説明

脱ハロゲン化方法

ポリチオフェンの脱臭素化を含むポリマー材料の脱ハロゲン化を含む、重合後の処理を提供する。ポリマーは、OLEDおよびOPVなどの有機電子デバイスにおいて使用することができる。寿命および安定性の改善をもたらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年4月10日に提出された米国特許仮出願第61/168,470号に対して優先権を主張し、その完全な開示は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
例えばOLED、OPV、およびOFET等の有機電子デバイスの性能には改善が必要である。特に、デバイスの効率、移動度、安定性、および寿命といった問題は、さらなる商業化に重要であり得る。市販のデバイスにおいてこれらの改善を実現するには、より良い材料およびプロセスが必要である。
【発明の概要】
【0003】
概要
本明細書に記載される態様には、組成物、デバイスを製造する方法、インク、オリゴマー、ポリマーの使用方法等が含まれる。
【0004】
一つの態様は、例えば、少なくとも一つのポリチオフェンを含む組成物を提供し、該ポリチオフェンが、脱ハロゲン化工程を含む工程により調製されている。一つの態様において、脱ハロゲン化工程は、ポリチオフェンの側鎖に適合する試薬を用いて実施される。特に、脱ハロゲン化試薬は、置換されてもよいアルコキシおよびアルキレンオキシの側鎖に適合性であってもよい。
【0005】
別の態様は、少なくとも一つのポリチオフェンと、ポリマー用の少なくとも一つの溶媒とを含む組成物を提供し、該ポリチオフェンが、脱ハロゲン化工程を含む工程により調製されている。
【0006】
別の態様は、少なくとも一つのポリチオフェンを脱ハロゲン化する工程を含む、方法を提供する。
【0007】
別の態様は、基板、該基板上に配置された複数の層を含む、デバイスを提供し、該層の少なくとも一つが、脱ハロゲン化工程により調製された少なくとも一つのポリチオフェンを含む。
【0008】
別の態様は、少なくとも一つの活性層を含む少なくとも一つの有機光起電装置を含む、デバイスを提供し、該活性層が、脱ハロゲン化工程を含む工程により調製された少なくとも一つのポリマーを含む。
【0009】
少なくとも一つの態様の少なくとも一つの利点は、例えば、効率、寿命および/または移動度の改善、ならびに性質の改善の組み合わせを含む、OPV、OLEDまたはOFET等の有機電子デバイスにおける性能の改善である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
序論
本明細書において引用される参考文献は全て、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0011】
2009年4月10日に提出されたBrownらの同時係属中の出願"Doped Conjugated Polymers, Devices, and Methods of Making Devices"(特許出願番号12/422,159;特許出願公開番号2009/0256117)(譲受人:Plextronics社)、ならびに2008年4月11日に提出された優先出願第61/044,380号および2008年12月2日に提出された優先出願第61/119,239号は、ポリマーおよびポリマーを製造するプロセス、ならびに有機電子デバイスにおける該ポリマーの使用を記載する。コポリマーに関するその記載を含む2009年12月18日に提出された米国特許仮出願第61,287,977号も参照されたい。
【0012】
ポリマー、共役ポリマー、ポリチオフェン
例えば、ポリチオフェン等の共役ポリマー等のポリマーを、脱ハロゲン化工程に供してもよい。
【0013】
詳細には、組成物は少なくとも一つの共役ポリマーを含むことができる。有機電子デバイスにおけるその使用を含む共役ポリマーは、当技術分野において公知である。例えば、Friend, "Polymer LEDs" Physics World, November 1992, 5, 11, 42-46を参照されたい;例えば、Kraft et al., "Electroluminescent Conjugated Polymers - Seeing Polymers in a New Light," Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 402-428を参照されたい。さらに、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、ポリアセチレン、ポリ(p‐フェニレン)、ポリ(p‐フェニレンスルフィド)、ポリピロール、およびポリチオフェンが含まれ、これらのポリマーファミリーおよびこれらのポリマー系の誘導体を含む導電性または共役ポリマーは、The Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Wiley, 1990, pages 298-300において記載されている。この参考文献は、ブロックコポリマー形成を含む、ポリマーの混和および共重合も記載している。
【0014】
共役ポリマーは、ポリチオフェンを含む任意の共役高分子であってよく、ホモポリマー、コポリマー、またはブロックコポリマーであってよい。側鎖を有するレジオレギュラー(regioregular)ポリチオフェンを含む合成方法、ドーピング、およびポリマーの特徴付けは、例えばその全内容が参照により本明細書に組み入れられるMcCulloughらに対する米国特許第6,602,974号およびMcCulloughらに対する同第6,166,172号において提供される。さらなる記載は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるRichard D. McCulloughによる記事"The Chemistry of Conducting Polythiophenes," Adv. Mater. 1998, 10, No.2, pages 93-116ならびにその中の引用文献に見出すことができる。当業者が利用することができる別の参考文献は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、Handbook of Conducting Polymers,第2版, 1998, 第9章, McCulloughら著, "Regioregular, Head-to-Tail Coupled Poly(3-alkylthiophene) and its Derivatives,"第225-258頁である。この参考文献は、第29章第823から846頁においてもその全内容が参照により本明細書に組み入れられる"Electroluminescence in Conjugated Polymers"を記載する。
【0015】
ポリチオフェンは、例えばRoncali, J., Chem. Rev. 1992, 92,711、Schopf et al., Polythiophenes: Electrically Conductive Polymers, Springer: Berlin, 1997においても記載される。例えば、米国特許第4,737,557号および同第4,909,959号も参照されたい。
【0016】
ポリマー半導体は、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるKatzらによる"Organic Transistor Semiconductors", Accounts of Chemical Research, vol. 34, no. 5, 2001、第365から367頁を含め第359頁において記載される。
【0017】
共役ポリマーは、例えば、ブロックコポリマーを含むコポリマーであってよい。ブロックコポリマーは、例えば、NoshayおよびMcGrathによる、Block Copolymers, Overview and Critical Survey, Academic Press, 1977に記載されている。例えば、この文献は、A‐Bジブロックコポリマー(第5章)、A‐B‐Aトリブロックコポリマー(第6章)、および‐(AB)n‐マルチブロックコポリマー(第7章)を記載しており、これらは本発明におけるブロックコポリマー種の基礎を形成することができる。
【0018】
ポリチオフェンを含むさらなるブロックコポリマーは、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、Francois et al., Synth. Met. 1995, 69, 463-466、Yang et al., Macromolecules 1993, 26, 1188-1190、Widawski et al., Nature (London), vol. 369, June 2, 1994, 387-389、Jenekhe et al., Science, 279, March 20, 1998, 1903-1907、Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 6855-6861、Li et al., .Macromolecules 1999, 32, 3034-3044、およびHempenius et al., J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 2798-2804において記載される。
【0019】
側鎖を有する導電性ポリマーを可溶化するために使用できる置換基には、例えばC1〜C25基を含むアルコキシおよびアルキル、ならびに例えば酸素および窒素を含むヘテロ原子系が含まれる。詳細には、少なくとも3個の炭素原子、または少なくとも5個の炭素原子を有する置換基を使用することができる。混合置換基を使用することができる。置換基は、非極性の、極性の、または機能的な有機置換基であってよい。側鎖は置換基Rと呼ぶことができ、これは例えばアルキル、ペルハロアルキル、ビニル、アセチレニック、アルコキシ、アリールオキシ、ビニルオキシ、チオアルキル、チオアリール、ケチル、チオケチルであってよく、任意で水素以外の原子で置換されていてもよい。
【0020】
共役ポリマーは、複素環の単量体反復単位を含んでいてもよく、かつ複素環ポリマーは特に好ましい。特に好ましい系は、ポリチオフェン系および3,4‐二置換ポリチオフェン系である。ポリマーはペンシルバニア州ピッツバーグのPlextronics社より入手可能であり、例えば、PLEXCOREおよび類似の物質等のポリチオフェンに基づくポリマーが挙げられる。
【0021】
共役ポリマーならびに該ポリマーを用いた配合物およびデバイスの一つの重要な例は、3,4‐二置換ポリチオフェンである。好ましくは、3,4‐二置換ポリチオフェンは、ポリ(3,4‐ジアルコキシチオフェン)またはポリ(3,4‐ジ‐ポリエーテル)‐チオフェンであってよい。ポリエーテルは、複数のエーテル基を有する分子である。
【0022】
3,4‐二置換ポリチオフェンは対称な単量体反復単位を有していてもよい。しばしば、3,4‐二置換ポリチオフェンは、二置換チオフェンの3位および4位に直接結合した酸素原子を有し、かつ2位および5位を介して重合している、反復単位としての3,4‐置換チオフェンを含む。置換基は、例えば直鎖炭素鎖または分岐炭素鎖、例えばC1〜C25基を含むアルコキシおよびポリエーテルを含み得る側鎖を有する3,4‐置換チオフェンを可溶化するために用いることができ、該鎖における炭素原子の1個、2個、3個、4個、5個または6個が、酸素および/または窒素等のヘテロ原子に置換されてもよい。
【0023】
共役ポリマーは、2,5‐ジブロモ‐3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェンまたは2,5‐ジブロモ‐3,4‐ビス(2‐(2‐エトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン;2,5‐ジブロモ‐3,4‐ビス(2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン;2,5‐ジブロモ‐3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン;2,5‐ジブロモ‐3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシブトキシ)ブトキシ)チオフェン;および2,5‐ジブロモ‐3,4‐ビス(2‐(2‐メトキシメトキシ)メトキシ)チオフェン等の単量体単位の重合によって調製されてもよい。
【0024】
任意の公知の重合化法を用いて3,4‐二置換ポリチオフェンを得てもよい。典型的には、ポリマー自体は、ニッケル触媒を用いたジアルコキシチオフェンまたはジポリエーテルチオフェンの2,5‐ジブロモ誘導体のGRIM重合によって得ることができる。
【0025】
対称な単量体のGRIM重合は、例えばCampos et al., Photovoltaic Activity of a PolyProDOT Derivative in a Bulk Heterojunction Solar Cell, Solar Energy Materials & Solar Cells, August 2006において記載されている。
【0026】
共役ポリマーは、ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル、ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐エトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル;ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル;ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル;ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシブトキシ)ブトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル;およびポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐メトキシメトキシ)メトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル等の3,4‐二置換ポリチオフェンであってよい。
【0027】
共役ポリマーは、以下によって表される3,4‐二置換ポリチオフェンであってよい。

式中、R1は独立して、置換されてもよいアルコキシ基、または例えばアルコキシアルコキシアルコキシ部分等のアルコキシヘテロ原子基であってもよく、R2は独立して、例えばアルコキシアルコキシアルコキシ部分等の、置換されてもよいアルコキシ基アルコキシヘテロ原子基であってもよいか;または
R1は独立して、置換されてもよいアルキル、および置換されてもよいアリールオキシであってもよく、かつR2は独立して、置換されてもよいアルキルおよび置換されてもよいアリールオキシであってもよい。任意の置換のための置換基の例としては、ヒドロキシル、フェニル、およびさらに置換されてもよいアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基は、次にヒドロキシル、フェニル、またはアルコキシ基によって任意で置換されていてもよいか;または
R1は独立して、置換されてもよいアルキレンオキシドであってもよく、R2は独立して、置換されてもよいアルキレンオキシドであってもよい。置換基は例えば、ヒドロキシル、フェニル、またはアルコキシ基であってよいか;または
R1は独立して、置換されてもよいエチレンオキサイドまたは置換されてもよいプロピレンオキサイド、または他の低級アルキレンオキシ単位であってもよく、かつR2は独立して、置換されてもよいエチレンオキサイド、または置換されてもよいプロピレンオキサイド、または他の低級アルキレンオキシ単位であってよい。置換基は例えば、ヒドロキシル、フェニル、またはアルコキシ基であってもよいか;または
R1は独立して、メチレンまたはエチレン等の置換されてもよいアルキレンであってもよく;置換基は例えば、エチレンオキシまたはプロピレンオキシ等の置換されてもよいアルキレンオキシであってもよく;置換基は例えば、ヒドロキシル、フェニル、またはアルコキシであってもよく、かつR2は独立して、例えばメチレンまたはエチレン等の置換されてもよいアルキレンであってもよく、置換基は例えばエチレンオキシまたはプロピレンオキシ等の置換されてもよいアルキレンオキシであってもよく;置換基は例えばヒドロキシル、フェニル、またはアルコキシであってもよい。
【0028】
加えて、置換基R1およびR2は、アルコキシまたはフェノキシ等の酸素原子によってチオフェンに連結することができ、置換基は対応するアルコールまたはフェノールによりそれぞれ特徴付けることができる。例えばアルコールは、直鎖または分岐鎖であってもよく、C2〜C20、C4〜C18、またはC6〜C14の炭素原子を有していてもよい。アルコールは例えば、アルキルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、またはトリプロピレングリコールであってよい。さらなる例は、モノエチレングリコールエーテル類およびアセテート類、ジエチレングリコールエーテル類およびアセテート類、トリエチレングリコールエーテル類およびアセテート類等であってよい。酸素原子を介してチオフェン環に連結させることができるアルコールの例には、ヘキシルセロソルブ、Dowanol PnB、エチルカルビトール、Dowanol DPnB、フェニルカルビトール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、Dowanol DPM、ジイソブチルカルビノール、2‐エチルヘキシルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、Dowanol Eph、Dowanol PnP、Dowanol PPh、プロピルカルビトール、ヘキシルカルビトール、2‐エチルヘキシルカルビトール、Dowanol DPnP、Dowanol TPM、メチルカルビトール、Dowanol TPnBが含まれる。商品名は、当技術分野において周知である。様々なアルコキシ置換基およびポリエーテル置換基を含むポリチオフェン置換基および配合物は、例えば2007年7月13日に提出された米国特許出願第11/826,394号(米国特許出願公開第2008/0248313号)において記載される。
【0029】
重合度nは、特に限定されないが、例えば2〜500,000または5〜100,000、10〜10,000、10〜1,000、10〜500、もしくは10〜100であってよい。多くの場合において、ポリマーは、約5,000から100,000g/molの間の数平均分子量を有する。いくつかの態様において、Rは、モノアルコキシ基、ジアルコキシ基、トリアルコキシ基、またはテトラアルコキシ基であってよく、共役ポリマーは、ポリ(3,4‐ジアルコキシチオフェン)またはポリ(3,4‐ジポリエーテルチオフェン)であってよい。
【0030】
一つの態様において、R1はブトキシエトキシ(エトキシ)であり、R2はブトキシエトキシ(エトキシ)であり、ポリマーは、以下によって表されるポリ‐3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン‐2,5‐ジイルである。

重合度nは、特に限定されないが、例えば2〜500,000または5〜100,000、10〜10,000、10〜1,000、もしくは10〜100であってよい。多くの場合において、ポリマーは、約5,000から100,000g/molの間の数平均分子量を有する。
【0031】
別の態様において、R1は、メトキシエトキシ(エトキシ)であり、R2は、メトキシエトキシ(エトキシ)であり、および反復単位は、以下によって表される3,4‐ビス(2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン‐2,5‐ジイルである。

重合度nは、特に限定されないが、例えば2〜500,000または5〜100,000、10〜10,000、10〜1,000、もしくは10〜100であってよい。多くの場合において、ポリマーは、約5,000から100,000g/molの間の数平均分子量を有する。
【0032】
他の態様において、反復単位は、例えば3,4‐ビス(2‐(2‐エトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン‐2,5‐ジイル;3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシブトキシ)ブトキシ)チオフェン‐2,5‐ジイル;3,4‐ビス(2‐(2‐メトキシメトキシ)メトキシ)チオフェン‐2,5‐ジイル等であってよい。
【0033】
末端のキャッピング基を含む3位および4位における側鎖の選択は、ドープ処理された共役ポリマーに特定の溶媒、例えばトルエン、テトラヒドロフラン(THF)、またはクロロホルムに対する抵抗性(intractability)を付与するために役立ち得る。溶媒に対する抵抗性は、溶液加工デバイスにとって必要な直交性の適合性を可能にできる。この抵抗性によって、共役ポリマーを、隣接層から用いられる他のインク系による溶液プロセスを用いて製造されるデバイスの調製において用いられるHILインクへと最初に配合されるHILとして用いることができる。加えて、末端のキャッピング基を含む側鎖の選択は界面の間での誘電率を変更することができ、これは界面を超えての電荷の輸送に影響を及ぼす可能性がある。
【0034】
一つの態様において、中性状態または酸化状態のいずれかでの共役ポリマーは、芳香族炭化水素溶媒に可溶性および/または分散性である。別の態様において、共役ポリマーは、テトラヒドロフラン(THF)および/またはクロロホルムにおいて可溶性であり得る。
【0035】
重合後、共役ポリマーは典型的には、約1,000〜1,000,000g/molの数平均分子量を有する。より典型的には、ポリマーは、約5,000から100,000g/molの間の数平均分子量を有する。
【0036】
ポリマーは、チオフェンポリマーまたは非チオフェンポリマーであってよい。ポリマーは、例えばElena SheinaのCarnegie Mellon Universityからの2004年の博士論文("Synthesis and Characterization of Novel Regioregular Thiophene Polymers with Polyetheric Substituents")およびそれに引用された文献に記載されているとおり、金属によって促進されるクロスカップリング反応により調製できる。ポリマーを形成するための他の炭素‐炭素結合形成は、McCullough "The Chemistry of Conducting Polythiophenes," Adv. Mater. 1998, 10, No.2, 93-116ならびにそれに引用された文献に詳しく記載されており、その例としてはKumada法、Yamamoto法、Rieke法、およびStille法が挙げられる。他の例としては、Pd触媒されたSuzukiカップリング、Heckカップリング、ならびにWittig反応、Homer-Emmons反応、またはKnoevenagel反応のような縮合法、またはジベンジルハライドの脱ハロゲン化(米国特許第7,288,329号に記載されている)が含まれる。
【0037】
ポリマーは、例えば反応副生成物および金属等の不純物を除去するように処理されてもよい。不純物の除去は、例えば、OLED試験またはOPV試験における効率、寿命、および/または他のパラメータの改善等のデバイス性能を改善させることができる。一部の金属が酸素原子結合を介してアルキレンオキシ側鎖等のペンダント基と複合体を形成することができる場合であっても、精製は、金属を除去するよう実施可能である。基は結合のために特異的に官能性を持たせることができる。
【0038】
詳細には、ポリマー処理は、塩素、臭素、およびヨウ素等のハロゲンの除去のために、少なくとも一つの脱ハロゲン化工程を含んでいてもよい。
【0039】
脱ハロゲン化は、重合中に行われる工程、重合後であるがポリマーのワークアップ(workup)および分離の前に行われる工程、またはポリマーがワークアップおよび分離された後に行われる工程の結果として、実施されてもよい。
【0040】
脱ハロゲン化工程
加えて、ポリマーは、脱ハロゲン化を実施するように処理することができ、詳細には脱ハロゲン化により末端基を調整することができる。末端基の修飾は当技術分野において公知である。例えば、臭素末端基がグリニャール試薬によって水素末端基に変換されポリアルキルチオフェンとなるスキーム3を含む J. Liu et al., Macromolecules, 2002, 35, 9882-9889を参照されたい。脱臭素化された鎖末端の記載についてはHiorns et al., Polym. Int., 55:608-620 (2006)を参照されたい。脱ハロゲン化およびハロゲン含有量の低下は、例えば、米国特許出願公開第2007/0060777号(Morikawaら)および米国特許第7,368,624号(Brownら)に記載されている。モノキャッピング(monocapping)工程およびモノキャッピングされたポリマーを含む末端基の修飾は、例えば2006年3月15日に提出された米国特許出願第11/375,581号にも記載されている。
【0041】
一つの態様において、例えば臭素末端基等の任意のまたは殆どのハロゲン末端基を除去するために、ポリマーを処理することができる。これは、脱ハロゲン化プロセスと呼んでよい。
【0042】
一つの態様において、ポリマーは、グリニャール試薬等のマグネシウム化合物またはマグネシウム試薬による脱ハロゲン化のために処理してもよい(例えば、Iovu et al.に対する米国特許出願公開第2008/0146754号、"Universal Grignard Metathesis Polymerization"において記載される活性化されたマグネシウム試薬を含むマグネシウム試薬も参照されたい)。マグネシウム試薬は塩化リチウム等の活性化剤と結合させることができる。ある態様において、活性化剤の使用は、必要とされる脱ハロゲン化試薬の量を低下させることができ、これは潜在的な副反応およびポリマーに悪影響を及ぼし構造的な欠陥をもたらす可能性のある不純物の量を低下させることおよび/または制限することができる。
【0043】
一つの態様は、Ni(0)を脱ハロゲン化試薬として提供する。
【0044】
脱ハロゲン化前のハロゲン量は、例えば少なくとも1000ppm、少なくとも2000ppm、または少なくとも3000ppmであることができる。低下は、少なくとも10倍の低下であることできる。
【0045】
脱ハロゲン化を用いて、ハロゲン量の制御は、例えば、OLED試験またはOPV試験において効率、寿命、または他のパラメータの改善等のデバイス性能を改善させることができる。例えば、パラメータは、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも100%改善し得る。制御装置を比較することによりパーセントの差を測定できる。
【0046】
脱ハロゲン化は、ポリマーへの欠陥、副反応または不純物の導入を最小限にするよう実施することができる。例えば、温度および反応時間は制御可能である。また、脱ハロゲン化剤の濃度および量は制御可能である。反応を停止する条件および濃塩酸等の化学薬品も制御することができる。脱ハロゲン化後、沈殿、洗浄、乾燥、および濾過等の精製工程を実施することができる。プロセス中の任意の時点において、例えばMg、Ni、Li等の金属およびBr等のハロゲン等の成分の量を測定することができる。
【0047】
脱ハロゲン化試薬のモル量は、単量体反復単位の量に対して制御することができる。例えば、モル比は1:10から10:1、1:5から5:1、または約1:3から3:1であり得る。
【0048】
ハロゲンの重量パーセントは処理の前後に測定可能であり、かつ脱ハロゲン化により、ハロゲンの重量パーセント(またはpptもしくはppmとして測定される)を低下させることができる。例えば、ハロゲン含有量は、脱ハロゲン化前は少なくとも1000ppmであり得るが、脱ハロゲン化後には100ppm未満または10ppm未満に低下され得る。
【0049】
当技術分野において公知の方法は、ハロゲン含有量の測定に使用できる。例えば、ICP‐MSまたは原子吸光分析を使用できる。
【0050】
一つの態様において、アルキルリチウムは、脱ハロゲン化剤から除外されてもよく、その例としてはn‐ブチルリチウムが上げられる。
【0051】
一つの態様において、亜鉛は、脱ハロゲン化剤から除外されてもよい。
【0052】
インク組成物およびコーティング
ポリマーは、一つまたはそれ以上の溶媒を含む溶媒系を用いてインクに配合してもよい。有機溶媒または水性溶媒が使用できる。溶媒混合物も使用可能である。追加のポリマーまたは低分子量成分を加えることもできる。正孔輸送成分を加えることができる。
【0053】
ポリマーは、無機ドーパントおよび有機ドーパントならびに酸化還元ドーパントまたは酸化還元活性ドーパントを含むドーパントで、ドープ処理されていてもよい。
【0054】
当技術分野において公知の方法により、インクで基板および層の上をコートすることができる。有機電子デバイスに使用される基板および層を使用できる。
【0055】

一つの態様において、組成物は、約1重量%〜99重量%の共役ポリマーと、約1重量%〜99重量%の酸化還元ドーパント等のドーパントを含む。別の態様において、組成物は、約25〜99%の共役ポリマーと約1%〜75%の酸化還元ドーパント等のドーパントを含む。典型的には、共役ポリマーの重量による量は、酸化還元ドーパント等のドーパントの重量による量より多い。
【0056】
共役ポリマーは、上記の任意の共役ポリマーであってよい。典型的には、反復単位は、3,4‐二置換ポリチオフェンである。典型的には、酸化還元ドーパント等のドーパントは、約0.01m/ru〜約1m/ruの量のヨードニウム塩であってもよく、式中mはヨードニウム塩のモル量であり、ruは共役ポリマー反復単位のモル量である。
【0057】
いくつかの態様において、組成物が、溶媒または溶媒担体を含む場合、組成物は、少なくとも97重量%の溶媒または溶媒担体を含み、組成物は、3重量%またはそれ未満の固体百分率を特徴とする。
【0058】
デバイス
様々なデバイスを、多くの場合において、例えば溶液プロセシングまたは真空プロセシングならびに印刷工程およびパターン形成工程によって調製できる多層構造を用いて製造することができる。特に、組成物が正孔注入層、正孔輸送層、または活性層としての使用のために配合される、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、正孔収集層、または活性層に関して本明細書において記載される態様は、有効に使用することができる。特に、適用には、OLED、PLED、PHOLED、SMOLED、ESD、光電池、スーパーキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、陽イオン変換器、薬物放出、エレクトロクロミクス、センサー、FET、アクチュエータ、および膜のための正孔注入層が含まれる。別の適用は、有機電界効果トランジスタ(OFETS)のための電極修飾剤を含む電極修飾剤である。他の適用には、プリンテッドエレクトロニクス、プリンテッドエレクトロニクスデバイス、およびロールツーロール生産プロセスの分野における適用が含まれる。加えて、本明細書において考察した組成物は、電極上でのコーティングであってもよい。
【0059】
例えば、光起電デバイスは当技術分野において公知である。例えば、OPV活性層に関する記載が含まれる、2006年4月13日に公開された米国特許出願公開第2006/0076050号および2008年2月14日に公開されたWO2008/018931を参照されたい。デバイスは、例えばガラス上またはPET上にインジウムスズ酸化物(ITO)等の透明な導体を含む陽極;正孔注入層および/または正孔輸送層;P/Nバルクヘテロ接合層;LiF等の調整層;ならびに例えばCa、Al、またはBa等の陰極を含む多層構造を含むことができる。組成物は、正孔輸送層として用いるために配合することができる。デバイスは電流密度対電位測定を許容するように適合されてもよい。
【0060】
同様に、OLEDデバイスは当技術分野において公知である。例えば、2006年4月13日に公開された米国特許出願公開第2006/00787661号を参照されたい。デバイスは、例えばガラス上、PET上、またはPEN上にITO等の透明な導体を含む陽極;正孔注入層;ポリマー層等のエレクトロルミネッセント層;LiF等の調整層;および例えばCa、Al、またはBa等の陰極を含む多層構造を含んでいてもよい。
【0061】
当技術分野において公知の方法を用いて、例えばOLEDデバイスおよびOPVデバイスを含むデバイスを製造することができる。当技術分野において公知の方法を用いて、輝度、効率、および寿命を測定することができる。OLEDの特許には、例えば米国特許第4,356,429号および同第4,539,507号(Kodak)が含まれる。光を放出する導電性ポリマーは、例えば米国特許第5,247,190号および同第5,401,827号(Cambridge Display Technologies)において記載される。同様に、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、デバイスの構築、物理的原理、溶液プロセシング、多層形成、混和、ならびに材料の合成および配合が含まれる、Kraft et al., "Electroluminescent Conjugated Polymers - Seeing Polymers in a New Light" Angew. Chem. Int. Ed. , 1998, 37, 402-428を参照されたい。
【0062】
BEHP‐PPV等、Sumation、Merck Yellow、Merck Blue、American Dye Sources (ADS)、Kodak(例えば、A1Q3等)およびAldrichからも入手可能な材料等の、様々な導電性ポリマーおよび有機分子を含む、当技術分野において公知でありかつ市販されている発光体を使用することができる。そのような有機エレクトロルミネッセント材料の例には、以下が含まれる:
(i)フェニレン部分上の様々な位置で置換されるポリ(p‐フェニレンビニレン)およびその誘導体;
(ii)ビニレン部分上の様々な位置で置換されるポリ(p‐フェニレンビニレン)およびその誘導体;
(iii)フェニレン部分上の様々な位置で置換され、かつビニレン部分上の様々な位置でも置換される、ポリ(p‐フェニレンビニレン)およびその誘導体;
(iv)アリーレンがナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾール等のような部分であってもよい、ポリ(アリーレンビニレン);
(v)アリーレンが上記(iv)のアリーレンであってもよく、かつ加えてアリーレン上の様々な位置で置換基を有してもよい、ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体;
(vi)アリーレンが上記(iv)のアリーレンであってもよく、かつ加えてビニレン上の様々な位置で置換基を有してもよい、ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体;
(vii)アリーレンが上記(iv)のアリーレンであってもよく、加えてアリーレン上の様々な位置で置換基を有してもよく、かつビニレン上の様々な位置で置換基を有してもよい、ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体;
(viii)(iv)、(v)、(vi)、および(vii)のオリゴマー等のアリーレンビニレンオリゴマーと非共役オリゴマーとのコポリマー;ならびに
(ix)ポリp‐フェニレン、およびポリ(9,9‐ジアルキルフルオレン)等のラダーポリマー誘導体を含む、フェニレン部分上の様々な位置で置換されたその誘導体;
(x)アリーレンがナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾール等のような部分であってもよい、ポリ(アリーレン);およびアリーレン部分上の様々な位置で置換されるその誘導体;
(xi)(x)のオリゴアリーレン等のオリゴアリーレンと非共役オリゴマーとのコポリマー;
(xii)ポリキノリンおよびその誘導体;
(xiii)溶解性を提供するために、ポリキノリンと、フェニレン上で例えばアルキルまたはアルコキシ基によって置換されたp‐フェニレンとのコポリマー;ならびに
(xiv)ポリ(p‐フェニレン‐2,6‐ベンゾビスチアゾール)、ポリ(p‐フェニレン‐2,6‐ベンゾビスオキサゾール)、ポリp‐フェニレン‐2,6‐ベンズイミダゾール)等の剛体棒状ポリマー、およびその誘導体;
(xv)ポリフルオレンポリマーおよびポリフルオレン単位とのコポリマー。
【0063】
好ましい有機発光ポリマーには、緑色、赤色、青色、もしくは白色の光を放射するSUMATION発光ポリマー(「LEP」)、またはそのファミリー、コポリマー、誘導体、もしくは混合物が含まれる。SUMATION LEPはSumation K.K.から入手可能である。他のポリマーには、Covion Organic Semiconductors GmbH, Frankfurt, Germany(現在はMerck(登録商標)の所有)から入手可能なポリスピロフルオレン様ポリマーが含まれる。
【0064】
あるいは、ポリマーよりむしろ、蛍光またはリン光を放射する有機低分子が、有機エレクトロルミネッセント層として役立つことができる。低分子有機エレクトロルミネッセント材料の例としては、(i)トリス(8‐ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq);(ii)1,3‐ビス(N,N‐ジメチルアミノフェニル)‐1,3,4‐オキシダゾール(OXD‐8);(iii)‐オキソ‐ビス(2‐メチル‐8‐キノリナト)アルミニウム;(iv)ビス(2‐メチル‐8‐ヒドロキシキノリナト)アルミニウム;(v)ビス(ヒドロキシベンゾキノリナト)ベリリウム(BeQ. sub.2);(vi)ビス(ジフェニルビニル)ビフェニレン(DPVBI);および(vii)アリールアミン置換ジスチリルアリーレン(DSAアミン)が含まれる。
【0065】
そのようなポリマーおよび低分子材料は、当技術分野において周知であり、例えば、VanSlykeに交付された米国特許第5,047,687号;およびBredas, J.-L., Silbey, R., eds., Conjugated Polymers, Kluwer Academic Press, Dordrecht (1991)において記載される。
【0066】
デバイスにおけるHILの例には、以下が含まれる。
(1)PLEDおよびSMOLEDを含むOLEDにおける正孔注入;例えばPLEDにおけるHILに関して、共役が炭素原子またはケイ素原子を伴う全てのクラスの共役ポリマーエミッターを用いることができる。SMOLEDにおけるHILに関しては、以下が例である:蛍光エミッターを含有するSMOLED;リン光エミッターを含有するSMOLED;HIL層に加えて一つまたはそれ以上の有機層を含むSMOLED;および低分子層が溶液もしくはエアロゾルスプレー、または任意の他のプロセシング技術から加工されるSMOLED。加えて、他の例には、デンドリマーまたはオリゴマー有機半導体に基づくOLEDにおけるHIL;HILが電荷注入を改変するためにまたは電極として用いられる、両極性発光FETにおけるHILが含まれる。
(2)OPVにおける正孔抽出層。
(3)トランジスタにおけるチャンネル材料。
(4)ロジックゲート等のトランジスタの組み合わせを含む回路におけるチャンネル材料。
(5)トランジスタにおける電極材料。
(6)キャパシタにおけるゲート層。
(7)導電性ポリマーによって感知される種との会合によりドーピングレベルの改変が達成される、化学センサー。
【0067】
多様な光活性層をOPVデバイスにおいて用いることができる。光起電デバイスは、例えば米国特許第5,454,880号(Univ. Cal.);同第6,812,399号;および同第6,933,436号において記載されるように、例えば導電性ポリマーと混合されるフラーレン誘導体を含む光活性層によって調製してもよい。さらに、光活性層は、導電性ポリマーの混和物、導電性ポリマーと半導体ナノ粒子との混和物、ならびにフタロシアニン、フラーレン、およびポルフィリン等の低分子の二重層を含んでもよい。
【0068】
一般的な電極材料および基板、ならびに封入材料を用いることができる。
【0069】
デバイスを作製する方法は典型的には、基板を提供する工程;該基板上で透明な導体を積層する工程;本明細書において記載される溶媒において光酸によってドープ処理された共役ポリマーを含むHILインク組成物またはHTLインク組成物を提供する工程;正孔注入層または正孔輸送層を形成するために透明な導体上に該組成物を積層する工程;該正孔注入層または該正孔輸送層の上に活性層を積層する工程;および該活性層の上に陰極を積層する工程を含む。
【0070】
別の態様において、デバイスを作製する方法は、OLED、光起電デバイス、ESD、SMOLED、PLED、センサー、スーパーキャパシタ、陽イオン変換器、薬物放出デバイス、エレクトロクロミックデバイス、トランジスタ、電界効果トランジスタ、電極修飾剤、有機電界効果トランジスタの電極修飾剤、アクチュエータ、または透明電極におけるHIL層またはHTL層の一部として、本明細書において記載される溶媒において光酸によってドープ処理された共役ポリマーを含むHILインク組成物またはHTLインク組成物を適用する工程を含む。
【0071】
OLED測定
当技術分野において公知の方法を用いてOLEDパラメータを測定することができる。例えば、測定は10mA/cm2で行うことができる。
【0072】
電圧は、例えば約2〜約15、約2〜約8、約2〜5、約3〜約14、または約3〜約7であってよい。
【0073】
輝度は、例えば少なくとも250cd/m2、少なくとも500cd/m2、少なくとも750cd/m2、または少なくとも1,000cd/m2であってよい。
【0074】
効率は、例えば少なくとも0.25Cd/A、少なくとも0.45Cd/A、少なくとも0.60Cd/A、少なくとも0.70Cd/A、少なくとも1.00Cd/A、少なくとも2.5Cd/A、少なくとも5.00Cd/A、少なくとも7.50Cd/A、少なくとも10.00Cd/A、少なくとも20Cd/A、少なくとも30Cd/A、少なくとも60Cd/A、または少なくとも80Cd/Aであってよい。上限は、例えば約200Cd/Aであってよい。
【0075】
寿命は、50 mA/cm2において測定できるか、または75 mA/cm2まで時間単位で測定でき、例えば少なくとも50時間、少なくとも100時間、少なくとも約900時間、少なくとも1,000時間、少なくとも1,100時間、少なくとも2,000時間、少なくとも5,000時間、少なくとも10,000時間、少なくとも20,000時間、または少なくとも50,000時間でであってよい。例えばT50等の当技術分野において公知の方法を用いて、寿命を測定することができる。
【0076】
輝度、効率、および寿命の組み合わせを達成することができる。例えば輝度は少なくとも1,000cd/m2であってもよく、効率は少なくとも1.00cd/Aであってもよく、かつ寿命は少なくとも1,000時間、少なくとも2,500時間、または少なくとも5,000時間であってもよい。
【0077】
態様A:塩化リチウムの使用
Krasovskiy A.ら(Krasovskiy, A.; Knochel, P. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 3333)によると、有機臭化物から官能性を持たせたアリールおよびヘテロアリールのマグネシウム化合物を合成する間のLiCl添加は、Br/Mg交換の速度を劇的に増加し、高い変換収率(例えば、>80%)をもたらすことができる。無水LiClにi‐PrMgClのTHF溶液を加えることにより調製できる新規の試薬i‐PrMgCl・LiClは、反応性錯体2の形成に明らかに関与することができ、i‐PrMgClのポリマー凝集体1の形成を妨げる(スキーム1)。おそらく、2[i-PrMgCl2-Li+]のマグネシアート特性がこの試薬の増強された反応性の原因であると考えられる。

スキーム1. LiClによるBr/Mg交換反応の触媒
【0078】
一つの態様において、LiClは、スキーム2に模式化されているように、置換されたポリチオフェンの臭素還元中のBr/Mg交換反応を改善するために、i‐PrMgCl・LiCl錯体の形態で使用できる。重合中に、重合直後に、またはクラッシング(crashing)もしくは沈殿により反応混合物からポリマーを分離し、かつ重合後の処理のためにそれを再溶解した後に、錯体を使用してもよい。R基は、上記のとおり、例えばアルキルまたはアルコキシ等のポリチオフェンに溶解性を与える基であってよい。

スキーム2. i‐PrMgCl・LiCl化学量論的錯体を使用した臭素の還元(アルドリッチより入手可能)
【0079】
i‐PrMgCl・LiCl試薬の調製
[注:より高い変換には、より高濃度のi‐PrMgCl・LiClの使用が好ましい(例えば、2M)]。窒素でパージした三口丸底フラスコをi‐PrMgClで満たした(メタセシスに使用されるグリニャールの1/4の量)。無水LiClを加えた(使用されたグリニャールに対して1:1等量)。全てのLiClが溶解するまで反応混合物を室温で攪拌した(溶解には数時間かかる場合がある。より高い希釈はより長時間かかかる場合がある)。反応の効率に応じて、使用するグリニャールの量はポリマー鎖当たりi‐PrMgCl 2等量に低減させてもよい。
【0080】
さらなる説明は以下の実施例により提供される。
【実施例】
【0081】
ポリチオフェンの脱ハロゲン化

火力乾燥させ窒素でパージした1L容三口丸底フラスコ(3NRBF)に23.5gのPDBEEThを加え、次にカニューレ針によって500mLの無水テトラヒドロフランを加えた。溶液を還流させることによりポリマーを溶解した。加熱を停止し、還流を停止した後、室温で45mLのイソプロピル塩化マグネシウム塩化リチウム錯体溶液(THF中1.3M)(単量体の反復単位あたり1.0等量)を加えた。グリニャールを反応混合物に加えた後、さらに24時間の還流を再開した。反応混合物を室温まで冷まし、これに10mLの濃塩酸をゆっくりと加えた。反応を停止させた後、19.5gのジメチルグリオキシムを反応混合物に加え、30分間攪拌を続けた。次に5Lのメタノール中でポリマーを沈殿させ、PVDF膜フィルターで濾過した。湿気があるポリマーケークは、連続的に攪拌しながら1Lのメタノール中でさらに洗浄し、濾液が無色になるまで濾過および洗浄を行った(毎回約1Lのメタノールを使用した)。ポリマーは、下記の溶媒混合物中で順次攪拌し、濾過し、かつ各濾過工程の後に500mLのメタノール‐水の混合物(1:1v/v)で洗浄することによって、さらにワークアップした。ワークアップの順序、溶媒比率、時間、および温度は下記のとおりである。
1. 1Lのメタノール‐水混合物(1:1v/v)中50℃で1時間加温。
2. 濃塩酸を含む500mLのメタノール‐水(1:1v/v)中50℃で1時間加温。
3. 2×500mLのメタノール‐水(1:1v/v)中50℃で1時間加温。
最後の洗浄工程の後、ポリマーを濾過し、漏斗上で30〜40分間乾燥させた後、真空オーブン中70℃で3日間乾燥させて20gのポリマーを得た。
【0082】
(表1)脱ハロゲン化工程前後のICP‐MSによるPDBEEThのMg、Ni、Li、およびBrの分析

*<実験室の検出限界未満(R. J. Lee Group Inc.の実験報告)。
【0083】
追加の態様
ポリ((3‐メトキシエトキシエトキシ)チオフェン)の脱ハロゲン化
乾燥した1L容三口丸底フラスコに15.01gのポリ((3‐メトキシエトキシエトキシ)チオフェン)および500mLの無水アニソールをカニューレにて加えた。反応混合物を80℃で1時間加熱することによりポリマーを溶解した。この溶液に58mLのi-プロピル塩化マグネシウム塩化リチウム錯体(THF中1.3M)を70℃でゆっくりと加えた。反応混合物をさらに24時間73℃で加熱し、数滴の濃塩酸で反応を停止させた。次に、17.42gのジメチルグリオキシムおよび50mLのTHFを反応混合物に加えた。次に6Lのヘキサン中でポリマーを沈殿させ、濾過後、200mLのヘキサンで洗浄した。濾過した固体をさらに600mLのヘキサンで30分間攪拌し、濾過後、無色になるまでヘキサンで洗浄した。濾過したポリマーは漏斗上で吸引乾燥させ、次に48時間風乾させた。
【0084】
乾燥ポリマーを300mLのメタノール中約50℃で30分間攪拌した後、150mLの脱イオン水を加えた。ポリマーの攪拌および加熱をさらに30分間継続した後、それを濾過した。ポリマーを300mLの1:1(v/v)メタノール‐水混合物で洗浄した。このプロセスをもう一度繰り返した。
【0085】
濾過されたポリマーを、再度150mLのメタノール中、加熱しながら(55℃)30分間攪拌した。450mLの脱イオン水を加え、熱処理をさらに45分間継続した後、ポリマーを濾過により回収した。次にポリマーを300mLの1:1(v/v)メタノール‐水混合物で洗浄した。ポリマーは漏斗上で約30分間吸引乾燥させた後、65℃の真空オーブン中で12.8gの一定重量となるまで乾燥させた。
【0086】
臭素含有量は、上記の処理により、初期値の23,400ppmから671ppmに低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリチオフェンが、脱ハロゲン化工程を含む工程により調製されている、少なくとも一つの該ポリチオフェンを含む組成物。
【請求項2】
前記脱ハロゲン化工程が、臭素の重量パーセントを低下させる工程を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脱ハロゲン化後、前記ポリチオフェンが100ppm未満のハロゲン含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
脱ハロゲン化後、前記ポリチオフェンが100ppm未満の臭素含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
脱ハロゲン化後、前記ポリチオフェンが10ppm未満のハロゲン含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
脱ハロゲン化後、前記ポリチオフェンが10ppm未満の臭素含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリチオフェンがレジオレギュラー(regioregular)ポリチオフェンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリチオフェンが3,4‐置換ジアルコキシポリチオフェンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリチオフェンが可溶性ポリチオフェンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記脱ハロゲン化がマグネシウム試薬を用いて実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記脱ハロゲン化が、活性化剤と結合したマグネシウム試薬を用いて実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記脱ハロゲン化が、活性化剤と結合したグリニャール試薬を用いて実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記脱ハロゲン化が、リチウム活性化剤と結合したグリニャール試薬を用いて実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記脱ハロゲン化工程が、前記ポリチオフェンの重合の一部分として実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリチオフェンの重合が実質的に完了した後であるが、該ポリチオフェンのワークアップ(workup)の前に、前記脱ハロゲン化工程が実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリチオフェンの重合が実質的に完了した後でありかつ該ポリチオフェンが精製および再溶解された後に、前記脱ハロゲン化工程が実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
脱ハロゲン化と有機電子デバイスにおける脱ハロゲン化されたポリマーの使用との結果として該デバイスにおけるパラメータが少なくとも10%改善されるようにハロゲンレベルを低下させるために、脱ハロゲン化が実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
脱ハロゲン化と有機電子デバイスにおける脱ハロゲン化されたポリマーの使用との結果として該デバイスにおけるパラメータが少なくとも25%改善されるようにハロゲンレベルを低下させるために、脱ハロゲン化が実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
脱ハロゲン化と有機電子デバイスにおける脱ハロゲン化されたポリマーの使用との結果として該デバイスにおけるパラメータが少なくとも50%改善されるようにハロゲンレベルを低下させるために、脱ハロゲン化が実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
脱ハロゲン化と有機電子デバイスにおける脱ハロゲン化されたポリマーの使用との結果として該デバイスにおけるパラメータが少なくとも75%改善されるようにハロゲンレベルを低下させるために、脱ハロゲン化が実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
ポリチオフェンが、脱ハロゲン化工程を含む工程により調製されている、少なくとも一つの該ポリチオフェンと、
ポリマー用の少なくとも一つの溶媒と
を含む、組成物。
【請求項22】
前記溶媒が有機溶媒である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記溶媒が水である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記溶媒が非ハロゲン化溶媒である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記溶媒がハロゲン化溶媒である、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリチオフェンの量が約3重量パーセント未満である、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリチオフェンが、脱ハロゲン化前に少なくとも1,000ppm(重量)のハロゲン含有量を有し、かつ脱ハロゲン化後に100ppm(重量)未満のハロゲン含有量を有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記ポリチオフェンがレジオレギュラーポリチオフェンである、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリチオフェンが3,4‐置換ジアルコキシポリチオフェンである、請求項21に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリチオフェンが、沈殿またはゲル形成に対して25℃で少なくとも7日間前記溶媒中で安定である、請求項21に記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも一つのポリチオフェンを脱ハロゲン化する工程
を含む、方法。
【請求項32】
前記ポリチオフェンを重合により調製しながら、前記脱ハロゲン化する工程が実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリチオフェンが重合により調製された後に、前記脱ハロゲン化する工程が実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリチオフェンが重合により調製された後でありかつ該ポリチオフェンが精製および再溶解された後に、前記脱ハロゲン化する工程が実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
脱ハロゲン化する工程がマグネシウム試薬を用いて実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
脱ハロゲン化する工程が、活性化剤と結合したマグネシウム試薬を用いて実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記脱ハロゲン化が脱臭素化である、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリチオフェンがGRIM重合、Suzuki重合、Kumada重合、またはStille重合により調製される、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記脱ハロゲン化によりハロゲン含有量が100ppm未満になる、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記脱ハロゲン化により臭素含有量が100ppm未満になる、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
基板と、
層の少なくとも一つが、脱ハロゲン化工程により調製された少なくとも一つのポリチオフェンを含む、該基板上に配置された複数の該層と
を含む、デバイス。
【請求項42】
前記基板および前記層が有機電子デバイスを形成する、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
前記基板および前記層がOLEDデバイスまたはOPVデバイスを形成する、請求項41に記載のデバイス。
【請求項44】
前記ポリチオフェンを含む前記層がOPV活性層である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項45】
前記ポリチオフェンを含む前記層がOPV正孔採取層である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項46】
前記ポリチオフェンを含む前記層がOLED正孔注入層である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項47】
前記ポリチオフェンを含む前記層がOLED正孔輸送層である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項48】
前記デバイスがOFETである、請求項41に記載のデバイス。
【請求項49】
前記脱ハロゲン化が、少なくとも一つのデバイス性能パラメータを少なくとも10%改善する、請求項41に記載のデバイス。
【請求項50】
前記脱ハロゲン化が、少なくとも一つのデバイス性能パラメータを少なくとも10%改善し、かつ該デバイス性能パラメータが寿命である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項51】
活性層が、脱ハロゲン化工程を含む工程により調製された少なくとも一つのポリマーを含む、少なくとも一つの該活性層を含む少なくとも一つの有機光起電装置
を含む、デバイス。
【請求項52】
前記ポリマーが前記活性層用のp型材料である、請求項51に記載のデバイス。
【請求項52】
前記ポリマーがポリチオフェンである、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
前記ポリマーがポリチオフェンではない、請求項51に記載のデバイス。
【請求項54】
前記脱ハロゲン化が脱臭素化である、請求項51に記載のデバイス。
【請求項55】
前記ポリマーがクロスカップリング重合により調製される、請求項51に記載のデバイス。
【請求項56】
前記ポリマーが、少なくとも一つの芳香族部分を含む単量体を用いて調製される、請求項51に記載のデバイス。
【請求項57】
前記活性層が少なくとも一つのフラーレン誘導体を含む、請求項51に記載のデバイス。
【請求項58】
前記活性層が、インデンで誘導体化された少なくとも一つのフラーレン誘導体を含む、請求項51に記載のデバイス。

【公表番号】特表2012−523483(P2012−523483A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504899(P2012−504899)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/030601
【国際公開番号】WO2010/118370
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507094393)プレックストロニクス インコーポレーティッド (24)
【Fターム(参考)】