説明

脱ハロゲン化なしにハロゲノアルケンを水素化する方法

本発明は、式(VI)(式中、RおよびRは、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルであり;Rは、OR、NR、SR、B(OR)(OR)、または(F、Cl、Br、I、OCOR、OSOから選択される)X”であり、ここで、RおよびRは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルを互いに独立して表し;またはRおよびRは、5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を協同的に形成し;Xは、F1、Cl、Br、Iから選択され;は、キラル中心を示す。)の化合物を、式(V)(式中、R、R、RおよびXは、上に定義された通りである。)の化合物を水素化することによって調製する方法であって、水素化が、少なくとも1つの遷移金属を含む錯体から選択される触媒の存在下で行われ、脱ハロゲン化が、式VIの化合物のモル量に対して10モル%未満で起こる方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して有機化学の分野、特にキラルハルゲノアルカンの調製に関する。これらの化合物は、例えば、医薬活性化合物の合成における中間体として有用である。例えば、α−ハロゲノボロン酸エステルは、ボロン酸およびN−末端ペプチジルボロン酸誘導体などのエステル化合物、例えば、N−(ピラジン−2−イル)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、即ち、ボルテゾミブを調製するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
特に、医薬活性化合物およびその中間体の調製における水素化工程(単数または複数)は、ハロゲノアルカンを調製するための一般的な手段(単数または複数)である。しかし、とりわけ、C,C−二重結合部分における置換基の種類に依存して、および特に、塩素、臭素またはヨウ素のようなハロゲンがC,C−二重結合部分に直接結合している場合、均一な触媒反応による水素化工程(単数または複数)に関連した問題が依然として存在する。したがって、このような水素化工程(単数または複数)を改善することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の特定の目的は、脱ハロゲン化なしにハロゲノアルケンを水素化することを可能にする方法である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、それぞれ単独でおよび組み合わせて、上記目的の解決に寄与し、その結果さらなる利点を与える、主たる態様および好ましい実施形態を含む以下の項目を提供する:
(1)式VI
【0005】
【化1】

(式中、
およびRは、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルであり;
は、OR、NR、SR、B(OR)(OR)、または(F、Cl、Br、I、OCOR、OSOから選択される)X”であり、ここで、RおよびRは、互いに独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルを表し;またはRおよびRは、5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を協同的に形成し;
Xは、F、Cl、Br、Iから選択され;
は、キラル中心を示す。)
の化合物を、式V
【0006】
【化2】

(式中、R、R、RおよびXは、上に定義された通りである。)
の化合物を水素化することによって調製する方法であって、
水素化が少なくとも1つの遷移金属を含む錯体から選択される触媒の存在下で行われる方法。
【0007】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語には、最大12個の炭素、好ましくは1−8個の炭素の直鎖および分岐の炭化水素鎖の両方、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシル、または3から12個の炭素、好ましくは3から8個の炭素を含有する飽和環状炭化水素基(これらには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシルおよびシクロドデシルが含まれる。)を含む環状炭化水素が含まれる。
【0008】
それ自体でまたは別の基の一部として本明細書で用いられる「アリール」という用語は、環部分に6から12個の炭素、好ましくは環部分に6から10個の炭素を含有する単環式または二環式芳香族基、例えば、フェニルまたはナフチルを指す。
【0009】
本明細書で用いられる「アリールアルキル」という用語は、上記のアリール部分が、アルキル鎖の近位もしくは遠位の末端の一つでまたは上記のアルキル鎖の間で、上記の直鎖または分岐のアルキル部分中に組み込まれていることを意味する。例えば、近位末端は、Rについて、例えば、式Vの化合物の二重結合に隣接する末端、およびRおよびRについて、式VおよびVIの化合物の酸素に隣接する末端を意味し、一方、遠位末端は、アリールアルキル部分の終末側末端を意味する。
【0010】
本明細書で用いられる「置換された」という用語には、1、2もしくは3個のハロゲン置換基、または1個のC1−6アルキル(C6−10)アリール、ハロ(C6−10)アリール、C3−8シクロアルキル、C1−6アルキル(C3−8)シクロアルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、ヒドロキシおよび/もしくはカルボキシを有する上に定義された通りのアルキル基、アリール基またはアラルキル基が含まれる。
【0011】
本明細書で用いられる「縮合した」という用語は、少なくとも1つの共通の結合で一方を他方に連結した少なくとも2つの環を意味する。
【0012】
式Vの化合物は、(E)および(Z)の異性体の両方の混合物の形態、またはそれぞれ純粋の(E)および(Z)の異性体の形態であってもよい。
【0013】
式Vの化合物の式VIの化合物への変換を伴う本発明のこの態様による手順の概念は、毒性のおよび/または有害な反応剤の使用は避けられるので、工業的に利用可能で、競争力のある方法を提供し、ここで、出発物質として式Vの化合物を選択することにより、さらなる合成、例えば、医薬活性化合物の合成のための非常に望ましい中間体化合物を得るために、安価で、容易に入手できる従来の出発物質の使用が可能になる。さらに、キラルアルコールのハロゲン化のような、化合物VIを提供し得る他の方法は、キラル中心上にキラリティーを保持せず、これらの手法を実際的でなくする。
【0014】
およびRは、その後の手順の工程を考慮して選択され得る。例えば、RおよびRが、保護基(単数または複数)のみとして、例えば、ボロン酸部分の保護のために使用される場合、容易に入手可能および/または安価な反応剤によって導入され得るアキラルのRおよびRが用いられ得る。他方で、RおよびRが、生成される化合物の不可欠な部分を表す場合、またはRおよびRが、配向基(単数または複数)として作用する場合、適切なキラル基(単数または複数)がRおよびRのために選択され得る。
【0015】
(2)脱ハロゲン化が、式VIの化合物のモル量に対して10モル%未満で起こる、項目(1)に記載の方法。
【0016】
本明細書で用いられる「脱ハロゲン化」という用語は、ハロゲンが、化合物から除去されて、水素で置き換えられる反応を意味する。
【0017】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、驚くべきことに、式Vの置換化合物は、水素化されて、脱ハロゲン化の実質的なリスクなしに式VIの水素化化合物に到達し得ることが見出された。穏やかな反応条件を与える適切な触媒をさらに選択することによって、式Vの化合物の脱ハロゲン化は、本質的に避けられる。
【0018】
(3)RがB(OR)(OR)である、項目(1)または(2)に記載の方法。
【0019】
本発明のこの有益な実施形態によれば、式Vの化合物の式VIの化合物への変換により、このような化合物を得るために従来技術で使用されるMattesonの方法論(WO2005/097809A2、J.Biol.Chem.1984年、259、15106−15114頁中、およびJ.Am.Chem.Soc.1981年、103、5241−5242頁中を参照)とは対照的に、転移工程を制御する困難がないので、α−置換ボロン酸の調製のための工業的に利用可能で、競争力のある方法が提供される。さらに、出発物質として式Vの化合物を選択することにより、このような化合物を得るために安価で、容易に入手可能な従来の出発物質の使用が可能になる一方、毒性のおよび/または有害な反応剤の使用が避けられる。
【0020】
(4)Xが、Cl、Br、Iから選択される、項目(1)から(3)のいずれか一項目に記載の方法。
【0021】
(5)Rまたは/およびRが、水素、または置換もしくは非置換の直鎖C−C−アルキル、置換もしくは非置換の分岐C−C−アルキルおよび置換もしくは非置換のC−C−シクロアルキルからなる群から(互いに独立して)選択され、好ましくはRまたは/およびRが、水素、または非置換の直鎖もしくは分岐C−C−アルキルから(互いに独立して)選択され、より好ましくはRおよび/またはRが、水素またはイソプロピルであり;および/またはRまたはRのいずれかが水素であり、好ましくはRが水素であり;および/またはRおよびRが、直鎖の置換もしくは非置換C−C−アルキル、置換もしくは非置換の分岐C−C−アルキルからなる群から選択され、またはRおよびRが、5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を形成し;好ましくはRおよびRが、4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を協同的に形成する、項目(1)から(4)のいずれか一項目に記載の方法。
【0022】
(6)前記触媒が、均一触媒反応のための触媒である、項目(1)から(5)のいずれか一項目に記載の方法。
【0023】
(7)前記触媒が、種々の二重結合化合物などの電子豊富な種および/または自由電子対含有のO、N、S、またはP種を含有する少なくとも1つのリガンドを含む、項目(1)から(6)のいずれか一項目に記載の方法。
【0024】
(8)触媒が、リガンドにおいておよび/もしくは遷移金属原子におけるキラリティーを有する、またはキラリティーを有する遷移金属錯体が、キラリティーを有する共触媒と一緒に遷移金属を含むアキラルのプロ触媒を使用することによりインサイチュで形成される、項目(1)から(7)のいずれか一項目に記載の方法。
【0025】
(9)キラル成分が、リガンド(単数または複数)および/もしくは遷移金属原子(単数または複数)から選択される、またはインサイチュで形成される遷移金属触媒が、エナンチオピュアもしくはジアステレオマー的に純粋な形態であり、好ましくは前記リガンドの少なくとも1つがキラリティーを有し、前記リガンド(単数または複数)が、エナンチオピュアもしくはジアステレオマー的に純粋な形態である、項目(1)から(8)のいずれか一項目に記載の方法。
【0026】
(10)触媒が、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニル−ホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン;(R)−2−(1−ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−(S)−3,5−ジオキサ−4−ホスファシクロヘプタ[2,1−1;3,4−a’]ジ−ナフタレン−4−イル)−1,2−ジヒドロキノリントルエンアダクト;(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファン;(R)−2,2’−ビス(ジフェニル−ホスフィノアミノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチルから選択されるリガンド(単数または複数)を含み、好ましくは、リガンド(単数または複数)は、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシル−ホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよびベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンから選択される、項目(1)から(9)のいずれか一項目に記載の方法。
【0027】
(11)触媒の少なくとも1つの遷移金属が、Cu、Co、Ni、Rh、Ru、PdおよびIr、好ましくはRh、Ru、PdおよびIr、より好ましくはRuおよびIr、特にIrからなる群から選択される、項目(1)から(10)のいずれか一項目に記載の方法。
【0028】
(12)触媒が、(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシル−ホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;ベンゼンルテニウム(II)ジクロリドダイマー1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニルホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミンおよびビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファンからなる群から選択される、項目(1)から(11)のいずれか一項目に記載の方法。
【0029】
(13)触媒が、5:1から100:1の範囲の基質対触媒のモル比、より好ましくは5:1から50:1の範囲の基質対触媒のモル比で使用される、項目(1)から(12)のいずれか一項目に記載の方法。
【0030】
(14)水素化が、約10℃から80℃、好ましくは約45℃から約55℃、より好ましくは約50℃の温度で行われる、項目(1)から(13)のいずれか一項目に記載の方法。
【0031】
本明細書で用いられる「約」という用語は、近似的に(approximately)、の近くで(in the region of)、大体(roughly)、またはほぼ(around)を意味する。「約」という用語が、数値範囲と関連して用いられる場合、それは、示された数値を上方および下方に境界を拡大することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、記載された値の上方および下方に10%の変動だけ数値を変更するために、本明細書で用いられる。
【0032】
(15)水素化が、約5から20バールの水素圧で行われ;および/または反応時間が、約1から20日間、好ましくは約1から10日間である、項目(1)から14のいずれか一項目に記載の方法。
【0033】
(16)脱ハロゲン化が、式VIの化合物のモル量に対して5モル%未満、好ましくは3モル%未満、より好ましくは1モル%未満で起こる、項目(1)から(15)のいずれか一項目に記載の方法。
【0034】
(17)式VIのエナンチオマー的に純粋な化合物が、水素化の後で適用されるエナンチオマー分割によって得られる、項目(1)から(16)のいずれか一項目に記載の方法。
【0035】
本明細書で用いられる「エナンチオマー分割」という用語は、キラルカラムクロマトグラフィーなどの当技術分野で知られている手段によって、またはジアステレオマー塩の結晶化によってエナンチオマーを分離することを意味する。
【0036】
(18)ハロゲン化反応のための溶媒が、THF、CHCl、1,2−ジクロロエタンまたはトルエンからなる群から選択される、項目(1)から(17)のいずれか一項目に記載の方法。
【0037】
(19)薬学的に活性な化合物を製造するための方法における、項目(1)から(18)のいずれか一項目に記載の方法の使用。
【0038】
本発明のこの態様によれば、項目(1)から(18)で記載された方法は、薬学的に活性な化合物の効率的で、特に改善された、およびより安全な製造を提供するが、式VIの脱ハロゲン化化合物および非常に腐食性で、潜在的に毒性のハロゲン化水素の両方の形態の副生成物が実質的により少ないからである。高い収量の所望の薬学的に活性な化合物が、高純度で得られるが、ここで、必要とされる精製工程はより少ない。さらに、ハロゲン化水素による製造設備の腐食が、有効に減少する。
【0039】
例えば、化合物VIにおけるXは、それ自体で、即ち、医薬活性化合物における構造基として価値があり得る。他の有用な実施形態では、Xは、脱離基として、例えば、SN反応を容易に可能にするために使用され、それにより、必要に応じて他の構造基で置き換えら得る。
【0040】
(20)式V
【0041】
【化3】

(式中、
およびRは、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルであり;
は、OR、NR、SR、B(OR)(OR)、または(F、Cl、Br、I、OCOR、OSOから選択される)X”であり、ここで、RおよびRは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルを互いに独立して表し;またはRおよびRは、5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を協同的に形成し;
Xは、F、Cl、Br、Iから選択される。)
の化合物を水素化するためのイリジウム触媒の使用。
【0042】
本発明のこの態様によれば、ハロゲンアルカン、例えば、クロロアルケンの水素化の一般的な副反応である脱ハロゲン化が、ハロアルケンからのハロアルカンの調製における工業的に利用可能なレベルに特に効率的に減少する、式Vの化合物の水素化のためのイリジウム触媒の使用の方法が提供される。
【0043】
好ましくはおよび有利には、式Vの化合物の水素化のためのイリジウム触媒の上記の使用では、脱ハロゲン化は、式Vの化合物から得られる水素化された、非脱ハロゲン化生成物のモル量に対して、10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、最も好ましくは3モル%未満、特に1モル%未満で起こる。
【0044】
(21)Rが、B(OR)(OR)である、項目(20)に記載の使用。
【0045】
(22)Xが、Cl、Br、Iから選択される、項目(20)または(21)に記載の使用。
【0046】
(23)Rまたは/およびRが、水素、または置換もしくは非置換の直鎖C−C−アルキル、置換もしくは非置換の分岐C−C−アルキルおよび置換もしくは非置換のC−C−シクロアルキルからなる群から(互いに独立して)選択され、好ましくはRまたは/およびRが、水素、または非置換の直鎖もしくは分岐C−C−アルキルから(互いに独立して)選択され、より好ましくはRおよび/またはRが、水素またはイソプロピルであり;および/またはRまたはRのいずれかが水素であり、好ましくはRが水素であり;および/またはRおよびRが、直鎖の置換もしくは非置換C−C−アルキル、置換もしくは非置換の分岐C−C−アルキルからなる群から選択され、またはRおよびRが、5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を形成し;好ましくはRおよびRが、4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を協同的に形成する、項目(20)から(22)のいずれか一項目に記載の方法。
【0047】
(24)前記イリジウム触媒が、種々の二重結合化合物などの電子豊富な種および/または自由電子対含有のO、N、S、またはP種を含有する少なくとも1つのリガンドを含む、項目(20)から(23)のいずれか一項目に記載の方法。
【0048】
(25)イリジウム触媒が、リガンドにおいておよび/もしくは遷移金属原子にキラリティーを有し、またはキラリティーを有する遷移金属錯体が、キラリティーを有する共触媒と一緒に遷移金属を含むアキラルのプロ触媒を用いてインサイチュで形成される、好ましくは、リガンド(単数または複数)および/もしくは遷移金属原子(単数または複数)またはインサイチュで形成される遷移金属触媒が、エナンチオピュアまたはジアステレオマー的に純粋な形態である、より好ましくは、前記リガンドの少なくとも1つがキラリティーを有し、ここで、前記リガンド(単数または複数)が、エナンチオピュアまたはジアステレオマー的に純粋な形態である、項目(20)から(24)のいずれか一項目に記載の使用。
【0049】
(26)イリジウム触媒が、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニル−ホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン;(R)−2−(1−ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−(S)−3,5−ジオキサ−4−ホスファシクロヘプタ[2,1−1;3,4−a’]ジ−ナフタレン−4−イル)−1,2−ジヒドロキノリントルエンアダクト;(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファン;(R)−2,2’−ビス(ジフェニル−ホスフィノアミノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチルから選択されるリガンド(単数または複数)を含み、好ましくは、リガンド(単数または複数)は、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシル−ホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよびベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンから選択される、項目(20)から(25)のいずれか一項目に記載の使用。
【0050】
(27)イリジウム触媒が、(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシル−ホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジンおよびビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジンからなる群から選択される、項目(20)から(26)のいずれか一項目に記載の使用。
【0051】
(28)イリジウム触媒が、5:1から100:1の範囲の基質対触媒のモル比、より好ましくは5:1から50:1の範囲の基質対触媒のモル比で使用される、項目(20)から(27)のいずれか一項目に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下において、本発明は、好ましい実施形態および実施例によってより詳細に説明されるが、これらの実施形態、実施例は、説明の目的のためにのみ提示され、本発明を決して限定するものではないことが留意される。特に、以下の説明は、本発明を示すために式VIおよび式V(式中、R=B(OR)(OR)およびR=水素)の化合物を例示するが、一方、本発明の概念は、式VIおよび式V(式中、RおよびRは、それぞれ、B(OR)(OR)および水素以外である)の化合物の構造的変形について同様に達成され得ることが理解される。したがって、本発明は、例示された実施形態に限定されないが、構造的変形は、当業者によって企図され得る。
【0053】
反応スキーム1は、重要な工程が、式Vの化合物から式VIの化合物である、α−置換ボロン酸エステル(VI)を調製するための本発明による方法の好ましい実施形態を示す。
【0054】
【化4】

【0055】
スキーム1(ここで、R、R、R、Xは、上記項目における通りに定義され、Zは、Cl、BrまたはIである。)の好ましい実施形態によれば、式IIIの化合物は、式Iの化合物を、強有機金属塩基、例えば、n−ヘキサン中n−BuLiなどの有機リチウム反応剤と接触させることによって調製されて、式IIの化合物(これは、この場合、アセチリドであり、有機リチウム反応剤が使用されるので、リチウムアセチリドである。)を得る。次いで、式IIの化合物およびそのそれぞれのアセチレン誘導体RC≡CHを単離することなしに、式IXの化合物を添加して、反応は同じ反応容器内で進行し、式IIIの化合物を生成する。この反応の最後の工程は、無水HClなどの酸を添加することによって行われる。化合物IIIへの反応の両工程である、脱離および付加は、有機溶媒中、好ましくはTHF中で行われる。
【0056】
スキーム1で示される合成の出発物質である、式Iの化合物は入手可能であり;例えば、当業者に知られている合成経路によって、例えば、Tetrahedron Letters2000年、41、4007−4009頁に記載された通りに調製され得る。
【0057】
さらに、スキーム1に示される好ましい実施形態によれば、式Vの化合物は、式IIIの化合物にヒドロジルコニウム化を施して、式IVの化合物(これは、その後にハロゲン化、好ましくはインサイチュでハロゲン化される。)を得ることによって調製される。本明細書で用いられるヒドロジルコニウム化は、当業者に周知の方法である、CpZr(H)Cl(シュワルツ試薬としても知られる)を用いて有機ジルコノセンを形成することを意味する。ハロゲン化は、例えば、ハロゲン上で正電荷を示す種々のハロゲン試薬、好ましくは、N−ハロゲノスクシンイミド(例えば、N−クロロスクシンイミド、スキーム1で示されるNCS)を式IVの化合物にインサイチュで添加し、式Vの化合物を生成させることによって達成され得る。反応は、後に減圧下で除去されるTHFまたはCHClなどの有機溶媒中で行われる。反応混合物は、n−ヘキサンで抽出され、残渣は、クロマトグラフィーで精製される。
【0058】
代わりに、上記の通りのヒドロジルコニウム化の後で導入されるハロゲンは、最新技術から周知の方法によって、OCOR’およびOSOR’(ここで、R’は、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す。)からなる群から選択される部分に場合によってさらに変換され得る。例えば、US4924026のプロトコールに従って、ハロゲン原子、例えば、Cl(スキーム1におけるX=Clを有する式Vの化合物)は、部分OCOMe(スキーム1におけるX=OCOMeの式Vの化合物)に変換され得る。
【0059】
シュワルツ中間体を介したボロン酸アルキンのハロゲン化水素化は、理論的に2種類の幾何異性体で存在する、新たに形成されるアルケンを生成する。文献データ(J.Am.Chem.Soc.1994年、116、10302−10303頁)に基づいて、(E)配置が、恐らく優勢に形成される。本発明に照らしてみると、配置の決定は必要ではなく、本発明者らの発明の方法を考慮すると、β炭素原子がプロキラルでないからである。
【0060】
さらに、スキーム1で示される好ましい実施形態によれば、式VIの化合物は、式Vの化合物の水素化/還元によって調製される。反応は、遷移金属(単数または複数)を含む錯体から選択される触媒の存在下で、有機溶媒、好ましくはTHF、CHCl、1,2−ジクロロエタン(DCE)またはトルエン中で行われる。それは、不活性雰囲気下でオートクレーブ中で適切に行われる。
【0061】
触媒が、脱ハロゲン化の減少傾向に実質的に寄与するように、それは、遷移金属が、好ましくはCu、Co、Ni、Rh、Ru、Pd、Irからなる群から選択される遷移金属錯体から選択される。より好ましくは、触媒は、遷移金属が、好ましくはCu、Rh、Ru、Pd、Ir、特にIrである遷移金属−(リン)−錯体である。好ましくは、遷移金属は、リガンドとして種々の二重結合化合物などの電子豊富な種および/または自由電子対含有のO、N、S、またはP種を含有する少なくとも1つの有機化合物で錯体化される。より好ましくは、遷移金属触媒は、リガンドにおいておよび/もしくは遷移金属原子にキラリティーを有する、またはキラリティーを有する遷移金属錯体は、キラリティーを有する共触媒、例えば、キラルリガンドと一緒に、遷移金属を含むアキラルのプロ触媒を用いることによってインサイチュで形成される。さらにより好ましくは、キラリティーを有する上記の成分は、エナンチオマー的またはジアステレオマー的に純粋な形態である。特に、前記リガンドの少なくとも1つは、キラリティーを有し、ここで、前記リガンド(単数または複数)は、エナンチオマー的またはジアステレオマー的に純粋な形態である。例えば、このようなリガンドには、限定されるものではないが、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン(即ち、(R)−P−Phos);(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン(即ち、(S)−Xyl−P−Phos);(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン(即ち、(R)−Phane−Phos);1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニルホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン(即ち、(S)−MeBoPhos);(R)−2−(1−ナフチル)−8−ジフェニル−ホスフィノ−1−(S)−3,5−ジオキサ−4−ホスファシクロヘプタ[2,1−1;3,4−a’]ジ−ナフタレン−4−イル)−1,2−ジヒドロキノリントルエンアダクト(即ち、(Sa,Rc)−(1−Nph)−キナホス);(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファン(即ち、(S)−XylPhanePhos);(R)−2,2’−ビス(ジフェニル−ホスフィノアミノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル(即ち、(R)−H8−Binam−P)が含まれ得る。好ましいキラルリガンドは、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシル−ホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよびベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンである。上記リガンドの一部は、以下のスキーム2に例示的に示される。
【0062】
【化5】

【0063】
キラルリガンドを有する遷移金属触媒の非限定的な一覧には、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;ベンゼンルテニウム(II)ジクロリドダイマー1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニルホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン;ビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファンが含まれる。
【0064】
さらに、遷移金属(単数または複数)を含む錯体は、好ましくは5:1から100:1の範囲の基質対触媒のモル比、より好ましくは5:1から50:1の範囲の基質対触媒のモル比で使用される。特に好ましい触媒は、(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロ−ホスフェート;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロ−オクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよび(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンである。
【0065】
式Vの化合物、Ir−触媒および適当な有機溶媒、好ましくはTHF、CHCl、DCEまたはトルエンは、窒素雰囲気下でオートクレーブ中に入れられる。オートクレーブは密封され、窒素で数回、好ましくは約6バールの窒素で3回、次いで、水素で数回、好ましくは約6バールの水素で3回、加圧/減圧される。次いで、この混合物は、約5から10バールの水素下、10℃から80℃、より好ましくは約45℃から55℃の温度で適当な期間、例えば、1から20日間、好ましくは約1から10日間撹拌される。この期間後、オートクレーブは室温、例えば、20℃から25℃に冷却される。次いで、オートクレーブは注意深く減圧され、得られた溶液は、適当な容器、好ましくは丸底フラスコ中に注ぎ入れられる。溶媒は減圧下で除去され、残渣は、適当な溶離液、好ましくはn−ヘキサンで、シリカゲルの短カラムを通過させて、触媒を除去する。イリジウム触媒を用いるこのような好ましい手順は、実質的に脱ハロゲン化の減少をもたらし、好ましくは脱ハロゲン化は、式VIの化合物のモル量に対して、10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、最も好ましくは3モル%未満、特に1モル%未満で起こる。
【0066】
本発明の別の実施形態によれば、化合物Vの水素化の反応で得られる化合物VIのα−(R)およびα−(S)異性体のラセミ混合物は、光学的に純粋なα−(R)またはα−(S)−エナンチオマーを生成させるためにエナンチオマー分割によってさらに分離され得る。エナンチオマーはそれらのスカラー特性で異ならないので、エナンチオマー分割は、キラル環境を必要とする。分離のためのキラル環境は、例えば、クロマトグラフィーカラムにおけるキラル担体によって、または結晶化によって分離され得るジアステレオマー塩を形成させるためにエナンチオピュアな酸/塩基付加塩を添加することによって与えられ得る。式VIの化合物のボロラン部分がキラルである特別の場合に、式VIの化合物はジアステレオマーを表す。ジアステレオマーは、それらのスカラー特性で異なるので、式VIのジアステレオマー化合物は、例えば、結晶化によってまたはアキラル担体上でのクロマトグラフィー法によって、キラル環境を与えることなしに分離され得る。
【0067】
本発明の別の好ましい態様は、薬学的に活性な化合物の特に改善された製造を提供する薬学的に活性な化合物を製造するための上記水素化法の使用である。式VIの脱ハロゲン化化合物および高度に腐食性のハロゲン化水素の両方の形態の低レベルの副生成物が避けられるので、高収量の所望の薬学的に活性な化合物が、高い化学的および光学的純度で得られ、必要とされる精製工程はより少ない。
【0068】
以下では、薬学的に活性な化合物(ここでは、ボルテゾミブ)を製造する本水素化法の使用がさらに説明される。例えば、式VIの化合物は、スキーム3に示される通りに、式VIIIの化合物のα−アミノボロン酸エステル誘導体に変換され得る。
【0069】
【化6】

【0070】
次に、スキーム4で示される通りに、式VIII’(式中、R=イソプロピル、RおよびR=4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を協同的に形成する、ならびにA=Cl)の化合物を、式Xの化合物と反応させて、ボルテゾミブを得る。
【0071】
【化7】

【0072】
実験手順
実施例1a:
4,4,5,5−テトラメチル−2−(3−メチルブタ−1−イニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(IIIa)の合成
【0073】
【化8】

Ia(7.0g、50mmol)の乾燥THF(25ml)中撹拌溶液に−78℃で、n−BuLi(n−ヘキサン中1.6M、62.5mL、100mmol)を添加した。−78℃で1時間撹拌後、反応混合物を室温に加温し、その温度で1時間撹拌した。別のフラスコに、アルゴン雰囲気下で乾燥THF(50mL)中2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(7.8mL、38mmol)を入れ、反応混合物は−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第一のフラスコからリチウムアセチリドを第二のフラスコに両頭針でゆっくりと添加した。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後、無水HCl(100mmol)を添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿LiClをろ過により除去し、溶媒を減圧下で除去した後、残渣を蒸留(113−115℃/7ミリバール)により精製して、油としてIIIa(5.9g、80%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.15(d,6H)、1.25(s,12H)、2.45−2.6(m,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=21.0、22.2、24.5、83.9。
【0074】
出発物質Iaは、Tetrahedron Letters 2000年、41、4007−4009頁に記載された通りに調製した。
【0075】
実施例1b:
2−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(IIIb)
【0076】
【化9】

IIb’(5mL、40mmol)の乾燥THF(25mL)中撹拌溶液に−78℃で、n−BuLi(n−ヘキサン中2.5M、18mL、44mmol)を添加した。別のフラスコに、アルゴン雰囲気下で乾燥THF(50mL)中2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(8.2mL、40mmol)を入れ、反応混合物は−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第一のフラスコからリチウムアセチリドを第二のフラスコに両頭針でゆっくり添加した。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(44mmol)を添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿LiClをろ過により除去し、溶媒を減圧下で除去した後、残渣を蒸留(115−125℃/15ミリバール)により精製して、無色のグリース状固体としてIIIb(4.3g、52%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.20(s,9H)、1.25(s,12H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.6、27.9、30.4、84.0。
【0077】
実施例1c:
4,4,5,5−テトラメチル−2−(ペンタ−1−イニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(IIIc)の合成
【0078】
【化10】

IIc’(5mL、51mmol)の乾燥THF(25mL)中撹拌溶液に−78℃で、n−BuLi(n−ヘキサン中2.5M、22.4mL、56mmol)を添加した。別のフラスコに、アルゴン雰囲気下で乾燥THF(50mL)中2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(10.4mL、51mmol)を入れ、反応混合物は−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第一のフラスコからリチウムアセチリドを第二のフラスコに両頭針でゆっくり添加した。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(56mmol)を添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿LiClをろ過により除去し、溶媒を減圧下で除去した後、残渣を蒸留(115−125℃/15ミリバール)により精製して、油としてIIIc(6.3g、64%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.95(t,3H)、1.25(s,12H)、1.50−1.60(m,2H)、2.20(t,2H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=13.4、21.3、21.4、24.45、24.5、83.9。
【0079】
実施例1d:
4,4,5,5−テトラメチル−2−(フェニルエチニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(IIId)の合成
【0080】
【化11】

IId’(10mL、91mmol)の乾燥THF(50mL)中撹拌溶液に−78℃で、n−BuLi(n−ヘキサン中2.5M、40mL、100mmol)を添加した。別のフラスコに、アルゴン雰囲気下で乾燥THF(100mL)中2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(18.7mL、91mmol)を入れ、反応混合物は−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第一のフラスコからリチウムアセチリドを第二のフラスコに両頭針でゆっくり添加した。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(105mmol)を添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿LiClをろ過により除去し、溶媒を減圧下で除去した後、残渣を蒸留(185−200℃/15ミリバール)により精製して、無色の油としてIIId(16.05g、76%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.32(s,12H)、7.26−7.36(m,3H)、7.52(d,2H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.6、84.4、121.8、128.2、129.3、132.5。
【0081】
実施例1e:
2−((4−フルオロフェニル)エチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(IIIe)の合成
【0082】
【化12】

IIe’(4.3mL、37mmol)の乾燥THF(20mL)中撹拌溶液に−78℃で、n−BuLi(n−ヘキサン中2.5M、16.3mL、41mmol)を添加した。別のフラスコに、アルゴン雰囲気下で乾燥THF(50mL)中2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(7.5mL、37mmol)を入れ、反応混合物は−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第一のフラスコからリチウムアセチリドを第二のフラスコに両頭針でゆっくり添加した。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(43mmol)を添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿LiClをろ過により除去し、溶媒を減圧下で除去した後、残渣を蒸留(175−185℃/15ミリバール)により精製して、無色のグリース状固体としてIIIe(7.2g、79%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.32(s,12H)、7.0(t,2H)、7.52(t,2H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.6、84.4、115.5、115.8、117.9、134.5、134.6、161.8、164.3。
【0083】
実施例2:
2−(1−クロロ−3−メチルブタ−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Va)の合成
【0084】
【化13】

a)溶媒としてTHFを用いて
CpZr(H)Cl(7.3g、27mmol)の乾燥THF(55mL)中懸濁液を、アルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いで、IIIa(24mmol)の乾燥THF中0.5M溶液48mLを添加した。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を生じた。N−クロロスクシンイミド(3.6g、27mmol)をインサイチュで添加することにより、溶液の色の脱色をもたらした。溶媒を減圧下で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を添加して、反応混合物を抽出した。溶媒を減圧下で除去した後、残渣をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5/0.5)により精製して、油としてVa(2.5g、45%)を得た。
【0085】
b)溶媒としてCHClを用いて
CpZr(H)Cl(7.3g、27mmol)の乾燥CHCl(55mL)中懸濁液を、アルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いで、IIIa(24mmol)のCHCl中0.5M溶液48mLを添加した。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を生じた。N−クロロスクシンイミド(3.6g、27mmol)をインサイチュで添加することにより、溶液の色の脱色をもたらした。溶媒を減圧下で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を添加して、反応混合物を抽出した。溶媒を減圧下で除去した後、残渣をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5/0.5)により精製して、油としてVa(3.3g、60%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.95(d,6H)、1.25(s,12H)、2.95−3.05(m,1H)、6.35(d,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=22.8、24.6、29.5、84.2、156.2。
【0086】
実施例2c:
2−(1−クロロ−3,3−ジメチル−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Vb)の合成
【0087】
【化14】

CpZr(H)Cl(6.8g、25mmol)の乾燥CHCl(50mL)中懸濁液を、アルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いで、IIIb(23mmol)のCHCl中0.5M溶液43mLを添加した。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を生じた。N−クロロスクシンイミド(3.3g、25mmol)をインサイチュで添加することにより、溶液の色の脱色をもたらした。溶媒を減圧下で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を添加して、反応混合物を抽出した。溶媒を減圧下で除去した後、残渣をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5/0.5)により精製して、油としてVb(1.7g、30%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.1(s,9H)、1.3(s,12H)、6.3(s,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.4、29.7、34.8、84.4、152.1。
【0088】
実施例2d:
2−(1−クロロ−ペンタ−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Vc)の合成
【0089】
【化15】

CpZr(H)Cl(7.3g、27mmol)の乾燥CHCl(54mL)中懸濁液を、アルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いで、IIIc(24.5mmol)のCHCl中0.5M溶液47mLを添加した。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を生じた。N−クロロスクシンイミド(3.6g、27mmol)をインサイチュで添加することにより、溶液の色の脱色をもたらした。溶媒を減圧下で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を添加して、反応混合物を抽出した。溶媒を減圧下で除去した後、残渣をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5/0.5)により精製して、油としてVc(2.95g、48%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.9(t,3H)、1.25(d,12H)、1.35−1.50(m,2H)、2.3(q,2H)、6.5(t,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=13.4、22.4、24.6、31.9、84.2、149.4。
【0090】
実施例2e:
2−(1−クロロ−2−フェニルビニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Vd)の合成
【0091】
【化16】

CpZr(H)Cl(6.94g、26mmol)の乾燥CHCl(51mL)中懸濁液を、アルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いで、IIId(21.3mmol)のCHCl中0.5M溶液42mLを添加した。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を生じた。N−クロロスクシンイミド(3.5g、26mmol)をインサイチュで添加することにより、溶液の色の脱色をもたらした。溶媒を減圧下で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を添加して、反応混合物を抽出した。溶媒を減圧下で除去した後、残渣をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5/0.5)により精製して、油としてVd(2.5g、45%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.33(s,12H)、7.24−7.39(m,6H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5、84.7、128.1、128.17、128.2、135.5、143.2。
【0092】
実施例2f:
2−(1−クロロ−2−(4−フルオロフェニル)ビニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Ve)の合成
【0093】
【化17】

CpZr(H)Cl(4.0g、14.8mmol)の乾燥CHCl(35mL)中懸濁液を、アルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いで、IIIe(13.5mmol)のCHCl中0.5M溶液27mLを添加した。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を生じた。N−クロロスクシンイミド(1.97g、14.8mmol)をインサイチュで添加することにより、溶液の色の脱色をもたらした。溶媒を減圧下で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を添加して、反応混合物を抽出した。溶媒を減圧下で除去した後、残渣をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5/0.5)により精製して、油としてVe(1.1g、30%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.32(s,12H)、7.0(t,2H)、7.32−7.39(m,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5、84.8、115.0、115.2、130.2、131.6、131.7、142.6、161.5、163.9。
【0094】
実施例3a:
2−(1−クロロ−3−メチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VIa)の合成
【0095】
【化18】

75mLのステンレススチール製オートクレーブを窒素でフラッシュした。基質Va(1.15g、5.0mmol)、(1,5−シクロ−オクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート(80.5mg、0.1mmol)および乾燥THF(30mL)を、窒素雰囲気下でオートクレーブに迅速に入れた。オートクレーブを密閉し、6バールの窒素で最初の3回、次いで、6バールの水素で3回加圧/減圧した。混合物を10バールの水素下、50℃で10日間撹拌した。オートクレーブを室温に冷却後直ちに、オートクレーブを注意深く減圧し、その溶液を丸底フラスコ中に注ぎ入れた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルの短カラム(溶離液=n−ヘキサン)を通過させて、触媒を除去した。生成物VIa(0.84g、80%)をさらに精製することなく次の工程に移した。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.9(m,6H)、1.3(s,1H)、1.45−1.5(m,1H)、1.75−1.85(m,1H)、1.87−1.95(m,1H)、3.5−3.6(m,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=22.8、24.5、25.5、31.6、42.5、84.3。
【0096】
実施例3b−d:
(R)−または(S)−2−(1−クロロ−3−メチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(R−またはS−VIa)の合成
【0097】
【化19】

75mLのステンレススチール製オートクレーブを窒素でフラッシュする。基質Va(1.15g、5.0mmol)、適当な触媒(Catb−d;80.5mg、0.1mmol)および乾燥THF(30mL)を、窒素雰囲気下でオートクレーブに迅速に入れる。オートクレーブを密閉し、6バールの窒素で最初の3回、次いで、6バールの水素で3回加圧/減圧する。混合物を10バールの水素下、50℃で10日間撹拌する。オートクレーブを室温に冷却後直ちに、オートクレーブを注意深く減圧し、その溶液を丸底フラスコ中に注ぎ入れる。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルの短カラム(溶離液=n−ヘキサン)を通過させて、触媒を除去する。生成物R−またはS−VIaをさらに精製することなく次の工程に移す。触媒が十分なエナンチオマー過剰率を与えない、例えば、エナンチオマー過剰率が約99%未満である場合、次の反応工程を実施する前にエナンチオマー分割を適用することができる。
【0098】
実施例3e−h:
(R)−または(S)−2−(1−クロロ−3−メチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(R−またはS−VIa)の合成
【0099】
【化20】

15mLのステンレススチール製オートクレーブを窒素でフラッシュした。基質Va(0.5mmol)、適当な触媒(Cate−f:0.01mmol;Catg:0.02mmol)およびDCE(3mL)を、窒素雰囲気下でオートクレーブ中に迅速に入れた。オートクレーブを密閉し、6バールの窒素で最初の3回、次いで、6バールの水素で3回加圧/減圧した。混合物を20バールの水素下、50℃で20時間撹拌した。オートクレーブを室温に冷却後直ちに、オートクレーブを注意深く減圧し、その溶液を丸底フラスコ中に注ぎ入れた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルの短カラム(溶離液=n−ヘキサン)を通過させて、触媒を除去した。生成物R−またはS−VIaをさらに精製することなく次の工程に移した。
【0100】
触媒Cate−hを用いることによるVaのエナンチオ選択的水素化のパラメータを以下の通り示す:
【0101】
【表1】

【0102】
エナンチオマー過剰率は、水素炎イオン化検出器を備えたGC機器を用いるガスクロマトグラフィー法によって決定した。用いたカラムは、寸法30m×0.25mm×0.12μmのSupelco Astec A−TAであった。用いた注入器は、スプリット/スプリットレス、スプリット比30:1、T=250℃であった。GC条件:注入容量=1.0μL;キャリヤーガス=ヘリウム、一定流量1.5mL/分;FID温度=250℃;分析工程の温度勾配=15℃/分で70℃(66分)から130℃(8分);冷却工程の温度勾配=−15℃/分で130℃(0分)から70℃(0.1分);合計運転時間=78分(冷却と合わせて82分)。R−VIaおよびS−VIaの保持時間は、それぞれ約61分および64分であった。
【0103】
実施例3i
(S)−2−(1−クロロ−3−メチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(S−VIa)の合成
【0104】
【化21】

75mLのステンレススチール製オートクレーブを窒素でフラッシュした。触媒Catj(169mg、0.17mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブを密閉し、5バールの窒素で3回加圧/減圧し、続いてVa(1.0g、4.34mmol)を添加した。この系を窒素で5回パージし、次いで、乾燥CHCl(25mL)を添加した。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を5バールの水素下、50℃で2日間撹拌した。オートクレーブが室温に冷却した後直ちに、オートクレーブを注意深く減圧し、その溶液を丸底フラスコ中に注ぎ入れた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルの短カラム(溶離液=n−ヘキサン:EtOAc=9:1)を通過させて、触媒を除去した。生成物S−VIa(0.66g、66%、93%ee)をさらに精製することなく次の工程に移した。
【0105】
eeは、以下の条件下でキラルGCを用いて確定した:カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm;注入器:スプリット比30、T=250℃;キャリヤーガス:ヘリウム、一定流量1.5ml/分;検出器、T=250℃;温度勾配;60℃で40分間、90℃まで0.5℃/分で上昇させ、2分保持し、60℃まで15℃/分で低下させ、1分保持;合計運転時間:105分。保持時間:Va:83.4分;R−VIa:93.7分;S−VIb:94.8分。
【0106】
実施例3j
2−(1−クロロ−3,3−ジメチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VIb)の合成
【0107】
【化22】

75mLのステンレススチール製オートクレーブを窒素でフラッシュした。触媒Catj(567mg、0.57mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブを密閉し、5バールの窒素で3回加圧/減圧し、続いてVb(1.0g、4.1mmol)を添加した。この系を窒素で5回パージし、次いで、乾燥CHCl(25mL)を添加した。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を10バールの水素下、50℃で2日間撹拌した。オートクレーブが室温に冷却した後直ちに、オートクレーブを注意深く減圧し、その溶液を丸底フラスコ中に注ぎ入れた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルの短カラム(溶離液=n−ヘキサン:EtOAc=9:1)を通過させて、触媒を除去した。生成物R−またはS−VIb(0.7g、67%、93%ee(e2))をさらに精製することなく次の工程に移した。
【0108】
eeは、以下の条件下でキラルGCを用いて確定した:カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm;注入器:スプリット比30、T=250℃;キャリヤーガス:ヘリウム、一定流量1.0ml/分;検出器、T=90℃;合計運転時間:60分。保持時間:e1−VIb:52.9分;e2−VIb:53.9分;Vb:54.7分。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=0.95(s,9H)、1.30(s,12H)、1.77(dd,1H)、1.98(dd,1H)、3.47(dd,1H)。
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5、29.6、31.3、48.0、84.2。
【0109】
実施例3k
2−(1−クロロ−ペンチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VIc)の合成
【0110】
【化23】

75mLのステンレススチール製オートクレーブを窒素でフラッシュした。触媒Cati(183mg、0.2mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブを密閉し、5バールの窒素で3回加圧/減圧し、続いてVc(1.2g、5mmol)を添加した。この系を窒素で5回パージし、次いで、乾燥トルエン(30mL)を添加した。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を10バールの水素下、80℃で2日間撹拌した。オートクレーブが室温に冷却した後直ちに、オートクレーブを注意深く減圧し、その溶液を丸底フラスコ中に注ぎ入れた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルの短カラム(溶離液=n−ヘキサン:EtOAc=9:1)を通過させて、触媒を除去した。生成物R−またはS−VIc(0.48g、40%、85%ee(e2))をさらに精製することなく次の工程に移した。
【0111】
eeは、以下の条件下でキラルGCを用いて確定した:カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm;注入器:スプリット比30、T=250℃;キャリヤーガス:ヘリウム、一定流量1.5ml/分;検出器、T=250℃;温度:100℃で30分間;合計運転時間:30分。保持時間:Vc:20.0分;e1−VIc:21.5分;e2−VIc:22,4分。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=0.92(t,3H)、1.30(s,12H)、1.36(m,3H)、1.48(m,1H)、1.83(m,2H)、3.42(dd,1H)。
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=14.0、22.2、24.6、29.5、33.8、84.3。
【0112】
実施例3l
2−(1−クロロ−2−フェニルエチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VId)の合成
【0113】
【化24】

75mLのステンレススチール製オートクレーブを窒素でフラッシュした。触媒Catj(490mg、0.49mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブを密閉し、5バールの窒素で3回加圧/減圧し、続いてVd(1.3g、4.9mmol)を添加した。この系を窒素で5回パージし、次いで、乾燥CHCl(30mL)を添加した。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を10バールの水素下、50℃で2日間撹拌した。オートクレーブが室温に冷却した後直ちに、オートクレーブを注意深く減圧し、その溶液を丸底フラスコ中に注ぎ入れた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルの短カラム(溶離液=n−ヘキサン:EtOAc=9:1)を通過させて、触媒を除去した。生成物R−またはS−VId(0.65g、50%、90%ee(e2))をさらに精製することなく次の工程に移した。
【0114】
eeは、以下の条件下でキラルGCを用いて確定した:カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm;注入器:スプリット比30、T=250℃;キャリヤーガス:ヘリウム、一定流量1.5ml/分;検出器、T=250℃;温度110℃;合計運転時間:120分。保持時間:e1−VId:103.9分;e2−VId:106.7分;Vd:113.5分。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=1.25(s,6H)、1.27(s,6H)、3.12(dd,1H)、3.21(dd,1H)、3.63(t,1H)、7.29(m,5H)。
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5、24.6、40.3、84.5、126.8、128.4、129.2、138.4ppm。
【0115】
実施例3m
2−(1−クロロ−2−(4−フルオロフェニル)エチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VIe)の合成
【0116】
【化25】

75mLのステンレススチール製オートクレーブを窒素でフラッシュした。触媒Catj(350mg、0.35mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブを密閉し、5バールの窒素で3回加圧/減圧し、続いてVe(1.0g、3.5mmol)を添加した。この系を窒素で5回パージし、次いで、乾燥CHCl(21mL)を添加した。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を5バールの水素下、50℃で2日間撹拌した。オートクレーブが室温に冷却した後直ちに、オートクレーブを注意深く減圧し、その溶液を丸底フラスコ中に注ぎ入れた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルの短カラム(溶離液=n−ヘキサン:EtOAc=9:1)を通過させて、触媒を除去した。生成物R−またはS−VIe(0.6g、60%、89%ee(e2))をさらに精製することなく次の工程に移した。
【0117】
eeは、以下の条件下でキラルGCを用いて確定した:カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm;注入器:スプリット比30、T=250℃;キャリヤーガス:ヘリウム、一定流量1.5ml/分;検出器、T=250℃;温度110℃;合計運転時間:120分。保持時間:Ve+e1−VIe:109.2分;e2−VIe:112.0分;
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=1.25(s,6H)、1.26(s,6H)、3.08(dd,1H)、3.16(dd,1H)、3.58(t,1H)、7.00(t,2H)、7.24(dd,2H)。
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5、24.6、39.4、84.6、115.1 130.7、134.0、161.9。
【0118】
実施例4a
3−メチル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ブタン−1−アミン塩酸塩(ロイシンボロネート塩酸塩、VIIIa)の合成
【0119】
【化26】

NaHMDS(THF中1M、3.8mL、3.8mmol)の乾燥THF(8mL)中溶液にアルゴン雰囲気下、−35℃で、8mLの乾燥THFに溶解させたVIa(0.88g、3.8mmol)を添加した。溶液を室温に加温し、5時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させた。残渣を10mLのn−ヘプタンに溶解させ、8mLのHOおよび4mLの飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機相をMgSO上で脱水し、ろ過し、蒸発乾固させた。n−ヘプタン(20mL)に溶解させた得られた残渣の溶液に、無水HCl(4当量、EtO中溶液)をアルゴン雰囲気下、−60℃で添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿固体をろ過により反応混合物から単離し、EtOで洗浄し、白色の固体としてVIIIa(0.63g、70%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.9(d,6H)、1.25(s,12H)、1.55−1.65(m,1H)、1.7−1.8(m,1H)、1.82−1.9(m,1H)、2.85−2.95(m,1H)、8.2(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=22.4、22.4、24.6、24.9、25.0、38.5、84.9。
【0120】
実施例4b:
(R)−3−メチル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ブタン−1−アミン塩酸塩(R−VIIIa)の合成
【0121】
【化27】

アルゴン雰囲気下、LiHMDS(THF中1M、2.5mL、2.5mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃で冷却した。S−VIa(0.58g、2.5mmol、実施例3e)を5mLの乾燥THFに溶解させ、−20℃でLiHMDS溶液に添加した。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、蒸発乾固させた。残渣を5mLのn−ヘプタンに溶解させ、5mLのHOおよび2mLの飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、ろ過し、蒸発乾固させた。n−ヘプタン(7mL)に溶解させた得られた残渣の溶液に、無水HCl(4当量、EtO中溶液)をアルゴン雰囲気下、−60℃で添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿固体をろ過により反応混合物から単離し、EtOで洗浄して、白色の固体としてR−VIIIa(0.33g、56%、92.5%ee)を得た。
【0122】
実施例4c:
3,3−ジメチル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ブタン−1−アミン塩酸塩(VIIIb)の合成
【0123】
【化28】

アルゴン雰囲気下、LiHMDS(THF中1M、1.9mL、1.9mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃で冷却した。R−またはS−VIb(0.47g、1.9mmol、実施例3e)を4mLの乾燥THFに溶解させ、−20℃でLiHMDS溶液に添加した。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、蒸発乾固させた。残渣を5mLのn−ヘプタンに溶解させ、5mLのHOおよび2mLの飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、ろ過し、蒸発乾固させた。n−ヘプタン(5mL)に溶解させた得られた残渣の溶液に、無水HCl(4当量、EtO中溶液)をアルゴン雰囲気下、−60℃で添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿固体をろ過により反応混合物から単離し、EtOで洗浄して、白色の固体としてS−またはR−VIIIb(0.25g、50%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.98(s,9H)、1.32(s,12H)、1.73−1.88(m,2H)、2.88(m,1H)、8.18(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.8、25.0、29.7、30.5、43.8、85.0。
【0124】
実施例4d:
1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ペンタン−1−アミン塩酸塩(VIIIc)の合成
【0125】
【化29】

アルゴン雰囲気下、LiHMDS(THF中1M、1.9mL、1.9mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃で冷却した。R−またはS−VIc(0.47g、1.9mmol)を4mLの乾燥THFに溶解させ、−20℃でLiHMDS溶液に添加した。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、蒸発乾固させた。残渣を5mLのn−ヘプタンに溶解させ、5mLのHOおよび2mLの飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、ろ過し、蒸発乾固させた。n−ヘプタン(5mL)に溶解させた得られた残渣の溶液に、無水HCl(4当量、EtO中溶液)をアルゴン雰囲気下、−60℃で添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿固体をろ過により反応混合物から単離し、EtOで洗浄して、白色の固体としてS−またはR−VIIIc(0.25g、50%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.88(t,3H)、1.29(s,12H)、1.31−1.55(m,4H)、1.77−1.90(m,2H)、2.84−2.94(m,1H)、8.16(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=13.8、22.3、24.6、24.9、28.5、29.2、37.5、85.0。
【0126】
実施例4e:
2−フェニル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)エタナミン塩酸塩(VIIId)の合成
【0127】
【化30】

アルゴン雰囲気下、LiHMDS(THF中1M、2.36mL、2.36mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃で冷却した。R−またはS−VId(0.6g、2.36mmol)を5mLの乾燥THFに溶解させ、−20℃でLiHMDS溶液に添加した。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、蒸発乾固させた。残渣を5mLのn−ヘプタンに溶解させ、5mLのHOおよび2mLの飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、ろ過し、蒸発乾固させた。n−ヘプタン(5mL)に溶解させた得られた残渣の溶液に、無水HCl(4当量、EtO中溶液)をアルゴン雰囲気下、−60℃で添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿固体をろ過により反応混合物から単離し、EtOで洗浄して、白色の固体としてS−またはR−VIIId(0.33g、50%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.24(s,12H)、3.24(s,3H)、7.21−7.41(m,5H)、8.22(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.7、24.9、35.4、85.2、105.0、127.2、128.7、129.6、136.4。
【0128】
実施例4f:
2−(4−フルオロフェニル)−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)エタナミン塩酸塩(VIIIe)の合成
【0129】
【化31】

アルゴン雰囲気下、LiHMDS(THF中1M、2.36mL、2.36mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃で冷却した。R−またはS−VIe(0.6g、2.36mmol)を5mLの乾燥THFに溶解させ、−20℃でLiHMDS溶液に添加した。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、蒸発乾固させた。残渣を5mLのn−ヘプタンに溶解させ、5mLのHOおよび2mLの飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、ろ過し、蒸発乾固させた。n−ヘプタン(5mL)に溶解させた得られた残渣の溶液に、無水HCl(4当量、EtO中溶液)をアルゴン雰囲気下、−60℃で添加した。次いで、反応混合物を室温に加温した。沈殿固体をろ過により反応混合物から単離し、EtOで洗浄して、白色の固体としてS−またはR−VIIIe(0.33g、50%)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.29(s,12H)、3.15−3.28(m,3H)、7.0(t,2H)、7.37(t,2H)、8.19(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.7、24.9、85.33、115.4、115.7、131.2、131.3、132.2、160.9、163.3。
【0130】
実施例5a:
触媒Catb−dの調製:適切なホスフィンリガンド(1.1当量)および金属前駆体(1.0当量)を、窒素雰囲気下で乾燥THF中、室温で30分間撹拌する。溶媒を蒸発により除去し、固形物をヘキサン/CHCl1/1を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、Catb−dを得る。
【0131】
実施例5b:
触媒Cat*e−gは、Adv.Synth.Catal.、2001年、343、450−454頁に記載された通りに調製することができる:冷却器を備えた二口フラスコに、キラルP,N−リガンド(lig−1−Lig−3;2当量)、[Ir(cod)Cl](1当量)およびCHClを添加した。混合物を窒素雰囲気下で加熱して、1時間還流させる。混合物を室温に冷却後、Na[BAr](3当量)、続いてHOを添加し、得られた2相混合物を10分間激しく撹拌する。層を分離させ、水層をさらなるCHClの部分で抽出する(2×)。合わせた有機抽出物をHOで洗浄し、蒸発させる。残渣をEtOHに溶解させ、HOをゆっくり添加することにより結晶化させて、適切な触媒を得る。
【0132】
実施例5c:
触媒:構造式
【0133】
【化32】

を有するCatiは、スキーム9aに詳述した通りの合成順序に従って調製した。市販のフェロセニルカルボン酸から出発して、オキサゾリン環を、Tetrahedron Asymmetry 1996年、7、1419−1430頁およびJ.Org.Chem.1996年、61、4937−4943頁に記載されたプロトコールに従って2工程(a、b)で導入した。ジフェニルホスフィンの付加(工程c)も、上述の手順に従って行った。対応するオキサゾリン(PL−4)からイミダゾリン環を構築するために、米国特許出願公開第2007/0244319A1号に記載された手順に従った。次いで、Ir錯体を、「P,N−Ir触媒の合成」(Adv.Synth.Catal.2001年、343、450−454頁)についてPfaltzにより記載された一般プロトコールに従って調製した。
【0134】
【化33】

a)(COCl)、CHCl、室温、2時間;次いで、(L)−(+)−バリノール、EtN、CHCl、室温、16時間、収率77%;b)TsCl、EtN、DMAP、CHCl、0℃で1.5時間、次いで、室温で16時間、収率98%;c)TMEDA、BuLi、ヘキサン、−78℃、2時間;次いで、PhPCl、室温、15分、収率70%;d)(R,R)−DPEN、CHSOH、IPA、85℃、40時間、収率94%;e)[Ir(COD)Cl]、CHCl、50℃、1時間;次いで、NaBAr、HO、室温、15分、収率87%。
【0135】
Lig−5:予め乾燥させたシュレンク管において、PL−4(1.0g、2.08mmol)および(R,R)−DPEN(2.2g、10.24mmol、5.0当量)を窒素下で乾燥IPA(25mL)に溶解させた。メタンスルホン酸(202μL、3.12mmol、1.5当量)を添加し、真空および窒素パージを7サイクル行った。得られた溶液を85℃で40時間撹拌した。室温に冷却後、溶媒を真空下で除去した。得られた粗製物を、EtOAc/ヘキサン1/1を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製した。Lig−5をオレンジ色の固体として単離した(1.15g、1.96mmol、収率94%)。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ=3.83(s,1H)、4.28(s,5H)、4.56(m,1H)、4.78(s,2H)、5.38(s,1H)、7.36(m,18H)、7.59(m,2H)ppm。
13C−NMR(CDCl,100MHz)δ=60.42、70.79、71.57、72.69、73.92、76.46(d,JC,P=10.1Hz)、127.14、128.39(d,JC,P=3.0Hz)、128.49(d,JC,P=6.0Hz)、128.62、129.61、132.51(d,JC,P=18.1Hz)、135.09(d,JC,P=20.1Hz)、136.07(d,JC,P=8.0Hz)、138.18(d,JC,P=8.0Hz)、164.46ppm。
31P−NMR(CDCl,162MHz)δ=−20.17ppm。
【0136】
Cati:予め乾燥させたシュレンク管において、Lig−5(250mg、0.427mmol)および[Ir(COD)Cl](149mg、0.222mmol、0.52当量)を窒素下で乾燥CHCl(6mL)に溶解させ、得られた溶液を50℃で1時間撹拌した。室温に冷却後、ナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(567mg、0.640mmol、1.5当量)、続いて6mLの水を添加し、得られた2相混合物を15分間激しく撹拌した。層を分離させ、水層をCHClで抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させた。得られた粗製物をヘキサン/CHCl1/1を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、オレンジ色の固体としてCati(650mg、0.371、収率87%)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ=1.28(m,2H)、1.55(m,1H)、2.02(m,3H)、2.29(m,1H)、2.41(m,1H)、2.73(m,1H)、3.14(m,1H)、4.43(d,J=4.0Hz,1H)、4.60(s,1H)、4.63(s,5H)、4.70(m,2H)、4.81(d,J=5.2Hz,1H)、4.86(t,J=2.4Hz,1H)、4.98(s,1H)、5.95(s,1H)、6.54(d,J=7.2Hz,2H)、7.07(t,J=7.2Hz,2H)、7.20(m,4H)、7.39(m,15H)、7.51(m,1H)、7.63(s,9H)ppm。
31P−NMR(CDCl,162MHz)δ=9.42ppm。
HRMS(+ESI)C4543FeIrNPの計算値:891.2107、実測値:891.2137。
【0137】
実施例5d:
構造式
【0138】
【化34】

を有する触媒Catjは、最初にイミダゾリン環中のNH基をベンゾイル基で保護し、次に対応するIr錯体を形成することによって触媒Cat*iの合成のために用いた共通前駆体Lig−5(実施例5cで記載した通りの)から調製した(スキーム9b)。
【0139】
【化35】

f)PhCOCl、EtN、CHCl、0℃、1時間、収率96%;e)[Ir(COD)Cl]、CHCl、50℃、1時間;次いで、NaBAr、HO、室温、15分、収率84%。
【0140】
Lig−6:予め乾燥させたシュレンク管において、Lig−5(350mg、0.597mmol)を窒素下で乾燥CHCl(7mL)に溶解させ、次いで、0℃に冷却した。トリエチルアミン(125μL、0.896mmol、1.5当量)および塩化ベンゾイル(76μL、0.667mmol、1.1当量)を添加し、反応混合物を0℃で1時間撹拌した。反応物を、真空下で溶媒を除去することにより後処理した。得られた粗製物を混合物EtOAc/ヘキサン1/4を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。保護リガンドLig−6をオレンジ色の固体として単離した(400mg、0.576、収率96%)。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ=3.80(s,1H)、4.26(s,5H)、4.29(s,1H)、4.78(s,1H)、4.85(s,1H)、5.22(s,1H)、6.66(d,J=8.4Hz,2H)、6.96(t,J=7.6Hz,2H)、7.09(t,J=7.6Hz,1H)、7.20(t,J=7.2Hz,2H)、7.30(t,J=7.6Hz,2H)、7.41(m,7H)、7.54(m,9H)ppm。
31P−NMR(CDCl,162MHz)δ=−19.90ppm。
【0141】
Catj:予め乾燥させたシュレンク管において、Lig−6(400mg、0.576mmol)および[Ir(COD)Cl](201mg、0.299mmol、0.52当量)を窒素下で乾燥CHCl(7mL)に溶解させ、得られた溶液を50℃で1時間撹拌した。室温に冷却後、ナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(766mg、0.864mmol、1.5当量)、続いて7mLの水を添加し、得られた2相混合物を15分間激しく撹拌した。層を分離させ、水層をCHClで抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させた。得られた粗製物を、ヘキサン/CHCl1/1を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、暗赤色の固体としてCatj(896mg、0.482、収率84%)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ=1.40(m,2H)、1.76(m,1H)、2.07(m,1H)、2.31(m,4H)、3.08(m,1H)、3.43(m,1H)、4.38(m,1H)、4.67(s,5H)、4.70(m,1H)、4.85(m,2H)、4.89(s,1H)、4.92(t,J=3.2Hz,1H)、5.10(s,1H)、6.64(d,J=6.8Hz,2H)、7.14(m,4H)、7.27(m,2H)、7.32(m,1H)、7.43(m,1H)、7.53(m,15H)、7.67(m,2H)、7.75(s,10H)ppm。
31P−NMR(CDCl,162MHz)δ=9.71ppm。
HRMS(+ESI)C5247FeIrNPOの計算値:995.2438、実測値:995.2399。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式VI
【化1】

(式中、
およびRは、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルであり;
は、OR、NR、SR、B(OR)(OR)、または(F、Cl、Br、I、OCOR、OSOから選択される)X”であり、ここで、RおよびRは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルを互いに独立して表し;またはRおよびRは、5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を協同的に形成し;
Xは、F、Cl、Br、Iから選択され;
は、キラル中心を示す。)
の化合物を、式V
【化2】

(式中、R、R、RおよびXは、上に定義された通りである。)
の化合物を水素化することによって調製する方法であって、
水素化が、少なくとも1つの遷移金属を含む錯体から選択される触媒の存在下で行われ、脱ハロゲン化が、式VIの化合物のモル量に対して10モル%未満で起こる方法。
【請求項2】
が、B(OR)(OR)であり;および/またはXが、Cl、Br、Iから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
または/およびRが、水素、または置換もしくは非置換の直鎖C−C−アルキル、置換もしくは非置換の分岐C−C−アルキルおよび置換もしくは非置換のC−C−シクロアルキルからなる群から(互いに独立して)選択され、好ましくはRまたは/およびRが、水素、または非置換の直鎖もしくは分岐C−C−アルキルから(互いに独立して)選択され、より好ましくはRおよび/またはRが、水素またはイソプロピルであり;および/または
またはRのいずれかが水素であり、好ましくはRが水素であり;および/または
およびRが、直鎖の置換もしくは非置換C−C−アルキル、置換もしくは非置換の分岐C−C−アルキルからなる群から選択され、またはRおよびRが、5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を形成し;好ましくはRおよびRが、4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を協同的に形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、均一触媒反応のための触媒であり;および/または
前記触媒が、種々の二重結合化合物などの電子豊富な種および/または自由電子対含有のO、N、S、もしくはP種を含有する少なくとも1つのリガンドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、リガンド中においておよび/もしくは遷移金属原子にキラリティーを有し、またはキラリティーを有する遷移金属錯体が、キラリティーを有する共触媒と一緒に遷移金属を含むアキラルのプロ触媒を用いることによりインサイチュで形成され、好ましくは、リガンド(単数または複数)および/もしくは遷移金属原子(単数または複数)またはインサイチュで形成される遷移金属触媒から選択されるキラル成分が、エナンチオピュアまたはジアステレオマー的に純粋な形態であり、より好ましくは、前記リガンドの少なくとも1つが、キラリティーを有し、ここで、前記リガンド(単数または複数)が、エナンチオピュアまたはジアステレオマー的に純粋な形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
触媒が、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニル−ホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン;(R)−2−(1−ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−(S)−3,5−ジオキサ−4−ホスファシクロヘプタ[2,1−1;3,4−a’]ジ−ナフタレン−4−イル)−1,2−ジヒドロキノリントルエンアダクト;(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファン;(R)−2,2’−ビス(ジフェニル−ホスフィノアミノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチルから選択されるリガンド(単数または複数)を含み、好ましくは、リガンド(単数または複数)は、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシル−ホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよびベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒の少なくとも1つの遷移金属が、Cu、Co、Ni、Rh、Ru、PdおよびIr、好ましくはRh、Ru、PdおよびIr、より好ましくはRuおよびIr、特にIrからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
触媒が、(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシル−ホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;ベンゼンルテニウム(II)ジクロリドダイマー1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニルホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミンおよびビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファンからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
触媒が、5:1から100:1の範囲の基質対触媒のモル比で、より好ましくは5:1から50:1の範囲の基質対触媒のモル比で使用される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水素化が、約10℃から80℃、好ましくは約45℃から55℃、より好ましくは約50℃の温度で行われ;および/または
水素化が、約5から20バールの水素圧で行われ;および/または
反応時間が、約1から20日間、好ましくは約10日間であり;および/または
ハロゲン化反応ための溶媒が、THF、CHCl、1,2−ジクロロエタンまたはトルエンからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
脱ハロゲン化が、式VIの化合物のモル量に対して、5モル%未満、好ましくは3モル%未満、特に1モル%未満で起こる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
薬学的に活性な化合物を製造する方法における、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項13】
式V
【化3】

(式中、
およびRは、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルであり;
は、OR、NR、SR、B(OR)(OR)、または(F、Cl、Br、I、OCOR、OSOから選択される)X”であり、ここで、RおよびRは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアラルキルを互いに独立して表し;またはRおよびRは、5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を協同的に形成し;
Xは、F、Cl、Br、Iから選択される。)
の化合物を水素化するためのイリジウム触媒の使用。
【請求項14】
脱ハロゲン化が、式Vの化合物から得られる水素化された非脱ハロゲン化生成物のモル量に対して、10モル%未満で起こる、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
が、B(OR)(OR)であり;および/または
Xが、Cl、BrおよびIから選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
イリジウム触媒が、種々の二重結合化合物などの電子豊富な種および/または自由電子対含有のO、N、S、もしくはP種を含有する少なくとも1つのリガンドを含み、好ましくはイリジウム触媒が、リガンドにおいておよび/もしくはイリジウム原子にキラリティーを有し、またはキラリティーを有するイリジウム錯体が、キラリティーを有する共触媒と一緒にアキラルのイリジウムプロ触媒を用いることによりインサイチュで形成される、請求項13から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
イリジウム触媒が、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニル−ホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン;(R)−2−(1−ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−(S)−3,5−ジオキサ−4−ホスファシクロヘプタ[2,1−1;3,4−a’]ジ−ナフタレン−4−イル)−1,2−ジヒドロキノリントルエンアダクト;(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファン;(R)−2,2’−ビス(ジフェニル−ホスフィノアミノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチルから選択されるリガンド(単数または複数)を含み、好ましくは、リガンド(単数または複数)は、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシル−ホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよびベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンから選択される、請求項13から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
イリジウム触媒が、(1,5−シクロ−オクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロ−ホスフェート;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジ−フェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリ−フルオロメチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロ−メチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロ−メチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロ−メチル)フェニル]ボレートベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジンからなる群から選択される、請求項13から17のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2012−530116(P2012−530116A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515516(P2012−515516)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058672
【国際公開番号】WO2010/146176
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】