脱ガス組成物
【課題】消化酵素を有効成分として含有する脱ガス組成物であって、様々なガス組成物、特にS化合物やN化合物等の悪臭を有意に消散除去でき、生体内脱ガス剤、生体内脱臭剤、抗腹部膨満剤ととして有用な脱ガス組成物を提供する。
【解決手段】消化酵素(例えばグルコシターゼ,プロテアーゼ,リパーゼ及びセルラーゼ等)を含有する脱ガス組成物、消化酵素に加えて乳酸菌(例えばアシドフィルス菌,フェリカス菌及びビフィズス菌等)又はジメチルポリシロキサンの少なくとも一種を含有する脱ガス組成物。抗腹部膨満剤、生体内脱臭剤又は整腸剤としての上記脱ガス組成物の使用。
【解決手段】消化酵素(例えばグルコシターゼ,プロテアーゼ,リパーゼ及びセルラーゼ等)を含有する脱ガス組成物、消化酵素に加えて乳酸菌(例えばアシドフィルス菌,フェリカス菌及びビフィズス菌等)又はジメチルポリシロキサンの少なくとも一種を含有する脱ガス組成物。抗腹部膨満剤、生体内脱臭剤又は整腸剤としての上記脱ガス組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、消化酵素を有効成分として含有することを特徴とする脱ガス組成物に関する。また本発明は、消化酵素に加えて乳酸菌又はジメチルポリシロキサンのいずれか少なくとも一種を含有する脱ガス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、バチルス属、ストレプトコッカス属、エンテロバクター属等の微生物に消臭作用があることが知られており、汚水タンクや排水口内で発生する悪臭を除去する消臭材としてこれらの微生物を利用した消臭材が提案されている(特開平6−473号公報、特開平7−275889号公報等)。
【0003】また、乳酸菌にも消臭作用並びにガス(屁)発生や腸の膨満感を低減する作用があることが報告されており、生体内消臭剤として応用されている(特開昭60−149527号公報、特開昭61−83128号等)。
【0004】しかしながら、かかる乳酸菌の働きは、乳酸菌が腸内の細菌叢を整えるといういわゆる整腸作用に基づくものであるため、一旦発生したガスについてはあまり顕著な効果が認めらない。このため、乳酸菌の働きが生体への作用効果として現れるには、かなりの期間を要するという欠点がある。
【0005】このように微生物を利用した消臭材(剤)や脱ガス剤等が種々開発されているものの、未だ十分な効果を発揮するもの、特に生体内脱ガス剤として有効なものはないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、消化酵素を有効成分として含有する脱ガス組成物であって、特にメルカプタンや硫化水素等の臭気ガスを選択的に消散除去することのできる脱ガス組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記消化酵素に加えて、乳酸菌又はジメチルポリシロキサンの少なくとも一種を含有する脱ガス組成物を提供することを目的とする。
【0007】当該発明は、特に生体における微量臭気ガスの発生を抑制するとともに、発生したガスをも除去消散することにより、腹部膨満感を軽減し、放屁時の悪臭発生をも抑制できる生体投与用の脱ガス組成物として有用である。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねていたところ、繊維素消化酵素であるセルラーゼに臭気ガスを選択的に消散除去する作用があることを見いだした。かかる知見に基づいて、本発明者らは更に検討を重ねたところ、セルラーゼのみならずデンプン消化酵素であるグルコシターゼ、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ及び脂肪消化酵素であるリパーゼといった消化酵素にも同様な作用があることを見いだした。
【0009】消化酵素はアミノ酸重合体からなる立体構造を有しているが、かかる立体構造内にガス成分が入ってアミノ酸の塩基により取り込まれることによって、脱ガス作用を発揮するするのではないかと考えられる。さらに種々の消化酵素はそれぞれ多様な立体構造を有しているので、種々の立体構造中に多種多様な臭気成分が取り込まれるものと考えられる。このため各種の消化酵素の利用によって多種多様な臭気成分が消散除去できる可能性が示唆される。
【0010】さらに、本発明者らは、上記の消化酵素に乳酸菌又はジメチルポリシロキサンのいずれか少なくとも一種を組み合わせることによって、生体体内中でのガスの発生を抑制しまた発生したガスを消散除去することによって腹部膨満感を軽減できること、さらに放屁時の悪臭発生が抑制できることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0011】即ち、本発明は、下記のいずれかの態様からなる脱ガス組成物である。
【0012】(1) 消化酵素を有効成分として含有する脱ガス組成物。
(2) 消化酵素がグルコシターゼ,プロテアーゼ,リパーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される少なくとも一種である(1)記載の脱ガス組成物。
【0013】(3) ガスが臭気ガスである(1)又は(2)記載の脱ガス組成物。
【0014】(4) 更に、乳酸菌又はジメチルポリシロキサンの少なくとも一種を含有する(1)乃 至(3)のいずれかに記載の脱ガス組成物。
【0015】(5) 乳酸菌が、少なくともアシドフィルス菌,フェリカス菌及びビフィズス菌から構成されるものである(4)記載の脱ガス組成物。
【0016】また、これらの脱ガス組成物は生体内の脱ガス剤としても有用である。よって、本発明は(1)乃至(5)のいずれかに記載の脱ガス組成物についての抗腹部膨満剤、生体内脱臭剤、整腸剤としての用途をも提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の脱ガス組成物は、消化酵素を有効成分として含有することを特徴とする。
【0018】ここで消化酵素とは、消化に携わる酵素一般を広く意味するものである。具体的にはペプチドや蛋白質、炭水化物、脂質又はセルロース等の繊維を基質とするものであり、例えば、ペプチド・蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ、炭水化物消化酵素であるカルボヒドロラーゼ、脂肪消化酵素であるリパーゼ及び繊維素消化酵素であるセルラーゼを挙げることができる。なお、プロテアーゼにはポリペプチドに作用するペプチダーゼ及び蛋白質に直接作用するプロテイナーゼが包含され、カルボヒドロラーゼには多糖を基質とするポリアーゼ及びグルコシドやオリゴ糖を基質とするアミラーゼが包含され、更にリパーゼにはリン脂質を基質とするホスホリパーゼも含まれる。
【0019】好ましくは、繊維素消化酵素であるセルラーゼ、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ、デンプン消化酵素であるグルコシダーゼ、脂肪消化酵素であるリパーゼであり、より好ましくはセルラーゼである。
【0020】なお、これらの消化酵素は単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
【0021】これらの消化酵素はその由来及び取得方法によって特に制限されるものではなく、植物、動物(ヒトを含む)、微生物等のいずれに由来するものであってもよく、さらに遺伝子工学的手法によって調製されるものであってもよい。なお、本発明の組成物を生体内脱ガス剤として用いる場合は、ヒトを含む哺乳動物に経口的に投与することのできる消化酵素であることが好ましい。
【0022】本発明の脱ガス組成物は、これらの消化酵素の少なくとも一種を含有することに基づいて、ガス、特に臭気ガスを消散除去する作用を有するものである。
【0023】ここで臭気ガスとは、特にヒトに不快感を与える悪臭を意味し、例えばメルカプタンや硫化水素等のS化合物、アンモニア,インドール及びスカトール等のN化合物又はトリメチルアミン等の有臭C化合物等を挙げることができる。好ましくは生体腸内に存在する臭気ガスであり、具体的にはメルカプタンや硫化水素等のS化合物を例示することができる。
【0024】本発明の脱ガス組成物の適用対象は、脱ガス、特に消臭を目的とするものであれば特に制限されず、例えば生体内外と問わず消臭材(剤)、脱ガス材(剤)として広く用いることができる。好ましくは、生体内脱ガス剤としての使用であり、生体内脱臭剤、抗腹部膨満剤、整腸剤としても用いることができる。
【0025】本発明の脱ガス組成物は、上記消化酵素に加えて、乳酸菌又はジメチルポリシロキサンのいずれか少なくとも1種を含有することができる。
【0026】本発明で用いられる乳酸菌は、上記各消化酵素の効果を妨げないものであればよく、この限りにおいて特に制限されるものではない。なお、前述するように適用対象を特に制限するものではないが、例えば本発明の組成物を生体内脱ガス剤として用いる場合は、ヒトを含む哺乳動物に経口的に投与することができ、生体消化管内で有用な作用を発揮する菌であることが好ましい。
【0027】より具体的には、宿主に対して無害で、胃酸や胆汁酸に比較的耐性があり、生体腸内に定着性を有して乳酸を産生し、腸内微生物叢を整える作用を有するものが望ましい。かかる有用乳酸菌としては、例えばアシドフィルス乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)、フェカリス菌(Streptococcus faecalis)、レウテリ乳酸桿菌(Lactobacillus reuteri)、カセイ乳酸桿菌(Lactobacillus casei)、プランタラム菌(Lactobacillus plantarum)、フェルメンタム乳酸桿菌(Lactobacillus fermentum)、ラムノサス乳酸桿菌(Lactobacillus rhamnosus)、アギルス乳酸桿菌(Lactobacillusagilis)、又はそれらのサブスピーシーズ等を例示することができるが、好ましくはアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)、フェカリス菌(Streptococcus faecalis)である。これらの乳酸菌は1種単独若しくは2種以上を適宜組み合わせて使用することができるが、好ましくは少なくともアシドフィルス菌、ビフィズス菌及びフェカリス菌の三種の乳酸菌を組み合わせて配合してなる乳酸菌である。
【0028】これらの乳酸菌は、生菌であれば取得の由来は特に制限されず、簡便には商業的に市販されているものを広く用いることができる。例えば、アシドフィルス菌としては、アシドフィルス菌の単一菌種を純粋培養し、集菌乾燥したものをバレイショデンプンで賦形し、調製したビオヂアスミンA(商品名:天野製薬(株)社製、生菌数:10〜9000億個/g)を、ビフィズス菌としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム菌培養物の凍結乾燥品であるビオヂアスミンB(商品名:天野製薬(株)社製、生菌数:100〜9000億個/g)を、またフェカリス菌としては、ストレプトコッカス・フェカリス菌培養分離物であるビオヂアスミンF-100(商品名:天野製薬(株)社製、生菌数:50〜250億個/g)を用いることができる。
【0029】なお、これら三種の乳酸菌の割合は特に制限されず、適宜選択することができる。具体的には、上記市販品を用いる場合、ビオヂアスミンA:ビオヂアスミンB:ビオヂアスミンF-100=0.01〜90:0.01〜90:0.01〜90(重量部)の範囲であり、好ましくは0.1〜60:0.1〜40:0.1〜40(重量部)の割合を挙げることができる。本発明で用いられるジメチルポリシロキサンは、側鎖にメチル基を有するシロキサン結合を骨格とした直鎖状の重合物であり、通常加水分解及びジクロロジメチルシラン及びクロロトリメチルシランの重縮合により得ることができる。ジメチルポリシロキサンは、前述する消化酵素及び/又は乳酸菌の作用を妨げるものでなければよく、その限度において特に制限されるものではない。適用対象を特に制限するものではないが、例えば本発明の組成物を生体内脱ガス剤として用いる場合は、ヒトを含む哺乳動物に対して無害であり、薬理学上経口的に使用できるものであるであることが好ましい。
【0030】具体的には、重縮合度(n)が20〜400、好ましくは67〜228の範囲にあるものであり、25℃における粘度が20〜1000cs、好ましくは95〜1050csの範囲にあるものである。
【0031】本発明の組成物には、先述する有効成分のほか、これらの作用を妨げないことを限度として他の成分を配合することができる。かかる成分は、本発明の組成物の使用対象、使用目的などに応じて、自体公知のものから適宜選択することができる。例えば、本発明の組成物が、ヒトを含む哺乳類を対象とし、該哺乳類に経口的に投与される体内脱ガス剤である場合は、他の成分としては、経口投与剤として薬学的若しくは食品衛生上許容される各種の担体、例えば賦形剤、滑沢剤、安定剤、分散剤、結合剤、希釈剤、香味料、甘味料、風味剤、着色剤などを例示することができる。
【0032】本発明の組成物の形態は、本発明の効果を奏するものである限り特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、細粒状、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤状等の種々の形態を採ることができる。特に、本発明の組成物が生体投与剤として用いられる場合には、経口的に投与される形態、具体的には、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、咀嚼剤、カプセル剤等であることが望ましい。
【0033】これらの投与形態は、当該分野で通常知られた慣用的な方法を用いて調製することができるが、セルラーゼの活性また各種乳酸菌の生菌活性を低下させないような条件下で調製されることが望ましい。
【0034】なお、錠剤、丸剤及び顆粒剤の場合、必要に応じて慣用的な剤皮を施した剤形、例えば糖衣錠,ゼラチン被包剤、腸溶被包剤、フィルムコーティング剤等とすることもでき、また錠剤は二重錠等の多層錠とすることもできる。
【0035】本発明の組成物に含まれる消化酵素の配合割合は、特に制限はされないが、例えば、消化酵素として活性が1,200〜1,800u/gであるセルラーゼを例にすれば、組成物100重量部あたり、通常0.1〜99重量部、好ましくは4〜80重量部、より好ましくは4〜8重量部である。なお、他の消化酵素の配合割合もかかる範囲に準じて適宜定めることができる。
【0036】ジメチルポリシロキサンの配合割合は、用いるジメチルポリシロキサンの種類(重縮合度、粘度)によって種々異なるが、例えば粘度1000csを有するジメチルポリシロキサンを用いる場合、組成物中の消化酵素1重量部に対して、通常0.1〜80重量部、好ましくは1〜60重量部、より好ましくは1〜8重量部である。
【0037】乳酸菌の配合割合は、用いる乳酸菌の種類、複数の乳酸菌から構成される場合はその構成種と構成割合などによって種々異なるが、例えば前述する市販品から構成される乳酸菌(ビオヂアスミンA:ビオヂアスミンB:ビオヂアスミンF-100=9:4:4(重量比))を用いる場合、組成物中の消化酵素1重量部に対して、通常0.1〜1重量部、好ましくは0.1〜0.6重量部、より好ましくは0.4〜0.6重量部である。
【0038】本発明の組成物は、臭気ガスを除去消散する作用を有する。またこれを生体に経口的に投与することによって、腸内微生物叢を整えてガスの発生を抑制するとともに、発生したガス、特に臭気ガスを除去消散することにより、速やかに腹部膨満感及び鼓腸感を軽減する効果を発揮する。さらに、本発明組成物によれば、その臭気ガス除去消散作用によって放屁の臭いを軽減することもできる。
【0039】従って、本発明の組成物は、特に経口投与的に用いられて有用である。その用法及び用量は特に制限されず、体重、年齢、性別、症状に応じて適宜選択されるが、通常成人1日あたり、約0.5〜10g、好ましくは2〜5g、より好ましくは3gであり、これを1日数回、好ましくは食後3回に分けて投与することができる。
【0040】
【実施例】以下、本発明を実施例、比較例及び参考例によって更に詳細に説明するが、本発明は当該実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】実施例1下記の処方からなる組成物を調製して、セルラーゼを有効成分とする脱ガス組成物とした。
【0042】
セルラーゼ(天野製薬(株)社製) 100mg 2%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液 1mg 無水ケイ酸 10mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 乳糖 880mg 合 計 1000mgなお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様にそれぞれの消化酵素を有効成分とする脱ガス組成物を調製した。
【0043】実施例2下記の処方からなる組成物を調製して、セルロース及び各種乳酸菌を含有する脱ガス剤(錠剤)とした。
【0044】
セルラーゼ(天野製薬(株)社製) 100mg ビオヂアスミンA(天野製薬(株)社製) 20mg ビオヂアスミンB(天野製薬(株)社製) 10mg ビオヂアスミンF-100(天野製薬(株)社製) 10mg 2%CMC水溶液 1mg 無水ケイ酸 10mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 乳糖 840mg 合 計(1錠あたり) 1000mg具体的には、ビオヂアスミンA粉末2g、ビオヂアスミンB粉末1g及びビオヂアスミンF-100粉末1gに、セルラーゼ10g、無水ケイ酸1g、ステアリン酸マグネシウム1g、乳糖84gをよく混合し、篩別して押出造粒機にて造粒した後、打錠用粉末100gを得る。圧縮打錠機により直径15mm、1g/錠を100錠製造した。
【0045】なお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様にそれぞれの消化酵素を有効成分とする脱ガス組成物を調製した。
【0046】実施例3下記の処方からなる組成物を調製して、セルラーゼ及びジメチルポリシロキサンを含有する脱ガス剤(咀嚼剤)とした。
【0047】
セルラーゼ(天野製薬(株)社製) 100mg ジメチルポリシロキサン(KF96,タ゛ウコーニンク゛360メテ゛ィカルフルイト゛) 100mg 結晶セルロース 50mg 2%CMC水溶液 1mg 無水ケイ酸 10mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 乳糖 729mg 合 計 1000mgなお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様にそれぞれの消化酵素を有効成分とする脱ガス組成物を調製した。
【0048】実施例4下記の処方からなる組成物を調製して、セルラーゼ、各種乳酸菌及びジメチルポリシロキサンを含有する脱ガス組成物とした(錠剤)。
【0049】
セルラーゼ(天野製薬(株)社製) 100mg ジメチルポリシロキサン(KF96,タ゛ウコーニンク゛360メテ゛ィカルフルイト゛) 100mg ビオヂアスミンA(天野製薬(株)社製) 20mg ビオヂアスミンB(天野製薬(株)社製) 10mg ビオヂアスミンF-100(天野製薬(株)社製) 10mg 結晶セルロース 50mg 2%CMC水溶液 1mg 無水ケイ酸 10mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 乳糖 789mg 合 計(1錠あたり) 1000mg具体的には、結晶セルロース5g及び無水ケイ酸1gにジメチルポリシロキサン10gを混合し、ペースト状にする。ビオヂアスミンA粉末2g、ビオヂアスミンB粉末1g及びビオヂアスミンF-100粉末1gに、セルラーゼ10g、ステアリン酸マグネシウム1g、乳糖84gをよく混合し、前記のペーストに更に混合し、篩別して押出造粒機にて造粒した後、打錠用粉末100gを得る。圧縮打錠機により直径15mm、1g/錠を約100錠製造した。
【0050】なお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様にそれぞれの消化酵素を有効成分とする脱ガス組成物を調製した。
【0051】実験例1 インビトロでの脱ガス作用−1腸内臭気ガスであるH2S及びCH3SHを封入したバイアル瓶に被験物質を添加し、1時間後のバイアル瓶中の該ガス濃度をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。
【0052】<実験方法>1.被験物(イ)セルラーゼ 4g+ジメチルポリシロキサン 2g(ロ)セルラーゼ 4g+乳酸菌 2g(ハ)セルラーゼ 3g+ジメチルポリシロキサン 1.5g+乳酸菌 1.5g尚、乳酸菌はビオヂアスミンA:ビオヂアスミンB:ビオヂアスミンF-100=2:1:1(重量比)から構成される混合物を使用した。
【0053】上記被験組成物をそれぞれリン酸緩衝液(PBS、pH6.5)に溶解して、被験物とした。
【0054】2.方法バイアル瓶に臭気ガス(H2S:100ppm、CH3SH:100ppm)(安田英之、日本農芸学会誌 66, 10, 1475-1479, (1992))を封入し、これに1.で調製した各被験物(3g/ml濃度)を、1000μl容量のガスタイトシリンジを用いて、気泡が混入しないように添加した。被験物質を添加したバイアル瓶は、37℃のインキュベーター中に置いて1時間加温放置した。加温後、バイアル瓶からガスタイトシリンジを用いて100μlのヘッドスペースガスを採取し、ガスクロマトグラフィーに注入して下記の条件でH2S及びCH3SHのガス濃度を測定した。なお、コントロールとして、被験物の代わりにPBSだけを添加したものを用いた。
【0055】
ガスクロマトグラフ:島津GC−8A データ処理機 :島津GC−R4A カラム :β-β’-ODPN Glass 3.2φ×3mm キャリアガス :ヘリウム 45ml/分 検出器 :FPD H250ml N260ml結果を図1に示す。尚、結果に示す値は実験を各々6回行った平均値である。
【0056】なお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様に実験を行ったところ、セルラーゼと同様の結果が得られた。
【0057】実験例2 インビトロでの脱ガス作用−2実験例1と同様に、腸内臭気ガスであるH2S及びCH3SHを封入したバイアル瓶に、セルラーゼ(天野製薬(株)社製)と乳酸菌(組成は実験例1と同じ)とを表1に示す各種配合割合で含有する組成物からなる被験物を添加し、1時間後のバイアル瓶中の該ガス濃度をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。なお、コントロールとして、被験物の代わりにPBSだけを添加したものを用いた。
【0058】
【表1】
【0059】結果を表1及び図2に示す。なお、値は実験を6回行った平均値である。
【0060】実験例3 インビボでの脱ガス作用被験製剤を腹部膨満感及び多放屁症状のある被験者(22〜40歳の女性:各被験製剤に対して2名)に、食後直ちに服用してもらい(1日3回)、3日目及び6日目の症状の変化を観察した。
【0061】
<被験製剤> 1回服用量 製剤1.乳酸菌製剤 40mg 製剤2.セルラーゼ製剤 60mg 製剤3.ジメチルポリシロキサン製剤 60mg 製剤4.セルラーゼ+乳酸菌製剤 60mg+40mg 製剤5.セルラーゼ+乳酸菌製剤+ジメチルポリシロキサン製剤 60mg+40mg+60mg尚、乳酸菌はビオヂアスミンA:ビオヂアスミンB:ビオヂアスミンF-100=2:1:1(重量比)から構成される混合物を使用した。
【0062】結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】これらの結果から、各製剤について次のように纏めることができる。
【0065】製剤1(乳酸菌製剤)
余り速効性は得られず、一週間程服用し続けるとやや効果が現れる。
【0066】製剤2(ジメチルポリシロキサン製剤)
速効性はあるが、効果に限界がみられる。
【0067】製剤3(セルラーゼ製剤)
ある程度の速効性があり、服用し続けることにより効果の向上が見られる。
【0068】製剤4(セルラーゼ+乳酸菌製剤)
やや速効性があり、服用し続けると更に高い有効性が認められる。
【0069】製剤5(セルラーゼ+乳酸菌+ジメチルポリシロキサン製剤)
速効性及びより高い有効性が認められる。
【0070】
また、速効性のみの観点からは、 乳酸菌 ×(効果発現に1週間程かかる)
ジメチルポリシロキサン ◎(服用1〜2日で効果現れる)
セルラーゼ ○(服用3日程で効果現れる) であったが、セルラーゼと乳酸菌及び/又はジメチルポリシロキサンを組み合わせることによって、速効性及び有効性の向上が認められ、腹部膨満感を有意に解消することがわかった。また、セルラーゼ含有製剤を服用することにより、放屁の悪臭が気にならない程度まで減少した。
【0071】なお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様に実験を行ったところ、セルラーゼと同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例1における、本発明組成物のインビトロでの脱ガス(メルカプタン、硫化水素)作用を示す図である。
【図2】実験例2における、セルラーゼ及び乳酸菌の各配合割合を変えてなる本発明組成物のインビトロでの脱ガス(メルカプタン、硫化水素)作用を示す図である。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、消化酵素を有効成分として含有することを特徴とする脱ガス組成物に関する。また本発明は、消化酵素に加えて乳酸菌又はジメチルポリシロキサンのいずれか少なくとも一種を含有する脱ガス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、バチルス属、ストレプトコッカス属、エンテロバクター属等の微生物に消臭作用があることが知られており、汚水タンクや排水口内で発生する悪臭を除去する消臭材としてこれらの微生物を利用した消臭材が提案されている(特開平6−473号公報、特開平7−275889号公報等)。
【0003】また、乳酸菌にも消臭作用並びにガス(屁)発生や腸の膨満感を低減する作用があることが報告されており、生体内消臭剤として応用されている(特開昭60−149527号公報、特開昭61−83128号等)。
【0004】しかしながら、かかる乳酸菌の働きは、乳酸菌が腸内の細菌叢を整えるといういわゆる整腸作用に基づくものであるため、一旦発生したガスについてはあまり顕著な効果が認めらない。このため、乳酸菌の働きが生体への作用効果として現れるには、かなりの期間を要するという欠点がある。
【0005】このように微生物を利用した消臭材(剤)や脱ガス剤等が種々開発されているものの、未だ十分な効果を発揮するもの、特に生体内脱ガス剤として有効なものはないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、消化酵素を有効成分として含有する脱ガス組成物であって、特にメルカプタンや硫化水素等の臭気ガスを選択的に消散除去することのできる脱ガス組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記消化酵素に加えて、乳酸菌又はジメチルポリシロキサンの少なくとも一種を含有する脱ガス組成物を提供することを目的とする。
【0007】当該発明は、特に生体における微量臭気ガスの発生を抑制するとともに、発生したガスをも除去消散することにより、腹部膨満感を軽減し、放屁時の悪臭発生をも抑制できる生体投与用の脱ガス組成物として有用である。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねていたところ、繊維素消化酵素であるセルラーゼに臭気ガスを選択的に消散除去する作用があることを見いだした。かかる知見に基づいて、本発明者らは更に検討を重ねたところ、セルラーゼのみならずデンプン消化酵素であるグルコシターゼ、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ及び脂肪消化酵素であるリパーゼといった消化酵素にも同様な作用があることを見いだした。
【0009】消化酵素はアミノ酸重合体からなる立体構造を有しているが、かかる立体構造内にガス成分が入ってアミノ酸の塩基により取り込まれることによって、脱ガス作用を発揮するするのではないかと考えられる。さらに種々の消化酵素はそれぞれ多様な立体構造を有しているので、種々の立体構造中に多種多様な臭気成分が取り込まれるものと考えられる。このため各種の消化酵素の利用によって多種多様な臭気成分が消散除去できる可能性が示唆される。
【0010】さらに、本発明者らは、上記の消化酵素に乳酸菌又はジメチルポリシロキサンのいずれか少なくとも一種を組み合わせることによって、生体体内中でのガスの発生を抑制しまた発生したガスを消散除去することによって腹部膨満感を軽減できること、さらに放屁時の悪臭発生が抑制できることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0011】即ち、本発明は、下記のいずれかの態様からなる脱ガス組成物である。
【0012】(1) 消化酵素を有効成分として含有する脱ガス組成物。
(2) 消化酵素がグルコシターゼ,プロテアーゼ,リパーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される少なくとも一種である(1)記載の脱ガス組成物。
【0013】(3) ガスが臭気ガスである(1)又は(2)記載の脱ガス組成物。
【0014】(4) 更に、乳酸菌又はジメチルポリシロキサンの少なくとも一種を含有する(1)乃 至(3)のいずれかに記載の脱ガス組成物。
【0015】(5) 乳酸菌が、少なくともアシドフィルス菌,フェリカス菌及びビフィズス菌から構成されるものである(4)記載の脱ガス組成物。
【0016】また、これらの脱ガス組成物は生体内の脱ガス剤としても有用である。よって、本発明は(1)乃至(5)のいずれかに記載の脱ガス組成物についての抗腹部膨満剤、生体内脱臭剤、整腸剤としての用途をも提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の脱ガス組成物は、消化酵素を有効成分として含有することを特徴とする。
【0018】ここで消化酵素とは、消化に携わる酵素一般を広く意味するものである。具体的にはペプチドや蛋白質、炭水化物、脂質又はセルロース等の繊維を基質とするものであり、例えば、ペプチド・蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ、炭水化物消化酵素であるカルボヒドロラーゼ、脂肪消化酵素であるリパーゼ及び繊維素消化酵素であるセルラーゼを挙げることができる。なお、プロテアーゼにはポリペプチドに作用するペプチダーゼ及び蛋白質に直接作用するプロテイナーゼが包含され、カルボヒドロラーゼには多糖を基質とするポリアーゼ及びグルコシドやオリゴ糖を基質とするアミラーゼが包含され、更にリパーゼにはリン脂質を基質とするホスホリパーゼも含まれる。
【0019】好ましくは、繊維素消化酵素であるセルラーゼ、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ、デンプン消化酵素であるグルコシダーゼ、脂肪消化酵素であるリパーゼであり、より好ましくはセルラーゼである。
【0020】なお、これらの消化酵素は単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
【0021】これらの消化酵素はその由来及び取得方法によって特に制限されるものではなく、植物、動物(ヒトを含む)、微生物等のいずれに由来するものであってもよく、さらに遺伝子工学的手法によって調製されるものであってもよい。なお、本発明の組成物を生体内脱ガス剤として用いる場合は、ヒトを含む哺乳動物に経口的に投与することのできる消化酵素であることが好ましい。
【0022】本発明の脱ガス組成物は、これらの消化酵素の少なくとも一種を含有することに基づいて、ガス、特に臭気ガスを消散除去する作用を有するものである。
【0023】ここで臭気ガスとは、特にヒトに不快感を与える悪臭を意味し、例えばメルカプタンや硫化水素等のS化合物、アンモニア,インドール及びスカトール等のN化合物又はトリメチルアミン等の有臭C化合物等を挙げることができる。好ましくは生体腸内に存在する臭気ガスであり、具体的にはメルカプタンや硫化水素等のS化合物を例示することができる。
【0024】本発明の脱ガス組成物の適用対象は、脱ガス、特に消臭を目的とするものであれば特に制限されず、例えば生体内外と問わず消臭材(剤)、脱ガス材(剤)として広く用いることができる。好ましくは、生体内脱ガス剤としての使用であり、生体内脱臭剤、抗腹部膨満剤、整腸剤としても用いることができる。
【0025】本発明の脱ガス組成物は、上記消化酵素に加えて、乳酸菌又はジメチルポリシロキサンのいずれか少なくとも1種を含有することができる。
【0026】本発明で用いられる乳酸菌は、上記各消化酵素の効果を妨げないものであればよく、この限りにおいて特に制限されるものではない。なお、前述するように適用対象を特に制限するものではないが、例えば本発明の組成物を生体内脱ガス剤として用いる場合は、ヒトを含む哺乳動物に経口的に投与することができ、生体消化管内で有用な作用を発揮する菌であることが好ましい。
【0027】より具体的には、宿主に対して無害で、胃酸や胆汁酸に比較的耐性があり、生体腸内に定着性を有して乳酸を産生し、腸内微生物叢を整える作用を有するものが望ましい。かかる有用乳酸菌としては、例えばアシドフィルス乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)、フェカリス菌(Streptococcus faecalis)、レウテリ乳酸桿菌(Lactobacillus reuteri)、カセイ乳酸桿菌(Lactobacillus casei)、プランタラム菌(Lactobacillus plantarum)、フェルメンタム乳酸桿菌(Lactobacillus fermentum)、ラムノサス乳酸桿菌(Lactobacillus rhamnosus)、アギルス乳酸桿菌(Lactobacillusagilis)、又はそれらのサブスピーシーズ等を例示することができるが、好ましくはアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)、フェカリス菌(Streptococcus faecalis)である。これらの乳酸菌は1種単独若しくは2種以上を適宜組み合わせて使用することができるが、好ましくは少なくともアシドフィルス菌、ビフィズス菌及びフェカリス菌の三種の乳酸菌を組み合わせて配合してなる乳酸菌である。
【0028】これらの乳酸菌は、生菌であれば取得の由来は特に制限されず、簡便には商業的に市販されているものを広く用いることができる。例えば、アシドフィルス菌としては、アシドフィルス菌の単一菌種を純粋培養し、集菌乾燥したものをバレイショデンプンで賦形し、調製したビオヂアスミンA(商品名:天野製薬(株)社製、生菌数:10〜9000億個/g)を、ビフィズス菌としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム菌培養物の凍結乾燥品であるビオヂアスミンB(商品名:天野製薬(株)社製、生菌数:100〜9000億個/g)を、またフェカリス菌としては、ストレプトコッカス・フェカリス菌培養分離物であるビオヂアスミンF-100(商品名:天野製薬(株)社製、生菌数:50〜250億個/g)を用いることができる。
【0029】なお、これら三種の乳酸菌の割合は特に制限されず、適宜選択することができる。具体的には、上記市販品を用いる場合、ビオヂアスミンA:ビオヂアスミンB:ビオヂアスミンF-100=0.01〜90:0.01〜90:0.01〜90(重量部)の範囲であり、好ましくは0.1〜60:0.1〜40:0.1〜40(重量部)の割合を挙げることができる。本発明で用いられるジメチルポリシロキサンは、側鎖にメチル基を有するシロキサン結合を骨格とした直鎖状の重合物であり、通常加水分解及びジクロロジメチルシラン及びクロロトリメチルシランの重縮合により得ることができる。ジメチルポリシロキサンは、前述する消化酵素及び/又は乳酸菌の作用を妨げるものでなければよく、その限度において特に制限されるものではない。適用対象を特に制限するものではないが、例えば本発明の組成物を生体内脱ガス剤として用いる場合は、ヒトを含む哺乳動物に対して無害であり、薬理学上経口的に使用できるものであるであることが好ましい。
【0030】具体的には、重縮合度(n)が20〜400、好ましくは67〜228の範囲にあるものであり、25℃における粘度が20〜1000cs、好ましくは95〜1050csの範囲にあるものである。
【0031】本発明の組成物には、先述する有効成分のほか、これらの作用を妨げないことを限度として他の成分を配合することができる。かかる成分は、本発明の組成物の使用対象、使用目的などに応じて、自体公知のものから適宜選択することができる。例えば、本発明の組成物が、ヒトを含む哺乳類を対象とし、該哺乳類に経口的に投与される体内脱ガス剤である場合は、他の成分としては、経口投与剤として薬学的若しくは食品衛生上許容される各種の担体、例えば賦形剤、滑沢剤、安定剤、分散剤、結合剤、希釈剤、香味料、甘味料、風味剤、着色剤などを例示することができる。
【0032】本発明の組成物の形態は、本発明の効果を奏するものである限り特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、細粒状、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤状等の種々の形態を採ることができる。特に、本発明の組成物が生体投与剤として用いられる場合には、経口的に投与される形態、具体的には、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、咀嚼剤、カプセル剤等であることが望ましい。
【0033】これらの投与形態は、当該分野で通常知られた慣用的な方法を用いて調製することができるが、セルラーゼの活性また各種乳酸菌の生菌活性を低下させないような条件下で調製されることが望ましい。
【0034】なお、錠剤、丸剤及び顆粒剤の場合、必要に応じて慣用的な剤皮を施した剤形、例えば糖衣錠,ゼラチン被包剤、腸溶被包剤、フィルムコーティング剤等とすることもでき、また錠剤は二重錠等の多層錠とすることもできる。
【0035】本発明の組成物に含まれる消化酵素の配合割合は、特に制限はされないが、例えば、消化酵素として活性が1,200〜1,800u/gであるセルラーゼを例にすれば、組成物100重量部あたり、通常0.1〜99重量部、好ましくは4〜80重量部、より好ましくは4〜8重量部である。なお、他の消化酵素の配合割合もかかる範囲に準じて適宜定めることができる。
【0036】ジメチルポリシロキサンの配合割合は、用いるジメチルポリシロキサンの種類(重縮合度、粘度)によって種々異なるが、例えば粘度1000csを有するジメチルポリシロキサンを用いる場合、組成物中の消化酵素1重量部に対して、通常0.1〜80重量部、好ましくは1〜60重量部、より好ましくは1〜8重量部である。
【0037】乳酸菌の配合割合は、用いる乳酸菌の種類、複数の乳酸菌から構成される場合はその構成種と構成割合などによって種々異なるが、例えば前述する市販品から構成される乳酸菌(ビオヂアスミンA:ビオヂアスミンB:ビオヂアスミンF-100=9:4:4(重量比))を用いる場合、組成物中の消化酵素1重量部に対して、通常0.1〜1重量部、好ましくは0.1〜0.6重量部、より好ましくは0.4〜0.6重量部である。
【0038】本発明の組成物は、臭気ガスを除去消散する作用を有する。またこれを生体に経口的に投与することによって、腸内微生物叢を整えてガスの発生を抑制するとともに、発生したガス、特に臭気ガスを除去消散することにより、速やかに腹部膨満感及び鼓腸感を軽減する効果を発揮する。さらに、本発明組成物によれば、その臭気ガス除去消散作用によって放屁の臭いを軽減することもできる。
【0039】従って、本発明の組成物は、特に経口投与的に用いられて有用である。その用法及び用量は特に制限されず、体重、年齢、性別、症状に応じて適宜選択されるが、通常成人1日あたり、約0.5〜10g、好ましくは2〜5g、より好ましくは3gであり、これを1日数回、好ましくは食後3回に分けて投与することができる。
【0040】
【実施例】以下、本発明を実施例、比較例及び参考例によって更に詳細に説明するが、本発明は当該実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】実施例1下記の処方からなる組成物を調製して、セルラーゼを有効成分とする脱ガス組成物とした。
【0042】
セルラーゼ(天野製薬(株)社製) 100mg 2%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液 1mg 無水ケイ酸 10mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 乳糖 880mg 合 計 1000mgなお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様にそれぞれの消化酵素を有効成分とする脱ガス組成物を調製した。
【0043】実施例2下記の処方からなる組成物を調製して、セルロース及び各種乳酸菌を含有する脱ガス剤(錠剤)とした。
【0044】
セルラーゼ(天野製薬(株)社製) 100mg ビオヂアスミンA(天野製薬(株)社製) 20mg ビオヂアスミンB(天野製薬(株)社製) 10mg ビオヂアスミンF-100(天野製薬(株)社製) 10mg 2%CMC水溶液 1mg 無水ケイ酸 10mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 乳糖 840mg 合 計(1錠あたり) 1000mg具体的には、ビオヂアスミンA粉末2g、ビオヂアスミンB粉末1g及びビオヂアスミンF-100粉末1gに、セルラーゼ10g、無水ケイ酸1g、ステアリン酸マグネシウム1g、乳糖84gをよく混合し、篩別して押出造粒機にて造粒した後、打錠用粉末100gを得る。圧縮打錠機により直径15mm、1g/錠を100錠製造した。
【0045】なお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様にそれぞれの消化酵素を有効成分とする脱ガス組成物を調製した。
【0046】実施例3下記の処方からなる組成物を調製して、セルラーゼ及びジメチルポリシロキサンを含有する脱ガス剤(咀嚼剤)とした。
【0047】
セルラーゼ(天野製薬(株)社製) 100mg ジメチルポリシロキサン(KF96,タ゛ウコーニンク゛360メテ゛ィカルフルイト゛) 100mg 結晶セルロース 50mg 2%CMC水溶液 1mg 無水ケイ酸 10mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 乳糖 729mg 合 計 1000mgなお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様にそれぞれの消化酵素を有効成分とする脱ガス組成物を調製した。
【0048】実施例4下記の処方からなる組成物を調製して、セルラーゼ、各種乳酸菌及びジメチルポリシロキサンを含有する脱ガス組成物とした(錠剤)。
【0049】
セルラーゼ(天野製薬(株)社製) 100mg ジメチルポリシロキサン(KF96,タ゛ウコーニンク゛360メテ゛ィカルフルイト゛) 100mg ビオヂアスミンA(天野製薬(株)社製) 20mg ビオヂアスミンB(天野製薬(株)社製) 10mg ビオヂアスミンF-100(天野製薬(株)社製) 10mg 結晶セルロース 50mg 2%CMC水溶液 1mg 無水ケイ酸 10mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 乳糖 789mg 合 計(1錠あたり) 1000mg具体的には、結晶セルロース5g及び無水ケイ酸1gにジメチルポリシロキサン10gを混合し、ペースト状にする。ビオヂアスミンA粉末2g、ビオヂアスミンB粉末1g及びビオヂアスミンF-100粉末1gに、セルラーゼ10g、ステアリン酸マグネシウム1g、乳糖84gをよく混合し、前記のペーストに更に混合し、篩別して押出造粒機にて造粒した後、打錠用粉末100gを得る。圧縮打錠機により直径15mm、1g/錠を約100錠製造した。
【0050】なお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様にそれぞれの消化酵素を有効成分とする脱ガス組成物を調製した。
【0051】実験例1 インビトロでの脱ガス作用−1腸内臭気ガスであるH2S及びCH3SHを封入したバイアル瓶に被験物質を添加し、1時間後のバイアル瓶中の該ガス濃度をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。
【0052】<実験方法>1.被験物(イ)セルラーゼ 4g+ジメチルポリシロキサン 2g(ロ)セルラーゼ 4g+乳酸菌 2g(ハ)セルラーゼ 3g+ジメチルポリシロキサン 1.5g+乳酸菌 1.5g尚、乳酸菌はビオヂアスミンA:ビオヂアスミンB:ビオヂアスミンF-100=2:1:1(重量比)から構成される混合物を使用した。
【0053】上記被験組成物をそれぞれリン酸緩衝液(PBS、pH6.5)に溶解して、被験物とした。
【0054】2.方法バイアル瓶に臭気ガス(H2S:100ppm、CH3SH:100ppm)(安田英之、日本農芸学会誌 66, 10, 1475-1479, (1992))を封入し、これに1.で調製した各被験物(3g/ml濃度)を、1000μl容量のガスタイトシリンジを用いて、気泡が混入しないように添加した。被験物質を添加したバイアル瓶は、37℃のインキュベーター中に置いて1時間加温放置した。加温後、バイアル瓶からガスタイトシリンジを用いて100μlのヘッドスペースガスを採取し、ガスクロマトグラフィーに注入して下記の条件でH2S及びCH3SHのガス濃度を測定した。なお、コントロールとして、被験物の代わりにPBSだけを添加したものを用いた。
【0055】
ガスクロマトグラフ:島津GC−8A データ処理機 :島津GC−R4A カラム :β-β’-ODPN Glass 3.2φ×3mm キャリアガス :ヘリウム 45ml/分 検出器 :FPD H250ml N260ml結果を図1に示す。尚、結果に示す値は実験を各々6回行った平均値である。
【0056】なお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様に実験を行ったところ、セルラーゼと同様の結果が得られた。
【0057】実験例2 インビトロでの脱ガス作用−2実験例1と同様に、腸内臭気ガスであるH2S及びCH3SHを封入したバイアル瓶に、セルラーゼ(天野製薬(株)社製)と乳酸菌(組成は実験例1と同じ)とを表1に示す各種配合割合で含有する組成物からなる被験物を添加し、1時間後のバイアル瓶中の該ガス濃度をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。なお、コントロールとして、被験物の代わりにPBSだけを添加したものを用いた。
【0058】
【表1】
【0059】結果を表1及び図2に示す。なお、値は実験を6回行った平均値である。
【0060】実験例3 インビボでの脱ガス作用被験製剤を腹部膨満感及び多放屁症状のある被験者(22〜40歳の女性:各被験製剤に対して2名)に、食後直ちに服用してもらい(1日3回)、3日目及び6日目の症状の変化を観察した。
【0061】
<被験製剤> 1回服用量 製剤1.乳酸菌製剤 40mg 製剤2.セルラーゼ製剤 60mg 製剤3.ジメチルポリシロキサン製剤 60mg 製剤4.セルラーゼ+乳酸菌製剤 60mg+40mg 製剤5.セルラーゼ+乳酸菌製剤+ジメチルポリシロキサン製剤 60mg+40mg+60mg尚、乳酸菌はビオヂアスミンA:ビオヂアスミンB:ビオヂアスミンF-100=2:1:1(重量比)から構成される混合物を使用した。
【0062】結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】これらの結果から、各製剤について次のように纏めることができる。
【0065】製剤1(乳酸菌製剤)
余り速効性は得られず、一週間程服用し続けるとやや効果が現れる。
【0066】製剤2(ジメチルポリシロキサン製剤)
速効性はあるが、効果に限界がみられる。
【0067】製剤3(セルラーゼ製剤)
ある程度の速効性があり、服用し続けることにより効果の向上が見られる。
【0068】製剤4(セルラーゼ+乳酸菌製剤)
やや速効性があり、服用し続けると更に高い有効性が認められる。
【0069】製剤5(セルラーゼ+乳酸菌+ジメチルポリシロキサン製剤)
速効性及びより高い有効性が認められる。
【0070】
また、速効性のみの観点からは、 乳酸菌 ×(効果発現に1週間程かかる)
ジメチルポリシロキサン ◎(服用1〜2日で効果現れる)
セルラーゼ ○(服用3日程で効果現れる) であったが、セルラーゼと乳酸菌及び/又はジメチルポリシロキサンを組み合わせることによって、速効性及び有効性の向上が認められ、腹部膨満感を有意に解消することがわかった。また、セルラーゼ含有製剤を服用することにより、放屁の悪臭が気にならない程度まで減少した。
【0071】なお、上記セルラーゼに代えて、プロテアーゼ(ナガセ生化学工業(株))、リパーゼ(ナガセ生化学工業(株))、又はグルコシターゼ(ナガセ生化学工業(株))を用いて、同様に実験を行ったところ、セルラーゼと同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例1における、本発明組成物のインビトロでの脱ガス(メルカプタン、硫化水素)作用を示す図である。
【図2】実験例2における、セルラーゼ及び乳酸菌の各配合割合を変えてなる本発明組成物のインビトロでの脱ガス(メルカプタン、硫化水素)作用を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】消化酵素を有効成分として含有する脱ガス組成物。
【請求項2】消化酵素がグルコシターゼ,プロテアーゼ,リパーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載の脱ガス組成物。
【請求項3】ガスが臭気ガスである請求項1又は2記載の脱ガス組成物。
【請求項4】更に、乳酸菌又はジメチルポリシロキサンの少なくとも一種を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の脱ガス組成物。
【請求項5】乳酸菌が、少なくともアシドフィルス菌,フェリカス菌及びビフィズス菌から構成されるものである請求項4記載の脱ガス組成物。
【請求項6】抗腹部膨満剤である請求項1乃至5のいずれかに記載の脱ガス組成物。
【請求項7】生体内脱臭剤である請求項1乃至5のいずれかに記載の脱ガス組成物。
【請求項8】整腸剤である請求項4又は5に記載の脱ガス組成物。
【請求項1】消化酵素を有効成分として含有する脱ガス組成物。
【請求項2】消化酵素がグルコシターゼ,プロテアーゼ,リパーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載の脱ガス組成物。
【請求項3】ガスが臭気ガスである請求項1又は2記載の脱ガス組成物。
【請求項4】更に、乳酸菌又はジメチルポリシロキサンの少なくとも一種を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の脱ガス組成物。
【請求項5】乳酸菌が、少なくともアシドフィルス菌,フェリカス菌及びビフィズス菌から構成されるものである請求項4記載の脱ガス組成物。
【請求項6】抗腹部膨満剤である請求項1乃至5のいずれかに記載の脱ガス組成物。
【請求項7】生体内脱臭剤である請求項1乃至5のいずれかに記載の脱ガス組成物。
【請求項8】整腸剤である請求項4又は5に記載の脱ガス組成物。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開平11−180890
【公開日】平成11年(1999)7月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−353313
【出願日】平成9年(1997)12月22日
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【公開日】平成11年(1999)7月6日
【国際特許分類】
【出願日】平成9年(1997)12月22日
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
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