒー豆からのカフェイン及びクロロゲン酸類含有組成物の抽出は、撹拌抽出等の方法により行うことができる。抽出の際、水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸又は有機酸塩類を添加しても良い。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。
【0014】
生コーヒー豆から抽出する代わりに、生コーヒー豆抽出物の濃縮物を水に溶解あるいは希釈して用いても、生コーヒー豆からの抽出液と生コーヒー豆抽出物の濃縮物とを併用しても良い。
ここで、生コーヒー豆抽出物の濃縮物とは、生コーヒー豆から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであり、例えば、特開昭58−138347号公報、特開昭59−51763号公報、特開昭62−111671号公報、特開平5−236918号公報等に記載されている方法により調製したものをいう。
【0015】
カフェイン含有生コーヒー豆抽出物としては、乾燥質量で、クロロゲン酸類を15〜90質量%、特に25〜70質量%、更に25〜60質量%含有する生コーヒー豆抽出物を用いるのが好ましい。
【0016】
具体的には、生コーヒー豆抽出物としては、長谷川香料(株)「フレーバーホルダーRC-30R」、オリザ油化(株)「生コーヒー豆エキスP」、東洋発酵(株)「OXCH100」等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いる有機溶媒としては、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。これらのうち、エタノール、メタノール、アセトンの親水性有機溶媒が好ましく、特に食品への使用を考慮すると、エタノールが好ましい。
【0018】
本発明においては、有機溶媒と水の質量比を9/1〜1/9、好ましくは9/1〜5/5、より好ましくは8/2〜6/4の範囲に調整することが必要である。有機溶媒の割合が9/1を超えるとクロロゲン酸類の抽出効率が落ちてしまい、また1/9未満では、脱カフェイン品の味の改善効果が不十分となる。
【0019】
カフェイン含有生コーヒー豆抽出物を有機溶媒と水の混合溶液に溶解する方法は特に制限されず、カフェイン含有生コーヒー豆抽出物を水に溶解した後に有機溶媒を添加していくことによって有機溶媒と水の質量比を9/1〜1/9の範囲にしても良く、カフェイン含有生コーヒー豆抽出物を有機溶媒に懸濁させた後、徐々に水を添加して同様の比率としても良い。抽出効率の点から、水に溶解後に有機溶媒を添加していく方法が好ましい。カフェイン含有生コーヒー豆抽出物を処理する場合において、水のみでの処理ではクロロゲン酸類が活性炭に吸着されてしまうのに対し、有機溶媒の存在においてこの影響を排除できる。
【0020】
本発明においては、有機溶媒と水の混合溶液100質量部に対して、カフェイン含有生コーヒー豆抽出物10〜40質量部、特に15〜30質部添加して処理するのが、カフェイン含有生コーヒー豆抽出物を効率良く処理できるので好ましい。
【0021】
水又は有機溶媒の必要量の添加時間は10〜30分程度の時間でゆっくり滴下するのが好ましい。また、クロロゲン酸類の抽出効率を上げるために撹拌状態で滴下するのが好ましい。水の滴下終了後は10〜120分程度の熟成時間を設けると更に好ましい。
これらの処理は、10〜60℃で行うことができ、特に10〜50℃、更に10〜40℃で行うのが好ましい。
【0022】
本発明で用いる活性炭としては、一般に工業レベルで使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ZN−50(北越炭素社製)、クラレコールGLC、クラレコールPK−D、クラレコールPW−D(クラレケミカル社製)、白鷲AW50、白鷲A、白鷲M、白鷲C、白鷺WH2C(日本エンバイロケミカルズ社製)などの市販品を用いることができる。
活性炭の細孔容積は0.01〜0.8mL/gが好ましく、特に0.1〜0.7mL/gが好ましい。また、比表面積は800〜1300m2/g、特に900〜1200m2/gの範囲のものが好ましい。なお、これらの物性値は窒素吸着法に基づく値である。
【0023】
活性炭は、有機溶媒と水の混合溶液100質量部に対して0.5〜5質量部、特に0.5〜3質量部添加するのが好ましい。活性炭の添加量が少なすぎると、カフェイン除去効率が悪くなり、また多すぎるとろ過工程におけるケーク抵抗が大きくなり好ましくない。
【0024】
本発明で用いる酸性白土又は活性白土は、ともに一般的な化学成分として、SiO2、Al23、Fe23、CaO、MgO等を含有するものであるが、SiO2/Al23質量比が3〜12、特に4〜9であるのが好ましい。またFe23を2〜5質量%、CaOを0〜1.5質量%、MgOを1〜7質量%含有する組成のものが好ましい。
活性白土は天然に産出する酸性白土(モンモリロナイト系粘土)を硫酸などの鉱酸で処理したものであり、大きい比表面積と吸着能を有する多孔質構造をもった化合物である。酸性白土を更に、酸処理することにより比表面積が変化し、脱色能の改良及び物性が変化することが知られている。
【0025】
酸性白土又は活性白土の比表面積は、酸処理の程度等により異なるが、50〜350m2/gであるのが好ましく、pH(5%サスペンジョン)は2.5〜8、特に3.6〜7のものが好ましい。例えば、酸性白土としては、ミズカエース#600(水澤化学社製)等の市販品を用いることができる。
【0026】
酸性白土又は活性白土は、有機溶媒と水の混合溶液100質量部に対して2.5〜25質量部、特に2.5〜15質量部添加するのが好ましい。酸性白土又は活性白土の添加量が少なすぎると、カフェイン除去効率が悪くなり、また多すぎるとろ過工程におけるケーク抵抗が大きくなり好ましくない。
【0027】
また、活性炭と、酸性白土又は活性白土の割合は、質量比で活性炭1に対して1〜10が好ましく、活性炭:酸性白土又は活性白土=1:1〜1:6であるのが特に好ましい。
【0028】
生コーヒー豆抽出物の分散液と活性炭及び酸性白土又は活性白土との接触処理は、バッチ式、カラムによる連続処理等のいずれの方法で行っても良い。一般には、粉末状の活性炭等を添加、攪拌し、カフェインを選択的に吸着後、ろ過操作によりカフェインを除去した濾液を得る方法、あるいは顆粒状の活性炭等を充填したカラムを用いて連続処理によりカフェインを選択的に吸着する方法が採用される。
【0029】
活性炭及び酸性白土又は活性白土と接触させた後の生コーヒー豆抽出物の分散液は、系中から有機溶媒を取り除くべく減圧蒸留などの方法を用いて留去される。また処理後の生コーヒー豆抽出物は液状でも固体状でもいずれでも良いが、固体状態を調製する場合には凍結乾燥やスプレードライなどの方法によって粉末化しても良い。
【0030】
本発明により脱カフェイン処理を行った後の生コーヒー豆抽出物は、含有する非重合体クロロゲン酸類の組成が処理前と本質的に変化していないのが好ましい。処理前後の有機溶媒と水の混合溶液中の非重合体クロロゲン酸類の収率は70質量%以上が好ましく、更に80質量%以上が好ましい。
【0031】
本発明による脱カフェイン処理後の生コーヒー豆抽出物中のカフェイン濃度は、クロロゲン酸類に対して、クロロゲン酸類/カフェインの質量比が5〜80、更に10〜60、特に10〜50であるのが好ましい。10未満では、カフェインの呈味の影響が大きく食用に適さない。また、80以上では、ろ過工程の効率の観点から好ましくない。
【0032】
本発明により脱カフェイン処理を行った後の生コーヒー豆抽出物は、クロロゲン酸類が豊富に含まれるため、各種食品に配合して、血圧降下作用を有する食品、血圧降下作用を有する旨表示された食品、血圧が高めの方に適していますと表示された食品等とするのに最適である。食品としては、ゼリー、ケーキ等の菓子類;コーヒー、お茶類、スポーツドリンク、スープ等の飲料;味噌、醤油、つゆ、たれ等の調味料等が挙げられるが、吸収効率が良く、血圧降下作用を有効に発揮する点から液状食品が好ましく、更に、同様の点から飲料、調味料等の毎日摂取する食品に配合することが好ましい。配合量は、これらの食品中、生コーヒー豆抽出物の固形分量として0.1〜10質量%であることが好ましく、更に0.1〜5質量%、特に0.2〜3質量%、殊更0.3〜2質量%であることが、血圧降下作用、色相、及び風味の点から好ましい。
また、本発明により脱カフェイン処理を行った後の生コーヒー豆抽出物は、色相及び風味が良好で、各種食品に配合しても食品の品質に影響を与えることがない。そのため、上記食品の中でも味の淡泊な飲料、特にスポーツドリンク、無糖のお茶類や、食品の美味しさに微妙な影響を与える調味料等にも好ましく配合することができる。
【実施例】
【0033】
〔クロロゲン酸類含有量及びカフェイン含有量の測定方法〕
クロロゲン酸類含有量及びカフェインの分析法は次の通りである。
(分析機器)
HPLC(島津製作所(株))を使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通り。ディテクター:SPD−M10A、オーブン:CTO−10AC、ポンプ:LC−10AD、オートサンプラー:SIL−10AD、
カラム:Inertsil ODS−2 内径4.6mm×長さ250mm。
(分析条件)
サンプル注入量:10μL、流量:1.0mL/min、紫外線吸光光度計検出波長:325nm(クロロゲン酸類)、270nm(カフェイン)、溶離液A:0.05M酢酸3%アセトニトリル溶液、溶離液B:0.05M酢酸100%アセトニトリル溶液
(濃度勾配条件)
時間 溶離液A 溶離液B
0分 100% 0%
20分 80% 20%
35分 80% 20%
45分 0% 100%
60分 0% 100%
70分 100% 0%
120分 100% 0%
(クロロゲン酸類のリテンションタイム)
3−カフェオイルキナ酸(3−CQA):16.8min、
5−カフェオイルキナ酸(5−CQA):19.8min、
4−カフェオイルキナ酸(4−CQA):21.5min、
3−フェリルキナ酸(3−FQA):22.2min、
5−フェリルキナ酸(5−FQA):26.1min、
4−フェリルキナ酸(4−FQA):27.2min、
3,5−ジカフェイルキナ酸(3,5−diCQA):33.5min、
3,4ジカフェイルキナ酸(3,4−diCQA):33.8min、
4,5−ジカフェイルキナ酸(4,5−diCQA):36.0min
ここで求めたarea%から5−CQAを標準物質とし、質量%を求めた。
(カフェインのリテンションタイム)
カフェイン:19.4分
ここで求めたエリア%から標準物質により質量%を求めた。
【0034】
インドネシア産ロブスタ種AP−1生豆500gを5Lの98℃の熱水で4時間攪拌・抽出した。冷却後、固液分離を行い、抽出液を固形分濃度が20w/v%になるまで40℃にて減圧濃縮を行い生コーヒー豆抽出物を得た。得られた生コーヒー豆抽出物のポリフェノール含量は、カフェオイルキナ酸(CQA)4.68質量%、フェルリルキナ酸(FQA)0.98質量%、ジカフェオイルキナ酸(di−CQA)1.84質量%、カフェイン含有量1.69質量%である。
表1に示す条件により、カフェイン含有生コーヒー豆抽出物中のカフェインの除去処理を行った。
【0035】
実施例1
上記カフェイン含有生コーヒー豆抽出物固形分濃度20w/v%にエタノールをゆっくりと添加し、エタノール濃度60%に調整した。その後、活性炭白鷺WH2C(日本エンバイロケミカルズ社製)、を固形分に対して75w/v%添加し、2時間攪拌した。その後2号濾紙で濾過し、続けて0.2μmメンブランフィルターにて再濾過を行った。濾過液を40℃にてエタノールを留去した。水分量を調整し固形分を20w/v%に調整した後、噴霧乾燥を行った。噴霧乾燥機はパルビスミニスプレーGA32型(ヤマト科学社製)を用い、入口温度150℃、出口温度70℃にて乾燥を行った。
【0036】
実施例2
上記カフェイン含有生コーヒー豆抽出物固形分濃度20w/v%にエタノールをゆっくりと添加し、エタノール60w/v%濃度に調整した。その後、活性炭白鷺WH2Cと酸性白土ミズカエース♯600(水澤化学社製)を固形分に対してそれぞれ50w/v%添加し、2時間攪拌した。以外は実施例1と同様に行った。
【0037】
比較例1
上記カフェイン含有生コーヒー豆抽出物固形分濃度20w/v%を水で希釈し、固形分8w/v%濃度に調整した。その後、活性炭白鷺WH2Cを固形分に対して70w/v%添加し、2時間攪拌した。その後2号濾紙で濾過し、続けて0.2μmメンブランフィルターにて再濾過を行った。濾過液を40℃にて減圧濃縮を行い固形分を20w/v%に調整した後、噴霧乾燥を行った。
【0038】
比較例2
上記カフェイン含有生コーヒー豆抽出物固形分濃度20w/v%を水で希釈し、固形分8w/v%濃度に調整した。その後、固形分に対して活性炭白鷺WH2Cを50w/v%、酸性白土ミズカエース♯600を100w/v%添加し、2時間攪拌した。以外は比較例1と同様に行った。
【0039】
【表1】

【0040】
<実施例1〜2、比較例1〜2の水溶液での風味評価>
表1に示した生コーヒー豆抽出物をイオン交換水で総クロロゲン酸含量として1600mg/Lに溶解し、風味評価及び色相の観測を行った。
【0041】
表1の結果から明らかなように、本発明によりカフェイン含有生コーヒー豆抽出物を処理することにより、クロロゲン酸類組成を維持したまま、カフェインを選択的に除去し、色相を改良させかつ風味の優れた生コーヒー豆抽出物を得ることができる。
【0042】
<実施例1〜2、比較例1〜2のしょう油に配合したときの風味評価>
表1に示した生コーヒー豆抽出物を総クロロゲン酸量として40mg/10mLになるように市販減塩しょう油に配合し、風味評価(パネラー3名平均)を行った。しょう油の直舐め評価は、プラスチックスプーンにしょう油を2〜3滴をのせ、口に含んだときの風味を判定した。
更に実際にかまぼこ、ほうれん草のお浸し、マグロのお刺身を調製したしょう油で食し、評価を行い以下の基準で評価点をつけた。
【0043】
◎:異味なし
○:僅かに異味があるが、問題なし
△:少し異味がある
×:異味がある
【0044】
【表2】

【0045】
表2の結果から明らかなように、本発明によりカフェイン含有生コーヒー豆抽出物を処理することにより、しょう油に配合しても異味の少ない風味の優れた生コーヒー豆抽出物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分中にクロロゲン酸類を25〜60質量%含有するカフェイン含有生コーヒー豆抽出物を、有機溶媒と水の質量比が8/2〜5/5の混合溶液に溶解させ、活性炭及び/又は活性白土もしくは酸性白土と接触させる、脱カフェインされた生コーヒー豆抽出物の製造方法。
【請求項2】
脱カフェインされた生コーヒー豆抽出物におけるクロロゲン酸類/カフェイン(質量比)が5〜80である請求項1記載の脱カフェインされた生コーヒー豆抽出物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された方法により製造された生コーヒー豆抽出物を、該生コーヒー豆抽出物の固形分量として0.1〜10質量%含有する食品。
【請求項4】
食品が液状食品である請求項3記載の食品。
【請求項5】
食品が調味料である請求項3記載の食品。

【公開番号】特開2011−4766(P2011−4766A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228585(P2010−228585)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2004−370471(P2004−370471)の分割
【原出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】